(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6337523
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】活性エネルギー線重合性樹脂組成物および積層体
(51)【国際特許分類】
C08F 290/06 20060101AFI20180528BHJP
G02B 1/04 20060101ALI20180528BHJP
C08G 59/17 20060101ALI20180528BHJP
C08G 59/68 20060101ALI20180528BHJP
【FI】
C08F290/06
G02B1/04
C08G59/17
C08G59/68
【請求項の数】4
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2014-44476(P2014-44476)
(22)【出願日】2014年3月7日
(65)【公開番号】特開2015-168757(P2015-168757A)
(43)【公開日】2015年9月28日
【審査請求日】2016年11月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 聡子
(72)【発明者】
【氏名】于 越
(72)【発明者】
【氏名】江川 良
【審査官】
横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】
特許第2962805(JP,B2)
【文献】
特開昭49−048774(JP,A)
【文献】
特開平05−224412(JP,A)
【文献】
特開昭58−185611(JP,A)
【文献】
特開2005−343868(JP,A)
【文献】
特開2007−093856(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 290/00−290/14
C08G 59/00−59/72
C08L 1/00−101/14
G02B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)下記一般式(1)で表される芳香環含有脂環式エポキシ化合物のエポキシ基1当量に対してアクリル酸又はメタクリル酸を0.5〜1.1当量添加して反応させて得られる不飽和脂環式エポキシエステル化合物と、(b)光重合開始剤および/または光酸発生剤とを含むことを特徴とする活性エネルギー線重合性樹脂組成物。
一般式(1)
【化1】
(一般式(1)中、Arは
ベンゼン環を表す。
A
1は、単結合、−O−、−S−、−N(R
3)−、−CO−、−SO−、−SO
2−、またはこれらの組合せからなる2価の結合基を表す。
E
1は、脂環式エポキシ基を表す。
R
1は、単結合または2価の炭化水素基を表し、
R
2は、単結合または2価の炭化水素基を表し、
R
3は、水素原子または1価の炭化水素基を表し、
m
は1であり、nは1以上の整数を表す。分子内に含まれるn個のR
1、m×n個のA
1、m×n個のR
2、n個のE
1、m×n個のR
3は同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項2】
一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(2)で表される化合物、下記一般式(3)で表される化合物、および、下記一般式(4)で表される化合物のいずれかであることを特徴とする、請求項
1記載の活性エネルギー線重合性樹脂組成物。
一般式(2)
【化2】
一般式(3)
【化3】
一般式(4)
【化4】
(式中E
2、E
3、E
4は脂環式エポキシ基を、
Xは2価の脂肪族炭化水素基を、
nは1〜6の整数を表す)
【請求項3】
請求項1または2記載の活性エネルギー線重合性樹脂組成物を活性エネルギー線照射によって硬化させた硬化物。
【請求項4】
請求項3記載の硬化物と基材とからなる積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香環含有脂環式エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸を反応させて得られる不飽和脂環式エポキシエステル化合物を含む重合性樹脂組成物と、その組成物を使用した積層体、特に、光学素子の用途に適した積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
活性エネルギー線重合性樹脂組成物は、重合速度が速く、また、一般に無溶剤で使用できるため、作業性に優れ、さらに重合時に必要となるエネルギーが極めて低い等の特性を有する。活性エネルギー線重合性樹脂組成物は、代表的に、活性エネルギー線によって重合し得る、樹脂成分と、α,β−不飽和二重結合基を有するモノマー成分とを含有する。上記樹脂成分としては、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエポキシ系樹脂、及びポリアクリル系樹脂等の、低分子量であり、かつ分子末端にα,β−不飽和二重結合基を有するオリゴマーが利用されている。活性エネルギー線の照射によって、上記モノマー成分は、上記樹脂成分と共に重合化するが、重合化が完了するまで、溶剤として機能し得る。そのため、上記活性エネルギー線重合性樹脂は、別途、溶剤を必要とせず、それにより塗膜形成時に溶剤の揮発が生じないという利点を有する。
【0003】
上述の観点から、上記活性エネルギー線重合性樹脂組成物の使用によって、近年の環境汚染問題の改善に向けて、環境汚染の低減化を図ることが可能である。そのため、活性エネルギー線重合性樹脂組成物は、建装材料、包装材料、印刷材料、並びにディスプレイ等の表示装置材料及び光学デバイス等の電気電子部品材料を含む様々な分野で利用されており、その利用分野は拡大傾向にある。
【0004】
例えば、上述の様々な分野において、上記樹脂組成物は、接着剤の用途で使用することができる。しかし、上記樹脂組成物は、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン等のプラスチックフィルム基材(被塗布面)との密着性が必ずしも良いわけではなく、各種基材との密着性を向上させる様々な方法が報告されている。例えば、特許文献1では、特定の飽和共重合ポリエステルを使用することによって、上記樹脂組成物における上記オリゴマーの分子骨格を根本的に変更する方法を開示している。また、特許文献2では、活性エネルギー線重合性樹脂組成物において、密着性向上剤として、α,β−不飽和二重結合基の末端変性リン酸エステルの金属塩を配合する方法を開示している。さらに、特許文献3では、活性エネルギー線重合性樹脂組成物において、トリシクロデセニル基とα,β−不飽和二重結合基とを有する化合物を配合する方法を開示している。
【0005】
上記活性エネルギー線重合性樹脂組成物で使用される反応性オリゴマー類は、一般的に、粘性が極めて高いため、塗料や接着剤のバインダーとして、それらを単独で扱うことは困難である。そのため、通常、α,β−不飽和二重結合基を有し、かつ低粘度である反応性希釈剤を併用することによって、バインダーとしての操作性を高めている。上記反応性希釈剤としては、α,β−不飽和二重結合基を有する単量体等の数多くの化合物が知られている(特許文献4〜6)。中でも、アクリル酸エステル類は、一般的に、活性エネルギー線に対して優れた重合性を示すため、多用されている。しかし、その一方で、臭気及び皮膚刺激性が強いため、アクリル酸エステル類を含む塗料又は接着剤に対して、塗布作業等の使用時の環境改善が望まれている。
【0006】
一方、近年、ディスプレイを含めた情報通信機器の発達と汎用化は目覚しく、表示装置の分野では、コート剤、接着剤、及びシーリング剤等の材料の性能及び生産性のさらなる向上が求められている。そして、表示装置の材料として、上記活性エネルギー線重合性樹脂組成物を使用する様々な実施形態が提案されている。
【0007】
表示装置では、通常、外部光源からの反射を防ぐための反射防止フィルムや、表示装置の表面の傷付き防止のための保護フィルム(プロテクトフィルム)など、用途に応じて、様々なフィルムが使用されている。例えば、液晶ディスプレイ(LCD)を構成する液晶セル用部材として、偏光板や位相差フィルムが積層されている。
【0008】
また、フラットパネルディスプレイ(FPD)は、表示装置として利用するだけではなく、その表面にタッチパネルの機能を設けて、入力装置として利用されることもある。タッチパネルにおいても、保護フィルム、反射防止フィルム及びITO蒸着樹脂フィルム等のフィルムが使用されている。
【0009】
上記フィルムは、代表的には、光学素子用部材として、積層体の形態で表示装置に適用される。例えば、上記フィルムはその表層に傷つき防止、指紋付着防止、帯電防止、又は易接着化のための、コート剤からなるコート層を設けた形態で、表示装置に適用される。別の形態では、上記フィルムは、接着剤を介して、光学素子等の被着体に貼着させた形態で、表示装置に適用される。上述の形態で使用されるコート剤又は接着剤には、まず、透明性又は耐熱性といった特性が要求される。このような要求に対して、当技術分野では、一般に、ポリアクリル系樹脂を主剤とする溶剤含有の2液の熱硬化型接着剤、又は活性エネルギー線重合性接着剤が使用されている。
【0010】
しかし、従来の活性エネルギー線重合性樹脂組成物は、重合速度が速い等の利点を有する一方で、その重合物については、光学用途で求められる十分な透明性を得ることが難しい傾向にある。また、上記樹脂組成物を使用して、光学素子用積層体を作製した場合、積層体における各層の材料の寸法変化特性が異なるため、温度や湿度の変化に伴って、寸法が変化し、反り(カールともいう)が生じやすい傾向がある。さらに、上記積層体は、高屈折率であることが望ましいが、上記樹脂組成物の構成において、屈折率を調整することは難しい。また高屈折率となる樹脂組成物を構成できたとしても、その樹脂組成物は接着性に乏しい傾向がある。
【0011】
特許文献7は、ポリウレタンポリ(メタ)アクリレートと、ヒドロキシアセトフェノンオリゴマーの光重合開始剤とを含む光硬化性樹脂組成物であって、この樹脂組成物は、硬化速度が速く、及び硬化時の収縮が少なく、かつ寸法安定性に優れる利点を有することを開示している。しかし、開示された樹脂組成物の使用形態は、床材被膜の用途に限定されている。特許文献7は、上記樹脂組成物を床材の保護コート剤として使用した場合、床材の反りが軽減されることを明らかにしている。しかし、上記樹脂組成物をコートフィルムの用途で使用した場合、上記樹脂組成物の重合収縮が大きいため、大きな反りが生じ、低カール性と、密着性等のコート性能とを両立することは困難である。また、上記樹脂組成物を使用して2〜5μmの薄膜のコート層を作製した場合、硬化工程時に120℃以上に加熱及び乾燥してコート層を乾燥させると、乾燥時の熱によって上記樹脂組成物中の光重合開始剤が揮発し、硬化反応が不十分となり、コート性が劣る傾向がある。
【0012】
また、特許文献8および9は、それぞれ、硫黄原子を含み、かつα,β−不飽和二重結合を有する化合物を含有する活性エネルギー線重合性組成物を重合させて得られる、高屈折率の光学材料を開示している。しかし、開示された光学材料は、いずれも、JISK6856に準じた曲げ接着強度(SA)が0.1以下であり、接着性に乏しい。
【0013】
さらに、表示装置の分野では、液晶層を背面から照らして発光させるバックライト方式が普及しており、代表的に、液晶層の下面側には、エッジライト型、直下型等のバックライトユニットが装備されている。かかるエッジライト型のバックライトユニットは、基本的には、光源となる線状のランプと、このランプに端部が沿うように配置される方形板状の導光板と、この導光板の表面側に配設される光拡散シートと、このシート表面側に配設されるプリズムシートとを備えている。最近では、光源として、令陰極管(COFL)に代えて、色再現性や省電力に優れた発光ダイオード(LED)を使用する場合が多く、これに伴って、表示装置の耐熱性や寸法安定性に対する要求がより高まってきている。
【0014】
以上のように、表示装置の分野では、従来からの利点に加えて、光学用途で求められる各種特性にも優れた、活性エネルギー線重合性樹脂組成物の開発が望まれている。より具体的には、光学素子用積層体を構成するコート剤又は接着剤として好適に使用できる活性エネルギー線重合性樹脂組成物であって、実質的に有機溶剤を含有せず、かつ密着性及び硬化時の寸法安定性に優れ、並びに屈折率、全光線透過率及びヘイズといった光学特性に優れたものに加え、高湿下および高温下において、より過酷な環境下における耐久性が良好な樹脂組成物が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開昭56−95902号公報
【特許文献2】特開昭57−180618号公報
【特許文献3】特開昭57−87409号公報
【特許文献4】特開平6−329731号公報
【特許文献5】特開2001−240609号公報
【特許文献6】特開2004−099644号公報
【特許文献7】特開平08−27397号公報
【特許文献8】特開平4−108816号公報
【特許文献9】特開平5−271383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は上記の現状に鑑みてなされたものであり、耐熱性、耐湿熱性、熱的寸法安定性、及び耐候性等に優れ、光学用途で好適に使用できる不飽和脂環式エステル化合物を含む、コート剤または接着剤として有用な、新規な活性エネルギー線重合性樹脂組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、各種透明フィルム、特に各種光学フィルムの少なくとも一方の主面に上記樹脂組成物を使用して構成される樹脂層を有する積層体であって、各種光学フィルムの種類を問わず、該光学フィルムに対して上記樹脂層が簡便かつ強固に接着又は被覆でき、従来に比して、打抜き加工性及び湿熱耐久性に優れた積層体、特に光学素子用積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
すなわち本発明は、(a)下記一般式(1)で表される芳香環含有脂環式エポキシ化合物のエポキシ基1当量に対してアクリル酸又はメタクリル酸を0.5〜1.1当量添加して反応させて得られる不飽和脂環式エポキシエステル化合物と、(b)光重合開始剤および/または光酸発生剤とを含むことを特徴とする活性エネルギー線重合性樹脂組成物に関する。
【0018】
一般式(1)
【化1】
【0019】
(一般式(1)中、Arは
ベンゼン環を表す。
A
1は、単結合、−O−、−S−、−N(R
3)−、−CO−、−SO−、−SO
2−、またはこれらの組合せからなる2価の結合基を表す。
E
1は、脂環式エポキシ基を表す。
R
1は、単結合または2価の炭化水素基を表し、
R
2は、単結合または2価の炭化水素基を表し、
R
3は、水素原子または1価の炭化水素基を表し、
m
は1であり、nは1以上の整数を表す。分子内に含まれるn個のR
1、m×n個のA
1、m×n個のR
2、n個のE
1、m×n個のR
3は同一であっても異なっていてもよい。)
【0021】
また本発明は、一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(2)で表される化合物、下記一般式(3)で表される化合物、および、下記一般式(4)で表される化合物のいずれかであることを特徴とする、
上記活性エネルギー線重合性樹脂組成物に関する。
【0022】
一般式(2)
【化2】
【0023】
一般式(3)
【化3】
【0024】
一般式(4)
【化4】
【0025】
(式中E
2、E
3、E
4は脂環式エポキシ基を、
Xは2価の脂肪族炭化水素基を、
nは1〜6の整数を表す)
【0026】
また本発明は、上記活性エネルギー線重合性樹脂組成物
を活性エネルギー
線照射
によって硬化させ
た硬化物に関する。
また本発明は、上記硬化物と基材とからなる積層体に関する。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、低照度で重合可能な活性エネルギー線重合性樹脂組成物を提供することができる。また、本発明によれば、上記樹脂組成物を接着剤又はコート剤として使用することによって、光学フィルムと簡便かつ強固に接着又は密着でき、並びに打ち抜き加工性、耐熱性、及び耐湿熱性に優れた積層体、特に優れた光学素子用積層体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明における芳香環含有脂環式エポキシ化合物について以下に説明する。
【0029】
本発明における芳香環含有脂環式エポキシ化合物は上記一般式(1)で表される構造を有する。芳香族骨格Arは芳香族化合物の芳香環に直接結合した水素原子をn個除いた、n価の芳香族基である。上記芳香族化合物は、たとえば、ベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ナフタセン、ペンタセン、インデン、フルオレン、ジフェニルメタン、ジフェニルエタン、ジフェニルプロパン、ジフェニルスルホン、ジフェニルフルオレン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ジフェニルエーテル、ピリジン、ピロール、カルバゾール、フラン、チオフェン、および、これらの芳香族化合物中の水素原子の一部がアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ジアルキルアミノ基、などに置換した化合物が挙げられる。より高透明性を求められる用途ではベンゼン、ビフェニルなどヘテロ原子が含まれておらず、2つ以上の芳香環が平面上に並ばない化合物が好ましい。
【0030】
R
1は、芳香族骨格Arの芳香環に直接結合する、単結合または2価の炭化水素基を表す。2価の炭化水素基としては、たとえば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基等が挙げられる。芳香環に酸素原子や窒素原子等のヘテロ原子が結合した化合物は非常に着色しやすく、特に熱や光による着色が著しい。そのため、着色を防ぐためには炭化水素基であることが好ましい。
【0031】
A
1は単結合、−O−、−S−、−N(R
3)−、−CO−、−SO−、−SO
2−、またはこれらの組合せからなる2価の結合基を表す。組合せの例としては、左側がR
1と、右側がR
2と結合しているとすると、−COO−、−OCO−、−N(R
3)COO−、−OCON(R
3)−、などが挙げられる。窒素原子や硫黄原子を含む結合は耐熱性がやや弱いため、高い耐熱性を求められる場合は特に−O−、−CO−、−COO−、−OCO−が好ましい。さらに好ましくは−O−、−COO−が好ましい。R
1が単結合の場合、芳香環にヘテロ原子が結合しないようにするため、−CO−または−COO−が好ましい。
【0032】
R
2は、脂環式エポキシ基E
1の環に直接結合する、単結合または2価の炭化水素基を表す。2価の炭化水素基としては、たとえば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基等が挙げられる。
【0033】
R
3は、水素原子または1価の炭化水素基を表す。1価の炭化水素基としてはたとえば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ラウリル基、テトラデシル基、セチル基、ステアリル基、ベヘニル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、トリル基、ナフチル基、などが挙げられる。
【0034】
脂環式エポキシ基E
1〜E
4は、脂環族化合物の環構造を形成する隣接する炭素原子と酸素原子とでエポキシ基(オキシラン環)を形成した化合物から、水素原子を1つ除いた1価の脂環族基であり、E
1〜E
4中の環形成をしている炭素原子が結合手となっている。
【0035】
また、脂環族化合物の環構造を形成する隣接する炭素原子と酸素原子とでエポキシ基(オキシラン環)を形成した化合物としては、以下のような構造を有するものが挙げられる。これらの構造に置換基が入っていてもよい。特にエポキシシクロヘキサンが好ましい。
【0036】
【化5】
【0037】
2価の炭化水素基Xは、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基等が挙げられる。
【0038】
また、一般式(1)で表される化合物が、上記一般式(2)で表される化合物、上記一般式(3)で表される化合物、および、上記一般式(4)で表される化合物のいずれかであることが好ましい。
【0039】
一般式(1)で表される化合物の好ましい具体例として、例えば以下のような化合物が挙げられる。
【0040】
一般式(2)で表される化合物。
【化6】
【0041】
一般式(3)で表される化合物。
【化7】
【0042】
一般式(4)で表される化合物。
【化8】
【0043】
一般式(2)〜(4)には入らない化合物。
【化9】
【0044】
これら芳香環含有脂環式エポキシ化合物に対し、アクリル酸もしくはメタクリル酸をエポキシ基1当量に対して0.5〜1.1当量反応させることによって不飽和脂環式エポキシエステル化合物を合成する。
【0045】
本発明における不飽和脂環式エポキシエステル化合物の製造方法について以下に説明する。
【0046】
芳香環含有脂環式エポキシ化合物とアクリル酸もしくはメタクリル酸の反応においては、カルボン酸によるエポキシ基の開環反応触媒を用いることもできる。
【0047】
触媒としては例えば、第3級アミン類、例えばトリエチルアミン、トリプロピリアミン、トリブチルアミン、ベンジルジメチルアミン等あるいは第3級のアミンの第4アンモニウム縁、例えばテトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリエチルアンモニウムブロマイド等あるいは2−エチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール等のイミダゾール類が好ましい。
【0048】
上記触媒の添加量は反応物に対して0.05〜3.0重量%、好ましくは0.1〜0.5重量%である。
【0049】
さらに、反応中の重合防止のために重合禁止剤を反応系に添加することが好ましい。
【0050】
重合禁止剤としては例えば、ヒドロキノン、メトキシヒドロキノン、ベンゾキノン、p−tert−ブチルカテコール等のキノン系重合禁止剤や2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4−ジ−tert−ブチルフェノール、2−tert−ブチル−4,6−ジメチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,4,6−トリ−tert−ブチルフェノール等のアルキルフェノール系重合禁止剤やアルキル化ジフェニルアミン、N,N′−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、フェノチアジン、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1,4−ジヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−ヒドロキシ−4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等のアミン系重合禁止剤や2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル等のN−オキシル系重合禁止剤等の重合禁止剤が好ましい。
【0051】
これらの重合禁止剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。添加量としては、出発原料に対して0.02〜3.0重量%、好ましくは0.05〜1.0重量%である。前記重合禁止剤添加量の範囲が、収率の点、重合抑制の点および経済性の点で好ましい。
【0052】
反応温度は、50〜130℃、好ましくは60〜120℃である。これよりも反応温度が低いと反応時間が長くなり、これよりも反応温度が高いと重合反応が起こる危険がある。反応中は重合防止のため、空気を反応系に吹き込むのが好ましい。
【0053】
また、本反応は適当な溶媒を用いて行なうこともできる。
【0054】
溶媒としては例えば、トルエン、ベンゼン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。また、重合性ビニルモノマー自身を反応溶媒に用いることもできる。
【0055】
このようにして合成した本発明の不飽和脂環式エポキシエステル化合物は、分子内に光重合性あるいはラジカルによる熱重合性の不飽和のアクリル基あるいはメタクリル基を有する化合物である。例えば、芳香環含有脂環式エポキシとして下記化合物Aを選ぶ場合、そのアクリル酸又はメタクリル酸との反応によって得られる不飽和脂環式エステル化合物は以下の化合物B、化合物C、化合物Dに示すような化学構造式を有する。
【0056】
化合物A
【化10】
【0057】
化合物B
【化11】
【0058】
化合物C
【化12】
【0059】
化合物D
【化13】
【0060】
(式中、Rは、水素原子、または、−CH
3を表す。)
【0061】
化合物Cは、エポキシ基の1当量に対してアクリル酸又はメタクリル酸のカルボキシル基が1当量よりも少ない場合に多く生成する。化合物Dは化合物Cと同条件の時に、長時間反応させると、不飽和脂環式エポキシエステル化合物のエポキシ基がアクリル酸又はメタクリル酸のカルボキシル基との開環反応によって生成した水酸基によるエポキシ基の開環反応が進行し、生成する。化合物Dの構造が多ければ多いほど、生成物の粘度が高くなる。
【0062】
本発明の活性エネルギー線重合性樹脂組成物について説明する。
【0063】
本発明の活性エネルギー線重合性樹脂組成物は光重合開始剤および/または光酸発生剤を含んでいる。本発明の接着剤組成物を塗布後、光などの活性エネルギー線によってラジカル種及び又はカチオン種を発生させることで、ラジカル重合及び又はカチオン重合が起こり硬化する。
【0064】
光重合開始剤として、公知の化合物から任意に選択した化合物を使用できる。
具体例として、例えば、以下が挙げられる。2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、キサントフルオレノン、ベンズアルデヒド、アントラキノン、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、4−チオキサントン、カンファーキノン、及び2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン等。
【0065】
また、市販品としては、例えば、以下が挙げられる。イルガキュアー184,907,651,1700,1800,819,369,及び261(BASF社製)、DAROCUR−TPO(BASF社製、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド)、ダロキュア−1173(メルク社製)、エザキュアーKIP150,及びTZT(日本シイベルヘグナー社製)、カヤキュアBMS,及びカヤキュアDMBI(日本化薬社製)等。
【0066】
また、分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイル基を有する光重合開始剤を使用することもできる。
【0067】
光酸発生剤としては、例えば、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセナート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスファート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、トリフェニルスルホニウム テトラフルオロボラート、トリ−p−トリルスルホニウムヘキサフルオロホスファート、トリ−p−トリルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(tert−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、ジフェニル−4−メチルフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、ジフェニル−2,4,6−トリメチルフェニルスルホニウム−p−トルエンスルホナート、ジフェニル−p−フェニルチオフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスファート、などが挙げられる。
【0068】
光重合開始剤および/または光酸発生剤は光硬化性接着剤に含まれる樹脂成分(本発明の飽和脂環式エポキシエステル化合物、および、必要に応じて含まれる他の活性エネルギー重合性化合物から構成される樹脂成分)100部に対して、0.01部〜20部であることが好ましい。0.01部未満であると硬化が不十分であり、20部より多い場合、光酸発生剤由来の着色や他の諸物性の低下を招く。
【0069】
本発明の活性エネルギー線重合性樹脂組成物は、さらに、ラジカル重合性の化合物やカチオン硬化性の化合物を必要に応じて添加してもよい。例えば、α,β−エチレン性不飽和二重結合基含有化合物、エポキシ化合物、オキセタン化合物、ビニルエーテル化合物などがあるが、硬化性の観点から、α,β−エチレン性不飽和二重結合基含有化合物、エポキシ化合物が好ましい。
【0070】
本発明の活性エネルギー線重合性樹脂組成物は、さらに、必要に応じて、増感剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、無機フィラー、接着付与剤、非反応性樹脂、などの添加剤を加えてもよい。
【0071】
本発明における活性エネルギー線重合性樹脂組成物は、好ましくは、コート剤又は接着剤の用途で使用される。代表的に、樹脂組成物は、常法に従い適当な方法で、基材の片面、または両面に塗工され、次いで重合硬化されることによって、樹脂層を形成する。本実施形態において、樹脂層の膜厚は、積層体の用途に応じて設定される。
【0072】
例えば、上記樹脂組成物を、ハードコートフィルム、又は偏光フィルム等の光学素子用積層体の用途で使用する場合は、上記樹脂組成物を薄膜塗工する。塗工によって形成される上記樹脂層の厚さは、0.1〜6μmが好ましく、0.1μm〜3μmがより好ましい。樹脂層の厚さを0.1μm以上にすることによって、樹脂組成物をコート剤又は接着剤として使用した場合に、十分な密着性又は接着力を得ることが容易である。一方、樹脂層の厚さが6μmを超えると、密着性又は接着力等の特性において変化は見られない場合が多い。
【0073】
活性エネルギー線の照射に用いる光源は、波長400nm以下に発光分布を有し、用いる光酸発生剤や増感剤の吸収領域の光を発するものであれば特に限定されない。たとえば、水銀ランプ、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起ランプ、メタルハライドランプ、LEDランプなどが挙げられる。
【0074】
例えば、本発明の活性エネルギー線重合性樹脂組成物を、各種基材の片面または両面に塗布し、必要に応じて加熱乾燥後、紫外線等の活性エネルギー線を照射して硬化させることで、目的の積層体を得ることができる。基材としては、たとえば、ガラス、セラミック、ポリカーボネート、ポリエステル、ウレタン、アクリル、ポリアセテートセルロース、ポリアミド、ポリイミド、ポリスチレン、エポキシ樹脂、ポリオレフィン、ポリシクロオレフィン、ポリビニルアルコール、ステンレス等の各種金属、などが挙げられる。
【0075】
また、基材の上に本発明の活性エネルギー線重合性樹脂組成物を塗布し、さらにその上に、別の組成物を塗布する、あるいは、別の基材を貼り合わせる、などの方法で積層構造を形成してもよい。このとき、別の組成物を塗布する、あるいは、別の基材を貼り合わせる、などの前に紫外線等の活性エネルギー線を照射してもよいし、塗布あるいは貼り合わせ後に照射してもよい。
【0076】
本発明の活性エネルギー線重合性樹脂組成物を基材に塗工する方法としては、特に制限は無く、マイヤーバー、アプリケーター、刷毛、スプレー、ローラー、グラビアコーター、ダイコーター、マイクログラビアコーター、リップコーター、コンマコーター、ナイフコーター、リバースコ−ター、スピンコーター等種々の塗工方法が挙げられるが、薄膜塗工が可能であれば、特に制限はない。
【0077】
本発明の活性エネルギー線重合性樹脂組成物は、さらに光学用の光硬化性接着剤として好適である。即ち、フィルム状基材である光学フィルムと該光学フィルムの少なくとも一方の面に位置する接着層とを具備する積層体の形成に使用されることが好ましい。本発明の光学フィルムの積層体は、以下のようにして得ることができる。フィルム状基材である光学フィルムの片面に光硬化性接着剤を塗工し、別の光学フィルムを光硬化性接着層の表面に積層したり、更にこの積層体の片面や両面に光硬化性接着剤を塗工し、更に別の光学フィルム、ガラス、あるいは光学成形体に積層したりすることによって、光学用積層体を得ることができる。光硬化性接着剤の光硬化反応は、光硬化性接着剤の塗工時、あるいは積層する際、さらには積層した後に活性エネルギー線を照射して進行するが、積層した後に活性エネルギー線を照射して光硬化反応を進めることが好ましい。
【0078】
本発明における光学用の積層体としては、上記の各種プラスチックフィルムのうち、主に光学用途にて用いられる光学フィルムが好適に使用される。光学フィルムとしては、上記プラスチックフィルムに特殊な処理を施されたものであり、光学的機能(光透過、光拡散、集光、屈折、散乱、HAZE等の諸機能)を有するものが光学フィルムと称されている。これらの光学フィルムは単独で、または数種の光学フィルムを接着剤で多層に積層されて光学用の積層体として使用される。例えば、偏光フィルム、位相差フィルム、楕円偏光フィルム、反射防止フィルム、光拡散フィルム、輝度向上フィルム、プリズムフィルム(プリズムシートともいう)、導光フィルム(導光板ともいう)等が挙げられる。偏光フィルムは、偏光板とも呼ばれ、ポリビニルアルコール系偏光子の両面を2枚のアセチルセルロース系フィルムであるトリアセチルセルロース系保護フィルム(以下、「TACフィルム」という)や、ポリビニルアルコール系偏光子の片面や両面をノルボルネン系フィルムであるシクロオレフィ系フィルム、アクリル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム等で挟んだ多層構造からなるシート状の積層体である。
【0079】
本発明の偏光板は、より具体的には、以下のようにして得ることができる。
(I)第1の保護フィルムの一方の面に、光硬化性接着剤を塗工し、第1の硬化性接着剤層を形成し、第2の保護フィルムの一方の面に、光硬化性接着剤を塗工し、第2の光硬化性接着剤層を形成し、次いで、ポリビニルアルコール系偏光子の各面に、第1の光硬化性接着剤層及び第2の硬化性接着剤層を、同時に/または順番に重ね合わせた後、活性エネルギー線を照射し、第1の硬化性接着剤層及び第2の光硬化性接着剤層を硬化することによって製造する方法。
【0080】
(II)ポリビニルアルコール系偏光子の一方の面に、光硬化性接着剤を塗工し、第1の光硬化性接着剤層を形成し、形成された第1の光硬化性接着剤層の表面を第1の保護フィルムで覆い、次いでポリビニルアルコール系偏光子の他方の面に、光硬化性接着剤を塗工し、第2の光硬化性接着剤層を形成し、形成された第2の光硬化性接着剤層の表面を第2の保護フィルムで覆い、活性エネルギー線を照射し、第1の光硬化性接着剤層及び第2の光硬化性接着剤層を硬化することによって製造する方法。
【0081】
(III)第1の保護フィルムとポリビニルアルコール系偏光子を重ねた端部および、ポリビニルアルコール系偏光子の第1の保護フィルムがない面に重ねた第2の保護フィルムの端部に光硬化性接着剤をたらした後、ロールの間を通過させ各層間に接着剤を広げる。次に活性エネルギー線を照射し、光硬化性接着剤を硬化させることによって製造する方法等があるが、特に限定するものではない。
【0082】
本発明における不飽和脂環式エポキシエステル化合物は、優れた硬化性を有し、耐熱性と高透明性を兼ね備えている。そのため、特に透明性が求められる光学部材、たとえば、液晶テレビ、プラズマテレビ、携帯電話、携帯ゲーム機、携帯音楽プレイヤー、デジタルカメラ等のディスプレイに用いられる、反射防止膜、偏光板、光散乱膜、指紋付着防止膜、光学補償フィルム、拡散板などの各部材、太陽電池パネル、窓ガラス用表面保護フィルム、木材、紙、コンクリート、アスファルト、表面コーティング、インキ用バインダー、粘接着剤、プライマー、封止材として使用することができる。
【実施例】
【0083】
以下に実施例をもって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り「%」は「重量%」を、「部」は「重量部」を意味する。
【0084】
実施例中のNMR測定はすべて、JEOL社製のJNM−ECX400Pを用いて
1H−NMR測定をCDCl
3中で行った。
【0085】
合成例1
攪拌機、温度計、ガス導入管を備えた反応容器に、下記化合物E 146部、4−メトキシフェノール0.9部、トリメチルベンジルアンモニウムクロリド7部を仕込み、120℃で攪拌した。空気を通じながらアクリル酸55部をトルエン200部中に加えた溶液を1時間かけて滴下し、すべて加えた後そのまま120℃で3時間反応させた。
1H−NMRでアクリル酸が消失しているのを確認した。反応溶液を十分冷却した後、反応溶液を分液漏斗に移し、ここに酢酸エチル300部、水300部を加え分相した。有機相をさらに水300部、飽和食塩水300部で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレーターで酢酸エチルを留去した。不飽和脂環式エポキシエステル化合物(1)は200部得られた。
【0086】
化合物E
【化14】
【0087】
合成例2
攪拌機、温度計、ガス導入管を備えた反応容器に、下記化合物F 146部、4‐メトキシフェノール0.9部、トリメチルベンジルアンモニウムクロリド7部を仕込み、120℃で攪拌した。空気を通じながらアクリル酸55部をトルエン200部中に加えた溶液を1時間かけて滴下し、すべて加えた後そのまま120℃で3時間反応させた。
1H−NMRでアクリル酸が消失しているのを確認した。反応溶液を十分冷却した後、反応溶液を分液漏斗に移し、ここに酢酸エチル300ml、水300mlを加え分相した。有機相をさらに水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレーターで酢酸エチルを留去した。不飽和脂環式エポキシエステル化合物(2)は200部得られた。
【0088】
化合物F
【化15】
【0089】
合成例3
攪拌機、温度計、ガス導入管を備えた反応容器に、下記化合物G 142部、4−メトキシフェノール1.0部、トリメチルベンジルアンモニウムクロリド7.4部を仕込み、120℃で攪拌した。空気を通じながらアクリル酸57部をトルエン200部中に加えた溶液を1時間かけて滴下し、すべて加えた後そのまま120℃で3時間反応させた。
1H−NMRでアクリル酸が消失しているのを確認した。反応溶液を十分冷却した後、反応溶液を分液漏斗に移し、ここに酢酸エチル300ml、水300mlを加え分相した。有機相をさらに水および飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレーターで酢酸エチルを留去した。不飽和脂環式エポキシエステル化合物(3)は210部得られた。
【0090】
化合物G
【化16】
【0091】
合成例4
合成例1でアクリル酸の代わりにメタクリル酸を用いた以外は合成例1と同様にして化合物(4)を作製した。
【0092】
合成例5
合成例2でアクリル酸の代わりにメタクリル酸を用いた以外は合成例2と同様にして化合物(5)を作製した。
【0093】
合成例6
合成例3でアクリル酸の代わりにメタクリル酸を用いた以外は合成例3と同様にして化合物(6)を作製した。
【0094】
合成例7
攪拌機、温度計、ガス導入管を備えた反応容器に、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル化学社製2021P)119部、4−メトキシフェノール1.3部、トリメチルベンジルアンモニウムクロリド10部を仕込み、120℃で攪拌した。空気を通じながらアクリル酸78部をトルエン200部中に加えた溶液を1時間かけて滴下し、すべて加えた後そのまま120℃で3時間反応させた。
1H−NMRでアクリル酸が消失しているのを確認した。反応溶液を十分冷却した後、反応溶液を分液漏斗に移し、ここに酢酸エチル300ml、水300mlを加え分相した。有機相をさらに水および飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレーターで酢酸エチルを留去した。不飽和脂環式エポキシエステル化合物(7)は286部得られた。
【0095】
配合例1
不飽和脂環式エポキシエステル化合物として化合物(1)を50部、4−ヒドロキシブチルアクリレート30部、
イソボルニルアクリレート20部を配合しモノマー組成物を作製した。さらに、2,4,6−トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイト゛(BASF社製,DAROCUR TPO)3部を配合し、活性エネルギー線重合性樹脂組成物を作製した。
【0096】
配合例2〜6
配合例1のモノマー組成物を下記表1のように配合し、モノマー組成物を作製した以外は実施例1と同様にして各測定を行った。表1中の4HBAは4−ヒドロキシブチルアクリレート、IBXAはイソボルニルアクリレートを表す。
【0097】
配合例7
不飽和脂環式エポキシエステル化合物として化合物(1)を50部、4−ヒドロキシブチルアクリレート30部、
3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート20部を配合し樹脂組成物を作製した。さらに、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル-フォスフィンオキサイト゛(BASF社製,DAROCUR TPO)3部、p-フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウムPF
6塩(サンアプロ社製,CPI110P)2部を配合し、活性エネルギー線重合性樹脂組成物を作製した。配合例1と同様にして各測定を行った。
【0098】
配合例8〜12
配合例1のモノマー組成物を下記表1のように配合し、モノマー組成物を作製した以外は実施例1と同様にして各測定を行った。表1中の4HBAは4−ヒドロキシブチルアクリレート、2021Pは3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートを表す。
【0099】
配合例13
合成例7で作製した芳香環が含まれない不飽和脂環式エポキシエステル化合物である(7)を使用した他は配合例1と同様に試料を作製、評価を行った。
【0100】
配合例14
脂環式骨格が含まれないビスフェノールA型のエポキシアクリレート(共栄社製 エポキシエステル3000A)を使用した他は配合例1と同様に試料を作製、評価を行った。
【0101】
【表1】
【0102】
<積層体Aの製造例>
[実施例1〜12][比較例1、2]
得られた樹脂組成物を活性エネルギー線重合性接着剤として使用して、以下の積層体を作成した。
【0103】
透明フィルム(H)である保護フィルム(1)として、日本ゼオン社製 紫外線吸収剤を含有しないポリノルボルネン系フィルム:商品名「ZF−14」(厚み100μm)を用い、保護フィルム(2)として、三菱レイヨン社製 紫外線吸収剤を含有しないポリアクリル系フィルム:商品名「HDB−002」(厚み50μm)を使用し、それぞれその表面に300W・min/m
2 の放電量でコロナ処理を行い、表面処理後1時間以内に、表2に示す活性エネルギー線重合性接着剤をワイヤーバーコーターを用いて膜厚4μmとなるように塗工し、接着層を形成し、接着層との間に上記のポリビニルアルコール系偏光子を挟み、保護フィルム(1)/接着層/PVA系偏光子/接着層/保護フィルム(2)からなる積層体を得た。
【0104】
保護フィルム(1)がブリキ板に接するように、この積層体の四方をセロハンテープで固定し、ブリキ板に固定した。
【0105】
活性エネルギー線照射装置(東芝社製 高圧水銀灯)で最大照度300mW/cm
2、積算光量300mJ/cm
2の紫外線を保護フィルム(2)側から照射して、偏光板を作製した。
【0106】
得られた積層体(偏光板)について、剥離強度、打ち抜き加工性、収縮率、耐熱性及び耐熱黄変性を以下の方法に従って求め、結果を同様に表2に示した。
【0107】
《剥離強度》
接着力は、JIS K6 854−4 接着剤−剥離接着強さ試験方法−第4部:浮動ローラー法に準拠して測定した。
【0108】
即ち、得られた偏光板を、25mm×150mmのサイズにカッターを用いて裁断して測定用サンプルとした。サンプルを両面粘着テープ(トーヨーケム社製DF8712S)を使用して、ラミネータを用いて金属板上に貼り付けて、偏光板と金属板との測定用の積層体を得た。測定用の積層体の偏光板には、保護フィルムと偏光子の間に予め剥離のキッカケを設けておき、この測定用の積層体を23℃、相対湿度50%の条件下で、300mm/分の速度で引き剥がし、剥離力とした。この際、ポリビニルアルコール系偏光子と保護フィルム(1)、及びポリビニルアルコール系偏光子と保護フィルム(2)との双方の剥離力を測定した。この剥離力を接着力として4段階で評価した。「△」評価以上の場合、実際の使用時に特に問題ない。
【0109】
(評価基準)
◎:剥離不可、あるいは偏光板破壊
○:剥離力が2.0(N/25mm)以上〜5.0(N/25mm)未満。
△:剥離力が1.0(N/25mm)以上〜2.0(N/25mm)未満。
×:剥離力が1.0(N/25mm)未満。
【0110】
《打ち抜き加工性》
ダンベル社製の100mm×100mmの刃を用い、作製した偏光板を保護フィルム(1)側から打ち抜いた。
【0111】
打ち抜いた偏光板の、周辺の剥離距離を定規で測定し、以下の4段階で評価した。「△」評価以上の場合、実際の使用時に特に問題ない。
【0112】
(評価基準)
○:1mm以下
△:1〜3mm
×:3mm以上
【0113】
《収縮率》
上記偏光板小片を60℃−dryと60℃−90RH%の恒温恒湿機中に放置し、60時間後の延伸方向の縮み量を測定し、元の長さ(100mm)に対する縮み量の割合を収縮率とし求め、以下の3段階で評価をした。
【0114】
なお、「dry」とは、湿度調整機能付のオーブンで、温度のみコントロールし、湿度のコントロールを行わなかった場合の試験条件である。「△」評価以上の場合、実際の使用時に特に問題ない。
【0115】
(評価基準)
○:収縮率が0.2%以下
△:収縮率が0.2%より大きくて0.4%以下
×:収縮率が0.4%を超える。
【0116】
《耐熱性》
各実施例と比較例で得られた偏光板を、50mm×40mmの大きさに裁断し、80℃−dryおよび100℃−dryの条件下で、それぞれ1000時間暴露した。暴露後偏光板の端部の剥がれの有無を目視にて、以下の3段階で評価をした。「△」評価以上の場合、実際の使用時に特に問題ない。
【0117】
(評価基準)
◎:100℃−dryの条件下でも剥がれが全く無し
○:80℃−dry条件下で剥がれが全く無し
△:80℃−dry条件下で1mm未満の剥がれあり
×:80℃−dry条件下で1mm以上の剥がれあり
【0118】
《耐熱黄変性》
各実施例と比較例で得られた偏光板を、50mm×40mmの大きさに裁断し、80℃−dryの条件下で、1000時間暴露した。暴露後偏光板の色差を測定し、ΔYを以下の3段階で評価をした。「△」評価以上の場合、実際の使用時に特に問題ない。
【0119】
(評価基準)
○:0.1未満
△:0.1以上0.5未満
×:0.5以上
【0120】
表2
【表2】
【0121】
比較例1の耐熱性が著しく悪い結果となった。これは芳香環を含まない脂肪族骨格であるためと考えられる。
【0122】
比較例2の耐熱黄変性が著しく悪い結果となった。芳香環に直接へテロ原子が隣接する骨格は着色しやすいことが知られており、それを反映する結果になったと推測される。
【0123】
以上の結果から、本願発明の不飽和脂環式エポキシエステル化合物を含有する活性エネルギー線重合性樹脂組成物を用いることで、耐熱性と透明性(耐熱黄変性で着色が少ない)を両立させることができた。