(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記データ記録手段は、前記温度センサで検出される温度が前記メモリに既に記録されているデータの温度と異なるとき、そのとき前記温度データと前記出力データを前記メモリに記録することを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の温度補正装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1実施形態であるセンサ出力の温度補正装置が適用された手ブレ補正機能付きカメラの構成を示すブロック図である。なお、本図には、発明に係る構成のみが模式的に示される。
【0015】
本実施形態のカメラ10は、例えばカメラ本体11に鏡筒12を着脱可能なデジタル一眼レフカメラである。また本実施形態では、鏡筒12内に手ブレ補正機構13が設けられる。すなわち、ブレ補正用の補正レンズ14を備えた手ブレ補正機構13は、撮像レンズ15A、15Bの間に配置される。撮像レンズ15Aから入射した光は、光軸Lに沿って補正レンズ14、撮像レンズ15Bを介してカメラ本体11の撮像素子16へと導かれる。
【0016】
カメラ本体11および鏡筒12内にはそれぞれカメラCPU17、レンズCPU18が設けられる。カメラCPU17には、メインスイッチ19、測光スイッチ20、レリーズスイッチ21、タイマを含む時計50が接続されており、電源ラインおよびグランドとともに、レンズマウント(図示せず)の複数の電極を通して、レンズCPU18に接続される。なお、カメラCPU17は、カメラ全体の様々な制御を行うもので、この他にも図示しない様々なデバイスに接続される。
【0017】
鏡筒12には、手ブレ補正制御のオン/オフを設定する手ブレ補正スイッチ22が設けられ、手ブレ補正スイッチ22はレンズCPU18に接続される。鏡筒12内には、光軸Lに垂直なカメラの縦軸、横軸に沿ったY軸、X軸周りの回転角速度を検出する角速度センサ23X、23Yが設けられる。各角速度センサ23X、23Yで検出された信号は、レンズCPU18へ入力され、手ブレ補正制御がオンのとき、レンズCPU18は角速度センサ23X、23Yで検出された各軸周りの角速度、および焦点距離などのレンズ情報に基づき、手ブレを相殺するために補正レンズ14が移動すべきX軸、Y軸方向の目標位置を算出する。
【0018】
補正レンズ14は、例えば補正レンズ14を保持する可動部に設けられるコイル(図示せず)と鏡筒12の固定部に設けられるヨークとの間の電磁相互作用により駆動され、コイルへの電流供給はX方向駆動制御部24XおよびY方向駆動制御部24Yによって制御される。補正レンズ14を保持する可動部には、例えばホール素子などを用いた位置センサ25X、25Yが設けられ、補正レンズ14の位置が検出される。検出された補正レンズ14の位置は、レンズCPU18へとフィードバックされ、レンズCPU18は、角速度センサ23X、23Yの信号に基づき算出された補正レンズ14の目標位置と位置センサ25X、25Yから得られた現補正レンズ14の位置とからコイルへの電流供給量を算出し、X方向駆動制御部24XおよびY方向駆動制御部24Yへと出力する。
【0019】
また、鏡筒12には温度センサ26とメモリ51が設けられ、温度センサ26の検出信号はレンズCPU18に入力される。検出温度は後述するように、角速度センサ23X、23Yからの角速度信号(ジャイロ出力)とともにメモリ51に記録可能である。またレンズCPU18の通信ポートと、カメラCPU17の通信ポートは、レンズマウントの電極を通して接続され、両者の間では後述するようにデータ通信が行われる。
【0020】
次に
図2〜
図4を参照して、本実施形態における手ブレ補正について説明する。
図2は、手ブレによるカメラの動きとX軸、Y軸の関係を模式的に示す斜視図であり、
図3は、カメラ本体11、補正レンズ14、X軸、Y軸の関係を示す正面図である。
【0021】
図2に示されるように、カメラでの撮影においては、垂直軸(Y軸)周りの回転(ヨー)により横方向(X軸方向)へ移動する像ブレが発生し、水平軸周りの回転(ピッチ)により縦方向(Y軸方向)へ移動する像ブレが発生する。したがって、Y軸周りの回転運動を検出することでX軸方向の像ブレを相殺するための補正レンズ14のX軸方向へのシフト量が決定し、X軸周りの回転運動を検出することでY軸方向の像ブレを相殺するための補正レンズ14のY軸方向へのシフト量が決定する。
【0022】
図4は、レンズCPU18において実行される手ブレ補正制御のブロック図である。
角速度センサ23X、23Yの各ジャイロで得られたY軸周り、X軸周りのアナログ角速度信号(ジャイロ出力)は、レンズCPU18のA/Dポート(A/D1、A/D2)に入力され、A/D演算部33X、33Yにおいてデジタル角速度信号VX、VYに変換される。角速度信号VX、VYは、それぞれ加え合わせ点34X、34Yにおいて、制御部39から出力されるオフセット値VVX、VVY(後述)が引かれ、ハイパスフィルタ(HPF)部35X、35Yに入力される。オフセット処理されたY軸、X軸周りの角速度信号(VX−VVX,VY−VVY)は、それぞれハイパスフィルタ(HPF)部35X、35Yにおいて、制御部39からの切替制御値(tt)に基づき所定の時定数でのフィルタ処理が施された後、角度演算部36X、36Yへ入力される。
【0023】
Y軸、X軸周りの角速度(VX−VVX,VY−VVY)は、角度演算部36X、36Yにおいて積分され、Y軸、X軸周りの回転角度(ヨー角θX、ピッチ角θY)が算出される。レンズ駆動位置計算部37X、37Yでは、ヨー角、ピッチ角、およびメモリに保存された焦点距離fなどのレンズ情報38に基づいて、像ブレを相殺するためのX方向、Y方向における補正レンズ14の駆動位置が算出される。なお、角速度信号(ジャイロ出力)のデジタル信号VX、VYは、後述するキャリブレーション処理では直接制御部39にも入力される。
【0024】
ポート4から入力される手ブレ補正スイッチ22がオン状態の時には、制御部39はレンズ駆動位置計算部37X、37Yにおいて算出されたX軸方向への駆動位置X、Y軸方向への駆動位置Yを補正レンズ14の目標位置とし、駆動位置X、駆動位置Yと補正レンズ14の現在位置X、現在位置Yの偏差を算出し、これらに対して例えばPID演算などの処理を自動制御演算部40X、40Yにおいて施す。自動制御演算部40X、40Yからの出力は、ポート1、ポート2を通してX方向駆動制御部24X、Y方向駆動制御部24Yへ出力され、手ブレ補正機構13に設けられたX方向コイル41X、Y方向コイル41Yへ供給される電流が制御される。
【0025】
手ブレ補正機構13の可動部の位置、すなわち補正レンズ14の現在のX軸、Y軸方向の位置は、ホールセンサ(位置センサ)25X、25Yからの信号に基づきX方向駆動制御部24X、Y方向駆動制御部24Yにおいて算出され、現在のX位置信号、Y位置信号としてA/Dポート(A/D3、A/D4)を通してレンズCPU18に入力される。そして、A/D演算部43X、43Yにおいてデジタル信号の現在位置X、現在位置Yへ変換され、フィードバックされる。これにより、手ブレ補正スイッチ22がオンされているときには、角速度センサ23X、23Yの出力に基づいて補正レンズ14の目標とする駆動位置が算出され、この目標値に基づき補正レンズ14がX軸、Y軸方向に移動される。
【0026】
なお、レンズCPU18は、手ブレ補正スイッチ22のオン/オフ状態に基づいて、図示しないロック機構を制御し、手ブレ補正機構(手ブレ補正レンズ)のロック状態のオン/オフを制御する。
【0027】
次に
図1、
図4、
図5を参照して、カメラCPU17およびレンズCPU18で実行される第1実施形態のキャリブレーション処理について説明する。なお、
図5は第1実施形態のキャリブレーション処理のフローチャートであり、ここでは鏡筒12はカメラ本体11に装着されていることを前提とし、第1実施形態のキャリブレーション処理は、レンズCPU18で実行される。また、以下のキャリブレーション処理は、各角速度センサ23X、23Yに対して行われる。
【0028】
カメラ本体11のメインスイッチ19がオンされると、ステップS100において、角速度センサ23X、23Yから出力されるジャイロ信号のサンプリングが開始され、ステップS102では、検出されるジャイロ信号に基づき、レンズ駆動位置計算部37X、37Yで手ブレ量(補正レンズ14の駆動位置)が演算される。
【0029】
次にステップS104において、現在カメラが静止状態にあるか否かが判定される(三脚検知)。静止状態にあるか否かは、例えば角速度センサ23X、23Yからのジャイロ信号の変動幅が所定値以内にあるか否かにより判定される。例えば、所定時間以上、ジャイロ信号の変動幅が所定値を超えなければ、カメラは静止状態にあると判定し、それ以外の場合は静止状態にないと判定する。なお、カメラ本体11や鏡筒12が、加速度センサ等、カメラの動きを検知できる別のセンサを備えるのであれば、それらのセンサの出力に基づき静止状態を判定してもよい。
【0030】
ステップS104において、静止状態にないと判定されると、ステップS116において、ステップS102で算出された補正レンズ14の駆動位置に基づき、前述した手ブレ補正機構(アクチュエータ)13の駆動が行われ、処理は再びステップS102へと戻される。一方、ステップS104において静止状態にあると判定されると、ステップS106へ進み、温度センサ26からの信号に基づき現時の雰囲気温度が検出される。
【0031】
このとき検出温度は、過去にメモリ51にジャイロ出力とともに記録された温度と比較され、その値がこれまでに記録されている温度と異なる場合(例えば所定値以上の差がある場合)には、ステップS108において、このときに検出される角速度信号(デジタルのジャイロ出力)VX、VYとともにメモリ51に記録される。なお、ステップS106で比較されるデータは、同様の処理により、過去にメモリ51に記録されたデータ、あるいは工場出荷前に記録されたデータである。なお、ステップS106において、既に同じ温度の記録があると判定された場合には、処理はステップS102に戻され、同様の処理が繰り返される。
【0032】
ステップS108で、データの記録が行われると、ステップS110において、メモリ51に記録された温度および角速度信号VX、VYから、任意の温度でのジャイロ出力のオフセット値VVX、VVYを算出するための基準値温度補正式(後述)が更新され、現時の温度と、更新された基準温度補正式からオフセット値VVX、VVYが設定され、同オフセット値が加え合わせ点34X、34Yへと出力される。
【0033】
ステップS112では、再びカメラが静止状態にあるか否かがステップS104と同様の方法で判定され、静止状態になければ、処理をステップS102に戻し、静止状態であれば、ステップS114において温度センサ26で検出される温度に変化があったか否かが判定される。温度変化があったと判定された場合には、ステップS106に戻り、なかったと判定された場合にはステップS112に戻る。すなわち、温度変化がある場合には、データを更に追加する処理を行い、そうでない場合には、静止状態が継続しているかのチェックと温度変化のチェックを繰り返す。
【0034】
なお、第1実施形態では、以上の処理がカメラのメインスイッチ19がオンの間、例えば約1mS程度の間隔で繰り返される。なお、ステップS116のアクチュエータの駆動は、手ブレ補正スイッチ22がオン状態のときのみ行われ、オフのときにはアクチュエータの駆動を行わずに、ステップS102へと処理は戻る。
【0035】
次に
図6、
図7を参照して、本実施形態の基準値温度補正式およびその更新方法について説明する。
図6、
図7は、角速度センサの出力(ジャイロ出力)の温度特性を例示する曲線Sと、基準値温度補正式とメモリ51に記録される検出データの関係を示すグラフであり、横軸は温度、縦軸はジャイロ出力のデジタル値である。
【0036】
図6は、工場出荷前に所定温度(10℃)で計測される点Aと、出荷後、最初に行われたキャリブレーション処理で検出された点Bに基づき基準値温度補正式を算出したもので、直線M1がこのときの基準値温度補正式に対応する。なお本実施形態では、工場出荷時に1点の温度データが与えられ、その後、キャリブレーション処理で静止状態が検出される度に、データが随時追加される(ただし、上記説明では同じ温度のデータは改めて取得しない)。
【0037】
図6において、データはA、Bの2点しかなく基準値温度補正式は一次式である。一方、
図7では、データはA、B、Cの3点に増えており、基準値温度補正式に曲線M2が用いられる。曲線M2は、例えば2次関数である。一般にジャイロ出力の温度特性曲線Sは、使用範囲においては、2次式に近いため、2次式あるいは3次式などの多項式が用いられる。ただし、対数関数や指数関数など他の関数やその組み合わせを用いることも可能である。また本実施形態においてデータの数は経時的に増加する。したがって、基準温度補正式に所定の関数形を与え、最小二乗法などを用いてフィッティングを行うことも可能である。また本実施形態では、2点データまでは1次式、3点データ以上では2次式を用いるなど、補正式の関数形をデータ数に応じて変更することで、温度補正の精度を高めている。
【0038】
次に
図1、
図4および
図8のフローチャートを参照して第1実施形態のハイパスフィルタ設置処理1について説明する。
【0039】
ハイパスフィルタ(HPF)設定処理1は、例えばタイマ割り込み処理として、キャリブレーション処理に並列して繰り返し実行される。そしてメインスイッチ19がオンされた際には、例えば
図5のキャリブレーション処理に先んじて実行される。
【0040】
ハイパスフィルタ設定処理1では、まずステップS200においてメモリ51に記憶されている温度データの記憶点の数(データ数)が、1、2、3以上の何れかであるかが判定される。記憶点の数が1のときには、ステップS202において、ハイパスフィルタ35X、35Yの時定数を所定値H1に設定して本処理を終了する。記憶点の数が2のときには、ステップS204においてハイパスフィルタ35X、35Yの時定数をH1よりも大きい所定値H2に設定して本処理を終了する。そして記憶点の数が2以上のときには、ステップS206において、ハイパスフィルタ35X、35Yの時定数をH2よりも大きい所定値H3に設定して本処理を終了する。なお、ハイパスフィルタ35X、35Yの時定数の切り替えは、例えば制御部39からの切替制御値(tt)により行われる。
【0041】
すなわち、本実施形態では、データ点数が増加して、各角速度センサ23X、23Yに対する温度補正の精度が上がると、ハイパスフィルタ35X、35Yの時定数を大きく設定し、各フィルタの通過帯域の周波数が下げられる。これにより手ブレに起因する信号成分がフィルタで遮断され難くなり、より高い精度での手ブレ補正が可能性になる。なお、静止状態が検出されるときには、その後電源がオフされるまでの間、温度が変化する可能性は低い。しかもオフセット値の補正は現在の温度に適合している可能性が高い。したがって、静止状態が(
図5のステップS104、S112において)検出された場合には、電源がオフされるまでの間、ハイパスフィルタの時定数を長く設定してもよい。
【0042】
以上のように、第1実施形態によれば、工場出荷時には、温度補正用のデータを1点しか与えなくとも、出荷後、簡略な構成でレンズ(カメラ)が自らキャリブレーションを行い、出力が温度に影響されるセンサの温度補正精度を高め、高精度での手ブレ補正が可能となる。
【0043】
なお、第1実施形態では、同じ温度のデータを取得しないことで、なるべくデータが広い温度範囲に分布するようにし、データ量を抑えながらも補正の精度を高めた。しかし、
図5においてステップS106を省くことも可能であり、この場合には、データが同一温度近傍で集中することは避けられないが、センサの経時的な変化にも対応することができる。
【0044】
次に
図1、
図4および
図9のフローチャートを参照して第2実施形態のハイパスフィルタ設置処理2について説明する。第2実施形態は、第1実施形態のハイパスフィルタ処理1をハイパスフィルタ処理2に置き換えたもので、それ以外の構成は第1実施形態と同様である。したがって、第1実施形態と同様の構成に関してはその説明は省略する。
【0045】
ハイパスフィルタ設定処理2では、まずステップS300において、メモリ51に記憶されている温度データの記憶点の数(データ数)が、1、あるいは2以上であるかが判定される。記憶点の数が1のときには、ステップS302において、ハイパスフィルタ35X、35Yの時定数を所定値H1に設定して本処理を終了する。
【0046】
一方、記憶点の数が2以上のときには、ステップS304において、現在の温度Tが、T1<T<T2であればハイパスフィルタ35X、35Yの時定数をH1よりも大きい所定値H2に設定し、それ以外のときにはH1に設定する。ここでT1、T2は記憶された温度データの内、最も低い温度(T1)と最も高い温度(T2)にそれぞれ対応する。
【0047】
ステップS304において、ハイパスフィルタ35X、35Yの時定数が設定されると、ステップS306において温度データの記憶点数(データ数)が増加したか否かが判定され、増加していなければ本処理は終了する。データ数が増加している場合には、ステップS308において、新しく取得された温度(現在の温度)Tが温度T2と比べられる。そしてT>T2のときにはステップS310において、T2を現在の温度Tで置き換えてステップS304へと戻り、同様の処理が繰り返される。
【0048】
また、T>T2でないと判定されると、ステップS312においてT<T1であるか否か判定される。現温度TがT1よりも低いときには、ステップS304に戻り同様の処理が繰り返され、そうでないときには本処理は終了する。
【0049】
すなわち、第2実施形態では、
図5のステップS108で新しいデータが追加され、その温度が、これまでに記憶されている温度の何れよりも高い、または何れよりも低いときには、時定数をH2とする範囲を取得温度に合わせて拡大する。これはジャイロ出力のオフセット値の推定値が内挿によるときには、外挿によるときより精度が高いと考えられるので、時定数を大きくして、ハイパスフィルタ35X、35Yの通過帯域の周波数を下げ、手ブレに対する感度を高めている。
【0050】
次に
図1、
図4および
図10のフローチャートを参照して第3実施形態について説明する。第1、第2実施形態では、キャリブレーション処理は、メイン電源がオンされているときに実行された。しかし、第3実施形態では、メイン電源がオフされているときにキャリブレーション処理を行う。なお、以下の説明において、第1、2実施形態と同様の構成に関してはその説明は省略する。
【0051】
図10のフローチャートは、メインスイッチ19がオフされると開始される。ステップS400では、例えばカメラ本体11に設けられた時計50のタイマでの計数が開始され、ステップS402では、タイマを参照して電源オフしてから所定時間が経過したか否かが判定される。所定時間が経過すると、ステップS404において、角速度センサ(ジャイロ)23X、23Y、温度センサ26、レンズCPU18の電源がオンされ、ステップS406において、カメラが静止状態にあるか否かが判定される。なお、カメラが静止状態にあるか否かは、第1実施形態と同様の方法により行われる。
【0052】
静止状態にないと判定されるとステップS400に処理は戻り、時計50のタイマがリセットされ、新たに計数が開始される。一方、静止状態にあると判定された場合には、ステップS408において現在の温度がメモリ51に記憶されている過去のデータの温度と同じであるか否かが判定される。同じである場合には、処理はステップS400に戻り、タイマがリセットされ、新たに計数が開始される。
【0053】
現在の温度が過去のデータの温度とは異なるときには、ステップS410において、検出された温度と、このときのジャイロ出力のデジタル値がメモリ51に記録される。その後ステップS412において、更新されたデータ列に基づき、基準値温度補正式の更新が行われる。ステップS412の処理が終了すると、処理はステップS400に戻り、同様の処理が、メインスイッチ19がオンされるまで繰り返される。
【0054】
カメラの主電源がオフされているときには、一般的にカメラが静止状態にある確率が高いので、第3実施形態では、第1、第2実施形態と略同様の効果が得られるとともに、より効率的にデータの収集を行える。
【0055】
なお、第3実施形態では、主電源オフ後、所定の間隔で繰り返しキャリブレーション処理が実行されたが、主電源オフ後、所定時間経過後に1回のみキャリブレーション処理を実行する構成とすることもできる。また、時計を用いて、所定の時刻にキャリブレーション処理を実行する構成とすることもできる。例えば、1日の内の朝、昼、夜など、気温が大きく異なる複数の時間帯にキャリブレーション処理を実行する構成とすることも考えられる。また、深夜過ぎなどカメラが静止している可能性が高い時間帯に同処理を実行することも考えられ、これらを組み合わせることも可能である。また第3実施形態は、第1、第2実施形態と組み合わせることも可能である。
【0056】
本実施形態では、手ブレ補正スイッチがオンされていれば、電源がオンされている間(ライブ中)、常時手ブレ補正がなされているが、レリーズボタンが押されたときのみ手ブレ補正を行う構成とすることもできる。また本実施形態では時計がカメラ本体側に設けられたが、時計を鏡筒側に設けてもよい。
【0057】
本実施形態では、デジタルカメラのレンズシフト方式の手ブレ補正機構への適用を例に説明を行ったが、本発明はジャイロセンサを用いるのであれば、イメージ・センサ・シフト方式を採用する手ブレ補正機構など、他の手ブレ補正機構を採用したカメラにも適用でき、銀塩カメラにも適用できる。また本発明は、ミラーレスカメラやレンズ交換式ではないカメラ、例えばコンパクトカメラや、カメラ付き携帯電話やスマートフォン、ビデオカメラ、ゲーム機などにも適用できる。また、本発明の温度補正装置は、出力に温度ドリフトが含まれるセンサへの適用も考えられる。