(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を詳細に説明する。なお、発明の実施形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
図1乃至
図3に示すように、本実施形態に係る電動モータ1は、モータ部10aとインバータ部10bとを備えたインバータ一体型電動モータである。
モータ部10aは、モータ筐体11と、このモータ筐体11の収納部に収納されたロータコア12及びマグネット13とを備えている。また、モータ部10aは、モータ筐体11の内外に亘って延在し、かつ軸方向に互いに離間する2つのベアリング15,16を介してモータ筐体11に軸支されたシャフト14を備えている。そして、モータ部10aは、ロータコア12及びマグネット13より得られる回転力をシャフト14により外部へ伝達するように構成されている。
【0014】
モータ筐体11は、円形筒型形状からなり、金属製の材料で形成されている。モータ筐体11の側壁部の外側には、モータ部10aを外気により冷却するための複数の凸状フィン17が放射状に設けられている。
インバータ部10bには、電子装置としてのインバータモジュール(電力変換装置)20が搭載されている。インバータモジュール20は、電力を直流から交流に変換してモータ部10aに供給する電力変換回路を備えている。また、インバータモジュール20は、モータ部10aのシャフト14の回転数及びトルクなどの運転を制御する制御回路も備えている。
【0015】
インバータモジュール20は、
図1、
図4乃至
図6に示すように、配線基板23と、この配線基板23を収納する筐体としてのインバータ筐体21とを備えている。インバータ筐体21は、底部21a及び側壁部21bと、この底部21a及び側壁部21bで囲まれた収納部22と、底部21aとは反対側に設けられた開口部とを有している。インバータ筐体21は、モータ筐体11と同様に、円形筒型形状で形成されている。すなわち、収納部22は、インバータ筐体21をその深さ方向に向かって平面視したときの平面形状が円形状で形成されている。ここで、インバータ筐体21の深さ方向とは、底部21aと直交する方向、即ち厚さ方向、換言すれば高さ方向を意味する。
【0016】
インバータ筐体21は、側壁部21bの開口部側にシール部21cを有している。このシール部21cには、側壁部21bの外側にインバータ筐体21の外周に沿ってゴム状のオーリング28が設けられている。このシール部21cは、モータ筐体11の開口部内に挿入されている。すなわち、モータ筐体11とインバータ筐体21とは、モータ筐体11の開口部内にインバータ筐体21のシール部21cを挿入することによって直列に連結され、両者の連結部はシール部21cにより水密構造となる。このため、モータ筐体11の収納部及びインバータ筐体21の収納部22は密閉状態となる。また、インバータ筐体21は、インバータ筐体21がモータ筐体11と連結されることにより、収納部22が底部21a及び側壁部21bと共にモータ筐体11で囲まれた構造になる。
【0017】
インバータ筐体21及びモータ筐体11の各々は、導電性及び熱伝導性が良好な金属材料、例えばアルミダイキャスト(ADC)で形成されている。
配線基板23は、その厚さ方向において互いに反対側に位置する第1及び第2の面23x,23yを有している。また、配線基板23の平面形状は、インバータ筐体21の収納部22の平面形状に合わせて円形状で形成されている。配線基板23は、インバータ筐体21の収納部22の平面サイズよりも小さい平面サイズで形成されている。これは、後述するが、配線基板23とインバータ筐体21の側壁部21bとの間に隙間部40を設けるためである。配線基板23は、例えばガラスエポキシなどの樹脂からなる基材の表裏面に配線パターンが形成された構成になっている。
【0018】
配線基板23の第1及び第2の面23x,23yの各々には、電力変換回路や制御回路を構成する複数の電子部品24,25が実装されている。配線基板23の第1の面23xに実装された複数の電子部品24の中には、円柱形状の電解コンデンサ24aが含まれている。また、複数の電子部品24の中には、扱う電力が大きく、発熱量も大きい半導体装置としてのダイオード用半導体装置24b及びパワー半導体装置24cも含まれている。
電解コンデンサ24aは、ダイオード用半導体装置24b及びパワー半導体装置24cを含む他の電子部品24と比較して、配線基板23に実装した後の背丈、即ち配線基板23からその厚さ方向に突出する高さが極端に高くなっている。
【0019】
ダイオード用半導体装置24b及びパワー半導体装置24cは、配線基板23に実装した後の背丈が電解コンデンサ24aよりも低くなっている。ダイオード用半導体装置24bはダイオード素子が搭載された半導体チップを有している。パワー半導体装置24cは、IGBTやMOSFETなどのパワートランジスタからなるスイッチング素子が搭載された半導体チップを有している。このダイオード用半導体装置24b及びパワー半導体装置24cは、扱う電力が大きく、発熱量も大きいため、インバータモジュール20及びそれを備えた電動モータ1の熱に対する信頼性を高める上でインバータ筐体21に連結させることが有用である。
【0020】
インバータ筐体21は、配線基板23の周縁部を支持する複数の基板支持部26を有している。本実施形態では、4つの基板支持部26を有している。4つの基板支持部26の各々は、インバータ筐体21の側壁部21bから側壁部21bの内側に突出するようにして形成され、配線基板23が固定される基板固定部を有している。4つの基板支持部26の各々は、インバータ筐体21をその深さ方向に向かって平面視したとき、インバータ筐体21の中心を軸にして時計回りで90°ずらした位置に配置されている。即ち、4つの基板支持部26の各々は、インバータ筐体21の中心を直交して通る2つの直線状に配置されている。4つの基板支持部26の各々は、インバータ筐体21の内側において、例えばインバータ筐体21の底部21a及び側壁部21bと一体に形成されている。
【0021】
配線基板23は、インバータ筐体21の収納部22の中に4つの基板支持部26に支持された状態で収納されている。具体的には、配線基板23は、その第1の面23xがインバータ筐体21の底部21aと向かい合うと共に、インバータ筐体21の底部21a及び側壁部21bから離間するように4つの基板支持部26に支持された状態で収納部22内に収納されている。配線基板23は、その周縁部が4つの基板支持部26の各々の基板固定部に締結部材42によって締結固定されている。
配線基板23とインバータ筐体21の側壁部21bとの間には、上述した隙間部40が設けられている。この隙間部40は、配線基板23の外周に沿って環状に形成されている。
【0022】
インバータ筐体21の収納部22は、配線基板23を収納することにより、配線基板23を境にして配線基板23の第1の面23x側の第1の空間領域22aと、配線基板23の第2の面23y側の第2の空間領域22bとに区分けされる。第1の空間領域22aは、主に、インバータ筐体21の底部21a及び側壁部21bと、配線基板23とで周囲を囲まれている。第2の空間領域22bは、インバータ筐体21がモータ筐体11に直列に連結されているので、主に、インバータ筐体21の側壁部21bと、配線基板23と、モータ筐体11とで周囲を囲まれている。
インバータ筐体21の側壁部21bの外側には、インバータ部10bを外気により冷却するための複数の凸状フィン27が放射状に設けられている。
【0023】
インバータ筐体21は、
図1、
図4乃至
図7に示すように、底部21aからその上方の配線基板23に向かって突出し、かつ電解コンデンサ24aの先端(配線基板23側とは反対側の先端)よりも配線基板23側でダイオード用半導体装置24bが連結された突出部51を有している。また、インバータ筐体21は、詳細に図示していないが、突出部51と同様に、底部21aからその上方の配線基板23に向かって突出し、かつ電解コンデンサ24aの先端よりも配線基板23側でパワー半導体装置24cが連結された突出部52(
図5及び
図7参照)を有している。
【0024】
ここで、電解コンデンサ24aは、本発明の第1の電子部品に対応する。また、ダイオード用半導体装置24b及びパワー半導体装置24cは、本発明の第1の電子部品よりも高さ(背丈)が低い第2の電子部品に対応する。また、突出部51及び52は本発明の突出部に対応する。したがって、本実施形態では、主に、ダイオード用半導体装置24b及び突出部51について説明し、パワー半導体装置24c及び突出部52についての詳細な説明は省略する。
電解コンデンサ24aは、
図4に示すように、コンデンサ筐体の内外に亘って延在する2本のリード60を有し、この2本のリード60の各々は配線基板23に設けられたスルーホール電極23cに配線基板23の第1の面23x側から個別に挿入され、このスルーホール電極23cと半田45によって電気的にかつ機械的に接続されている。
【0025】
ダイオード用半導体装置24bは、
図4に示すように、主に、ダイオード素子が搭載された半導体チップ61と、半導体チップ61が固定された支持板62と、半導体チップ61を封止する封止体63と、封止体63の内外に亘って延在する複数のリード64とを有している。封止体63は例えばエポキシ系の熱硬化性樹脂で形成されている。
支持板62は、半導体チップ61が固定されたチップ固定面(図示せず)と、このチップ固定面とは反対側に位置する放熱面(図示せず)とを有し、この放熱面が封止体63から露出している。半導体チップ61は、例えば支持板62に対して電気的に絶縁された状態で支持板62のチップ固定面に固定されている。
【0026】
複数のリード64の各々は、封止体63の内部に位置する内部リード部が半導体チップ61の電極と電気的に接続されている。また、複数のリード64の各々は、封止体63の外部に位置する外部リード部が、封止体63の側面から突出する第1の部分64aと、この第1の部分64aから封止体63の厚さ方向に折れ曲がる第2の部分64bとを有している。即ち、複数のリード64の各々は、封止体63の外部において、L字形状に折り曲げ成形されている。
複数のリード64の各々の第2の部分64bの先端側は、配線基板23に設けられた複数のスルーホール電極23dに配線基板23の第1の面23x側から個別に挿入され、このスルーホール電極23dと半田45によって電気的にかつ機械的に接続されている。
支持板62及び複数のリード64の各々は、例えば熱伝導性及び電気導電性が良好な鉄、鉄−ニッケル合金、若しくは銅、或いは銅合金等の金属製材料で形成されている。
【0027】
パワー半導体装置24cは、ダイオード用半導体装置24bとはパッケージ形態が異なるが、主に、スイッチング素子が搭載された複数の半導体チップと、この半導体チップが固定された支持板と、半導体チップを封止する封止体と、この封止体の内外に亘って延在し、半導体チップの電極と電気的に接続された複数のリードとを有している。このパワー半導体装置24cにおいても、ダイオード用半導体装置24bと同様に、複数のリードの各々が封止体の外部においてL字形状に折り曲げ成形されている。また、支持板のチップ固定面とは反対側の放熱面が封止体から露出している。なお、パワー半導体装置24cは、複数の半導体チップを搭載しているので、パワーモジュールと呼称されることもある。
また、パワー半導体装置24cにおいても、複数のリードの各々の先端側が配線基板23に設けられた複数のスルーホール電極(図示せず)に配線基板23の第1の面23x側から個別に挿入され、このスルーホール電極と半田によって電気的にかつ機械的に接続されている。
【0028】
突出部51は、ダイオード用半導体装置24bが連結される部品連結面51aを有している。この部品連結面51aは、電解コンデンサ24aの先端(配線基板23側とは反対側の先端)よりも配線基板23側に位置している。本実施形態において、部品連結面51aは、インバータ筐体21の側壁部21bに対して略直交し、配線基板23の第1の面23xに対して略平行になっている。
突出部52は、詳細に図示していないが、パワー半導体装置24cが連結される部品連結面を有している。この突出部52の部品連結面も、突出部51の部品連結面51aと同様に、インバータ筐体21の側壁部21bに対して略直交し、配線基板23の第1の面23xに対して略平行になっている。
【0029】
ダイオード用半導体装置24bは、封止体63が熱伝導性部材46を介在して突出部51の部品連結面51aに連結されている。本実施形態のダイオード用半導体装置24bは、半導体チップ61が固定されるチップ固定面とは反対側に位置する放熱面が封止体63から露出する支持板62を有するパッケージ構造になっているので、支持板62の放熱面が熱伝導性部材46を介在して突出部51の部品連結面51aに間接的に連結されている。そして、ダイオード用半導体装置24bは、封止体63が突出部51の部品連結面51aに締結部材44によって締結固定されている。熱伝導性部材46としては、例えば、サーマルグリス、サーマルペースト、シリコングリス、ヒートシンクコンパウンドなどのペースト状熱伝導性物質やシート状に加工されたシート状熱伝導性物質を用いることができる。
【0030】
パワー半導体装置24cにおいても、ダイオード用半導体装置と同様に、封止体が熱伝導性部材46を介在して突出部52の部品連結面に間接的に連結されている。そして、パワー半導体装置24cは、封止体が突出部52の部品連結面に締結部材(図示せず)によって締結固定されている。
配線基板23には、インバータ筐体21の突出部51の部品連結面51aにダイオード用半導体装置24bを締結部材44で締結固定する際、締結部材44を回す工具を挿入するための貫通孔23bが設けられている。また、配線基板23には、インバータ筐体21の突出部52の部品連結面にパワー半導体装置24cを締結部材で締結固定する際、締結部材を回す工具を挿入するための貫通孔(図示せず)も設けられている。
【0031】
インバータ筐体21は、
図1、
図3、
図4、
図6及び
図8に示すように、インバータ筐体21をその深さ方向に向かって平面視したとき、突出部51と重畳する位置に底部21aから側壁部21bに亘って連通する溝部55を有している。このような溝部55が設けられた部分ではインバータ筐体21の突出部51における肉厚が薄くなっている。この溝部55は、後で詳細に説明するが、外気が風となって通流する風路として使用される。
溝部55は、インバータ筐体21の底部21aから側壁部21bに亘って延在すると共に底部21aから配線基板23側に傾斜する底面56(
図1、
図4及び
図6参照)を有している。本実施形態において、溝部55の底面56は、底部21aから側壁部21bに亘って直線状で形成されている。また、溝部55は、インバータ筐体21をその深さ方向に向かって平面視したとき、溝部55の幅方向に並列配置で複数設けられている(
図3及び
図8参照)。
【0032】
なお、溝部55は、突出部51と同様に、インバータ筐体21をその深さ方向に向かって平面視したとき、突出部52と重畳する位置にも設けられている。
なお、本実施形態のインバータモジュール20は、図示していないが、外部から電源供給及び制御信号を配線基板23に伝送するケーブルや、このケーブルをインバータ筐体21に挿入して水密保持する継手や、インバータ部10bからモータ部10aに電源供給及び制御信号を転送するケーブル等も備えている。
また、締結部材42,44としては、ボルトとナットとを組み合わせた部材、若しくはネジ部材を用いることができる。
【0033】
次に、配線基板23の組み付け手順について、
図4を用いて説明する。
まず、インバータ筐体21及び配線基板23を準備する。配線基板23には、電力変換回路や制御回路を構成する複数の電子部品24,25が実装されている。配線基板23の第1の面23x側には、背丈が高い円柱形状の電解コンデンサ24aが実装されている。一方、電解コンデンサ24aよりも背丈が低い電子部品のうち、発熱量が大きく、インバータ筐体21の突出部51,52に連結されるダイオード用半導体装置24b及びパワー半導体装置24cは実装されていない。
【0034】
次に、インバータ筐体21の突出部51の部品連結面51aに熱伝導性部材46を介在してダイオード用半導体装置24bを締結部材44で仮締結固定する。パワー半導体装置24cにおいても、ダイオード用半導体装置と同様に、インバータ筐体21の突出部52の部品連結面に熱伝導性部材を介在して締結部材で仮固定する。この仮固定において、ダイオード用半導体装置24bは、インバータ筐体21の基板支持部26の基板固定面に配線基板23を締結固定する際に、配線基板23のスルーホール電極23dにダイオード用半導体装置24bのリード64がスムーズに挿通されるように位置合わせが行われる。また、パワー半導体装置24cにおいても配線基板23のスルーホール電極にパワー半導体装置24cのリードがスムーズに挿通されるように位置合わせが行われる。
【0035】
次に、インバータ筐体21の底部21aに配線基板23の第1の面23xが向かい合う状態で配線基板23をインバータ筐体21の基板支持部26の基板固定面に締結部材42で締結固定する。この配線基板23の締結固定では、ダイオード用半導体装置24bのリード64を配線基板23のスルーホール電極23dに、そしてパワー半導体装置24cのリードを配線基板23の他のスルーホール電極に、それぞれ挿通させて行う。
次に、ダイオード用半導体装置24bを仮固定している締結部材44を緩めて、ダイオード用半導体装置24のリード64に加わっているストレスを解消した後、再度、締結部材44を締め付けて突出部51の部品連結面51aにダイオード用半導体装置24bを本締結固定する。この締結部材44の緩め及び締め付けは、配線基板23の貫通孔23bに工具を挿通させて行われる。この一連の作業は、パワー半導体装置24cにおいても行われる。
【0036】
次に、配線基板23のスルーホール電極23dと、このスルーホール電極23dに挿通されたダイオード用半導体装置24bのリード64とを配線基板23の第2の面23y側から半田45で電気的にかつ機械的に接続する。この半田付けは、パワー半導体装置23cにおいても同様に行う。これにより、インバータ筐体21の収納部22への配線基板23の組み付けがほぼ完了する。
この配線基板23の組み付けにおいて、配線基板23の第1の面23x側に背丈の高い円柱形状の電解コンデンサが実装、即ち配線基板23とインバータ筐体21の底部21aとの間に背丈の高い円柱形状の電解コンデンサ24aが配置されているが、インバータ筐体21は、底部21aからその上方の配線基板23に向かって突出し、かつ電解コンデンサ24aの先端よりも配線基板23側でダイオード用半導体装置24bが連結される突出部51を有しているので、電解コンデンサ24aよりも背丈の低いダイオード用半導体装置24bをインバータ筐体21に連結することができると共に配線基板23に実装(半田付け)することができる。
【0037】
また、インバータ筐体21は、底部21aからその上方の配線基板23に向かって突出し、かつ電解コンデンサ24aの先端よりも配線基板23側でパワー半導体装置24cが連結される突出部52を有しているので、この背丈の低いパワー半導体装置24cにおいても、インバータ筐体21に連結することができると共に配線基板23に実装(半田付け)することができる。
次に、インバータ筐体21の溝部55における風の通流について、
図9を用いて説明する。
【0038】
図9に示す排気ファン70は、風洞部71内に電動モータ1を備えている。電動モータ1は、支持部材72を介して風洞部71に支持されている。電動モータ1のシャフト14の一端側にはファン73が取り付けられており、電動モータ1がファン73を回転させることで、風洞部71内を電動モータ1のインバータ部10b側(上流側)からモータ部10a側(下流側)に向かって外気(空気)が流れる。すなわち、外気が風74となって風洞部71内を流れる。
このとき、インバータ筐体21の突出部51及び52における溝部55にも底部21a側から側壁部21b側に向かって風74が通流するが、溝部55の底面56がインバータ筐体21の底部21aから側壁部21bに亘って連通すると共に底部21a側からその内側(配線基板23側)に傾斜しているので、溝部55に淀むことなくスムーズに風74が通り抜ける。
【0039】
また、溝部55は、溝部55の幅方向に並列配置で複数設けられているので、突出部において風74と接する面積が増加している。
ここで、従来のインバータモジュールについて本実施形態の図面を参照して説明すると、従来のインバータモジュールは、インバータ筐体21の底部21aが平坦(フラット)になっている(特許文献2の
図3参照)。このため、背丈の高い電解コンデンサ24aが配線基板23の第1の面23x側に実装される場合、配線基板から底部までの距離が長くなり、電解コンデンサ24aよりも背丈の低いダイオード用半導体装置24bにおいてはインバータ筐体21の底部21a、即ちインバータ筐体21に連結することが困難となるので、背丈の低いダイオード用半導体装置24bが発する熱をインバータ筐体21の外部に放散させる熱放散効果が低下し、熱冷却効果が低下する。
【0040】
これに対し、本実施形態のインバータモジュール20及びそれを備えた電動モータ1によれば、以下の効果が得られる。
(1)本実施形態のインバータモジュール20のインバータ筐体21は、底部21aからその上方の配線基板23に向かって突出し、かつ電解コンデンサ24aの先端よりも配線基板23側で電解コンデンサ24aよりも背丈の低いダイオード用半導体装置24bが連結される突出部51を有している。
したがって、本実施形態のインバータモジュール20によれば、配線基板23からインバータ筐体21の底部21aまでの距離よりも配線基板23から突出部51までの距離が短くなるので、背丈の高い電解コンデンサ24aが配線基板23の第1の面23x側に実装されていても、電解コンデンサ24aよりも背丈の低いダイオード用半導体装置24bを突出部51に連結、すなわちインバータ筐体21に連結することができる。
【0041】
これにより、背丈の低いダイオード用半導体装置24bが発する熱はインバータ筐体21に伝達され、インバータ筐体21から外部に放散されるので、背丈の低いダイオード用半導体装置24bが発する熱をインバータ筐体21の外部に放散させる熱放散効果を高めることができ、熱冷却を促進することができる。この結果、熱に対する信頼性の高いインバータモジュール20及びそれを備えた電動モータ1を提供することができる。
ここで、ダイオード用半導体装置24bのリード64に別部品のリードを接続してリード長を長くすることで、インバータ筐体21の底部21aが平坦になっている場合でも背丈の低いダイオード用半導体装置24bをインバータ筐体21に連結させることができる。しかしながら、このような手法はコストの増加を招く。
これに対し、本実施形態のインバータモジュール20ではダイオード用半導体装置24bのリード64を追加部品により延長することなく、熱放散効果を高めることができるので、高コスト化を抑制することができる。
【0042】
(2)本実施形態のインバータモジュール20のインバータ筐体21は、インバータ筐体21をその深さ方向に向かって平面視したとき、突出部51と重畳する位置に底部21aから側壁部21bに亘って連通する溝部55を有している。
したがって、本実施形態のインバータモジュール20によれば、溝部55が設けられた部分ではインバータ筐体21の突出部51における肉厚が薄くなるので、溝部55を設けない場合と比較して突出部51の熱伝導性が良くなる。この結果、背丈の低いダイオード用半導体装置24bが発する熱をインバータ筐体21の外部に放散させる熱放散効果をより高めることができるので、更に熱に対する信頼性の高いインバータモジュール20及びそれを備えた電動モータ1を提供することができる。
【0043】
(3)本実施形態のインバータモジュール20において、溝部55は、インバータ筐体21の底部21aから側壁部21bに亘って延在すると共に底部21aから配線基板23側に傾斜する底面56(
図1、
図4及び
図6参照)を有している。
したがって、本実施形態のインバータモジュール20によれば、電動モータ1のインバータ部10b側(上流側)からモータ部10a側(下流側)に向かって外気(空気)が風74となって流れる際、インバータ筐体21の突出部51における溝部55にも底部21a側から側壁部21b側に向かって風74が通流するが、溝部55の底面56が底部21a側からその内側(配線基板23側)に傾斜しているので、溝部55に淀むことなくスムーズに風74が通り抜ける。
これにより、背丈の低いダイオード用半導体装置24bが発する熱は突出部51に伝達され、突出部51に伝達された熱は溝部55を通り抜ける外気(風74)に効率良く伝達されるので、背丈の低いダイオード用半導体装置24bが発する熱をインバータ筐体21の外部に放散させる熱放散効果を更に高めることができる。この結果、更に熱に対する信頼性の高いインバータモジュール20及びそれを備えた電動モータ1を提供することができる。
【0044】
(4)本実施形態のインバータモジュール20において、溝部55は、インバータ筐体21をその深さ方向に向かって平面視したとき、溝部55の幅方向に並列配置で複数設けられている。
したがって、本実施形態のインバータモジュール20によれば、インバータ筐体21の突出部51において外気(風74)と接する面積が増加するので、背丈の低いダイオード用半導体装置24bが発する熱をインバータ筐体21の外部に放散させる熱放散効果を更に高めることができる。この結果、更に熱に対する信頼性の高いインバータモジュール20及びそれを備えた電動モータ1を提供することができる。
ここで、上記の効果の説明では、背丈の低いダイオード用半導体装置24bが連結される突出部51について説明したが、背丈の低いパワー半導体装置24cが連結される突出部52においても、突出部51と同様の効果が得られる。
【0045】
なお、前述の実施形態では、突出部51の部品連結面51aに熱伝導性部材46を介在して間接的にダイオード用半導体装置24bを連結させた場合について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、突出部51の部品連結面51aに直にダイオード用半導体装置24bを連結させてもよい。そして、パワー半導体装置24cにおいても同様に突出部52の部品連結面に直に連結させてもよい。
また、前述の実施形態では、突出部51の部品連結面51aがインバータ筐体21の側壁部21bに対して略直交し、配線基板23の第1の面23xに対して略平行となるように構成した場合について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、突出部51の部品連結面51aは、インバータ筐体21の側壁部21b及び配線基板23の第1の面23xに対して傾斜するように構成してもよい。そして、突出部52の部品連結面においても同様にインバータ筐体21の側壁部21b及び配線基板23の第1の面23xに対して傾斜するように構成してもよい。
【0046】
また、前述の実施形態では、突出部51の配線基板23と向かい合う上面にダイオード用半導体装置24bを連結した場合について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、突出部51の突出方向に沿う側面にダイオード用半導体装置24bを連結してもよい。そして、パワー半導体装置24cにおいても同様に、突出部52の突出方向に沿う側面に連結させてもよい。
また、前述の実施形態では、溝部55の底面56を直線状に形成した場合について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、溝部55の底面56は、インバータ筐体21の底部21aから側壁部21bに亘って内側に湾曲する湾曲形状、若しくは一段又は複数段に屈曲する屈曲形状で形成してもよい。
【0047】
以上、本発明者によってなされた発明を、前記実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは勿論である。
以上説明したように、本発明に係る電子装置及び電動モータは、熱に対する信頼性を高めることができるという効果を有し、回路を構成する複数の電子部品が実装された配線基板を筐体内に収納する電子装置及びそれを備えた電動モータに有用である。