(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6337582
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】押出成形装置及び押出成形方法
(51)【国際特許分類】
B29C 47/92 20060101AFI20180528BHJP
【FI】
B29C47/92
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-79993(P2014-79993)
(22)【出願日】2014年4月9日
(65)【公開番号】特開2015-199281(P2015-199281A)
(43)【公開日】2015年11月12日
【審査請求日】2017年4月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100066865
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 信一
(74)【代理人】
【識別番号】100066854
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 賢照
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117938
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 謙二
(74)【代理人】
【識別番号】100138287
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 功
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 有二
(72)【発明者】
【氏名】田中 敦
【審査官】
中山 基志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−099905(JP,A)
【文献】
特開昭57−125803(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C47/00−47/96
G01B11/00−11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出物の形状を規定する口金を備えた押出機と、前記口金から押し出される帯状の押出物を連続的に搬送する少なくとも1つの搬送装置と、前記押出機の押出速度及び各搬送装置の稼働速度を制御する制御手段とを備えた押出成形装置において、前記押出物に対して押出直後に模様を印刷する印刷機と、前記押出物の搬送経路に沿って配設されていて前記押出物に印刷された模様を検出する少なくとも1つの画像検出器と、該画像検出器の検出結果に基づいて前記押出物に生じている歪を算出する演算手段とを設けたことを特徴とする押出成形装置。
【請求項2】
前記演算手段により算出された前記押出物の歪に基づいて前記制御手段が前記押出機の押出速度及び/又は前記搬送装置の稼働速度を制御することを特徴とする請求項1に記載の押出成形装置。
【請求項3】
前記画像検出器を前記搬送装置の各々に対応する位置に配設したことを特徴とする請求項1又は2に記載の押出成形装置。
【請求項4】
押出物の形状を規定する口金を備えた押出機と、前記口金から押し出される帯状の押出物を連続的に搬送する少なくとも1つの搬送装置と、前記押出機の押出速度及び各搬送装置の稼働速度を制御する制御手段とを備えた押出成形装置を用いて押出物を成形する方法において、前記押出物に対して押出直後に印刷機により模様を印刷し、前記押出物の搬送経路に沿って配設された少なくとも1つの画像検出器により前記押出物に印刷された模様を検出し、前記画像検出器の検出結果に基づいて演算手段により前記押出物に生じている歪を算出することを特徴とする押出成形方法。
【請求項5】
前記演算手段により算出された前記押出物の歪に基づいて前記制御手段が前記押出機の押出速度及び/又は前記搬送装置の稼働速度を制御することを特徴とする請求項4に記載の押出成形方法。
【請求項6】
前記画像検出器を前記搬送装置の各々に対応する位置に配設したことを特徴とする請求項4又は5に記載の押出成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物等からなる押出物を成形するための装置及び方法に関し、更に詳しくは、押出物の歪分布を容易に観測することを可能にし、延いては、押出物の歪を精度良く制御することを可能にした押出成形装置及び押出成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、空気入りタイヤに使用されるトレッド部材やサイド部材等のタイヤ構成部材はゴム組成物を連続的に押し出すことで帯状に成形され、しかる後、所望の長さに切断される。このような押出物を成形する場合、押出機の口金から押し出された帯状の押出物を少なくとも1つの搬送装置を介して連続的に搬送する際に、押出機の押出速度及び各搬送装置の稼働速度を制御することで押出物に対して所定の歪を与え、規定の最終寸法を有する押出物を得るようにしている(例えば、特許文献1〜2参照)。
【0003】
しかしながら、上述のような押出成形方法において、搬送装置の稼働速度はそれを駆動するモーター等の回転数等により把握できるが、押出物の移動速度は必ずしも正確に把握できないため、押出物に対して実際に如何なる歪が与えられているのかを把握するのは困難である。
【0004】
これに対して、押し出された押出物に回転体等からなる速度検出器を当接させ、その速度検出器により押出物の移動速度を計測し、その移動速度から押出物の長手方向の歪を推測することが考えられる。しかしながら、この場合、押出物の幅方向の歪情報を得ることはできない。
【0005】
また、上述のような手法により押出物の長手方向の歪情報を取得することができたとしても、それは押出物の幅方向の一部での歪情報であって押出物の全体の歪分布を示すものではない。そのため、押出物の全体の歪分布を把握するには押出物の幅方向に沿って多数の速度検出器を設置する必要があり、これは現実的な手法ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−166461号公報
【特許文献2】特開2013−107288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、押出物の歪分布を容易に観測することを可能にし、延いては、押出物の歪を精度良く制御することを可能にした押出成形装置及び押出成形方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明の押出成形装置は、押出物の形状を規定する口金を備えた押出機と、前記口金から押し出される帯状の押出物を連続的に搬送する少なくとも1つの搬送装置と、前記押出機の押出速度及び各搬送装置の稼働速度を制御する制御手段とを備えた押出成形装置において、前記押出物に対して押出直後に模様を印刷する印刷機と、前記押出物の搬送経路に沿って配設されていて前記押出物に印刷された模様を検出する少なくとも1つの画像検出器と、該画像検出器の検出結果に基づいて前記
押出物に生じている歪を算出する演算手段とを設けたことを特徴とするものである。
【0009】
また、上記目的を達成するための本発明の押出成形方法は、押出物の形状を規定する口金を備えた押出機と、前記口金から押し出される帯状の押出物を連続的に搬送する少なくとも1つの搬送装置と、前記押出機の押出速度及び各搬送装置の稼働速度を制御する制御手段とを備えた押出成形装置を用いて押出物を成形する方法において、前記押出物に対して押出直後に印刷機により模様を印刷し、前記押出物の搬送経路に沿って配設された少なくとも1つの画像検出器により前記押出物に印刷された模様を検出し、前記画像検出器の検出結果に基づいて演算手段により前記
押出物に生じている歪を算出することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、押出物の形状を規定する口金を備えた押出機と、その口金から押し出される帯状の押出物を連続的に搬送する少なくとも1つの搬送装置と、押出機の押出速度及び各搬送装置の稼働速度を制御する制御手段とを備えた押出成形装置を用いて押出物を成形するにあたって、押出物に対して押出直後に印刷機により模様を印刷し、押出物の搬送経路に沿って配設された少なくとも1つの画像検出器により押出物に印刷された模様を検出し、その画像検出器の検出結果に基づいて演算手段により押出物の歪を算出するので、押出物の歪分布を容易に観測することができる。
【0011】
更に、演算手段により算出された押出物の歪に基づいて制御手段が押出機の押出速度及び/又は搬送装置の稼働速度を制御することにより、押出物の歪を精度良く制御することができる。その結果、所望の最終寸法を有する押出物を得ることができる。
【0012】
本発明において、画像検出器は搬送装置の各々に対応する位置に配設することが好ましい。これにより、各搬送装置上での押出物の歪を把握することができるので、その歪に応じて各搬送装置の稼働速度を適切に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態からなる押出成形装置を示す斜視図である。
【
図2】本発明で得られる押出物に印刷された模様の一例を示すものであり、(a)〜(d)は押出成形工程の各時点での模様を示す平面図である。
【
図3】本発明で得られる押出物に印刷された模様の変形例を示すものであり、(a)〜(d)は押出成形工程の各時点での模様を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態からなる押出成形装置を示すものである。
【0015】
図1に示すように、本実施形態の押出成形装置は、押出物1を成形するための押出機10を備えている。この押出機10は、水平方向に延長するように配設されたシリンダ11と、該シリンダ11内に設置されたスクリュー12と、シリンダ11の先端側に設置された口金13とを有し、シリンダ11の後端側に設けられたホッパー14から原料を投入し、口金13から押出物1を連続的に排出するようになっている。そのため、押出物1の形状は口金13により規定される。トレッド部材やサイド部材等のタイヤ構成部材を成形する場合、押出物1の原料として未加硫のゴム組成物を使用し、口金13の形状を適宜選択することにより、所望の形状を有するタイヤ構成部材を成形することができる。
【0016】
押出物1の搬送経路には、口金13から押し出される帯状の押出物1を連続的に搬送するための複数の搬送装置(例えば、ベルトコンベア)21,22,23が配設されている。そして、押出機10の押出速度及び搬送装置21〜23の稼働速度は制御装置(制御手段、演算手段)30により制御されている。例えば、搬送装置22の稼働速度V
2を搬送装置21の稼働速度V
1よりも速くすると押出物1は搬送装置21,22を通過する際に引き伸ばされ、搬送装置23の稼働速度V
3を搬送装置22の稼働速度V
2よりも遅くすると押出物1は搬送装置22,23を通過する際に押し縮められることになる。
【0017】
上記押出成形装置において、押出機10の口金13の近傍には、押出物1に対して押出直後に模様を印刷する印刷機40が配設されている。この印刷機40は、押出物1の表面に塗料によって模様を描写するものであっても良く、或いは、型押しにより押出物1の表面に立体的な模様を形成するものであっても良い。このような模様は、押出物1の長手方向に沿って連続していても良く、或いは、押出物1の長手方向に沿って間欠的に配置されていても良い。
【0018】
印刷される模様としては、幾何学模様を採用することが好ましい。幾何学模様とは三角形、方形、菱形、多角形、円形等を素材とする模様であり、このような幾何学模様によれば、押出方向及びそれと直交する押出物1の幅方向の形状変化を捉えることができる。幾何学模様は点の集合体や線により構成することが可能であるが、線で構成した方が連続的な情報が得られるため好ましい。また、歪を計測したい方向、例えば、押出方向及び幅方向に対してそれぞれ角度を持つように線を配置することにより、両方向の歪を同時に計測することができる。
【0019】
搬送装置21〜23の上方位置には、押出物1の搬送経路に沿って、押出物1に印刷された模様を検出する複数の画像検出器(例えば、カメラ)51,52,53が配設されている。より具体的には、画像検出器51は押出物1の搬送経路における印刷機40の下流側において搬送装置21の直上域に配置され、画像検出器52は搬送装置22の直上域に配置され、画像検出器53は搬送装置23の直上域に配置されている。これら画像検出器51〜53の検出結果は制御装置30に入力され、制御装置30の演算手段が画像検出器51〜53の検出結果に基づいて押出物1の歪を演算するようになっている。そして、制御装置30は演算手段により算出された押出物1の歪に基づいて押出機10の押出速度及び/又は搬送装置21〜23の稼働速度を制御するようになっている。
【0020】
次に、上述した押出成形装置を用いて押出物1を成形する方法について、
図2(a)〜(d)及び
図3(a)〜(d)を用いて説明する。
【0021】
先ず、押出機10を駆動することにより、押出機10の口金13から帯状の押出物1を連続的に押し出す。この押出物1は搬送装置21〜23により連続的に搬送され、その搬送過程において冷却された後、所定の長さに切断されて目的成形物となる。押出物1を成形するにあたって、押出機10の押出速度及び各搬送装置21〜23の稼働速度を制御することで押出物1に対して所定の歪を与え、規定の最終寸法を有する押出物1を得るようにする。
【0022】
このような押出成形工程において、押出物1に対して押出直後に印刷機40により模様を印刷し、その押出物1の搬送経路に沿って配設された画像検出器51〜53により押出物1に印刷された模様を検出する。そして、画像検出器51〜53の検出結果に基づいて制御装置30の演算手段により押出物1の歪を算出する。
【0023】
例えば、
図2(a)に示すように、押出物1に多数の方形からなる幾何学模様41aを印刷した場合、画像検出器51により検出される幾何学模様41b、画像検出器52により検出される幾何学模様41c及び画像検出器53により検出される幾何学模様41dの形状は、押出物1の歪の状態に応じて
図2(b)〜
図2(d)のように変化する。ここで、印刷機40の近傍で画像検出器51により検出された幾何学模様41bの寸法データを初期値とし、画像検出器52,53により検出された幾何学模様41c,41dの寸法データの初期値に対する変化量を求めることにより、各時点において押出物1に生じている歪を算出することができる。なお、画像検出器51により検出された幾何学模様41bの寸法データを初期値とする替りに、印刷機40により印刷される幾何学模様41bの寸法データを初期値として使用することも可能である。
【0024】
また、
図3(a)に示すように、押出物1に網目状の幾何学模様42aを印刷した場合、画像検出器51により検出される幾何学模様42b、画像検出器52により検出される幾何学模様42c及び画像検出器53により検出される幾何学模様42dの形状は、押出物1の歪の状態に応じて
図3(b)〜
図3(d)のように変化するが、この場合も、上記と同様に押出物1に生じた歪を算出することができる。
【0025】
このように押出物1に対して押出直後に印刷機40により模様を印刷し、押出物1の搬送経路に沿って配設された少なくとも1つの画像検出器51〜53により押出物1に印刷された模様を検出し、その画像検出器51〜53の検出結果に基づいて制御装置30の演算手段により押出物1の歪を算出することにより、押出物1の歪分布を容易に観測することができる。従って、押出物1の長手方向及び幅方向に与えられた歪を容易に把握することができる。
【0026】
更に、上記押出成形方法においては、演算手段により算出された押出物1の歪に基づいて制御装置30の制御手段が押出機10の押出速度及び/又は搬送装置21〜23の稼働速度を制御することにより、押出物1の歪を精度良く制御することができる。例えば、押出物1に与えられるべき長手方向の伸張が不十分である場合、押出機10の押出速度を低下させたり、搬送装置21〜23の稼働速度を下流側ほど速くしたりすることにより、押出物1を引き延ばすような歪を与えることができる。これとは逆に、押出物1に与えられるべき幅方向の拡張が不十分である場合、押出機10の押出速度を増大させたり、搬送装置21〜23の稼働速度を下流側ほど遅くしたりすることにより、押出物1を押し縮めるような歪を与えることができる。これにより、所望の最終寸法を有する押出物1を得ることができる。特に、ゴム組成物から構成される押出物1は押出後に収縮する傾向があるので、その押出物1の歪を制御することにより、押出後の寸法変化を小さくすることができる。
【0027】
上述した押出成形装置において、押出物1の搬送経路に複数の搬送装置21〜23を配設し、各搬送装置21〜23の稼働速度を制御することにより、押出物1に与える歪をより精度良く調整することができる。しかしながら、押出物1の搬送経路に1つの搬送装置のみを設置した場合であっても、押出物1の歪を制御することができる。
【0028】
上述した押出成形装置において、画像検出器51〜53は搬送装置21〜23の各々に対応する位置に配設するのが良い。これにより、各搬送装置21〜23での押出物1の歪を把握することができるので、その歪に応じて各搬送装置21〜23の稼働速度を適切に制御することができる。勿論、押出物1の搬送経路上に1つの画像検出器53のみを設置した場合であっても、押出物1の歪を観測することができる。
【0029】
上述した実施形態ではゴム組成物からなる押出物の場合について説明したが、本発明は熱可塑性樹脂からなる押出物を成形する場合にも適用可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 押出物
10 押出機
11 シリンダ
12 スクリュー
13 口金
14 ホッパー
21,22,23 搬送装置
30 制御装置
40 印刷機
41a,41b,41c,41d 模様
51,52,53 画像検出器