特許第6337590号(P6337590)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6337590
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】タイヤ仕分け方法
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/00 20060101AFI20180528BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20180528BHJP
   B07C 5/342 20060101ALN20180528BHJP
【FI】
   B29D30/00
   B60C19/00 J
   !B07C5/342
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-82930(P2014-82930)
(22)【出願日】2014年4月14日
(65)【公開番号】特開2015-202624(P2015-202624A)
(43)【公開日】2015年11月16日
【審査請求日】2017年4月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100066865
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 信一
(74)【代理人】
【識別番号】100066854
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 賢照
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117938
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 謙二
(74)【代理人】
【識別番号】100138287
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 功
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 有二
【審査官】 松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−143139(JP,A)
【文献】 特開平08−151545(JP,A)
【文献】 特開平07−300004(JP,A)
【文献】 特開昭56−040581(JP,A)
【文献】 再公表特許第2002/051643(JP,A1)
【文献】 米国特許第06144033(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0145623(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B07C 5/342
B29D 30/00
B41M 3/00
B60C 13/00
B60C 19/00
C09D 5/32−5/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ構成部材、グリーンタイヤ又は製品タイヤの表面に、透明又は黒色であると共に赤外線反射顔料が配合されていて赤外線放射率がゴム組成物とは異なる断熱塗料からなる識別記号を印刷し、それ以降の工程において前記タイヤ構成部材、前記グリーンタイヤ又は前記製品タイヤから放射される赤外線に基づいて赤外線感知機能を有する画像検出器により前記識別記号を検出し、前記画像検出器の検出結果に基づいて前記タイヤ構成部材、前記グリーンタイヤ又は前記製品タイヤの仕分けを行うことを特徴とするタイヤ仕分け方法。
【請求項2】
前記塗料の赤外線放射率と前記ゴム組成物の赤外線放射率との差が0.05以上であることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ仕分け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ構成部材、グリーンタイヤ又は製品タイヤの仕分けを行う方法に関し、更に詳しくは、製品タイヤの外観を悪化させることなく、識別記号をより確実に読み取ることを可能にしたタイヤ仕分け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤの製造過程において、例えば、トレッド部材に代表されるタイヤ構成部材の表面に線や文字で構成される識別記号を印刷し、それ以降の工程においてタイヤ構成部材に印刷された識別記号を利用してタイヤ構成部材、グリーンタイヤ又は製品タイヤの仕分けを行うようにしている。
【0003】
ところが、上述のような識別記号は製品タイヤの表面に残存するので、その製品タイヤの外観を考慮すると、識別記号を構成する線や文字の大きさや太さには制約があり、その結果、識別記号に基づいて表示できる情報量にも制約がある。このように表示できる情報量が制約されることは、人手を介さない自動仕分けを実施するにあたって大きな障害となっている。
【0004】
これに対して、タイヤ構成部材の表面に蛍光塗料により識別記号を印刷し、その印刷部分に紫外線を照射して識別記号を浮かび上がらせ、その識別記号を利用してタイヤ構成部材、グリーンタイヤ又は製品タイヤの仕分けを行うことが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
上述のように蛍光塗料からなる識別記号を利用した場合、製品タイヤの外観が改善されるという利点がある。しかしながら、この場合、紫外線の照射によるゴム劣化のリスクを伴うことに加えて、紫外線の照射時に浮き上がる蛍光塗料からなる識別記号を正確に読み取るには光学的に整った環境が必要であり、そのような環境条件を満たしていないタイヤ製造設備では読み取り不良の発生頻度が高くなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3030649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、製品タイヤの外観を悪化させることなく、識別記号をより確実に読み取ることを可能にしたタイヤ仕分け方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明のタイヤ仕分け方法は、タイヤ構成部材、グリーンタイヤ又は製品タイヤの表面に、透明又は黒色であると共に赤外線反射顔料が配合されていて赤外線放射率がゴム組成物とは異なる断熱塗料からなる識別記号を印刷し、それ以降の工程において前記タイヤ構成部材、前記グリーンタイヤ又は前記製品タイヤから放射される赤外線に基づいて赤外線感知機能を有する画像検出器により前記識別記号を検出し、前記画像検出器の検出結果に基づいて前記タイヤ構成部材、前記グリーンタイヤ又は前記製品タイヤの仕分けを行うことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、タイヤ構成部材、グリーンタイヤ又は製品タイヤの表面に、赤外線放射率がゴム組成物とは異なる塗料からなる識別記号を印刷し、それ以降の工程において赤外線感知機能を有する画像検出器により識別記号を検出し、その検出結果に基づいてタイヤ構成部材、グリーンタイヤ又は製品タイヤの仕分けを行うので、紫外線を利用して識別記号を浮き上がらせる場合に比べて、識別記号をより確実に読み取ることができる。従って、このような手法によれば、タイヤ構成部材、グリーンタイヤ又は製品タイヤについて、人手を介さない自動仕分けを実施することが可能になる。
【0010】
また、上記塗料としては透明又は黒色の塗料を使用するので、カーボンブラックで補強された黒色の製品タイヤでは塗料の痕跡が実質的に残らず、製品タイヤの外観を悪化させることはない。
【0011】
本発明において、塗料の赤外線放射率とゴム組成物の赤外線放射率との差は0.05以上であることが好ましい。これにより、タイヤ構成部材、グリーンタイヤ又は製品タイヤから放射される赤外線が上記塗料によって効果的に吸収又は遮蔽されるので、識別記号をより確実に読み取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係るタイヤ仕分け方法を実施するための押出成形装置の一例を示す斜視図である。
図2】本発明に係るタイヤ仕分け方法におけるタイヤ構成部材からの識別記号の検出工程を示す平面図である。
図3】本発明に係るタイヤ仕分け方法におけるグリーンタイヤからの識別記号の検出工程を示す平面図である。
図4】本発明に係るタイヤ仕分け方法における製品タイヤからの識別記号の検出工程を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明に係るタイヤ仕分け方法を実施するための押出成形装置の一例を示すものである。また、図2図4はそれぞれタイヤ構成部材、グリーンタイヤ、製品タイヤからの識別記号の検出工程を示すものである。
【0014】
図1に示すように、本実施形態の押出成形装置は、押出物1を成形するための押出機10を備えている。この押出機10は、水平方向に延長するように配設されたシリンダ11と、該シリンダ11内に設置されたスクリュー12と、シリンダ11の先端側に設置された口金13とを有し、シリンダ11の後端側に設けられたホッパー14から原料を投入し、口金13から押出物1を連続的に排出するようになっている。そのため、押出物1の形状は口金13により規定される。トレッド部材やサイド部材等のタイヤ構成部材2(図2参照)を成形する場合、押出物1の原料として未加硫のゴム組成物を使用し、口金13の形状を適宜選択することにより、タイヤ構成部材2に対応する所望の断面形状を備えた押出物1を成形する。
【0015】
押出物1の搬送経路には、口金13から押し出される帯状の押出物1を連続的に搬送するための複数の搬送装置(例えば、ベルトコンベア)21,22,23が配設されている。これら搬送装置21〜23により不図示の切断装置まで搬送された押出物1は所望の長さに切断されてタイヤ構成部材2に加工される。
【0016】
上記押出成形装置において、押出機10の口金13の近傍には、押出物1に対して押出直後に透明又は黒色であって赤外線放射率がゴム組成物とは異なる塗料からなる識別記号31(図2参照)を印刷する印刷機30が配設されている。この印刷機30により印刷される識別記号31は、押出物1の長手方向に沿って連続していても良く、或いは、押出物1の長手方向に沿って間欠的に配置されていても良い。ここで言う印刷とは、単なる塗布を包含する描画行為である。識別記号31は、タイヤ構成部材2の寸法や配合が規定された仕様に関連づけて割り振られる固有の記号であり、それ以降のタイヤ製造工程においてタイヤ構成部材2、グリーンタイヤ3(図3参照)又は製品タイヤ4(図4参照)の仕様を判別するために利用される。
【0017】
透明又は黒色であって赤外線放射率がゴム組成物とは異なる塗料としては、一般に断熱塗料として認識される塗料等を使用することができる。このような塗料として、例えば、一般的にタイヤトレッド部の識別記号の印刷に使われる塗料に赤外線反射顔料(例えば、アサヒ化成工業株式会社製のIRR Black #6303)を適量(例えば、5重量部)配合して黒色塗料としたものを挙げることができる。また、上記塗料の赤外線放射率とタイヤ構成部材2、グリーンタイヤ3又は製品タイヤ4を構成するゴム組成物の赤外線放射率との差は0.05以上、より好ましくは、0.1以上であると良い。両者間の赤外線放射率の差を十分に確保することにより、タイヤ構成部材2、グリーンタイヤ3又は製品タイヤ4から放射される赤外線が上記塗料によって効果的に吸収又は遮蔽されるので、タイヤ構成部材2に印刷された識別記号をより確実に判別することができる。
【0018】
印刷される識別記号31としては、線、文字、バーコード、幾何学模様等を採用することができる。特に、上述した又は黒色の塗料は製品タイヤにおいて目立たないので、製品タイヤの外観の悪化を考慮することなく、多くの情報を含む識別記号31を従来よりも広い面積にわたって形成することが可能である。
【0019】
次に、本発明に係るタイヤ仕分け方法について図2図4を用いて説明する。図2に示すように、例えば、バーコードからなる識別記号31を備えたタイヤ構成部材2は加工後にタイヤ成形工程に供される。その際、赤外線感知機能を有する画像検出器(例えば、赤外線感知カメラ)41により識別記号31を検出し、その画像検出器41の検出結果に基づいてタイヤ構成部材2の仕分けを行う。
【0020】
また、図3に示すように、識別記号31を備えたタイヤ構成部材2を用いてグリーンタイヤ3を成形した場合、そのグリーンタイヤ3は成形後に加硫工程に供される。その際、赤外線感知機能を有する画像検出器(例えば、赤外線感知カメラ)42により識別記号31を検出し、その画像検出器42の検出結果に基づいてグリーンタイヤ3の仕分けを行う。
【0021】
更に、図4に示すように、識別記号31を備えたグリーンタイヤ3を加硫して製品タイヤ4を得た場合、その製品タイヤ4は加硫後に検品等の管理工程に供される。その際、赤外線感知機能を有する画像検出器(例えば、赤外線感知カメラ)43により識別記号31を検出し、その画像検出器43の検出結果に基づいて製品タイヤ4の仕分けを行う。
【0022】
上述したタイヤ仕分け方法によれば、タイヤ構成部材2の表面に赤外線放射率がゴム組成物とは異なる塗料からなる識別記号31を印刷し、それ以降の工程において赤外線感知機能を有する画像検出器41〜43により識別記号31を検出し、その検出結果に基づいてタイヤ構成部材2、グリーンタイヤ3又は製品タイヤ4の仕分けを行うので、赤外線感知機能に基づいて識別記号31を確実に読み取ることができる。
【0023】
特に、紫外線を利用して識別記号を浮き上がらせるようにした従来の仕分け方法では、紫外線の照射時に浮き上がる蛍光塗料からなる識別記号を正確に読み取るために光学的に整った環境が必要であるが、赤外線を利用した本発明の仕分け方法では、そのような環境条件を満たしていないタイヤ製造設備においても読み取り不良の発生を防止することができる。従って、赤外線を利用した本発明の仕分け方法によれば、タイヤ構成部材2、グリーンタイヤ3又は製品タイヤ4について、人手を介さない自動仕分けを実施することが可能になる。なお、赤外線を利用した本発明の仕分け方法では紫外線によるゴム劣化を招くことがないという利点もある。
【0024】
また、識別記号31を印刷するための塗料として透明又は黒色の塗料を使用するので、カーボンブラックで補強された黒色の製品タイヤ4では塗料の痕跡が実質的に残らず、製品タイヤ4の外観を悪化させることはない。
【0025】
上述した実施形態ではタイヤ構成部材2となる帯状の押出物1の表面に識別記号31を印刷する場合について説明したが、本発明では切断後のタイヤ構成部材2の表面に識別記号31を印刷しても良い。タイヤ構成部材2の加工方法は、上述した実施形態のような押出成形に限定されるものではなく、種々の加工方法を採用することができる。
【0026】
また、タイヤ構成部材2に対して識別記号31を印刷する替りに、グリーンタイヤ3の表面に識別記号31を印刷し、それ以降の工程において識別記号31を用いてグリーンタイヤ3及び製品タイヤ4の仕分けを行ったり、或いは、製品タイヤ4の表面に識別記号31を印刷し、それ以降の工程において識別記号31を用いて製品タイヤ4の仕分けを行ったりすることが可能である。しかしながら、タイヤ構成部材2の状態で印刷された識別記号31を用いてタイヤ構成部材2、グリーンタイヤ3及び製品タイヤ4の仕分けを行うのが最も効率的である。
【符号の説明】
【0027】
1 押出物
2 タイヤ構成部材
3 グリーンタイヤ
4 製品タイヤ
10 押出機
11 シリンダ
12 スクリュー
13 口金
14 ホッパー
21,22,23 搬送装置
30 印刷機
31 識別記号
41,42,43 赤外線感知機能を有する画像検出器
図1
図2
図3
図4