特許第6337599号(P6337599)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6337599高度不飽和脂肪酸を含有する油脂粉末及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6337599
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】高度不飽和脂肪酸を含有する油脂粉末及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C11B 15/00 20060101AFI20180528BHJP
   A23D 9/00 20060101ALI20180528BHJP
【FI】
   C11B15/00
   A23D9/00 516
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-93245(P2014-93245)
(22)【出願日】2014年4月29日
(65)【公開番号】特開2015-209519(P2015-209519A)
(43)【公開日】2015年11月24日
【審査請求日】2017年4月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000210067
【氏名又は名称】池田食研株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中村 直樹
(72)【発明者】
【氏名】本間 亮介
(72)【発明者】
【氏名】高橋 由夏理
【審査官】 井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−305898(JP,A)
【文献】 特開平01−160458(JP,A)
【文献】 特開平02−218796(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11B 1/00−15/00
C11C 1/00− 5/02
A23D 9/00− 9/06
A23L 5/00−29/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高度不飽和脂肪酸含有油脂と乾燥原料とを混合することによって得られる油脂粉末であって、該油脂粉末の総量を100重量部とするとき、少なくとも次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)1〜70重量部の高度不飽和脂肪酸含有油脂
(B)1〜70重量部のタンパク質含有乾燥物
(C)20〜89重量部の賦形剤
を含有し、さらに、
前記タンパク質含有乾燥物のアミノ態窒素濃度と全窒素濃度との比(アミノ態窒素濃度/全窒素濃度)が0.06〜0.8で
前記賦形剤が、炭水化物であって、
50℃で6日間保存後の過酸化物価が10以下である、油脂粉末。
【請求項2】
高度不飽和脂肪酸含有油脂と乾燥原料とを混合することによって得られる油脂粉末であって、該油脂粉末の総量を100重量部とするとき、少なくとも次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)10〜55重量部の高度不飽和脂肪酸含有油脂
(B)1〜70重量部のタンパク質含有乾燥物
(C)20〜75重量部の賦形剤
を含有し、さらに、
前記タンパク質含有乾燥物のアミノ態窒素濃度と全窒素濃度との比(アミノ態窒素濃度/全窒素濃度)が0.06〜0.8で
前記賦形剤が、炭水化物であって、
50℃で6日間保存後の過酸化物価が10以下である、油脂粉末。
【請求項3】
前記タンパク質含有乾燥物の全窒素濃度が1重量%以上である、請求項1又は請求項2に記載の油脂粉末。
【請求項4】
前記高度不飽和脂肪酸が、少なくともドコサヘキサエン酸又はエイコサペンタエン酸のいずれか一方を含むものである、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の油脂粉末。
【請求項5】
高度不飽和脂肪酸含有油脂と乾燥原料とを混合し、水等の溶媒を加えることなく得られる油脂粉末の製造方法であって、該油脂粉末の総量を100重量部とするとき、少なくとも次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)1〜70重量部の高度不飽和脂肪酸含有油脂
(B)1〜70重量部のタンパク質含有乾燥物
(C)20〜89重量部の賦形剤
を含有するよう混合し、さらに、
前記タンパク質含有乾燥物のアミノ態窒素濃度と全窒素濃度との比(アミノ態窒素濃度/全窒素濃度)が0.06〜0.8で
前記賦形剤が、炭水化物であって、
50℃で6日間保存後の過酸化物価が10以下である、油脂粉末の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高度不飽和脂肪酸を含有する油脂粉末及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ドコサヘキサエン酸やエイコサペンタエン酸等の高度不飽和脂肪酸は、心血管系疾患の予防効果、抗炎症作用、抗腫瘍作用等の機能を有することが知られている。しかしながら、高度不飽和脂肪酸は、酸化されやすく、安定性に欠けるため、各種食品に利用し難いという問題がある。そこで、高度不飽和脂肪酸の安定性や汎用性を向上させることを目的として、様々な検討が行われている。
【0003】
例えば、安定剤を添加した酸化され易い油状物を、多孔質担体内に減圧下で空気と置換して吸着担持させ、該油状物を担持した多孔質担体を両親媒性物質で被覆した構造からなることを特徴とする易酸化性油状物の固形化剤(特許文献1)、固形分の重量に基づき、(A)エイコサペンタエン酸及びドコサヘキサエン酸10重量%以上を含有する油脂及び/又はリノレン酸5重量%以上を含有する油脂20〜70重量%、(B)食物繊維2〜20重量%、(C)デンプン加水分解物及び/又は低糖化還元デンプン分解物10〜70重量%、及び(D)水溶性抗酸化剤0.01〜5重量%を含有する水中油型乳化液を、高真空下で乾燥させ、場合により粉砕処理することを特徴とする粉末組成物の製造方法(特許文献2)、脂肪酸エステルおよび高度分岐環状デキストリンを含有する、粉末状油脂であって、該脂肪酸エステルを構成する脂肪酸が、高度不飽和脂肪酸を含む、油脂(特許文献3)、又は、高度不飽和脂肪酸を含有する油脂、レシチンおよび粉末化基剤を含有する高度不飽和脂肪酸含有油脂粉末であって、該レシチンの該油脂に対する重量比が100〜300%であり、該レシチンが、フォスファチジルコリン含量55〜90%のレシチンおよび酵素分解レシチンを、100:0〜50:50の重量比で含有する高度不飽和脂肪酸含有油脂粉末(特許文献4)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−181725号公報
【特許文献2】特開平10−99046号公報
【特許文献3】特開2003−49189号公報
【特許文献4】特開2006−298969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、顕著な酸化安定性を有し、かつ、流動性に優れた、高度不飽和脂肪酸を含有した油脂粉末を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意研究を行った結果、高度不飽和脂肪酸含有油脂と、タンパク質含有乾燥物及び賦形剤とを混合することにより、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、高度不飽和脂肪酸含有油脂と、タンパク質含有乾燥物及び賦形剤とを所定の割合で混合することにより、顕著な酸化安定性を有し、かつ、流動性に優れた、高度不飽和脂肪酸を含有した油脂粉末を提供するものである。
【0008】
本発明には、下記の態様が含まれる。
項(1)
高度不飽和脂肪酸含有油脂と乾燥原料とを混合することによって得られる油脂粉末であって、該油脂粉末の総量を100重量部とするとき、少なくとも次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)1〜70重量部の高度不飽和脂肪酸含有油脂
(B)1〜70重量部のタンパク質含有乾燥物
(C)20〜89重量部の賦形剤
を含有し、さらに、
前記タンパク質含有乾燥物のアミノ態窒素濃度と全窒素濃度との比(アミノ態窒素濃度/全窒素濃度)が0.06〜0.8である、油脂粉末。
項(2)
高度不飽和脂肪酸含有油脂と乾燥原料とを混合することによって得られる油脂粉末であって、該油脂粉末の総量を100重量部とするとき、少なくとも次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)10〜55重量部の高度不飽和脂肪酸含有油脂
(B)1〜70重量部のタンパク質含有乾燥物
(C)20〜75重量部の賦形剤
を含有し、さらに、
前記タンパク質含有乾燥物のアミノ態窒素濃度と全窒素濃度との比(アミノ態窒素濃度/全窒素濃度)が0.06〜0.8である、油脂粉末。
項(3)
前記タンパク質含有乾燥物の全窒素濃度が1重量%以上である、項(1)又は項(2)に記載の油脂粉末。
項(4)
前記高度不飽和脂肪酸が、少なくともドコサヘキサエン酸又はエイコサペンタエン酸のいずれか一方を含むものである、項(1)乃至項(3)に記載の油脂粉末。
項(5)
前記賦形剤が、炭水化物である、項(1)乃至項(4)のいずれか1項に記載の油脂粉末。
項(6)
高度不飽和脂肪酸含有油脂と乾燥原料とを混合することによって得られる油脂粉末の製造方法であって、該油脂粉末の総量を100重量部とするとき、少なくとも次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)1〜70重量部の高度不飽和脂肪酸含有油脂
(B)1〜70重量部のタンパク質含有乾燥物
(C)20〜89重量部の賦形剤
を含有するよう混合し、さらに、
前記タンパク質含有乾燥物のアミノ態窒素濃度と全窒素濃度との比(アミノ態窒素濃度/全窒素濃度)が0.06〜0.8である、油脂粉末の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、抗酸化剤を添加しなくても、顕著な酸化安定性を有し、かつ、流動性に優れた、高度不飽和脂肪酸を含有した油脂粉末を提供することができる。さらに、本発明によれば、水等の溶媒を加えることなく製造が可能であって、高度不飽和脂肪酸含有油脂の存在下で乾燥処理を行う必要がないため、熱等の物理的要因による高度不飽和脂肪酸の酸化や劣化がなく、前記効果を有する該油脂粉末を容易に製造することができる。
本発明による高度不飽和脂肪酸を含有する油脂粉末を用いることにより、酸化安定性が乏しいことからその利用が制限されてきた高度不飽和脂肪酸の汎用性を向上させることができる。さらに、本発明による高度不飽和脂肪酸を含有する油脂粉末を用いることにより、従前よりも各種飲食品や飼料、医薬部外品等に対し、効率的に高度不飽和脂肪酸を添加することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明において、高度不飽和脂肪酸含有油脂とは、高度不飽和脂肪酸であるα−リノレン酸、ステアリドン酸、エイコサテトラエン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、γ−リノレン酸、ジホモ−γ−リノレン酸、アラキドン酸、ミード酸等を含有する油脂であり、中でも、少なくともドコサヘキサエン酸又はエイコサペンタエン酸のいずれか一方を含有する油脂が好ましい。このような油脂としては、例えば、魚油、プランクトン油、藻類油、動植物油等の油脂やその調整品等が挙げられる。
【0011】
本発明において、高度不飽和脂肪酸含有油脂は、少なくとも高度不飽和脂肪酸を含有すればよいが、該油脂粉末中に高度不飽和脂肪酸を、好ましくは、2重量%以上、より好ましくは、5重量%以上、特に好ましくは、10重量%以上含有することができる程度であればよい。
【0012】
高度不飽和脂肪酸は、極めて酸化され易いため、酸化に伴う過酸化物を生成し、例えば、過酸化物価(POV)が上昇するほど、安全性の問題を生じる。このため、一般に、高度不飽和脂肪酸を含有する油脂粉末は、酸化安定性が問題となる。油脂を用いた加工品については、一般的に、POVが0〜10であれば「ほとんど酸化していない」と判断され、同様に10〜30で「酸化が進みかけている」、30〜40で「酸化臭を感じはじめる」、40〜50で「食べない方がよい」、50以上で「酸化がひどく中毒の危険性がある」等と判断されている。例えば、食品衛生法の規格基準では、即席めん類(めんを油脂で処理したものが対象)についてはPOV30を超えないこと、油菓子(油脂分10%以上)については酸価3を超えかつPOV30を超えないこと、が規定されている。
このことから、所定の保存条件下で、POVが少なくとも30以下であることが求められ、好ましくは、POVが10以下であることが求められる。なお、本発明において所定の保存条件とは、日本薬局方や食品添加物公定書等に規定されている常温(15〜25℃)やいわゆるJAS法等多くの規定に採用されている冷蔵(10℃以下)における密封保存であって、好ましくは、冷蔵である。保存期間は、常温においては、少なくとも1.5ヶ月間であり、好ましくは、少なくとも3ヶ月間であり、冷蔵においては、少なくとも3ヶ月間であり、好ましくは、少なくとも6ヶ月間である。また、これらに相当する条件であればよい。
なお、一般に、温度が10度上がれば、反応速度は2倍になるとされており、それによれば、50℃1週間の保管は、常温(20℃)8週間、冷蔵(10℃)16週間に相当する。
【0013】
本発明において、高度不飽和脂肪酸含有油脂と乾燥原料とを混合することによって得られる油脂粉末であって、該油脂粉末の総量を100重量部とするとき、該粉末油脂は、少なくとも次の成分(A)、(B)及び(C)を以下のように含有する。
(A)1〜70重量部の高度不飽和脂肪酸含有油脂
(B)1〜70重量部のタンパク質含有乾燥物
(C)20〜89重量部の賦形剤
そして、さらに、前記タンパク質含有乾燥物は、そのアミノ態窒素濃度と全窒素濃度との比(アミノ態窒素濃度/全窒素濃度)を0.06〜0.8の範囲内とする。このように構成することにより、該油脂粉末の酸化安定性を顕著に高め、酸化による劣化を予防することができ、所定の保管条件において酸化安定性に優れPOV30以下とすることができる。
【0014】
さらに、本発明において、高度不飽和脂肪酸含有油脂と乾燥原料とを混合することによって得られる油脂粉末であって、該油脂粉末の総量を100重量部とするとき、該粉末油脂は、好ましくは、次の成分(A)、(B)及び(C)を以下のように含有する。
(A)10〜55重量部の高度不飽和脂肪酸含有油脂
(B)1〜70重量部のタンパク質含有乾燥物
(C)20〜75重量部の賦形剤
そして、さらに、前記タンパク質含有乾燥物は、そのアミノ態窒素濃度と全窒素濃度との比(アミノ態窒素濃度/全窒素濃度)を0.06〜0.8の範囲内とする。このように構成することにより、該油脂粉末は、所定の保管条件において酸化安定性に優れPOV30以下とすることができ、かつ、優れた流動性になるとともに、高度不飽和脂肪酸含有油脂を該油脂粉末中から溶出を抑制し続けることができる。
【0015】
本発明において、タンパク質含有乾燥物は、タンパク質を含有する食品素材の乾燥物であり、そのアミノ態窒素濃度と全窒素濃度との比(アミノ態窒素濃度/全窒素濃度)が0.06〜0.8であればよいが、より好ましくは、その全窒素濃度が1重量%以上であればよく、特に好ましくは、その全窒素濃度が4重量%以上であればよい。このようなタンパク質含有乾燥物としては、例えば、豆類、乳類、畜肉類、魚介類、酵母、酒粕等に由来する原料に賦形剤を配合して、又は、配合しないで、乾燥処理することで得られる乾燥物が挙げられる。具体的には、乾燥酵母や酵母エキス粉末、酒粕粉末、各種の動植物エキスのタンパク質加水分解物粉末等が挙げられる。
【0016】
本発明において、アミノ態窒素濃度と全窒素濃度との比(アミノ態窒素濃度/全窒素濃度)が0.06〜0.8であり、さらに、全窒素濃度が1重量%以上であるタンパク質含有乾燥物を用いることにより、前記油脂粉末の酸化安定性を顕著に高め、酸化による劣化を予防することができる。また、好ましくは、アミノ態窒素濃度と全窒素濃度との比(アミノ態窒素濃度/全窒素濃度)が0.06〜0.8であり、さらに、全窒素濃度が4重量%以上であるタンパク質含有乾燥物を用いることにより、前記油脂粉末の酸化安定性をさらに顕著に高め、酸化による劣化を予防することができ、所定の保管条件において酸化安定性に優れPOV10以下とすることができる。
【0017】
ここで、本発明におけるアミノ態窒素濃度とは、すなわち、公知の分析法であるホルモール法により検出される窒素濃度である。また、本発明における全窒素濃度とは、すなわち、公知の分析法であるケルダール法により検出される窒素濃度である。
【0018】
本発明において賦形剤は、糖類、糖アルコール類、増粘多糖類、セルロース類、澱粉類、食物繊維類等の炭水化物であればいずれでもよい。中でも、全窒素濃度が0.1重量%以下であることが風味の点で好ましい。糖類としては、例えば、ブドウ糖、果糖、乳糖、麦芽糖、ショ糖、デキストリン、マルトデキストリン、シクロデキストリン、マルトース、フルクトース、トレハロース等が挙げられる。糖アルコール類としては、例えば、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、ラクトース、マルトトリイトール、キシリトール等が挙げられる。増粘多糖類としては、例えば、アラビアガム、グアーガム、ペクチン、プルラン、アルギン酸等が挙げられる。セルロース類としては、例えば、セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。澱粉類としては、例えば、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、タピオカ澱粉や加工澱粉(エステル化澱粉、エーテル化澱粉、架橋澱粉、酸化処理澱粉、酸処理澱粉、湿熱処理澱粉)等が挙げられる。食物繊維としては、例えば、ポリデキストロース、イヌリン、難消化性デキストリン、難消化性デンプン、アガロース等が挙げられる。これらは、1種類又は2種類以上の混合物として使用することができる。また、これらの賦形剤を前記タンパク質含有乾燥物の調製時に利用することもできる。
【0019】
本発明において、得られる高度不飽和脂肪酸含有油脂を含有する油脂粉末は、流動性に優れていて、JIS Z 8801−1準拠の標準ふるい:公称目開き1.70mm(以下、「10メッシュ」という)のふるいで篩別したとき、ふるいを通過する該油脂粉末の割合は、全重量に対して80%以上であり、好ましくは90%以上である。
【0020】
本発明の油脂粉末は、上記の原料を所定の割合で含有していればよく、その限りであれば、その他の原料を含有しても良い。例えば、乳化剤を加えることにより、本発明の油脂粉末の水分散性を向上させることができる。乳化剤としては、レシチン、サポニン、ステロール等の天然物由来乳化剤、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリソルベート等の合成乳化剤等が例示される。
【0021】
本発明の油脂粉末は、高度不飽和脂肪酸含有油脂、タンパク質含有乾燥物、及び、賦形剤を混合することにより得ることができる。混合する方法は、特に限定されず、公知の装置、手段をもって行うことができる。例えば、円筒ドラム型、V型、W型、ダブルコーン型、コンテナ型等の容器回転式混合、リボン型、スクリュー型、円錐形スクリュー型、パドル型、プロペラ型等の攪拌式混合、気体を利用した流動式混合、振盪式混合等が挙げられる。これらの装置、手段は、単独でも、また、組合せても用いることができる。また、これらは、回分処理、連続処理のいずれでも行うことができる。
【0022】
本発明の油脂粉末は、一般的な油脂粉末の製造において行われる、水等の溶媒に賦形剤を溶解・分散させる処理、スプレードライヤー、ドラムドライヤー、フリーズドライヤー、エアードライヤー等を用いた乾燥処理といった煩雑な工程を必要とすることなく得られ、顕著な酸化安定性を有し、かつ、流動性に優れたものである。
【実施例】
【0023】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の例によって限定されるものではない。なお、本実施例において、各原料及び素材の配合比率、含有比率、濃度は断りのない限り全て重量部基準である。
【0024】
[実施例1]
(A)高度不飽和脂肪酸含有油脂として、ドコサヘキサエン酸含有油脂(DHA46−RD:池田糖化工業株式会社製、ドコサヘキサエン酸含量:42重量%)26gと、(B)タンパク質含有乾燥物として、酵母エキス粉末(ミーストP1G:アサヒフードアンドヘルスケア株式会社製、全窒素濃度:12.3重量%、アミノ態窒素濃度:5.1重量%、アミノ態窒素濃度/全窒素濃度=0.41)20gと、(C)賦形剤として、セルロース(KCフロック(登録商標)W−200G:日本製紙株式会社製、全窒素濃度:不検出)54gとを、攪拌式混合機であるブレンダーに投入し均一に分散するまで混合することで、本発明の油脂粉末95g(実施例1)を得た。
【0025】
[実施例2]
(A)高度不飽和脂肪酸含有油脂として、ドコサヘキサエン酸含有油脂(DHA46−RD:池田糖化工業株式会社製、ドコサヘキサエン酸含量:42重量%)26gと、(B)タンパク質含有乾燥物として、酵母エキス粉末(ミーストP1G:アサヒフードアンドヘルスケア株式会社製、全窒素濃度:12.3重量%、アミノ態窒素濃度:5.1重量%、アミノ態窒素濃度/全窒素濃度=0.41)3gと、(C)賦形剤として、難消化性デンプン(日食ロードスター(登録商標):日本食品化工株式会社製、全窒素濃度:0.1重量%)71gとを、攪拌式混合機であるブレンダーに投入し均一に分散するまで混合することで、本発明の油脂粉末95g(実施例2)を得た。
【0026】
[実施例3]
(A)高度不飽和脂肪酸含有油脂として、ドコサヘキサエン酸含有油脂(DHA46−RD:池田糖化工業株式会社製、ドコサヘキサエン酸含量:42重量%)55gと、(B)タンパク質含有乾燥物として、酵母エキス粉末(ミーストP1G:アサヒフードアンドヘルスケア株式会社製、全窒素濃度:12.3重量%、アミノ態窒素濃度:5.1重量%、アミノ態窒素濃度/全窒素濃度=0.41)10gと、(C)賦形剤として、セルロース(KCフロック(登録商標)W−200G:日本製紙株式会社製、全窒素濃度:不検出)35gとを、攪拌式混合機であるブレンダーに投入し均一に分散するまで混合することで、本発明の油脂粉末95g(実施例3)を得た。
【0027】
[実施例4]
(A)高度不飽和脂肪酸含有油脂として、ドコサヘキサエン酸含有油脂(DHA46−RD:池田糖化工業株式会社製、ドコサヘキサエン酸含量:42重量%)25gと、(B)タンパク質含有乾燥物として、乾燥酵母粉末(アサヒフードアンドヘルスケア株式会社製、全窒素濃度:8.2重量%、アミノ態窒素濃度:0.7重量%、アミノ態窒素濃度/全窒素濃度=0.09)55gと、(C)賦形剤として、セルロース(KCフロック(登録商標)W−200G:日本製紙株式会社製、全窒素濃度:不検出)20gとを、攪拌式混合機であるブレンダーに投入し均一に分散するまで混合することで、本発明の油脂粉末95g(実施例4)を得た。
【0028】
[実施例5]
(A)高度不飽和脂肪酸含有油脂として、ドコサヘキサエン酸含有油脂(DHA46−RD:池田糖化工業株式会社製、ドコサヘキサエン酸含量:42重量%)60gと、(B)タンパク質含有乾燥物として、酵母エキス粉末(ミーストP1G:アサヒフードアンドヘルスケア株式会社製、全窒素濃度:12.3重量%、アミノ態窒素濃度:5.1重量%、アミノ態窒素濃度/全窒素濃度=0.41)10gと、(C)賦形剤として、セルロース(KCフロック(登録商標)W−200G:日本製紙株式会社製、全窒素濃度:不検出)30gとを、攪拌式混合機であるブレンダーに投入し均一に分散するまで混合することで、本発明の油脂粉末95g(実施例5)を得た。
【0029】
[実施例6]
(A)高度不飽和脂肪酸含有油脂として、ドコサヘキサエン酸含有油脂(DHA46−RD:池田糖化工業株式会社製、ドコサヘキサエン酸含量:42重量%)25gと、(B)タンパク質含有乾燥物として、乾燥酵母粉末(アサヒフードアンドヘルスケア株式会社製、全窒素濃度:8.2重量%、アミノ態窒素濃度:0.7重量%、アミノ態窒素濃度/全窒素濃度=0.09)60gと、(C)賦形剤として、セルロース(KCフロック(登録商標)W−200G:日本製紙株式会社製、全窒素濃度:不検出)15gとを、攪拌式混合機であるブレンダーに投入し均一に分散するまで混合することで、本発明の油脂粉末95g(実施例6)を得た。
【0030】
[実施例7]
(A)高度不飽和脂肪酸含有油脂として、ドコサヘキサエン酸含有油脂(DHA46−RD:池田糖化工業株式会社製、ドコサヘキサエン酸含量:42重量%)25gと、(B)タンパク質含有乾燥物として、米麹粉末(市販品、全窒素濃度:1.2重量%、アミノ態窒素濃度:0.1重量%、アミノ態窒素濃度/全窒素濃度=0.08)20gと、(C)賦形剤として、セルロース(KCフロック(登録商標)W−200G:日本製紙株式会社製、全窒素濃度:不検出)55gとを、攪拌式混合機であるブレンダーに投入し均一に分散するまで混合することで、本発明の油脂粉末95g(実施例7)を得た。
【0031】
[比較例1]
(A)高度不飽和脂肪酸含有油脂として、ドコサヘキサエン酸含有油脂(DHA46−RD:池田糖化工業株式会社製、ドコサヘキサエン酸含量:42重量%)26gと、(C)賦形剤として、セルロース(KCフロック(登録商標)W−200G:日本製紙株式会社製、全窒素濃度:不検出)74gとを、攪拌式混合機であるブレンダーに投入し均一に分散するまで混合することで、油脂粉末95g(比較例1)を得た。
【0032】
[評価試験1]
実施例1、実施例2、実施例3、実施例4、実施例5、実施例6及び実施例7で得られた本発明の油脂粉末並びに比較例1で得られた油脂粉末を検体として、それぞれを50℃で6日間保存した後、各検体をジエチルエーテルで抽出することで得られた脂質の過酸化物価(POV)を常法により測定した。なお、上記各実施例及び比較例において、高度不飽和脂肪酸含有油脂として用いたドコサヘキサエン酸含有油脂(DHA46−RD:池田糖化工業株式会社製、ドコサヘキサエン酸含量:42重量%)のPOVは、0.9であった。また、50℃で6日間の保存条件は、常温(20℃)保存の約1.5ヶ月、冷蔵(10℃)保存の約3ヶ月間にそれぞれ相当するものである。結果を表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
表1に示すとおり、実施例1、実施例2、実施例3、実施例4、実施例5、実施例6及び実施例7で得られた本発明の油脂粉末は、いずれもPOVが30以下と低い値であった。一方、比較例1で得られたタンパク質含有乾燥物を配合していない油脂粉末は、食用として用いることが出来ない程度までPOVが増加していた。すなわち、本発明の油脂粉末は、酸化安定性が顕著に高まっており、酸化による劣化が予防された、酸化安定性に優れた油脂粉末であることがわかった。
【0035】
[評価試験2]
実施例1、実施例2、実施例3、実施例4、実施例5、実施例6及び実施例7で得られた本発明の油脂粉末並びに比較例1で得られた油脂粉末を検体として、50℃で6日間保存後の流動性を観察した。流動性の評価は、各検体を10メッシュのふるいで篩別したとき、ふるいで篩別する前の検体の全重量に対して、ふるいを通過した検体の重量を求め、その割合を算出した。結果を表2に示す。
【0036】
【表2】
【0037】
表2のとおり、本発明の油脂粉末の中でも、特に実施例1、実施例2、実施例3、実施例4及び実施例7については、10メッシュのふるいを通過した割合が80重量%を超え、特に優れた流動性を示した。
【0038】
[実施例8]
(A)高度不飽和脂肪酸含有油脂として、ドコサヘキサエン酸含有油脂(DHA46−RD:池田糖化工業株式会社製、ドコサヘキサエン酸含量:42重量%)25gと、(B)タンパク質含有乾燥物として、カザミノ酸粉末(Bacto(登録商標)カザミノ酸:ベクトン・ディッキンソン アンド カンパニー社製、全窒素濃度:10.8重量%、アミノ態窒素濃度:7.7重量%、アミノ態窒素濃度/全窒素濃度=0.71)10gと、(C)賦形剤として、セルロース(KCフロック(登録商標)W−200G:日本製紙株式会社製、全窒素濃度:不検出)65gとを、攪拌式混合機であるブレンダーに投入し均一に分散するまで混合することで、本発明の油脂粉末95g(実施例8)を得た。
【0039】
[実施例9]
(B)タンパク質含有乾燥物として、植物タンパク加水分解物粉末(プロエキスB:播州調味料株式会社製、全窒素濃度:6.2重量%、アミノ態窒素濃度:3.6重量%、アミノ態窒素濃度/全窒素濃度=0.58)を用いる以外は、実施例8と同様にして、本発明の油脂粉末95g(実施例9)を得た。
【0040】
[実施例10]
(A)高度不飽和脂肪酸含有油脂として、ドコサヘキサエン酸含有油脂(DHA46−RD:池田糖化工業株式会社製、ドコサヘキサエン酸含量:42重量%)25gと、(B)タンパク質含有乾燥物として、乾燥酵母粉末(アサヒフードアンドヘルスケア株式会社製、全窒素濃度:8.2重量%、アミノ態窒素濃度:0.7重量%、アミノ態窒素濃度/全窒素濃度=0.09)20gと、(C)賦形剤として、セルロース(KCフロック(登録商標)W−200G:日本製紙株式会社製、全窒素濃度:不検出)55gとを、攪拌式混合機であるブレンダーに投入し均一に分散するまで混合することで、本発明の油脂粉末95g(実施例10)を得た。
【0041】
[実施例11]
(B)タンパク質含有乾燥物として、酒粕粉末(ST酒粕パウダー:池田糖化工業株式会社製、全窒素濃度:4.4重量%、アミノ態窒素濃度:0.6重量%、アミノ態窒素濃度/全窒素濃度=0.14)を用いる以外は、実施例10と同様にして、本発明の油脂粉末95g(実施例11)を得た。
【0042】
[比較例2]
(B)タンパク質含有乾燥物として、カゼインナトリウム粉末(カゼインナトリウムCW:日本新薬株式会社製、全窒素濃度:14.1重量%、アミノ態窒素濃度:0.7重量%、アミノ態窒素濃度/全窒素濃度=0.05)を用いる以外は、実施例10と同様にして、油脂粉末95g(比較例2)を得た。
【0043】
[比較例3]
(B)タンパク質含有乾燥物として、きな粉(市販品、全窒素濃度:6.4重量%、アミノ態窒素濃度:0.2重量%、アミノ態窒素濃度/全窒素濃度=0.03)を用いる以外は、実施例10と同様にして、油脂粉末95g(比較例3)を得た。
【0044】
[比較例4]
(A)高度不飽和脂肪酸含有油脂として、ドコサヘキサエン酸含有油脂(DHA46−RD:池田糖化工業株式会社製、ドコサヘキサエン酸含量:42重量%)25gと、(B)アミノ酸乾燥物として、L−セリン粉末(協和発酵バイオ株式会社製、全窒素濃度:13.3重量%、アミノ態窒素濃度:11.5重量%、アミノ態窒素濃度/全窒素濃度=0.86)5gと、(C)賦形剤として、セルロース(KCフロック(登録商標)W−200G:日本製紙株式会社製、全窒素濃度:不検出)70gとを、攪拌式混合機であるブレンダーに投入し均一に分散するまで混合することで、油脂粉末95g(比較例4)を得た。
【0045】
[評価試験3]
実施例1、実施例7、実施例8、実施例9、実施例10及び実施例11で得られた本発明の油脂粉末並びに比較例1、比較例2、比較例3及び比較例4で得られた油脂粉末を検体として、それぞれを50℃で6日間保存した後、各検体をジエチルエーテルで抽出することで得られた脂質の過酸化物価(POV)を常法により測定した。なお、上記各実施例及び各比較例において、高度不飽和脂肪酸含有油脂として用いたドコサヘキサエン酸含有油脂(DHA46−RD:池田糖化工業株式会社製、ドコサヘキサエン酸含量:42重量%)のPOVは、0.9であった。また、50℃で6日間の保存条件は、常温保存の約1.5ヶ月間、冷蔵保存の約3ヶ月間にそれぞれ相当するものである。結果を表3に示す。
【0046】
【表3】
【0047】
表3に示すとおり、アミノ態窒素濃度/全窒素濃度が0.06〜0.8である、実施例1、実施例7、実施例8、実施例9、実施例10及び実施例11で得られた本発明の油脂粉末は、いずれもPOVが30以下と低い値であり、酸化安定性に優れた油脂粉末であった。一方、タンパク質含有乾燥物を含まない比較例1で得られた油脂粉末、アミノ態窒素濃度/全窒素濃度が0.06未満である比較例2及び比較例3で得られた油脂粉末並びにアミノ態窒素濃度/全窒素濃度が0.8超過である比較例4で得られた油脂粉末は、いずれもPOVが50を超えており、酸化安定性に劣る油脂粉末であった。
【0048】
[実施例12]
(A)高度不飽和脂肪酸含有油脂として、ドコサヘキサエン酸含有油脂(DHA46−RD:池田糖化工業株式会社製、ドコサヘキサエン酸含量:42重量%)26gと、(B)タンパク質含有乾燥物として、酵母エキス粉末(ミーストP1G:アサヒフードアンドヘルスケア株式会社製、全窒素濃度:12.3重量%、アミノ態窒素濃度:5.1重量%、アミノ態窒素濃度/全窒素濃度=0.41)10gと、(C)賦形剤として、セルロース(KCフロック(登録商標)W−200G:日本製紙株式会社製、全窒素濃度:不検出)20g及びオクテニルコハク酸デンプンナトリウム(乳華L:日澱化學株式会社製、全窒素濃度:不検出)39gと、さらに、乳化剤として、ポリグリセリン脂肪酸エステル(リョートー(登録商標)ポリグリエステルO−50D:三菱化学フーズ株式会社製)5gとを、攪拌式混合機であるブレンダーに投入し均一に分散するまで混合することで、本発明の油脂粉末95g(実施例12)を得た。
【0049】
[評価試験4]
実施例12で得られた本発明の油脂粉末を、50℃で9日間保存した後、ジエチルエーテルで抽出することで得られた脂質の過酸化物価(POV)を常法により測定した。なお、高度不飽和脂肪酸含有油脂として用いたドコサヘキサエン酸含有油脂(DHA46−RD:池田糖化工業株式会社製、ドコサヘキサエン酸含量:42重量%)のPOVは、0.9であった。また、50℃で9日間の保存条件は、常温保存の約2.5ヶ月間、冷蔵保存の約5ヶ月間に相当するものである。さらに、実施例12で得られた本発明の油脂粉末を検体として、50℃で9日間保存後の流動性を評価試験2と同様にして観察した。また、50℃で9日間保存後の油脂粉末1gを水道水99gに分散させ、その水に対する分散性を観察した。結果を表4に示す。
【0050】
【表4】
【0051】
表4に示す通り、実施例12で得られた本発明の油脂粉末は、POVが3.5と極めて低い値であった。また、10メッシュのふるいを通過した割合は、93重量%であり、特に優れた流動性を示した。さらに、水分散性については、油浮きが全く見られず、ムラの無い均一な水分散性を示した。
【0052】
[実施例13]
(A)高度不飽和脂肪酸含有油脂として、ドコサヘキサエン酸含有油脂(DHA46−RD:池田糖化工業株式会社製、ドコサヘキサエン酸含量:42重量%)25gと、(B)タンパク質含有乾燥物として、酵母エキス粉末(ミーストP1G:アサヒフードアンドヘルスケア株式会社製、全窒素濃度:12.3重量%、アミノ態窒素濃度:5.1重量%、アミノ態窒素濃度/全窒素濃度=0.41)10gと、(C)賦形剤として、澱粉(オイルQNo.50:日澱化學株式会社製、全窒素濃度:0.1重量%)65gとを、攪拌式混合機であるブレンダーに投入し均一に分散するまで混合することで、本発明の油脂粉末95g(実施例13)を得た。
【0053】
[評価試験5]
実施例13で得られた本発明の油脂粉末を、50℃で8〜22日間保存した後、ソックスレー抽出法により得られた脂質について、脂質のドコサヘキサエン酸(DHA)含量を社団法人日本油化学会編「基準油脂分析試験法」の「参3.2.3−1996」により、また、脂質の過酸化物価(POV)を常法により、それぞれ測定した。なお、高度不飽和脂肪酸含有油脂として用いたドコサヘキサエン酸含有油脂(DHA46−RD:池田糖化工業株式会社製、ドコサヘキサエン酸含量:42重量%)のPOVは0.9であった。また、50℃で8日間、15日間、22日間の保存条件は、それぞれ常温保存の約2ヶ月間、約4ヶ月間、約6ヶ月間、冷蔵保存の約4ヶ月間、約8ヶ月間、約12ヶ月間に相当するものである。結果を表5に示す。
【0054】
【表5】
【0055】
表5に示すとおり、実施例13で得られた本発明の油脂粉末は、いずれの保存条件においてもドコサヘキサエン酸含量が保持されているとともに、POVが4未満と顕著に低い値であり、酸化安定性に優れた油脂粉末であった。
【0056】
[実施例14]
(A)高度不飽和脂肪酸含有油脂として、エイコサペンタエン酸含有油脂(EPA−28:タマ生化学株式会社製、エイコサペンタエン酸含量:27重量%)20gと、(B)タンパク質含有乾燥物として、酵母エキス粉末(ミーストP1G:アサヒフードアンドヘルスケア株式会社製、全窒素濃度:12.3重量%、アミノ態窒素濃度:5.1重量%、アミノ態窒素濃度/全窒素濃度=0.41)20gと、(C)賦形剤として、澱粉(オイルQNo.50:日澱化學株式会社製、全窒素濃度:0.1重量%)60gとを、攪拌式混合機であるブレンダーに投入し均一に分散するまで混合することで、本発明の油脂粉末95g(実施例14)を得た。
【0057】
[比較例5]
(B)タンパク質含有乾燥物として、カゼインナトリウム粉末(カゼインナトリウムCW:日本新薬株式会社製、全窒素濃度:14.1重量%、アミノ態窒素濃度:0.7重量%、アミノ態窒素濃度/全窒素濃度=0.05)を用いる以外は、実施例14と同様にして、油脂粉末95g(比較例5)を得た。
【0058】
[評価試験6]
実施例14で得られた本発明の油脂粉末及び比較例5で得られた油脂粉末を、それぞれ50℃で6日間保存した後、ジエチルエーテルで抽出することで得られた脂質の過酸化物価(POV)を常法により測定した。なお、高度不飽和脂肪酸含有油脂として用いたエイコサペンタエン酸含有油脂(EPA−28:タマ生化学株式会社製、エイコサペンタエン酸含量:27重量%)のPOVは、1.2であった。また、50℃で6日間の保存条件は、常温保存の約1.5ヶ月間、冷蔵保存の約3ヶ月間に相当するものである。さらに、実施例14で得られた本発明の油脂粉末を検体として、50℃で6日間保存後の流動性を評価試験2と同様にして観察した。結果を表6に示す。
【0059】
【表6】
【0060】
表6に示すとおり、実施例14で得られた本発明の油脂粉末は、そのPOVが4.6という極めて低い値であった。一方、比較例5で得られた油脂粉末のPOVは、34.6という高い値を示した。すなわち、本発明の油脂粉末は、酸化安定性が顕著に高まっており、酸化による劣化が予防された、酸化安定性に優れた油脂粉末であることがわかった。また、実施例14で得られた本発明の油脂粉末の10メッシュのふるいを通過した割合は、90重量%であり、特に優れた流動性を示した。
【0061】
[実施例15]
(A)高度不飽和脂肪酸含有油脂として、ドコサヘキサエン酸含有油脂(DHA46−RD:池田糖化工業株式会社製、ドコサヘキサエン酸含量:42重量%)13gと、(B)タンパク質含有乾燥物として、酵母エキス粉末(ミーストP1G:アサヒフードアンドヘルスケア株式会社製、全窒素濃度:12.3重量%、アミノ態窒素濃度:5.1重量%、アミノ態窒素濃度/全窒素濃度=0.41)20gと、(C)賦形剤として、澱粉(オイルQNo.50:日澱化學株式会社製、全窒素濃度:0.1重量%)67gとを、攪拌式混合機であるブレンダーに投入し均一に分散するまで混合することで、本発明の油脂粉末95g(実施例15)を得た。
【0062】
[比較例6]
(B)タンパク質含有乾燥物として、カゼインナトリウム粉末(カゼインナトリウムCW:日本新薬株式会社製、全窒素濃度:14.1重量%、アミノ態窒素濃度:0.7重量%、アミノ態窒素濃度/全窒素濃度=0.05)を用いる以外は、実施例15と同様にして、油脂粉末95g(比較例6)を得た。
【0063】
[評価試験7]
実施例15で得られた本発明の油脂粉末及び比較例6で得られた油脂粉末を、それぞれ50℃で5日間保存した後、ジエチルエーテルで抽出することで得られた脂質の過酸化物価(POV)を常法により測定した。なお、高度不飽和脂肪酸含有油脂として用いたドコサヘキサエン酸含有油脂(DHA46−RD:池田糖化工業株式会社製、ドコサヘキサエン酸含量:42重量%)のPOVは0.9であった。また、50℃で5日間の保存条件は、常温保存の約1.3ヶ月間、冷蔵保存の約2.7ヶ月間に相当するものである。さらに、実施例15で得られた本発明の油脂粉末を検体として、50℃で5日間保存後の流動性を評価試験2と同様にして観察した。結果を表7に示す。
【0064】
【表7】
【0065】
表7に示すとおり、実施例15で得られた本発明の油脂粉末は、そのPOVが4.3という極めて低い値であった。一方、比較例6で得られた油脂粉末のPOVは、81.1という顕著に高い値を示した。すなわち、本発明の油脂粉末は、酸化安定性が顕著に高まっており、酸化による劣化が予防された、酸化安定性に優れた油脂粉末であることがわかった。また、実施例15で得られた本発明の油脂粉末の10メッシュのふるいを通過した割合は、90重量%であり、特に優れた流動性を示した。