(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
透明基材フィルムの一方の面に、第一ハードコート層、第一色調補正層、第二色調補正層がこの順に積層され、前記透明基材フィルムの他方の面に、第二ハードコート層がこの順に積層されており、
前記第一ハードコート層は、屈折率が1.51〜1.53、膜厚が1.3〜1.8μmであり、
前記第一色調補正層は、屈折率が1.65〜1.71、膜厚が35〜45nmであり、
前記第二色調補正層は、屈折率が1.51〜1.53、膜厚が30〜40nmであり、シリカ微粒子を含有せず、
前記第二ハードコート層は、屈折率が1.51〜1.53、膜厚が1.3〜1.8μmである、
ことを特徴とする色調補正フィルム。
請求項1に記載の色調補正フィルムの前記第二色調補正層上に錫ドープ酸化インジウム層が積層されており、前記錫ドープ酸化インジウム層は、屈折率が1.85〜2.35、膜厚が5〜50nmであることを特徴とする透明導電性フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の色調補正フィルムは、透明基材フィルムの一方の面に、第一ハードコート層、第一色調補正層、第二色調補正層がこの順に積層され、前記透明基材フィルムの他方の面に、第二ハードコート層がこの順に積層されている。そして、前記第一ハードコート層は、屈折率が1.51〜1.53、膜厚が1.3〜1.8μmであり、前記第一色調補正層は、屈折率が1.65〜1.71、膜厚が35〜45nmであり、前記第二色調補正層は、屈折率が1.51〜1.53、膜厚が30〜40nmであり、前記第二ハードコート層は、屈折率が1.51〜1.53、膜厚が1.3〜1.8μmである。
【0013】
以下に、この色調補正フィルムの構成要素について順に説明する。
<透明基材フィルム>
透明基材フィルムは、透明性を有している限り特に制限されないが、屈折率が1.55〜1.70の範囲内のものが好ましい。このような透明基材フィルムを形成する材料としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET、屈折率:1.67)等のポリエステル、ポリカーボネート(PC、屈折率:1.59)、ポリアリレート(PAR、屈折率:1.60)及びポリエーテルスルフォン(PES、屈折率:1.65)等が好ましい。これらのうち、ポリエステルフィルム、特にポリエチレンテレフタレートフィルムが成形の容易性で好ましい。
【0014】
透明基材フィルムの厚みは、好ましくは25〜400μm、さらに好ましくは25〜188μmである。透明基材フィルムの厚みが25μmより薄い場合や400μmより厚い場合には、色調補正フィルムの製造時及び使用時における取り扱い性が低下して好ましくない。透明基材フィルムの全光線透過率は、85%以上であることが好ましい。85%未満である場合は透明導電性フィルムの全光線透過率が低くなり好ましくない。なお、透明基材フィルムには、各種の添加剤が含有されていてもよい。そのような添加剤として例えば、紫外線吸収剤、帯電防止剤、安定剤、可塑剤、滑剤、難燃剤等が挙げられる。
【0015】
<第一ハードコート層及び第二ハードコート層>
表面硬度向上及びカール低減のために透明基材フィルムの両面にそれぞれ第一ハードコート層、第二ハードコート層が設けられている。これら2つのハードコート層の材料、膜厚及び屈折率は、後述の範囲である限り相互に同一であっても良いし、異なっていても良い。
【0016】
第一ハードコート層及び第二ハードコート層の材料としては従来より透明導電性フィルム等に用いられる公知のものであれば、特に制限されない。例えば、テトラエトキシシラン等の反応性珪素化合物や、活性エネルギー線硬化型樹脂を用いることができ、これらを混合してもよい。そして、これらに光重合開始剤を加えて調製したハードコート層用塗液に紫外線や電子線等の活性エネルギー線を照射して硬化させて第一ハードコート層及び第二ハードコート層を形成することができる。活性エネルギー線硬化型樹脂としては、例えば単官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリレートなどが挙げられる。単官能(メタ)アクリレートとして具体的には、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸(ポリ)エチレングリコール基含有(メタ)アクリル酸エステル等が好ましい。多官能(メタ)アクリレートとしては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物、ウレタン変性アクリレート等の(メタ)アクリロイル基を2個以上含む多官能重合性化合物等が挙げられる。なお、本明細書では、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートを指す。また、同様に、後述の「(メタ)アクリル単量体」は、アクリル単量体及びメタクリル単量体を指し、「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基及びメタクリロイル基を指す。
【0017】
これらのうち生産性及び硬度を両立させる観点より、鉛筆硬度(評価法:JIS−K5600−5−4)がH以上となる活性エネルギー線硬化型樹脂を含む組成物の硬化物であることが好ましい。
そのような活性エネルギー線硬化型樹脂を含む組成物としては特に限定されるものではないが、例えば、公知の活性エネルギー線硬化型樹脂、又は公知の活性エネルギー線硬化型樹脂を2種類以上混合したもの、紫外線硬化性ハードコート材として市販されているものを用いることができる。
【0018】
光重合開始剤は、紫外線(UV)等の活性エネルギー線により第一ハードコート層用塗液又は第二ハードコート層用塗液を硬化させて塗膜を形成する際の重合開始剤として用いられる。光重合開始剤としては、活性エネルギー線照射により重合を開始するものであれば特に限定されず、公知の化合物を使用できる。例えば、1−ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフェリノプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン等のアセトフェノン系重合開始剤、ベンゾイン、2,2−ジメトキシ1,2−ジフェニルエタン−1−オン等のベンゾイン系重合開始剤、ベンゾフェノン、[4−(メチルフェニルチオ)フェニル]フェニルメタノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、3,3',4,4'−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系重合開始剤、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系重合開始剤等が挙げられる。
【0019】
塗液の溶媒は、この種の色調補正フィルム等において各層形成用の塗液に従来から使用されている公知のものであれば特に制限は無く、例えばアルコール系、ケトン系、エステル系の溶媒が適時選択できる。
【0020】
また、第一ハードコート層及び第二ハードコート層は、透光性微粒子を含有していてもよい。透光性微粒子は、ハードコート層に表面の凹凸を形成し、製造工程上の巻き取り性を向上させるものである。前記透光性微粒子は、任意の材料を用いることが出来る。そのような透光性微粒子としては、例えばシリカのほか、塩化ビニル、(メタ)アクリル単量体、スチレン及びエチレンから選択される少なくとも1種の単量体を重合して得られる重合体などから形成される。
更に、第一ハードコート層及び第二ハードコート層は、その他添加剤を含有していても良い。その他の添加剤としては、表面調整剤やスリップ剤等が挙げられる。
【0021】
第一ハードコート層及び第二ハードコート層の屈折率は、1.51〜1.53であることが好ましい。屈折率が1.51未満の場合、透明基材フィルムとハードコート層との屈折率差が大きくなり、干渉ジマが発生するため好ましくない。屈折率が1.53よりも大きい場合、屈折率を大きくするためにハードコート層へ高屈折率材料を多く添加する必要があるが、高屈折率材料に起因した光の吸収及び、光の散乱が発生し、ハードコート層が着色し、且つ、全光線透過率が低下するため好ましくない。また第一ハードコート層及び第二ハードコート層の乾燥硬化後の膜厚は、1.3〜1.8μmである。膜厚が1.3μmより薄い場合は、鉛筆硬度がH未満になるため好ましくない。膜厚が1.8μmより厚い場合は、硬化収縮によるカールが強くなるとともに、不必要に厚くなり、生産性や作業性が低下するため好ましくない。また、さらに好ましい膜厚は、1.4〜1.6μmである。
【0022】
<第一色調補正層>
第一色調補正層は、第二色調補正層との屈折率の相対関係によって、互いに協働して色調補正フィルムないし透明導電性フィルムの色調を調整(透過色の着色を抑制)する層である。第一色調補正層は、金属酸化物微粒子と活性エネルギー線硬化型樹脂とを混合してなる第一色調補正層用塗液を活性エネルギー線(例えば紫外線、電子線)により硬化させた硬化物からなる。
【0023】
金属酸化物微粒子は、屈折率を積極的に高めるために配合されるものである。このような金属酸化物微粒子としては、酸化チタン及び酸化ジルコニウムが好ましい。酸化チタン及び酸化ジルコニウムの屈折率は製法によって異なるが、1.9〜2.5であることが好ましい。金属酸化物微粒子は、第一色調補正層中に30〜70wt%含まれる。金属酸化物微粒子の含有量が30wt%未満では、第一色調補正層の屈折率が後述の範囲外となるため好ましくない。一方、金属酸化物微粒子の含有量が70wt%を超えると、塗膜中の粒子の割合が多くなり、ヘイズ値が上昇してしまうため全光線透過率が低下する。
【0024】
また、バインダーとして用いられる活性エネルギー線硬化型樹脂は、屈折率が1.40〜1.70であることが好ましい。活性エネルギー線硬化型樹脂としては、第一ハードコート層及び第二ハードコート層で使用する活性エネルギー線硬化型樹脂と同種のものを使用すればよい。活性エネルギー線硬化型樹脂は、第一色調補正層中に30〜70wt%含まれる。活性エネルギー線硬化型樹脂の含有量が30wt%未満では、塗膜に対する活性エネルギー線硬化型樹脂の相対量が少なく塗膜がもろくなるため好ましくない。一方、活性エネルギー線硬化型樹脂の含有量が70wt%を超えると、第一色調補正層の屈折率が後述の範囲外となるため好ましくない。
【0025】
さらに、第一色調補正層は光重合開始剤も含む。当該光重合開始剤も第一ハードコート層及び第二ハードコート層で使用する光重合開始剤と同種のものを使用すればよい。光重合開始剤は、第一色調補正層中に0.1〜10wt%含まれる。光重合開始剤の含有量が0.1wt%未満では、活性エネルギー線硬化型樹脂の硬化が不十分となる。一方、光重合開始剤の含有量が10wt%を超えると、光重合開始剤が不必要に多くなり好ましくない。第一色調補正層用塗液の溶媒も、第一ハードコート層及び第二ハードコート層で使用する溶媒と同種のものを使用すればよい。
【0026】
第一色調補正層は、金属酸化物微粒子及び活性エネルギー線硬化型樹脂をそれぞれ上記範囲で含むことによって、屈折率が1.65〜1.71になるように形成される。さらに、第一色調補正層の乾燥硬化後の膜厚は35〜45nmであることが必要である。第一色調補正層の屈折率が1.65未満の場合は、JIS Z 8729に規定されているL*a*b*表色系における透過色のb*の値が大きくなってしまい、透明導電性フィルムの透過色の黄色味が明瞭に認識されるようになる。また、第一色調補正層の屈折率が1.71より大きい場合は、塗膜中の粒子の割合が多くなり、ヘイズ値が上昇してしまうため全光線透過率が低下する。第一色調補正層の膜厚が上記の範囲外では、b*の値が大きくなり、透明導電性フィルムの透過色の黄色味の着色が明瞭に認識されるようになる。
【0027】
<第二色調補正層>
第二色調補正層は、第一色調補正層との屈折率の相対関係によって、互いに協働して色調補正フィルムないし透明導電性フィルムの色調を調整(透過色の着色を抑制)する層である。第二色調補正層は、活性エネルギー線硬化型樹脂からなる第二色調補正層用塗液を活性エネルギー線(例えば紫外線、電子線)により硬化させた硬化物からなる。
【0028】
第二色調補正層として用いられる活性エネルギー線硬化型樹脂は、屈折率が1.51〜1.53であることが好ましい。活性エネルギー線硬化型樹脂としては、第一ハードコート層及び第二ハードコート層で使用する活性エネルギー線硬化型樹脂と同種のものを使用すればよい。また、第二色調補正層は、シリカ微粒子を含有していてもよい。シリカ微粒子は、第二色調補正層の屈折率を微調整するものである。シリカ微粒子は、0〜10wt%含まれてもよいが、シリカ微粒子を含有しない方が好ましい。一方、シリカ微粒子の含有量が10wt%より多いと、塗膜中の粒子の割合が多くなり、ヘイズ値が上昇してしまうため全光線透過率が低下する。
【0029】
さらに、第二色調補正層は光重合開始剤も含む。当該光重合開始剤も第一ハードコート層及び第二ハードコート層で使用する光重合開始剤と同種のものを使用すればよい。光重合開始剤は、第二色調補正層中に0.1〜10wt%含まれる。光重合開始剤の含有量が0.1wt%未満では、活性エネルギー線硬化型樹脂の硬化が不十分となる。一方、光重合開始剤の含有量が10wt%を超えると、光重合開始剤が不必要に多くなり好ましくない。第二色調補正層用塗液の溶媒も、第一ハードコート層及び第二ハードコート層で使用する溶媒と同種のものを使用すればよい。
【0030】
第二色調補正層は、屈折率が1.51〜1.53になるように形成される。さらに、第二色調補正層の乾燥硬化後の膜厚は30〜40nmであることが必要である。第二色調補正層の屈折率が1.51未満の場合は、塗膜中の粒子の割合が多くなり、ヘイズ値が上昇してしまうため全光線透過率が低下する。また、第二色調補正層の屈折率が1.53より大きい場合は、JIS Z 8729に規定されているL*a*b*表色系における透過色のb*の値が大きくなってしまい、透明導電性フィルムの透過色の黄色味が明瞭に認識されるようになる。第二色調補正層の膜厚が上記の範囲外では、b*の値が大きくなってしまい、透明導電性フィルムの透過色の黄色味の着色が明瞭に認識されるようになる。
【0031】
<第一ハードコート層、第一色調補正層、第二色調補正層、第二ハードコート層の形成>
第一ハードコート層は、透明基材フィルムに第一ハードコート層用塗液を塗布した後に、活性エネルギー線照射により硬化することで形成される。第二ハードコート層は、第一ハードコート層とは反対側の面に、第二ハードコート層用塗液を塗布した後に、活性エネルギー線照射により硬化することで形成される。
【0032】
一方、第一色調補正層は、形成された第一ハードコート層上に第一色調補正層用塗液を塗布した後に、活性エネルギー線照射により硬化することで形成される。また、第二色調補正層は、形成された第一色調補正層上に第二色調補正層用塗液を塗布した後に、活性エネルギー線照射により硬化することで形成される。第一ハードコート層用塗液、第二ハードコート層用塗液、第一色調補正層用塗液、第二色調補正層用塗液の塗布方法は特に制限されず、例えばロールコート法、スピンコート法、ディップコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ダイコート法、インクジェット法、グラビアコート法等公知のいかなる方法も採用できる。また、活性エネルギー線の種類は特に制限されないが、利便性等の観点から紫外線を用いることが好ましい。尚、各ハードコート層の透明基材フィルムに対する密着性を向上させるために、予め透明基材フィルム表面にコロナ放電処理等の前処理を施すことも可能である。
【0033】
《透明導電性フィルム》
透明導電性フィルムは、色調補正フィルムの第二色調補正層上に錫ドープ酸化インジウム層を積層した構成である。すなわち、透明導電性フィルムは、上(表側)から錫ドープ酸化インジウム層、第二色調補正層、第一色調補正層、第一ハードコート層、透明基材フィルム、第二ハードコート層が順に積層した構成である。
【0034】
透明導電性フィルムの透過光の着色は、JIS Z 8729に規定されるLab表色系のb*で評価でき、好ましくは−2≦b*≦2、より好ましくは−1≦b*≦1である。b*>2の場合、透明導電性フィルムが黄色に着色して見えるため好ましくない。一方、b*<−2の場合、透明導電性フィルムが青色に着色して見えるため好ましくない。
【0035】
透明導電性フィルムの全光線透過率は、好ましくは88%以上である。全光線透過率が88%未満の場合、タッチパネルなどの部材に使用した時に輝度が悪化するため好ましくない。また、ヘイズ値は、好ましくは1%未満である。ヘイズ値が1%以上の場合、白化し、タッチパネルなどの部材に使用した時に表示画像の視認性が悪化するため好ましくない。
【0036】
<錫ドープ酸化インジウム層>
第二色調補正層の上に積層される錫ドープ酸化インジウム層(以下、ITO層と略することがある)は、透明導電層であり、屈折率が1.85〜2.35、膜厚が5〜50nmである。屈折率がこの範囲を外れると、第一色調補正層及び第二色調補正層との光学干渉が適切に作用しなくなるため、透明導電性フィルムの透過色が着色を呈し、全光線透過率も低下する。膜厚が5nmより薄い場合は、均一に成膜することが難しく、安定した抵抗が得られないため好ましくない。また、膜厚が50nmより厚い場合は、ITO層自身による光の吸収が強くなり、透過色の着色低減効果が薄れると共に、全光線透過率が小さくなる傾向があるため好ましくない。
【0037】
<錫ドープ酸化インジウム層の形成>
錫ドープ酸化インジウム層の製膜方法は、特に限定されず、例えば蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、CVD法を採用できる。これらの中では、層の厚み制御の観点より蒸着法及びスパッタリング法が特に好ましい。尚、錫ドープ酸化インジウム層を形成した後、必要に応じて、100℃〜200℃の範囲内でアニール処理を施して結晶化することができる。具体的には、高い温度で結晶化すると錫ドープ酸化インジウム層の屈折率は小さくなる傾向を示す。従って、錫ドープ酸化インジウム層の屈折率は、アニール処理の温度と時間を制御することで調整可能である。
【実施例】
【0038】
以下に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明するが、本発明はそれら実施例の範囲に限定されるものではない。
【0039】
まず、第一ハードコート層及び第二ハードコート層用塗液、第一色調補正層用塗液、第二色調補正層用塗液を調製し、各液を用いて形成される層の屈折率を次の方法にて測定した。
<屈折率(ITO層以外の層)>
(1)屈折率が1.67のPETフィルム(商品名「A4100」、東洋紡績株式会社製)上に、ディップコーター(杉山元理化学機器株式会社製)により、各層用塗液をそれぞれ乾燥硬化後の膜厚で100〜1000nm程度になるように層の厚さを調整して塗布した。
(2)乾燥後、紫外線照射装置(岩崎電気株式会社製)により窒素雰囲気下で120W高圧水銀灯を用いて、400mJの紫外線を照射して硬化した。硬化後のPETフィルム裏面をサンドペーパーで荒らし、黒色塗料で塗りつぶしたものを反射分光膜厚計(「FE-3000」、大塚電子株式会社製)により、反射スペクトルを測定した。
(3)反射スペクトルより読み取った反射率から、下記に示すn-Cauchyの波長分散式(式1)の定数を求め、光の波長589nmにおける屈折率を求めた。
N(λ)=a/λ
4+b/λ
2+c (式1)
(N:屈折率、λ:波長、a、b、c:波長分散定数)
【0040】
〔第一ハードコート層用塗液(HC1−1)の調製〕
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)100質量部、光重合開始剤[商品名:IRGACURE184、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製]5質量部及びイソブチルアルコール150質量部を混合して第一ハードコート層用塗液(HC1−1)を調製した。ハードコート層用塗液(HC1−1)を用いて形成されるハードコート層の屈折率は1.51であった。
【0041】
〔第二ハードコート層用塗液(HC2−1)の調製〕
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート100質量部、光重合開始剤[商品名:IRGACURE184、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製]5質量部、アクリル系有機微粒子[商品名:MX−80H3wT、綜研化学(株)製]5質量部及びイソブチルアルコール150質量部を混合して第二ハードコート層用(HC2−1)を調製した。ハードコート層用塗液(HC2−1)を用いて形成されるハードコート層の屈折率は1.51であった。
【0042】
〔第一色調補正層用塗液の調製〕
第一色調補正層用塗液として次の原料を使用し、各原料を下記表1に記載した組成にて、金属酸化物微粒子及び活性エネルギー線硬化型樹脂と、光重合開始剤と、溶媒を、質量比で100:5:1000の割合で混合し、第一色調補正層用塗液C1−1を調製した。得られた第一色調補正層用塗液C1−1を用いて形成される色調補正層の屈折率を測定した。その結果を表1に示す。
【0043】
各原料については、金属酸化物微粒子として、酸化ジルコニウム微粒子分散液(シーアイ化成(株)製 ZRMEK25%−F47)を使用した。活性エネルギー線硬化型樹脂として、6官能ウレタンアクリレート(日本合成化学工業(株)製紫光UV−7600B)を使用した。光重合開始剤として、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製IRGACURE184(I−184)を使用した。また溶媒としてメチルイソブチルケトンを使用した。
【0044】
【表1】
【0045】
〔第二色調補正層用塗液の調製〕
第二色調補正層用塗液として次の原料を使用し、各原料を下記表2に記載した組成にて、活性エネルギー線硬化型樹脂と、光重合開始剤と、溶媒を、質量比で100:5:4000の割合で混合して、第二色調補正層用塗液C2−1を調製した。得られた第二色調補正層用塗液C2−1を用いて形成される色調補正層の屈折率を測定した。その結果を表2に示す。
【0046】
各原料については、活性エネルギー線硬化型樹脂として、日本化薬(株)製
DPHAを使用した。光重合開始剤として、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製IRGACURE907(I−907)を使用した。そして溶媒として、イソプロピルアルコールを使用した。
【0047】
【表2】
【0048】
(実施例1−1)
屈折率が1.67、全光線透過率が91.5%、厚さ125μmのPETフィルムの一面に、第一ハードコート層用塗液(HC1−1)をバーコーターにて塗布し、120W高圧水銀灯にて400mJの紫外線を照射して硬化させることにより第一ハードコート層を形成した。続いて、PETフィルムの他面に第二ハードコート層用塗液(HC2−1)をバーコーターにて塗布し、120W高圧水銀灯にて400mJの紫外線を照射して硬化させることにより第二ハードコート層を形成した。
【0049】
上記第一ハードコート層上に、第一色調補正層用塗液(C1−1)をバーコーターにて塗布し、120W高圧水銀灯にて400mJの紫外線を照射して硬化させることにより第一色調補正層を形成した。上記第一色調補正層上に、第二色調補正層用塗液(C2−1)をバーコーターにて塗布し、120W高圧水銀灯にて400mJの紫外線を照射して硬化させることにより第二色調補正層を形成し、色調補正フィルム(S1−1)を作製した(各層の膜厚は下記表3を参照)。
作成した色調補正フィルム(S1−1)の反射スペクトルを測定した。
図1に測定した反射スペクトルを示す。
反射スペクトル測定法:測定面の裏面反射を除くため、裏面をサンドペーパーで粗し、5°正反射測定装置を備えた分光光度計〔日本分光(株)製、商品名:U-best50〕を用いて反射率を測定した。
【0050】
(実施例1−2〜実施例1−5)
第一ハードコート層、第一色調補正層、第二色調補正層、第二ハードコート層、低屈折率層を下記表3に記載した材料及び膜厚とした以外は、実施例1−1と同様にして、色調補正フィルム(S1−2〜S1−5)を作製した。
【0051】
【表3】
【0052】
(比較例1−1〜比較例1−4)
第一ハードコート層、第一色調補正層、第二色調補正層、第二ハードコート層、低屈折率層を下記表4に記載した材料及び膜厚とした以外は、実施例1−1と同様にして、色調補正フィルム(S'1−1〜S'1−4)を作製した。
【0053】
【表4】
【0054】
(実施例2−1)
上記色調補正フィルム(S1−1)の第二色調補正層上にインジウム:錫=10:1のITOターゲットを用いてスパッタリングを行うことにより、膜厚が20nmの錫ドープ酸化インジウム層(ITO層)を形成し、150℃、30分のアニール処理を施し、透明導電性フィルムを作製した。得られた透明導電性フィルムについて、透過色b*、全光線透過率、ヘイズ値を次の方法で測定した。その結果を下記表5に示す。
【0055】
<透過色>
色差計(「SQ−2000」、日本電色工業株式会社製)を用いて透明導電性フィルムの透過色、b*を測定した。このb*は、JIS Z 8729に規定されているL*a*b*表色系における値である。
【0056】
<全光線透過率・ヘイズ値>
ヘイズメーター(「NDH2000」、日本電色工業株式会社製)により透明導電性フィルムの全光線透過率(%)及びヘイズ値を測定した。
【0057】
(実施例2−2〜実施例2−5)
表5に記載された各色調補正フィルム(S1−2〜S1−5)を用い、実施例2−1と同様にして透明導電性フィルムを作製した。
得られた実施例2−2〜実施例2−5の透明導電性フィルムについて、実施例2−1と同様に透過色b*、全光線透過率、ヘイズ値を測定した。その結果を下記表5に示す。
【0058】
【表5】
【0059】
(比較例2−1〜比較例2−4)
表6に記載された各色調補正フィルム(S'1−1〜S'1−4)を用い、実施例2−1と同様にして透明導電性フィルムを作製した。
得られた比較例2−1〜比較例2−4の透明導電性フィルムについて、実施例2−1と同様に透過色b*、全光線透過率、ヘイズ値を測定した。その結果を下記表6に示す。
【0060】
【表6】
【0061】
また、実施例2−1〜実施例2−5及び比較例2−1〜比較例2−4の透明導電性フィルムについて、ITO層の屈折率を次の方法にて測定し、その結果を上記表5,6に併記する。
<屈折率(ITO層)>
(1)屈折率が1.67のPETフィルム(商品名「A4100」、東洋紡績株式会社製)上にインジウム:錫=10:1のITOターゲットを用いてスパッタリングを行い、実膜厚20nmの透明導電層としての錫ドープ酸化インジウム層(ITO層)を形成し、下記実施例および比較例のそれぞれの条件でアニーリングを施し、透明導電性フィルムを作製した。
(2)上記透明導電性フィルム裏面をサンドペーパーで荒らし、黒色塗料で塗りつぶしたものを反射分光膜厚計(「FE-3000」、大塚電子株式会社製)により、反射スペクトルを測定した。
(3)反射スペクトルより読み取った反射率から、上記(式1)を用いて、光の波長589nmにおける屈折率を求めた。
なお、各表に記載の各層の屈折率は、上記屈折率測定用サンプルから求めた屈折率である。
【0062】
(結果および考察)
実施例2−1〜実施例2−5(表3、表5)の結果から明らかなように、第一及び第二ハードコート層の屈折率を1.51〜1.53とし、膜厚を1.3〜1.8μmとし、第一色調補正層の屈折率を1.65〜1.71、膜厚を35〜45nmとし、第二色調補正層の屈折率を1.51〜1.53、膜厚を30〜40nmとすると、透過色b*の値が小さく、透明導電性フィルムの着色を十分に抑え、更に、優れた全光線透過率を実現することが出来た。
【0063】
その一方、比較例2−1〜2−5(表4、表6)では、各色調補正層、又は錫ドープ酸化インジウム層の屈折率、及び膜厚のいずれかが上記範囲を外れており、透過色b*の値が大きく透明導電性フィルムが着色する、若しくは、全光線透過率が低くなった。