(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態によるメモリデバイスの構成例を示す図である。メモリデバイスは、クロックバッファ101、アドレスバッファ102、WEバッファ103、タイミング生成回路104、ロウデコーダ105、ドライバ106、入出力(I/O)バッファ107、コラムデコーダ108、センスアンプ109及びメモリセルアレイ110を有する。
【0011】
図2は、メモリセル200の構成例を示す図である。複数のメモリセル200は、
図1のメモリセルアレイ110内に行列状に配置される。メモリセル200は、nチャネル電界効果トランジスタ201及び第3の強誘電体容量202を有し、第3の強誘電体容量202に「0」又は「1」のデータを記憶させることができる。nチャネル電界効果トランジスタ201は、ゲートがワード線WLに接続され、ドレインがビット線BLに接続され、ソースが第3の強誘電体容量202に接続される。第3の強誘電体容量202は、nチャネル電界効果トランジスタ201のソース及びプレート線PL間に接続される。ワード線WLは、同じ行の複数のメモリセル200に共通に接続される。ビット線BLは、同じ列の複数のメモリセル200に共通に接続される。メモリセル200は、ワード線WLにより選択され、データを記憶する。
【0012】
図1において、メモリデバイスは、強誘電体メモリデバイスの例を示すが、DRAM(Dynamic Random Access Memory)でもよい。クロックバッファ101は、アドレスバッファ102、WEバッファ103及びタイミング生成回路104にクロック信号CKを供給する。アドレスバッファ102は、ロウアドレスRAをロウデコーダ105に供給し、コラムアドレスCAをコラムデコーダ108に供給する。WEバッファ103は、ライトイネーブル信号WEを入出力バッファ107に供給する。タイミング生成回路104は、ドライバ106に信号WLBST及びWLDRVを出力し、センスアンプ109にアクティブ信号ACを出力する。
【0013】
ロウデコーダ105は、ロウアドレスRAをデコードし、選択信号WLSELを出力する。ドライバ106は、選択信号WLSELに応じて、各行のワード線WL及びプレート線PLの電圧を制御する。これにより、ロウアドレスRAに応じて、行列状のメモリセル200内の1つの行のメモリセル200が選択される。
【0014】
まず、ライト(書き込み)動作について説明する。入出力バッファ107は、ライトイネーブル信号WEがライトコマンドを示す場合には入力データINをセンスアンプ109に出力する。センスアンプ109は、アクティブ信号ACがハイレベルになると、入力データINを増幅して出力する。コラムデコーダ108は、コラムアドレスCAをデコードし、コラムアドレスCAに応じたビット線BLをセンスアンプ109の出力端子に接続する。これにより、コラムアドレスCAに応じた列のメモリセル200が選択される。選択されたメモリ200には、入力データINが書き込まれる。
【0015】
次に、リード(読み出し)動作について説明する。ワード線WLにより選択されたメモリセル200は、第3の強誘電体容量202に記憶されているデータをビット線BLに出力する。コラムデコーダ108は、コラムアドレスCAをデコードし、コラムアドレスCAに応じたビット線BLをセンスアンプ109の入力端子に接続する。これにより、コラムアドレスCAに応じた列のメモリセル200が選択される。センスアンプ109は、アクティブ信号ACがハイレベルになると、ビット線BLのデータを増幅して出力する。入出力バッファ107は、ライトイネーブル信号WEがリードコマンドを示す場合には、センスアンプ109の出力データを出力データOUTとして外部に出力する。
【0016】
図3は
図1のメモリデバイスのリード動作を示すタイミングチャートであり、
図4は
図2の第3の強誘電体容量202のヒステリシス特性を示す図である。
図4の縦軸は第3の強誘電体容量202に蓄積されている電荷量Qを示し、
図4の横軸はV
PL−V
BLの電圧を示す。ここで、V
PLはプレート線PLの電圧であり、V
BLはnチャネル電界効果トランジスタ201がオンしている場合のビット線BLの電圧である。
【0017】
時刻taでは、ドライバ106がワード線WLをローレベルからハイレベルに変化させる。すると、nチャネル電界効果トランジスタ201がオンし、ビット線BLは第3の強誘電体容量202に接続される。プレート線PL及びBLは、共にローレベル(0V)であるので、
図4のV
PL−V
BLの電圧は0Vになる。例えば、第3の強誘電体容量202は、「1」のデータを記憶している場合にはポイント401に位置する。また、第3の強誘電体容量202は、「0」のデータを記憶している場合にはポイント411に位置する。
【0018】
次に、時刻tbでは、ドライバ106がプレート線PLをローレベルからハイレベル(電源電位Vdd)に変化させる。すると、ビット線BLは、第3の強誘電体容量202の容量値とビット線BLの容量値との容量分割で決まる電位301又は302に上昇する。第3の強誘電体容量202は、記憶データに対応する残留分極の向きにより、プレート線PLの電位が上昇する時の容量値が異なるため、残留分極の向きにより2種類のビット線BLの電位301及び302が生じる。電位301は、第3の強誘電体容量202が「1」のデータを記憶している場合(ポイント401)の電位であり、
図4のポイント401からポイント402に遷移し、その後にポイント403に向かって遷移する。電位302は、第3の強誘電体容量202が「0」のデータを記憶している場合(ポイント411)の電位であり、
図4のポイント411からポイント412に遷移する。
【0019】
次に、時刻tcでは、ドライバ106は、ワード線WLを電源電位Vddから電圧Vdd+Vthに上昇させる。Vthは、nチャネル電界効果トランジスタ201の閾値電圧である。また、アクティブ信号ACがハイレベルになり、センスアンプ109は、ビット線BLの電位を電源電位Vdd又はグランド電位の2値に増幅する。これにより、電位301は電源電位Vddになり、電位302はグランド電位になる。ビット線BLは、メモリセル200に「1」のデータが記憶されている場合には電源電位Vddになり、メモリセル200に「0」のデータが記憶されている場合にはグランド電位になる。ビット線BLの電位は、出力データOUTとして外部に読み出される。
【0020】
ここで、上記の読み出しは、破壊読み出しであり、第3の強誘電体容量202の記憶内容が消去されてしまう。そこで、下記の処理により、第3の強誘電体容量202に再書き込みを行い、第3の強誘電体容量202の記憶内容を復元する。
【0021】
次に、時刻tdでは、ドライバ106は、プレート線PLをハイレベルからローレベルに変化させる。すると、第3の強誘電体容量202は、「0」のデータを記憶している場合には、ポイント412からポイント411に遷移し、元の「0」のデータの記憶状態に戻り、再書き込みが終了する。また、第3の強誘電体容量202は、「1」のデータを記憶している場合には、ポイント403からポイント404に遷移するが、再書き込み処理は終了しない。
【0022】
次に、時刻teでは、ドライバ106は、ワード線WLを電圧Vdd+Vthから電源電位Vddに下げる。また、アクティブ信号ACがローレベルになり、センスアンプ109は、ビット線BLをグランド電位にする。すると、第3の強誘電体容量202は、「1」のデータを記憶している場合には、ポイント404からポイント401に遷移し、元の「1」のデータの記憶状態に戻り、再書き込みが終了する。
【0023】
次に、時刻tfでは、ドライバ106は、ワード線WLを電源電位Vddからグランド電位に下げる。すると、nチャネル電界効果トランジスタ201はオフし、ビット線BLは第3の強誘電体容量202から切り離される。
【0024】
ここで、時刻tc〜teのワード線WLの電圧Vdd+Vthについて説明する。時刻td〜teにおいて、ビット線BLが第3の強誘電体容量202に電圧を印加する場合、nチャネル電界効果トランジスタ201のゲート電圧(ワード線WLの電圧)Vgからnチャネル電界効果トランジスタ201の閾値電圧Vthを引いた電圧Vg−Vthまでしか、第3の強誘電体容量202に電圧を印加することができない。このため、ビット線BLの電位Vddを第3の強誘電体容量202に印加するためには、nチャネル電界効果トランジスタ201のゲート電圧(ワード線WLの電圧)Vgを電源電位Vddに閾値電圧Vthを加えた電圧Vdd+Vthまで昇圧しなければならない。このため、時刻tcからtdまでの間に、ドライバ106は、ワード線WLを電源電位Vddから電圧Vdd+Vthに昇圧する必要がある。以下、ワード線WLの昇圧回路の構成を説明する。
【0025】
図5は、昇圧回路500の構成例を示す回路図である。昇圧回路500は、
図1のドライバ106内に設けられ、ワード線WL毎に設けられる。ワード線WLは、寄生容量Cwlを有する。寄生容量Cwlは、ワード線WL及びグランド電位ノード間に接続されている。昇圧回路500は、ワード線WLの電圧を生成(昇圧)する。
【0026】
否定論理積(NAND)回路A2は、信号WLSEL及びWLBSTの否定論理積信号を出力する。インバータI5は、否定論理積回路A2の出力信号の論理反転信号を第1のノードn1に出力する。第1の強誘電体容量Cf1は、第1のノードn1及びワード線WL間に接続される。
【0027】
インバータI2は、信号WLBSTの論理反転信号を出力する。否定論理積回路A1は、インバータI2の出力信号及び信号WLSELの否定論理積信号を出力する。インバータI1は、否定論理積回路A1の出力信号の論理反転信号を出力する。nチャネル電界効果トランジスタT1は、ドレインがインバータI1の出力端子に接続され、ゲートが電源電位Vddのノードに接続され、ソースがnチャネル電界効果トランジスタT2のゲートに接続される。
【0028】
インバータI3は、信号WLDRVの論理反転信号を出力する。インバータI4は、インバータI3の出力信号の論理反転信号を出力する。nチャネル電界効果トランジスタT2は、ドレインがインバータI4の出力端子に接続され、ゲートがnチャネル電界効果トランジスタT1のソースに接続され、ソースがワードラインWLに接続される。nチャネル電界効果トランジスタT3は、ドレインがワード線WLに接続され、ゲートがインバータI3の出力端子に接続され、ソースがグランド電位ノードに接続される。
【0029】
図6は、昇圧回路500の動作を説明するためのタイミングチャートである。時刻t0では、ロウデコーダ105は、複数のワード線WLの中の1つを選択するための選択信号WLSELをローレベルからハイレベルにし、タイミング生成回路104は、ローレベルの信号WLBST及びWLDRVを維持する。すると、ノードn1は、ローレベルになる。インバータI1は、ハイレベルの電源電位Vddを出力する。nチャネル電界効果トランジスタT1は、ドレインが電源電位Vddであり、ゲートが電源電位Vddである。その結果、nチャネル電界効果トランジスタT1のソースは、電源電位Vddからnチャネル電界効果トランジスタT1の閾値電圧Vthを減算した電圧Vdd−Vthを、nチャネル電界効果トランジスタT2のゲートに出力する。また、インバータI3はハイレベルを出力するので、nチャネル電界効果トランジスタT3はオンし、ワード線WLはグランド電位になる。
【0030】
次に、時刻t1では、タイミング生成回路104は、信号WLDRVをローレベルからハイレベルにする。すると、インバータI3はローレベルを出力し、nチャネル電界効果トランジスタT3はオフし、ワード線WLはグランド電位ノードから切り離される。また、インバータI4は、ハイレベルをnチャネル電界効果トランジスタT2のドレインに出力する。すると、nチャネル電界効果トランジスタT2のゲート電圧は、容量カップリングにより、Vdd+Vth以上の電圧に昇圧される。これにより、nチャネル電界効果トランジスタT2のソースは、ワード線WLに電源電位Vddを出力する。
【0031】
次に、時刻t2では、タイミング生成回路104は、信号WLBSTをローレベルからハイレベルにする。すると、インバータI1はローレベルをnチャネル電界効果トランジスタT2のゲートに出力し、nチャネル電界効果トランジスタT2はオフする。nチャネル電界効果トランジスタT3もオフ状態を維持しているので、ワード線WLは、フローティング状態になる。また、インバータI5は、ハイレベルの電源電位Vddを第1のノードn1に出力する。第1のノードn1がグランド電位から電源電位Vddに上昇すると、第1の強誘電体容量Cf1の容量カップリングにより、ワード線WLは、電源電位Vddから電圧Vdd+Δに上昇する。ここで、第1の強誘電体容量Cf1は、通常の容量でもよいが、強誘電体容量を用いることにより、単位面積当たりの容量値を大きくすることができ、昇圧回路500を小面積化できる。
【0032】
次に、時刻t3では、タイミング生成回路104は、信号WLBSTをハイレベルからローレベルにする。すると、時刻t1〜t2と同様に、第1のノードn1はグランド電位になり、ワード線WLは電源電位Vddになる。
【0033】
次に、時刻t4では、タイミング生成回路104は、信号WLDRVをハイレベルからローレベルにする。すると、時刻t0〜t1と同様に、第1のノードn1はグランド電位を維持し、ワード線WLは、電源電位Vddからグランド電位になる。
【0034】
次に、時刻t5では、ロウデコーダ105は、選択信号WLSELをハイレベルからローレベルにする。すると、第1のノードn1及びワード線WLは、グランド電位を維持する。
【0035】
以上のように、昇圧回路500は、ワード線WLの電圧を生成することができる。
図6のワード線WLの電圧は、
図3のワード線WLの電圧と同じである。電圧Δは、閾値電圧Vth以上の電圧であり、閾値電圧Vthと同じ電圧が好ましい。
【0036】
図7は、第1の強誘電体容量Cf1の容量値の温度依存性及び電圧依存性を示す図である。横軸は第1の強誘電体容量Cf1の両端電圧を示し、縦軸は第1の強誘電体容量Cf1の容量値を示す。実線701は、高温時の特性を示す。破線702は、低温時の特性を示す。第1の強誘電体容量Cf1は、両端電圧が高くなると、容量値が小さくなる。また、第1の強誘電体容量Cf1は、温度が高いほど、容量値が大きくなる。
【0037】
第1の強誘電体容量Cf1の容量値は、温度依存性が大きいため、温度により、ワード線WLの昇圧電圧Δが変動してしまう。第1の強誘電体容量Cf1の容量値が小さい低温時に、ワード線WLの昇圧電圧Δが十分な電圧になるように昇圧回路500を調整すると、高温時には、第1の強誘電体容量Cf1の容量値が大きくなり、ワード線WLの昇圧電圧Δが高くなりすぎてしまい、
図2のnチャネル電界効果トランジスタ201のゲート酸化膜絶縁性の寿命が短くなってしまう。そのため、ワード線WLの昇圧電圧Δの温度による変動を低減することができる昇圧回路500が望まれる。以下、昇圧電圧Δの温度による変動を低減することができる昇圧回路500を、
図8を参照しながら説明する。
【0038】
図8は、第1の実施形態による昇圧回路500の構成例を示す図である。昇圧回路500は、
図1のドライバ106内に設けられ、ワード線WL毎に設けられる。ワード線WLは、寄生容量Cwlを有する。寄生容量Cwlは、ワード線WL及びグランド電位ノード間に接続されている。昇圧回路500は、ワード線WLの電圧を生成(昇圧)する。
【0039】
図8の昇圧回路500は、
図5の昇圧回路500に対して、第2の強誘電体容量Cf2を追加したものである。以下、
図8の昇圧回路500が
図5の昇圧回路500と異なる点を説明する。第2の強誘電体容量Cf2は、電源電位(定電位)Vddのノード(第2のノード)及びワード線WL間に接続され、ワード線WLの負荷容量となる。
【0040】
図8の昇圧回路500は、
図6のタイミングチャートと同じ動作をする。上記のように、時刻t1〜t2では、信号WLSELがハイレベルであり、信号WLDRVがハイレベルであり、信号WLBSTがローレベルであるため、ワード線WLは電源電位Vddになり、第1のノードn1はグランド電位になる。このため、第1の強誘電体容量Cf1の両端電圧は、Vddになる。一方、第2の強誘電体容量Cf2の両端電圧は、0Vになる。
【0041】
時刻t2では、信号WLBSTがハイレベルになると、第1のノードn1に電源電位Vddが印加され、第1の強誘電体容量Cf1の容量カップリングにより、ワード線WLは電圧Δだけ昇圧される。この際、寄生容量Cwl及び第2の強誘電体容量Cf2が共にワード線WLの負荷容量として働く。寄生容量Cwl及び第2の強誘電体容量Cf2のつりあいにより、昇圧電圧Δが決定される。時刻t2の前のワード線WLの電圧はVddであり、時刻t2の後のワード線WLの電圧はVdd+Δである。時刻t2の前では、第1の強誘電体容量Cf1の両端電圧はVddであり、第2の強誘電体容量Cf2の両端電圧は0Vであり、寄生容量Cwlの両端電圧はVddである。時刻t2の後では、第1の強誘電体容量Cf1の両端電圧はΔであり、第2の強誘電体容量Cf2の両端電圧もΔであり、寄生容量Cwlの両端電圧はVdd+Δである。すなわち、時刻t2の前後で、第1の強誘電体容量Cf1の両端電圧はVddからΔに変化し、第2の強誘電体容量Cf2の両端電圧は0VからΔに変化し、寄生容量Cwlの両端電圧はVddからVdd+Δに変化する。
【0042】
低温L(例えば−40℃)での昇圧電圧ΔをΔLとし、高温H(例えば125℃)での昇圧電圧ΔをΔHとすると、電荷量は温度によらず保存されるため、次式(1)及び(2)が成り立つ。ここで、vは電圧である。
【0044】
ここで、温度が変化しても、昇圧電圧Δが一定となる条件を求めるため、ΔL=ΔH=Δを式(1)及び(2)に代入すると、次式(3)及び(4)が成り立つ。
【0046】
寄生容量Cwlは、強誘電体容量Cf1及びCf2に比べて、温度依存性が小さいので、寄生容量Cwlの温度依存性を無視し、強誘電体容量Cf1及びCf2の温度依存係数をそれぞれα1及びα2とし、式(3)を変形すると、次式(5)が成り立つ。
【0048】
第1の強誘電体容量Cf1の電荷量Q1、第2の強誘電体容量Cf2の電荷量Q2、及び寄生容量Cwlの電荷量Qwlを用いて、式(1)及び(5)を簡略化して書くと、次式(6)及び(7)で表すことができる。
【0050】
式(6)及び(7)の連立方程式を解くと、次式(8)及び(9)が成立する。
【0052】
この式(8)及び(9)は、ΔL=ΔH=Δを仮定した際の必要条件となる。逆に、式(8)及び(9)を仮定すると、式(8)及び(9)から式(3)及び(4)が導かれ、式(1)及び(2)との比較から、ΔL=ΔH=Δが成り立つことが分かる。ΔL=ΔH=Δは、式(8)及び(9)の必要条件となる。以上から、式(8)及び(9)は、ΔL=ΔH=Δの必要十分条件である。式(8)及び(9)を満たすように、強誘電体容量Cf1及びCf2を調整すれば、低温Lでも高温Hでも昇圧電圧Δは、一定となる。
【0053】
ここで、強誘電体容量Cf1及びCf2の温度依存係数α1及びα2が等しい場合(α1=α2)は、式(8)及び(9)の電荷量Q1及びQ2は無限大となるが、温度依存係数α2が温度依存係数α1より大きいと、式(8)及び(9)を満たす有限の電荷量Q1及びQ2が存在する。つまり、温度依存係数α2が温度依存係数α1より大きいことが、昇圧電圧Δの温度依存性をキャンセルできる必要条件となる。強誘電体容量Cf1及びCf2の温度依存性は、
図7に示したように、低電圧の方が大きい。時刻t2の昇圧動作の前後では、第2の強誘電体容量Cf2の両端電圧の変化範囲は、0VからΔまでの範囲であり、第1の強誘電体容量Cf1の両端電圧のVddからΔまでの変化範囲に比べ、低電圧の範囲である。このため、温度依存係数α2は、温度依存係数α1よりも大きく、温度依存係数α2が温度依存係数α1より大きいという条件を満たす。
【0054】
図9は、強誘電体容量の高温時の容量値と低温時の容量値の比を示すグラフである。横軸は、強誘電体容量の両端電圧を示す。縦軸は、強誘電体容量の高温時の容量値と低温時の容量値の比を示す。強誘電体容量Cf1及びCf2の温度依存性は、両端電圧が低いほど大きい。時刻t2の昇圧動作の直前では、第2の強誘電体容量Cf2の両端電圧0Vは、第1の強誘電体容量Cf1の両端電圧Vddより低いため、第2の強誘電体容量Cf2の容量値の温度依存性が大きい。このため、高温の際、ワード線WLの全体の容量Cf2及びCwlの負荷が増加し、高温での第1の強誘電体容量Cf1の容量値増加分を吸収することができる。その結果、昇圧電圧Δの温度依存性を低減し、昇圧電圧Δを一定にすることができる。
【0055】
図10は、本実施形態による昇圧回路500の効果を説明するための図である。横軸は、温度を示す。縦軸は、ワード線WLの昇圧電圧Δを示す。
図5の昇圧回路500では、特性1001のように、低温に比べて高温ではワード線WLの昇圧電圧Δが上昇してしまい、
図2のnチャネル電界効果トランジスタ201のゲート酸化膜絶縁性の寿命が短くなってしまう。
【0056】
これに対し、本実施形態(
図8)の昇圧回路500では、式(8)及び(9)を満たすように、強誘電体容量Cf1及びCf2を調整すれば、特性1003のように、温度によらず、ワード線WLの昇圧電圧Δをほぼ一定にすることができる。本実施形態によれば、低温では、ワード線WLの昇圧電圧Δが低すぎることを防止できるので、
図2のnチャネル電界効果トランジスタ201を正常に動作させることができる。また、高温では、ワード線WLの昇圧電圧Δが高すぎることを防止できるので、
図2のnチャネル電界効果トランジスタ201のゲート酸化膜絶縁性の寿命の短縮化を防止できる。
【0057】
また、本実施形態の昇圧回路500は、強誘電体容量Cf1及びCf2を調整することにより、特性1002及び1004のような温度依存性にすることも可能である。特性1002では、昇圧電圧Δの温度依存性を完全にはキャンセルできないが、特性1003に比べ、強誘電体容量Cf1及びCf2の容量値を小さくできるので、昇圧回路500の面積を小さくすることできる。
【0058】
また、本実施形態の昇圧回路500は、特性1004のように、低温に比べて高温でワード線WLの昇圧電圧Δが下がり、高温で第3の強誘電体容量202(
図2)に印加される電圧が減少する。これにより、
図2のnチャネル電界効果トランジスタ201のゲート酸化膜絶縁性の寿命の短縮化を防止できる。また、リーク電流が減少し、消費電力を低減することができる。また、第3の強誘電体容量202は、自発分極の反転を繰り返すと、自発分極が減少し、容量値が変動するというfatigueと呼ばれる特有の劣化特性を有するが、ワード線WLの昇圧電圧が低下することにより、強誘電体容量202へ印可される電圧が減少するため、この劣化特性を低減することができる。
【0059】
(第2の実施形態)
図11は、第2の実施形態による昇圧回路500の構成例を示す図である。
図11の昇圧回路500は、
図8の昇圧回路500に対して、第2の強誘電体容量Cf2の接続が異なる。以下、本実施形態(
図11)が第1の実施形態(
図8)と異なる点を説明する。第2の強誘電体容量Cf2は、第2のノードn2及びワード線WL間に接続される。第2のノードn2は、インバータI4の出力端子に接続される。
【0060】
図12は、
図11の昇圧回路500の動作を説明するためのタイミングチャートであり、
図6に対して、第2のノードn2の電圧が追加されている。第2のノードn2の電圧は、信号WLDRVの電圧と同じである。
図12の信号WLSEL、WLDRV、WLBSTの電圧、第1のノードn1の電圧及びワード線WLの電圧は、
図6のものと同じである。また、本実施形態(
図11)の昇圧回路500は、第1の実施形態(
図8)の昇圧回路500に対して、同様の動作を行い、同様の効果を得ることができる。以下、本実施形態が第1の実施形態と異なる点を説明する。
【0061】
時刻t1の前及び時刻t4の後では、ワード線WLの電位は、0Vであり、電源電位Vddより低い。また、時刻t2〜t3では、ワード線WLの電位は、Vdd+Δであり、電源電位Vddより高い。
【0062】
第1の実施形態(
図8)では、第2の強誘電体容量Cf2がワード線WL及び電源電位Vddのノード間に固定接続されているので、第2の強誘電体容量Cf2の両端電圧は、時刻t1の前及び時刻t4の後では+Vddであり、時刻t2〜t3では−Δであり、正負符号が反転してしまう。強誘電体容量は、自発分極の反転を繰り返すと、自発分極が減少し、容量値が変動するというfatigueと呼ばれる特有の劣化特性を有する。第1の実施形態では、第2の強誘電体容量Cf2の両端電圧の正負符号が反転することにより、自発分極の反転が起こるため、fatigueによる容量値変動を引き起こしてしまう可能性がある。
【0063】
これに対し、第2の実施形態では、時刻t2〜t3では、ワード線WLの電位は、Vdd+Δであり、第2のノードn2の電位Vddより高い。また、その他の期間では、ワード線WLの電位は、第2のノードn2の電位と同じである。したがって、第2の強誘電体容量Cf2の両端電圧は、時刻t2〜t3では+Δであり、その他の期間では0Vである。このため、第2の強誘電体容量Cf2の両端電圧の正負符号は、全期間で反転せず、第2の強誘電体容量Cf2のfatigueによる容量値変動を抑制することができる。
【0064】
なお、本実施形態では、ワード線WL及び第2のノードn2間に第2の強誘電体容量Cf2を接続した例を説明したが、これに限定されない。ワード線WLを昇圧している時刻t2〜t3では、第2の強誘電体容量Cf2の上側電極が電源電位Vddになり、全期間で第2の強誘電体容量Cf2の上側電極がワード線WLの電位以下になるように、第2の強誘電体容量Cf2を接続した回路構成であれば、
図11と異なった回路構成であってもよい。その場合も、本実施形態と同様の動作を行い、同様の効果が得られる。
【0065】
以上のように、第1及び第2の実施形態によれば、第1の強誘電体容量Cf1は、ワード線WL及び第1のノードn1間に接続される。第2の強誘電体容量Cf2は、ワード線WL及び第2のノードn2間に接続される。第1のノードn1には、第1のハイレベル期間t2〜t3を有するパルスが供給される。第2のノードn2は、少なくとも第1のハイレベル期間t2〜t3ではハイレベルが供給される。第1の回路T1〜T3は、時刻t1でワード線WLをローレベルからハイレベルにし、その後の第1のハイレベル期間t2〜t3ではワード線WLをフローティング状態にする。
【0066】
第1の実施形態(
図8)では、第2のノードn2には、ハイレベルの定電位Vddが供給される。第2の実施形態(
図11)では、第2のノードn2は、第1の回路T1〜T3がワード線WLをローレベルからハイレベルにするタイミングt1と同じタイミングで、ローレベルからハイレベルになる。
【0067】
第1及び第2の実施形態によれば、第1の強誘電体容量Cf1の他に第2の強誘電体容量Cf2を設けることにより、メモリセル200のワード線WLの昇圧電圧Δの温度による変動を低減することができる。
【0068】
なお、メモリセル200は、第3の強誘電体容量202を有するメモリセルの例を示したが、DARAMのメモリセルであってもよい。昇圧回路500は、DARAMのメモリセルのワード線WLの電圧を生成することもできる。
【0069】
上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。