(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記対象物の加熱処理及び冷却処理が行われている場合に、前記誘導加熱手段に対して空気を送出して該誘導加熱手段を冷却する送風手段を備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の熱処理装置。
前記制御手段は、前記対象物の加熱処理が行われた場合には、前記誘導加熱手段を駆動停止にさせて前記雰囲気調整手段による不活性ガスの供給を増大させて前記対象物の冷却処理を行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の熱処理装置。
前記制御手段は、前記熱処理指令が与えられた場合、前記雰囲気調整手段による不活性ガスの供給により前記空間の酸素濃度が予め決められた閾値以下となるときに前記誘導加熱手段を駆動させることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つの熱処理装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上述した熱処理装置では、対象物である金属製品を第1加熱室、第2加熱室、第1冷却室及び第2冷却室の複数の略真空状態となる室に搬送手段で搬送する必要があったので、複数の室が必要になるとともに搬送手段も必要となり、これにより装置全体の大型化を招来するものであった。また第2加熱室では、ヒータ等が内部空気を加熱することで対象物を加熱するようにしていたので、対象物が搬送される前から第2加熱室の内部空気を十分に加熱する必要があり、保温時の消費電力量も十分に大きいものであった。
【0006】
尚、上記特許文献1においては、第1加熱室と第2加熱室とが一体化された熱処理装置も提案されているが、第1加熱室と第2加熱室とを一体化させてもこれら加熱室で加熱された対象物を第1冷却室及び第2冷却室に搬送手段で搬送することから装置全体の大型化を招来する問題は依然として残っている。また、第1加熱室と第2加熱室とが一体化されても、一体化された加熱室の前半部分で誘導加熱による加熱を行い、該加熱室の後半部分でヒータによる加熱を行うことから、依然として保温時の消費電力量も十分に大きいものであった。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みて、装置全体の小型化を図るとともに、消費電力量の低減化を図ることができる熱処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る熱処理装置は、装置本体の内部に載置された対象物に対して熱処理を行う熱処理装置において、前記対象物の周囲を覆う態様で配設されることにより、該対象物を略密閉された空間に位置させるカバー体と、前記対象物との間に断熱部材が介在した状態で前記装置本体の内部に配設され、かつ駆動する場合に前記対象物を載置する発熱体を誘導加熱により加熱して該対象物を間接的に加熱する誘導加熱手段と、前記カバー体により形成される前記空間に不活性ガスを供給して該空間の雰囲気を調整する雰囲気調整手段と、熱処理指令が与えられた場合には、前記誘導加熱手段を駆動させて前記対象物の加熱処理を行う制御手段と、前記誘導加熱手段と前記発熱体との間に設置され、かつ厚みが0.005mm以下であって電気抵抗率が5×10
−7Ωm以上の金属薄板とを備えたことを特徴とする。
【0009】
また本発明は、上記熱処理装置において、前記金属薄板は、非磁性ステンレスであることを特徴とする。
【0010】
また本発明は、上記熱処理装置において、前記金属薄板を冷却する金属薄板冷却手段を備えたことを特徴とする。
【0011】
また本発明は、上記熱処理装置において、前記対象物の加熱処理及び冷却処理が行われている場合に、前記誘導加熱手段に対して空気を送出して該誘導加熱手段を冷却する送風手段を備えたことを特徴とする。
【0012】
また本発明は、上記熱処理装置において、前記カバー体は、断熱性材料から形成されて成ることを特徴とする。
【0013】
また本発明は、上記熱処理装置において、前記制御手段は、前記対象物の加熱処理が行われた場合には、前記誘導加熱手段を駆動停止にさせて前記雰囲気調整手段による不活性ガスの供給を増大させて前記対象物の冷却処理を行うことを特徴とする。
【0014】
また本発明は、上記熱処理装置において、前記制御手段は、前記熱処理指令が与えられた場合、前記雰囲気調整手段による不活性ガスの供給により前記空間の酸素濃度が予め決められた閾値以下となるときに前記誘導加熱手段を駆動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、熱処理指令が与えられた場合に、誘導加熱手段を駆動させて対象物を加熱処理し、この加熱処理の終了後に誘導加熱手段を駆動停止にさせて対象物を冷却処理するようにしているので、従来のように加熱室から冷却室へ対象物を搬送する搬送手段を必要とせず、装置全体を小型化させることができる。しかも、誘導加熱により対象物を加熱しているので、従来のようにヒータ等で内部空気を予備的に加熱することを必要とせず、結果的に保温時における消費電力量を低減させることができる。従って、装置全体の小型化を図るとともに、消費電力量の低減化を図ることができるという効果を奏する。
【0016】
また、誘導加熱手段と発熱体との間に、厚みが0.005mm以下であって電気抵抗率が5×10
−7Ωm以上の金属薄板を設置することにより、磁力線を通過させて磁界を遮断せず、しかも発熱体の輻射熱を反射することで誘導加熱コイル側への熱の伝達を抑制し、断熱効果の向上を図ることができる。これにより、発熱体による放熱を減少させて省電力化を図ることができるとともに、加熱能力を向上させて生産性を良好なものとすることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る熱処理装置の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施の形態である熱処理装置を模式的に示す模式図であり、
図2は、本発明の実施の形態である熱処理装置の特徴的な制御系を示すブロック図である。ここで例示する熱処理装置は、装置本体10、発熱体20、カバー体30、誘導加熱コイル40及びファン50を備えて構成されている。
【0020】
装置本体10は、断熱板11、脚部12及び箱体13を備えて構成されている。断熱板11(11a及び11b)は、複数(図示の例では2つ)あり、それぞれセラミックス等から形成された矩形状の板状体である。尚、これら断熱板11のうち、上側の断熱板11aは、透明な板状体である。
【0021】
これら断熱板11は、金属薄板14を介在させた状態で互いが離隔した状態で積層されている。つまり、2つの断熱板11(11a及び11b)の間には、金属薄板14が設置されている。この金属薄板14について後述する。
【0022】
脚部12は、複数(例えば4つ)設けられており、それぞれが下側の断熱板11bの4つの頂部の下面より下方に延在する態様で設けられている。
【0023】
箱体13は、下面が開口した直方状を成すものである。このような箱体13は、前面、後面、左側面及び右側面の各下端部が上側の断熱板11aの各縁端部の上面に載置されることで、上側の断熱板11aの上方域を覆う外壁を構成している。
【0024】
発熱体20は、円板状の形態を成すものである。この発熱体20は、例えば黒鉛、グラファイト等の電気抵抗率が1.0×10
−5Ωm程度の材料から形成されるものである。このような発熱体20は、上側の断熱板11aにおける中央域の上面に載置されている。かかる発熱体20は、自身の上面に熱処理の対象となる対象物(例えば銅や銀等)1を載置させるものである。
【0025】
カバー体30は、断熱性材料から形成されるもので、例えば半球状の形態を成すものである。このようなカバー体30は、自身の開口部が上側の断熱板11aに閉塞される態様で、該上側の断熱板11aに載置されることにより、発熱体20及び対象物1の周囲を覆う態様で配設されている。これにより、対象物1及び発熱体20は、略密閉された空間に位置することとなる。かかるカバー体30の内面は、反射面を構成している。
【0026】
このようなカバー体30には、図示せぬ給気口及び排気口が形成されている。給気口は、給気ライン21に連通している。給気ライン21は、箱体13に設けられた第1貫通孔(図示せず)を貫通する態様で設けられており、図示せぬボンベ等に封入された窒素ガス等の不活性ガスをカバー体30が形成する空間に供給するためのものである。この給気ライン21の途中にはバルブ22が設けられている。バルブ22は、後述する制御部70からの指令により開度が調整されるもので、閉成する場合には、不活性ガスの通過を規制する一方、開成する場合には、不活性ガスの通過を許容するものである。
【0027】
排気口は、排気ライン23に連通している。排気ライン23は、箱体13に設けられた第2貫通孔(図示せず)を貫通する態様で設けられている。この排気ライン23は、排気口から流入したガスを外部に排出するためのものである。
【0028】
誘導加熱コイル40は、下側の断熱板11bよりも下方側に配設されている。より詳細に説明すると次のようになる。装置本体10を構成する脚部12のうち前後一対の関係となる脚部12間には、左右一対となる支持部材41が架設されている。これら支持部材41は、それぞれ上方に向けて突出する態様で延在する上延部42を有している。誘導加熱コイル40は、渦巻形状に巻かれており、これら上延部42の先端部に支持される態様で配設されている。
【0029】
このような誘導加熱コイル40は、電気的に接続される電力変換装置43より特定の周波数の電圧が印加される場合に、発熱体20を誘導加熱により加熱する誘導加熱手段である。ここで、電力変換装置43は、いわゆるインバータ回路を内蔵するものであり、商用電源44から与えられる交流を特定の周波数の交流として誘導加熱コイル40に与えるものである。
【0030】
ファン50は、誘導加熱コイル40の下方側において、上記左右一対の支持部材41を跨る態様で配設されている。このファン50は、制御部70からの指令により駆動するものであり、駆動する場合に、誘導加熱コイル40に対して空気を送出する送風手段である。
【0031】
このような熱処理装置は、上記構成の他、入力手段61、酸素濃度検出センサ62、温度検出センサ63及び制御部70を備えている。
【0032】
入力手段61は、例えばリモコンのテンキーやキーボード、あるいはタッチパネル式画面等のようなもので、熱処理装置を利用する作業者が各種指令等を入力するための操作入力部である。
【0033】
酸素濃度検出センサ62は、カバー体30の内面の所定箇所に配設されている。この酸素濃度検出センサ62は、カバー体30が配設される場合に、該カバー体30により形成される空間の酸素濃度を検出するものである。この酸素濃度検出センサ62で検出した酸素濃度は、酸素濃度信号として制御部70に出力されることとなる。
【0034】
温度検出センサ63は、発熱体20の表面の所定箇所に配設されている。この温度検出センサ63は、発熱体20の温度を検出するものである。この温度検出センサ63で検出した温度は、温度信号として制御部70に出力されることとなる。
【0035】
制御部70は、メモリ80に記憶されたプログラムやデータに従って熱処理装置の動作、すなわち熱処理を統括的に制御するもので、入力処理部71、比較部72、バルブ駆動処理部73、インバータ駆動処理部74、ファン駆動処理部75を備えている。ここでメモリ80には、種々の情報が記憶されており、本実施の形態において特徴的なものとして基準濃度情報、目標温度情報が記憶されている。基準濃度情報は、後述する熱処理において閾値となる基準濃度(例えば100ppm)が含まれる情報である。目標温度情報は、後述する熱処理において目標値となる目標温度が含まれる情報である。
【0036】
入力処理部71は、入力手段61や各種センサ62等からの指令や信号等を入力処理するものである。比較部72は、入力処理部71を通じて入力処理した検出濃度とメモリ80から読み出した基準濃度とを比較、並びに入力処理部71を通じて入力処理した検出温度とメモリ80から読み出した目標温度とを比較処理するものである。
【0037】
バルブ駆動処理部73は、バルブ22に対して指令を与えて、バルブ22を開成、閉成、並びに開度の増減を行うものである。
【0038】
インバータ駆動処理部74は、電力変換装置43に対して指令を与えて、電力変換装置43を駆動、あるいは駆動停止にさせるものである。また、インバータ駆動処理部74は、電力変換装置43に対して指令を与えることにより、電力変換装置43の出力を増減させて誘導加熱コイル40に印加する電圧の周波数を増減させるものである。
【0039】
ファン駆動処理部75は、ファン50に対して指令を与えることにより、ファン50を駆動、駆動停止にさせるものである。
【0040】
次に、上述した金属薄板14について説明する。金属薄板14は、略矩形状の形態を成した板状体であり、発熱体20より僅かに小さい面積を有している。この金属薄板14としては、厚みが0.005mm以下であって電気抵抗率が5×10
−7Ωm以上であることが好ましく、本実施の形態では、厚みが0.005mmであり、例えばSUS304等の非磁性ステンレスから構成されている。
図1中の符号15は金属薄板冷却手段であり、金属薄板14に対して冷却風を供給して該金属薄板14を冷却するものである。
【0041】
このような金属薄板14を2枚の断熱板11a及び11bの間、すなわち発熱体20と誘導加熱コイル40との間に設置することで、以下に説明するように、磁界を遮断することなく断熱効果の向上を図ることができる。
【0042】
一般に電磁誘導においては、交流磁場中に金属板が存在する場合、磁力線が金属板を鎖交(通過)すると、この磁力線の向きとは逆向き、すなわち打ち消す向きの磁力線を生じさせるように渦電流が流れる。渦電流は金属板の電気抵抗があるために熱となって消費される(ジュール発熱)。逆に、かかる金属板の代わりに絶縁板が存在すると、磁力線が鎖交した場合、渦電流を流そうとしても電気抵抗が高いため、渦電流は流れない(若しくは流れにくい)。このため、磁力線を打ち消すための磁力線は生じないため、磁力線はそのまま通過することになる。そのため、絶縁板(絶縁物)では電磁誘導現象は生じない。
【0043】
つまり、誘導加熱では、電気抵抗が高ければ発熱が高くなるが、高すぎると渦電流が発生しにくくなり発熱が小さくなる。これにより、電気抵抗率と発熱量との関係では、
図3に示すように、どこかに発熱量のピークが存在することとなる。
【0044】
そして、上記金属薄板14は、厚みが0.005mmと小さいため、その縦断面積が小さくなる。そのため、磁力線が通過してもそれを打ち消す向きの磁力線が少なくなり、電気抵抗が高くても磁力線が通過したときの渦電流の発生量は小さくなり、結果的に、
図4に示すように、金属薄板14の発熱量が小さくなる。
【0045】
そのため、発熱体20と誘導加熱コイル40との間に金属薄板14が存在しても磁力線が通過して発熱体20に届き該発熱体20を加熱することができる。しかも、金属薄板14は、その材質の特性から輻射率が低く、発熱体20が発する輻射熱を反射し、輻射熱の流出を少なくすることができる。
【0046】
このように発熱体20と誘導加熱コイル40との間に金属薄板14を設置することにより、磁力線を通過させて磁界を遮断せず、しかも発熱体20の輻射熱を反射することで誘導加熱コイル40側への熱の伝達を抑制し、断熱効果の向上を図ることができる。また発熱体20の輻射熱を反射することで発熱体20への加熱効率を向上させることもできる。
【0047】
以上のような構成を有する熱処理装置では、発熱体20の上に対象物1が載置された後にカバー体30が配設されることにより略密閉された空間が形成され、そして、給気ライン21及び排気ライン23が配設された後に箱体13が配置されることで、次のような熱処理を行うことができる。
【0048】
図5は、本発明の実施の形態である熱処理装置を構成する制御部70が実施する処理内容を示すフローチャートである。
【0049】
制御部70は、利用者である作業者が入力手段61を通じて熱処理指令を入力する入力待ちとなっている(ステップS100)。そして、作業者が入力手段61を通じて熱処理指令を入力することで、入力処理部71を通じて熱処理指令を入力した場合(ステップS100:Yes)、制御部70は、雰囲気調整処理を実施する(ステップS200)。
【0050】
図6は、
図5に示した雰囲気調整処理の処理内容を示すフローチャートである。
【0051】
この雰囲気調整処理において制御部70は、バルブ駆動処理部73を通じてバルブ22に対して開指令を与えてバルブ22を開成させる(ステップS201)。このようにバルブ22を開成させた制御部70は、入力処理部71を通じての酸素濃度信号の入力待ち(ステップS202)、すなわち酸素濃度検出センサ62による酸素濃度検出待ちとなる。
【0052】
入力処理部71を通じて酸素濃度信号を入力した場合(ステップS202:Yes)、制御部70は、比較部72を通じてメモリ80より基準濃度情報を読み出し、酸素濃度信号に含まれる検出濃度が基準濃度情報に含まれる基準濃度(100ppm)以下であるか否かを比較する(ステップS203)。
【0053】
検出濃度が基準濃度以下の場合(ステップS203:Yes)、制御部70は、バルブ駆動処理部73を通じてバルブ22に対して開度を減少させる旨の指令を与えることでバルブ22の開度を減少させ(ステップS204)、その後に手順をリターンさせて今回の雰囲気調整処理を終了する。ここで、ステップS204でのバルブ22に対する開度の減少であるが、開度は減少させても依然としてバルブ22が開成した状態となるようにしている。
【0054】
このような雰囲気調整処理によれば、カバー体30により略密閉される空間の酸素濃度を100ppm以下に調整することができる。
【0055】
一方、検出濃度が基準濃度を上回る場合(ステップS203:No)、制御部70は、バルブ駆動処理部73を通じてバルブ22に対して開度を増大させる旨の指令を与えることでバルブ22の開度を増大させ(ステップS205)、その後に上記ステップS202に戻る。つまり、検出濃度が基準濃度以下となるまでステップS202、ステップS203及びステップS205の処理を繰り返す。
【0056】
このようにして雰囲気調整処理を実施した制御部70は、加熱処理を実施する(ステップS300)。
【0057】
図7は、
図5に示した加熱処理の処理内容を示すフローチャートである。
【0058】
この加熱処理において制御部70は、インバータ駆動処理部74を通じて電力変換装置43に対して駆動指令を与えて電力変換装置43を駆動させるとともに、ファン駆動処理部75を通じてファン50に対して駆動指令を与えてファン50を駆動させる(ステップS301,ステップS302)。
【0059】
これによれば、特定の周波数の電圧が誘導加熱コイル40に印加されることとなり、発熱体20が誘導加熱コイル40により誘導加熱される。このように発熱体20が加熱されると、発熱体20に載置された対象物1を発熱体20より直接、カバー体30により形成される密閉空間の内部雰囲気を通じて、あるいはカバー体30の内面に反射して熱が伝わることで対象物1が加熱されることとなる。そして、ファン50を駆動させることにより、空気を誘導加熱コイル40に送出することができ、誘導加熱コイル40が必要以上に高温となってしまうことを抑制することができる。
【0060】
このように電力変換装置43及びファン50を駆動させた制御部70は、内蔵する時計により予め設定された所定時間が経過するまで温調制御処理を行う(ステップS303〜ステップS307)。
【0061】
この温調制御処理において制御部70は、入力処理部71を通じて温度信号を入力した場合(ステップS303:Yes)、比較部72を通じてメモリ80より目標温度情報を読み出し、温度信号に含まれる検出温度が目標温度情報に含まれる目標温度以上であるか否かを比較する(ステップS304)。
【0062】
制御部70は、検出温度が目標温度以上の場合(ステップS304:Yes)には、インバータ駆動処理部74を通じて電力変換装置43に対して出力を減少させる旨の指令を与えることで誘導加熱コイル40に印加する周波数を減少させる(ステップS305)一方、検出温度が目標温度未満の場合(ステップS304:No)には、インバータ駆動処理部74を通じて電力変換装置43に対して出力を増大させる旨の指令を与えることで誘導加熱コイル40に印加する周波数を増大させる(ステップS306)。
【0063】
制御部70は、このような温調制御処理を所定時間が経過するまで行い、所定時間が経過した場合(ステップS307:Yes)、インバータ駆動処理部74を通じて電力変換装置43に対して駆動停止指令を与えて電力変換装置43を駆動停止にさせ(ステップS308)、その後に手順をリターンさせて今回の加熱処理を終了する。
【0064】
このような加熱処理によれば、発熱体20を目標温度に一致するよう誘導加熱することで対象物1を加熱処理することができる。また、この加熱処理中は、次の冷却処理に比べて不活性ガスの供給量を減少させることで、カバー体30により形成される空間の温度が必要以上に低下することを防止する。
【0065】
このようにして加熱処理を実施した制御部70は、冷却処理を実施する(ステップS400)。
【0066】
図8は、
図5に示した冷却処理の処理内容を示すフローチャートである。
【0067】
この冷却処理において制御部70は、バルブ駆動処理部73を通じてバルブ22に対して開度を増大する旨の指令を与えてバルブ22の開度を増大させる(ステップS401)。
【0068】
これによれば、カバー体30が形成する空間に供給される不活性ガスの量を増大させることができ、かかる不活性ガスにより対象物1を徐々に冷却することができる。また、対象物1を冷却している際にもファン50の駆動を継続させているので、空気を誘導加熱コイル40に送出することを継続し、対象物1の熱が誘導加熱コイル40に伝達して必要以上に高温となってしまうことを抑制することができる。
【0069】
このようにしてバルブ22の開度を増大させた制御部70は、内蔵する時計を通じて予め設定された所定時間が経過するか否かを確認する(ステップS402)。このステップS402における所定時間は、対象物1を不活性ガスにより常温にまで冷却するのに必要十分な時間であり、予め実験的に求められて設定されている。
【0070】
所定時間が経過した場合(ステップS402:Yes)、制御部70は、バルブ駆動処理部73を通じてバルブ22に対して閉指令を与えてバルブ22を閉成させるとともに(ステップS403)、ファン駆動処理部75を通じてファン50に対して駆動停止指令を与えてファン50を駆動停止にさせ(ステップS404)、その後に手順をリターンさせて今回の冷却処理を終了する。
【0071】
このような冷却処理によれば、不活性ガスを供給することで対象物1を常温まで冷却することができる。
【0072】
そして、このような冷却処理を実施した制御部70は、今回の熱処理指令に基づく処理を終了する。これにより、作業者は、箱体13を上側の断熱板11aから離脱させるとともに、カバー体30を取り外すことにより、対象物1が熱処理されて製造された所望のろう付け製品を取り出すことができる。
【0073】
このように本実施の形態である熱処理装置においては、給気ライン21及びバルブ22が、カバー体30により形成される空間に不活性ガスを供給して該空間の雰囲気を調整する雰囲気調整手段を構成している。
【0074】
以上説明したように、本発明の実施の形態である熱処理装置によれば、熱処理指令が与えられた場合に、カバー体30により形成される空間に不活性ガスを供給して該空間の雰囲気を調整した後に誘導加熱コイル40に特定の周波数の電圧を印加させて発熱体20を誘導加熱により加熱して対象物1を間接的に加熱処理し、この加熱処理の終了後に誘導加熱コイル40への電圧の印加を停止して上記空間に対する不活性ガスの供給量を増大させて対象物1を冷却処理するようにしているので、従来のように加熱室から冷却室へ対象物1を搬送する搬送手段を必要とせず、装置全体を小型化させることができる。しかも、誘導加熱により発熱体20を加熱して対象物1を間接的に加熱しているので、従来のようにヒータ等で内部空気を予備的に加熱することを必要とせず、結果的に保温時における消費電力量を低減させることができる。更に、誘導加熱による加熱処理中は冷却処理中よりも不活性ガスの供給量を減少させることで、カバー体30により形成される空間の温度が必要以上に低下することを防止することができる。従って、装置全体の小型化を図るとともに、消費電力量の低減化を図ることができる。
【0075】
特に、2枚の断熱板11a及び11bの間、すなわち発熱体20と誘導加熱コイル40との間に厚みが0.005mmで非磁性ステンレス(SUS304)からなる金属薄板14を設置することで、磁界を遮断することなく断熱効果の向上を図ることができ、これにより、発熱体20による放熱を減少させて省電力化を図ることができるとともに、加熱能力を向上させて生産性を良好なものとすることができる。
【0076】
上記熱処理装置によれば、対象物1の加熱処理及び冷却処理が行われている場合に、ファン50が駆動して誘導加熱コイル40に対して空気を送出するので、誘導加熱コイル40が必要以上に高温になってしまうことを抑制することができる。
【0077】
上記熱処理装置によれば、カバー体30が断熱性材料から形成されているので、カバー体30を配設することにより形成される空間内の熱がカバー体30を通じて外部に放出されてしまう割合を低減させることができる。
【0078】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。
【0079】
上述した実施の形態では、金属薄板14としてSUS304等の非磁性ステンレスを用いたが、本発明においては、電気抵抗率が5×10
−7Ωm以上であればSUS304以外の金属を用いてもよい。