特許第6337659号(P6337659)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6337659
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】5レベル電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/487 20070101AFI20180528BHJP
【FI】
   H02M7/487
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-137462(P2014-137462)
(22)【出願日】2014年7月3日
(65)【公開番号】特開2016-15848(P2016-15848A)
(43)【公開日】2016年1月28日
【審査請求日】2017年5月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100096459
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 剛
(72)【発明者】
【氏名】宗島 正和
【審査官】 佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−102674(JP,A)
【文献】 特開2012−60735(JP,A)
【文献】 特開2012−253981(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/483
H02M 7/487
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電圧から交流電圧への5レベル変換、または、交流電圧から直流電圧への5レベル変換を行う5レベル電力変換装置であって、
直流電源の正負極端間に直列接続され、両端子間の直流電圧を1/2に分圧し、この分圧点を第1中性点とする複数の直流コンデンサと、
直流電源の正極端に一端が接続された第1半導体スイッチング素子と、
直流電源の負極端に一端が接続された第2半導体スイッチング素子と、
第1半導体スイッチング素子の他端と第2半導体スイッチング素子の他端間に直列接続され、両他端間の電圧を1/2に分圧し、この分圧点を第2中性点とする複数のコンデンサと、
第1中性点と第2中性点との間に介挿された双方向スイッチと、
第1半導体スイッチング素子の他端と、第2中性点との間に順次直列接続された第3,第4半導体スイッチング素子と、
第3,第4半導体スイッチング素子の共通接続点と、第2半導体スイッチング素子の他端間に順次直列接続され、この共通接続点を出力端子とする第5,第6半導体スイッチング素子と、を備えたことを特徴とする5レベル電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電圧から交流電圧への5レベル変換、または、交流電圧から直流電圧への5レベル変換を行う5レベル電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
5つの電圧レベルを選択して任意に変換する5レベル電力変換装置として、特許文献1が開示されている。特許文献1の5レベル電力変換装置は、1相分の変換回路として、2つの直流電源と、8つの半導体スイッチング素子と、2つのコンデンサC1,C2で構成されている。5レベルの電圧に変換するためのスイッチングパターンのうち、導通する半導体スイッチング素子数の最大は4つである。また、特許文献1の5レベル電力変換装置は、動作の対称性によって、コンデンサC1,C2のコンデンサ電圧VC1=VC2=+1Eを保っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−253981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、 特許文献1の5レベル電力変換装置は、コンデンサC1,C2を任意に充放電するスイッチングパターンが存在しないため、半導体スイッチング素子特性のばらつき等による回路特性のばらつき,経年変化等によってコンデンサ電圧VC1=VC2=+1Eとはならなくなり、均一な電圧レベルでの5レベルの相電圧を出力できなくなるおそれがある。
【0005】
以上示したようなことから、5レベル電力変換装置において、電圧均一回路を用いることなく、各相のコンデンサ電圧の平均値を等しくすることが課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記従来の問題に鑑み、案出されたもので、その一態様は、直流電圧から交流電圧への5レベル変換、または、交流電圧から直流電圧への5レベル変換を行う5レベル電力変換装置であって、直流電源の正負極端間に直列接続され、両端子間の直流電圧を1/2に分圧し、この分圧点を第1中性点とする複数の直流コンデンサと、直流電源の正極端に一端が接続された第1半導体スイッチング素子と、直流電源の負極端に一端が接続された第2半導体スイッチング素子と、第1半導体スイッチング素子の他端と第2半導体スイッチング素子の他端間に直列接続され、両他端間の電圧を1/2に分圧し、この分圧点を第2中性点とする複数のコンデンサと、第1中性点と第2中性点との間に介挿された双方向スイッチと、第1半導体スイッチング素子の他端と、第2中性点との間に順次直列接続された第3,第4半導体スイッチング素子と、第3,第4半導体スイッチング素子の共通接続点と、第2半導体スイッチング素子の他端間に順次直列接続され、この共通接続点を出力端子とする第5,第6半導体スイッチング素子と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、5レベル電力変換装置において、電圧均一回路を用いることなく、各相のコンデンサ電圧の平均値を等しくすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態1における5レベル電力変換装置の回路構成図。
図2】実施形態2における5レベル電力変換装置の回路構成図。
図3】実施形態2における5レベル電力変換装置の制御方法を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本願発明における5レベル電力変換装置の実施形態1,2を図1図3に基づいて説明する。
【0010】
[実施形態1]
図1は、本実施形態1における5レベル電力変換装置の回路構成図である。図1に示すように、直流電源の正負極端PN間に直流コンデンサCa,Cbが直列接続される。この直流コンデンサCa,Cbは、正負極端PN間の直流電圧を1/2に分圧する。
【0011】
また、この分圧点を第1中性点NPとする。ここで、本実施形態1では、2つの直流コンデンサCa,Cbにより、正負極端PN間の直流電圧を1/2に分圧しているが、2つ以上の直流コンデンサで1/2に分圧してもよい。
【0012】
直流電源の正極端Pには第1半導体スイッチング素子S1の一端が接続され、直流電圧源の負極端Nには第2半導体スイッチング素子S2の一端が接続される。第1半導体スイッチング素子S1の他端と、第2半導体スイッチング素子S2の他端間には、両他端間の電圧を1/2に分圧するコンデンサCc,Cdが設けられる。この分圧点を第2中性点NP’とする。
【0013】
第1半導体スイッチング素子S1の他端と、第2中性点NP’との間には、第3,第4半導体スイッチング素子S3,S4が順次直列接続される。また、第3,第4半導体スイッチング素子S3,S4の共通接続点と第2スイッチング素子の他端間には、順次第5,第6半導体スイッチング素子S5,S6が順次直列接続される。ここで、第5,第6半導体スイッチング素子S5,S6の共通接続点を出力端子OUTとする。
【0014】
また、第1中性点NPと第2中性点NP’との間には、双方向スイッチが設けられる。本実施形態1では、半導体スイッチング素子S7とS8とを逆方向に接続することにより、双方向スイッチを構成している。
【0015】
なお、直流コンデンサCa,Cbは2Eの電圧が充電され、コンデンサCc,CdはEの電圧が充電される。
【0016】
図1に示す破線部分は1相分の変換回路1を示し、1つの直流電源の正極端P,負極端N,分圧した第1中性点NPを入力とし、半導体スイッチング素子S1〜S8の8つ,コンデンサCc,Cdの2つで構成される。
【0017】
表1に各Modeにおける半導体スイッチング素子S1〜S8のスイッチングパターンと、第1中性点NP−出力端子OUT間の相電圧,および出力端子OUTに出力する電流Iを正としたときのコンデンサCcとCdの充放電状態を示す。
【0018】
【表1】
【0019】
各Modeにおける第1中性点NP−出力端子OUT間の電流Iの経路は以下の通りである。
【0020】
<Mode1>
第1中性点NP→Ca→P→S1→S3→S5→出力端子OUT
このとき、第1中性点NP−出力端子OUT間の相電圧は+2Eとなる。また、電流Iは3つの半導体スイッチング素子S1,S3,S5を導通する。
【0021】
<Mode2>
第1中性点NP→Ca→P→S1→Cc→S4→S5→出力端子OUT
このとき、中性点NP−出力端子OUT間の相電圧は+Eとなる。電流Iが正のとき、コンデンサCcは充電される。また、電流Iは3つの半導体スイッチング素子S1,S4,S5を導通する。
【0022】
< Mode3>
第1中性点NP→S8→S7→Cc→S3→S5→出力端子OUT
このとき、第1中性点NP−出力端子OUT間の相電圧は+Eとなる。電流Iが正のとき、コンデンサCcは放電される。また、電流Iは4つの半導体スイッチング素子S8,S7,S3,S5を導通する。
【0023】
<Mode4>
第1中性点NP→S8→S7→S4→S5→出力端子OUT
このとき、第1中性点NP−出力端子OUT間の相電圧は0となる。また、電流Iは、4つの半導体スイッチング素子S8,S7,S4,S5を導通する。
【0024】
<Mode5>
第1中性点NP→S8→S7→Cd→S6→出力端子OUT
このとき、第1中性点NP−出力端子OUT間の相電圧は−Eとなる。電流Iが正のとき、コンデンサCdは充電される。また、電流Iは、3つの半導体スイッチング素子S8,S7,S6を導通する。
【0025】
<Mode6>
第1中性点NP→Cb→N→S2→Cd→S4→S5→出力端子OUT
このとき、第1中性点NP−出力端子OUT間の相電圧は−Eとなる。電流Iが正のとき、コンデンサCdは放電される。また、電流Iは、3つの半導体スイッチング素子S2,S4,S5を導通する。
【0026】
<モード7>
第1中性点NP→Cb→N→S2→S6→出力端子OUT
このとき、第1中性点NP−出力端子OUT間の相電圧は−2Eとなる。また、電流Iは、2つの半導体スイッチング素子S2,S6を導通する。
【0027】
以上のように、表1のスイッチングパターンにおける7つのModeにより、2E,E,0,−E,−2Eの5レベルの相電圧を出力することができる。特に、相電圧を0として出力するModeは、Mode4の1つだけで良く、制御を簡単化することが可能である。
【0028】
また、Mode2とMode3における第1中性点NP−出力端子OUT間の出力電圧はどちらも+Eであるが、コンデンサCcを充電または放電が可能であるため、コンデンサCcの電圧を調節することが可能である。
【0029】
同様に、Mode5とMode6における第1中性点NP−出力端子OUT間の出力電圧はどちらも−Eであるが、コンデンサCdを充電または放電が可能であるため、コンデンサCdの電圧を調節することが可能である。
【0030】
このように、コンデンサCcとCdを充放電できるスイッチングパターンのMode2,Mode3,Mode5,Mode6を備えているため、回路を構成する素子の特性のばらつきや経年変化が生じても、コンデンサCcとCdの電圧を任意に制御でき、常に均一な電圧レベルでの5レベルの相電圧を出力することが可能となる。
【0031】
また、電圧均一回路を用いていないため、装置の小型化およびコストの低減を図ることが可能となる。
【0032】
さらに、常に4つの半導体スイッチング素子に電流Iが導通するのではなく、Modeにより、電流Iが導通する半導体スイッチング素子数が2つ,3つ,または4つとなるため、半導体スイッチング素子における導通損失を低減することが可能となる。
【0033】
また、特許文献1では、直流電源2つ,半導体スイッチング素子8つ,コンデンサ2つで,5レベル電力変換装置を構成していたが、本実施形態1では、直流電源1つ,半導体スイッチング素子8つ,コンデンサ2つの少ない素子数で5レベル電力変換装置を実現することができる。さらに、少ない素子数で5レベル電力変換装置を実現することにより、装置の小型化,コストの低減を図ることが可能となる。
【0034】
[実施形態2]
図2は、本実施形態2におけるマルチレベル電力変換装置の回路構成図である。図2に示すように、本実施形態2におけるマルチレベル電力変換装置は、実施形態1の1相分の変換回路1を3相(U相,V相,W相)にわたって設けたものである。これにより、本実施形態2では、U相,V相,W相の三相に2E,E,0,−E,−2Eの5レベルの相電圧を出力することができる。
【0035】
図3の本実施形態2における5レベル電力変換装置の制御方法を示すブロック図に基づいて、制御方法の一例を説明する。
【0036】
図3に示すように、制御部2には、三相の電圧指令値VU*,VV*,VW*と、各相のコンデンサCcのコンデンサ電圧VCcU1,VCcV1,VCcW1と、各相のコンデンサCdのコンデンサ電圧VCdU2,VCdV2,VCdW2が入力される。
【0037】
また、テーブル3には、コンデンサ電圧の指令値VDC/2とコンデンサ電圧VCcU1,VCcV1,VCcW1の偏差と、コンデンサ電圧の指令値VDC/2とコンデンサ電圧VCdU2,VCdV2,VCdW2の偏差と、三相の電圧指令値VU*,VV*,VW*が入力される。このテーブル3には、予め、三相の電圧指令値VU*,VV*,VW*,コンデンサ電圧の指令値VDC/2とコンデンサ電圧VCcU1,VCcV1,VCcW1の偏差,コンデンサ電圧の指令値VDC/2とコンデンサ電圧VCdU2,VCdV2,VCdW2の偏差に対応したスイッチングパターンが設定されており、これらの入力値に基づいて表1に示すスイッチングパターンを決定し、半導体スイッチング素子S1〜S8のゲート指令を出力する。
【0038】
本実施形態2における5レベル電力変換装置によれば、直流電源1個,半導体スイッチング素子24個,コンデンサ6個の少ない素子数で三相の5レベル電力変換装置を実現できる。
【0039】
また、実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0040】
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲で多彩な変形および修正が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変形および修正が特許請求の範囲に属することは当然のことである。
【符号の説明】
【0041】
P…直流電源の正極端
N…直流電源の負極端
Ca,Cb…直流コンデンサ
Cc,Cd…コンデンサ
S1〜S8…半導体スイッチング素子
図1
図2
図3