(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
位置検出用信号を送信する車載送信部を有する車載機と、前記位置検出用信号を受信し、受信した前記位置検出用信号に応じた応答信号を送信する携帯機とを備え、前記車載機は該携帯機から受信した前記応答信号に基づいて、車両ドアを自動で開けることを指示する開扉指示信号又は自動で閉めることを指示する閉扉指示信号を出力する車両用通信システムであって、
前記車載機は、
受信した前記応答信号に基づいて、車両に対する前記携帯機の位置変化を特定する特定部と、
前記車両に対する前記携帯機の所定の位置変化を記憶する記憶部と、
前記特定部が特定した位置変化及び前記記憶部が記憶する前記所定の位置変化を比較する比較部と、
該比較部による比較結果に応じて、前記開扉指示信号又は前記閉扉指示信号を出力する出力部と
を備え、
前記車載送信部は、
低周期で処理開始信号を間欠的に送信し、前記携帯機は前記処理開始信号を受信した場合、所定の信号を前記車載機へ送信し、
前記車載送信部は、前記車載機が前記所定の信号を受信した場合、高周期で前記位置検出用信号を間欠的に送信するようにしてあり、
更に、
前記車載機は、
前記車両に設けられた複数のアンテナから前記位置検出用信号を送信するようにしてあり、
前記携帯機は、
受信した各位置検出用信号の受信信号強度を測定する受信信号強度測定部と、
該受信信号強度測定部が測定した前記受信信号強度を含む前記応答信号を前記車載機へ送信する携帯送信部と
を備え、
前記特定部は、
前記応答信号に含まれる前記受信信号強度に基づいて、前記車載機に対する前記携帯機の位置を検出する位置検出部を備え、該位置検出部が検出した位置変化を特定する
車両用通信システム。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。また、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0014】
(1)本発明の一態様に係る車両用通信システムは、位置検出用信号を送信する車載送信部を有する車載機と、前記位置検出用信号を受信し、受信した前記位置検出用信号に応じた応答信号を送信する携帯機とを備え、前記車載機は該携帯機から受信した前記応答信号に基づいて、車両ドアを自動で開けることを指示する開扉指示信号又は自動で閉めることを指示する閉扉指示信号を出力する車両用通信システムであって、前記車載機は、受信した前記応答信号に基づいて、車両に対する前記携帯機の位置変化を特定する特定部と、前記車両に対する前記携帯機の所定の位置変化を記憶する記憶部と、前記特定部が特定した位置変化及び前記記憶部が記憶する前記所定の位置変化を比較する比較部と、該比較部による比較結果に応じて、前記開扉指示信号又は前記閉扉指示信号を出力する出力部とを備える。
【0015】
本態様によれば、車載機は携帯機の位置を検出するための位置検出用信号を送信する。車載機から送信された位置検出用信号を受信した携帯機は、該位置検出用信号に応じた応答信号を車載機へ送信する。応答信号は、車載機に対する携帯機の位置ないし位置変化を特定するためのものである。
車載機の特定部は、応答信号を受信し、受信した応答信号に基づいて携帯機の位置変化を特定する。位置検出用信号が送信され、携帯機は該位置検出用信号に応じた応答信号を送信する構成であるため、特定部は携帯機の位置変化を特定することができる。携帯機の位置変化は使用者による車両ドアの開扉操作又は閉扉操作に対応するものである。記憶部は、車両ドアを開扉又は閉扉させる操作条件として、車両に対する携帯機の所定の位置変化を記憶している。比較部は、応答信号に基づいて特定部が特定した携帯機の位置変化と、記憶部が記憶している前記所定の位置変化とを比較し、出力部は比較部による比較結果に応じて、車両ドアを自動で開けることを指示する開扉指示信号又は自動で閉めることを指示する閉扉指示信号を出力する。例えば、特定部が特定した携帯機の位置変化と、記憶部が記憶する前記所定の位置変化とが一致又は類似する場合、出力部は車両ドアを自動で開けることを指示する開扉指示信号を出力する。同様にして、特定部が特定した携帯機の位置変化と、記憶部が記憶する前記所定の位置変化とが一致又は類似する場合、出力部は車両ドアを自動で閉めることを指示する閉扉指示信号を出力するように構成することもできる。
このように、本態様によれば、携帯機に加速度センサを設けずとも、車載機に対する携帯機の位置変化を特定することができ、所定経路で携帯機を移動させることにより、車両ドアの開扉又は閉扉を操作することができる。
【0016】
(2)前記所定の位置変化は前記携帯機の環状の経路に沿った位置変化を含む構成が好ましい。
【0017】
本態様によれば、記憶部が記憶する前記所定の位置変化は環状の経路に沿った位置変化を含む構成である。環状の経路は、使用者の意に反して携帯機が移動する可能性が低い経路である。従って、使用者の意に反して車両ドアが自動的に開き又は閉じることを効果的に防止することができる。
【0018】
(3)前記所定の位置変化は前記携帯機の途中で屈曲した経路に沿った位置変化を含む構成が好ましい。
【0019】
本態様によれば、記憶部が記憶する前記所定の位置変化は途中で屈曲した経路に沿った位置変化を含む構成である。途中で屈曲した経路は、使用者の意に反して携帯機が移動する可能性が低い経路である。従って、使用者の意に反して車両ドアが自動的に開き又は閉じることを効果的に防止することができる。
【0020】
(4)前記車載送信部は、低周期で処理開始信号を間欠的に送信し、前記携帯機は前記処理開始信号を受信した場合、所定の信号を前記車載機へ送信するようにしてあり、前記車載送信部は、前記車載機が前記所定の信号を受信した場合、高周期で前記位置検出用信号を間欠的に送信する構成が好ましい。
【0021】
本態様によれば、車載送信部は、低周期で処理開始信号を間欠的に送信しており、前記携帯機は前記処理開始信号を受信した場合、所定の信号を携帯機へ送信する。車載機は携帯機から送信された前記所定の信号を受信することによって携帯機の存在を認識することができる。車載送信部は、前記所定の信号を車載機が受信した場合、高周期で位置検出用信号を間欠的に送信する。従って、携帯機の位置変化をより詳細に特定することができる。よって、使用者の意に反して車両ドアが自動的に開き又は閉じることを効果的に防止することができる。
【0022】
(5)前記車載機は、前記車両に設けられた複数のアンテナから前記位置検出用信号を送信するようにしてあり、前記携帯機は、受信した各位置検出用信号の受信信号強度を測定する受信信号強度測定部と、該受信信号強度測定部が測定した前記受信信号強度を含む前記応答信号を前記車載機へ送信する携帯送信部とを備え、前記特定部は、前記応答信号に含まれる前記受信信号強度に基づいて、前記車載機に対する前記携帯機の位置を検出する位置検出部を備え、該位置検出部が検出した位置変化を特定する構成が好ましい。
【0023】
本態様によれば、車載機は車両に設けられた複数のアンテナから位置検出用信号を送信する。携帯機は各アンテナから送信された位置検出用信号の受信信号強度を受信信号強度測定部にて測定し、携帯機送信部は測定された受信信号強度を含む応答信号を車載機へ送信する。複数のアンテナから送信された位置検出用信号の携帯機における受信信号強度は、車載機に対する携帯機の位置を2次元的又は3次元的に検出するためのものである。特定部は、応答信号に含まれる受信信号強度に基づいて、車載機に対する携帯機の位置を位置検出部にて検出し、携帯機の位置変化を2次元的又は3次元的に特定する。
従って、所定経路で2次元的又は3次元的に携帯機を移動させることにより、車両ドアの開扉又は閉扉を操作することができる。
【0024】
(6)前記車載機は、前記車両に設けられた複数のアンテナから前記位置検出用信号を送信するようにしてあり、前記携帯機は、受信した各位置検出用信号の受信信号強度を測定する受信信号強度測定部と、該受信信号強度測定部が測定した前記受信信号強度に基づいて、前記車載機に対する前記携帯機の位置を検出する位置検出部と、該位置検出部が検出した位置を含む前記応答信号を前記車載機へ送信する携帯送信部とを備え、前記特定部は、前記応答信号に含まれる位置変化を特定する構成が好ましい。
【0025】
本態様によれば、車載機は車両に設けられた複数のアンテナから位置検出用信号を送信する。携帯機は各アンテナから送信された位置検出用信号の受信信号強度を受信信号強度測定部にて測定し、位置検出部は測定された受信信号強度に基づいて、車載機に対する携帯機の位置を検出する。複数のアンテナから送信された位置検出用信号の携帯機における受信信号強度は、車載機に対する携帯機の位置を2次元的又は3次元的に検出するためのものである。そして、携帯機は検出された位置を含む応答信号を車載機へ送信する。特定部は、応答信号に基づいて携帯機の位置変化を2次元的又は3次元的に特定する。
従って、所定経路で2次元的又は3次元的に携帯機を移動させることにより、車両ドアの開扉又は閉扉を操作することができる。
【0026】
(7)本発明の一態様に係る車載機は、位置検出用信号を送信し、該位置検出用信号に応じて携帯機から送信された応答信号を受信した場合、受信した前記応答信号に基づいて、車両ドアを自動で開けることを指示する開扉指示信号又は自動で閉めることを指示する閉扉指示信号を出力する車載機であって、受信した前記応答信号に基づいて、車両に対する前記携帯機の位置変化を特定する特定部と、前記車両に対する前記携帯機の所定の位置変化を記憶する記憶部と、前記特定部が特定した位置変化及び前記記憶部が記憶する前記所定の位置変化を比較する比較部と、該比較部による比較結果に応じて、前記開扉指示信号又は前記閉扉指示信号を出力する出力部とを備える。
【0027】
本態様によれば、態様(1)と同様、携帯機に加速度センサを設けずとも、車載機に対する携帯機の位置変化を特定することができ、所定経路で携帯機を移動させることにより、車両ドアの開扉又は閉扉を操作することができる。
【0028】
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態に係る車両用通信システムの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0029】
(実施形態1)
図1は実施形態1に係る車両用通信システムの一構成例を示す模式図である。本実施形態1に係る車両用通信システムは、車両Cに設けられた複数のLF送信アンテナ3及びRF受信アンテナ4を用いて各種信号を送受信する車載機1と、該車載機1との間で該信号を送受信する携帯機2とを備える。車載機1は、携帯機2の位置変化を特定し、携帯機2の位置変化が所定の位置変化と一致した場合に、自動スライドドアDを自動で開く。
複数のLF送信アンテナ3は、例えば、運転席側のピラーに配された第1LF送信アンテナ31、助手席側のピラーに配された第2LF送信アンテナ32、車両Cの後部に配された第3LF送信アンテナ33及び前部に配された第4LF送信アンテナ34等である。各LF送信アンテナ3はLF帯の電波を用いて信号を送信する。
【0030】
図2は車載機1の一構成例を示すブロック図である。車載機1は、該車載機1の各構成部の動作を制御する車載制御部11を備える。車載制御部11は、例えば一又は複数のCPU(Central Processing Unit)、マルチコアCPU等を有するマイコンである。車載制御部11には、車載受信部12、車載送信部13、記憶部14及び出力部15が設けられている。
【0031】
車載制御部11は、記憶部14に記憶されている後述の制御プログラムを実行することにより、各構成部の動作を制御し、携帯機2の位置変化を特定し、自動スライドドアDを自動で開けることを指示する。
【0032】
記憶部14は、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリである。記憶部14は、車載制御部11が車載機1の各構成部の動作を制御することにより、携帯機2の位置変化を特定し、自動スライドドアDを自動で開けることを指示するための制御プログラムを記憶している。また、記憶部14は、車載機1に対する携帯機2の所定の位置変化を記憶する。前記所定の位置変化は、自動スライドドアDを自動で開けるための操作条件に相当するものである。本実施形態1では記憶部14が前記所定の位置変化を予め記憶している例を説明するが、使用者が任意の所定の位置変化を記憶部14に記憶させるように構成でも良い。前記所定の位置変化の詳細は後述する。
【0033】
車載受信部12はRF受信アンテナ4に接続されており、携帯機2からUHF帯の電波を用いて送信された各種応答信号を受信し、車載制御部11へ出力する。UHF帯の電波で通信可能な領域は広いため、車両CにおけるRF受信アンテナ4の配置は特に限定されない。
【0034】
車載送信部13は複数のLF送信アンテナ3に接続されており、車載制御部11の制御に従って、携帯機2の位置変化を特定するための信号を送信する。例えば、車載送信部13は、車載制御部11の制御に従って、自動スライドドアDの開扉に係る処理を開始させるための処理開始信号を送信する。また、車載送信部13は、車載制御部11の制御に従って、携帯機2の位置を検出するための位置検出信号を送信する。各LF送信アンテナ3から送信される信号の強度は、携帯機2が2つ以上のLF送信アンテナ3からの信号を受信できるように設定されている。
【0035】
出力部15にはドアECU6が接続されており、出力部15は、車載制御部11の制御に従って、自動スライドドアDを自動で開けることを指示する開扉指示信号又は自動スライドドアDを自動で閉めることを指示する閉扉指示信号をドアECU6へ出力する。ドアECU6は、車載機1の出力部15から出力された開扉指示信号に従って、スライドドア駆動部61を駆動させ、自動スライドドアDを開扉させる。同様にして、ドアECU6は、車載機1の出力部15から出力された閉扉指示信号に従って、スライドドア駆動部61を駆動させ、自動スライドドアDを閉扉させる。自動スライドドアDは、スライドドア部と、該スライドドア部を開扉方向又は閉扉方向へ移動させるスライド機構とを備えており、スライドドア駆動部61は、該スライド機構を駆動させるモータ等の動力源を備える。スライドドア駆動部61は該モータによって前記スライド機構を駆動させ、前記スライドドア部を開扉方向又は閉扉方向へ移動させる。
【0036】
車載制御部11には、スライドドアスイッチ5が接続されており、該スライドドアスイッチ5の操作状態に対応したドア信号が車載制御部11に入力する。車載制御部11はスライドドアスイッチ5のドア信号に基づいて、スライドドアスイッチ5の操作状態を認識することができる。車載制御部11には、スライドドアスイッチ5が操作された場合、開扉指示信号又は閉扉指示信号を出力部15にてドアECU6へ出力し、自動スライドドアDを開扉又は閉扉させる。
また、車載制御部11には、自動スライドドアDの開閉状態を検出するための開閉検出スイッチ7が接続されている。開閉検出スイッチ7は、自動スライドドアDの開閉に応じてオンオフする開閉信号が車載制御部11に入力する。車載制御部11は、入力した開閉信号に基づいて、自動スライドドアDの開閉状態を認識することができる。
【0037】
図3は携帯機2の一構成例を示すブロック図である。携帯機2は、該携帯機2の各構成部の動作を制御する携帯制御部21を備える。携帯制御部21は、例えば一又は複数のCPU、マルチコアCPU等を有するマイコンである。携帯制御部21には、携帯受信部22、携帯送信部23、記憶部24及び受信信号強度測定部25が設けられている。
【0038】
携帯制御部21は、記憶部24に記憶されている後述の制御プログラムを読み出し、各構成部の動作を制御することにより、各構成部の動作を制御し、車載機1に対する携帯機2の位置変化の特定に必要な情報を車載機1へ送信する送信する処理を実行する。
【0039】
記憶部24は、記憶部14と同様の不揮発性メモリである。記憶部24は、携帯制御部21が携帯機2の各構成部の動作を制御することにより、携帯機2の位置変化特定するための情報を含む応答信号等を車載機1へ送信する処理を実行するための制御プログラムを記憶している。
【0040】
携帯受信部22はLF受信アンテナ22aに接続されており、車載機1からLF帯の電波を用いて送信された処理開始信号、位置検出用信号等の各種信号を受信し、携帯制御部21へ出力する。LF受信アンテナ22aは例えば3軸アンテナであり、車両Cに対する携帯機2の向き又は姿勢に拘わらず、一定の受信信号強度が得られる。
【0041】
受信信号強度測定部25は、複数のLF送信アンテナ3から送信され、LF受信アンテナ22aが受信した各位置検出用信号の受信信号強度を検出し、検出した受信信号強度を携帯制御部21へ出力する回路である。
【0042】
携帯送信部23はRF送信アンテナ23aに接続されており、携帯制御部21の制御に従って、携帯機2から送信された信号に応じた信号を送信する。具体的には、自動スライドドアDの開扉に係る処理を開始させるための処理開始信号を携帯機2が受信した場合、携帯制御部21の制御に従って携帯送信部23は、所定の返信信号を送信する。また、位置検出信号を携帯機2が受信した場合、携帯制御部21の制御に従って携帯送信部23は、車載機1に対する携帯機2の位置変化特定するための情報として、受信信号強度測定部25が測定した受信信号強度を含む応答信号を送信する。携帯送信部23はUHF帯の電波を用いて応答信号を送信する。なおUHF帯は信号を送信する電波帯域の一例であり、必ずしもこれに限定されない。
【0043】
図4は所定の位置変化の一例を示す概念図である。記憶部14が記憶する所定の位置変化は、例えば、環状の経路に沿った位置変化P1である。より具体的には、位置変化P1は、例えば水平面における長方形又は正方形の経路である。なお、長方形及び正方形の経路は一例であり、三角形、その他の多角形の経路であっても良いし、曲線の閉経路であっても良い。また、経路は水平面における2次元経路である必要は無く、鉛直面における経路であっても良いし、水平面に対して交差する平面における経路であっても良いし、非平面的な3次元的の閉経路であっても良い。
【0044】
図5は所定の位置変化の他の例を示す概念図である。記憶部14が記憶する所定の位置変化は、例えば、途中で屈曲した経路に沿った位置変化P2である。より具体的には、位置変化P2は、例えば水平面における第1の直線経路と、該直線経路から屈曲した第2直線経路とを有する経路である。なお、
図5に示した位置変化P2の経路は一例であり、複数箇所で屈曲するような経路であっても良い。また、位置変化P1と同様、位置変化P2も水平面における2次元経路である必要は無く、鉛直面における経路であっても良いし、水平面に対して交差する平面における経路であっても良いし、非平面的な経路であっても良い。
【0045】
図6は開扉操作のための携帯機2の検出に係る処理手順を示すフローチャートである。
車載制御部11は、自動スライドドアDの開扉に係る処理を開始させるための処理開始信号を車載送信部13にてLF送信アンテナ3から送信させる(ステップS1)。処理開始信号の送信は低周期で行われる。例えば車載機1は、数秒毎に処理開始信号を送信する。携帯機2は定期的に起動して、車載機1から送信された信号を受信するようにしている。処理開始信号の到達範囲内に携帯機2が存在し、携帯機2が起動している期間に処理開始信号が車載機1から送信された場合、携帯機2は処理開始信号を受信し、受信した処理開始信号に応じた所定の返信信号をUHF帯の電波にて車載機1へ送信する。
【0046】
次いで、車載制御部11は、車載受信部12が携帯機2から送信された所定の返信信号を受信したか否かを判定する(ステップS2)。所定の返信信号を受信していないと判定した場合(ステップS2:NO)、車載制御部11は処理をステップS1へ戻す。
【0047】
所定の返信信号を受信したと判定した場合(ステップS2:YES)、車載制御部11は、開閉検出スイッチ7からの開閉信号に基づいて、自動スライドドアDが閉扉状態であるか否かを判定する(ステップS3)。自動スライドドアDが開扉状態にあると判定した場合(ステップS3:NO)、車載制御部11は処理をステップS1へ戻す。自動スライドドアDが閉扉状態にあると判定した場合(ステップS3:YES)、車載制御部11は、LF送信アンテナ3から送信する信号の送信周期を低周期から高周期に切り替える(ステップS4)。例えば、車載制御部11は数秒の低周期から、数百ミリ秒の高周期に切り替える。LF送信アンテナ3から送信する信号の送信周期を高周期に切り替えることによって、後述する自動スライドドアDの開扉操作に対応する携帯機2の位置変化の特定精度を向上させることができる。
【0048】
次いで、車載制御部11は、自動スライドドアDの開扉処理を実行する(ステップS5)。車載制御部11は、携帯機の位置変化によって自動スライドドアDの開扉操作が検出された場合、自動スライドドアDを自動で開けることを指示する開扉指示信号を出力部15を介してドアECU6へ出力する処理を実行する。
そして、自動スライドドアDの開扉処理を終えた車載制御部11は、LF送信アンテナ3から送信する信号の送信周期を高周期から低周期に切り替え(ステップS6)、処理をステップS1へ戻す。
【0049】
次に、ステップS5で実行する開扉処理の詳細を説明する。
図7は開扉処理に係る処理手順を示すフローチャートである。車載制御部11は、位置検出用信号を車載送信部13にて第1乃至第4LF送信アンテナ31、32、33、34から順次送信させる(ステップS11)。各第1乃至第4LF送信アンテナ31、32、33、34から送信される位置検出用信号の強度は略同一である。車載送信部13は、第1LF送信アンテナ31から位置検出用信号を送信し、次いで第2LF送信アンテナ32から該位置検出用信号と同強度の位置検出用信号を送信する。以下同様にして、車載送信部13は、第3LF送信アンテナ33から位置検出用信号を送信し、次いで、第4LF送信アンテナ34から位置検出用信号を送信する。
【0050】
携帯機2は、第1乃至第4LF送信アンテナ31、32、33、34からそれぞれ送信された位置検出用信号の受信信号強度を受信信号強度測定部25にて測定し、測定して得た受信信号強度を含む応答信号を携帯送信部23にて車載機1へ送信する。
【0051】
車載制御部11は、位置検出用信号に対する携帯機2からの応答信号を所定の期間内に車載受信部12が受信したか否かを判定する(ステップS12)。応答信号を受信していないと判定した場合(ステップS12:NO)、車載制御部11は、位置検出用信号の送信に対する応答信号の受信に所定回数失敗したか否かを判定する(ステップS13)。所定回数失敗したと判定した場合(ステップS13:YES)、車載制御部11は処理を終える。例えば、携帯機2が車両Cから離れてしまった等の理由で、応答信号の受信に所定回数以上失敗したような場合、車載制御部11は開扉処理を終える。受信失敗回数が所定回数未満であると判定した場合(ステップS13:NO)、車載制御部11は処理をステップS11へ戻す。
【0052】
応答信号を受信したと判定した場合(ステップS12:YES)、車載制御部11は応答信号に含まれる受信信号強度に基づいて、車両Cに対する携帯機2の位置を検出し、検出した位置を記憶する(ステップS14)。各LF送信アンテナ3から送信された信号の受信信号強度は、携帯機2と、対応するLF送信アンテナ3との距離に対応するため、受信信号強度を用いて、携帯機2と、各LF送信アンテナ3との位置関係を特定、つまり、携帯機2の位置を検出することができる。つまり、ステップS14の処理によって、車載制御部11は、携帯機2の位置変化の履歴を記憶する。第1LF送信アンテナ31から送信された位置検出用信号の受信信号強度によって、第1LF送信アンテナ31と、携帯機2との距離を推定することができる。同様にして、第2乃至第4LF送信アンテナ32,33,34からそれぞれ送信された各位置検出用信号の受信信号強度によって、第2乃至第4LF送信アンテナ34と、携帯機2との位置関係を推定することができる。本実施形態1では4本の第1乃至第4LF送信アンテナ31、32、33、34からの位置検出用信号の受信信号強度を用いることによって、車両Cに対する携帯機2の位置を3次元的に検出することができる。
【0053】
次いで、車載制御部11は、記憶した携帯機2の位置の履歴に基づいて、携帯機2の位置変化を特定する(ステップS15)。携帯機2の位置は、数百ミリ秒という高周期で送信される位置検出用信号によって検出されるため、携帯機2の位置ないし位置変化を詳細に特定することができる。なお、ステップS15における携帯機2の位置変化の特定は、携帯機2の位置の履歴がある程度蓄積されてから行うと良い。
【0054】
次いで、車載制御部11は、ステップS15で特定した位置変化と、記憶部14が記憶している所定の位置変化とを比較し(ステップS16)、位置変化が一致又は類似しているか否かを判定する(ステップS17)。位置変化が一致又は類似していないと判定した場合(ステップS17:NO)、車載制御部11は、処理を終える。位置変化が一致又は類似していると判定した場合(ステップS17:YES)、車載制御部11は、自動スライドドアDを自動で開けることを指示する開扉指示信号を出力部15にてドアECU6へ出力し(ステップS18)、処理を終える。
【0055】
本実施形態1によれば、携帯機2に加速度センサを設けずとも、車載機1に対する携帯機2の位置変化を特定することができ、所定経路で携帯機2を移動させることにより、自動スライドドアDを開扉させることができる。
【0056】
また、複数のLF送信アンテナ3から送信された位置検出用信号を用いて、携帯機2の位置変化を特定する構成であるため、所定経路で2次元的又は3次元的に携帯機2を移動させることにより、自動スライドドアDが自動的に開扉させることができる。
【0057】
更に、記憶部14が記憶する位置変化P1は環状の経路であり、位置変化P2は途中で屈曲した経路であり、これらの位置変化P1,P2は使用者の意に反して携帯機2が移動する可能性が低い経路である。従って、使用者の意に反して自動スライドドアDが自動的に開扉することを効果的に防止することができる。
【0058】
更に、車両周辺に携帯機2が検出された場合、車載送信部13は、LF送信アンテナ3から送信する信号の周期を高周期に切り替え、高周期で位置検出用信号を送信し、携帯機2の位置を検出する構成であるため、携帯機2の位置変化をより詳細に特定することができ、使用者の意に反して自動スライドドアDが自動的に開扉することを効果的に防止することができる。
【0059】
(変形例1)
なお、本実施形態1では、受信信号強度に基づいて、携帯機2の位置を車載機1側で検出する処理を説明したが、携帯機2が車載機1に対する自身の位置を検出し、検出して得た位置情報を含む応答信号を携帯送信部23にて車載機1へ送信するように構成しても良い。車載機1は、携帯機2から送信された応答信号に含まれる位置情報を記憶し、記憶した位置情報に基づいて携帯機2の位置変化を特定する。
【0060】
変形例1においても実施形態1と同様、携帯機2に加速度センサを設けずとも、車載機1に対する携帯機2の位置変化を特定することができ、所定経路で携帯機2を移動させることにより、自動スライドドアDを開扉させることができる。
【0061】
(実施形態2)
本実施形態2に係る車両用通信システムは、実施形態1と同様の機能に加えて、所定経路で携帯機2を移動させることにより、自動スライドドアDを閉扉させる機能を有するものである。実施形態2に係る記憶部14は、車載制御部11が車載機1の各構成部の動作を制御することにより、携帯機2の位置変化を特定し、自動スライドドアDを自動で開けることを指示し、また自動で閉めることを指示するための制御プログラムを記憶している。また、記憶部14は、開扉用の所定の位置変化に加えて、自動スライドドアDを自動で閉めるための操作条件に相当する閉扉用の所定の位置変化を記憶する。実施形態2に係る車両用通信システムは、車載制御部11の処理手順が実施形態1と異なるため、以下、主にかかる相違点を説明する。その他の構成及び作用効果は実施形態1と同様であるため、対応する箇所には同様の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0062】
図8は開閉操作のための携帯機2の検出に係る処理手順を示すフローチャートである。車載制御部11は、自動スライドドアDの開扉に係る処理を開始させるための処理開始信号を車載送信部13にてLF送信アンテナ3から送信させる(ステップS201)。
【0063】
次いで、車載制御部11は、車載受信部12が携帯機2から送信された所定の返信信号を受信したか否かを判定する(ステップS202)。所定の返信信号を受信していないと判定した場合(ステップS202:NO)、車載制御部11は処理をステップS201へ戻す。
【0064】
所定の返信信号を受信したと判定した場合(ステップS202:YES)、車載制御部11は、LF送信アンテナ3から送信する信号の送信周期を低周期から高周期に切り替える(ステップS203)。そして、車載制御部11は、開閉検出スイッチ7からの開閉信号に基づいて、自動スライドドアDが閉扉状態であるか否かを判定する(ステップS204)。自動スライドドアDが閉扉状態にあると判定した場合(ステップS204:YES)、車載制御部11は、自動スライドドアDの開扉処理を実行する(ステップS205)。開扉処理の内容は実施形態1と同様である。自動スライドドアDが開扉状態にあると判定した場合(ステップS204:NO)、自動スライドドアDの閉扉処理を実行する(ステップS206)。車載制御部11は、携帯機の位置変化によって自動スライドドアDの閉扉操作が検出された場合、自動スライドドアDを自動で閉めることを指示する閉扉指示信号を出力部15を介してドアECU6へ出力する処理を実行する。
【0065】
ステップS205又はステップS206の処理を終えた車載制御部11は、LF送信アンテナ3から送信する信号の送信周期を高周期から低周期に切り替え(ステップS207)、処理をステップS201へ戻す。
【0066】
次に、ステップS206で実行する閉扉処理を説明する。
図9は閉扉処理に係る処理手順を示すフローチャートである。車載制御部11は、実施形態1のステップS11〜15と同様の処理、ステップS211〜215で実行する。つまり、車載制御部11は、位置検出用信号を車載送信部13にて送信し、携帯機2からの応答信号に基づいて車載機1に対する携帯機2の位置を検出し、携帯機2の位置変化を特定する処理を実行する。
【0067】
次いで、車載制御部11は、ステップS215で特定した位置変化と、記憶部14が記憶している閉扉用の所定の位置変化とを比較し(ステップS216)、位置変化が一致又は類似しているか否かを判定する(ステップS217)。位置変化が一致又は類似していないと判定した場合(ステップS217:NO)、車載制御部11は、処理を終える。位置変化が一致又は類似していると判定した場合(ステップS217:YES)、車載制御部11は、自動スライドドアDを自動で閉じることを指示する閉扉指示信号を出力部15を介してドアECU6へ出力し(ステップS218)、処理を終える。
【0068】
本実施形態2によれば、携帯機2に加速度センサを設けずとも、車載機1に対する携帯機2の位置変化を特定することができ、所定経路で携帯機2を移動させることにより、自動スライドドアDを開扉又は閉扉させることができる。
その他の作用効果も実施形態1と同様である。
【0069】
(変形例2)
なお、本実施形態2では、受信信号強度に基づいて、携帯機2の位置を車載機1側で検出する処理を説明したが、携帯機2が車載機1に対する自身の位置を検出し、検出して得た位置情報を含む応答信号を携帯送信部23にて車載機1へ送信するように構成しても良い。車載機1は、携帯機2から送信された応答信号に含まれる位置情報を記憶し、記憶した位置情報に基づいて携帯機2の位置変化を特定する。
【0070】
変形例1においても実施形態1と同様、携帯機2に加速度センサを設けずとも、車載機1に対する携帯機2の位置変化を特定することができ、所定経路で携帯機2を移動させることにより、自動スライドドアDを開扉又は閉扉させることができる。
【0071】
なお、本実施形態2及び変形例2では自動スライドドアDを携帯機2の移動によって、開扉又は閉扉する例を説明したが、携帯機2の移動によって、自動スライドドアDを閉扉させる機能のみを備えるように構成しても良い。
【0072】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。