特許第6337721号(P6337721)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6337721
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】虚像表示装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 35/00 20060101AFI20180528BHJP
   G02B 27/01 20060101ALI20180528BHJP
   H04N 5/74 20060101ALI20180528BHJP
   G01C 21/36 20060101ALI20180528BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20180528BHJP
【FI】
   B60K35/00 A
   G02B27/01
   H04N5/74 Z
   G01C21/36
   G08G1/16 C
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-195150(P2014-195150)
(22)【出願日】2014年9月25日
(65)【公開番号】特開2016-64760(P2016-64760A)
(43)【公開日】2016年4月28日
【審査請求日】2016年12月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100768
【氏名又は名称】アイシン・エィ・ダブリュ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】特許業務法人ネクスト
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 賢二
【審査官】 松永 謙一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−150947(JP,A)
【文献】 特開2014−014238(JP,A)
【文献】 特開2013−024921(JP,A)
【文献】 特開2012−058689(JP,A)
【文献】 特開2010−076533(JP,A)
【文献】 特開2010−156608(JP,A)
【文献】 特開2005−301144(JP,A)
【文献】 特開平11−119147(JP,A)
【文献】 特開平09−325042(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/00
G01C 21/36
G02B 27/01
G08G 1/16
H04N 5/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリーンと、
映像を前記スクリーンに投射するプロジェクタと、
前記スクリーンに投射された前記映像をユーザに視認させることによって前記映像の虚像を生成する虚像生成手段と、を有し、
前記虚像生成手段は、前記虚像の下端が前記ユーザから所定距離だけ離れた地面上に位置するように前記虚像を生成し、
前記ユーザの眼の位置を検出する位置検出手段と、
前記地面から前記虚像の上端までの距離を変位させることによって、前記虚像の下端から上端までの長さが前記ユーザの眼の位置に基づいた長さとなるように前記スクリーンに投射する前記映像を補正する映像補正手段と、を有し、
前記映像補正手段は、前記ユーザの眼の位置が上方に位置する程、前記虚像の下端から上端までの長さが長くなるように前記映像を補正することを特徴とする虚像表示装置。
【請求項2】
前記スクリーンに投射された前記映像を視認可能な前記ユーザの眼の位置の範囲である視認可能範囲を取得する範囲取得手段を有し、
前記視認可能範囲は、上下方向に沿って複数のエリアに区分され、
前記映像補正手段は、前記ユーザの眼の位置が含まれるエリアに基づいて前記映像を補正することを特徴とする請求項に記載の虚像表示装置。
【請求項3】
前記視認可能範囲は、基準エリアと、基準エリアの上方にある上方エリアと、基準エリアの下方にある下方エリアと、に区分され、
前記映像補正手段は、
前記ユーザの眼の位置が前記基準エリアに含まれる場合には、前記虚像の下端から上端までの長さが基準長さとなるように前記映像を補正し、
前記ユーザの眼の位置が前記上方エリアに含まれる場合には、前記虚像の下端から上端までの長さが前記基準長さよりも長くなるように前記映像を補正し、
前記ユーザの眼の位置が前記下方エリアに含まれる場合には、前記虚像の下端から上端までの長さが前記基準長さよりも短くなるように前記映像を補正することを特徴とする請求項に記載の虚像表示装置。
【請求項4】
前記スクリーンに投射された前記映像を反射させてユーザに視認させる凹面鏡と
前記スクリーンと前記凹面鏡との間の光路長を変更する光路長変更手段と、
前記光路長変更手段によって前記スクリーンと前記凹面鏡との間の光路長を変更することにより、前記ユーザから前記虚像生成手段により生成される前記虚像までの距離である生成距離を変更する虚像位置変更手段と、を有し、
前記映像補正手段は、
前記ユーザの眼の位置に加えて前記生成距離にも基づいて前記映像を補正し、
前記生成距離が短い程、前記虚像の下端から上端までの長さが長くなるように前記映像を補正することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の虚像表示装置。
【請求項5】
前記光路長変更手段は、前記スクリーンを前記光路に沿って移動させることにより前記スクリーンと前記凹面鏡との間の光路長を変更することを特徴とする請求項に記載の虚像表示装置。
【請求項6】
車両に搭載され、
前記虚像生成手段は、前記車両の進行方向前方に前記車両の乗員に視認させる前記虚像を生成し、
前記虚像は、前記車両の走行予定経路に沿った走行を案内する画像であることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれかに記載の虚像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザが視認する虚像を表示する虚像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両等の移動体の乗員に対して経路案内や障害物の警告等の運転情報を提供する情報提供手段として、様々な手段が用いられている。例えば、移動体に設置された液晶ディスプレイによる表示や、スピーカから出力する音声等である。そして、近年、このような情報提供手段の一つとして、ヘッドアップディスプレイ装置(以下、HUDという)のような人間の目の錯覚を利用して実際に映像が表示された位置と異なる空間上に映像を視認させる虚像表示装置がある。
【0003】
ここで、例えば移動体として特に車両に対して設置されたHUDは、特表2011−36788号公報に記載されているように、車両の乗員から見て車両のウィンドウ(例えばフロントウインドウ)の前方に、前方視野の前景に重畳して、運転情報(例えば、車両の進行方向を示す矢印等)を虚像として生成することが可能である。その結果、乗員は運転情報を視認する際に視線移動を極力少なくすることが可能であり、運転時の負担をより少なくすることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2011−36788号公報(第4−7頁、図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、HUDのような虚像表示装置において、ユーザに適切に虚像を視認させる為には、生成された虚像が現実にユーザの前方空間上に存在するかのように背景に重畳させてユーザに視認させることが重要である。例えば、上記特許文献1のような車両の進行方向を示す矢印を虚像として生成する場合には、進行方向の道路の路面上において路面と平行に矢印が存在するように視認させることが望ましい。
【0006】
そこで、上記特許文献1では、虚像を重畳させる背景の消失点に関連付けて虚像の消失点を設定する技術について開示されている。特に、ユーザの眼より下方に位置する虚像(例えば地面上に生成する矢印の虚像)では、虚像を重畳させる背景の消失点よりも上方に虚像の消失点を設定することが開示されている。
【0007】
ここで、虚像を重畳させる背景の消失点の位置は、ユーザの眼の高さに依存する。即ち、ユーザの眼の位置が高い位置にあるほど、背景の消失点の位置も高くなり、虚像の消失点も高い位置に設定されることとなる。従って、上記特許文献1では、特にユーザから遠方の位置に虚像を生成する場合において、ユーザの眼の位置を上方に移動させると、必要以上に虚像の消失点が上方へと設定されてしまい、背景に虚像を適切に重畳させることができない問題があった。例えば、図16に示すように車両の進行方向を示す矢印を虚像101として生成する場合では、進行方向の道路の路面102上において路面と平行に存在するように視認させることが理想であるが、ユーザの眼の位置が上方に移動すると、生成される虚像101は路面102に沿った矢印でなく、斜め上方を向いた矢印として視認されることとなる。
【0008】
本発明は前記従来における問題点を解消するためになされたものであり、車両の進行方向を示す矢印等の地面上に生成される虚像について、地面上において地面と平行に虚像が現実に存在するかのように背景に重畳させてユーザに視認させることを可能にした虚像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため本発明に係る第1の虚像表示装置は、スクリーンと、映像を前記スクリーンに投射するプロジェクタと、前記スクリーンに投射された前記映像をユーザに視認させることによって前記映像の虚像を生成する虚像生成手段と、を有し、前記虚像生成手段は、前記虚像の下端が前記ユーザから所定距離だけ離れた地面上に位置するように前記虚像を生成し、前記ユーザの眼の位置を検出する位置検出手段と、前記地面から前記虚像の上端までの距離を変位させることによって、前記虚像の下端から上端までの長さが前記ユーザの眼の位置に基づいた長さとなるように前記スクリーンに投射する前記映像を補正する映像補正手段と、を有し、前記映像補正手段は、前記ユーザの眼の位置が上方に位置する程、前記虚像の下端から上端までの長さが長くなるように前記映像を補正することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
前記構成を有する本発明に係る第1の虚像表示装置によれば、虚像の下端から上端までの長さをユーザの眼の位置に応じた長さとなるように補正するので、車両の進行方向を示す矢印等の地面上に生成される虚像について、ユーザの眼の位置に応じて視認されるべき適切な形状とすることが可能となる。従って、ユーザの視線方向の地面上において地面と平行に虚像が現実に存在するかのように、背景に重畳させてユーザに視認させることが可能となる。また、従来技術のように上方を向いた違和感のある虚像に視認される虞もない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係るHUDの車両への設置態様を示した図である。
図2】本実施形態に係るHUDの内部構成を示した図である。
図3】HUDを構成するプロジェクタを示した図である。
図4】HUDを構成するスクリーンを示した図である。
図5】スクリーンの光路に対する移動態様を示した図である。
図6】スクリーンとミラーとの間の光路長と虚像の生成距離との関係を示した図である。
図7】虚像の生成距離の変更態様を示した図である。
図8】本実施形態に係るHUDの構成を示したブロック図である。
図9】本実施形態に係る虚像生成処理プログラムのフローチャートである。
図10】視認可能範囲を示した図である。
図11】車両の乗員から視認できる前方環境と道路距離を示した図である。
図12】虚像長の異なる複数の虚像について説明した図である。
図13】虚像長設定テーブルを示した図である。
図14】車両の乗員から視認できる虚像の一例を示した図である。
図15】乗員の眼の位置と虚像までの距離とに応じて生成される虚像の変化を説明した図である。
図16】従来技術の問題点について説明した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る虚像生成装置について、車両に搭載されたヘッドアップディスプレイ装置に具体化した一実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0017】
先ず、本実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置(以下、HUDという)1の構成について図1を用いて説明する。図1は本実施形態に係るHUD1の車両2への設置態様を示した図である。
【0018】
図1に示すようにHUD1は、車両2のダッシュボード3内部に設置されており、内部にプロジェクタ4やプロジェクタ4からの映像が投射されるスクリーン5を有する。そして、スクリーン5に投射された映像を、後述のようにHUD1が備えるミラーやフレネルレンズを介し、更に運転席の前方のフロントウィンドウ6に反射させて車両2の乗員7に視認させるように構成されている。尚、スクリーン5に投射される映像としては、車両2に関する情報や乗員7の運転の支援の為に用いられる各種情報がある。例えば障害物(他車両や歩行者)に対する警告、ナビゲーション装置48で設定された案内経路(走行予定経路)や案内経路に基づく案内情報(右左折方向を示す矢印等)、現在車速、案内標識、地図画像、交通情報、ニュース、天気予報、時刻、接続されたスマートフォンの画面、テレビ番組等がある。
【0019】
また、本実施形態のHUD1では、フロントウィンドウ6を反射して乗員7がスクリーン5に投射された映像を視認した場合に、乗員7にはフロントウィンドウ6の位置ではなく、フロントウィンドウ6の先の遠方の位置にスクリーン5に投射された映像が虚像8として視認されるように構成される。尚、乗員7が視認できる虚像8はスクリーン5に投射された映像であるが、ミラーを介するので上下方向は反転する。また、フレネルレンズを介することによってサイズも変更する。
【0020】
ここで、虚像8を生成する位置、より具体的には乗員7から虚像8までの距離(以下、生成距離という)Lについては、HUD1が備えるミラーやフレネルレンズの形状や位置、光路に対するスクリーン5の位置等によって適宜設定することが可能である。特に、本実施形態では後述のようにスクリーン5の位置を光路に沿って前後方向に移動可能に構成する。その結果、生成距離Lを適宜変更することが可能となる。例えば生成距離Lを2.5m〜20mの間で変更することが可能である。
【0021】
また、車両のフロントバンパの上方にはフロントカメラ17が設置される。フロントカメラ17は、例えばCCD等の固体撮像素子を用いたカメラにより構成された撮像装置であり、光軸方向を車両の進行方向前方に向けて設置される。そして、フロントカメラ17により撮像された撮像画像に対して画像処理が行われることによって、後述のようにフロントウィンドウ6越しに乗員7に視認される前方環境、即ち虚像8が重畳される背景について乗員7から背景上の各地点までの距離(道路距離)が検出される。
【0022】
また、ダッシュボード3の上面には車内カメラ18が設置される。ここで、車内カメラ18は、例えばCCD等の固体撮像素子を用いたものであり、図1に示すように撮像方向を運転席に向けて設置される。そして、運転席に座った乗員7の顔を撮像する。尚、HUD1は、後述のように車内カメラ18により撮像した撮像画像から乗員7の眼の位置を検出する。
【0023】
次に、図2を用いてHUD1のより具体的な構成について説明する。図2は、本実施形態に係るHUD1の内部構成を示した図である。
【0024】
図2に示すようにHUD1は、プロジェクタ4と、スクリーン5と、反射ミラー10と、ミラー(凹面鏡)11と、フレネルレンズ12と、制御回路部13と、CANインターフェース14とから基本的に構成されている。
【0025】
ここで、プロジェクタ4は光源としてLED光源やランプ光源やレーザ光源を用いた映像投射装置であり、例えばレーザ走査式プロジェクタとする。尚、プロジェクタ4としてはDLPプロジェクタや液晶プロジェクタやLCOSプロジェクタを用いても良い。尚、レーザ走査式プロジェクタ以外を用いた場合にはプロジェクタ4に対して別途投射レンズを配置する必要がある。
【0026】
図3はプロジェクタ4の構成を示した図である。図3に示すようにプロジェクタ4は、内部にレーザ光の光源15を備えており、例えばレーザ走査式プロジェクタでは光源15から出力されるレーザ光をMEMSミラー16で反射させ、スクリーン5上に走査させることによってスクリーン5に所望の映像を投射する。
【0027】
一方、スクリーン5は、プロジェクタ4から投射された映像が投射される被投射媒体であり、例えばすりガラス等の拡散板やマイクロレンズアレイ等からなる透過型スクリーンが用いられる。ここで、図4はスクリーン5を示した図である。
【0028】
図4に示すようにスクリーン5は、映像が投射される被投射エリア22を有しており、プロジェクタ4から投射された映像が表示される。尚、乗員7はプロジェクタ4によって投射された映像を投射側とは逆側から視認することとなる。また、スクリーン5は、光路に沿って前後方向に移動可能に構成されている。具体的には、スクリーン5の背面側にあるスクリーン前後駆動モータ24を駆動させることによって、図5に示すようにスクリーン5を光路に沿って前後方向に移動させることが可能となる。その結果、スクリーン5とミラー11との間の光路長が変更される。
【0029】
そして、HUD1ではスクリーン5とミラー11との間の光路長に、スクリーン5に投射された映像の虚像8が生成される位置(具体的には乗員7から虚像8までの距離である生成距離L)が依存することとなる。具体的には図6に示すようにスクリーン5を、スクリーン5とミラー11との間の光路長Dが短くなる側に移動させると、生成距離Lが短くなる(即ち、乗員7からはより近くに虚像8が視認されるようになる)。一方で、スクリーン5を、スクリーン5とミラー11との間の光路長Dが長くなる側に移動させると、生成距離Lが長くなる(即ち、乗員7からはより遠くに虚像8が視認されるようになる)。従って、スクリーン5を光路に沿って前後方向に移動させることによって、図7に示すように乗員7から虚像8までの距離である生成距離Lの長短を、予め決められた範囲(例えば2.5m〜20m)で変更することが可能となる。
【0030】
また、スクリーン前後駆動モータ24はステッピングモータからなる。そして、HUD1は、制御回路部13から送信されるパルス信号に基づいてスクリーン前後駆動モータ24を制御し、スクリーン5の前後位置を設定位置に対して適切に位置決めすることが可能となる。
【0031】
一方、反射ミラー10は、図2に示すようにプロジェクタ4から投射された映像を反射して光路を変更し、スクリーン5へと投射する反射板である。
【0032】
また、ミラー11は、図2に示すようにスクリーン5からの映像光を反射させ、フロントウィンドウ6を介してスクリーン5の映像を乗員7に視認させることにより、乗員7の前方に虚像8(図1参照)を生成する手段であり、反射ミラー10やフロントウィンドウ6とともに虚像生成手段を構成する。ミラー11としては、球面凹面鏡や、非球面凹面鏡、若しくは投影映像の歪みを補正するための自由曲面鏡が用いられる。尚、スクリーン5に対して投射された映像は、ミラー11によって反射されるので、生成される虚像はスクリーン5に対して投射された映像と上下が反転した像となる。
【0033】
また、フレネルレンズ12は、図2に示すようにスクリーン5に投射された映像を拡大して虚像8を生成する為の拡大鏡である。そして、本実施形態に係るHUD1では、スクリーン5に投射された映像を、ミラー11やフレネルレンズ12を介し、更にフロントウィンドウ6に反射させて乗員7に視認させることによって、フロントウィンドウ6の先の遠方の位置にスクリーン5に投射された映像が拡大され、虚像8として乗員に視認される(図1参照)。
【0034】
また、制御回路部13は、HUD1の全体の制御を行う電子制御ユニットである。ここで、図8は本実施形態に係るHUD1の構成を示したブロック図である。
【0035】
図8に示すように制御回路部13は、演算装置及び制御装置としてのCPU31、並びにCPU31が各種の演算処理を行うにあたってワーキングメモリとして使用されるRAM32、制御用のプログラムのほか、後述の虚像生成処理プログラム(図9参照)等が記録されたROM33、ROM33から読み出したプログラムや後述の虚像長設定テーブルや位置設定テーブルを記憶するフラッシュメモリ34等の内部記憶装置を備えている。また、制御回路部13は、プロジェクタ4、スクリーン前後駆動モータ24とそれぞれ接続され、プロジェクタ4や各種モータの駆動制御を行う。
【0036】
また、CAN(コントローラエリアネットワーク)インターフェース14は、車両内に設置された各種車載器や車両機器の制御装置間で多重通信を行う車載ネットワーク規格であるCANに対して、データの入出力を行うインターフェースである。そして、HUD1は、CANを介して、各種車載器や車両機器の制御装置(例えば、ナビゲーション装置48、AV装置49等)と相互通信可能に接続される。それによって、HUD1は、ナビゲーション装置48やAV装置49等から取得した情報を投影可能に構成する。
【0037】
続いて、前記構成を有するHUD1においてCPU31が実行する虚像生成処理プログラムについて図9に基づき説明する。図9は本実施形態に係る虚像生成処理プログラムのフローチャートである。ここで、虚像生成処理プログラムは車両のACC電源がONされた後に実行され、車両の乗員7に視認させる虚像8を生成するプログラムである。尚、以下の図9にフローチャートで示されるプログラムは、HUD1が備えているRAM32やROM33に記憶されており、CPU31により実行される。
【0038】
先ず、虚像生成処理プログラムではステップ(以下、Sと略記する)1において、CPU31は、視認可能範囲(アイボックス)を設定する。尚、視認可能範囲は、HUD1に内蔵されたスクリーン5に投射された映像を視認可能な乗員7の眼の位置の範囲である。ここで、HUD1は、前記したように内部にあるスクリーンに描画された映像を、フロントウィンドウ6に反射させて乗員7に視認させる構成を有し、視認させる為にはHUD1と乗員7の眼の位置関係を厳密に対応させる必要がある。そこで、CPU31は、先ず車内カメラ18で運転席に着座した車両の乗員7の顔を撮像し、撮像画像に対して画像処理を行うことによって乗員7の左右の眼の位置を検出する。そして、HUD1の位置や角度を調整することによって、図10に示すように車両の乗員7の左右の眼が含まれる範囲(例えば横13cm縦4cm)に視認可能範囲51を設定する。尚、HUD1自体ではなくHUD1に内蔵されたミラー11、プロジェクタ4、スクリーン5等の位置や角度を調整することにより視認可能範囲51を設定してもよい。尚、前記S1で設定された視認可能範囲51は、フラッシュメモリ34等の記憶媒体に記憶される。
【0039】
次に、S2においてCPU31は、虚像8の生成距離Lを基準距離となる最長距離の20mに設定する。尚、スクリーン5の現在位置が、虚像8の生成距離Lが20mとなる位置(スクリーン5とミラー11との間の光路長が最長となる位置)に配置されていない場合には、スクリーン前後駆動モータ24を駆動させて、虚像8の生成距離Lが20mとなる位置へとスクリーン5を移動させる。また、本実施形態では生成距離Lの基準距離を最長距離である20mとしているが、20m以外(例えば15mや10m)としても良い。
【0040】
続いて、S3においてCPU31は、車内カメラ18で運転席に着座した車両の乗員7の顔を撮像し、撮像画像に対して画像処理を行うことによって乗員7の左右の眼の位置を検出する。尚、以降は所定間隔で乗員7の左右の眼の位置の検出を継続して行う。
【0041】
その後、S4においてCPU31は、フロントカメラ17で撮像した撮像画像に基づいて道路距離の測定を行う。尚、“道路距離”は、フロントウィンドウ6越しに乗員7に視認される前方環境、即ち虚像8が重畳される背景中の各地点について乗員7からの距離を示したものである。その結果、図11に示すようにフロントウィンドウ6越しに乗員7に視認される前方環境の各地点が乗員からどの程度離れた地点であるのかを特定することが可能となる。
【0042】
次に、S5においてCPU31は、HUD1において現在設定されている生成距離Lと、最も新しく検出された乗員7の眼の位置とに基づいて、生成する虚像8の下端から上端までの長さ(以下、虚像長という)を設定する。尚、本実施形態では、後述のようにナビゲーション装置48で設定された案内経路に基づく案内情報である車両の進行方向を示す矢印を虚像8として生成する構成とする。そして、虚像長を変化させる際には、実際に空間上に矢印が存在するように乗員7に視認させるために見た目の矢印の傾斜角についても変化させる。但し、虚像自体の傾斜角度は一定である。
【0043】
具体的には、図12に示すように虚像8の下端から上端までの虚像長Xが長くなるほど、水平方向からの傾斜角を大きくした矢印の虚像8とする。即ち、虚像8の下端から上端までの虚像長Xが長い矢印は、乗員7からは路面上に路面と平行に配置された矢印をより上方から見下ろした際に視認できる矢印となる。一方で、虚像8の下端から上端までの虚像長Xが短い矢印は、乗員7からは路面上に路面と平行に配置された矢印をより下方(地面に近い位置)から見た際に視認できる矢印となる。
【0044】
また、前記S5においてCPU31は、フラッシュメモリ34から虚像長設定テーブルを読み出し、読み出した虚像長設定テーブルに基づいて虚像長を設定する。尚、虚像長設定テーブルには、生成距離Lと乗員7の眼の位置と虚像長とが対応付けられたテーブルである。図13は虚像長設定テーブルの一例を示した図である。
【0045】
図13に示すように虚像長設定テーブルは、生成距離Lと虚像長とが対応付けられた第1のテーブルと、乗員7の眼の位置と虚像長とが対応付けられた第2のテーブルとから構成される。そして、前記S5においてCPU31は、先ず現在設定されている生成距離Lと第1のテーブルに基づいて基準となる虚像長をA1〜A36の中から選択する。尚、生成距離Lが短いほど、選択される虚像長は長くなる。次に、CPU31は乗員7の眼の位置と第2のテーブルに基づいて虚像長の補正値を選択する。具体的には、視認可能範囲51を上下方向に沿って複数のエリア(図13に示す例では(a)〜(e)の5つのエリア)に区分する。そして、検出された乗員7の眼の位置が、どのエリアに含まれるかによって虚像長の補正値を選択する。尚、乗員7の眼の位置が視認可能範囲51の中央にあるエリア(c)(基準エリア)に位置する場合には補正値は「0」となる。そして、エリア(c)に対して上方のエリア程、補正値としてより大きな加算値が選択され、エリア(c)に対して下方のエリア程、補正値としてより大きな減算値が選択される。そして、基準となる虚像長に対して選択された補正値を加算又は減算することによって最終的な虚像長を決定する。即ち、生成距離Lが短く且つ乗員7の眼の位置が上方に位置する程、最終的に設定される虚像長は長くなり、一方で生成距離Lが長く且つ乗員7の眼の位置が下方に位置する程、最終的に設定される虚像長は短くなる。
【0046】
その後、S6においてCPU31は、プロジェクタ4へと信号を送信し、プロジェクタ4によるスクリーン5への映像の投射を開始する。尚、プロジェクタ4により投射される映像としては、車両2に関する情報や乗員7の運転の支援の為に用いられる各種情報がある。例えば障害物(他車両や歩行者)に対する警告、ナビゲーション装置48で設定された案内経路(走行予定経路)や案内経路に基づく案内情報(車両の進行方向を示す矢印等)、現在車速、案内標識、地図画像、交通情報、ニュース、天気予報、時刻、接続されたスマートフォンの画面、テレビ画面等がある。特に本実施形態では、ナビゲーション装置48で設定された案内経路に基づく案内情報である車両の進行方向を示す矢印を出力する構成とする。
【0047】
その結果、例えばナビゲーション装置48において案内経路が設定されており、車両の進行方向前方に特に右左折の対象となる交差点が存在しない場合には、図14に示すように車両の進行方向前方に直進方向を示す矢印の虚像8を生成する。尚、車両の進行方向前方に右左折の対象となる交差点が接近した場合には、直進方向を示す矢印に替えて右左折を示す矢印の虚像8を生成する。その結果、乗員7から基準距離(例えば20m)前方の位置に車両の進行方向を示す矢印の虚像8が生成されることとなり、乗員7は虚像8を視認する際に視線移動を極力少なくすることが可能である。また、特に右左折を示す矢印の虚像8を生成する場合には、右左折の対象となる交差点の位置に対応させて虚像8を生成することが望ましい。従って、後述のように乗員7から右左折対象となる交差点までの距離を算出し、算出した距離を目標生成距離に設定し、生成距離Lが目標生成距離となるようにプロジェクタ4の光路に沿ってスクリーン5を移動させるように構成する(S10)。尚、その後に車両が移動することによって乗員7から右左折対象となる交差点までの距離が変化すれば、それに伴って生成距離Lも変更される。それによって、右左折の対象となる交差点の位置を乗員7は明確に特定することが可能となる。
【0048】
また、投射される映像は、投射された映像に基づいて生成される虚像8が前記S5で設定された虚像長となる映像とする。それによって、虚像8を、乗員7の眼の位置と乗員7からの距離に応じて視認されるべき適切な形状とすることが可能となる。具体的には、図15に示すように乗員7の眼の位置が下方にある、又は生成距離Lが遠い(虚像8までの距離が遠い)場合には、生成される虚像8の虚像長が短くなり、路面に沿って配置される矢印をより水平方向に近い角度から視認した形状の虚像8となる。一方で、乗員7の眼の位置が上方にある、又は生成距離Lが近い(虚像8までの距離が近い)場合には、生成される虚像8の虚像長が長くなり、路面に沿って配置される矢印をより上方から見下ろして視認した形状の虚像8となる。従って、進行方向前方の路面上において路面と平行に虚像8が現実に存在するかのように背景(路面)に重畳させて乗員7に視認させることが可能となる。
【0049】
更に、本実施形態では特に矢印の虚像8を、虚像8の下端が乗員7から生成距離Lだけ離れた地面上に位置するように虚像8を生成する。具体的には、前記S4で測定した道路距離に基づいて、フロントウィンドウ6越しに乗員7に視認される前方環境、即ち虚像8が重畳される背景の内、乗員7から生成距離Lだけ離れた路面上の地点を特定する。そして、特定された地点に虚像8の下端が位置するようにスクリーン5に対して映像の投射を行う。それによって、進行方向前方の路面上に虚像8が現実に存在するかのように背景(路面)に重畳させて乗員7に視認させることが可能となる。虚像8の下端が乗員7から生成距離Lだけ離れた地面上に位置するように虚像8を生成する。
【0050】
その後、S7においてCPU31は、虚像8の生成距離Lを変更する必要が生じたか否かを判定する。ここで、虚像8の生成距離Lを変更する必要がある場合としては、例えば、案内交差点の右左折を示す矢印の虚像8を生成している場合において、車両の走行に伴って車両から案内交差点までの距離が変化した場合がある。また、自車両の前方に障害物(他車両、自転車、歩行者等)が出現し、虚像8が障害物と重複する虞がある場合において、虚像8が障害物と重複しないように生成距離Lを変更する場合もある。
【0051】
そして、虚像8の生成距離Lを変更する必要が生じたと判定された場合(S7:YES)には、S10へと移行する。一方、虚像8の生成距離Lを変更する必要が生じていないと判定された場合(S7:NO)には、S8へと移行する。
【0052】
S8においてCPU31は、乗員7の眼の位置が変化したか否か判定する。具体的には、図12に示す視認可能範囲51に規定するエリア(a)〜(e)において、乗員7の眼の位置が含まれるエリアが変化した場合に、CPU31は乗員7の眼の位置が変化したと判定する。
【0053】
そして、乗員7の眼の位置が変化したと判定された場合(S8:YES)には、S11へと移行する。一方、乗員7の眼の位置が変化していないと判定された場合(S8:NO)には、S9へと移行する。
【0054】
その後、S9においてCPU31は、スクリーン5に対する映像の投射を終了するか否かを判定する。
【0055】
そして、スクリーン5に対する映像の投射を終了すると判定された場合(S9:YES)には、当該虚像生成処理プログラムを終了する。一方、スクリーン5に対する映像の投射を終了しないと判定された場合(S9:NO)にはS7へと戻り、継続してスクリーン5に対する映像の投射を行う。
【0056】
一方、S10において、CPU31はスクリーン前後駆動モータ24を駆動させて、虚像8の生成距離Lを要求される新たな距離L´となる位置へとスクリーン5を移動させる。
【0057】
以下に、上記S10の処理の詳細について説明する。
先ず、CPU31は、虚像8の生成距離Lの目標値となる目標生成距離Deを距離L´に設定する。次に、CPU31は、フラッシュメモリ34から位置設定テーブルを読み出し、目標生成距離Deだけ離れた位置に虚像8を生成する為のスクリーン5の位置(目標移動位置)を取得する。尚、位置設定テーブルは、設定可能な生成距離L(本実施形態では2.5m〜20mの間の0.5m単位)毎に、該生成距離Lに虚像8を生成する為のスクリーン5の位置が規定されている。続いて、CPU31は、スクリーン5を目標移動位置へ移動させるのに必要なスクリーン前後駆動モータ24の駆動量(パルス数)を決定する。その後、CPU31は、決定された駆動量だけスクリーン前後駆動モータ24を駆動させる為のパルス信号をスクリーン前後駆動モータ24へと送信する。そして、パルス信号を受信したスクリーン前後駆動モータ24は、受信したパルス信号に基づいて駆動を行う。その結果、スクリーン5は設定された目標生成距離Deだけ離れた位置に虚像8が生成される目標移動位置に移動することとなる。
【0058】
その後、S11においてCPU31は、HUD1において現在設定されている生成距離L(前記S10で変更された場合には変更後の生成距離L)と、新たに検出した最新の乗員7の眼の位置とに基づいて、新たな虚像長を設定する。尚、詳細についてはS5と同様であるので説明は省略する。
【0059】
尚、前記S11で設定される新たな虚像長は、乗員7の眼の位置が上方に移動した場合や生成距離Lが短く変化した場合には、過去の虚像長に比べてより長い値に設定される。一方で、乗員7の眼の位置が下方に移動した場合や生成距離Lが長く変化した場合には、過去の虚像長に比べてより短い値に設定される。
【0060】
その後、S12においてCPU31は、プロジェクタ4へと信号を送信し、プロジェクタ4による投射する映像を補正する。具体的には、投射された映像に基づいて生成される虚像8が、前記S11で新たに設定された虚像長となるように補正する。尚、虚像8の下端の位置は、S6から変わらずに乗員7から生成距離Lだけ離れた地面上に位置するように維持する。即ち、前記S12では地面から虚像8の上端までの距離を変位させることとなる。それによって、乗員7の眼の位置や乗員7から虚像8までの距離が変化した場合であっても、虚像8を、変化後の乗員7の眼の位置と乗員7からの距離に応じて視認されるべき適切な形状とすることが可能となる。
【0061】
以上詳細に説明した通り、本実施形態に係るHUD1によれば、プロジェクタ4から、映像をスクリーン5に投射し、スクリーン5に投射された映像を車両2のフロントウィンドウ6に反射させて車両の乗員7に視認させることによって、車両の乗員7が視認する映像の虚像8を生成する。また、虚像8は、虚像8の下端が乗員7から生成距離Lだけ離れた地面上に位置するように生成され、地面から虚像の上端までの距離を変位させることによって、虚像の下端から上端までの長さが乗員7の眼の位置と生成距離Lとに基づいた長さとなるようにスクリーンに投射する映像を補正する(S5、S6、S11、S12)ので、車両の進行方向を示す矢印等の地面上に生成される虚像8について、乗員7の眼の位置と乗員7からの距離に応じて視認されるべき適切な形状とすることが可能となる。従って、地面上において地面と平行に虚像8が現実に存在するかのように、背景に重畳させて乗員7に視認させることが可能となる。また、従来技術のように上方を向いた違和感のある虚像に視認される虞もない。
【0062】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
例えば、本実施形態ではHUD1によって車両2のフロントウィンドウ6の前方に虚像を生成する構成としているが、フロントウィンドウ6以外のウィンドウの前方に虚像を生成する構成としても良い。また、HUD1により映像を反射させる対象はフロントウィンドウ6自身ではなくフロントウィンドウ6の周辺に設置されたバイザー(コンバイナー)であっても良い。
【0063】
また、本実施形態では車両2に対してHUD1を設置する構成としているが、車両2以外の移動体に設置する構成としても良い。例えば、船舶や航空機等に対して設置することも可能である。また、アミューズメント施設に設置されるライド型アトラクションに設置しても良い。その場合には、ライドの周囲に虚像を生成し、ライドの乗員に対して虚像を視認させることが可能となる。
【0064】
また、本実施形態ではスクリーン5を光路に沿って移動させることによって、スクリーン5とミラー11との間の光路長を変更する構成としているが、スクリーン5は固定とし、ミラー11を光路に沿って移動させることによって、スクリーン5とミラー11との間の光路長を変更する構成としても良い。
【0065】
また、本実施形態では虚像長が乗員7の眼の位置と生成距離Lとに基づいた長さとなるようにスクリーンに投射する映像を補正する(S5、S6、S11、S12)構成としているが、生成距離Lについては考慮せずに乗員7の眼の位置のみに基づいて虚像長を設定する構成としても良い。また、乗員7の眼の位置については考慮せずに生成距離Lのみに基づいて虚像長を設定する構成としても良い。
【0066】
また、本実施形態では案内経路に沿った車両の進行方向を案内する矢印を虚像8として生成する構成としているが、進行方向を案内する矢印以外の虚像8を生成する構成としても良い。例えば、障害物(他車両や歩行者)に対する警告、渋滞情報、事故情報、現在車速、案内標識、地図画像、交通情報、ニュース、天気予報、時刻、接続されたスマートフォンの画面、テレビ画面等を虚像8として生成する構成としても良い。その場合であって、虚像生成処理プログラム(図9)によって乗員7の眼の位置と虚像8までの距離に応じて虚像8の虚像長を適宜設定することが可能である。
【0067】
また、本実施形態では投射レンズが不要となるレーザ走査式プロジェクタを用いているが、レーザ走査式プロジェクタ以外のプロジェクタ(例えば、DLPプロジェクタ、液晶プロジェクタ、LCOSプロジェクタ)を用いても良い。
【0068】
また、本実施形態では、スクリーンを1枚のスクリーンから構成しているが、スクリーンの数は2枚以上としても良い。また、スクリーンを2枚以上とした場合には、全てのスクリーンを光路に沿って移動可能に構成しても良いし、一部のスクリーンのみを光路に沿って移動可能に構成しても良い。
【0069】
また、本発明に係る虚像表示装置を具体化した実施例について上記に説明したが、虚像表示装置は以下の構成を有することも可能であり、その場合には以下の効果を奏する。
【0070】
例えば、第1の構成は以下のとおりである。
スクリーンと、映像を前記スクリーンに投射するプロジェクタと、前記スクリーンに投射された前記映像をユーザに視認させることによって前記映像の虚像を生成する虚像生成手段と、を有し、前記虚像生成手段は、前記虚像の下端が前記ユーザから所定距離だけ離れた地面上に位置するように前記虚像を生成し、前記ユーザの眼の位置を検出する位置検出手段と、前記地面から前記虚像の上端までの距離を変位させることによって、前記虚像の下端から上端までの長さが前記ユーザの眼の位置に基づいた長さとなるように前記スクリーンに投射する前記映像を補正する映像補正手段と、を有することを特徴とする。
上記構成を有する虚像表示装置によれば、虚像の下端から上端までの長さをユーザの眼の位置に応じた長さとなるように補正するので、車両の進行方向を示す矢印等の地面上に生成される虚像について、ユーザの眼の位置に応じて視認されるべき適切な形状とすることが可能となる。従って、ユーザの視線方向の地面上において地面と平行に虚像が現実に存在するかのように、背景に重畳させてユーザに視認させることが可能となる。また、従来技術のように上方を向いた違和感のある虚像に視認される虞もない。
【0071】
また、第2の構成は以下のとおりである。
前記映像補正手段は、前記ユーザの眼の位置が上方に位置する程、前記虚像の下端から上端までの長さが長くなるように前記映像を補正することを特徴とする。
上記構成を有する虚像表示装置によれば、ユーザの眼の位置が下方にある場合には、生成される虚像の長さが短くなり、地面に沿って配置される虚像をより水平方向に近い角度から視認した形状の虚像とすることができる。一方で、ユーザの眼の位置が上方にある場合には、生成される虚像の長さが長くなり、地面に沿って配置される虚像をより上方から見下ろして視認した形状の虚像とすることができる。従って、ユーザの視線方向の地面上において地面と平行に虚像が現実に存在するかのように、背景に重畳させてユーザに視認させることが可能となる。
【0072】
また、第3の構成は以下のとおりである。
前記スクリーンに投射された前記映像を視認可能な前記ユーザの眼の位置の範囲である視認可能範囲を取得する範囲取得手段を有し、前記視認可能範囲は、上下方向に沿って複数のエリアに区分され、前記映像変化手段は、前記ユーザの眼の位置が含まれるエリアに基づいて前記映像を補正することを特徴とする。
上記構成を有する虚像表示装置によれば、視認可能範囲を基準にしてユーザの眼の上下方向の位置を特定することが可能となる。従って、ユーザの眼の位置の移動量に対する虚像の長さの変化量を適切な対応関係に設定することが可能となる。
【0073】
また、第4の構成は以下のとおりである。
前記視認可能範囲は、基準エリアと、基準エリアの上方にある上方エリアと、基準エリアの下方にある下方エリアと、に区分され、前記映像変化手段は、前記ユーザの眼の位置が前記基準エリアに含まれる場合には、前記虚像の下端から上端までの長さが基準長さとなるように前記映像を補正し、前記ユーザの眼の位置が前記上方エリアに含まれる場合には、前記虚像の下端から上端までの長さが前記基準長さよりも長くなるように前記映像を補正し、前記ユーザの眼の位置が前記下方エリアに含まれる場合には、前記虚像の下端から上端までの長さが前記基準長さよりも短くなるように前記映像を補正することを特徴とする。
上記構成を有する虚像表示装置によれば、視認可能範囲を基準にしてユーザの眼の上下方向の位置を複数段階で明確に特定することが可能となる。従って、ユーザの眼の位置に対してより適切な虚像の長さを設定することが可能となる。
【0074】
また、第5の構成は以下のとおりである。
スクリーンと、映像を前記スクリーンに投射するプロジェクタと、前記スクリーンに投射された前記映像を反射させてユーザに視認させることによって前記映像の虚像を生成する凹面鏡を含む虚像生成手段と、前記スクリーンと前記凹面鏡との間の光路長を変更する光路長変更手段と、前記光路長変更手段によって前記スクリーンと前記凹面鏡との間の光路長を変更することにより、前記ユーザから前記虚像生成手段により生成される前記虚像までの距離である生成距離を変更する虚像位置変更手段と、を有し、前記虚像生成手段は、前記虚像の下端が前記ユーザから前記生成距離だけ離れた地面上に位置するように前記虚像を生成し、前記地面から前記虚像の上端までの距離を変位させることによって、前記虚像の下端から上端までの長さが前記生成距離に基づいた長さとなるように前記スクリーンに投射する前記映像を補正する映像補正手段を有することを特徴とする。
上記構成を有する虚像表示装置によれば、虚像の下端から上端までの長さをユーザからの距離に応じた長さとなるように補正するので、車両の進行方向を示す矢印等の地面上に生成される虚像について、ユーザからの距離に応じて視認されるべき適切な形状とすることが可能となる。従って、ユーザの視線方向の地面上において地面と平行に虚像が現実に存在するかのように、背景に重畳させてユーザに視認させることが可能となる。また、従来技術のように上方を向いた違和感のある虚像に視認される虞もない。
【0075】
また、第6の構成は以下のとおりである。
前記光路長変更手段は、前記スクリーンを前記光路に沿って移動させることにより前記スクリーンと前記凹面鏡との間の光路長を変更することを特徴とする。
上記構成を有する虚像表示装置によれば、簡易な構成及び制御によってユーザから虚像が生成される位置までの距離を変更可能となる。
【0076】
また、第7の構成は以下のとおりである。
前記映像補正手段は、前記生成距離が短い程、前記虚像の下端から上端までの長さが長くなるように前記映像を補正することを特徴とする。
上記構成を有する虚像表示装置によれば、ユーザから遠い場所に虚像を生成する場合には、生成される虚像の長さが短くなり、地面に沿って配置される虚像をより水平方向に近い角度から視認した形状の虚像とすることができる。一方で、ユーザから近い場所に虚像を生成する場合には、生成される虚像の長さが長くなり、地面に沿って配置される虚像をより上方から見下ろして視認した形状の虚像とすることができる。従って、ユーザの視線方向の地面上において地面と平行に虚像が現実に存在するかのように背景に重畳させてユーザに視認させることが可能となる。
【0077】
また、第8の構成は以下のとおりである。
スクリーンと、映像を前記スクリーンに投射するプロジェクタと、前記スクリーンに投射された前記映像を反射させてユーザに視認させることによって前記映像の虚像を生成する凹面鏡を含む虚像生成手段と、前記スクリーンと前記凹面鏡との間の光路長を変更する光路長変更手段と、前記光路長変更手段によって前記スクリーンと前記凹面鏡との間の光路長を変更することにより、前記ユーザから前記虚像生成手段により生成される前記虚像までの距離である生成距離を変更する虚像位置変更手段と、を有し、前記虚像生成手段は、前記虚像の下端が前記ユーザから前記生成距離だけ離れた地面上に位置するように前記虚像を生成し、前記ユーザの眼の位置を検出する位置検出手段と、前記地面から前記虚像の上端までの距離を変位させることによって、前記虚像の下端から上端までの長さが前記ユーザの眼の位置と前記生成距離とに基づいた長さとなるように前記スクリーンに投射する前記映像を補正する映像補正手段と、を有することを特徴とする。
上記構成を有する虚像表示装置によれば、虚像の下端から上端までの長さをユーザの眼の位置とユーザからの距離に応じた長さとなるように補正するので、車両の進行方向を示す矢印等の地面上に生成される虚像について、ユーザの眼の位置とユーザからの距離に応じて視認されるべき適切な形状とすることが可能となる。従って、ユーザの視線方向の地面上において地面と平行に虚像が現実に存在するかのように、背景に重畳させてユーザに視認させることが可能となる。また、従来技術のように上方を向いた違和感のある虚像に視認される虞もない。
【0078】
また、第9の構成は以下のとおりである。
車両に搭載され、前記虚像生成手段は、前記車両の進行方向前方に前記車両の乗員に視認させる前記虚像を生成し、前記虚像は、前記車両の走行予定経路に沿った走行を案内する画像であることを特徴とする。
上記構成を有する虚像表示装置によれば、特に車両の走行予定経路に沿った走行を案内する虚像を生成する場合において、進行方向前方の路面上において路面と平行に虚像が現実に存在するかのように背景に重畳させてユーザに視認させることが可能となる。従って、走行予定経路に沿った走行案内を虚像によって適切に行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0079】
1 ヘッドアップディスプレイ装置
2 車両
3 ダッシュボード
4 プロジェクタ
5 スクリーン
6 フロントウィンドウ
7 乗員
8 虚像
17 フロントカメラ
24 スクリーン前後駆動モータ
31 CPU
32 RAM
33 ROM
34 フラッシュメモリ
51 視認可能範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16