【実施例1】
【0016】
<<シートの全体構成について:
図1>>
始めに、実施例1のシート1(乗物用シート)の構成について、
図1〜
図20を用いて説明する。なお、以下の説明中、「シート幅方向」「シート高さ方向」のように各種方向に「シート」を付して記載する場合には、シート1に対する方向を示し、「車両内側」「車両外側」のように「車両」を付して記載する場合には、車両に対する方向を示すものとする。本実施例のシート1は、
図1に示すように、いわゆるセダンタイプの自動車の左席として構成されている。上記シート1は、着座者の背凭れとなるシートバック2と、着座部となるシートクッション3と、頭凭れとなるヘッドレスト(図示省略)と、を備えた構成となっている。
【0017】
<<シートバックの全体構成について:
図1>>
上述したシートバック2は、その内部の骨格構造を構成する金属製のバックフレーム10と、バックフレーム10の前部に組み付けられて着座者の体圧を和らげて受け止める発泡ウレタン製のバックパッド20と、シートバック2全体を外周側から覆う合成皮革製のバックカバー30と、を有して構成されている。また、上記シートバック2には、その車両外側の側部箇所に、車両の側部衝突の発生時にエアバッグをシート前方側に膨張展開させて、着座者の身体を衝突から保護するサイドエアバッグ装置S/Aが内装されている。
【0018】
上述したバックフレーム10は、左右一対の縦長状の鋼板材から成るサイドフレーム11と、各サイドフレーム11の上端部間に一体的に架橋された逆U字状の円鋼管材から成るアッパパイプ12と、各サイドフレーム11の下端部間に一体的に架橋された横長状の鋼板材から成るロアプレート13と、によって、全体が正面視四角枠状の形に組まれた構成となっている。
【0019】
上述した各サイドフレーム11は、それぞれ、シートバック2の左右両側の側部領域の骨格を成す部材として構成されている。各サイドフレーム11は、それぞれ、シート高さ方向に長尺な形にカットされた1枚の鋼板材により形成されており、互いに向かい合うシート内側(シート幅方向の内側)に互いの内側面を向けて配設された状態とされている。各サイドフレーム11は、それぞれ、それらの前後側の各縁部位がシート内側に折り曲げられた形状とされている。これにより、各サイドフレーム11は、それらの前後側の各縁部位のエッジが外部に出にくいようにシート内側に丸められていると共に、構造全体としての曲げや捩りに対する強度が高められた構成となっている。
【0020】
アッパパイプ12は、シートバック2の左右両側の肩口部領域と上側部領域の骨格を成す部材として、円鋼管材が逆U字状に折り曲げられて形成されている。上記アッパパイプ12は、その左右両側の下方側に折り曲げられた先の各端部が、上述した各サイドフレーム11の上端部に形成された半パイプ状に絞られた形状部分に嵌め込まれて、溶接により強固に一体的に結合された状態とされている。上記結合により、アッパパイプ12は、上述した各サイドフレーム11の上端部間を繋ぐ形で、これらの間に強固に一体的に架橋された状態とされている。上記アッパパイプ12のシート幅方向の中間部には、図示しないヘッドレストを下方側から支えるためのホルダ部材が左右2箇所に溶接されて結合されている。
【0021】
ロアプレート13は、上述した各サイドフレーム11の下部間を繋ぐ補強部材として、これらの間にシート前後方向に面を向けて横長状の形に配設された状態とされている。詳しくは、上記ロアプレート13は、その左右両側の各端部が、上述した各サイドフレーム11のシート内側に折り曲げられた後側の縁部位にそれぞれ前側からあてがわれて、溶接により強固に一体的に結合された状態とされている。上記結合により、ロアプレート13は、上述した各サイドフレーム11の下部間を繋ぐ形で、これらの間に強固に一体的に架橋された状態とされている。上記ロアプレート13は、その上下側の各縁部位がシート前方側に折り曲げられていることで、曲げや捩りに対する構造強度が高められていると共に、外部(シート後方側)に対してエッジを立たせない形に丸められた構成とされている。
【0022】
バックパッド20は、ウレタン樹脂をシートバック2の基本的な外形を成す形に発泡成形して形成されているものである。上記バックパッド20は、上述した四角枠状に組まれたバックフレーム10にシート前方側から組み付けられることにより、バックフレーム10の四角枠全体をシート前方側から広く覆うと共に、その上下左右の各周縁部に形成されたシート後方側へ巻き込み状に延びる各延長部形状によって、バックフレーム10の四角枠全体を上下左右の各外周側からやシート後方側からも広く覆った状態にセットされた状態とされている。そして、上記バックパッド20は、上記バックフレーム10への組み付け後に、袋状に縫製されたバックカバー30が上方側から被せ付けられて、その所々の箇所がバックパッド20内に吊り込まれたり、バックフレーム10に止着されたりすることにより、バックカバー30の張設力によってバックフレーム10に押さえ付けられて保持された状態とされている。
【0023】
バックカバー30は、シートバック2の各面の形に合わせてカットされた複数枚のカバーピースが1枚の袋形状に縫い合わされて形成されているものである。上記バックカバー30は、上記組み付けられたバックパッド20に上方側から袋を被せるように組み付けられた後、
図1〜
図3に示すように、そのバックパッド20(シートバック2)の背裏面に被せ付けられた背裏側上部ピース31が、バックパッド20(シートバック2)の前面側から下方側を通って後側に回し込まれた背裏側下部ピース32と止着されることにより、シートバック2の外周面に浮きや皺を生じさせない形に張設された状態とされている。
【0024】
詳しくは、上述したバックカバー30は、その図示しないシートバック2の前面側に被せ付けられた各カバー領域が、バックパッド20の中央領域とその左右両サイドのシート前方側に山状に膨らんだ各サイドサポート領域との間の谷状に凹んだ箇所などに吊り込まれて止着されていることにより、シートバック2の外周面全体に広く密着した状態に張設された状態とされている。上記バックカバー30の背裏側上部ピース31と背裏側下部ピース32とは、
図2〜
図3に示すように、背裏側下部ピース32の上縁部位に沿って縫合された樹脂製の引掛け具40が、背裏側上部ピース31の高さ方向の中間部位に沿って縫合された樹脂製の被引掛け具50に引掛けられることにより、互いに強く引き合わされた状態に止着された状態とされている。ここで、上記背裏側下部ピース32が本発明の「シートカバー」に相当し、被引掛け具50が本発明の「所定の取付部」に相当する。
【0025】
上記背裏側上部ピース31は、上記被引掛け具50が縫合された高さ方向の中間部位(縫い線31A)から更に下方側へ形状を延ばす延長領域31Bを有した形状とされている。上記背裏側上部ピース31は、上記引掛け具40を被引掛け具50に引掛けた後に、上記延長領域31Bが下方側に垂れ下げられて図示しないシートクッション3の後部骨格等の所定箇所に結合されることにより、上記引掛け具40と被引掛け具50との掛け合わせ箇所が外部から見えないように被覆した状態となるように張設されるようになっている。
【0026】
サイドエアバッグ装置S/Aは、
図1に示すように、上述したバックフレーム10の車両外側のサイドフレーム11の外側部に一体的に取り付けられている。上記サイドエアバッグ装置S/Aは、常時は、上述したバックパッド20やバックカバー30によって外側から覆われたシートバック2の内部に埋もれた状態として配設されている。上記サイドエアバッグ装置S/Aは、車両の側部衝突が起きることにより(もしくは検知されることにより)、瞬時にエアバッグをシート前方側に膨張展開させて、着座者の身体を衝突から保護するようになっている。
【0027】
上記サイドエアバッグ装置S/Aは、上記エアバッグの膨張展開時には、エアバッグのシート前方側に位置するバックパッド20の車両外側のサイドサポート領域や同領域を表側から被覆するバックカバー30に内側から強い展開圧をかけて、これらを内側から引き裂きながらエアバッグをシート前方側に膨張展開させるようになっている。したがって、上記エアバッグの膨張展開に伴って、バックカバー30には、特にエアバッグの配置側領域となる車両外側の領域において、背裏側上部ピース31と背裏側下部ピース32との間に、これらを互いにシート高さ方向に引き離そうとする強い引張り力が入力されることがある。
【0028】
しかしながら、上記背裏側上部ピース31と背裏側下部ピース32とは、上述した引掛け具40と被引掛け具50とが互いに強く掛け合わされる構成となっていることにより、上記のようなサイドエアバッグ装置S/Aの膨張展開に伴う強い引張り力の作用を受けても、互いに強く止着された状態に保持されるようになっている。しかしその一方で、上記引掛け具40と被引掛け具50とは、互いに掛け合わされる際には、上記のような強い引張り強度を発揮できる構成であるにもかかわらず、互いの掛け合わせを比較的簡便に行えるようになっている。
【0029】
<<引掛け具と被引掛け具の全体構成について:
図2〜
図3>>
以下、上述したバックカバー30の背裏側上部ピース31と背裏側下部ピース32とを止着させる引掛け具40と被引掛け具50の構成、及びこれらの掛け合わせ方について、
図2〜
図20を用いて詳しく説明する。上述した引掛け具40と被引掛け具50とは、それぞれ、ポリプロピレン樹脂(PP樹脂)のインジェクション成形により、左右対称な形に形成された1部品によって構成されている。上記引掛け具40は、
図2〜
図3に示すように、シート幅方向に長尺な板状に形成されており、背裏側下部ピース32の上縁部位に沿って同上縁部位のシート幅方向の略全域に亘って広く縫合(縫い線32A)されて一体化された状態として設けられている。
【0030】
また、被引掛け具50も、上記引掛け具40より僅かにシート幅方向に長尺な形となる板状に形成されており、背裏側上部ピース31の中間部位に沿って同中間部位のシート幅方向の略全域に亘って広く縫合(縫い線31A)されて一体化された状態として設けられている。上述した引掛け具40と被引掛け具50とは、それらのシート幅方向の中央部同士と両端部同士との計3箇所同士が互いに掛け合わされて結合されるようになっている。上記引掛け具40と被引掛け具50との掛け合わせにより、バックカバー30の背裏側上部ピース31と背裏側下部ピース32とが互いにシート幅方向の広い範囲に亘って左右対称な形に引張られて止着された状態とされるようになっている。上述した引掛け具40と被引掛け具50とは、バックフレーム10のロアプレート13の背裏側の位置(ロアプレート13とシート高さ方向の配置が重なる位置)で互いに引掛けられて止着されるようになっている。
【0031】
<<引掛け具の具体的な構成について:
図2〜
図8、
図17〜
図18>>
上述した引掛け具40は、
図4〜
図8に示すように、そのシート幅方向に長尺な形とされた短手方向の先端(図示上端)に、上述した被引掛け具50に引掛けられて止着されるフック形状の引掛部41A,41Bが、シート幅方向の中央部と両端部との3箇所に分かれて形成されている。これら引掛部41A,41Bは、引掛け具40の短手方向の先端側(図示上端側)から短手方向に面一状に立ち上がる立ち上がり片41A1,41B1と、各立ち上がり片41A1,41B1の延びた先の端部からシート後方下側に折り返される形で延びる返し片41A2,41B2と、各返し片41A2,41B2の延びた先の端部から各立ち上がり片41A1,41B1との隙間を埋める方向に突出する掛爪41A3,41B3と、を有する形に形成されている。各掛爪41A3,41B3は、各返し片41A2,41B2の延びた先の端部からJ字状に反り返される形に突出する形に形成されている。
【0032】
上述した各引掛部41A,41Bのうち、左右両端側に形成された各引掛部41Bは、
図18に示すように、それらの立ち上がり片41B1の延びた先の端部からシート後方下側に折り返される形で延びる各返し片41B2や掛爪41B3が、
図17に示す中央の引掛部41Aの返し片41A2や掛爪41A3よりも肉厚が大きな形に形成されて、構造強度が高められた構成とされている。そして、これら左右両端側の各引掛部41Bは、
図19に示すように、上述したシートバック2の左右両側の各サイドフレーム11の直ぐ後側の位置までシート幅方向に延び出した位置で被引掛け具50に引掛けられるようになっている。
【0033】
このような構成となっていることにより、左右両端側に形成された各引掛部41Bは、中央の引掛部41Aよりも被引掛け具50から外れにくい高い引張り強度を発揮することができる構成とされている。したがって、
図2で上述したように、シートバック2の車両外側の領域に配設されたサイドエアバッグ装置S/Aが展開作動して、バックカバー30の背裏側上部ピース31と背裏側下部ピース32との間にシート高さ方向の強い引張り力が入力された際には、上記引掛け具40の車両外側の端部に設けられた引掛部41Bと被引掛け具50との高い引掛かり強度によって、上記の強い引張り力を受け止めることができる。
【0034】
また、引掛け具40の車両内側の端部に設けられた引掛部41Bも、上記と同様に、サイドエアバッグ装置S/Aの展開圧に耐えられる構造強度を備えた構成となっている。上記車両内側の端部に設けられた引掛部41Bは、引掛け具40が運転席(図示省略)に適用される場合に、同運転席における車両外側の端部に設けられるようになっている。そして、上記引掛部41Bは、運転席の車両外側の領域に配設されるサイドエアバッグ装置(図示省略)の展開作動時に、その展開圧に耐え得る引掛かり強度を発揮するようになっている。
【0035】
また、
図4〜
図8に示すように、上述した引掛け具40には、そのシート幅方向に長尺な形とされた短手方向の中央から末端(図示下端)にかけての領域に、バックカバー30の背裏側下部ピース32の上縁部位に沿って縫合される結合部42が形成されている。上記結合部42は、その大部分の領域が、上記背裏側下部ピース32の上縁部位にあてがえて縫合することのできる肉厚の薄い平板形状に形成されている。しかし、上記結合部42には、その末端(図示下端)側の縁部位に、平板形状の面外方向となるシート後方側に断面半円形状に膨らむリブ42A,42B,42Cが、シート幅方向の中央部と両端部、それと中央部と両端部との各間と、の計5箇所に分かれて形成されている。これにより、結合部42は、全体として、作業者が曲げたり捩ったりするなどの力を加えない限り、自重によってはほとんど曲げ撓まされることのない適度な剛性を備えた構成とされている。ここで、上述した各リブ42A,42B,42Cが本発明の「膨らみ部位」に相当する。
【0036】
上述した各リブ42A,42B,42Cは、
図5、
図8、
図17及び
図18等に示すように、それらの背面部に背面部を空洞化させる空間部位42A1,42B1,42C1が形成された構成となっている。これらの空間部位42A1,42B1,42C1によって、各リブ42A,42B,42Cは、肉抜きされて軽量化されていると共に、それぞれの剛性が下げられて、外部から受ける無理な負荷を撓んで逃がすことができる構成とされている。上述した各リブ42A,42B,42Cの膨らみの大きさや、背面側の空間部位42A1,42B1,42C1の肉抜きの大きさは、それぞれ互いに同じとなっている。
【0037】
図4〜
図8に示すように、上述した各リブ42A,42B,42Cのうち、シート幅方向の中央に形成されたリブ42Aは、引掛け具40のシート幅方向の全長のうちの略半分程度の長さを占める長尺な長さに形成されている。上記中央のリブ42Aは、そのシート幅方向の中央箇所において、上述した中央の引掛部41Aとシート幅方向の配置が重なる関係となる位置に形成されている。また、シート幅方向の両端側に形成された各リブ42Bは、上述した引掛け具40の両端側に形成された各引掛部41Bよりもシート幅方向に形状が長く、かつ、シート幅方向の配置が重なる関係となる位置に形成されている。詳しくは、上記の両端側に形成された各リブ42Bは、両端側の各引掛部41Bのシート幅方向の形成領域を完全に跨ると共に、各引掛部41Bよりもシート幅方向の両側に形状を延ばす形となって形成されている。
【0038】
また、上記シート幅方向の中央のリブ42Aと両端側の各リブ42Bとの各間に形成された各リブ42Cは、各間の略中央箇所に形成されている。これらのリブ42Cは、それぞれ、他のリブ42A,42Bとは異なり、シート幅方向の長さが短く、半球状に突出した形となって形成されている。上記各リブ42Cは、上述した中央のリブ42Aと左右両端側の各リブ42Bとの間に、両端側の各リブ42Bのシート幅方向の幅長と同程度の間隔を空けて形成された状態とされている。
【0039】
上述した各リブ42A,42B,42Cの形成により、結合部42は、各リブ42A,42B,42Cの形成されたシート幅方向の各領域では、面外方向や面内方向への各曲げや捩りに対する構造強度が高められた構成とされている。また、結合部42は、上記各リブ42A,42B,42Cの形成されたシート幅方向の各領域では、
図2に示すように、引掛け具40を被引掛け具50に引掛けてバックカバー30が張設された状態においては、それらの下側の縁部位が各リブ42A,42B,42Cによって丸められていることで、外部(シート後方側)に対してエッジを立たせない形に丸められた状態として設けられるようになっている。これにより、上記引掛け具40の各リブ42A,42B,42Cの形成された領域にシート後方側から物が当たるなどして外力がかけられても、上記各リブ42A,42B,42Cの丸められた形状によって当たりを和らげて受け止めることができるようになっている。
【0040】
また、上記各リブ42A,42B,42Cの形成により、
図11等で後述するように、引掛け具40を被引掛け具50に引掛ける際、引掛け具40の下縁側の丸められた周面部位に指をあてがえて、指を各リブ42A,42B,42Cの周面部位に沿って広く滑らかに面当接させることができるようになっている。これにより、引掛け具40を被引掛け具50に引掛ける作業に力を入れやすくなると共に、同引掛け作業を指に無理な負荷を受けない状態で行うことができるようになっている。
【0041】
また、上記各リブ42A,42B,42Cばかりでなく、各引掛部41A,41Bも、これらの被引掛け具50に引掛けられてシート後方側に張り出す各返し片41A2,41B2のシート後方側の面部が、上下左右の各縁部位が丸められた形状となっており、外部(シート後方側)に対してエッジを立たせない形に丸められた状態として設けられるようになっている。これにより、上記引掛け具40の各引掛部41A,41Bの形成された領域にシート後方側から物が当たるなどして外力がかけられても、各引掛部41A,41Bの丸められた形状によって当たりを和らげて受け止めることができるようになっている。
【0042】
また、上記結合部42の各リブ42A,42B,42Cの形成されていないシート幅方向の各領域は、可撓領域42Dとして、各リブ42A,42B,42Cの形成された領域と比べて曲げられたり捩られたりし易い構成とされている。上記結合部42の各可撓領域42Dは、それらの下側の縁部位が丸められた形状とはなっていない。しかし、各可撓領域42Dの下側の縁部位は、それらのシート幅方向の幅長が狭いために、これらの領域にはシート後方側から物が当たらないようになっており、隣接する他のリブ42A,42B,42Cによって、シート後方側からの当たりが和らげられて受け止められるようになっている。
【0043】
また、上記結合部42の各引掛部41A,41Bが形成されていないシート幅方向の各領域の上側の縁部位も、丸められた形状とはなっていない。しかし、これらの縁部位は、引掛け具40が被引掛け具50に引掛けられた状態では、後述する被引掛け具50の下側リブ53よりシート前方下側に退避した位置に設けられるようになっている。そのため、上記結合部42の上側の縁部位には、シート後方側から物が当たらないようになっており、近接する被引掛け具50の下側リブ53によって、シート後方側からの当たりが和らげられて受け止められるようになっている。
【0044】
また、上記結合部42のシート幅方向の両外側の各縁部位も、丸められた形状とはなっていない。しかし、これら両外側の各縁部位は、それらのシート高さ方向の幅長が狭いために、これらの領域にはシート後方側から物が当たらないようになっており、近接する被引掛け具50の下側リブ53や引掛け具40の両端側の引掛部41B、それに両端側のリブ42Bによって、シート後方側からの当たりが和らげられて受け止められるようになっている。
【0045】
上述した引掛け具40は、
図2〜
図3及び
図17〜
図18に示すように、その上述した結合部42のシート前方側の面部上に、バックカバー30の背裏側下部ピース32の上縁部位があてがわれ、このあてがわれた部位に沿って互いにシート幅方向に連続的に縫合(縫い線32A)されることにより、背裏側下部ピース32の上縁部位に一体的に結合された状態とされている。詳しくは、上記引掛け具40の結合部42は、その上述した各リブ42A,42B,42Cよりも上側となるシート高さ方向の中間部領域に、背裏側下部ピース32の上縁部位が一定の縫い代を空けてあてがわれて縫合(縫い線32A)された状態とされている。
【0046】
<<被引掛け具の具体的な構成について:
図2〜
図18>>
被引掛け具50は、
図4〜
図8に示すように、そのシート幅方向に長尺な平板形状に形成された本体部の短手方向の中央領域に、上述した引掛け具40に形成された各引掛部41A,41Bを掛け入れることのできる引掛孔51A,51Bが、各引掛部41A,41Bの形成箇所に対応したシート幅方向の中央部と両端部との3箇所に分かれて形成されている。これら引掛孔51A,51Bは、
図9〜
図10に示すように、上述した引掛け具40の各引掛部41A,41Bを、それぞれシート前方側から後方側へ掛け入れて、それらの下側の枠片となる各掛枠51A1,51B1上に、対応する各引掛部41A,41Bを引掛けることができる構成とされている。
【0047】
具体的には、各引掛孔51A,51Bは、それらに通される対応する各引掛部41A,41Bの返し片41A2,41B2よりも、シート幅方向の幅長やシート高さ方向の幅長が僅かに広い矩形状の貫通孔として形成されている。これにより、各引掛孔51A,51Bは、それらに通される各引掛部41A,41Bの返し片41A2,41B2を斜めに傾けることなく真っ直ぐな姿勢でシート前方側から後方側へスムーズに通すことができるようになっている。
【0048】
また、各引掛孔51A,51Bのうち、中央の引掛孔51Aは、
図17に示すように、その下側の掛枠51A1が、対応する引掛け具40の中央の引掛部41Aを返し片41A2がその上面に底付きする位置まで受け入れる形となっている。これに対して、
図18に示すように、左右両端側の各引掛孔51Bは、それらの掛枠51B1が、対応する引掛け具40の左右両端側の各引掛部41Bを引掛けた状態において、返し片41B2が上面から浮くところまでシート高さ方向にガタ付かせることができる形となって形成されている。このような構成の違いは、中央の引掛孔51Aの掛枠51A1が、左右両端側の引掛孔51Bの掛枠51B1よりも上方側に形状を張り出させる張出縁部51A2を有した横断面形状に形成されていることによるものである。
【0049】
上記の理由によって、引掛け具40の左右両端側の各引掛部41Bは、対応する左右両端側の各引掛孔51Bの掛枠51B1に対して、シート高さ方向に僅かな隙間を有した状態に掛け合わされるようになっている。上記の隙間が設定されている理由は、詳しくは
図11〜
図16において後述するが、引掛け具40の各引掛部41A,41Bを被引掛け具50の対応する各引掛孔51A,51Bに引掛ける作業が、次の手順で行われるようになっているためである。先ず、中央の引掛部41Aを対応する引掛孔51Aに引掛ける(
図11〜
図12参照)。次いで、右側(或いは左側)の引掛部41Bを対応する引掛孔51Bに引掛ける(
図13〜
図14参照)。そして最後に、残る左側(或いは右側)の引掛部41Bを対応する引掛孔51Bに引掛ける(
図15〜
図16参照)。
【0050】
このような流れで行われるようになっているために、最後の左側(或いは右側)の引掛部41Bを対応する引掛孔51Bに引掛ける(
図15〜
図16参照)際に、引掛け具40が中央の引掛部41Aを支点に先に引掛けられた右側(或いは左側)の引掛部41Bが同側の引掛孔51B内で下方側に首振りされてしまう。そこで、この首振りの動きを逃がすために、上記の隙間が設定されている。この隙間がないと、首振りの際に支点となる中央の引掛部41Aが首振りの動きによって同側の掛枠51A1から外し出されてしまうおそれがある。
【0051】
また、
図17に示すように、被引掛け具50の中央の引掛孔51Aの下側の掛枠51A1は、これに掛けられる引掛け具40の中央の引掛部41Aの掛爪41A3が掛かる底側のシート後方側の縁部位が、掛爪41A3の外しを比較的容易とすることができるように丸められた形に形成されている。このように構成されていることにより、
図15〜
図16で上述したように、左側(或いは右側)の最後の引掛部41Bを対応する引掛孔51Bに引掛ける際に、その首振りの支点となる中央の引掛部41Aがその掛けられた掛枠51A1に対して僅かでも上方側に滑ることができるようになっている。したがって、上記の滑り移動によって、引掛け具40の首振りの振れ幅を少しでも小さくして、先に引掛けられた中央の引掛部41Aや右側(或いは左側)の引掛部41Bをそれぞれの引掛孔51A,51Bの掛枠51A1,51B1から外れにくくすることができる。
【0052】
これに対して、
図18に示すように、被引掛け具50の左右両端側の各引掛孔51Bの下側の掛枠51B1は、これらに掛けられる引掛け具40の左右両端側の各引掛部41Bの掛爪41B3が掛かる底側のシート後方側の縁部位が、一度引掛けた各掛爪41B3が容易には外れないように各掛爪41B3をシート高さ方向に真っ直ぐに向けた面で強く受け止めることができる形に形成されている。このように構成されていることにより、上記左右両端側の各引掛孔51Bの掛枠51B1に引掛けられた引掛け具40の各引掛部41Bが、
図2で前述したサイドエアバッグ装置S/Aの展開作動時に、各掛枠51B1に強く引掛けられた状態に保持されるようになっている。
【0053】
ところで、
図4〜
図8に示すように、上述した被引掛け具50の平板状の本体部は、その大部分の領域が、上記背裏側上部ピース31の中間部位にあてがえて縫合することのできる肉厚の薄い平板形状に形成されている。しかし、上記本体部には、その末端(図示上端)側の縁部位に、平板形状の面外方向となるシート後方側に断面半円形状に膨らむ上側リブ52が、シート幅方向の全域に亘って一続きに連なった形に形成されている。
【0054】
また、上記本体部には、その先端(図示下端)側の縁部位に、同じく平板形状の面外方向となるシート後方側に断面半円形状に膨らむ下側リブ53が、上記各引掛孔51A,51Bの掛枠51A1,51B1の形成領域を除くシート幅方向の全域に亘って断続的に形成されている。上述した各下側リブ53は、各引掛孔51A,51Bの下側の縁部となる各掛枠51A1,51B1と同軸上(同列上)の位置に並んで形成されている。したがって、上述した上側リブ52や下側リブ53の形成により、被引掛け具50は、全体として、作業者が曲げたり捩ったりするなどの力を加えない限り、自重によってはほとんど曲げ撓まされることのない適度な剛性を備えた構成とされている。
【0055】
上述した上側リブ52は、
図5、
図8、
図17及び
図18等に示すように、その背面部に背面部を空洞化させる空間部位52Aが形成された構成となっている。上記空間部位52Aによって、上側リブ52は、肉抜きされて軽量化されていると共に、それぞれの剛性が下げられて、外部から受ける無理な負荷を撓んで逃がすことができる構成とされている。一方、下側リブ53は、その背面部が空洞化されておらず、寸胴な中実形状とされている。下側リブ53は、このような形状とされていることにより、上述した各引掛孔51A,51Bの掛枠51A1,51B1に引掛けた引掛け具40を捩じらせることなくシート幅方向に真っ直ぐに延びる形状状態に維持して引掛けた状態に保持することができる高い剛性を備えた構成とされている。
【0056】
上記上側リブ52や下側リブ53を備えた被引掛け具50は、
図2に示すように、引掛け具40を被引掛け具50に引掛けてバックカバー30が張設された状態においては、その上側の縁部位が上側リブ52によって丸められていることで、外部(シート後方側)に対してエッジを立たせない形に丸められた状態として設けられるようになっている。これにより、上記被引掛け具50の上側リブ52の形成された領域にシート後方側から物が当たるなどして外力がかけられても、上記上側リブ52の丸められた形状によって当たりを和らげて受け止めることができるようになっている。
【0057】
また、上記被引掛け具50は、その下側の縁部位も下側リブ53によって形状が丸められていることで、外部(シート後方側)に対してエッジを立たせない形に丸められた状態として設けられるようになっている。これにより、上記被引掛け具50の下側リブ53の形成された領域にシート後方側から物が当たるなどして外力がかけられても、上記下側リブ53の丸められた形状によって当たりを和らげて受け止めることができるようになっている。
【0058】
上記被引掛け具50のシート幅方向の両外側の各縁部位は、丸められた形状とはなっていない。しかし、これら両外側の各縁部位は、それらのシート高さ方向の幅長が狭いために、これらの領域にはシート後方側から物が当たらないようになっており、近接する上側リブ52や下側リブ53や引掛け具40の両端側の各引掛部41Bによって、シート後方側からの当たりが和らげられて受け止められるようになっている。
【0059】
また、被引掛け具50に形成された各引掛孔51A,51Bや後述する各指掛孔54A,54Bも同様に、それらのシート後方側に露呈する各縁部位が丸められた形状とはなっていない。しかし、これらも同様に、シート幅方向や高さ方向の幅長が狭いために、これらの領域にはシート後方側から物が当たらないようになっており、近接する上側リブ52や下側リブ53や引掛け具40の両端側の各引掛部41Bによって、シート後方側からの当たりが和らげられて受け止められるようになっている。
【0060】
また、
図11〜
図16に示すように、上述した被引掛け具50の本体部には、上述した中央の引掛孔51Aの左右両隣と、右側の引掛孔51Bの左隣と、左側の引掛孔51Bの右隣とに、それぞれ、作業者が引掛け具40を被引掛け具50に引掛ける作業をする際に指を掛け入れることのできる指掛孔54A,54Bが形成されている。これら指掛孔54A,54Bは、各引掛孔51A,51Bとはシート幅方向に一定間隔を空けて離間した状態に形成されているが、各引掛孔51A,51Bとほぼ同じ大きさ・形となる矩形状に刳り貫かれた形状とされている。
【0061】
詳しくは、上記各指掛孔54A,54Bは、各引掛孔51A,51Bとシート高さ方向にずれることなく、互いにシート幅方向にほぼ同列に並ぶように横並び状に形成された状態とされている。上記各指掛孔54A,54Bの下側の縁部は、上述した下側リブ53によって形成されている。これにより、各指掛孔54A,54Bの下側の縁部は、下側リブ53の断面半円形状に膨らむ丸みのある周面形状によって、指を広く滑らかに面当接させられる形状となっている。
【0062】
上記のように各指掛孔54A,54Bが各引掛孔51A,51Bと互いにシート幅方向に同列に並んで同じ形に形成されていることにより、例えば、引掛け具40の中央の引掛部41Aを被引掛け具50の対応する引掛孔51Aに引掛けようとした際に、誤って、その左右どちらか一方に形成された指掛孔54Aに中央の引掛部41Aを引掛けてしまうおそれが生じ得る。しかしながら、たとえそのような間違った引掛けが行われたとしても、その間違って掛けられた中央の引掛部41Aは、指掛孔54Aの下側の縁部となる下側リブ53に掛枠51A1よりも膨らみがあることで嵌りにくくなっている。なおかつ、たとえ無理に嵌め込まれたとしても、引掛け具40の長手方向の一端が被引掛け具50から外側(シート幅方向の外側)へ大きく食み出した状態となるために、作業者は、その続きの作業が行えない状態であることを視覚で認識することができる。その際、下側リブ53に誤って引掛けられた引掛け具40の中央の引掛部41Aは、下側リブ53が断面半円形状に膨らむ形となっているために、比較的スムーズに下側リブ53から引き抜くことができる。
【0063】
上述した各指掛孔54A,54Bが各引掛孔51A,51Bと互いにほぼ同じ大きさで、かつ、シート高さ方向にずれることなく、シート幅方向にほぼ同列に並ぶように形成された理由は次の通りである。すなわち、上述した被引掛け具50は、
図2〜
図3及び
図17〜
図18に示すように、その上述した本体部のシート後方側の面部上に、バックカバー30の背裏側上部ピース31の中間部位があてがわれて、このあてがわれた部位に沿って互いにシート幅方向に連続的に縫合(縫い線31A)されることにより、背裏側上部ピース31の中間部位に一体的に結合された状態とされている。詳しくは、上記被引掛け具50の本体部は、その上述した各引掛孔51A,51Bや指掛孔54A,54Bが形成されたシート高さ方向の領域と上側リブ52との間の中間部領域に、背裏側上部ピース31の中間部位があてがわれて縫合(縫い線31A)されるようになっている。
【0064】
したがって、上述した被引掛け具50と背裏側上部ピース31との縫合領域を確保するために、各指掛孔54A,54Bは、各引掛孔51A,51Bのシート高さ方向の形成領域内に収められて形成されていることが望ましい。また、その限られた領域内において、より広い指掛け用の孔形状を確保するためには、丸孔や三角孔にするよりも、四角孔の形状とした方がシート幅方向や高さ方向により広く孔形状を確保することができる。また、各指掛孔54A,54Bを各引掛孔51A,51Bと横並びに設ける方が、そうでない場合と比べて引掛け具40の各引掛部41A,41Bを各引掛孔51A,51B内に導く作業が行いやすくなる。以上の理由から、各指掛孔54A,54Bが、各引掛孔51A,51Bとほぼ同じ大きさで、かつ、シート高さ方向にずれることなく、シート幅方向にほぼ同列に並ぶ形となって形成されている。
【0065】
<<引掛け具を被引掛け具に引掛ける作業について:
図11〜
図16>>
続いて、
図11〜
図16を用いて、上述した引掛け具40を被引掛け具50に引掛けて一体的に結合する作業について説明する。なお、以下では、引掛け具40の中央の引掛部41Aを先に引掛けてから、左右両端側の各引掛部41Bを順に引掛ける手順で結合作業を行うものを説明するが、この手順は特に限定されるものではない。すなわち、左右どちらかの引掛部41Bを引掛けてから中央の引掛部41Aを引掛け、最後に残りの端側の引掛部41Bを引掛けるようにしてもよいし、両端側の各引掛部41Bを引掛けてから中央の引掛部41Aを引掛けるようにしてもよい。いずれの手順で引掛け作業を行っても、引掛け具40と被引掛け具50との上述した掛かり合い構造により、これらを適切に掛け合わせることができるようになっている。
【0066】
先ず、
図11に示すように、作業者がシートバック2の後方側に回り込んだ位置から、引掛け具40と被引掛け具50とをそれぞれの手で把持する。その際、最初の引掛け作業が、引掛け具40の中央の引掛部41Aを被引掛け具50の対応する中央の引掛孔51Aに引掛ける作業であるため、例えば、同図に示すように、作業者の左側の手で引掛け具40の中央辺りの下側の縁部を掴み持ち、右側の手で被引掛け具50の中央の右側の指掛孔54Aに人差し指や中指等の適宜の指をシート後方側から前方側に掛け入れるようにするとよい。なお、被引掛け具50の中央の引掛孔51Aには、その左隣にも指掛孔54Aがあるため、作業者の右側の手で引掛け具40の中央辺りの下側の縁部を掴み持ち、左側の手で被引掛け具50の中央の左側の指掛孔54Aに人差し指や中指等の適宜の指をシート後方側から前方側に掛け入れるようにしてもよい。
【0067】
上記のように持つことで、引掛け具40のシート幅方向の中央辺りをバックカバー30の背裏側下部ピース32の張力に抗して上方側に引き上げる作業に力を入れやすくなる。また、被引掛け具50のシート幅方向の中央辺りをバックカバー30の背裏側上部ピース31の張力に抗して下方側に引き下げる作業にも力を入れやすくなる。よって、引掛け具40と被引掛け具50とを互いに近づける作業を簡便に行うことができる。
【0068】
その際、作業者が左側の手で引掛け具40の中央辺りの下側の縁部を掴み持つ時、左手の親指を中央のリブ42Aに下側からあてがえることで、同親指を引掛け具40の引き込み方向(図示上方)に広く面をあてがえて引き込み方向に力を入れ易い状態とすることができると共に、親指にかかる負荷を低減することができる(
図20参照)。また、その時、親指の隣側となる人差し指(それ以外の指であってもよい。)を上記リブ42Aの裏面側(シート前方側)にあてがえるようにすることで、引掛け具40を板厚方向に挟み持った状態とすることができる。
【0069】
また、リブ42Aの裏面側に形成された空間部位42A1の凹み形状によって、リブ42Aの裏面側にあてがえた人差し指を引掛けて滑り止めした状態にすることができる。したがって、引掛け具40をバックカバー30の背裏側下部ピース32の張力に抗して上方側に引き上げる作業に力を入れやすくなると共に、同作業を各指に無理な負荷をかけない状態で行えるようになる。
【0070】
また、作業者が右側の人差し指を被引掛け具50の指掛孔54Aの下側の縁部に掛け入れた際、同下側の縁部が断面半円形状に膨らんだ下側リブ53の湾曲した周面形状によって滑らかに丸められた形状となっていることにより、作業者の指を指掛孔54Aの下側の縁部である下側リブ53に広く滑らかに面当接させた状態とすることができる。したがって、被引掛け具50をバックカバー30の背裏側上部ピース31の張力に抗して下方側に引き下げる作業に力を入れやすくなると共に、同作業を上記指に無理な負荷をかけない状態で行えるようになる。
【0071】
上記のように引掛け具40と被引掛け具50とを把持して、これらを互いに引き寄せる方向に力をかけながら引掛け具40の中央の引掛部41Aを被引掛け具50の対応する中央の引掛孔51A内にシート前方側から後方側に引掛ける。これにより、
図12に示すように、引掛け具40が、上記中央の引掛部41Aの引掛かりによって、被引掛け具50の中央の引掛孔51Aの掛枠51A1に掛け合わされた状態に保持された仮固定状態となる。したがって、この状態から、作業者が上記引掛け具40や被引掛け具50から手を離しても、引掛け具40と被引掛け具50とが互いにシート幅方向の中央箇所で掛け合わされた状態として、バックカバー30の背裏側下部ピース32や背裏側上部ピース31から互いに相反する方向のテンションを受けても、この力を左右対称なバランスのとれた形で受けて一定姿勢の状態に保持される。
【0072】
次に、引掛け具40の右端側の引掛部41Bを被引掛け具50の対応する右端側の引掛孔51Bに引掛ける作業を行う。その手順は、
図13に示すように、先ず、作業者が右側の手で引掛け具40の右端辺りの下側の縁部を掴み持ち、左側の手で被引掛け具50の右端側の指掛孔54Bに人差し指や中指等の適宜の指をシート後方側から前方側に掛け入れる。そして、これらを互いに引き寄せる方向に力をかけながら、
図14に示すように、引掛け具40の右端側の引掛部41Bを被引掛け具50の対応する右端側の引掛孔51B内にシート前方側から後方側に引掛ける。その際も、
図11〜
図12で前述した作業時と同じように、引掛け作業を各指に無理な負荷をかけない状態で簡便に行うことができる。
【0073】
次に、引掛け具40の左端側の引掛部41Bを被引掛け具50の対応する左端側の引掛孔51Bに引掛ける作業を行う。その手順は、
図15に示すように、先ず、作業者が左側の手で引掛け具40の左端辺りの下側の縁部を掴み持ち、右側の手で被引掛け具50の左端側の指掛孔54Bに人差し指や中指等の適宜の指をシート後方側から前方側に掛け入れる。そして、これらを互いに引き寄せる方向に力をかけながら、
図16に示すように、引掛け具40の左端側の引掛部41Bを被引掛け具50の対応する左端側の引掛孔51B内にシート前方側から後方側に引掛ける。その際も、
図11〜
図12で前述した作業時と同じように、引掛け作業を各指に無理な負荷をかけない状態で簡便に行うことができる。
【0074】
その際、上記左端側の引掛部41Bを引掛孔51B内に向けて引き上げる作業により、引掛け具40が先に引掛けられた中央の引掛部41Aを支点にある程度首振りするようになっている。しかし、上記の引き上げ作業によって中央の引掛部41Aが引掛孔51Aの掛枠51A1から外れてしまわないように、引掛け具40を左端側の引掛部41Bと中央の引掛部41Aとの間に形成された可撓領域42Dを曲げ撓ませながら上記の作業を行うとよい。こうすることにより、引掛け具40全体を大きく首振りさせることなく左端側の領域だけをある程度局所的に捩じ曲げて、左端側の引掛部41Bを引掛孔51B内に引掛けることができる。
【0075】
以上の作業により、引掛け具40を被引掛け具50に引掛けて結合することができる。上記の引掛けにより、引掛け具40は、被引掛け具50に対して、シート幅方向の中央箇所と両端箇所との3箇所の位置で引掛けられて結合された状態となる。詳しくは、引掛け具40は、被引掛け具50に対して、シート前方側から後方側に引掛けられることで、結合部42が被引掛け具50のシート前方側の位置にずれて配置された状態となる(
図17〜
図19)。
【0076】
そこで、本実施例では、上記引掛け具40と被引掛け具50との掛け合わせ構造を利用して、
図2に示すように、シートバック2内のバックフレーム10の後側の領域を縦向きに走るように通されるワイヤハーネスW/Hの途中箇所を、この引掛け具40と被引掛け具50との間に挟み込ませて、ワイヤハーネスW/Hのバタ付きを抑えた状態に設けさせるようにしている。具体的には、上記引掛け具40と被引掛け具50との間に、ワイヤハーネスW/Hの途中箇所を次のように挟み込ませて保持している。
【0077】
すなわち、
図4〜
図10で前述したように、引掛け具40の左右両端側の引掛部41Bと中央の引掛部41Aとの間の各領域には、それぞれ、結合部42が部分的に曲げ撓まされやすい可撓領域42Dが形成されている。これら可撓領域42Dは、前述した小さなリブ42Cによってそれぞれ左右2箇所ずつに区画されて形成されている。上記ワイヤハーネスW/Hは、上記引掛け具40と被引掛け具50とに対して、
図2及び
図19に示すように、上記引掛け具40の左右どちらか(本実施例では左側)の可撓領域42Dを通るように、引掛け具40と被引掛け具50との間の隙間内に縦に通されて設けられている。
【0078】
こうすることにより、ワイヤハーネスW/Hが引掛け具40と被引掛け具50との間の前後方向の隙間より広い直径を持つものであっても、引掛け具40の可撓領域42Dが柔軟に撓むことで、ワイヤハーネスW/Hを被引掛け具50との間に弾性的に柔らかく押さえ付けて挟み込んだ状態に保持することができる。また、可撓領域42Dが上述した小さなリブ42Cで左右に区画されていることにより、この小さなリブ42CによってワイヤハーネスW/Hのシート幅方向の位置ズレを狭い範囲で規制することができ、より適切にバタ付きを抑える形でワイヤハーネスW/Hを挟み込んだ状態に保持することができる。
【0079】
<<まとめ>>
以上をまとめると、本実施例のシート1(乗物用シート)は次の構成となっている。すなわち、バックカバー30の背裏側下部ピース32(シートカバー)に、背裏側下部ピース32を背裏側上部ピース31に結合された被引掛け具50(所定の取付部)に引掛けるための引掛け具40が結合されたシート1である。引掛け具40は、被引掛け具50に引掛けられる引掛部41A,41Bと、背裏側下部ピース32に対してシート幅方向(特定の面内方向)に沿って延びる形に結合される結合部42と、を有する。結合部42は、シート後方側(特定の面内方向に対して垂直な面外方向)に膨らむリブ42A,42B,42C(膨らみ部位)と、リブ42A,42B,42Cを空洞化させて撓ませやすくする空間部位42A1,42B1,42C1と、を有する構成となっている。
【0080】
このように、引掛け具40の結合部42にリブ42A,42B,42Cが形成されていることにより、作業者が上記リブ42A,42B,42Cに指をかけて引掛部41A,41Bの引掛け作業を行えるようになる。上記リブ42A,42B,42Cは、空間部位42A1,42B1,42C1によって空洞化されて撓みやすくされていることにより、外部から受ける無理な負荷を撓んで逃がせるようになっている。したがって、上記リブ42A,42B,42Cに押圧力をかける作業者の指などにかかる負荷を軽減することができる。
【0081】
また、リブ42A,42B,42Cが、結合部42において、引掛部41A,41Bが形成された側を先端側とする末端側の縁部位に形成されている。このようになっていることで、作業者が引掛け具40の末端側に指などをかけて、引掛け具40を背裏側下部ピース32の引き込み方向となる先端側に向かって押圧力をかけやすい態様で押圧することができるようになる。そして、上記のようにリブ42A,42B,42Cに押圧力をかけても、空間部位42A1,42B1,42C1によって、作業者の指などにかかる負荷を軽減することができる。
【0082】
また、リブ42A,42B,42Cの表面形状が、丸みのある形に面取りされた表面形状に形成されている。このようになっていることで、リブ42A,42B,42Cの表面がより滑らかとなるため、リブ42A,42B,42Cを押圧する作業者の指などへの当たりを更に和らげることができる。
【0083】
また、空間部位42A1,42B1,42C1がリブ42A,42B,42Cを裏側から肉抜きする形に凹ませる窪みとして形成されている。このようになっていることで、引掛け具40の成形を難しくすることなく、リブ42A,42B,42Cに空間部位42A1,42B1,42C1を簡単に設定できるようになる。また、リブ42A,42B,42Cが開断面形状となるため、リブ42A,42B,42Cをより曲げ撓ませやすくすることができる。
【0084】
以上、本発明の実施形態を1つの実施例を用いて説明したが、本発明は上記実施例のほか各種の形態で実施することができるものである。例えば、本発明の「乗物用シート」は、自動車の左席以外のシートにも適用することができる他、鉄道等の自動車以外の車両や、航空機、船舶等の種々の乗物に供されるシートにも広く適用することができるものである。
【0085】
<<実施例1に関係する「引掛け具」の他の実施形態について>>
また、本発明の「引掛け具」は、上記実施例で示した被引掛け具50としても構成され得るものである。その場合には、本発明の「乗物用シート」についてまとめると、次のような構成となる。バックカバー30の背裏側上部ピース31(シートカバー)に、背裏側上部ピース31を背裏側下部ピース32に結合された引掛け具40(所定の取付部)に引掛けるための被引掛け具50(引掛け具)が結合されたシート1である。被引掛け具50は、引掛け具40に引掛けられる引掛孔51A,51B(引掛部)と、背裏側上部ピース31に対してシート幅方向(特定の面内方向)に沿って延びる形に結合される本体部(結合部)と、を有する。本体部は、シート後方側(特定の面内方向に対して垂直な面外方向)に膨らむ上側リブ52(膨らみ部位)と、上側リブ52を空洞化させて撓ませやすくする空間部位52Aと、を有する構成となっている。
【0086】
このように、被引掛け具50の本体部に上側リブ52が形成されていることにより、作業者が上記上側リブ52に指をかけて引掛孔51A,51Bの引掛け作業を行えるようになる。上記上側リブ52は、空間部位52Aによって空洞化されて撓みやすくされていることにより、外部から受ける無理な負荷を撓んで逃がせるようになっている。したがって、上記上側リブ52に押圧力をかける作業者の指などにかかる負荷を軽減することができる。
【0087】
また、上側リブ52が、被引掛け具50の本体部において、引掛孔51A,51Bが形成された側を先端側とする末端側の縁部位に形成されている。このようになっていることで、作業者が被引掛け具50の末端側に指などをかけて、被引掛け具50を背裏側上部ピース31の引き込み方向となる先端側に向かって押圧力をかけやすい態様で押圧することができるようになる。そして、上記のように上側リブ52に押圧力をかけても、空間部位52Aによって、作業者の指などにかかる負荷を軽減することができる。
【0088】
また、上側リブ52が、引掛孔51A,51Bを引掛け具40に向けて引き込む引込方向に湾曲した表面形状に形成されている。このようになっていることで、上側リブ52を押圧する作業者の指などへの当たりを更に和らげることができる。
【0089】
また、空間部位52Aが上側リブ52を裏側から肉抜きする形に凹ませる窪みとして形成されている。このようになっていることで、上側リブ52が開断面形状となるため、被引掛け具50の成形を難しくすることなく、上側リブ52に空間部位52Aを簡単に設定できるようになる。また、上側リブ52が開断面形状となるため、上側リブ52をより曲げ撓ませやすくすることができる。
【0090】
<<「引掛け具」のその他の実施形態について:
図21〜
図22>>
また、
図21に示すように、引掛け具40の結合部42に形成されるリブ42F(膨らみ部位)を、結合部42の下側の縁部からシート後方側へ膨らませることなくシート前方側(特定の面内方向に対して垂直な面外方向)へ湾曲させる形に膨らませた形状としたものであってもよい。こうすることによっても、リブ42Fの裏側に空間部位42F1が形成され、作業者が上記リブ42Fに指をかけて引掛部41A,41Bの引掛け作業を簡便に行えるようになる。
【0091】
また、
図22に示すように、引掛け具40の結合部42に形成されるリブ42G(膨らみ部位)を、内部を中空に空洞化させる形で空間部位42G1を形成することにより、撓ませやすくした構成としたものであってもよい。
【0092】
<<その他の実施形態について>>
また、「シートカバー」は、シートバックの他、シートクッションやヘッドレスト等の他のシート構造物に被せられるものであってもよい。「シートカバー」は、皮革材(合成皮革や人工皮革など)の他、布材等の他の可撓性の面状材からなるものであってもよい。また、上記シートカバーの引掛けられる「所定の取付部」は、上記実施例で示したようなシートカバーの他の領域部の他、シートフレームやシートフレームに結合されたワイヤ等の他のシート構成部材であってもよい。また、シートカバーに対する引掛け具の結合の仕方は、縫合の他、接着やビス締結などの他の結合方法によるものであってもよい。
【0093】
また、「引掛け具」は、シートカバーの縁部に限らず、中間部位等の様々な領域に結合されて設けられるものであってもよい。また、「引掛部」や「結合部」は、連続的に単数で設けられるものの他、断続的に複数で設けられるものであってもよい。「膨らみ部位」や「空間部位」も同様である。「引掛部」「結合部」「膨らみ部位」「空間部位」の形状は、特定の形態に限定されず、種々の形のものを採用することができる。具体的には、例えば、「膨らみ部位」は、直線状や段差状に傾斜したり張り出したりした形となって形成されたものであってもよい。また、「膨らみ部位」は、結合部における先端側と末端側との間の中間部位に形成されたものであってもよい。