特許第6337808号(P6337808)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6337808
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】スポンジゴム成形体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/08 20060101AFI20180528BHJP
   C08L 23/16 20060101ALI20180528BHJP
   C08L 23/06 20060101ALI20180528BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20180528BHJP
【FI】
   C08J9/08CES
   C08L23/16
   C08L23/06
   C08K3/26
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-47827(P2015-47827)
(22)【出願日】2015年3月11日
(65)【公開番号】特開2016-169243(P2016-169243A)
(43)【公開日】2016年9月23日
【審査請求日】2017年4月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096116
【弁理士】
【氏名又は名称】松原 等
(72)【発明者】
【氏名】沖田 智昭
(72)【発明者】
【氏名】後藤 達司
(72)【発明者】
【氏名】沖原 健一
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 篤志
【審査官】 福井 弘子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−141759(JP,A)
【文献】 特開2003−002996(JP,A)
【文献】 特開2004−204000(JP,A)
【文献】 特開2002−275302(JP,A)
【文献】 特開2002−256095(JP,A)
【文献】 特開2005−178448(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00−9/42
C08K 3/00−13/08
C08L 1/00−101/14
B60R 1/00−1/04
B60R 1/08−1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン−αオレフィン−非共役ジエン共重合体ポリマー100質量部に対して、ポリエチレン2〜6質量部と、発泡剤としての重曹0.5〜12質量部と、硫黄系加硫剤とを含むスポンジゴム用組成物を用いて発泡成形されたスポンジゴム成形体であって、スポンジゴム成形体は、ウエザストリップのシール部又は端部間接続部であるスポンジゴム成形体
【請求項2】
ポリエチレンは、高圧法低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン又はそれらのブレンドである請求項1記載のスポンジゴム成形体
【請求項3】
スポンジゴム用組成物は、エチレン−αオレフィン−非共役ジエン共重合体ポリマー100質量部に対して、可塑剤としてのプロセスオイルを12質量部以上含む請求項1又は2記載のスポンジゴム成形体
【請求項4】
シール部又は端部間接続部は、樹脂製又は金属製のインサートを含む請求項1,2又は3記載のスポンジゴム成形体。
【請求項5】
エチレン−αオレフィン−非共役ジエン共重合体ポリマー100質量部に対して、ポリエチレン2〜6質量部と、発泡剤としての重曹0.5〜12質量部と、硫黄系加硫剤とを含むスポンジゴム用組成物を用いて、金型温度を190〜220℃にした金型内で発泡成形するスポンジゴム成形体の製造方法
【請求項6】
ポリエチレンは、高圧法低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン又はそれらのブレンドである請求項5記載のスポンジゴム成形体の製造方法
【請求項7】
スポンジゴム用組成物は、エチレン−αオレフィン−非共役ジエン共重合体ポリマー100質量部に対して、可塑剤としてのプロセスオイルを12質量部以上含む請求項5又は6記載のスポンジゴム成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポンジゴム成形体及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スポンジゴムは、例えば、自動車ボディに取り付けられるウエザストリップのシール部や端部間接続部、家屋の扉開閉部のシール材、汎用緩衝材等に広く用いられており、そのゴムポリマーとしては耐老化性、耐オゾン性等に優れたEPDM(エチレン−α−オレフィン−非共役ジエン共重合体)が最も多く用いられている。
【0003】
スポンジゴム成形体は、スポンジゴム用組成物を、金型に注入して発泡成形したり、ダイスから押出しながら発泡成形したりして成形される。特に、注入するタイプの金型の成形面には、スポンジゴム用組成物に由来する各種物質、特に金属硫化物塩の付着があり、何ショットも繰り返し成形されることにより、その付着が蓄積して汚れとなる。この金型の汚れは、スポンジゴム成形体の表面を荒らしたり離型性を悪化させたりする等の不具合を起こす。そのため、規定のショット数(例えば30ショット)ごとに、ショットブラスト、研磨、洗浄用ゴム(例えば特許文献1)のダミー成形等の方法によって、金型の汚れを落とすクリーニングが行われており、相当な工数及び手間となっている。
【0004】
しかも、近年は、ゴム成形において加硫時間が短縮される傾向にあり、そのために金型温度を通常の約180℃よりも高い190〜220℃にし、加硫反応を速めてスポンジゴム成形される。この温度下では、金属化合物が金型にへばり付きやすいため、汚れが加速する。
【0005】
ところで、本発明に関連する文献として、特許文献2には、EPDM100重量部に対して、発泡剤としての重曹(炭酸水素ナトリウム)5〜50重量部と、滑剤1〜10重量部を加え、気泡構造を連泡化し、所定の連泡率にした高発泡EPDMスポンジゴム組成物が記載されている。
【0006】
しかし、特許文献2には、重曹が金型の汚れを防止することは記載されていない。また、本発明者らの検討によると、特許文献2の配合のEPDMスポンジゴム組成物では、発泡成形時に発泡成長の不良が発生することが判明している(非公知)。
【0007】
また、特許文献3には、エチレン・プロピレン・ジシクロペンタジエン共重合体ゴム70重量%と直鎖状低密度ポリエチレン30重量%とを混合し押出して、熱可塑性エラストマー組成物を製造し、この熱可塑性エラストマー組成物100重量部と、熱分解型発泡剤としての重曹50モル%と発泡助剤としてのクエン酸50モル%との混合物3.0重量部とを混合し押出して、発泡体を得ることが記載されている。
【0008】
しかし、特許文献3にも、重曹が金型の汚れを防止することは記載されていない。また、本発明者らの検討によると、特許文献3の配合の熱可塑性エラストマー組成物では、後述するポリエチレン配合量の多い比較例2〜4,7の実験結果から分かるように、表面肌の不良や圧縮永久歪(いわゆる「へたり」)等の問題が発生することが判明している(非公知)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平6−345921号公報
【特許文献2】特開2004−204000号公報
【特許文献3】特開2001−139740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述した金型の汚れ、表面肌の不良、発泡成長の不良、圧縮永久歪(へたり)という諸問題を併せて解決することを課題とするものであり、PEと重曹の最適な配合量によって、金型の汚れを防止してクリーニングの工数を削減するとともに、表面肌、発泡成長、圧縮永久歪(へたり)という各種特性を満足するスポンジゴム成形体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した金型の汚れは、次のようなメカニズムによると考えられる。
EPDMポリマーが硫黄系加硫剤により加硫される主反応においては、H2Sガスが発生する。
また、この主反応を促進して加硫時間を短縮するなどの目的で、一般的に、チウラム系、ジチオカルバミン酸塩系、チアゾール系などの加硫促進剤が添加されるが、過剰量の加硫促進剤がブルームしたり、加硫促進剤からCS2が分解したり、また、ジチオカルバミン酸塩系の加硫促進剤から亜鉛イオン等の金属イオンが遊離したりする。
また、硫黄加硫剤の働きを促進させる加硫助剤として、一般的に、無機系の酸化亜鉛や、有機系の脂肪酸であるステアリン酸などが添加されるが、この酸化亜鉛とステアリン酸との副反応が起こり、ステアリン酸亜鉛が中間生成する。
上記の遊離した亜鉛イオン等の金属イオンや添加した酸化亜鉛や中間生成したステアリン酸亜鉛が、上記のH2Sガスや硫黄加硫剤又は加硫促進剤由来の硫黄と反応して硫化亜鉛(ZnS)等の金属硫化物塩を生成し、この金属硫化物塩が金型の成形面に析出すると考えられる。
【0012】
この考察に基づき、本発明は上述の課題を解決するために、下記の手段A,B,Cを採ったものである。なお、本明細書において、エチレン−αオレフィン−非共役ジエン共重合体ポリマー以外の材料の配合量について記すときは、未加硫のエチレン−αオレフィン−非共役ジエン共重合体ポリマー100質量部に対する質量部である。
【0013】
A.スポンジゴム用組成物
本発明のスポンジゴム用組成物は、エチレン−αオレフィン−非共役ジエン共重合体ポリマー100質量部に対して、ポリエチレン2〜6質量部と、発泡剤としての重曹0.5〜12質量部と、硫黄系加硫剤とを含むスポンジゴム用組成物である。
【0014】
本発明により作用効果が得られるのは、次のようなメカニズムによると考えられる。
発泡剤として配合した重曹(炭酸水素ナトリウム)は、発泡成形時に分解してCO2ガスとナトリウムイオンを放出する。上述したように、金型の汚れは金属硫化物塩が金型に析出することによると考えられるが、このとき重曹が放出したナトリウムイオンが硫黄系加硫剤や加硫促進剤から発生する酸を中和し、硫化亜鉛等の金属硫化物塩と金属である金型との結合を防止すると考えられる。これにより金型の汚れを防止又は緩和することができる。同作用を実質的に得るために、重曹の配合量は0.5質量部以上とし、好ましくは1.0質量部以上、より好ましくは2.0質量部以上とする。
一方、重曹の配合量が過剰になると、スポンジゴムの表面にアバタ、ヘコミ、流れキズ等の欠陥が生じるようになり、表面肌が不良となる。そこで、表面肌の不良を防止するために、重曹の配合量は12質量部以下とし、好ましくは11.5質量部以下とする。
【0015】
また、配合したポリエチレンは、エチレン−αオレフィン−非共役ジエン共重合体ポリマーの中に相溶し、スポンジゴム成形体に必要な発泡成長性を確保しつつ、高温時の流動性を確保し、かつ金型からの抜け性を良好にする。同作用を実質的に得るために、ポリエチレンの配合量は2質量部以上とする。
一方、ポリエチレンの配合量が過剰になると、圧縮永久歪が悪化してヘタリ不良が生じるようになる。そこで、表面肌の不良を防止するために、ポリエチレンの配合量は6質量部以下とする。
【0016】
このように、本発明は、ポリエチレンと重曹の最適な配合量によって、金型の汚れを防止してクリーニングの工数を削減するとともに、表面肌、発泡成長、圧縮永久歪(へたり)という各種特性を満足するスポンジゴム用組成物及びスポンジゴム成形体を提供することができる。
【0017】
本発明における各要素の詳細、態様等を以下に説明する。
【0018】
1.エチレン−αオレフィン−非共役ジエン共重合体(以下「EPDM」と記す。)ポリマー
αオレフィンとしては、特に限定されないが、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン等を例示でき、このなかでプロピレンが好ましい。
非共役ジエンとしては、特に限定されないが、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン等を例示できる。
【0019】
2.ポリエチレン(以下「PE」と記す。)
PEの種類は、用途にもよるので特に限定されないが、用途がウエザストリップの場合、高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)又はそれらのブレンドを用いることが好ましい。これらは柔軟性に富み、高温時の流動性を高めるとともに、引裂き強度、引張強度等の物理的強度に優れる。
【0020】
3.硫黄系加硫剤
硫黄系加硫剤は、特に限定されず、硫黄、硫黄化合物、マレイミド類、有機含硫黄加硫剤等を例示することができる。これらの一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0021】
4.加硫促進剤
加硫促進剤は、加硫を促進するために、適宜配合することができる。加硫促進剤としては、下記のものを例示でき、1種又は2種以上を用いることができる。本発明は、特にジチオカルバミン酸塩系、ジチオリン酸系等の金属塩系の加硫促進剤を配合した場合に、それらに由来して析出する金属硫化物塩による金型の汚れを防止することができるので好適である。
【0022】
(1)チウラム系
テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、テトラブチルチウラムジスルフィド(TBTD)、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド(TMTM)、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)等を例示できる。
【0023】
(2)ジチオカルバミン酸塩系
ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZnMDC)、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZnEDC)、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZnBDC)、N−エチル−N−フェニルジチオカルバミン酸亜鉛(ZnEPDC)、N−ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛(ZnPDC)、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛(ZBEC)、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム(NaMDC)、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム(NaEDC)、ジブチルジチオカルバミン酸ナトリウム(NaBDC)、ジメチルジチオカルバミン酸銅(CuMDC)、ジメチルジチオカルバミン酸第二鉄(FeMDC)、ジエチルジチオカルバミン酸テルル(TeEDC)、ペンタメチレンジチオカルバミン酸ピペリジン塩(PPDC)、ピペコリルジチオカルバミン酸ピペコリン塩等を例示できる。
【0024】
(3)チアゾール系
2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)、2−メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩(ZnMBT)、2−メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩(CMBT)、2−(N,N’−ジエチルジチオカルバモイルチオ)ベンゾチアゾール、2−(4’−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール(MDB)等を例示できる。
【0025】
(4)スルフェンアミド系
N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(BBS)、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(OBS)、N,N’−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド等を例示できる。
【0026】
(5)ジチオリン酸系
ジアルキルジチオリン酸亜鉛
【0027】
5.可塑剤
可塑剤は、組成物に可塑性を付与するとともに加工の容易化を図るために、適宜配合することができる。可塑剤としては、特に限定されないが、プロセスオイル(パラフィン系、ナフテン系、芳香族系等)潤滑油、石油アスファルト、ワセリン等の石油系可塑剤や、コールタール、コールタールピッチ等のコールタール系軟化剤、ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、ヤシ油等の脂肪油系可塑剤、蜜ロウ、カルナウバロウ、ラノリン等のロウ類、リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛等の脂肪酸及び脂肪酸塩、石油樹脂、アタクチックポリプロピレン、クマロンインデン樹脂等の合成高分子物質、トール油、サブ(ファクチス)等を例示できる。プロセスオイルを配合する場合、その配合量は、加工の容易化の点で12質量部以上であることが好ましく、ブルームを防止する点で60質量部以下であることが好ましい。
【0028】
6.発泡剤
発泡剤は、重曹0.5〜12質量部を含むことが必須であるが、その他の発泡剤を適宜配合して併用することができる。
その他の発泡剤としては、4,4′−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)、アゾジカルボンアミド(ADCA)、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)、p−トルエンスルホニルヒドラジド(TSH)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等を例示できる。
【0029】
7.その他の配合材料
上記の配合材料のほか、充填材、加工助剤、架橋助剤、発泡助剤、老化防止剤、受酸剤、スコーチ防止剤、着色剤等を、適宜配合することができる。
充填剤としては、カーボンブラック、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、焼成クレー等を例示できる。
加工助剤としては、ステアリン酸等の脂肪酸を例示できる。
架橋助剤としては、ポリエチレングリコール(PEG)、酸化亜鉛(ZnO,亜鉛華)、ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸塩、酸化マグネシウム等を例示できる。本発明は、特に酸化亜鉛、ステアリン酸亜鉛等の金属化合物の架橋助剤を配合した場合に、それらに由来して析出する金属硫化物塩による金型の汚れを防止することができるので好適である。
発泡助剤としては、尿素、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム等を例示できる。
【0030】
B.スポンジゴム成形体
本発明のスポンジゴム成形体は、エチレン−αオレフィン−非共役ジエン共重合体ポリマー100質量部に対して、ポリエチレン2〜6質量部と、発泡剤としての重曹0.5〜12質量部と、硫黄系加硫剤とを含むスポンジゴム用組成物を用いて発泡成形されたスポンジゴム成形体であって、スポンジゴム成形体は、自動車等のウエザストリップのシール部や端部間接続部である
【0031】
エザストリップのシール部又は端部間接続部は、樹脂製又は金属製のインサートを含んでもよいし含まなくてもよい。
【0032】
C.スポンジゴム成形体の製造方法
本発明のスポンジゴム成形体の製造方法は、エチレン−αオレフィン−非共役ジエン共重合体ポリマー100質量部に対して、ポリエチレン2〜6質量部と、発泡剤としての重曹0.5〜12質量部と、硫黄系加硫剤とを含むスポンジゴム用組成物を用いて、金型温度を190〜220℃にした金型内で発泡成形するスポンジゴム成形体の製造方法である。上述したように、加硫時間を短縮するために金型温度を190〜220℃にした場合には、通常は金型の汚れが加速するが、本発明はその場合でも上記メカニズムにより金型の汚れを防止できるので好適である。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、金型の汚れを防止してクリーニングの工数を削減するとともに、表面肌、発泡成長、圧縮永久歪(へたり)という各種特性を満足するスポンジゴム成形体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】(a)は自動車のドアに取り付けられるウエザストリップを概略的に示す図、(b)は実施例及び比較例の各スポンジゴム用組成物を用いて発泡成形したスポンジゴム成形体の形状寸法を示す図、(c)は同スポンジゴム成形体の圧縮永久歪試験方法を説明する図である。
図2】横軸にPEの配合量、縦軸に重曹の配合量を対応させ、実施例及び比較例の各データをプロットした散布図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
EPDMポリマー100質量部に対して、PE2〜6質量部と、発泡剤としての重曹0.5〜12質量部と、硫黄系加硫剤とを含むスポンジゴム用組成物を用いて、金型温度を190〜220℃にした金型内でスポンジゴム成形体を発泡成形する。
【実施例】
【0036】
表1に配合組成を示す実施例1〜8の各スポンジゴム用組成物、並びに、表2に配合組成を示す比較例1〜8の各スポンジゴム用組成物を作製した。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
ここで、ポリエチレン(PE)にはLDとLLDのブレンドを用いた。充填材としてのカーボンブラックはMAF級(Medium Abrasion Furnace)である。可塑剤としてのプロセスオイルはパラフィン系系プロセスオイルである。加工助剤としての脂肪酸はステアリン酸である。架橋助剤としての脂肪酸亜鉛はステアリン酸亜鉛である。加硫促進剤のうち「ZAT」と記したのは、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ラインケミー社の商品名「レノグランZAT−70」)である。
【0040】
各スポンジゴム用組成物を用いて、スポンジゴム成形体として例えば、図1(a)に示すような、自動車のドア7に取り付けられるウエザストリップ1のシール部(下記シール部3)又はその端部間接続部4を発泡成形することができる。ウエザストリップ1のシール部3又は端部間接続部4は、樹脂製又は金属製のインサートを含んでもよいし含まなくてもよい。
【0041】
ここでは実験的に、各スポンジゴム用組成物を混練機により混練した後、金型温度を190℃とした金型(図示略)のキャビティに注入速度3mm/秒で注入し、実際のウエザストリップ1の一般部と同等の断面形状(発泡構造、スキン層も同等)を有するよう、図1(b)に示すような、板状の基部2と中空状のシール部3とを含むスポンジゴム成形体1を発泡成形し(成形時間180秒)、加硫されたスポンジゴム成形体1を金型から離型した。この各スポンジゴム成形体1について、次の評価項目のうち「1.表面肌」、「2.発泡成長」、「4.圧縮永久歪(ヘタリ)」及び「6.金型汚れ」の観察、測定等を行って評価し、上記の表1及び表2に記した。
【0042】
また、次の評価項目のうち「3.熱間強度」及び「5.剛性」については、各スポンジゴム用組成物により、上記と同様の手順及び条件で、それぞれの規格に準拠した寸法形状の試験片を金型成形して評価し、上記の表1及び表2に記した。
【0043】
1.表面肌
金型から離型した各スポンジゴム成形体1の表面肌を目視観察し、アバタ、ヘコミ、流れキズ等が無ければ○、有れば×とした。
【0044】
2.発泡成長
金型内のキャビティ内での発泡距離を測定した。目標を120mm以上とした。
【0045】
3.熱間強度
JIS K6251に準拠し、150℃で引張試験を行い、熱間の引張強度を測定した。目標を500kPa以上とした。
【0046】
4.圧縮永久歪(ヘタリ)
(1)図1(b)のスポンジゴム成形体1を長さ60mmに切断して、試験片1aとした。
(2)まず、試験片1aの3箇所の高さ(試験前の高さ)をノギス又は測厚器(錘の質量1g)で測定した。
(3)次に、図1(c)に示すような、JIS K6262の5項又はISO815−1に準じた試験装置の圧縮装置5に、試験片長さの中央の高さの50%のスペーサ6をセットするとともに、試験片1aをセットして高さ方向に圧縮した。
(4)この圧縮状態の試験片1aを圧縮装置5ごと、70±2℃に設定した空気加熱老化試験器(図示略)に入れて、220〜+2時間加熱した。
加熱後、空気加熱老化試験器から圧縮装置5を取り出し、圧縮装置5から試験片1aを素早く取り出した。その後、木台の上で、室温に30分間放置した(JIS K6262の5項又は、ISO815−1の7.5項による)。
(5)30分放置後、試験片1aの試験前に測定した3箇所と同じところの高さ(試験後の高さ)をノギス又は測厚器(錘の質量1g)で測定した。
(6)各試験片1aの3箇所のそれぞれについて次式によりCSを求め、その平均値を圧縮永久歪とした。目標を52%以下とした。
CS=(t0−t1)/(t0−t2)×100
CS:圧縮永久歪(%)
0:試験前の高さ(mm)
1:試験後の高さ(mm)
2:スペーサの高さ(mm)

【0047】
5.剛性率
JIS K6254に準拠し、23℃で低変形引張試験を行い、静的せん断弾性率(剛性率)を測定した。目標を200kPa以上とした。
【0048】
6.金型汚れ
上記成形を繰り返し、クリーニングが必要な程度に金型のキャビティ面が汚れるまでのショット数を調べた。目標を60ショット以上とした。
【0049】
<評価項目の結果>
重曹を配合しなかった比較例8は、金型汚れのショット数が目標の半分の30であった。
重曹を0.5〜11.5質量部配合した実施例1〜8は、金型汚れのショット数が比較例8の2倍以上(特に実施例1〜7では比較例8の3.3倍以上、さらに実施例2〜7では比較例8の6.6倍以上)となり、金型のクリーニング工数を削減できることが分かった。また、表面肌が○であった。
重曹を多く配合した比較例1〜7は、金型汚れのショット数は比較例8の6.6倍以上となったが、表面肌が×となり、さらに比較例1〜5では剛性率も悪化した。
【0050】
PEを2〜6質量部配合した実施例1〜8は、発泡成長が目標の120mm以上となった。また、圧縮永久歪(ヘタリ)が目標の52%以下となった。
但し、PEを2質量部配合した実施例8は、発泡成長がギリギリ目標の120mmであったことから、PEの配合が2質量部未満では発泡成長が目標に達しないものと考えられる。
PEを6質量部を超えて配合した比較例2〜4,7は、発泡成長は目標の120mm以上となったが、圧縮永久歪(ヘタリ)が悪化し、特に比較例2〜4は剛性率も悪化した。また、PEの配合量が2〜6質量部であっても重曹を多く配合した比較例1,5,6は、圧縮永久歪(ヘタリ)が悪化した。
【0051】
図2は、上記の結果に基づき、横軸にPEの配合量、縦軸に重曹の配合量を対応させ、実施例1〜8、比較例1〜8の各データをプロットした散布図である。実施例1〜8が含まれる破線枠の内側が、本発明の範囲である。破線枠の下方は金型汚れ悪化領域、破線枠の上方は表面肌の不良領域、破線枠の左方は発泡成長の不良領域、破線枠の右方はヘタリ不良領域ということができる。
【0052】
なお、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
【符号の説明】
【0053】
1 スポンジゴム成形体
1a 試験片
2 基部
3 シール部
4 端部間接続部
5 圧縮装置
6 スペーサ
7 ドア
図1
図2