(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図中同一又は相当する部分には同一符号を付す。
【0012】
以下、本実施形態では、本発明に係る電子機器として、印刷装置(ラベルプリンタ)を例にとって説明する。
【0013】
図1(a)に、本発明の実施形態に係る印刷装置100の外観斜視図を示す。
図1(b)に、印刷装置100を、側面(
図1における矢印Bの側)から見た様子を示す。また、
図2(a)及び
図2(b)に、それぞれ印刷装置100を表側及び裏側から見た様子を示す。
【0014】
印刷装置100は、ユーザが片手で把持することができる程度の大きさを有する、コンパクトなラベルプリンタである。印刷装置100は、表面が印刷面であって裏面が粘着面である印刷テープと、粘着面に貼付される剥離テープと、が積層されて形成されたテープ部材の記録媒体に、絵や文字等のパターンを含む印刷パターンを印刷する。
【0015】
印刷装置100は、上ケース111a、中ケース111b及び下ケース111cの3つのケースが組み合わさって構成される、合成樹脂製の筐体110を備える。筐体110は、後述するサーマルヘッドやプリント基板等を内部に収容している。筐体110は、その長手方向における下側部分をユーザが把持し易いように、長手方向における下側部分の幅及び厚みが、上側部分の幅及び厚みに比べて、狭く形成されている。従って、ユーザは、印刷装置100を把持しながら所望の印刷パターンを入力して、テープ部材に印刷することができる。
【0016】
また、印刷装置100は、上ケース111aの表側において、入力部120及び表示部130を備える。
【0017】
入力部120は、入力キーとして機能するラバー製の複数の押圧キー122,123,124を備える。
【0018】
押圧キー122は、上ケース111aの長手方向における下側半分程の領域に配置された、ユーザが文字データを入力するための文字入力キーである。この押圧キー122は、
図1(a)及び
図2(a)に示すように、横方向に7行及び縦方向に5列(最下行のみ3列)に亘って2次元状(格子状)に配置されている。押圧キー123は、上ケース111aの中央領域において円状に配置された4つのカーソルキーと、この4つのカーソルキーに囲まれた円状の決定キーと、を含むキーである。4つのカーソルキーは、表示部130の表示画面上のカーソルを移動させるためのキーであって、決定キーは、カーソルが合わせられた項目を選択決定するためのキーである。押圧キー124は、カーソルキー及び決定キーとして機能する押圧キー123の周りを囲むように配置された、印刷モードの設定や各種設定処理を行うための制御キーである。ユーザは、このような入力部120の押圧キー122,123,124を操作して、例えばテープ部材に印刷すべき文字、印刷開始や設定変更の指示等を入力することができる。
【0019】
表示部130は、印刷装置100におけるメインパネルとしての、液晶表示パネル等の表示画面を備える。表示部130は、例えば入力されたデータに関する画像、各種の設定のための選択メニュー、各種の処理に関するメッセージ等を表示する。
【0020】
また、印刷装置100は、上ケース111aの入力部120が設けられた部分に、キーカバー140を備える。キーカバー140は、印刷装置100の強度及びデザイン性(意匠性)の向上等を目的として設けられた、上ケース111aの表面の一部を覆う合成樹脂製の部材である。
【0021】
キーカバー140及び上ケース111aには、詳しくは後述するように、複数の押圧キー122,123,124に対応した複数の開口が形成されている。複数の押圧キー122,123,124のそれぞれは、上ケース111aに形成された開口とキーカバー140に形成された開口とに挿通され、ユーザが押圧し易いように、キーカバー140の開口から若干突き出ている。なお、上ケース111aには、複数の押圧キー122,123,124に対して1対1で対応する複数の開口が形成されることなく、複数の押圧キー122,123,124全体によって挿通される大きな開口が形成されてもよいが、この場合には、上ケース111aの強度が低下してしまう。
【0022】
図1(b)に示すように、印刷装置100は、筐体110の側面(
図1の矢印Bから見た側面)において、印刷後のテープ部材が繰り出されるテープ繰出部106を備える。また、印刷装置100は、筐体110の側面(上ケース111aの表側の面に正対したときの右側の側面)において、印刷パターンが印刷された後のテープ部材を切断するためのカッタ操作レバー108を備える。
【0023】
図2(b)に示すように、印刷装置100の裏面(下ケース111c)には、卓上等に安定して置くことができるように、4つの突出部109a〜109dを備える。更には、印刷装置100は、詳しく図示していないが、印刷装置100の電源のオンオフを切り替える電源スイッチ、電源コードが接続される電源端子、パーソナルコンピュータ等の外部機器と接続するための端子、メモリカード等の記憶媒体が挿入される挿入口等を備える。
【0024】
図3(a)に、印刷装置100に使用するテープカセット21の外観を示す。また、
図3(b)に、印刷装置100の内部構造の一部を斜視図で示す。
【0025】
図3(b)に、印刷装置100の内部構造の一部を斜視図で示す。筐体110の内側には、テープ部材31及びインクリボン35を収容したテープカセット21を収納(装填)するためのテープ収納部10が形成されている。テープ収納部10内には、印刷部としてのテープ印刷機構45と、テープカセット21を所定の位置に支持するためのカセット受部15と、が形成されている。
【0026】
テープ印刷機構45は、縦方向に配列された印刷素子と、印刷ヘッド(サーマルヘッド)11と、印刷ヘッド11との間でテープ部材31及びインクリボン35を挟み込んでこれを搬送するプラテンローラ12と、テープカセット21に係合して位置決めする位置合わせ軸20と、印刷に使用したインクリボン35をテープカセット21内に巻取るリボン巻取軸13と、を備える。
【0027】
また、テープ収納部10の一端部に筐体110の外に通じるテープ繰出部106が形成されている。テープ繰出部106には、テープ部材31の印刷テープ及び剥離テープを幅方向に切断するフルカット手段としてのフルカット機構17と、テープ部材31の印刷テープのみを切断し、剥離テープを切断しないハーフカット手段としてのハーフカット機構18と、が組み込まれている。
【0028】
図3(a)に、印刷装置100に使用するテープカセット21の外観を示す。テープカセット21は、カセットケース22を備える。カセットケース22の内部には、テープ部材31が巻装されたテープコア23、未使用のインクリボン35が巻装されたリボン供給コア24、使用済みのインクリボン35を巻取るリボン巻取コア25が夫々収納されている。また、テープカセット21のカセットケース22には、テープ収納部10内にテープカセット21を装填した場合に印刷ヘッド11が位置するヘッド配置部27が形成されている。
【0029】
カセットケース22の隅部には、テープ収納部10のカセット受部15と係合し、このカセット受部15によって支持される被係合部29が形成されている。そして、カセットケース22の被係合部29には、図示しないがテープカセット21の種類に応じた所定の凹凸が形成されており、テープ収納部10のカセット受部15には、テープカセット21が装填された場合にカセットケース22の被係合部29に形成された凹凸を判別する所定のテープ幅検出スイッチ16が形成されている。
【0030】
印刷装置100は、カセットケース22がテープ収納部10に装填されると、カセットケース22の被係合部29とテープ収納部10のカセット受部15に形成されたテープ幅検出スイッチ16の幾つかと或いは全部とが係合し、係合したテープ幅検出スイッチ16が押下される。印刷装置100は、このオン状態となったテープ幅検出スイッチ16の組み合わせによって、テープカセット21のテープ幅等の種類を判別する。
【0031】
すなわち、印刷装置100は、テープカセット21の種類が内蔵するテープ部材31の幅等によって異なるため、テープカセット21の種類を判別することによって、印刷対象物であるテープの幅、テープの色等を識別して、テープの幅に適合した印刷データを作成する。
【0032】
印刷が指示されると、テープ部材31及びインクリボン35がテープカセット21から繰り出される。テープ部材31及びインクリボン35は、重ね合わされた状態で、プラテンローラ12と印刷ヘッド11との間に挟み込まれて搬送される。
【0033】
そして、印刷ヘッド11が印刷データに基づいて発熱駆動され、インクリボン35のインクがテープ部材31の印刷テープに熱転写されて印刷が行われる。印刷が終了すると、ユーザがカッタ操作レバー108を操作することにより、フルカット機構17又はハーフカット機構18が作動してテープ部材31が幅方向に切断され、1枚のテープ状のラベルが作成される。
【0034】
以下、このような構成を備えた印刷装置100における上ケース111a及び上ケース111aと共に固定されるキーカバー140等の部材の構成について、より詳細に説明する。
【0035】
図4に、上ケース111aと共に固定される部材を分離した様子を示す。
図4に示すように、上ケース111aには、表側(筐体110の外側)にキーカバー140が配置され、裏側(筐体110の内側)にラバーキー121とプリント基板(PWB:Printed Wiring Board)150とが配置される。すなわち、筐体110の表側(外側)から順に、キーカバー140と上ケース111aとラバーキー121とプリント基板150とが重ね合わされて、共通の固定部材である4つのねじ180a〜180dによって固定される。
【0036】
図5(a)に、ラバーキー121の構成を示す。ラバーキー121は、平面状に並んで配置された突出した複数の押圧部を有する押圧部材である。
図5(a)に示すように、ラバーキー121は、突出した複数の押圧部として、押圧キー122,123,124を有する。
【0037】
押圧キー122,123,124は、上述したように、それぞれ、格子状に配置された文字入力キー、円状に配置された4つのカーソルキー及びこの4つのカーソルキーに囲まれた決定キー、並びに、カーソルキー及び決定キーの周りを囲むように配置された制御キーである。押圧キー122,123,124のそれぞれは、ユーザによって押圧されると、押圧されたキーのトップ部が押圧による荷重を受けて押し下げられ、トップ部の接点がプリント基板150に設けられた電極に接触する。ユーザによる押圧から解放されると、押圧されたキーのトップ部は、ラバーの弾性力に基づいて、通常の位置に戻る。
【0038】
また、ラバーキー121には、開口126a,126b及び切欠128a〜128dが形成されている。
【0039】
開口126a,126bは、それぞれキーカバー140に設けられた位置決めピン146a,146b(詳細は後述)が挿通される、位置決め用の円形の穴(ピン穴)である。開口126aは、ラバーキー121の長手方向における下側の領域において、格子状に配置された押圧キー122の間、すなわち2つの格子線(グリッド)が交わる位置に、設けられている。一方、開口126bは、ラバーキー121の長手方向における上側の領域において、円状に設けられた押圧キー123とそれを囲む押圧キー124との間に設けられている。なお、以下では、上カバー111aに形成された開口116a,116b(詳細は後述)をそれぞれ第1の位置決め開口116a,116bと呼ぶのに対して、ラバーキー121に設けられた開口126a,126bを、それぞれ第2の位置決め開口126a,126bと呼ぶ。
【0040】
切欠128a〜128dは、ラバーキー121の固定用に形成されたパターンである。具体的に説明すると、ラバーキー121の下端部に2つの切欠128a,128bが設けられ、ラバーキー121の上端部に2つの切欠128c,128dが設けられている。この4つの切欠128a〜128dのそれぞれには、キーカバー140に設けられた突出部148a〜148d(詳細は後述)が挿通される。
【0041】
図5(b)に、プリント基板150の構成を示す。プリント基板150は、押圧キー122,123,124が押圧された際に生成される信号を処理する回路を有し、且つ、第3の位置決め開口が形成された信号処理部材である。
図5(b)に示すように、プリント基板150は、ラバーキー121に重ねられる面(すなわち表面)に、電極152,153,154を有する。
【0042】
電極152,153,154は、押圧キー122,123,124と1対1に対応しており、ラバーキー121に設けられた押圧キー122,123,124と同様に配置されている。具体的に説明すると、電極152は、文字入力キーである押圧キー122と同様に、プリント基板150の長手方向における下側から中央の領域において、格子状に配置されている。電極153は、カーソルキー及び決定キーである押圧キー123と同様に、円状に配置された4つの電極とこの4つの電極に囲まれた1つの電極とを含んでいる。電極154は、制御キーである押圧キー124と同様に、円状に配置された電極153の周りを囲むように配置されている。
【0043】
ラバーキー121に設けられた押圧キー122,123,124のそれぞれが押圧されると、押圧により押し下げられたキーのトップ部が、プリント基板150上の対応する電極に接触する。キーのトップ部と電極とが接触すると、押圧されたキーに応じた制御信号が生成され、電極に接続された配線から出力される。
【0044】
また、プリント基板150には、開口156a,156b及び切欠158a〜158dが形成されている。
【0045】
開口156a,156bは、それぞれキーカバー140に設けられた位置決めピン146a,146b(詳細は後述)が挿通される、位置決め用の円形の穴(ピン穴)である。開口156a,156bは、それぞれ、ラバーキー121に形成された第2の位置決め開口126a,126bに重ねられる位置に設けられている。具体的に説明すると、開口156aは、プリント基板150の長手方向における下側の領域において、格子状に配置された電極152の間、すなわち2つの格子線(グリッド)が交わる位置に、設けられている。一方、開口156bは、プリント基板150の長手方向における上側の領域において、円状に設けられた電極153とそれを囲む電極154との間に設けられている。以下では、開口156a,156bを、それぞれ第3の位置決め開口156a,156bと呼ぶ。
【0046】
切欠158a〜158dは、プリント基板150の固定用に形成されたパターンである。この4つの切欠158a〜158dは、ラバーキー121に形成された4つの切欠128a〜128dに重ねられる位置に設けられている。具体的に説明すると、プリント基板150の下端部に2つの切欠158a,158bが設けられ、プリント基板150の上端部に2つの切欠158c,158dが設けられている。この4つの切欠158a〜158dのそれぞれには、キーカバー140に設けられた突出部148a〜148d(詳細は後述)が挿通される。
【0047】
図6に、上ケース111aの構成を示す。上ケース111aは、上述したように、印刷装置100の筐体110の一部を構成する部材である。また、上ケース111aは、
図6に示すように、開口112,113,114を含む複数の開口が形成された、第1の開口形成部材である。
【0048】
開口112,113,114は、上ケース111aの表面に形成された窪み135に形成されている。開口112,113,114のそれぞれは、ラバーキー121に設けられた突出した複数の押圧部である押圧キー122,123,124のうちの対応する押圧キーが挿通される穴である。そのため、開口112,113,114は、押圧キー122,123,124と1対1に対応しており、押圧キー122,123,124と同様に配置されている。具体的に説明すると、開口112は、文字入力キーである押圧キー122と同様に、上ケース111aの長手方向における下側の領域において、格子状に形成されている。開口113は、カーソルキー及び決定キーである押圧キー123と同様に、円状に配置された4つの開口とこの4つの開口に囲まれた1つの開口とを含んでいる。開口114は、制御キーである押圧キー124と同様に、円状に配置された開口113の周りを囲むように形成されている。なお、以下では、開口112,113,114を、それぞれ第1の開口112,113,114と呼ぶ。
【0049】
第1の開口112,113,114のそれぞれは、対応する押圧キーの形状と同様の形状をしている。そして、第1の開口112,113,114のそれぞれのサイズは、対応する押圧キーが挿通された状態でユーザからの押圧操作によって滑らかに上下に移動できるように、対応する押圧キーのサイズとほぼ同じか或いは若干大きめに設計されている。
【0050】
また、上ケース111aに形成された窪み135の内側には、上述した押圧キー122,123,124が挿通される第1の開口112,113,114に加えて、開口116a,116b及び開口118a〜118dが形成されている。
【0051】
開口116a,116bは、それぞれキーカバー140に設けられた位置決めピン146a,146b(詳細は後述)が挿通される、位置決め用の円形の穴(ピン穴)である。開口116a,116bは、ラバーキー121に形成された第2の位置決め開口126a,126bに重ねられる位置に設けられている。具体的に説明すると、開口116aは、上ケース111aの長手方向における下側の領域において、格子状に形成された開口112の間、すなわち2つの格子線(グリッド)が交わる位置に、設けられている。一方、開口116bは、上ケース111aの長手方向における上側の領域において、円状に配置された開口113とそれを囲む開口114との間に設けられている。以下では、開口116a,116bを、それぞれ第1の位置決め開口116a,116bと呼ぶ。
【0052】
開口118a〜118dは、上ケース111aの固定用に形成された穴である。この4つの開口118a〜118dは、ラバーキー121に形成された4つの切欠128a〜128dに重ねられる位置に設けられている。具体的に説明すると、窪み135の下端部に2つの開口118a,118bが設けられ、窪み135の上端部に2つの開口118c,118dが設けられている。この4つの開口118a〜118dのそれぞれには、キーカバー140に設けられた突出部148a〜148d(詳細は後述)が挿通される。
【0053】
また、上ケース111aの長手方向における上側部分には、表示部130用の開口131が形成されている。開口131には、表示部130を構成する液晶表示パネル等が挿通される。ユーザは、表示部130に表示される各種の表示画像を、開口131を通して視認することができる。
【0054】
図7(a)及び
図7(b)に、キーカバー140の構成を示す。キーカバー140は、上ケース111aの表面に形成された窪み(凹部)135に収容され、上ケース111aの表面の一部を覆う部材である。
【0055】
キーカバー140は、上ケース111aの窪み135に収容されることにより、上ケース111aの第1の開口112,113,114が形成された部分を覆う。この第1の開口112,113,114が形成された部分は、ユーザの押圧操作による負荷を受け易い。そのため、キーカバー140が上ケース111aを覆って2重構造とすることによって、強度の向上が図られている。
【0056】
また、煩雑化を避けるため図面では無色で表しているが、キーカバー140を、上ケース111aの色と異なる色にすることによって、印刷装置100のデザイン性(意匠性)を高めることもできる。すなわち、キーカバー140や上ケース111aは、一般的には射出成形等の金型での成形によって作成されるため、同一部材に複数の異なる色を持たせることは難しい。上ケース111aに加えて別の部材としてキーカバー140を設けることによって、簡易に、印刷装置100の外観を複数の異なる色で表現することができる。
【0057】
更には、キーカバー140は、デザイン性を高めるために、上ケース111aに生じた外観不良を隠すことにも使用できる。例えば、金型で成形される際の樹脂の流入口(ゲート)は、成形物の中央部分(上ケース111aでは第1の開口112,113,114が形成された部分の辺り)に設けられることが多く、且つ、外観不良を生じさせ易い。そのため、キーカバー140が上ケース111aを覆うことによって、上ケース111aの作成時に生じた外観不良を視認できないようにできる。
【0058】
以下、キーカバー140の構成について詳しく説明する。キーカバー140は、
図7(a)に示すように、開口142,143,144を含む複数の開口が形成された、第2の開口形成部材である。
【0059】
開口142,143,144のそれぞれは、ラバーキー121に設けられた突出した複数の押圧部である押圧キー122,123,124のうちの対応する押圧キーが挿通される穴である。そのため、開口142,143,144は、押圧キー122,123,124と1対1に対応しており、押圧キー122,123,124と同様に配置されている。具体的に説明すると、開口142は、文字入力キーである押圧キー122と同様に、キーカバー140の長手方向における下側から中央の領域において、格子状に形成されている。開口143は、カーソルキー及び決定キーである押圧キー123と同様に、円状に配置された4つの開口とこの4つの開口に囲まれた1つの開口とを含んでいる。開口144は、制御キーである押圧キー124と同様に、円状に配置された開口143の周りを囲むように形成されている。なお、以下では、開口142,143,144を、それぞれ第2の開口142,143,144と呼ぶ。
【0060】
第2の開口142,143,144は、それぞれ、上ケース111aに形成された第1の開口112,113,114に重ねられる位置に設けられている。そのため、キーカバー140が上ケース111aに重ねられて固定された状態では、第2の開口142,143,144には、上ケース111aに形成された開口112,113,114から突出した押圧キー122,123,124が、挿通される。すなわち、押圧キー122,123,124のそれぞれは、上ケース111aに形成された第1の開口112,113,114のうちの対応する開口と、キーカバー140に形成された第2の開口142,143,144のうちの対応する開口と、の2つの開口を通る。
【0061】
第2の開口142,143,144のそれぞれは、対応する押圧キーの形状と同様の形状をしている。そして、第2の開口142,143,144のそれぞれのサイズは、対応する押圧キーが挿通された状態でユーザからの押圧操作によって滑らかに上下に移動できるように、対応する押圧キーのサイズとほぼ同じか或いは若干大きめに設計されている。
【0062】
また、キーカバー140は、
図7(b)に示すように、その裏面に、位置決めピン146a,146b及び突出部148a〜148dを有している。
【0063】
位置決めピン146a,146bは、キーカバー140の裏面から裏面に垂直な方向に突出した位置決め用の突出部であって、キーカバー140と上ケース111aとラバーキー121とプリント基板150とを一括して位置決めする、共通の位置決め部材である。
【0064】
位置決めピン146a,146bは、上ケース111aに形成された第1の位置決め開口116a,116b、ラバーキー121に形成された第2の位置決め開口126a,126b及びプリント基板150に形成された第3の位置決め開口156a,156bに対して、対応する位置に設けられている。具体的に説明すると、位置決めピン146aは、キーカバー140の長手方向における下側の領域において、格子状に形成された開口142の間、すなわち2つの格子線(グリッド)が交わる位置に、設けられている。一方、
位置決めピン146bは、キーカバー140の長手方向における上側の領域において、円状に配置された開口143とそれを囲む開口144との間に設けられている。
【0065】
位置決めピン146aは、上ケース111aに形成された第1の位置決め開口116a、ラバーキー121に形成された第2の位置決め開口126a及びプリント基板150に形成された第3の位置決め開口156aに挿通される。位置決めピン146bは、上ケース111aに形成された第1の位置決め開口116b、ラバーキー121に形成された第2の位置決め開口126b及びプリント基板150に形成された第3の位置決め開口156bに挿通される。これにより、キーカバー140と上ケース111aとラバーキー121とプリント基板150という4つの部材が、印刷装置100の長手方向及び短手方向に位置ずれしないように、一括して位置決めされる。
【0066】
突出部148a〜148dは、固定用の突出部である。この4つの突出部148a〜148dは、上ケース111aに形成された開口146a〜146d、ラバーキー121に形成された4つの切欠128a〜128d、及びプリント基板150に形成された4つの切欠158a〜158dに対して、対応する位置に設けられている。具体的に説明すると、キーカバー140の下端部に2つの突出部148a,148bが設けられ、キーカバー140の上端部に2つの突出部148c,148dが設けられている。
【0067】
突出部148a〜148dには、それぞれ、内表面にねじ山を有するねじ穴149a〜149dが形成されている。この4つのねじ穴149a〜149dには、それぞれ、共通の固定部材である4つのねじ180a〜180dが挿入される。
【0068】
具体的に説明すると、キーカバー140に設けられた4つの突出部148a〜148dが、上ケース111aの開口118a〜118dと、ラバーキー121の切欠128a〜128dと、プリント基板150の切欠158a〜158dと、に挿通された状態で、外表面にねじ山を有する4つのねじ180a〜180dが、プリント基板150の更に内側からねじ穴149a〜149dに挿入され締結される。これにより、キーカバー140と上ケース111aとラバーキー121とプリント基板150という4つの部材が、4つのねじ180a〜180dという少ない個数の固定部材で固定(締結)される。
【0069】
以上のように構成されるキーカバー140、上ケース111a、ラバーキー121及びプリント基板150の断面の構成について、
図8から
図10を参照して説明する。
【0070】
図8(a)に、キーカバー140、上ケース111a、ラバーキー121及びプリント基板150を、各部材の短手方向における中央に設定されたA−A線で切断したときの断面を個別に示す。これに対して、
図9(a)に、キーカバー140に設けられた2つの位置決めピン146a,146bを通るB−B線で切断したときの、これら4つの部材の断面を個別に示す。更に、
図10(a)に、キーカバー140に設けられた4つの突出部148a〜148dのうちの2つの突出部148a,148cを通るC−C線で切断したときの、これら4つの部材の断面を個別に示す。なお、煩雑化を避け理解を容易にするため、
図8から
図10では、各部材の切断線(A−A線、B−B線及びC−C線)による断面の構造のみを示しており、断面の遠方(後ろ)に見える構造については記載していない。また、
図8から
図10では、断面にハッチングを付し、且つ、開口又は切欠を白抜きで示している。
【0071】
図8(a)、
図9(a)及び
図10(a)に示すように、キーカバー140と上ケース111aとラバーキー121とプリント基板150とは、筐体110の表側(外側)からこの順に重ね合わされことにより、固定された1つのアセンブリに組み立てられる。
【0072】
具体的な組み立て手順について、以下の(1)〜(4)に説明する。
(1)第1に、キーカバー140を、上ケース111aの窪み135に嵌め込む。このとき、キーカバー140に設けられた位置決めピン146a,146bを、それぞれ上ケース111aの第1の位置決め開口116a,116bに通す。これにより、上ケース111aの第1の開口112,113,114とキーカバー140の第2の開口142,143,144との間において、対応する開口同士が、高い精度で同じ位置に重ねられる。なお、このとき更に、キーカバー140に設けられた固定用の突出部148a〜148dは、それぞれ上ケース111aの開口118a〜118dに挿通される。
(2)第2に、ラバーキー121に設けられた押圧キー122,123,124を、重ねられた状態にある上ケース111aの第1の開口112,113,114とキーカバー140の第2の開口142,143,144とに通すことで、ラバーキー121を上ケース111aに取り付ける。このとき、第1の位置決め開口116a,116bを通った位置決めピン146a,146bを、それぞれラバーキー121の第2の位置決め開口126a,126bに、更に通す。これにより、押圧キー122,123,124の位置と、第1の開口112,113,114及び第2の開口142,143,144の位置とを、高い精度で合わせることができる。なお、このとき更に、固定用の突出部148a〜148dは、それぞれラバーキー121の切欠128a〜128dに挿通される。
(3)第3に、プリント基板150を、押圧キー122,123,124のそれぞれがプリント基板150に設けられた電極152,153,154のうちの対応する電極に重ねられるように、ラバーキー121に取り付ける。このとき、第1の位置決め開口116a,116bと第2の位置決め開口126a,126bとを通った位置決めピン146a,146bを、それぞれプリント基板150に形成された第3の位置決め開口156a,156bに、更に通す。これにより、プリント基板150についても他の部材と正確に位置決めすることができる。なお、このとき更に、固定用の突出部148a〜148dは、それぞれプリント基板150の切欠158a〜158dに挿通される。
(4)第4に、位置決めピン146a,146bによって位置決めされた状態において、突出部148a〜148dのねじ穴149a〜149dに、それぞれねじ180a〜180dを挿入して締結する。ねじ180a〜180dの締結により、各部材を面に垂直な方向に締め付ける力が加えられる。その結果、キーカバー140と上ケース111aとラバーキー121とプリント基板150とが固定される。
【0073】
このように4つの部材が順次重ねられた結果、
図8(b)、
図9(b)及び
図10(b)に示すように、キーカバー140と上ケース111aとラバーキー121とプリント基板150とによるアセンブリが組み立てられる。
【0074】
図8(b)に示すように、アセンブリに組み立てられた状態では、ラバーキー121に設けられた押圧キー122,123,124は、ユーザが押圧しやすいように、それぞれ上ケース111aに形成された第1の開口112,113,114とキーカバー140に形成された第2の開口142,143,144とをどちらも挿通し、キーカバー140の表面から所定の高さだけ突き出る。
【0075】
また、
図9(b)に示すように、キーカバー140に設けられた位置決めピン146a,146bが、上ケース111aとラバーキー121とプリント基板150とに同時に挿通されている。そのため、これら4つの部材は、共通の位置決め部材である位置決めピン146a,146bを基準として位置が決められる。その結果、これら4つの部材を高い精度で位置決めすることができる。
【0076】
すなわち、例えばキーカバー140と上ケース111aとを位置決めする部材と、上ケース111aとラバーキー121とを位置決めする部材と、が別である場合、キーカバー140とラバーキー121とは間接的に位置決めされているだけなので、位置ずれが大きくなる。また、ねじ等の必要な固定部材の数も多くなる。そのため、本実施形態に係る印刷装置100のように比較的小型の装置において、狭い領域に密に配置された押圧キー122,123,124のそれぞれを、上ケース111a及びキーカバー140に形成された2つの開口に、滑らかに挿通させることが難しくなる。
【0077】
これを避けるために、例えば上ケース111aの第1の開口112,113,114のような押圧キー122,123,124に対して1対1で対応する開口を設けず、例えば押圧キー122,123,124全体によって挿通される大きな開口を設ける方法も考えられる。これにより、押圧キー122,123,124のそれぞれが1つの開口のみに挿通されるため、2つの開口に挿通される場合に比べて、位置決めの精度が要求されない。しかしながら、上ケース111aの押圧キー122,123,124が挿通される部分に大きな開口が形成されていると、筐体110の強度が低下する。
【0078】
本実施形態に係る印刷装置100では、共通の位置決め部材である位置決めピン146a,146bによって位置決めされているため、押圧キー122,123,124のそれぞれを、上ケース111a及びキーカバー140に形成された2つの開口のどちらにも、精度良く挿通させることができる。その結果、ユーザの押圧操作による負荷を受け易い上ケース111aの第1の開口112,113,114が形成された部分をキーカバー140が覆うことで、印刷装置100の強度を向上させることができる。また、キーカバー140の色を上ケース111aの色とは異なる色にすることによって、印刷装置100のデザイン性(意匠性)を向上させることもできる。
【0079】
更には、本実施形態に係る印刷装置100では、共通の位置決め部材によって精度良く位置決めされているため、
図10(b)に示すように、キーカバー140に設けられた突出部148a〜148dを、上ケース111aとラバーキー121とプリント基板150とに同時に挿通できる。そのため、本実施形態に係る印刷装置100は、キーカバー140と上ケース111aとラバーキー121とプリント基板150という4つの部材を、4つのねじ180a〜180dという少ない個数の固定部材で一括して固定することができる。
【0080】
(変形例)
以上に本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は一例であり、本発明の適用範囲はこれに限られない。すなわち、本発明の実施形態は種々の応用が可能であり、あらゆる実施の形態が本発明の範囲に含まれる。
【0081】
例えば、上記実施形態では、本発明に係る電子機器として、ラベルプリンタである印刷装置1を例にとって説明した。しかし、本発明に係る電子機器は、ラベルプリンタ等の印刷装置に限らない。本発明に係る電子機器は、キー又はボタン等のような、突出した押圧部を有する装置であれば、例えば電子辞書、電卓、携帯電話又はその他のコンピュータ等であってもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、押圧部材として、ラバーキー121を例にとって説明した。しかし、本発明では、突出した押圧部を有するものであれば、合成樹脂製等、材質がラバー製以外であってもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、押圧部材であるラバーキー121は、押圧部として、平面状に並んで配置された複数の押圧キー122,123,124を有していた。しかし、本発明では、複数の押圧部は、面状であれば、完全な2次元平面状でなく、曲面状に配置されていてもよい。例えば電子機器の筐体の表面が曲面状になっていて、それに伴って押圧部材も曲面状になっている場合には、複数の押圧部は、曲面状に配置される。
【0084】
また、本発明では、押圧部材は、複数の押圧部でなく、1つの押圧部のみを有していてもよい。押圧部材が1つの押圧部のみを有する場合であっても、上記実施形態のように、押圧部材と複数の開口形成部材とを共通の位置決め部材によって位置決めすることで、押圧部を複数の開口に精度良く挿通させることができる。但し、小型の装置に複数の押圧部が格子状に配置されている場合のように、複数の押圧部が狭い領域に密に配置されているほど、この複数の押圧部が挿通される複数の開口のサイズに余裕(マージン)を持たせられなくなるため、押圧部と開口とをより高い精度で位置決めすることが要求される。そのため、押圧部材が密に配置された複数の押圧部を有している場合の方が、本発明における効果は高まる。
【0085】
また、上記実施形態では、位置決めピン146a,146bは、印刷装置100の最も外側に位置する部材であるキーカバー140に設けられていた。しかし、本発明では、印刷装置100の内側に位置する部材であるプリント基板150又はラバーキー121に、外向きに突出した位置決めピンが設けられ、キーカバー140に、この位置決めピンが挿通される開口が形成されていてもよい。この場合、プリント基板150又はラバーキー121に設けられた位置決めピンが、上ケース111a及びキーカバー140に形成された開口に挿入されることにより、この4つの部材の間で位置決めされる。同様に、上記実施形態ではキーカバー140に設けられていた固定用の突出部148a〜148dについても、印刷装置100の内側に位置する部材であるプリント基板150又はラバーキー121に設けられていてもよい。但し、印刷装置100の最も外側に位置する部材に開口が設けられると、印刷装置100の外観のデザイン性を損なうことにつながる。そのため、上記実施形態のように、キーカバー140に印刷装置100の内側に向けて位置決めピン146a,146b及び突出部148a〜148dが設けられていることが、デザイン性を考慮する上では好適である。
【0086】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明には、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲とが含まれる。以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0087】
(付記1)
突出した複数の押圧部を有する押圧部材と、
前記複数の押圧部がそれぞれ突出するように挿通される複数の第1の開口を有する第1の開口形成部材と、
前記複数の第1の開口から挿通する前記複数の押圧部がそれぞれ突出するように挿通される複数の第2の開口を有する第2の開口形成部材と、
前記複数の押圧部材が、前記複数の第1の開口及び前記複数の第2の開口に挿通する位置に配置されるように、前記押圧部材と前記第1の開口形成部材と前記第2の開口形成部材とを位置決めする位置決め部材と、
を備える、
ことを特徴とする電子機器。
【0088】
(付記2)
前記第2の開口形成部材は、前記位置決め部材として、位置決め用の突出部を有し、
前記第1の開口形成部材には、第1の位置決め開口が形成され、
前記押圧部材には、第2の位置決め開口が形成され、
前記押圧部材と前記第1の開口形成部材と前記第2の開口形成部材とは、前記位置決め用の突出部が前記第1の位置決め開口及び前記第2の位置決め開口に挿通されることによって、位置決めされている、
ことを特徴とする付記1に記載の電子機器。
【0089】
(付記3)
前記押圧部が押圧された際に生成される信号を処理する回路を有し、且つ、第3の位置決め開口が形成された信号処理部材をさらに備え、
前記押圧部材と前記第1の開口形成部材と前記第2の開口形成部材と前記信号処理部材とは、前記位置決め用の突出部が前記第1の位置決め開口、前記第2の位置決め開口及び前記第3の位置決め開口に挿通されることによって、位置決めされている、
ことを特徴とする付記2に記載の電子機器。
【0090】
(付記4)
前記複数の押圧部は、面状に並んで配置されている、
ことを特徴とする付記1から3のいずれか1つに記載の電子機器。
【0091】
(付記5)
前記押圧部材と前記第1の開口形成部材と前記第2の開口形成部材とは、共通の固定部材によって固定されている、
ことを特徴とする付記1から4のいずれか1つに記載の電子機器。
【0092】
(付記6)
前記押圧部材と前記第1の開口形成部材と前記第2の開口形成部材と前記信号処理部材とは、共通の固定部材によって固定されている、
ことを特徴とする付記3に記載の電子機器。
【0093】
(付記7)
前記第1の開口形成部材は、前記電子機器の筐体の少なくとも一部を構成し、
前記第2の開口形成部材は、前記第1の開口形成部材の表面の一部を覆う、
ことを特徴とする付記1から6のいずれか1つに記載の電子機器。
【0094】
(付記8)
前記第2の開口形成部材は、前記第1の開口形成部材の表面に形成された窪みに収容されている、
ことを特徴とする付記1から7のいずれか1つに記載の電子機器。
【0095】
(付記9)
前記第2の開口形成部材の色は、前記第1の開口形成部材の色とは異なる、
ことを特徴とする付記1から8のいずれか1つに記載の電子機器。