特許第6337991号(P6337991)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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6337991アルコール飲料添加用の花の製造方法、アルコール飲料の製造方法、及び容器入りアルコール飲料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6337991
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】アルコール飲料添加用の花の製造方法、アルコール飲料の製造方法、及び容器入りアルコール飲料
(51)【国際特許分類】
   A23L 19/00 20160101AFI20180528BHJP
   C12G 3/00 20060101ALI20180528BHJP
   C12G 3/04 20060101ALI20180528BHJP
【FI】
   A23L19/00 A
   C12G3/00
   C12G3/04
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-119263(P2017-119263)
(22)【出願日】2017年6月19日
【審査請求日】2017年11月13日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502403671
【氏名又は名称】株式会社豊幸園
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牛田 豊文
【審査官】 藤澤 雅樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−154518(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/122850(WO,A1)
【文献】 特公平07−099990(JP,B2)
【文献】 特開平06−022738(JP,A)
【文献】 特開昭61−227772(JP,A)
【文献】 特開平01−317381(JP,A)
【文献】 特開2003−189842(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3168030(JP,U)
【文献】 特開2003−23961(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 19/00
C12G 3/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/FSTA/FROSTI/WPIDS/WPIX(STN)
Japio−GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコール水溶液、及び糖類を含有する処理液体に、生花を浸漬した状態で、減圧下にて加熱して、前記処理液体を前記生花に含浸させることを特徴とするアルコール飲料添加用の花の製造方法。
【請求項2】
前記生花は、カロチノイド色素を含有する花、及び/又は白色の花であることを特徴とする請求項1に記載のアルコール飲料添加用の花の製造方法。
【請求項3】
前記生花が白色の花であり、
前記処理液体が色素を含有していることを特徴とする請求項1に記載のアルコール飲料添加用の花の製造方法。
【請求項4】
前記加熱の際の前記処理液体の温度が40〜83℃であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のアルコール飲料添加用の花の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法によって製造された花が入れられた容器にアルコール飲料を充填することを特徴とするアルコール飲料の製造方法。
【請求項6】
透明な容器と、
前記容器内に収められたアルコール飲料と、を備え、
前記アルコール飲料中には、生花が浸されており、
前記生花には、アルコール水溶液、及び糖類を含有する処理液体が含浸されており、
前記生花内の前記処理液体の比重は、前記アルコール飲料の比重以上であり、
前記生花への前記処理液体の含浸は、減圧下の加熱処理によって行われており、
前記生花の有する本来の色が落ちにくく、花本来の色が保たれていることを特徴とする容器入りアルコール飲料。
【請求項7】
前記生花は、カロチノイド色素を含有する花、及び/又は白色の花であることを特徴とする請求項6に記載の容器入りアルコール飲料。
【請求項8】
前記容器は、置物用容器であることを特徴とする請求項6又は7に記載の容器入りアルコール飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アルコール飲料添加用の花の製造方法、アルコール飲料の製造方法、及び容器入りアルコール飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
生花を添加したアルコール飲料が知られている(特許文献1参照)。このアルコール飲料に用いる生花は次のように処理されている。すなわち、生花又は生葉をシロップ液につけ込む工程と、シロップ液につけ込まれた生花又は生葉をエタノールに浸漬する工程と、エタノールに浸漬させた生花又は生葉をシロップ液につけ込む工程により処理されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−154518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この技術では、生花又は生葉をシロップ液につけ込む工程は、常温で行い、かつ6ケ月以上に渡って行うものであり、非常に長時間を要していた。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、短時間でアルコール飲料添加用の花を製造する製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、新規なアルコール飲料添加用の花の製造方法を開発した。
そして、この製造方法によれば、短時間でアルコール飲料添加用の花を製造できることを見いだした。この成果に基づいて、次の発明を提供する。
【0006】
〔1〕アルコール水溶液、及び糖類を含有する処理液体に、生花を浸漬した状態で、減圧下にて加熱して、前記処理液体を前記生花に含浸させることを特徴とするアルコール飲料添加用の花の製造方法。
【0007】
〔2〕前記生花は、カロチノイド色素を含有する花、及び/又は白色の花であることを特徴とする〔1〕に記載のアルコール飲料添加用の花の製造方法。
【0008】
〔3〕前記生花が白色の花であり、
前記処理液体が色素を含有していることを特徴とする〔1〕に記載のアルコール飲料添加用の花の製造方法。
【0009】
〔4〕前記加熱の際の前記処理液体の温度が40〜83℃であることを特徴とする請求項〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載のアルコール飲料添加用の花の製造方法。
【0010】
〔5〕請求項〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載の製造方法によって製造された花が入れられた容器にアルコール飲料を充填することを特徴とするアルコール飲料の製造方法。
【0011】
〔6〕透明な容器と、
前記容器内に収められたアルコール飲料と、を備え、
前記アルコール飲料中には、生花が浸されており、
前記生花には、アルコール水溶液、及び糖類を含有する処理液体が含浸されており、
前記生花内の前記処理液体の比重は、前記アルコール飲料の比重以上であり、
前記生花への前記処理液体の含浸は、減圧下の加熱処理によって行われており、
前記生花の有する本来の色が落ちにくく、花本来の色が保たれていることを特徴とする容器入りアルコール飲料。
【0013】
〕前記生花は、カロチノイド色素を含有する花、及び/又は白色の花であることを特徴とする請求項〔6〕に記載の容器入りアルコール飲料。
【0014】
〕前記容器は、置物用容器であることを特徴とする〔6〕又は〕に記載の容器入りアルコール飲料。
【発明の効果】
【0015】
本発明のアルコール飲料添加用の花の製造方法によれば、短時間でアルコール飲料添加用の花を製造することができる。また、この製造方法によれば、長期間に亘って保存可能なアルコール飲料添加用の花を製造できる。
生花が、カロチノイド色素を含有する花、及び/又は白色の花である場合には、次の作用効果を奏する。すなわち、これらの生花には、油性のカロチノイド色素が含まれているか、発色を伴う色素が含まれておらず、処理液体中で色あせしにくい。よって、本来の色を有する美しいアルコール飲料添加用の花とすることができる。また、この製造方法で製造された花をアルコール飲料に添加しても、色素がアルコール飲料にしみ出にくく花本来の色を保つことができる。特に、アルコール飲料のアルコール度が20%以下である場合に、色素がアルコール飲料にしみ出にくく花本来の色を保つ効果が高い。
生花が白色の花であり、処理液体が色素を含有している場合には、白色の花に着色することができる。
加熱の際の処理液体の温度が40〜83℃である場合には、極めて短時間で、アルコール飲料添加用の花を製造することができる。
上述の製造方法によって製造された花が入れられた容器にアルコール飲料を充填すると、花入りのアルコール飲料を製造することができる。
本発明の容器入りアルコール飲料では、生花内の処理液体の比重は、アルコール飲料の比重以上であるから、花をアルコール飲料に沈めた状態とすることができる。
生花への処理液体の含浸は、減圧下の加熱処理によって行われているので、生花に処理液体が満遍なく含浸している。よって、花をアルコール飲料に沈めた状態にし易い。
生花は、カロチノイド色素を含有する花、及び/又は白色の花である場合には、色素がアルコール飲料にしみ出にくく花本来の色を保つことができる。
容器に、置物用容器を用いることで、容器入りアルコール飲料を置物として利用できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳しく説明する。
1.アルコール飲料添加用の花の製造方法
アルコール飲料添加用の花の製造方法は、アルコール水溶液、及び糖類を含有する処理液体に、生花を浸漬した状態で、減圧下にて加熱して、処理液体を生花に含浸させることを特徴とする。
【0017】
(1)処理液体
処理液体としては、アルコール水溶液(エタノール水溶液)、及び糖類を含有する処理液体であれば特に限定されない。
アルコール水溶液におけるエタノールの由来は、特に限定されない。例えば、エタノールは、ワイン(白、赤、ロゼ)、醸造用アルコール、焼酎、日本酒、紹興酒、ウイスキー、ブランデー、及びウオッカからなる群より選ばれた1種以上に由来することができる。なお、アルコール水溶液は、白ワインそのものであってもよい。
特に、エタノールは、ワイン(白)、醸造用アルコール由来であることが好ましい。エタノールが、ワイン(白)、醸造用アルコールに由来していると、処理液体の色を無色透明に近くすることができ、処理液体による花又は花びらの着色が抑制され、花又は花びら本来の自然な色を残すことができるからである。
【0018】
アルコール水溶液のアルコール度は、特に限定されないが、アルコール度6〜20%であることが好ましく、さらにアルコール度8〜15%であることが好ましく、特にアルコール度9〜12%であることが好ましい。この範囲内とすると、処理液体によって処理しても、花の有する本来の色が落ちにくく、美しい状態のアルコール飲料添加用の花になる傾向にある。特に、カロチノイド色素を含有する花に有効である。
【0019】
糖類としては、特に限定されず、公知の糖類を用いることができる。糖類の具体例として、液糖、上白糖、グラニュー糖、三温糖、粉糖、黒糖、水飴等を挙げることができる。液糖の例として、果糖ブドウ糖液糖、高果糖液糖、ブドウ糖果糖液糖、砂糖混合異性化液糖、オリゴ糖液糖、乳化オリゴ糖等がある。
これらの糖類は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。例えば、液糖とグラニュー糖を併用することができる。
糖類の量の含有割合は、アルコール水溶液100mLに対して、好ましくは、1〜20gであり、より好ましくは、2〜10gであり、特に好ましくは、3〜8gである。
アルコール溶液のアルコール度を上記範囲とし、糖類の量を上記範囲とすることで、アルコール飲料添加用の花をアルコール飲料内に迅速に沈めることができる。
【0020】
処理液体には、酸、色素、香料等を含有させることができる。
酸としては、特に限定されないが、例えば、クエン酸、L−アスコルビン酸(ビタミンC)、リンゴ酸、酒石酸、グリコール酸、乳酸等の脂肪族ヒドロキシ酸を用いることができる。
【0021】
生花が白色の花であり、処理液体が色素を含有している場合には、白色の花に着色することができる。これについて具体的に例示して説明する。例えば、白色系のカーネーション、白色系のバラ、白色の菊や、白色のデンドロビウム・ファレノプシス等には、赤キャベツ色素、ムラサキイモ色素(アントシアニン色素)等を好適に用いることができ、これらの花をピンク色に鮮やかに染めることができる。
【0022】
なお、色素としては、上記のものに限定されず、公知の色素を用いることができる。例えば、ビートレッド、ベニコウジ色素、アカネ色素、アナトー色素、パプリカ色素、クチナシ黄色色素、抽出カロチン、コチニール色素、ラック色素、シソ色素、紫コーン色素、エルダーベリー色素、ボイセンベリー色素、ブドウ果皮色素、ブドウ果汁色素、ベニバナ黄色素、ベニバナ赤色素、コウリャン色素、タマネギ色素、カカオ色素、サンダルウッド色素、スピルリナ青色素、クロロフィル、ウコン色素、紅麹黄色素、クチナシ青色素、クチナシ赤色素等が例示される。
【0023】
香料は、特に限定されず、公知の香料を幅広く利用できる。
【0024】
(2)生花
生花は、特に限定されず、幅広い花に適用可能である。生花は、カロチノイド色素を含有する花、及び/又は白色の花であることが好ましい。カロチノイド色素は油性(非水溶性)の色素であり、上記処理液体に溶け出しにくい。よって、カロチノイド色素を含有する花は、上記処理液によって処理しても、花の有する本来の色が落ちにくく、美しい状態のアルコール飲料添加用の花にできる。このように、カロチノイド色素を含有する花を用いたアルコール飲料添加用の花を入れたアルコール飲料は、花が他の別の色素によって故意に着色したものではないから、自然志向の消費者に好まれる傾向にある。同様に、白色の花を用いたアルコール飲料添加用の花を入れたアルコール飲料は、花が他の別の色素によって故意に着色したものではないから、自然志向の消費者に好まれる傾向にある。
生花としては、具体的には、カーネーション(白色系)、バラ(白色系、黄色)、カレンデュラ(橙色、黄色)、菊(白色、黄色)、白色のデンドロビウム・ファレノプシス、パンジー(橙色、黄色、白色)、プリムラ(橙色、黄色、白色)等が好適に挙げられる。これらの生花は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、生花は、花そのままの状態又は花びらとして用いられる。
【0025】
(3)減圧下での加熱処理
上記処理液体に、生花を浸漬した状態で、減圧下にて加熱する際の減圧は、標準大気圧より圧力が低い状態であれば特に限定されない。JISによって圧力の段階ごとに区分されている以下のいずれの真空であってもよい。
低真空 圧力 100kPa〜100Pa
中真空 圧力 100Pa〜0.1Pa
高真空 圧力 0.1Pa〜10μPa
超高真空 圧力 10μPa以下
【0026】
上記処理液体に、生花を浸漬した状態で、減圧下にて加熱する処理液体の温度は、室温(20℃)より高ければ特に限定されない。好ましくは、40〜83℃であり、より好ましくは、50〜83℃であり、特に好ましくは、60〜80℃である。温度をこの範囲とすることで、生花への処理液体の含浸が速やかに行われる。この温度よりも高い場合、花の種類によっては、花弁の先端部分に空気の入った水泡ができ、花がアルコール飲料中で沈まず、浮遊の原因となるおそれがある。
【0027】
加熱時間は、特に限定されず、任意の時間とすることができる。好ましくは、2〜30分間であり、より好ましくは、5〜20分間であり、特に好ましくは、6〜15分間である。
【0028】
(4)加熱処理後の処理
加熱処理後には、生花が処理液体に含浸された状態で、冷却することが好ましい。冷却することで、アルコール飲料添加用の花の外観の劣化を抑制できるからである。冷却には強制的な冷却が好ましく、冷蔵庫中(例えば、2〜5℃)に保管して冷却することが特に好ましい。強制的な冷却によって、加熱された処理液体で生花の外観が損なわれることを極力抑制することできる。
冷却時間は特に限定されない。好ましくは、1〜96時間であり、より好ましくは、12〜72時間であり、特に好ましくは、24〜48時間である。
以上のように製造されたアルコール飲料添加用の花は、アルコール飲料を製造する際に処理液体から必要量取り出される。
透明な容器内にアルコール飲料添加用の花を適量入れ、アルコール飲料を充填すると花入りのアルコール飲料が製造できる。
【0029】
(5)本実施形態のアルコール飲料添加用の花の製造方法の効果
本実施形態のアルコール飲料添加用の花の製造方法によれば、短時間でアルコール飲料添加用の花を製造することができる。例えば、この製造方法によれば、数日でアルコール飲料添加用の花を製造することができ、特許文献1の発明に比べて非常に早い。
また、この製造方法によれば、長期間に亘って保存可能なアルコール飲料添加用の花が製造できる。
生花が、カロチノイド色素を含有する花、及び/又は白色の花である場合には、次の作用効果を奏する。すなわち、これらの生花には、油性のカロチノイド色素が含まれているか、発色を伴う色素が含まれておらず、処理液体中で色あせしにくい。よって、本来の色を有する美しいアルコール飲料添加用の花とすることができる。また、この製造方法で製造された花をアルコール飲料に添加しても、色素がアルコール飲料にしみ出にくく花本来の色を保つことができる。
生花が白色の花であり、処理液体が色素を含有している場合には、白色の花に着色することができる。
加熱の際の温度が40〜83℃である場合には、極めて短時間で、アルコール飲料添加用の花を製造することができる。
この製造方法によって製造された花が入れられた容器にアルコール飲料を充填すると、花入りのアルコール飲料を製造することができる。
【0030】
2.容器入りアルコール飲料
本発明の容器入りアルコール飲料は、透明な容器と、容器内に収められたアルコール飲料と、を備える。そして、アルコール飲料中には、生花が浸されている。生花には、アルコール、水、及び糖類を含有する処理液体が含浸されており、生花内の処理液体の比重は、アルコール飲料の比重以上であり、生花への処理液体の含浸は、減圧下の加熱処理によって行われており、生花の有する本来の色が落ちにくく、花本来の色が保たれていることを特徴とする。
「生花」、「処理液体」については、上記の説明をそのまま適用する。
【0031】
(1)容器
容器は、可視光の下で、内容物が透けて見えれば、形状、大きさ等については特に限定されない。容器は、置物用容器であってもよい。例えば、床の間や机の上などに、装飾のため据え置くための物に適した形状、大きさとすることができる。また、神仏の前に置いて供える物に適した形状、大きさとすることができる。
なお、容器が置物用容器である場合、容器内に数種類の花が入り、用途に応じて花を選定することが望ましい。例えば、仏壇にお供え用としておくのであれば、黄色や白色の菊を用いることが好ましい。
なお、容器は、無色透明、有色透明のいずれでもよいが、好ましくは内容物を美しく見せるために無色透明であることが好ましい。
【0032】
(2)アルコール飲料
アルコール飲料は、アルコール(エタノール)を含有する液体である。本発明では、アルコール飲料の比重は、生花内の処理液体の比重以下である。言い換えれば、生花内の処理液体の比重は、アルコール飲料の比重以上である。このような比重の関係とすることで、花をアルコール飲料内で沈んだ状態とすることが容易となる。従って、アルコール飲料中に、花が速やかに沈むから、生産効率が高くなる。花の収穫から、花又は花びらが沈んだ容器入りアルコール飲料の製造期間は、例えば数日であり、生産効率は非常に高い。
【0033】
アルコール飲料は、エタノールを含有していれば特に限定されないが、例えば、アルコール水溶液(エタノール水溶液)に糖類を混合した液体を用いることができる。アルコール水溶液におけるエタノールの由来は、特に限定されない。例えば、エタノールは、ワイン(白、赤、ロゼ)、醸造用アルコール、焼酎、日本酒、紹興酒、ウイスキー、ブランデー、及びウオッカからなる群より選ばれた1種以上に由来することができる。特に、エタノールは、ワイン(白)、醸造用アルコール由来であることが好ましい。エタノールが、ワイン(白)、醸造用アルコールに由来していると、アルコール飲料の色を無色透明に近くすることができ、アルコール飲料内の花又は花びら本来の自然な色を美しく見せることができるからである。
【0034】
アルコール水溶液のアルコール度は、特に限定されないが、アルコール度6〜20%であることが好ましく、さらにアルコール度8〜15%であることが好ましく、特にアルコール度9〜12%であることが好ましい。
【0035】
糖類としては、特に限定されず、公知の糖類を用いることができる。糖類の具体例として、液糖、上白糖、グラニュー糖、三温糖、粉糖、黒糖、水飴等を挙げることができる。液糖の例として、果糖ブドウ糖液糖、高果糖液糖、ブドウ糖果糖液糖、砂糖混合異性化液糖、オリゴ糖液糖、乳化オリゴ糖等がある。
これらの糖類は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。例えばグラニュー糖と液糖を併用することができる。
糖類の量の含有割合は、例えば、上記処理液体における糖類の含有割合以下である。
アルコール水溶液のアルコール度を上記範囲とし、糖類の量を上記範囲とすることで、アルコール飲料の比重を生花内の処理液体の比重以下にすることができる。言い換えれば、生花内の処理液体の比重を、アルコール飲料の比重以上にすることができる。
このような比重の関係とすることで、花をアルコール飲料内で沈んだ状態とすることが容易になる。
【0036】
アルコール飲料には、酸、色素、香料等を含有させることができる。
酸としては、例えば、クエン酸、L−アスコルビン酸(ビタミンC)、リンゴ酸、酒石酸、グリコール酸、乳酸等を用いることができる。
【0037】
(3)本実施形態の容器入りアルコール飲料の効果
本実施形態の容器入りアルコール飲料は、生花内の処理液体の比重が、アルコール飲料の比重以上であるから、花をアルコール飲料に速やかに沈めた状態とすることができ、生産効率が高い。
生花への処理液体の含浸は、減圧下の加熱処理によって行われているので、生花に処理液体が満遍なく含浸している。よって、花をアルコール飲料に沈めた状態にし易い。
生花は、カロチノイド色素を含有する花、及び/又は白色の花である場合には、色素がアルコール飲料にしみ出にくく花本来の色を保つことができる。
容器に、置物用容器を用いることで、容器入りアルコール飲料を置物として利用できる。
なお、本実施形態の容器入りアルコール飲料において、アルコール飲料に用いるアルコール水溶液のアルコール度が20%以下の場合は、花の色素がアルコール飲料にしみ出にくく、花本来の色を効果的に保つことができる。

【実施例】
【0038】
以下、実施例により更に具体的に説明する。
【0039】
1.アルコール飲料添加用の花の製造
<実施例1>
〔1〕外面がナイロン、内面がポリエチレンである複合フィルム(ナイロンポリ)の袋を用意した。この袋のサイズは、180mm×270mmである。
袋にカレンデュラの花そのもの、又はカレンデュラの花びらを入れた。
カレンデュラの花そのものの場合には、花30個入れた。カレンデュラの花は総重量で90〜120gであった。
カレンデュラの花びらの場合には、花びらの総重量で50gを入れた。
【0040】
〔2〕次に、各袋の中に次の組成の処理液体を入れた。
<処理液体の組成>
処理液体としては、下記の(1)〜(3)を混合した合計450mLの液体を用いた。

(1)白ワイン(アルコール度11%) 200mL
(2)醸造用アルコールを水で割り、アルコール度11%にした液 230mL
(3)果糖ブドウ糖液糖(果糖含有率55%) 20mL(26.6g)
【0041】
〔3〕続いて、袋の中を減圧し、加熱した。減圧は、食品用真空包装機(株式会社TOSEI製 トスパック V−380G)を用い、設定値を80%とした。加熱は、スチームコンベンションオーブンを使用した。
加熱は、花又は花びらを入れた状態で、処理液体の温度が60℃〜80℃となるように行い、処理時間は10分〜15分間とした。この加熱では、処理液体を沸騰させなかった。処理液体を沸騰させると、花びらの先端部分に空気の入った水泡ができてしまい、後に酒瓶(透明な容器)の中で花が沈まない一因となるからである。
【0042】
〔4〕加熱後の袋を冷蔵庫で24〜48時間保管した。
【0043】
〔5〕花又は花びらを袋の中から取り出した。取り出した花又は花びらを、酒瓶(透明な容器)に入れた。この際、花又は花びらの量は、酒瓶の大きさ、容量等に応じて決定した。
処理液体450mLの内、250〜300mLが、袋に残液体として残った。従って、花又は花びらには150〜200mLが吸収されていた。
なお、花又は花びらに吸収されていない処理液体(残液体)は、花又は花びらを入れた酒瓶に充填するお酒の一部として利用する。
【0044】
〔6〕花又は花びらを入れた酒瓶に、次に示す組成の液体を、花又は花びらの上から適量入れて、キャップをした。この充填用の液体としては、下記のアルコール飲料を用いた。
すなわち、充填用の液体は、醸造用アルコールを水で薄め、果糖ブドウ糖液糖(果糖含有率55%)、クエン酸、花又は花びらに吸収されなかった処理液体(残液体)を加えたものを用いた。
なお、この充填用のアルコール飲料は、処理液体の比重以下である。言い換えれば、処理液体は、充填用のアルコール飲料の比重以上である。
【0045】
〔7〕出来た酒瓶は、殺菌のため、75℃(瓶の中の温度)で5分間、瓶火入れをした。
【0046】
〔8〕その後、粗熱をとるため、30〜40℃の温水に5〜10分間つけて、完成品とした。
【0047】
なお、上記〔4〕の状態、すなわち、真空加熱処理後の花又は花びらが処理液体に浸漬された状態で、花又は花びらを長期間にわたって保管することができる。この状態で保管することにより、製品、すなわち、酒瓶に花又は花びらが入れられ、さらに、充填用のアルコール飲料が充填された状態よりも、保管スペースが小さくて済み、メリットが大きい。この場合には、注文に応じて冷蔵庫に保管されている複合フィルムの袋の中から、花又は花びらを取り出し、必要数だけ容器入りアルコール飲料を製造することができる。
【0048】
2.実施例の効果
本実施例のアルコール飲料添加用の花の製造方法によれば、極めて短時間でアルコール飲料添加用の花を製造することができる。
また、真空加熱処理後の花又は花びらが処理液体に浸漬された状態で、花又は花びらを長期間にわたって保管することができる。
生花として、カレンデュラを用いており、この生花には、油性のカロチノイド色素が含まれている。よって、この製造方法で製造された花にアルコール飲料を充填しても、色素がアルコール飲料にしみ出にくく花本来の色を保つことができる。
加熱の際の処理液体の温度を60℃〜80℃としたので、極めて短時間で、アルコール飲料添加用の花を製造することができる。また、この温度では、花びらの先端部分に空気の入った水泡ができないので、酒瓶の中で花が迅速に沈み、容器入りアルコール飲料の生産効率がよい。
【0049】
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本発明の記述および図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲または本質から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料および実施例を参照したが、本発明をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、アルコール飲料添加用の花の製造、花入りのアルコール飲料の製造に非常に有用であり、生産効率が高く、コスト的に有利である。
【要約】
【課題】短時間でアルコール飲料添加用の花を製造する。
【解決手段】本発明のアルコール飲料添加用の花の製造方法は、アルコール水溶液、及び糖類を含有する処理液体に、生花を浸漬した状態で、減圧下にて加熱して、処理液体を生花に含浸させる。生花は、カロチノイド色素を含有する花、及び/又は白色の花であることが好ましい。減圧下にて加熱する処理液体の温度は、40〜83℃が好ましい。加熱時間は、2〜30分間が好ましい。例えば、この製造方法によれば、数日でアルコール飲料添加用の花を製造することができ、従来の6ヶ月以上を要していた製造方法よりも非常に短時間で、有益である。
【選択図】なし