特許第6338007号(P6338007)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 千住金属工業株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6338007
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】フラックス及びソルダペースト
(51)【国際特許分類】
   B23K 35/363 20060101AFI20180528BHJP
   B23K 35/26 20060101ALN20180528BHJP
   C22C 13/00 20060101ALN20180528BHJP
【FI】
   B23K35/363 C
   B23K35/363 E
   !B23K35/26 310A
   !C22C13/00
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-212941(P2017-212941)
(22)【出願日】2017年11月2日
【審査請求日】2018年2月5日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000199197
【氏名又は名称】千住金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001209
【氏名又は名称】特許業務法人山口国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 善範
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 浩由
(72)【発明者】
【氏名】白鳥 正人
【審査官】 神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−091100(JP,A)
【文献】 特表2017−507026(JP,A)
【文献】 特開2017−177121(JP,A)
【文献】 特開2017−080757(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 35/363、35/26
C22C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイマージアミン、トリマートリアミン、水添ダイマージアミンまたは水添トリマートリアミンのいずれか、あるいは、ダイマージアミン、トリマートリアミン、水添ダイマージアミン及び水添トリマートリアミンの2種以上を含む
ことを特徴とするフラックス。
【請求項2】
ダイマージアミン、トリマートリアミン、水添ダイマージアミンまたは水添トリマートリアミンのいずれか、あるいは、ダイマージアミン、トリマートリアミン、水添ダイマージアミン及び水添トリマートリアミンの2種以上を、合計で0.5wt%以上20wt%以下で含む
ことを特徴とする請求項1に記載のフラックス。
【請求項3】
ダイマージアミンは、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸を変性させた反応物であり、トリマートリアミンは、オレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸を変性させた反応物である
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のフラックス。
【請求項4】
ロジンを30wt%以上60wt%以下、
溶剤を29wt%以上60wt%以下で含む
ことを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のフラックス。
【請求項5】
活性剤としてさらに有機酸を0wt%以上15wt%以下、
有機ハロゲン化合物を0wt%以上5wt%以下、
アミンハロゲン化水素酸塩を0wt%以上5wt%以下で含む
ことを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか1項に記載のフラックス。
【請求項6】
活性剤としてさらに他のアミンを0wt%以上10wt%以下で含む
ことを特徴とする請求項1〜請求項5の何れか1項に記載のフラックス。
【請求項7】
さらにチキソ剤を0wt%以上10wt%以下で含む
ことを特徴とする請求項1〜請求項6の何れか1項に記載のフラックス。
【請求項8】
さらに酸化防止剤を0wt%以上5wt%以下で含む
ことを特徴とする請求項1〜請求項7の何れか1項に記載のフラックス。
【請求項9】
さらに消泡剤を0wt%以上5wt%以下で含む
ことを特徴とする請求項1〜請求項8の何れか1項に記載のフラックス。
【請求項10】
請求項1〜請求項9の何れか1項に記載のフラックスと、金属粉を含む
ことを特徴とするソルダペースト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、はんだ付けに用いられるフラックス及びこのフラックスを用いたソルダペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、はんだ付けに用いられるフラックスは、はんだ及びはんだ付けの対象となる接合対象物の金属表面に存在する金属酸化物を化学的に除去し、両者の境界で金属元素の移動を可能にする効能を持つ。このため、フラックスを使用してはんだ付けを行うことで、はんだと接合対象物の金属表面との間に金属間化合物が形成できるようになり、強固な接合が得られる。
【0003】
ソルダペーストは、はんだ合金の粉末とフラックスとを混合させて得られた複合材料である。ソルダペーストを使用したはんだ付けは、基板の電極等のはんだ付け部にソルダペーストが印刷され、ソルダペーストが印刷されたはんだ付け部に部品が搭載され、リフロー炉と称される加熱炉で基板を加熱してはんだを溶融させて、はんだ付けが行われる。
【0004】
フラックスは、固形の成分と、固形の成分を溶かす溶剤等で構成されているが、はんだ付け時の加熱でフラックス中の溶剤成分等が揮発する。
【0005】
はんだ付け時の加熱でフラックス中の溶剤成分等が揮発すると、気体のフラックスヒュームが発生し、このフラックスヒュームがリフロー炉内の壁面や冷却ゾーン等の加熱時より温度が低くなっている場所に付着して液状化する。
【0006】
このように、リフロー炉内にフラックスが揮発した成分が付着して液状化すると、リフロー炉内を搬送される製品に滴下する虞があるため、定期的な清掃作業が必要となる。そこで、溶剤の揮発を抑制したフラックスが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2015/037107号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
フラックス中の溶剤成分は、適宜揮発性を調製可能であり、加えてリフロー炉内部の金属成分へのダメージは比較的少ない。これに対し、フラックス中の活性剤成分は、はんだ表面の酸化膜を除去する活性を有するとともに、リフロー炉内部等の金属表面への活性も有するため、溶剤の揮発を抑制したフラックスを使用しても、リフロー炉の洗浄頻度が多くなる。
【0009】
本発明は、このような課題を解決するためなされたもので、活性剤成分を難揮発性としたフラックス及びフラックスを用いたソルダペーストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
ダイマー酸を変性させた反応物であるダイマージアミン、トリマー酸を変性させた反応物であるトリマートリアミンは、はんだ表面及び電極を構成する金属表面への活性を有し、かつ、はんだ付けで想定される温度域での難揮発性を有することを見出した。
【0011】
そこで、本発明は、ダイマージアミン、トリマートリアミン、ダイマージアミンに水素を添加した水添物である水添ダイマージアミンまたはトリマートリアミンに水素を添加した水添物である水添トリマートリアミンのいずれか、あるいは、ダイマージアミン、トリマートリアミン、水添ダイマージアミン及び水添トリマートリアミンの2種以上を含むフラックスである。
【0012】
本発明のフラックスは、ダイマージアミン、トリマートリアミン、水添ダイマージアミンまたは水添トリマートリアミンのいずれか、あるいは、ダイマージアミン、トリマートリアミン、水添ダイマージアミン及び水添トリマートリアミンの2種以上を、合計で0.5wt%以上20wt%以下で含むことが好ましい。
【0013】
また、ダイマージアミンは、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸を変性させた反応物であり、トリマートリアミンは、オレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸を変性させた反応物であることが好ましい。
【0014】
更に、本発明のフラックスは、ロジンを30wt%以上60wt%以下、溶剤を29wt%以上60wt%以下で含むことが好ましい。また、活性剤としてさらに有機酸を0wt%以上15wt%以下、有機ハロゲン化合物を0wt%以上5wt%以下、アミンハロゲン化水素酸塩を0wt%以上5wt%以下、他のアミンを0wt%以上10wt%以下で含むことが好ましい。さらにチキソ剤を0wt%以上10wt%以下で含むことが好ましい。また、任意の添加剤としてさらに酸化防止剤を0wt%以上5wt%以下、消泡剤を0wt%以上5wt%以下で含むことが好ましい。
【0015】
また、本発明は、上述したフラックスと、金属粉を含むソルダペーストである。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、ダイマージアミン、トリマートリアミン、水添ダイマージアミンまたは水添トリマートリアミンのいずれか、あるいは、ダイマージアミン、トリマートリアミン、水添ダイマージアミン及び水添トリマートリアミンの2種以上を含むことで、熱負荷の大きい条件下でも、フラックス中の活性剤成分の揮発が抑制され、リフロー炉の内部に付着することを抑制することができる。よって、リフロー炉の洗浄頻度を低く抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<本実施の形態のフラックスの一例>
本実施の形態のフラックスは、ダイマー酸を変性させた反応物であるダイマージアミン、トリマー酸を変性させた反応物であるトリマートリアミン、ダイマージアミンに水素を添加した水添物である水添ダイマージアミンまたはトリマートリアミンに水素を添加した水添物である水添トリマートリアミンのいずれか、あるいは、ダイマージアミン、トリマートリアミン、水添ダイマージアミン及び水添トリマートリアミンの2種以上を含む。
【0018】
本実施の形態のダイマージアミンの原料となるダイマー酸は、オレイン酸とリノール酸の反応物で、炭素数が36の2量体である。また、本実施の形態トリマートリアミンの原料となるトリマー酸は、オレイン酸とリノール酸の反応物で、炭素数が54の3量体である。オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸を変性させた反応物である本実施の形態のダイマージアミン及びオレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸を変性させた反応物である本実施の形態のトリマートリアミンは、はんだ付けで想定される温度域での難揮発性を有し、はんだ付け時に活性剤として機能する。
【0019】
ダイマージアミン、トリマートリアミン、水添ダイマージアミン及び水添トリマートリアミンの添加量が少ないと、揮発性の高い他の活性剤成分を添加する必要があり、難揮発性の効果が得られない。そこで、ダイマージアミン、トリマートリアミン、水添ダイマージアミンまたは水添トリマートリアミンのいずれか、あるいは、ダイマージアミン、トリマートリアミン、水添ダイマージアミン及び水添トリマートリアミンの2種以上を、合計で0.5wt%以上20wt%以下含む。
【0020】
また、本実施の形態のフラックスは、ロジンを30wt%以上60wt%以下、有機酸を0wt%以上15wt%以下、より好ましくは、有機酸を0wt%以上10wt%以下、他のアミンを0wt%以上10wt%以下、有機ハロゲン化合物を0wt%以上5wt%以下、アミンハロゲン化水素酸塩を0wt%以上5wt%以下、溶剤を29wt%以上60wt%以下、チキソ剤を0wt%以上10wt%以下含む。更に、本実施の形態のフラックスは、酸化防止剤を0wt%以上5wt%以下、消泡剤を0wt%以上5wt%以下含む。なお、着色剤をさらに含んでも良い。
【0021】
ロジンとしては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン及びトール油ロジン等の原料ロジン、並びに該原料ロジンから得られる誘導体が挙げられる。該誘導体としては、例えば、精製ロジン、水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、酸変性ロジン、フェノール変性ロジン及びα,β不飽和カルボン酸変性物(アクリル化ロジン、マレイン化ロジン、フマル化ロジン等)、並びに該重合ロジンの精製物、水素化物及び不均化物、並びに該α,β不飽和カルボン酸変性物の精製物、水素化物及び不均化物等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
【0022】
有機酸としては、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、エイコサン二酸、クエン酸、グリコール酸、コハク酸、サリチル酸、ジグリコール酸、ジピコリン酸、ジブチルアニリンジグリコール酸、スベリン酸、セバシン酸、チオグリコール酸、テレフタル酸、ドデカン二酸、パラヒドロキシフェニル酢酸、ピコリン酸、フェニルコハク酸、フタル酸、フマル酸、マレイン酸、マロン酸、ラウリン酸、安息香酸、酒石酸、イソシアヌル酸トリス(2−カルボキシエチル)、グリシン、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジエチルグルタル酸、2−キノリンカルボン酸、3−ヒドロキシ安息香酸、リンゴ酸、p−アニス酸、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等が挙げられる。
【0023】
また、有機酸としては、ダイマー酸、トリマー酸、ダイマー酸に水素を添加した水添物である水添ダイマー酸、トリマー酸に水素を添加した水添物である水添トリマー酸が挙げられる。
【0024】
例えば、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸、オレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸、アクリル酸の反応物であるダイマー酸、アクリル酸の反応物であるトリマー酸、メタクリル酸の反応物であるダイマー酸、メタクリル酸の反応物であるトリマー酸、アクリル酸とメタクリル酸の反応物であるダイマー酸、アクリル酸とメタクリル酸の反応物であるトリマー酸、オレイン酸の反応物であるダイマー酸、オレイン酸の反応物であるトリマー酸、リノール酸の反応物であるダイマー酸、リノール酸の反応物であるトリマー酸、 リノレン酸の反応物であるダイマー酸、リノレン酸の反応物であるトリマー酸、アクリル酸とオレイン酸の反応物であるダイマー酸、アクリル酸とオレイン酸の反応物であるトリマー酸、アクリル酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸、アクリル酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸、アクリル酸とリノレン酸の反応物であるダイマー酸、アクリル酸とリノレン酸の反応物であるトリマー酸、メタクリル酸とオレイン酸の反応物であるダイマー酸、メタクリル酸とオレイン酸の反応物であるトリマー酸、メタクリル酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸、メタクリル酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸、メタクリル酸とリノレン酸の反応物であるダイマー酸、メタクリル酸とリノレン酸の反応物であるトリマー酸、オレイン酸とリノレン酸の反応物であるダイマー酸、オレイン酸とリノレン酸の反応物であるトリマー酸、リノール酸とリノレン酸の反応物であるダイマー酸、リノール酸とリノレン酸の反応物であるトリマー酸、上述した各ダイマー酸の水添物である水添ダイマー酸、上述した各トリマー酸の水添物である水添トリマー酸等が挙げられる。
【0025】
他のアミンとしては、モノエタノールアミン、ジフェニルグアニジン、エチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2′−メチルイミダゾリル−(1′)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2′−ウンデシルイミダゾリル−(1′)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2′−エチル−4′−メチルイミダゾリル−(1′)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2′−メチルイミダゾリル−(1′)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾール、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムクロライド、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン、2,4−ジアミノ−6−ビニル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ビニル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−s−トリアジン、エポキシ−イミダゾールアダクト、2−メチルベンゾイミダゾール、2−オクチルベンゾイミダゾール、2−ペンチルベンゾイミダゾール、2−(1−エチルペンチル)ベンゾイミダゾール、2−ノニルベンゾイミダゾール、2−(4−チアゾリル)ベンゾイミダゾール、ベンゾイミダゾール、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−5′−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2′−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−tert−オクチルフェノール]、6−(2−ベンゾトリアゾリル)−4−tert−オクチル−6′−tert−ブチル−4′−メチル−2,2′−メチレンビスフェノール、1,2,3−ベンゾトリアゾール、1−[N,N−ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、1−[N,N−ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル]メチルベンゾトリアゾール、2,2′−[[(メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)メチル]イミノ]ビスエタノール、1−(1′,2′−ジカルボキシエチル)ベンゾトリアゾール、1−(2,3−ジカルボキシプロピル)ベンゾトリアゾール、1−[(2−エチルヘキシルアミノ)メチル]ベンゾトリアゾール、2,6−ビス[(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)メチル]−4−メチルフェノール、5−メチルベンゾトリアゾール、5−フェニルテトラゾール等が挙げられる。
【0026】
有機ハロゲン化合物としては、trans−2,3−ジブロモ−1,4−ブテンジオール、トリアリルイソシアヌレート6臭化物、1−ブロモ−2−ブタノール、1−ブロモ−2−プロパノール、3−ブロモ−1−プロパノール、3−ブロモ−1,2−プロパンジオール、1,4−ジブロモ−2−ブタノール、1,3−ジブロモ−2−プロパノール、2,3−ジブロモ−1−プロパノール、2,3−ジブロモ−1,4−ブタンジオール、2,3−ジブロモ−2−ブテン−1,4−ジオール等が挙げられる。
【0027】
アミンハロゲン化水素酸塩は、アミンとハロゲン化水素を反応させた化合物であり、アニリン塩化水素、アニリン臭化水素等が挙げられる。アミンハロゲン化水素酸塩のアミンとしては、上述したアミンを用いることができ、エチルアミン、エチレンジアミン、トリエチルアミン、メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等が挙げられ、ハロゲン化水素としては、塩素、臭素、ヨウ素、フッ素の水素化物(塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素、フッ化水素)が挙げられる。また、アミンハロゲン化水素酸塩に代えて、あるいはアミンハロゲン化水素酸塩と合わせてホウフッ化物を含んでも良く、ホウフッ化物としてホウフッ化水素酸等が挙げられる。
【0028】
溶剤としては、水、アルコール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、テルピネオール類等が挙げられる。アルコール系溶剤としてはイソプロピルアルコール、1,2−ブタンジオール、イソボルニルシクロヘキサノール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール、2,3−ジメチル−2,3−ブタンジオール、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)エタン、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2,2′−オキシビス(メチレン)ビス(2−エチル−1,3−プロパンジオール)、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、1,2,6−トリヒドロキシヘキサン、ビス[2,2,2−トリス(ヒドロキシメチル)エチル]エーテル、1−エチニル−1−シクロヘキサノール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、エリトリトール、トレイトール、グアヤコールグリセロールエーテル、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール等が挙げられる。グリコールエーテル系溶剤としては、ヘキシルジグリコール、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、2−メチルペンタン−2,4−ジオール、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。
【0029】
チキソ剤としては、ワックス系チキソ剤、アマイド系チキソ剤が挙げられる。ワックス系チキソ剤としては例えばヒマシ硬化油等が挙げられる。アマイド系チキソ剤としてはラウリン酸アマイド、パルミチン酸アマイド、ステアリン酸アマイド、ベヘン酸アマイド、ヒドロキシステアリン酸アマイド、飽和脂肪酸アマイド、オレイン酸アマイド、エルカ酸アマイド、不飽和脂肪酸アマイド、p−トルエンメタンアマイド、芳香族アマイド、メチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスラウリン酸アマイド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アマイド、飽和脂肪酸ビスアマイド、メチレンビスオレイン酸アマイド、不飽和脂肪酸ビスアマイド、m−キシリレンビスステアリン酸アマイド、芳香族ビスアマイド、飽和脂肪酸ポリアマイド、不飽和脂肪酸ポリアマイド、芳香族ポリアマイド、置換アマイド、メチロールステアリン酸アマイド、メチロールアマイド、脂肪酸エステルアマイド等が挙げられる。酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤等が挙げられる。また、消泡剤としては、アクリルポリマー、ビニルエーテルポリマー、ブタジエンポリマー、シリコーン等が挙げられる。
【0030】
<本実施の形態のソルダペーストの一例>
本実施の形態のソルダペーストは、上述したフラックスと、金属粉を含む。金属粉は、Pbを含まないはんだであることが好ましく、Sn単体、または、Sn−Ag系、Sn−Cu系、Sn−Ag−Cu系、Sn−Bi系、Sn-In系等、あるいは、これらの合金にSb、Bi、In、Cu、Zn、As、Ag、Cd、Fe、Ni、Co、Au、Ge、P等を添加したはんだの粉体で構成される。
【0031】
<本実施の形態のフラックス及びソルダペーストの作用効果例>
ダイマージアミン、トリマートリアミン、水添ダイマージアミン及び水添トリマートリアミンの2種以上を含むフラックス、及び、このフラックスを用いたソルダペーストでは、フラックス中のダイマージアミン、トリマートリアミン、水添ダイマージアミン及び水添トリマートリアミンが、はんだ付けで想定される温度域での耐熱性を有する。これにより、熱負荷の大きいリフロー条件下でも、フラックス中の活性剤成分であるダイマージアミン、トリマートリアミン、水添ダイマージアミン及び水添トリマートリアミンの揮発が抑制され、リフロー炉の内部に付着することを抑制することができる。
【0032】
よって、リフロー炉の洗浄頻度を低く抑えることができる。なお、ダイマージアミン、トリマートリアミン、水添ダイマージアミン、水添トリマートリアミンを含むフラックス残渣は、洗浄により除去することが可能で、洗浄用フラックスに適用可能である。
【0033】
また、ダイマージアミン、トリマートリアミン、水添ダイマージアミン及び水添トリマートリアミンの2種以上を含むフラックスを用いたソルダペーストでは、粘度を低く抑えることができ、かつ、ダマ、析出の発生を抑えることができるので、ソルダペーストの良好な印刷性を得ることができる。
【0034】
更に、ダイマージアミン、トリマートリアミン、水添ダイマージアミン及び水添トリマートリアミンは、リフロー条件下での揮発が抑制され、リフロー終了までフラックス中に存在するため、リフロー中に揮発・分解して活性を失うこともない。よって、ダイマージアミン、トリマートリアミン、水添ダイマージアミン及び水添トリマートリアミンは、はんだ付け時に活性剤として機能し、はんだが良好に濡れ広がり、はんだの濡れ不良の発生を抑制することができる。
【実施例】
【0035】
以下の表1、表2に示す組成で実施例と比較例のフラックスを調合し、このフラックスを使用してソルダペーストを調合して、難揮発性、粘度及びダマ・析出について検証した。なお、表1、表2における組成率は、フラックスの全量を100とした場合のwt(重量)%である。
【0036】
ソルダペーストは、フラックスが11wt%、金属粉が89wt%である。また、ソルダペースト中の金属粉は、Agが3.0wt%、Cuが0.5wt%、残部がSnであるSn−Ag−Cu系のはんだ合金であり、金属粉の粒径の平均はφ20μmである。
【0037】
<難揮発性の評価>
(1)検証方法
難揮発性の評価は、TG法(サーマルグラビメトリ法)による試験(JIS K 0129)を行った。TG法による試験は、各実施例及び各比較例に記載のフラックスをアルミパンに10mg詰めて、ULVAC社製、TGD9600を用いて25℃から250℃ピーク、昇温速度1℃/secにて加熱した。
【0038】
(2)判定基準
〇:重量の減損率−フラックス中の溶剤含有量≦15%
×:重量の減損率−フラックス中の溶剤含有量>15%
【0039】
<粘度の評価>
(1)検証方法
粘度の評価は、各実施例及び各比較例に記載のフラックスと上述した金属粉を混合させたソルダペーストの粘度を、株式会社マルコム製、PCU−205を用いて測定した。試験条件は、JIS Z 3284−3に準拠した。
【0040】
(2)判定基準
〇:粘度が350Pa*s以下
×:粘度が350Pa*s超
【0041】
<ダマ・析出の評価>
(1)検証方法
ダマ・析出の評価試験は、各実施例及び各比較例に記載のフラックスと上述した金属粉を混合させたソルダペーストを、JIS Z 3284−3に記載の所定のパターンでソルダペーストの印刷部が形成されたステンレス製のマスクを使用して、縦50mm×横50mm×厚さ0.5mmのBare−Cu板に印刷し、目視によりダマ、析出の有無を確認した。
【0042】
(2)判定基準
〇:ダマ、析出の何れも確認されなかった
×:ダマ、析出のどちらかまたは両方が確認された
【0043】
なお、上述したダマ・析出の評価試験でBare−Cu板に印刷した各実施例のソルダペーストを使用して、はんだの濡れ広がりの評価試験を行った。
【0044】
上述したマスクに設けられた印刷部は四角形の開口で、大きさは3.0mm×1.5mmとなっている。印刷部は、同じ大きさの複数の開口が間隔を異ならせて並び、開口の間隔は0.2−0.3−0.4−0.5−0.6−0.7−0.8−0.9−1.0−1.1−1.2mmとなっている。
【0045】
ソルダペーストの印刷後、マスクを取り除き、リフロー前に、並列する印刷部の最小間隔である0.2mmの箇所でソルダペーストが接触していないことを確認し、リフローを行う。リフローの条件は、N雰囲気下に190℃で120secの予備加熱を行った後、昇温速度を1℃/secとして190℃から260℃まで温度を上昇させて本加熱を行う。
【0046】
以上のはんだの濡れ広がりの評価の結果、各実施例のフラックスを使用したソルダペーストでは、はんだが良好に濡れ広がった。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
本発明では、実施例1〜実施例4に示すように、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸を変性させた反応物であるダイマージアミン、オレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸を変性させた反応物であるトリマートリアミン、水添ダイマージアミンまたは水添トリマートリアミンのいずれかを5wt%含むフラックスでは、難揮発性、粘度上昇の抑制及びダマ・析出の抑制に対して十分な効果が得られた。なお、ダイマージアミン、トリマートリアミン、水添ダイマージアミン及び水添トリマートリアミンの2種以上を合計で5wt%含むことでも、難揮発性、粘度上昇の抑制及びダマ・析出の抑制に対して十分な効果が得られた。
【0050】
また、実施例5に示すように、ダイマージアミンを10wt%含むフラックスでも、難揮発性、粘度上昇の抑制及びダマ・析出の抑制に対して十分な効果が得られた。
【0051】
これに対し、比較例1及び比較例2に示すように、ダイマージアミン、トリマートリアミン、水添ダイマージアミンまたは水添トリマートリアミンの何れも含まず、分子量の小さいアミンを含むフラックスでは、粘度上昇を抑制する効果は得られるが、難揮発性及びダマ・析出の抑制に対して十分な効果が得られなかった。
【0052】
また、比較例3及び比較例4に示すように、ダイマージアミン、トリマートリアミン、水添ダイマージアミンまたは水添トリマートリアミンの何れも含まず、分子量の大きいアミンを含むフラックスでは、分子量の増加に伴い難揮発性の効果が得られる傾向がみられるが、粘度上昇の抑制及びダマ・析出の抑制に対して十分な効果が得られなかった。
【0053】
更に、比較例5に示すように、ダイマージアミン、トリマートリアミン、水添ダイマージアミンまたは水添トリマートリアミンの何れも含まず、分子量の小さいアミンの添加量を増やしたフラックスでは、アミンの添加量の増加に伴い、粘度上昇の抑制及びダマ・析出の抑制に対しては効果が得られるが、難揮発性に対して十分な効果が得られなかった。
【0054】
更に、比較例6に示すように、ダイマージアミン、トリマートリアミン、水添ダイマージアミンまたは水添トリマートリアミンの何れも含まず、他のアミンを含まないフラックスでは、粘度上昇の抑制及びダマ・析出の抑制に対しては効果が得られるが、難揮発性に対して十分な効果が得られなかった。
【0055】
また、本発明で規定された範囲内でロジンを含むことで、難揮発性、粘度上昇の抑制及びダマ・析出の抑制の効果が得られ、実施例6〜実施例8に示すように、ロジンの種類を変える、また、複数種類のロジンを組み合せた場合でも、難揮発性、粘度上昇の抑制及びダマ・析出の抑制の効果が得られた。
【0056】
更に、実施例9に示すように、ダイマージアミンを20wt%含むことで、有機酸を含まなくても、難揮発性、粘度上昇の抑制及びダマ・析出の抑制の効果が得られた。これに対し、本発明で規定された範囲内で有機酸を含むことで、難揮発性、粘度上昇の抑制及びダマ・析出の抑制の効果が得られ、実施例10〜実施例12に示すように、有機酸の種類を変える、また、有機酸の添加量を変えた場合でも、難揮発性、粘度上昇の抑制及びダマ・析出の抑制の効果が得られた。
【0057】
更に、本発明で規定された範囲内で他のアミンを含むことで、難揮発性、粘度上昇の抑制及びダマ・析出の抑制の効果が得られ、実施例13に示すように、ダイマージアミンを0.5wt%含み、他のアミンを2wt%含むことでも、難揮発性、粘度上昇の抑制及びダマ・析出の抑制の効果が得られた。更に、実施例14〜実施例16に示すように、アミンの種類、添加量を変えても、難揮発性、粘度上昇の抑制及びダマ・析出の抑制の効果が得られた。
【0058】
更に、実施例17に示すように、本発明で規定された範囲内でダイマージアミンを含むことで、有機ハロゲン化合物を含まなくても、難揮発性、粘度上昇の抑制及びダマ・析出の抑制の効果が得られた。これに対し、本発明で規定された範囲内で有機ハロゲン化合物を含むことで、難揮発性、粘度上昇の抑制及びダマ・析出の抑制の効果が得られ、実施例18に示すように、有機ハロゲン化合物を5wt%含んでも、難揮発性、粘度上昇の抑制及びダマ・析出の抑制の効果難揮発性、粘度上昇の抑制及びダマ・析出の抑制の効果の効果が得られた。また、実施例19に示すように、有機ハロゲン化合物の種類を変えても、難揮発性、粘度上昇の抑制及びダマ・析出の抑制の効果の効果が得られた。
【0059】
更に、本発明で規定された範囲内でアミンハロゲン化水素酸塩を含むことで、難揮発性、粘度上昇の抑制及びダマ・析出の抑制の効果が得られ、実施例20に示すように、アミンハロゲン化水素酸塩を1wt%含んでも、難揮発性、粘度上昇の抑制及びダマ・析出の抑制が得られ、実施例21に示すように、アミンハロゲン化水素酸塩を5wt%含んでも、難揮発性、粘度上昇の抑制及びダマ・析出の抑制の効果が得られた。また、本発明で規定された範囲内で酸化防止剤、消泡剤を含むことでも、難揮発性、粘度上昇の抑制及びダマ・析出の抑制の効果が得られ、実施例22に示すように、酸化防止剤を3wt%含んでも、難揮発性、粘度上昇の抑制及びダマ・析出の抑制の効果が得られた。また、実施例23に示すように、消泡剤を2wt%含んでも、難揮発性、粘度上昇の抑制及びダマ・析出の抑制の効果が得られた。
【0060】
以上のことから、ダイマー酸を変性させた反応物であるダイマージアミン、トリマー酸を変性させた反応物であるトリマートリアミン、水添ダイマージアミンまたは水添トリマートリアミンのいずれか、あるいは、ダイマージアミン、トリマートリアミン、水添ダイマージアミン及び水添トリマートリアミンの2種以上を、合計で0.5wt%以上20wt%以下、ロジンを30wt%以上60wt%以下、有機酸を0wt%以上15wt%以下、より好ましくは、有機酸を0wt%以上10wt%以下、アミンを0wt%以上10wt%以下、有機ハロゲン化合物を0wt%以上5wt%以下、アミンハロゲン化水素酸塩を0wt%以上5wt%以下、溶剤を29wt%以上60wt%以下、チキソ剤を0wt%以上10wt%以下、酸化防止剤を0wt%以上5wt%以下、消泡剤を0wt%以上5wt%以下含むフラックス、及びこのフラックスを用いたソルダペーストでは、熱負荷の大きい条件下でもフラックス中の活性剤成分の揮発が抑制され、リフロー炉の内部に付着することを抑制することができた。
【0061】
また、ダイマージアミン、トリマートリアミン、水添ダイマージアミン及び水添トリマートリアミンの2種以上を含むフラックスを用いたソルダペーストでは、粘度を低く抑えることができ、かつ、ダマ、析出の発生を抑えることができ、ソルダペーストの良好な印刷性を得ることができた。
【0062】
更に、リフロー条件下でダイマージアミン、トリマートリアミン、水添ダイマージアミン及び水添トリマートリアミンの揮発が抑制されることで、ダイマージアミン、トリマートリアミン、水添ダイマージアミン及び水添トリマートリアミンがはんだ付け時に活性剤として機能し、はんだが良好に濡れ広がり、はんだの濡れ不良の発生を抑制することができた。
【要約】
【課題】活性剤成分を難揮発性としたフラックス及びフラックスを用いたソルダペーストを提供する。
【解決手段】フラックスは、ダイマージアミン、トリマートリアミン、水添ダイマージアミンまたは水添トリマートリアミンのいずれか、あるいは、ダイマージアミン、トリマートリアミン、水添ダイマージアミン及び水添トリマートリアミンの2種以上を含む。
【選択図】無し