【実施例】
【0035】
以下の表1、表2に示す組成で実施例と比較例のフラックスを調合し、このフラックスを使用してソルダペーストを調合して、難揮発性、粘度及びダマ・析出について検証した。なお、表1、表2における組成率は、フラックスの全量を100とした場合のwt(重量)%である。
【0036】
ソルダペーストは、フラックスが11wt%、金属粉が89wt%である。また、ソルダペースト中の金属粉は、Agが3.0wt%、Cuが0.5wt%、残部がSnであるSn−Ag−Cu系のはんだ合金であり、金属粉の粒径の平均はφ20μmである。
【0037】
<難揮発性の評価>
(1)検証方法
難揮発性の評価は、TG法(サーマルグラビメトリ法)による試験(JIS K 0129)を行った。TG法による試験は、各実施例及び各比較例に記載のフラックスをアルミパンに10mg詰めて、ULVAC社製、TGD9600を用いて25℃から250℃ピーク、昇温速度1℃/secにて加熱した。
【0038】
(2)判定基準
〇:重量の減損率−フラックス中の溶剤含有量≦15%
×:重量の減損率−フラックス中の溶剤含有量>15%
【0039】
<粘度の評価>
(1)検証方法
粘度の評価は、各実施例及び各比較例に記載のフラックスと上述した金属粉を混合させたソルダペーストの粘度を、株式会社マルコム製、PCU−205を用いて測定した。試験条件は、JIS Z 3284−3に準拠した。
【0040】
(2)判定基準
〇:粘度が350Pa*s以下
×:粘度が350Pa*s超
【0041】
<ダマ・析出の評価>
(1)検証方法
ダマ・析出の評価試験は、各実施例及び各比較例に記載のフラックスと上述した金属粉を混合させたソルダペーストを、JIS Z 3284−3に記載の所定のパターンでソルダペーストの印刷部が形成されたステンレス製のマスクを使用して、縦50mm×横50mm×厚さ0.5mmのBare−Cu板に印刷し、目視によりダマ、析出の有無を確認した。
【0042】
(2)判定基準
〇:ダマ、析出の何れも確認されなかった
×:ダマ、析出のどちらかまたは両方が確認された
【0043】
なお、上述したダマ・析出の評価試験でBare−Cu板に印刷した各実施例のソルダペーストを使用して、はんだの濡れ広がりの評価試験を行った。
【0044】
上述したマスクに設けられた印刷部は四角形の開口で、大きさは3.0mm×1.5mmとなっている。印刷部は、同じ大きさの複数の開口が間隔を異ならせて並び、開口の間隔は0.2−0.3−0.4−0.5−0.6−0.7−0.8−0.9−1.0−1.1−1.2mmとなっている。
【0045】
ソルダペーストの印刷後、マスクを取り除き、リフロー前に、並列する印刷部の最小間隔である0.2mmの箇所でソルダペーストが接触していないことを確認し、リフローを行う。リフローの条件は、N
2雰囲気下に190℃で120secの予備加熱を行った後、昇温速度を1℃/secとして190℃から260℃まで温度を上昇させて本加熱を行う。
【0046】
以上のはんだの濡れ広がりの評価の結果、各実施例のフラックスを使用したソルダペーストでは、はんだが良好に濡れ広がった。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
本発明では、実施例1〜実施例4に示すように、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸を変性させた反応物であるダイマージアミン、オレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸を変性させた反応物であるトリマートリアミン、水添ダイマージアミンまたは水添トリマートリアミンのいずれかを5wt%含むフラックスでは、難揮発性、粘度上昇の抑制及びダマ・析出の抑制に対して十分な効果が得られた。なお、ダイマージアミン、トリマートリアミン、水添ダイマージアミン及び水添トリマートリアミンの2種以上を合計で5wt%含むことでも、難揮発性、粘度上昇の抑制及びダマ・析出の抑制に対して十分な効果が得られた。
【0050】
また、実施例5に示すように、ダイマージアミンを10wt%含むフラックスでも、難揮発性、粘度上昇の抑制及びダマ・析出の抑制に対して十分な効果が得られた。
【0051】
これに対し、比較例1及び比較例2に示すように、ダイマージアミン、トリマートリアミン、水添ダイマージアミンまたは水添トリマートリアミンの何れも含まず、分子量の小さいアミンを含むフラックスでは、粘度上昇を抑制する効果は得られるが、難揮発性及びダマ・析出の抑制に対して十分な効果が得られなかった。
【0052】
また、比較例3及び比較例4に示すように、ダイマージアミン、トリマートリアミン、水添ダイマージアミンまたは水添トリマートリアミンの何れも含まず、分子量の大きいアミンを含むフラックスでは、分子量の増加に伴い難揮発性の効果が得られる傾向がみられるが、粘度上昇の抑制及びダマ・析出の抑制に対して十分な効果が得られなかった。
【0053】
更に、比較例5に示すように、ダイマージアミン、トリマートリアミン、水添ダイマージアミンまたは水添トリマートリアミンの何れも含まず、分子量の小さいアミンの添加量を増やしたフラックスでは、アミンの添加量の増加に伴い、粘度上昇の抑制及びダマ・析出の抑制に対しては効果が得られるが、難揮発性に対して十分な効果が得られなかった。
【0054】
更に、比較例6に示すように、ダイマージアミン、トリマートリアミン、水添ダイマージアミンまたは水添トリマートリアミンの何れも含まず、他のアミンを含まないフラックスでは、粘度上昇の抑制及びダマ・析出の抑制に対しては効果が得られるが、難揮発性に対して十分な効果が得られなかった。
【0055】
また、本発明で規定された範囲内でロジンを含むことで、難揮発性、粘度上昇の抑制及びダマ・析出の抑制の効果が得られ、実施例6〜実施例8に示すように、ロジンの種類を変える、また、複数種類のロジンを組み合せた場合でも、難揮発性、粘度上昇の抑制及びダマ・析出の抑制の効果が得られた。
【0056】
更に、実施例9に示すように、ダイマージアミンを20wt%含むことで、有機酸を含まなくても、難揮発性、粘度上昇の抑制及びダマ・析出の抑制の効果が得られた。これに対し、本発明で規定された範囲内で有機酸を含むことで、難揮発性、粘度上昇の抑制及びダマ・析出の抑制の効果が得られ、実施例10〜実施例12に示すように、有機酸の種類を変える、また、有機酸の添加量を変えた場合でも、難揮発性、粘度上昇の抑制及びダマ・析出の抑制の効果が得られた。
【0057】
更に、本発明で規定された範囲内で他のアミンを含むことで、難揮発性、粘度上昇の抑制及びダマ・析出の抑制の効果が得られ、実施例13に示すように、ダイマージアミンを0.5wt%含み、他のアミンを2wt%含むことでも、難揮発性、粘度上昇の抑制及びダマ・析出の抑制の効果が得られた。更に、実施例14〜実施例16に示すように、アミンの種類、添加量を変えても、難揮発性、粘度上昇の抑制及びダマ・析出の抑制の効果が得られた。
【0058】
更に、実施例17に示すように、本発明で規定された範囲内でダイマージアミンを含むことで、有機ハロゲン化合物を含まなくても、難揮発性、粘度上昇の抑制及びダマ・析出の抑制の効果が得られた。これに対し、本発明で規定された範囲内で有機ハロゲン化合物を含むことで、難揮発性、粘度上昇の抑制及びダマ・析出の抑制の効果が得られ、実施例18に示すように、有機ハロゲン化合物を5wt%含んでも、難揮発性、粘度上昇の抑制及びダマ・析出の抑制の効果難揮発性、粘度上昇の抑制及びダマ・析出の抑制の効果の効果が得られた。また、実施例19に示すように、有機ハロゲン化合物の種類を変えても、難揮発性、粘度上昇の抑制及びダマ・析出の抑制の効果の効果が得られた。
【0059】
更に、本発明で規定された範囲内でアミンハロゲン化水素酸塩を含むことで、難揮発性、粘度上昇の抑制及びダマ・析出の抑制の効果が得られ、実施例20に示すように、アミンハロゲン化水素酸塩を1wt%含んでも、難揮発性、粘度上昇の抑制及びダマ・析出の抑制が得られ、実施例21に示すように、アミンハロゲン化水素酸塩を5wt%含んでも、難揮発性、粘度上昇の抑制及びダマ・析出の抑制の効果が得られた。また、本発明で規定された範囲内で酸化防止剤、消泡剤を含むことでも、難揮発性、粘度上昇の抑制及びダマ・析出の抑制の効果が得られ、実施例22に示すように、酸化防止剤を3wt%含んでも、難揮発性、粘度上昇の抑制及びダマ・析出の抑制の効果が得られた。また、実施例23に示すように、消泡剤を2wt%含んでも、難揮発性、粘度上昇の抑制及びダマ・析出の抑制の効果が得られた。
【0060】
以上のことから、ダイマー酸を変性させた反応物であるダイマージアミン、トリマー酸を変性させた反応物であるトリマートリアミン、水添ダイマージアミンまたは水添トリマートリアミンのいずれか、あるいは、ダイマージアミン、トリマートリアミン、水添ダイマージアミン及び水添トリマートリアミンの2種以上を、合計で0.5wt%以上20wt%以下、ロジンを30wt%以上60wt%以下、有機酸を0wt%以上15wt%以下、より好ましくは、有機酸を0wt%以上10wt%以下、アミンを0wt%以上10wt%以下、有機ハロゲン化合物を0wt%以上5wt%以下、アミンハロゲン化水素酸塩を0wt%以上5wt%以下、溶剤を29wt%以上60wt%以下、チキソ剤を0wt%以上10wt%以下、酸化防止剤を0wt%以上5wt%以下、消泡剤を0wt%以上5wt%以下含むフラックス、及びこのフラックスを用いたソルダペーストでは、熱負荷の大きい条件下でもフラックス中の活性剤成分の揮発が抑制され、リフロー炉の内部に付着することを抑制することができた。
【0061】
また、ダイマージアミン、トリマートリアミン、水添ダイマージアミン及び水添トリマートリアミンの2種以上を含むフラックスを用いたソルダペーストでは、粘度を低く抑えることができ、かつ、ダマ、析出の発生を抑えることができ、ソルダペーストの良好な印刷性を得ることができた。
【0062】
更に、リフロー条件下でダイマージアミン、トリマートリアミン、水添ダイマージアミン及び水添トリマートリアミンの揮発が抑制されることで、ダイマージアミン、トリマートリアミン、水添ダイマージアミン及び水添トリマートリアミンがはんだ付け時に活性剤として機能し、はんだが良好に濡れ広がり、はんだの濡れ不良の発生を抑制することができた。