(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
充放電を行う電力貯蔵装置と、前記電力貯蔵装置の充放電による入出力を電力系統と前記電力貯蔵装置の間で相互に変換する電力変換器と、前記電力変換器の変換動作を制御し、前記電力系統に連系する変動電源と前記電力貯蔵装置との合成出力を合成出力目標値に基づいて制御する制御装置と、を備えた電力貯蔵装置を用いた電力安定化システムであり、
前記制御装置は、前記合成出力の長周期変動を緩和するための長周期変動緩和制御部と、少なくとも長周期変動緩和指定時間帯の開始時点での制御点となる合成出力準備値を計算する合成出力準備値計算部と、前記合成出力準備値を前記合成出力目標値に反映させる合成出力準備値設定部と、を具備し、
前記合成出力準備値計算部は、前記長周期変動緩和指定時間帯前の準備時間帯の残り時間のみ、又は前記長周期変動緩和指定時間帯前の準備時間帯の残り時間及び前記長周期変動緩和指定時間帯の残り時間を用いて、前記合成出力準備値を計算することを特徴とする電力安定化システム。
前記合成出力準備値設定部は、前記変動電源の発電有効電力と前記合成出力目標値をスイッチで切り替えることにより前記合成出力目標値を前記合成出力準備値へ移行させることを特徴とする請求項1記載の電力安定化システム。
前記合成出力準備値設定部は、前記合成出力準備値を上限および、または下限に設定したリミッタを前記変動電源の発電有効電力に掛けることにより、前記合成出力目標値を前記合成出力準備値まで移行させることを特徴とする請求項1記載の電力安定化システム。
前記合成出力準備値設定部は、前記合成出力目標値と前記合成出力準備値との差分をフィードバック制御し、前記合成出力目標値を前記合成出力準備値へ移行させることを特徴とする請求項1記載の電力安定化システム。
電力貯蔵装置を用いた電力安定化システムにおいて、前記電力貯蔵装置の充放電による入出力を電力系統と前記電力貯蔵装置の間で相互に変換する電力変換器を制御して、前記電力系統に連系する変動電源と前記電力貯蔵装置との合成出力を合成出力目標値に基づいて制御する制御装置であって、
前記制御装置は、前記合成出力の長周期変動を緩和するための長周期変動緩和制御部と、長周期変動緩和指定時間帯の開始時点での制御点である合成出力準備値を計算する合成出力準備値計算部と、前記合成出力準備値を前記合成出力目標値に反映させる合成出力準備値設定部とを有し、
前記合成出力準備値計算部は、前記長周期変動緩和指定時間帯前の準備時間帯の残り時間のみ、又は前記長周期変動緩和指定時間帯前の準備時間帯の残り時間及び前記長周期変動緩和指定時間帯の残り時間を用いて、前記合成出力準備値を計算することを特徴とする制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、変動電源および電力貯蔵装置の合成出力制御による長周期変動緩和を目的としている。長周期変動緩和のため合成出力制御が制約を受ける時間帯(以下、長周期変動緩和指定時間帯と呼ぶ)は
図7に示す3つのパターンが考えられる。まず1つ目は需要が増えていく時間帯において、変動電源には“減少不可“の制約が課せられる。それは、需要が増えていくと予想される時間帯において変動電源が減少してしまうと需要と供給のバランスが崩れ、停電などの問題が起こってしまうためである。2つ目は、需要が一定であることが見込まれる時間帯においては、変動電源には”増加・減少不可“の制約が課せられる。3つ目は、需要が減少していくと見込まれる時間帯においては、変動電源には”増加不可“の制約が課せられる。この減少不可、増加不可、増減不可の時間帯の事を総称して長周期変動緩和指定時間帯(単に指定時間帯と略す場合もある)と定義する。本発明者らは、長周期変動緩和指定時間帯において、変動電源および電力貯蔵装置の合成出力の制御をどのように実現すべきかについて開発を行った。その制御内容については特願2016−167802にて出願している。
【0013】
長周期変動緩和指定時間帯の間では、変動電源および電力貯蔵装置の合成出力の減少や増加が制限されてしまうため制御に自由度が少ない。そのため、長周期変動緩和指定時間帯に入る前、またはその入り方について最適な制御の状態となるよう開発を行った。今回の発明の技術的特徴である4点について
図8に示す。1つ目は長周期変動緩和指定時間帯に入る時の制御点を準備値という最適値にする点である。2つ目はその準備値をどのように算出するかという点、3つ目は制御点をどのように準備値へ移行するかいう点、4つ目は長周期変動緩和指定時間帯における制御についての工夫である。詳細は以下に述べる。
【0014】
(第1の実施の形態)
まず
図1を用いて第1の実施の形態となる電力安定化システムの構成を説明する。
本実施の形態の電力安定化システム10は、電力貯蔵装置11、電力変換器12及び制御装置13を備える。電力変換器12が変圧器14を介して電力系統15に接続される。また、風力発電機16が変圧器17を介して電力系統15に接続される。制御装置13は、風力発電機16の出力である有効電力PGを入力とする構成、又は発電所出力と電力貯蔵装置11の充放電電力を合成した合成出力を入力とする構成のいずれの構成でも良い。以下の説明では、風力発電機16の出力である発電所出力を入力する構成について説明する。
【0015】
電力貯蔵装置11は、例えばフライホイール、二次電池、又はキャパシタ等で構成される。電力変換器12は、制御装置13から与えられる電力変換器出力指令値PO(ここでは、電力貯蔵装置11から電力を放出する方向を、“正”とする)に基づいて、電力系統15と電力貯蔵装置11との間で電力の授受を行う。電力貯蔵装置11がフライホイールである場合は、フライホイール側の交流電力と電力系統15側の交流電力を双方向に変換する。電力貯蔵装置11が二次電池又はキャパシタである場合には、二次電池又はキャパシタ側の直流電力と電力系統15側の交流電力を双方向に変換する。
【0016】
制御装置13は、有効電力検出部21、発電量予測部45、合成出力準備値計算部24、合成出力準備値設定部22、長周期変動緩和制御部23、長周期変動緩和制御部23の出力である合成出力目標値PAから有効電力PGを減算して電力貯蔵装置11の出力指令を出力する減算要素44、電力変換器制御部27を備える。
【0017】
有効電力検出部21は、風力発電機16の出力端の電圧及び電流値に基づいて、発電所出力となる風力発電機21の有効電力PGを検出する。風力発電機が複数台ある場合は、複数の風力発電機から出力される電線の電圧及び電流値に基づいて風力発電全体の有効電力PGを検出する。またはそれぞれの風力発電機の有効電力を検出した上で総和を取っても良い。
【0018】
発電量予測部45は、当該発電所の将来の発電量を予測する計算部である。例えば外部から取得される一般的な気象予報データや近傍の他の発電所の発電データを入力とし、数値気象モデルや統計モデルを用いて予測値を算出する。算出する発電量予測値PG−qは指定時間帯の間の発電電力量(kWh)、その時間平均値(kWh/h)など指定時間帯の発電電力量に係る予測値である。発電量予測値PG−qは或る時刻または現在から或る一定時間経過後における発電電力(kW)の予測値であっても良い。時刻を指定する場合、例えば長周期変動の緩和が求められる指定時間帯の終了時刻であっても良いし、指定時間帯の開始と終了の中間であっても良い。入手可能な気象予報データの形式の制約から選定すれば良い。
【0019】
また発電量予測値PG−qを計算するときに風力発電機の出力や風力発電機に設置された風速計などの計測値をさらに用いることにより発電量予測値を補正する予測方法を用いても良い。
【0020】
合成出力準備値計算部24は、長周期変動緩和指定時間帯の開始時刻における適切な合成出力の値として合成出力準備値PG−pを計算する。
図8に示した本発明の技術的特徴の2つ目であるが、大きく分けると2通りの計算方法がある。また、本実施の形態とは異なる合成出力準備値PG−pの計算方法は、第4の実施の形態において詳述する。
【0021】
1つ目は、現在の有効電力PGを使う方法であり、電力貯蔵装置11の必要容量をなるべく小さくするための合成出力準備値算出方法として、現在の発電出力(例えば有効電力PG)から或る正の値ΔPを減算することによって合成出力準備値PG−pを決定することができる。
PG−p=PG−ΔP
【0022】
あるいは有効電力PGに1よりも小さい係数M(例えば0.5〜0.9など)を乗算することによって合成出力準備値PG−pを決定することができる。
PG−p=PG×M
【0023】
これにより、必ず発電出力(例えば有効電力PG)よりも小さくなるように合成出力準備値PG−pが決定される。
ただし、1つ目の発電所出力を用いる方法では、発電所出力(例えば有効電力PG)に乗算する係数Mを小さくすると、合成出力が小さくなり過ぎて充電電力が増大し、電力貯蔵装置11に充電しきれない電力が生じる、あるいは電力貯蔵装置11の充電電力量が上限に達する可能性が有る。その結果、風力発電機16の出力を絞ることによる発電電力の機会損失(以下、逸失電力)が増大するデメリットがある。
【0024】
そこで、2つ目の方法として、発電所出力に直接係数を乗算して合成出力準備値を発電所出力の現在値(例えば有効電力PG)より常に小さくするのではなく、将来の出力変動(発電量予測値)に合わせて適切に合成出力準備値を決定する方法を考えた。
【0025】
つまり、2つ目の発電量予測値を用いる方法では合成出力準備値を発電量予測部45で計算される発電量予測値PG−qによって決定する方法である。例えば合成出力準備値PG−pを発電量予測値PG−qと等しい値に決定する。この計算方法によると、所定期間経過後の発電量予測値が現在の発電所出力よりも小さく、所定量以上の放電が予測される場合、1つ目の方法と同様に合成出力が低下し、放電を抑制する方向に作用する。所定期間経過後の発電量予測値が現在の発電所出力よりも大きく、所定量以上の充電が予測される場合、発電量予測値に応じて合成出力準備値を決定すると、1つ目の方法とは異なり合成出力が上昇し、充電を抑制する方向に作用する。発電所出力を用いる1つ目の方法では単に現在値より小さくするような合成出力準備値しか設定できなかったが、発電量予測値を用いる方法では、現在値よりも大きくなるような合成出力準備値も設定することができる。このことは、発電量が増えていくと予測される場合は放電する必要がないため、合成出力を抑制する必要がないためであり、そのことで逸失電力を少なくすることができる。
2つ目の方法では、将来の出力変動に合わせて適切に合成出力準備値を決定するため、電力貯蔵装置11の過度な充電やそれに伴う逸失電力の増大を抑制しつつ、必要容量を抑制することができる。例えば、所定期間経過後の発電量予測値が現在の発電所出力よりも小さい場合、1つ目の方法と同様に合成出力が低下し、放電を抑制する方向に作用する。所定期間経過後の発電量予測値が現在の発電所出力よりも大きい場合、1つ目の方法とは異なり合成出力が上昇し、充電を抑制する方向に作用する。
【0026】
なお、2つ目の方法について合成出力準備値PG−pを発電量予測値PG−qと等しい値に決定するとしたが、合成出力準備値PG−pを有効電力PGと発電量予測値PG−qとのいずれか小さい方としても良い。この場合、たとえ発電量予測値PG−qが実際の発電量よりも大きかった場合であっても、合成出力準備値は現在の発電出力である有効電力PGを用いるため、仮に発電電力が小さくなっても放電量の増大による電力貯蔵装置11の貯蔵電力量の不足を回避しやすく、仮に発電電力が大きくなっても発電電力を抑制することで合成出力を抑制できる。
【0027】
また発電量予測は信頼区間で推定し、推定された発電量予測の中央値よりも小さい値を合成出力準備値として採用しても良い。一般に予測値と真値には誤差があり、その誤差の分布は正規分布に従わない。例えば、時間当たりの発電量予測値は1MWh/hであるが、0.5MWh/h〜1.2MWh/hまでの区間を取り得ると仮定する。その場合、0.5MWh/hを合成出力準備値として採用すれば、予測誤差があっても電力貯蔵装置11の容量が不足しにくくなる。一方、合成出力準備値を0.5MWh/hと小さい値にし、かつ実際には発電量が1.2MWh/hと大きい値になる場合、風力発電機16の逸失電力の増大が懸念される。逸失電力の低減を優先する場合、発電量予測の中央値よりも大きい値を合成出力準備値として採用しても良い。
【0028】
合成出力準備値設定部22は、合成出力準備値計算部24において計算した合成出力準備値を用いて、変動電源の有効電力PGを加工する。これは、
図8における、3つ目の発明の特徴部分であり、どのように合成出力準備値に合成出力目標値を移行させるかに関わる。詳しくは
図2を用いて後述する。
【0029】
長周期変動緩和制御部23は、合成出力準備値設定部22の出力を入力とし、長周期変動緩和制御を行うための合成出力目標値を出力する。長周期変動緩和指定時間の減少不可、増加不可、増減不可の3パターンを実現するために、リミッタで構成されている。減少不可の場合は、リミッタの下限値にある設定値を設定することで、合成出力を減少させない制御を実現できる。また、増加不可の場合は、リミッタの上限値にある設定値を設定することで、合成出力を増加させない制御を実現できる。増減不可の場合はリミッタの上下限値にある値を設定することで合成出力を増減させない制御を実現することができる。
【0030】
また、増減不可の場合のみ実現するには、ホールド回路を用いて、合成出力目標値をある一定の値に保持しても良い。
【0031】
電力変換器制御部27は、長周期変動緩和制御部23から出力される合成出力目標値PAと有効電力PGとの差分に応じて電力変換器出力指令値POを生成し、電力変換器出力指令値POに基づいて電力変換器12を制御し、電力貯蔵装置11に電力を充放電させる。
【0032】
次に、合成出力準備値を合成出力目標値の計算に反映させる合成出力準備設定部22について
図2を参照しながら説明する。
【0033】
合成出力準備値設定部22のバリエーションの1つである
図2Aはスイッチで構成されており、長周期変動緩和指定時間帯の開始時刻において、合成出力準備値PG−pが発電有効電力PGの代わりにスイッチされる。このことにより、長周期変動緩和指定時間帯の開始時刻から、最も良い制御点である合成出力準備値での制御を開始することができる。その後は、通常の長周期変動緩和制御を実現するために、スイッチは短時間のうちに元の有効電力PGに入り直させる。
【0034】
合成出力準備値設定部22のバリエーションの1つである
図2Bは、リミッタで構成されており、長周期変動緩和指定時間帯の開始時刻において、リミッタの上限値に合成出力準備値PG−pを設定し、合成出力目標値が合成出力準備値PG−pより大きくならないように制限する。あるいは
図2Bのリミッタの下限値に合成出力準備値PG−pを設定し、合成出力目標値が合成出力準備値PG−pより小さくならないように制限する。前者の合成出力準備値を上限値に設定する狙いは、長周期変動緩和指定時間帯における放電電力及び放電電力量の超過を防ぐためである。つまり、長周期変動緩和指定時間帯において風力発電機16の出力が大きく低下すると、合成出力を適正に維持するために電力貯蔵装置の放電電力・放電電力量が大きくなる。その結果、長周期変動緩和指定時間帯の開始時刻において電力貯蔵装置の貯蔵電力量が不足するか、あるいは電力貯蔵装置の容量を大きくする必要がある。それを避けるために、長周期変動緩和指定時間帯の開始時刻における合成出力をあらかじめ合成出力準備値以下に制限する。一方、後者の合成出力準備値を下限値に設定する狙いは、長周期変動緩和指定時間帯において充電電力及び充電電力量の超過を防ぐためである。つまり、長周期変動緩和指定時間帯において風力発電機16の出力が大きく増加すると、合成出力を適正に維持するために電力貯蔵装置の充電電力・充電電力量が大きくなる。その結果、長周期変動緩和指定時間帯の開始時刻において電力貯蔵装置の貯蔵電力量が上限に達して風力発電機の出力を絞るか、あるいは電力貯蔵装置の容量を大きくする必要がある。それを避けるために、長周期変動緩和指定時間帯の開始時刻における合成出力をあらかじめ合成出力準備値以上に制限する。
図2Bのリミッタは
図2Aよりも制御設計の自由度が高くなる。つまり、合成出力を厳密に合成出力準備値に制御する方法ではなく、リミッタで許容される範囲内で例えば貯蔵電力量の補正などを反映させる他の機能(例えば蓄電池充電電力制御)も活用する余地を残している。
図2Bのリミッタも、
図2Aのスイッチと同様に短時間で解除され、その後は通常の長周期変動緩和制御を実現する。
【0035】
合成出力準備値設定部22のバリエーションの1つである
図2Cは、フィードバック制御のー例としてP制御で構成されており、
図2Aや
図2Bと異なる部分は、合成出力目標値PA(あるいは合成出力の計測値)を入力とする点である。その合成出力目標値PAが合成出力準備値となるようにP制御を行っている。
図2CのP制御などのフィードバック制御(他の例としてはPI制御でも良い)を用いることによって、合成出力目標値をある程度連続的に変化させつつ、合成出力準備値設定部22が合成出力を合成出力準備値に調整することを阻害する要因を一定程度補正することができる。阻害要因としては例えば発電所の構内負荷の変動や風力発電機内部の制御などの制御装置の外部による要因や、電力貯蔵装置または電力変換器の保護制御機能など制御装置の内部による要因が挙げられる。これらの要因によって合成出力あるいは合成出力目標値が合成出力準備値と一致しない場合に
図2Cの制御は合成出力目標値と合成出力準備値との偏差を0にするように調整する効果がある。一方、
図2Cの制御においては、合成出力目標値PAが合成出力準備値に達して定常状態になるまでに時間を要する。それゆえ、フィードバック制御が定常状態に達するまでに必要な時間を長周期変動緩和指定時間帯の開始時刻よりも前にあらかじめ確保しておく。上記のフィードバック制御を開始する時刻よりも前の時間においてはP制御のゲインを0にしておき、上記時刻から長周期変動緩和指定時間帯の開始時刻までの時間においてはP制御のゲインを所定の値に切り替えれば良い。その結果、フィードバック制御の開始時刻よりも前には合成出力準備値設定部の出力信号は入力信号PGをそのまま出力し、フィードバック制御実施中は合成出力準備値設定部と合成出力目標値の差分に従って合成出力目標値PAを調整し、長周期変動緩和指定時間帯の開始時刻よりも前に合成出力目標値PAが合成出力準備値まで連続的かつ安定的に到達する効果が得られる。
【0036】
次に、
図3を用いて、本発明の第1の実施の形態の効果を説明する。
図3Aは、制御装置13において合成出力準備値設定部22を持たず長周期変動緩和制御のみを実施した場合の放電電力(必要容量)を例示している。
図3Aに破線で示すように、風力発電機16の出力電力は上下に変動しているものとし、時刻T1からT2の時間帯が長周期変動緩和指定時間(減少不可)に設定されているとする。長周期変動緩和指定時間帯の開始時刻となる時刻T1には出力電力がピーク近傍になっており、減少不可指定時間帯であるために主に長周期変動緩和制御部23のリミッタの作用により合成出力が一定に維持されている。時刻T1から時刻T2にかけて出力電力は最大値から最小値に向けて減少するので、その間は電力貯蔵装置11を放電させて合成出力を時刻T1時点の値に維持している。このため、
図3Aに斜線で示すように大きな放電電力(必要容量)が必要になっている。
【0037】
一方、
図3Bは、制御装置13による制御を実施した場合に必要となる放電電力(必要容量)を例示している。
図3Aと同様に風力発電機16の出力電力(破線)は上下に変動していて、時刻T1からT2の時間帯が長周期変動緩和指定時間(減少不可)に設定されている。
【0038】
発電量予測部45(
図1参照)は長周期変動緩和指定時間帯における発電所出力を予測する。
図3Bに示すように発電所出力が減少することが予測できた場合、発電量予測値PG−qを用いて適切な合成出力準備値PG−pを決定する。例えば、
図3Bに示すように指示時間帯(減少不可)における中間付近の時刻T3の発電量予測値PG−pを合成出力準備値PG−pに用いれば、長周期変動緩和指定時間帯における放電電力(必要容量)を大幅に抑制できることが判る。長周期変動緩和指定時間帯の開始時刻T1に、
図2Bにおける合成出力準備値設定部22のリミッタに時刻T3の発電量予測値PG−qが合成出力準備値PG−pとして設定されるとすると、その結果、合成出力準備値設定部22のリミッタにおいて合成出力目標値が合成出力準備値PG−pを超えないように制限される。
図3Bに示す例では指示時間帯の開始時刻T1に合成出力の上限が合成出力準備値PG−pに変更されている。発電所出力が合成出力準備値PG−pを下回る時刻T3までは、電力貯蔵装置11が発電出力を吸収する充電動作となる。電力貯蔵装置11の充電容量を超える電力は廃棄しても良い。発電所出力が合成出力を下回る時刻T3から時刻T2までは、合成出力が下がらないように維持するため、電力貯蔵装置11が電力を放電する放電動作となる。指示時間帯の終了時刻T2になると、長周期変動緩和制御のリミッタが取り消されてリミッタが掛からない状態になる。その結果、合成出力が合成出力準備値PG−pから発電出力へ変化する。
【0039】
また本実施の形態によれば、合成出力準備値設定部22により、合成出力目標値を合成出力準備値PG−pへ移行することで、長周期変動緩和指定時間帯において合成出力の制約を受けることになっても、蓄電池の必要容量を抑えた制御を実現することができる。
【0040】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態は、
図8における4つ目の発明の特徴部分である長周期変動緩和指定時間帯内の長周期変動緩和制御に関する。
【0041】
長周期変動緩和指定時間帯のうち、合成出力の減少を禁止する減少不可の時間帯では、合成出力が増加することは許容される。問題が起こる二つの制御のケースを示す。1つ目のケースについて
図4Aを用いて説明する。
図4Aの点線に示す時刻T1から時刻T2の指示時間帯が減少不可指定時間帯に指定されている。また、
図4Aの時刻T4では電力貯蔵装置11の充電が満充電となりこれ以上充電できなくなる状態を表している。このままでは逸失電力が発生してしまうため合成出力目標値を上げ、合成出力を上げるよう制御する。このあと風力発電出力が下がっていくと、減少不可の制約を受けている指定時間帯の中であるため、合成出力は減少させることができない。そのため、電力貯蔵装置11が放電し合成出力を維持するため、電力貯蔵装置11の放電量(必要容量)が大きくなってしまう。もし電力貯蔵装置11の容量が小さいケースでは減少不可の制約を守ることができないという問題が生じる。
【0042】
2つ目のケース(
図4B)では、ケース1と同様に時刻T1から時刻T2の指示時間帯が減少不可指定時間帯に指定されており、時刻T4で電力貯蔵装置11の充電が満充電となる状況で、合成出力目標値を上げないように制御する。このケースでは減少不可の制約は守ることができるが、逸失電力は大きく発生してしまう。
【0043】
上記のようなケースを避けるため、減少不可の指定時間帯の間に発電出力が減少することが想定される場合には合成出力目標値に上限を設定する。その上限値を、電力貯蔵装置11の容量と、風力発電の発電量予測値を考慮することで適切に設定する。発電量予測部45が計算する発電量予測値を解析し、減少不可指定時間帯における発電出力の出力減少の有無を把握する。
図4Cに示す例では、減少不可指定時間帯では発電所出力が上昇した後、時刻T4以後の発電所出力の出力減少が予測される。かかる場合、現在時刻から指定時間帯終了時刻までの時間帯における発電量予測値(kWh)を現在時刻から指定時間帯終了時刻までの時間(h)で除した値(kW)を合成出力の上限値として定める。あるいは前記の発電量予測値(kWh)から
図4Cに示す逸失電力の電力量を減算しても良いし、電力貯蔵装置により放電可能な放電電力量を加算しても良い。合成出力の上限値としての定め方は、何通りか考えられるが、合成出力準備値設定部22の入出力のどちらか、または長周期変動緩和制御部23の入出力のどちらかにリミッタを設定することにより実現できる。または、内部のリミッタに制限をかけても良い。
【0044】
このように第2の実施の形態においては、合成出力の減少が禁止される指示時間帯において変動電源の発電量減少が予測される場合、指示時間帯における合成出力の増加を制限することで、電力貯蔵装置の必要容量を効果的に抑制することができる。
【0045】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態は、第1の実施の形態に短周期変動緩和制御を加えたものである。
図5を用いて第3の実施の形態となる電力安定化システムの構成を説明する。第1の実施の形態と異なる点は、制御装置50に短周期変動緩和制御部25が加わった点である。
【0046】
短周期変動緩和制御部25は、合成出力準備値設定部22の出力を入力とし、平滑化フィルタ46およびリミッタ47により短周期変動緩和制御を行う。短周期変動緩和制御とは、風力発電等の変動電源の出力に含まれる長周期的変動成分に重畳する短周期変動成分を抑制し、ある時間内での合成出力の変動をある範囲内に抑える制御である。
【0047】
その他の構成に関しては第1の実施の形態と同じであるため説明を省略する。
次に、合成出力準備値を合成出力目標値の計算に反映させる合成出力準備設定部22について
図2を参照しながら説明する。短周期変動緩和制御では急激な合成出力の変化ができないため、徐々に制御を変更する必要があり、長周期変動緩和指定時間帯の前に準備時間帯を設け、徐々に制御点を移行させていく工夫が必要である。この点は
図8における本発明の特徴の3つ目である準備値への移行の仕方に関する。
【0048】
合成出力準備値設定部22のバリエーションの1つである
図2Aはスイッチで構成されており、合成出力準備値設定部22は準備時間帯の間スイッチを切り替え、合成出力準備値PG−pを発電有効電力PGの代わりに出力する。さらに短周期変動緩和制御部25の出力信号を短周期変動緩和制御部25で変化速度を制限することによって短周期変動成分を除いた信号を合成出力目標値PAとして出力する。このことにより、準備時間帯の開始時刻から徐々に最も良い制御点である合成出力準備値での制御へ移行することができる。その後は、長周期変動緩和指定時間帯に入ると、長周期変動緩和制御を実現するためにスイッチは元の有効電力PGに入り直させる。
【0049】
合成出力準備値設定部22のバリエーションの1つである
図2Bは、リミッタで構成されており、準備時間帯の開始時刻において、リミッタの上限値に合成出力準備値PG−pを設定し、短周期変動緩和制御部25の出力信号が合成出力準備値PG−pを超えないように制限する。さらに短周期変動緩和制御部25の出力信号を短周期変動緩和制御部25で変化速度を制限することにより、準備時間帯にかけて徐々に合成出力目標値を出力準備値PG−pより小さい値で制御を行うことができる。また、増加不可の指定時間帯が設定される場合は、
図2Bのリミッタの下限値に合成出力準備値PG−pが設定される。
図2Bのリミッタも
図2Aのスイッチと同様に準備期間帯が終わると同時に解除され、その後は通常の短周期変動緩和制御および長周期変動緩和制御を実現する。
【0050】
合成出力準備値設定部22のバリエーションの1つである
図2Cについても同様であるが、P制御・PI制御などのフィードバック制御系で構成されているため、定常状態に達するまでに時間を要する。この所要時間が準備時間帯の期間よりも十分短くなるように制御ゲインや時定数を調整する必要がある。
【0051】
次に、
図6を用いて、本発明の第3の実施の形態の効果を説明する。
図6Aは、制御装置50において合成出力準備値設定部22を持たず、長周期変動緩和制御および短周期変動緩和制御のみを実施した場合の放電電力(必要容量)を例示している。
図6Aに破線で示すように、風力発電機16の出力電力は上下に変動しているものとし、時刻T1からT2の時間帯が長周期変動緩和指定時間(減少不可)に設定されているとする。長周期変動緩和指定時間帯の開始時刻となる時刻T1には出力電力がピーク近傍になっており、減少不可指定時間帯であるために主に長周期変動緩和制御部23のリミッタの作用により合成出力が一定に維持されている。時刻T1から時刻T2にかけて出力電力は最大値から最小値に向けて減少するので、その間は電力貯蔵装置11を放電させて合成出力を時刻T1時点の値に維持している。このため、
図6Aに斜線で示すように大きな放電電力(必要容量)が必要になっている。指示時間帯の終了時刻T2になると、長周期変動緩和制御部23のリミッタの下限値が解除されリミッタが掛からない状態になる。その結果、短周期変動緩和制御部のリミッタ47の作用により短周期変動を抑えた速度で、合成出力が発電出力へ変化する。
【0052】
一方、
図6Bは、制御装置50による制御を実施した場合に必要となる放電電力(必要容量)を例示している。
図6Aと同様に風力発電機16の出力電力(破線)は上下に変動していて、時刻T1からT2の時間帯が長周期変動緩和指定時間(減少不可)に設定されている。発電量予測部45(
図1参照)は長周期変動緩和指定時間帯における発電所出力を予測する。
図6Bに示すように発電所出力が減少することが予測できた場合、発電量予測値PG−qを用いて適切な合成出力準備値PG−pを決定する。例えば、
図6Bに示すように指示時間帯(減少不可指定時間帯)において、電力貯蔵装置11の充電量と放電量が同等となるような合成出力値を求め、その合成出力値を合成出力準備値として制御することで、長周期変動緩和指定時間帯における放電電力(必要容量)を大幅に抑制できることが判る。長周期変動緩和指定時間帯の準備時間帯の開始時間T0に、
図2Bにおける合成出力準備値設定部22のリミッタに先ほど求めた合成出力値が合成出力準備値PG−pとして設定されるとすると、準備時間帯をかけて徐々に合成出力が合成出力準備値へ下がっていく。指定時間の開始時間T1には、設定した合成出力準備値に制御点が移っている。
図6Bに示す例では発電所出力が合成出力準備値PG−pを下回る時刻T3までは、電力貯蔵装置11が発電出力を吸収する充電動作となる。発電所出力が合成出力を下回る時刻T3から時刻T2までは、合成出力が下がらないように維持するため、電力貯蔵装置11が電力を放電する放電動作となる。指示時間帯の終了時刻T2になると、長周期変動緩和制御23のリミッタが解除されリミッタが掛からない状態になる。その結果、短周期変動緩和制御部のリミッタ47の作用により短周期変動を抑えた速度で、合成出力が合成出力準備値PG−pから発電出力へ変化する。
【0053】
上記の実施の形態により、準備時間帯を設けることで、短周期変動緩和制御の範囲内で、合成出力準備値を合成出力に反映させることができ、その結果、電力貯蔵装置11の必要容量を抑えた長周期変動緩和制御および短周期変動緩和制御を実現することができる。
【0054】
なお、本例では、発電量予測部45が制御装置13の内部に配置されるが、発電量予測部45を制御装置13の外部に配置しても良い。その場合、外部から発電量予測値PG−q又は合成出力準備値PG−pを制御装置13へ供給するように構成する。
【0055】
(第4の実施の形態)
第4の実施の形態に係る電力安定化システムは、第1から第3の実施の形態と同様の基本構成を有するが、合成出力準備値計算部における合成出力準備値の計算方法、および準備値の移行動作が異なる例である。第4の実施の形態における合成出力準備値計算部は、仮に風力発電機16の発電出力が急激に低下した場合であっても、発電所合成出力がこの値以下であれば電力貯蔵装置11における充電電力量不足による技術要件の未達を回避することができる、という合成出力準備値を計算する。以下、合成出力準備値の計算方法について具体的に説明する。
【0056】
風力発電機16の発電出力の急減に対しては電力貯蔵装置11の放電によって対応する必要がある。電力貯蔵装置11の充電電力量は、風力発電機16の出力急減時に対応可能な放電電力量を確保する大きさが必要である。ここでは、風力発電機16の出力低下があっても必要な発電所合成出力を維持できる放電電力量を必要充電電力と定義する。
【0057】
また、理論的に最大の放電電力量が必要となる変動電源出力低下のケースは、風力発電機16の出力が瞬時に0へとステップ状に低下するときである。このステップ状の変動電源出力低下に対して、放電電力量を最小限に制御するためには合成出力をなるべく速く低下させるのが望ましい。これは、合成出力と変動電源出力との差異が小さくなるためである。ただし、合成出力は短周期変動の制約と長周期変動の制約が課せられるため、変化率や変動方向に制限がある。短周期変動・長周期変動の制約を満たしつつ、かつ最も短時間で合成出力を変動電源出力(=0)に近づけるケースを想定する。風力発電機16の出力低下が現在の変動電源出力レベルから出力0まで即時に低下し(ステップ状の低下)、それと同時に合成出力を短周期変動・長周期変動の制約を満たしつつ速やかに低下させる条件を想定した場合に必要な放電電力量を、最大必要充電電力と定義する。
【0058】
図9に変動電源出力がステップ状に低下した場合の必要充電電力を例示している。領域A(斜線部+塗りつぶし部)は変動電源出力がステップ状に低下した場合の必要充電電力であり、領域Bはその時の見込み発電量である。ここで、風力発電機16の出力は急激に0に低下するとは限らず、風力発電機16の出力が一定程度緩やかに低下し、領域Bの面積に相当する出力を見込める。指定時間帯において風力発電機16の出力が確実に見込める発電量(前述の領域Bに相当)を「見込み発電量」と定義する。
【0059】
例えば、現在時刻が指定時間帯の開始時刻であり、現在時刻の変動電源出力が100MWであり、見込み発電量Bが(現在時刻の変動電源出力−70MW)×指定時間帯の残り時間であり、短周期変動の制約が出力変化速度を60MW/h以内にすることであるとする。この場合、必要充電電力量Aは以下の通りである。
A=最大必要充電電力−見込み発電量
=(100MW×3h+100MW×100MW/2/60MW/h)−(100MW−70MW)×3h
=293MWh
【0060】
電力貯蔵装置11の容量が小さい場合、現在時点の放電可能電力量が上記必要充電電力量Aの大きさを下回る可能性が高くなる。
【0061】
そこで、本実施の形態は、電力貯蔵装置11の現在時点の放電可能電力量(必要充電電力量)に応じて発電所合成出力を制限する合成出力目標値を計算する。発電所合成出力が制限されると、必要充電電力は
図9に示す領域Aから小さい領域A‘になり、風力発電機16の急低下に耐えることができる。これにより、必要充電電力不足による技術要件の未達を回避することができる。
【0062】
例えば、
図9に例示するように、仮に発電所合成出力を50%まで抑制すると、必要充電電力量(
図9の領域A’)は以下の通りになる。
A’=最大必要充電電力−見込み発電量
=(50MW×3h+50MW×50MW/2/60MW%/h)−(100MW−70MW)×3h
=81MWh
【0063】
ここで、最大必要充電電力量は、風力発電機16の出力レベル、発電所合成出力が同じであっても、準備時間帯の残り時間及び指定時間帯の残り時間によって変化する。そのため、適切な合成出力準備値を計算するためには、準備時間帯の残り時間及び又は指定時間帯の残り時間を考慮することが望ましい。以下に準備時間帯の残り時間及び指定時間帯の残り時間を用いて合成出力準備値を最適化する計算方法について詳述する。
【0064】
図10Aから
図10Dは各時間帯における最大必要充電電力量を示している。
図10Aは、準備時間帯(減少禁止準備時間)に風力発電機16の運転(出力)が停止し且つ指定時間帯(減少不可)の開始前に合成出力をゼロにできる場合の最大必要充電電力量Esmaxを示している。合成出力は、短周期変動基準(例えば出力変化速度が1%/min以内)及び長周期変動基準(指定時間帯(減少不可)では減少禁止)を満足するように変化させなければならないので、最大必要充電電力Esmaxをゼロにすることはできない。
図10Aの例では、所定の出力変化速度で低下させたときの合成出力である必要電力量(準備時間帯の三角形のグレー領域)が最大必要充電電力Esmaxに相当する。なお、風力発電機16の運転停止時の出力が大きければ大きいほど
図10Aの三角形が相似形で大きくなるので、最大必要充電電力量Esmaxが累乗的に増大する。
【0065】
図10Bは、準備時間帯に風力発電機16の運転(出力)が停止し且つ指定時間帯(減少不可)の開始前に合成出力をゼロにできない場合の最大必要充電電力Esmaxを示している。この場合、準備時間帯を利用して所定の出力変化速度で合成出力が低下した後、指定時間帯(減少不可)では合成出力を一定にする必要があり、指定時間帯(減少不可)の終了後の減少禁止開放時間を利用して、さらに所定の出力変化速度で合成出力が低下していく。
図10Bの例では、所定の出力変化速度で低下させたときの必要電力(準備時間帯の台形のグレー領域と減少禁止開放時間の三角形のグレー領域)及び合成出力を一定に維持したときの必要電力(指定時間帯の長方形のグレー領域)の総和が最大必要充電電力量Esmaxに相当する。
【0066】
図10Cは、指定時間帯(減少不可)に風力発電機16の運転(出力)が停止した場合の最大必要充電電力Esmaxを示している。この場合、指定時間帯(減少不可)では合成出力を一定にする必要があり、指定時間帯(減少不可)の終了後の減少禁止開放時間を利用して、所定の出力変化速度で合成出力が低下していく。
図10Cの例では、合成出力を一定に維持したときの必要電力(指定時間帯(減少不可)の長方形のグレー領域)と所定の出力変化速度で低下させたときの必要電力(減少禁止開放時間の三角形のグレー領域)の総和が最大必要充電電力量Esmaxに相当する。
【0067】
図10Dは、指定時間帯(減少不可)の終了時(減少禁止開放時間の開始時)に風力発電機16の運転(出力)が停止した場合の最大必要充電電力量Esmaxを示している。この場合、指定時間帯(減少不可)の終了後の減少禁止開放時間を利用して、所定の出力変化速度で合成出力が低下していく。
図10Dの例では、所定の出力変化速度で低下させたときの必要充電電力(減少禁止開放時間の三角形のグレー領域)が最大必要充電電力量Esmaxに相当する。
図10Aと
図10Dは、風力発電機16の運転(出力)が停止した後の所定時間に指定時間帯(減少不可)を含まないので、合成出力を最も早くゼロに近付けることができる(つまり最大必要充電電力量Esmaxが最も小さくなる)。
【0068】
次に、合成出力準備値Ppの計算方法について説明する。合成出力準備値Ppを非常に小さい値にすれば、当然ながら必要充電電力は小さくなり、充電電力量不足による出力変動基準の逸脱を回避することができる。一方で、変動電源出力よりも発電所合成出力が小さくなると、充電電力量が充電電力量運用上限値に達するまで充電し、充電しきれなくなった電力を変動電源出力制限によって捨てる必要があるため、過度に合成出力準備値Ppを小さくすると事業者の収益が悪化する。そのため、合成出力準備値Ppを適切に設定する必要がある。
【0069】
本実施の形態では、放電可能電力量を入力とし、合成出力準備値を出力とする合成出力準備関数を用いて、合成出力準備値Ppを適切に設定する。合成出力準備関数は、同じ放電可能電力量(≒充電電力量)であっても、時間帯によって合成出力準備値が変化する特性を有する関数である。
【0070】
図11に合成出力準備関数が示されている。縦軸は合成出力準備値であり、横軸は関数入力に相当する放電可能電力量である。合成出力準備値は、仮に変動電源出力が急激に低下した場合であっても、発電所合成出力がこの値以下であれば、充電電力量の不足による技術要件の未達を回避することができるという値である。放電可能電力量は、電力貯蔵装置11の充電電力量と、風力発電機16の見込み電力量とを加算した値である。見込み電力量を考慮すればより高い精度で合成出力準備値を計算できるが必須ではない。例えば、電力貯蔵装置11の充電電力量だけを用いても合成出力準備値を計算しても良い。
【0071】
図11に示すように、通常時(準備時間帯、指定時間帯以外の通常の運転時間帯)の合成出力準備関数は、低い充電電力量で発電所合成出力を高く維持できる関数に設定されており、関数の傾きは最大になる(最大傾き)。一方、指定時間帯開始時刻での合成出力準備関数は、高い充電電力量でなければ発電所合成出力を高く維持できない関数に設定されており、関数の傾きは最小になる(最小傾き)。そして、合成出力準備関数の傾きは、準備時間帯の残り時間及び指定時間帯の残り時間に応じて最大傾きから最小傾きの間で調整される。具体的には、準備時間帯の開始時刻から指定時間帯の開始時刻に掛けて、合成出力準備関数の傾きが最大傾きから最小傾きへ徐々に調整され、指定時間帯の開始時刻から指定時間帯の終了時刻に掛けて、合成出力準備関数の傾きが最小傾きから最大傾きへ徐々に調整される。これは、
図10Aから
図10Dに示すように、現在時刻に応じて準備時間帯の残り時間(現在時刻から指定時間帯開始時刻までの残り時間)及び指定時間帯の残り時間が変化し、これら残り時間に対応して最大必要充電電力量が変化することに対応している。したがって、現在時刻との関係で決まる準備時間帯の残り時間、指定時間帯の残り時間に対応して合成出力準備関数の傾きを調整することで、現在時刻の変化に応じて最適な合成出力準備値を計算することができる。
【0072】
なお、合成出力準備関数は発電所の機器容量などの制約条件を加えても良い。例えば
図11の通常時の合成出力準備関数の傾きの場合、放電可能電力量が50%付近で合成出力準備値が風力発電機16の定格出力に到達しているため、放電可能電力量が50%付近よりも高い場合には風力発電機16の定格出力の値でフラットにし、発電所合成出力を風力発電機16の定格出力以下にすることができる。
【0073】
図11に示す前記の合成出力準備関数は現在時刻の変化に応じて、合成出力準備関数の傾きを徐々に調整し、現在時刻の状態に適した合成出力準備値を計算することができる。
【0074】
このような合成出力準備関数を用いれば、
図8に示す準備値の移行の動作(合成出力準備値への移行、および合成出力準備値の解除)を円滑に実施することができる。以下、
図2を参照しながら合成出力準備値への移行および合成出力準備値の解除の具体的な方法について説明する。
【0075】
合成出力準備値設定部22のバリエーションの1つである
図2Aの構成、つまりスイッチの切り替えによって準備値の移行の動作を実現する方法について説明する。なお、合成出力準備値設定部22は、
図1(
図5)に示すように、発電有効電力PGを入力可能に構成されている。
【0076】
まず、指定時間帯開始時刻よりも十分に早い時刻では、
図2Aのスイッチは発電有効電力PGが選択されている。また、合成出力準備値計算部100は指定時間帯開始時刻に限定せず、いずれの時刻においても常に最適な合成出力準備値を計算しているとする。
【0077】
スイッチを切り替えて合成出力準備値へ移行するタイミングは、現在時刻が準備時間帯内であり、合成出力準備値が発電有効電力PGまたは合成出力目標値PAを下回った時点とする。なぜなら、発電有効電力PGまたは合成出力目標値PAがさらに増加すると、合成出力準備値を超過して、必要充電電力量を確保できなくなるためである。
【0078】
スイッチを元に戻して合成出力準備値を解除するタイミングは、現在時刻の合成出力準備値が発電有効電力PGまたは合成出力目標値PAを上回った時点とする。なぜなら、現在の放電可能電力量で必要充電電力量を確保できるようになったためである。これらのタイミングで切り替えることによって、合成出力準備値設定部22の出力信号がスイッチ切り替え前後で急変することがなくなり、長周期変動緩和制御部23や短周期変動緩和制御部25の調整が容易になる。
【0079】
合成出力準備値設定部22のバリエーションの1つである
図2Bの構成、つまりリミッタの上限値に合成出力準備値を設定することによって準備値の移行の動作を実現する方法について説明する。
図11に示すように、合成出力準備値を連続で計算する方法を用いれば、合成出力準備値設定部22のリミッタの上限値を常に合成出力準備関数の出力信号にすればよく、特別な切り替え動作は不要である。なぜなら合成出力準備値設定部22の出力信号が発電有効電力PGと等しくなるか或いは合成出力準備値と等しくなるかは然るべきタイミングで自ずと切り替わるためである。以下、その切り替わる手順の具体例を示す。
【0080】
まず、現在時刻が指定時間帯開始時刻よりも十分に早い時刻であれば、
図11に示す通り、合成出力準備関数の傾きが大きく、合成出力準備値が大きくなる。その結果、リミッタの上限値は発電有効電力PGよりも大きくなり、合成出力準備値設定部22の出力信号が発電有効電力PGと等しくなる。
【0081】
次に、時間が経過して現在時刻が指定時間帯開始時刻に近づくと、合成出力準備関数の傾きが小さくなる。それにより合成出力準備値も小さくなる。合成出力準備値が発電有効電力PGよりも小さくなると、合成出力準備値設定部22の出力信号はリミッタの上限値である合成出力準備値と等しくなるため、準備値への移行が実施される。
【0082】
その後、現在時刻が指定時間帯内に入ると、現在時刻が指定時間帯終了時刻に近づくにつれて、合成出力準備関数の傾きが大きくなる。そして、発電有効電力PGが現在時刻の放電可能電力に対応する合成出力準備値を上回ったタイミングで、リミッタの上限値は発電有効電力PGよりも大きくなる。その結果、合成出力準備値設定部22の出力信号が発電有効電力PGと等しくなり、準備値が解除される。
【0083】
これらの動作によって、合成出力準備値設定部22の出力信号がスイッチ切り替え前後で急変することがなくなり、長周期変動緩和制御部23や短周期変動緩和制御部25の調整が容易になる。
【0084】
なお、発電有効電力PGが十分に小さい値であれば、合成出力準備値への移行が発生しないが、その場合は必要充電電力量も小さく充電電力量が不足することはないため、制御に支障はない。
【0085】
合成出力準備値設定部22のバリエーションの1つである
図2Cの構成、つまりP制御・PI制御などのフィードバック制御系におけるゲインの切り替えによって準備値の移行の動作を実現する方法について説明する。
【0086】
まず、指定時間帯開始時刻よりも十分に早い時刻では、
図2Cのゲインが0に設定されており、合成出力準備値設定部22の出力信号は発電有効電力PAである。また、合成出力準備値計算部100は指定時間帯開始時刻に限定せず、いずれの時刻においても常に最適な合成出力準備値を計算しているとする。
【0087】
次に、現在時刻が準備時間帯内にある場合、合成出力準備値が合成出力目標値PAを下回るタイミングを判定し、その判定時点でゲインを或る指定値に設定するとする。なぜなら、発電有効電力PGまたは合成出力目標値PAがさらに増加すると、合成出力準備値を超過して、必要充電電力量を確保できなくなるためである。
【0088】
その後、現在時刻が指定時間帯内にある場合、合成出力準備値が合成出力目標値PAを上回るタイミングを判定し、その判定時点でゲインを0に戻す。なぜなら、現在の放電可能電力量で必要充電電力量を確保できるようになったためである。
【0089】
これらのタイミングでは合成出力目標値と合成出力準備値との偏差が0になるため、ゲインの設定を切り替えたとしても合成出力準備値設定部22の出力信号が急変せず、長周期変動緩和制御部23や短周期変動緩和制御部25の調整が容易になる。
【0090】
図12は合成出力準備値計算部における処理内容を示すブロック図である。本実施の形態では、合成出力準備値計算部100に対して、現在時刻となる時刻t、電力貯蔵装置11の充電電力量測定値(ES)が入力される。なお、実施の形態1から実施の形態3では、合成出力準備値計算部24に対して有効電力PG、発電量予測値を入力しているが、本実施の形態ではこれらの情報を用いることなく合成出力準備値を計算できる。
【0091】
合成出力準備値計算部100は、残り時間算出部101、放電可能電力量計算部102及び合成出力準備関数計算部103を有している。残り時間算出部101は、現在時刻を示す時刻tから準備時間帯の残り時間Tp及び指定時間帯の残り時間T
Lを算出する。放電可能電力量計算部102は、電力貯蔵装置11の充電電力量測定値(又はSOC値)から単位の換算計算により放電可能電力量ECを出力する放電可能電力量計算部102と、放電可能電力量ECに見込み発電量E
BLを加算して補正された放電可能電力量Edを出力する電力量補正部105とを有する。なお、本例では風力発電機16の発電出力がステップ状に低下したことを想定して放電可能電力量ECを計算しているので、放電可能電力量に見込み発電量E
BLを加味している。放電可能電力量に見込み発電量E
BLを加味しない仕様であれば電力量補正部105は不要である。合成出力準備関数計算部103は、放電可能電力量Edを入力とし、準備時間帯の残り時間Tp及び又は指定時間帯の残り時間T
Lを考慮して、最適な合成出力準備値Ppを計算する。
【0092】
具体的には以下の式(1)を満たすように合成出力準備値Ppを決定する。
本例では、Ed=Es+E
BLとして、放電可能電力量Edに見込み発電量E
BLを加算するが、放電可能電力量Edに見込み発電量E
BLを加味せずに合成出力準備値Ppを計算しても良い。
放電可能電力量Edは式(1)で表すことができる。
【数1】
【0093】
上記式(1)は合成出力準備値Ppに関する2次方程式である。そこで、以下の式(2)に示す解の公式でPpを計算することができる。
【数2】
【0094】
上記式(2)において、rTp
2/2の項は、
図10Aに示す最大必要充電電力(三角形領域)に相当している。Ed≦rTp
2/2のケースとは、指定時間帯(減少不可)の開始時刻までに発電所合成出力を0に移行できる場合である。この場合、合成出力準備値Ppは式(2)で計算される小さい値に調整される。一方、Ed>rTp
2/2のケースとは、指定時間帯(減少不可)の開始時刻までに発電所合成出力を0に移行できない場合である。この場合、指定時間帯(減少不可)に入っても充電電力が残っているので、式(2)で計算される合成出力準備値Ppまで上げることができる。
【0095】
以上のようにして、式(2)に基づいて、現在の放電可能電力量、準備時間帯の残り時間Tp、指定時間帯の残り時間T
Lから、最適な合成出力準備値Ppを計算することができる。
【0096】
上記の説明では、合成出力準備値計算部100が、準備時間帯の残り時間Tpと指定時間帯の残り時間T
Lの両方を用いて、合成出力準備値Ppを演算する場合を例示して説明した。しかし、合成出力準備値計算部100は、準備時間帯の残り時間Tpと指定時間帯の残り時間T
Lのいずれか一方だけを用いて、合成出力準備値Ppを演算することが可能である。すなわち、合成出力準備値計算部100は、準備時間帯及び/又は指定時間帯の残り時間に基づいて、合成出力準備値Ppを演算することができる。
【0097】
上記の実施形態では、合成出力準備値Ppの計算において、風力発電機16の発電出力がゼロまでステップ状に急激に低下するという理論上の最悪条件に対して最小限の放電電力量となる合成出力制御を想定している。そのために、準備時間帯の残り時間Tpと指定時間帯の残り時間T
Lを使用して、指定時間帯の開始時刻までに合成出力をどこまで低下させることができるかを計算している。
【0098】
仮に準備時間帯の残り時間Tpが不明な場合、どの程度まで合成出力を低下させることができるか把握できない。そのため、短周期変動・長周期変動の制約の両方を満足するために必要な放電電力量が大きくなる。ここで、「準備時間帯の残り時間Tpが不明な場合」は、「指定時間帯の開始時間(開始時刻)が不明な場合」と言い換えることができ、次の2つの場合に類型化される。
・指定時間帯の長さは分かっているが、指定時間帯の開始時間(開始時刻)が不明である場合。
・指定時間帯の終了時間(終了時刻)は分かっているが、指定時間帯の開始時間(開始時刻)が不明である場合。
【0099】
一方、指定時間帯の残り時間T
Lが不明な場合は、例えば、指定時間帯の開始時間(開始時刻)は分かっているが、指定時間帯の終了時間(終了時刻)が不明なケースが当てはまる。以下、これら各ケースについての制御方法(合成出力準備値Ppの演算方法)について説明していく。
【0100】
<指定時間帯の長さは分かっているが、指定時間帯の開始時間(開始時刻)が不明である場合>
これは、上述した式(1)において、準備時間帯の残り時間Tpが不明な場合に相当する。風力発電機16の発電電力が0までステップ状に急激に低下するという理論上の最悪条件を想定するならば、合成出力準備値Ppが最も大きくなるのは、準備時間帯の残り時間Tp=0の場合、すなわち、指定時間帯の開始時間(開始時刻)が現在となる場合である。
【0101】
図13A、
図13B、
図13Cは、指定時間帯の開始時間(開始時刻)が現在よりも遅い第1の場合(指定時間帯までの時間が相対的に長い)、現在よりも遅い第2の場合(指定時間帯までの時間が相対的に短い)、現在の場合における最大必要充電電力の一例を示している。
図13A〜
図13Cの中において、最大必要充電電力が最も大きくなるのは
図13Cである。何故なら、現在から指定時間帯の開始時間(開始時刻)までの放電電力量(
図13Aと
図13Bの左側の台形部分)と、指定時間帯終了後の放電電力量(
図13A〜
図13Cの右側の三角形部分)との合計面積は同じなので、指定時間帯の放電電力量(
図13A〜
図13Cの真ん中の長方形部分)の面積の比較になるからである。
【0102】
以上より、最大必要充電電力Esmaxは、上述した式(1)において、PpをPgに置き換えれば、Tp=0とした次の式(3)により計算することができる。なお、最大必要充電電力Esmaxを算出する際に、さらに電力貯蔵装置11の効率(放電時の効率)を考慮しても良いし、充電電力運用下限値に相当する充電電力量を考慮しても良い。
【数3】
但し、
Pg:現在の変動電源の出力(kW)
r:出力変化速度設定値(kW/h)
T
L:指定時間帯の残り時間(h)
である。
【0103】
合成出力準備値Ppについても同様である。最悪条件はTp=0のとき、つまり指定時間帯開始時刻が現在時刻と同じ場合である。式(1)、式(2)に代入すると以下の通りである。
【数4】
【0104】
<指定時間帯の終了時間(終了時刻)は分かっているが、指定時間帯の開始時間(開始時刻)が不明である場合>
これは、準備時間帯の残り時間Tpと指定時間帯の残り時間T
Lとの合計時間(これをT
L’と定義する)は決まっているが、それらの内訳が不明な場合に相当する。風力発電機16の発電電力がゼロまでステップ状に急激に低下するという理論上の最悪条件を想定するならば、最大必要充電電力が最も大きくなるのは、Tp=0かつT
L=T
L’の場合、すなわち、指定時間帯の開始時間(開始時刻)が現在となる場合である。すなわち、最大必要充電電力Esmaxは、上述した式(1)において、PpをPgに置き換えれば、Tp=0かつT
L=T
L’とした次の式(5)により計算することができる。なお、最大必要充電電力を算出する際に、さらに電力貯蔵装置11の効率(放電時の効率)を考慮しても良いし、充電電力運用下限値に相当する充電電力量を考慮しても良い。
【数5】
但し、
Pg:現在の変動電源の出力(kW)
r:出力変化速度設定値(kW/h)
TL’:指定時間帯の残り時間の最大値(現在から指定時間帯の終了時間までの時間)(h)
である。
【0105】
合成出力準備値Ppは、式(1)、式(2)にTp=0,T
L=T
L’を代入すればよく、以下の通りである。
【数6】
【0106】
<指定時間帯の開始時間(開始時刻)は分かっているが、指定時間帯の終了時間(終了時刻)が不明な場合>
これは、準備時間帯の残り時間Tpは決まっているが、指定時間帯の残り時間T
Lが0より大きいことしか分からない場合に相当する。この場合における最悪条件は、指定時間帯の残り時間T
L=∞となることである。指定時間帯において放電を長時間継続すると、やがて充電電力が不足するので、指定時間帯の開始時間(開始時刻)までに合成出力をゼロにする必要がある。上述した式(1)において、PpをPgに置き換え、T
L=∞とすると、最大必要充電電力量Esmaxは、次の式(7)により計算することができる。しかし、必要充電電力=∞にすることは実際には不可能であるため、式(7)において、Pg
2/2rで算出される最大必要充電電力の上限値を採用する。
【数7】
但し、
Pg:現在の変動電源の出力(kW)
r:出力変化速度設定値(kW/h)
である。
【0107】
式(1)においてT
L=∞とすると、合成出力準備値Ppの方程式は以下の通りである。
【数8】
【0108】
実際には放電可能電力量Edを無限大にすることはできないので、Pp≦rTpは制約条件である。つまり、合成出力準備値Ppは(2rEd)
1/2およびrTpのいずれか小さい方を採用する。
【数9】
【0109】
次に、第4の実施の形態に係る電力安定化システムにおいて、合成出力を合成出力準備値まで下げた場合のシミュレーション結果について説明する。
【0110】
図14Aから
図14Cは発電所合成出力を合成出力準備値まで下げた場合のシミュレーション結果を示している。
図14Aは電力貯蔵装置11のSOC値(%)、
図14Bは出力変化速度(%/min)、
図14Cは発電所合成出力、変動電源出力(風力発電機16の発電電力)、蓄電池出力(電力貯蔵装置11の充放電電力)を示している。
【0111】
シミュレーションでは、7時00分から10時00分までは第1減少不可時間帯となる指定時間が設定され、16時00分から19時00分までは第2減少不可時間帯となる指定時間が設定されている。また、11時30分から13時30分に掛けて増減不可時間帯となる指定時間帯が設定され、20時00分から23時00分に掛けて増加不可時間帯となる指定時間帯が設定されている。各指定時間帯の約1時間前から準備時間帯が設定されている。
【0112】
図14Cに示す時間帯Aに着目すると、第1減少不可時間帯(指定時間)の準備時間帯に入るまでは高い合成出力(最大値)が維持されている(
図11の通常時の合成出力準備関数)。第1減少不可時間帯(指定時間)の準備時間帯に入ると、合成出力準備関数の傾きが小さくなるので、変動電源出力が100%であったとしても、合成出力準備値が下げられて合成出力が低下する。第1減少不可時間帯(指定時間)の開示時刻まで合成出力準備値が小さくなり、この時の合成出力準備関数の傾きが最小になっている。その後、第1減少不可時間帯に入っても変動電源出力が100%を維持している一方で、第1減少不可時間帯(指定時間)の残り時間が小さくなるので、合成出力を上げても必要充電電力を確保できる状況になる。したがって、再び合成出力準備関数の傾きが大きくなり、合成出力準備値が上げられる結果、合成出力が100%まで回復する。
【0113】
次に、
図14Cに示す時間帯Bに着目する。増加不可時間帯(指定時間)の準備時間帯に入ると、再び合成出力準備関数の傾きが小さくなり、増加不可時間帯の開始時刻まで合成出力準備値が下げられ、その後は一定に維持されるように制御される。シミュレーションでは増加不可時間帯(指定時間)の準備時間帯に入ると変動電源出力(風力発電機16の発電電力)が減少している。このため、合成出力を維持するために蓄電池出力(電力貯蔵装置11の放電電力)が0から徐々に上昇する。蓄電池出力の上昇に対応してSOC値が低下を開始する(
図14A)。増加不可時間帯(指定時間)の間は変動電源出力が回復していないため、蓄電池出力(電力貯蔵装置11の放電電力)で合成出力を維持している。増加不可時間帯(指定時間)の間はSOCが継続して低下するが、SOC不足を生じることなく、増加不可時間帯(指定時間)が経過している。
【0114】
そして、増加不可時間帯(指定時間)が経過した後は、合成出力が変動電源出力と一致するまで合成出力を下げるように制御する。第2減少不可時間帯の開始時刻(16時00分)以降は合成出力を制限する制御は行われていない。
【0115】
また、上記で説明した制御装置13について、図示しないCPU、メモリ(ハードディスク等の記憶装置)を備えており、各種補正演算処理、補償電力の演算処理及び電力変換器12の制御処理等については、ハードウェアによって実現しても良いし、CPUが記憶装置に記憶されている所定のアプリケーションプログラムを読出して実行することにより実現しても良い。また、ハードウェアによって実現する場合、プログラマブルコントローラ等のディジタル回路を用いて制御しても良いし、オペアンプ等によるアナログ制御回路で実現しても良い。
【0116】
上記の説明では電力系統に連系される変動電源として風力発電機を例示したが、本発明は風力発電機に限定されない。例えば、変動電源は太陽光発電等であっても良い。本実施の形態は、再生可能エネルギーを回収して発電する変動電源を対象とするが、必ずしも再生可能エネルギーに限定されない。
【解決手段】電力安定化システムの制御装置は、合成出力の長周期変動を緩和するための長周期変動緩和制御部と、長周期変動緩和指定時間帯の開始時点での制御点である合成出力準備値を計算する合成出力準備値計算部と、前記合成出力準備値を前記合成出力目標値に反映させる合成出力準備値設定部とを有する。