(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
放射空調に用いる放射パネルであって、前記放射パネルの表面と裏面との間に設けられた、冷熱媒を通過させる流路と、前記表面と前記裏面とを貫通し、室内空気を循環させ且
つ温度及び湿度を調節した調和空気の吹出し口となり、前記表面及び前記裏面の少なくとも一方に絞り加工を施して形成した凹部の底面を他面と圧着するとともに、圧着する領域の少なくとも一部を穿孔することにより設けられる通気孔とを有する放射パネルと、
前記室内空気を取り入れると共に前記放射パネルの前記通気孔へ調和空気を送る、放射対流併用空調機又はファンコイルと、
を備える放射空調システム。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る放射空調システムの実施の形態について、図面に基づいて説明する。なお、本実施の形態に示す放射空調システムは一例であり、本発明は、実施形態の構成には限定されない。
【0020】
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係る放射空調システム1の概略構成を示す図である。放射空調システム1は、放射対流併用空調機11と、吸気路12と、送風路13と、送水路14と、放射パネル15とを含む。また、室2は空調対象の空間であり、本実施形態では室2の天井に放射パネル15、及び吸気路12の端部である吸気口21が設けられている。また、室2は、空調の目標温度(設定温度)を設定するためのコントローラ22、室2内の温度を測定する室温センサ23を備えている。なお、
図1において破線の矢印は空気の流れを示している。
【0021】
吸気路12は、室2の吸気口21及び放射対流併用空調機11と接続されており、室2内の空気を放射対流併用空調機11へ取り入れる。また、放射対流併用空調機11は、吸気路12から取り入れた吸込み空気の温度を計測する吸込空気温度センサ121及び吸込み空気の湿度を計測する吸込空気湿度センサ122を有する。なお、吸込空気温度センサ121及び吸込空気湿度センサ122は吸気経路上に存在すればよく、吸気路12が、吸込空気温度センサ121及び吸込空気湿度センサ122を有するようにしてもよい。
【0022】
放射対流併用空調機11は、放射空調と対流空調の同時運転が可能な空調機である。放射対流併用空調機11は、送風機(ファン)111を有しており、吸気路12から取り入れられた空気を空気熱交換器112で処理(加熱又は冷却、及び加湿又は除湿)し、送風路13へ送る。また、放射対流併用空調11は、吹出し空気の温度を計測する吹出空気温度センサ131及び吹出し空気の湿度を計測する吹出空気湿度センサ132を有する。なお、吹出空気温度センサ131及び吹出空気湿度センサ132は送風経路上に存在すればよく、送風路13が、吹出空気温度センサ131及び吹出空気湿度センサ132を有するようにしてもよい。また、放射対流併用空調機11は、放射用水熱交換器113を有しており、放射対流併用空調機11と放射パネル15とを循環する水等の冷熱媒を放射用水熱交換器113によって冷却又は加温する。また、放射対流併用空調機11は、ポンプ14
1を用いて冷熱媒を送水路14へ送る。送水路14は、ポンプ141によって送られる冷熱媒の温度を計測する流出水温度センサ142を備えている。なお、流出水温度センサ142は送水経路上に存在すればよく、放射対流併用空調機11が、流出水温度センサ142を備えるようにしてもよい。また、空気熱交換器112及び放射用水熱交換器113は、圧縮機115、図示していない膨張弁、外部熱源との熱交換器等と接続され、冷凍サイクル116を形成する。空気熱交換器112及び放射用水熱交換器113は、上流側に空気熱交換器、下流側に放射用水熱交換器となるように直列に接続され、各熱交換器に熱が供給される。
【0023】
また、放射対流併用空調機11は、制御部114を有している。制御部114は、例えばマイクロコントローラを含み、放射空調システム1の動作を制御する。また、制御部114は、各センサと接続されており、各センサが計測したデータを継続的に取得する。また、制御部114は、送風機111及びポンプ141とも接続され、送風機111の出力(風量)や、ポンプ141の出力(送水量)を制御する。また、制御部114は、室2内のコントローラ22と有線又は無線で接続され、起動若しくは停止、又は目標温度等の入力を受ける。そして、制御部114は、目標温度等と各センサを介して取得した温度及び湿度とを用いて圧縮機115の運転周波数を変更し、熱交換器の出力を制御する。
【0024】
送風路13及び送水路14は、それぞれ放射パネル15と接続されている。放射パネル15は、放射空調に用いられるパネルであり、放射パネル15の表面及び裏面の間(パネルの内部)に、冷熱媒である冷水又は温水が通過する流路151を有する。また、放射パネル15は、表面と裏面とを貫通する空気の通気孔152を有する。なお、冷熱媒の流路151と空気の通気孔152とは互いに区画されている。また、放射パネル15は、例えば天井への埋め込み又は天井からの吊り下げによって室2内に設けられ、室2内の空気と放射によって熱交換を行う。なお、送風路13を介して放射パネル15に送られる調和空気は、空気方式で放射パネル15による放射空調を行うものであるとともに、通気孔152を介して流速の低い対流空調を行うものという側面もある。
【0025】
<放射パネル>
図2は、放射パネル15の一例を模式的に示す斜視図である。また、
図3は、放射パネル15の一例を模式的に示す断面図である。放射パネル15は、2枚の金属板を、内部に空洞が形成されるように重ねたパネルである。放射パネル15の内部には、冷熱媒が通過する流路151を有し、冷熱媒の流入口153及び流出口154を有する。
図2の例では、流入口153及び流出口154は、放射パネル15のほぼ対向する位置に設けられているが、このような例には限られない。また、放射パネル15は、表面及び裏面を貫通する空気の通気孔152を複数有している。すなわち、流路151の形状は、内部が通気孔152である複数の柱を有する、ほぼ直方体となっている。なお、通気孔152は、放射パネル15のほぼ全面にわたって設けられていることが好ましい。後述するように放射パネル15の表面を通気孔152から放出する空気で覆うためには、各通気孔152の間隔を短くして通気孔152の数を増やすことが好ましい。また、放射パネル15の面積に対する通気孔152の開口率も、例えば、通気孔152からの空気の噴流が室2内の空気を放射パネル15の表面にできるかぎり誘引しないように適宜設計するようにする。また、放射パネル15は、送風路13から各通気孔152へ空気を漏れなく送るためのカバー155(
図3に図示)を備えていてもよい。カバー155を備える場合、カバー115によって放射パネル15の一方の面(例えば、裏面)をさらに覆うようにチャンバー(空気室)が形成され、送風路13から送られてくる空気がチャンバーにおいて複数の通気孔152へ分岐する。このように、本実施形態に係る放射パネル15は、水式及び空気式を併用可能となっている。
【0026】
図4Aは、本実施形態に係る放射パネル15の製造方法を説明するための図である。図
4Aは、1つの通気孔152とその周辺を表す断面図である。放射パネル15は、2枚の金属板を圧着することにより形成される。第1及び第2の板には、絞り(深絞り)加工により円錐台形状の凹部が複数設けられている。なお、
図4Aにおいて一点鎖線は、パンチを用いてプレスする方向を示している。また、各凹部の底面には、第1及び第2の板の対応する位置に穴が設けられている。凹部の深さは、例えば5mm程度であるが、このような例には限られない。また、穴は、例えば直径10mm程度の円形であるが、このような例には限られない。そして、穴の位置を合わせて第1の板の凹部の底面と第2の板の凹部の底面とが圧着される。また、放射パネル15の縁は、例えば圧着したり、溶接したりする。このようにして、第1の板と第2の板との間に、冷熱媒を直接通過させることのできる流路151が形成されるとともに、第1の板と第2の板とを貫通する通気孔152が設けられる。なお、穴の開いていない第1の板と穴の開いていない第2の板とを圧着した後に貫通孔152を形成するようにしてもよい。また、放射パネル15の通気孔152の開口率と吹出す空気の量とのバランスにより、通気孔152から偏りなく空気を吹き出すようにしてもよい。
【0027】
なお、放射パネル15は、一方の板に絞り加工を施すことで通気孔152を形成するようにしてもよい。
図4Bは、他の例に係る放射パネル15の製造方法を説明するための図である。
図4Bの例では、第1の板には絞り加工により円錐台形状の凹部が設けられている。また、第2の板は、平面形状であり、第1の板の穴と対応する位置に穴が設けられている。このような構成であっても、第1の板と第2の板との間に、冷熱媒を直接通過させることのできる流路151が形成されるとともに、第1の板と第2の板とを貫通する通気孔152が設けられる。この場合、凹部が設けられた板を、放射パネル15の表側としてもよいし、裏側としてもよい。
【0028】
<作用>
次に、
図5を用いて放射空調システム1の作用を説明する。
図5は、放射空調システム1の起動後における室2内の空気の状態を模式的に示した図である。冷房運転の場合、放射対流併用空調機11は、室2内から取り入れた27.0℃DB、50%RHの空気を、空気熱交換器112を用いて冷却及び除湿する。そして、放射対流併用空調機11は、12.0℃DB、90%RHの空気にして送風路13及び放射パネル15を通して室2内の上層(空気層A)に送風する。ここで、12.0℃DB、90%RHの流出空気の露点温度は、湿り空気線図によれば、10.41℃である。また、放射パネル15からの流出空気は、室2内の空気と徐々に混合する。室2内の中層(空気層B)は、流出空気と室内空気が50%ずつ混合した混合空気を含む。すなわち、混合空気は、例えば、19.5℃DB、67%RHであり、露点温度は13.21℃である。また、室2内の下層(空気層C)は、放射空調システム1の起動時の室内空気である。室内空気は、上記の通り27.0℃DB、50%RHであり、露点温度は15.7℃である。また、放射対流併用空調機11は、例えば10℃の水を送水路14に送水する。このとき、送水路14での熱ロスを少なく見積もっても、例えば放射パネル15の表面温度は12℃程度になる。ここで、放射パネル15の表面温度を12℃程度まで下げても、室2内の上層Aの流出空気の露点温度は10.41℃であるため、放射パネル15は結露しない。上流側に、流出空気の露点温度に影響する空気熱交換器112、下流側に、放射パネル15の表面温度に影響する放射用水熱交換器113となるように、冷凍サイクルにおいて直列に接続することで、放射パネル15から吹き出す空気の露点温度は放射パネル15の表面温度よりも高くなる。また、本実施形態では、外気を取り入れるのでなく室2内の吸気口21から取り入れた室内空気を循環させるため、流出空気の露点温度を上記のような温度まで下げることができる。
【0029】
結露対処なしで室内に放射パネルを設置する場合、従来は、室内空気の露点温度よりも放射パネルの表面温度が高くなるように制御して結露を抑制していた。例えば、露点温度が15.7℃の場合、安全をみて送水温度を16℃とすると、送水管の熱ロスにより放射
パネル温度は20℃程度になる。一方、本実施形態に係る放射空調システム1は、放射パネル15を貫通するように複数設けられた通気孔152から冷却及び除湿された空気を流すことで、放射パネル15の周囲を露点温度の低い空気で包み、放射パネル15の表面温度を室内空気の露点温度よりも下げても結露を抑制することが可能となっている。
【0030】
次に、放射パネル15の吸熱量について説明する。放射パネル15の表面温度と周囲の温度との差に応じて、放射パネル15の吸熱量は変わる。室2内の各表面の放射率が0.9の場合、吸熱量qr[W/m
2]は、次の数1で近似的に算出できる。
【数1】
なお、tpは放射パネルの表面温度[℃]、tuは非パネル面(放射パネル以外の面)の平均温度[℃]であり、5.67×10
-8[W/m
2・K
4]は、ステファン・ボルツマン定数である。
【0031】
上記の数式によれば、tpが16℃、tuが27℃の場合、qrは−56.4W/m
2
と算出される。なお、マイナスの値は吸熱を意味する。また、tpが20℃、tuが27℃の場合、qrは−37.3W/m
2と算出される。すなわち、tpが16℃の場合の吸
熱量は、tpが20℃の場合の吸熱量と比較して1.51倍増加している。よって、表面温度が16℃の放射パネルは、表面温度が20℃の放射パネルの1/1.51倍の面積であっても、同等の吸熱量となる。したがって、上記の温度設定の場合は、放射パネルの面積を34%小型化でき、放射パネルの製造にかかるコストを削減できる。
【0032】
また、快適性を評価するための温熱環境評価指数として、PMV(Predicted Mean Vote:予測温冷感申告)が定義されている。PMV値は、室温、平均放射温度、気流、湿度
、代謝量、及び着衣量といった要素に基づいて算出される。また、PMV値が−0.5から+0.5の間であれば、90%の人にとって快適であるとされている。仮に、代謝量が1.1、着衣量が0.6、室温が27℃、平均放射温度が25℃の場合において、水式放射を採用して気流が0m/s、湿度が50%のときは、PMV値は0.46と算出される。しかし、さらに空気式放射を併用して、気流が0.25m/s、湿度が45%、室温が29℃、平均放射温度が24℃になったとすると、PMV値は0.43になる。すなわち、室温が27℃から29℃に上がっても、PMV値(すなわち、快適性)は水式放射の例とほぼ変わらないため、室温が高めであっても快適性はほぼ変わらないといえる。
【0033】
また、放射空調システム1は、放射対流併用空調機11と水式及び空気式を併用可能な放射パネル15とを採用することにより、空調機の送風路13(例えば、送風ダクト)及び送水路14(例えば、送水配管)の接続が容易になり、施工性が向上する。
【0034】
<制御方法>
図6A及び
図6Bは、放射空調システム1の冷房運転を制御する方法の一例を示す処理フロー図である。放射対流併用空調機11の制御部114は、コントローラ22から運転開始の指示を受けると、
図6A及び
図6Bに示すような処理を行う。なお、制御部114は、吸込温度、吸込湿度、吹出温度、吹出湿度、流出水温度、室内温度等を、各種センサを介して継続的に取得したり、ポンプの送水量、冷房能力(出力)等を変更したりする。なお、本実施形態では、放射対流併用空調機11の冷房能力(出力)は、圧縮機115の運転周波数で制御される。
【0035】
まず、制御部114は、立ち上がり運転中であるか判断する(
図6A:S1)。ここで、運転開始から所定時間を立ち上がり時間とし、放射空調システム1は、運転開始後所定
時間が経過するまで立ち上がり運転を行う。立ち上がり運転中であると判断された場合(S1:YES)、制御部114は、送風機111の回転を高速(H)に設定する。立ち上がり運転では出力を大きくすることで、空調対象を速やかに目標温度に近づけることができる。その後、処理はS8へ遷移する。
【0036】
立ち上がり運転中でないと判断された場合(S1:NO)、制御部114は、流出水温度センサ142が取得した流出温度と室内露点温度とを比較し、流出温度+1℃≦室内露点温度であるか判断する(S3)。なお、室内露点温度は、吸込空気温度センサ121及び吸込空気湿度センサ122が取得する吸込温度及び吸込湿度に基づいて求めることができる。流出温度+1℃≦室内露点温度である場合(S3:YES)、制御部114は、送風機の回転を高速(H)に設定する(S4)。その後、処理はS8に遷移する。
【0037】
一方、流出温度+1℃≦室内露点温度でない場合(S3:NO)、制御部114は、流出温度−1℃≦室内露点温度であるか判断する(S5)。流出温度−1℃≦室内露点温度である場合(S5:YES)、制御部114は、送風機の回転を中速(M)に設定する(S6)。その後、処理はS8へ遷移する。
【0038】
また、流出温度−1℃≦室内露点温度でない場合(S5:NO)、制御部114は、送風機の回転を低速(L)に設定する(S7)。その後、処理はS8へ遷移する。
【0039】
S2、S4、S6又はS7の後、制御部114は、吸込空気温度センサ121が取得した吸込温度と設定された目標温度とを比較し、目標温度+3℃≦吸込温度であるか判断する(
図6B:S8)。目標温度+3℃≦吸込温度である場合(S8:YES)、制御部114は、高い出力で放射対流併用空調機11を稼働させる(S9)。具体的には、制御部114は、圧縮機115の運転周波数を例えば40Hz以上に設定する。その後、処理はS15へ遷移する。
【0040】
一方、目標温度+3℃≦吸込温度でない場合(S8:NO)、制御部114は、目標温度+1℃≦吸込温度であるか判断する(S10)。目標温度+1℃≦吸込温度である場合(S10:YES)、制御部114は、中程度の出力で放射対流併用空調機11を稼働させる(S11)。具体的には、制御部114は、圧縮機115の運転周波数を20Hz以上40Hz未満に設定する。その後、処理はS15へ遷移する。
【0041】
また、目標温度+1℃≦吸込温度でない場合(S10:NO)、制御部114は、目標温度−1℃<吸込温度、又は50%<吸込湿度であるか判断する(S12)。目標温度−1℃<吸込温度、又は50%<吸込湿度である場合(S12:YES)、制御部114は、低い出力で放射対流併用空調機11を稼働させる(S13)。具体的には、制御部114は、圧縮機115の運転周波数を例えば10Hz以上20Hz未満に設定する。その後、処理はS15へ遷移する。
【0042】
一方、標温度−1℃<吸込温度でなく、且つ50%<吸込湿度でない場合、制御部114は、最低レベルの出力で放射対流空調機11を稼働させる(S14)。具体的には、制御部114は、圧縮機115の運転周波数を例えば10Hz未満に設定する。その後、処理はS15へ遷移する。
【0043】
S9、S11、S13又はS14の後、制御部114は、流出水温度センサ142が取得した目標温度と吸込温度とを比較し、目標温度−1℃>吸込温度であるか判断する(S15)。目標温度−1℃>吸込温度である場合(S15:YES)、制御部114は、ポンプ141が放射パネル15へ送る水の流量を減少させる(S16)。例えば、制御部114はポンプ141の流量を0.8倍とし、処理はS15に遷移する。一方、目標温度−
1℃>吸込温度でない場合(S15:NO)、制御部114は、処理を終了するか判断する(S17)。例えば、コントローラ22を介して運転の停止を指示された場合、処理を終了すると判断し(S17:YES)、冷房運転を終了する。また、処理を終了しないと判断された場合(S17:NO)、処理はS8に戻る。さらに、目標温度−1℃>吸込温度でない場合(S15:NO)、ポンプ141の流量が所定の閾値以下であれば、増加させるようにしてもよい。
【0044】
S1及びS2の処理は、運転開始時の立ち上がり時間を短縮するための制御である。立ち上がり時に通気孔152から吹き出す空気の量を増加させるように制御するため、負荷の変動に早急に対処できる空気式(対流式)の特性を活かして、運転開始から快適な状態になるまでの時間を短縮できるようになる。
【0045】
また、S3からS7までの処理は、放射パネル15の表面温度(流路151を通過する水の温度)よりも室2内の空気の露点温度の方が高いほど、空気熱交換器112で流路151を通過する水の温度より低い露点温度まで除湿された空気が、通気孔152から多く放出されるように制御するものである。なお、具体的な送風機111の回転数は、適宜決定することができる。
図6Aのようにすれば、放射パネル15の結露を抑制できる範囲内で、ドラフト気流による不快感を抑制することができる。
【0046】
S8からS14の処理は、室2内の温度と目標温度との差が大きいほど圧縮機115の出力を上げて冷房運転を行うものである。なお、圧縮機115の具体的な運転周波数は、上記の例に限定されない。また、負荷が大きいほど放射パネル15の表面温度(流路151を通過する水の流出温度)が低くなるように制御される。そして、上述の通り、S3〜S7の処理を通じて、流出温度が低い場合には通気孔から吹き出す空気の量が増加するように制御される。よって、S3〜S14の処理によれば、負荷の変動に早急に対応可能であるという空気式(対流式)の特性を活かして、例えば機器の運転開始から快適な状態になるまでの時間や負荷の変動に対応するまでの時間を短縮できるようになる。また、ユーザが設定した温度に近い状態においては、気流によるドラフトや騒音を抑え、放射を主体とした運転を行う。すなわち、熱容量が大きくて搬送動力が小さく温度変化の少ない水と、搬送動力は大きいが負荷を急速に冷却可能な空気とを状況に応じて制御することにより、それぞれの特性を活かして相乗効果を得ることができる。
【0047】
また、S15及びS16の処理は、室2内の温度が目標温度範囲よりも低くなった場合に、放射パネルを流れる水の流量を下げるように制御するものである。このようにすれば、低負荷時に放射パネルの冷房能力を下げて、室2内の冷え過ぎを防ぐとともに、ポンプの運転電力を低減することができる。
【0048】
図7A及び
図7Bは、放射空調システム1の暖房運転を制御する方法の一例を示す処理フロー図である。放射対流併用空調機11の制御部114は、コントローラ22から運転開始の指示を受けると、
図7A及び
図7Bに示すような処理を行う。
【0049】
まず、制御部114は、立ち上がり運転中であるか判断する(
図7A:S21)。暖房運転時においても、運転開始から所定時間を立ち上がり時間とし、放射空調システム1は、運転開始後所定時間が経過するまで立ち上がり運転を行う。立ち上がり運転中であると判断された場合(S21:YES)、制御部114は、送風機111の回転を高速(H)に設定する。その後、処理はS28へ遷移する。
【0050】
立ち上がり運転中でないと判断された場合(S21:NO)、制御部114は、流出水温度センサ142が取得した流出温度と室内温度とを比較し、流出温度−3℃≧室内温度であるか判断する(S23)。流出温度−3℃≧室内温度である場合(S23:YES)
、制御部114は、送風機の回転を高速(H)に設定する(S24)。その後、処理はS28に遷移する。
【0051】
一方、流出温度−3℃≧室内温度でない場合(S23:NO)、制御部114は、流出温度−1℃≧室内温度であるか判断する(S25)。流出温度−1℃≧室内温度である場合(S25:YES)、制御部114は、送風機の回転を中速(M)に設定する(S26)。その後、処理はS28へ遷移する。
【0052】
また、流出温度−1℃≧室内温度でない場合(S25:NO)、制御部114は、送風機の回転を低速(L)に設定する(S27)。その後、処理はS28へ遷移する。
【0053】
S22、S24、S26又はS27の後、制御部114は、吸込空気温度センサ121が取得した吸込温度と設定された目標温度とを比較し、吸込温度≦目標温度−3℃であるか判断する(
図7:S28)。吸込温度≦目標温度−3℃である場合(S28:YES)、制御部114は、高い出力で放射対流併用空調機11を稼働させる(S29)。具体的には、制御部114は、圧縮機115の運転周波数を例えば40Hz以上に設定する。その後、処理はS35へ遷移する。
【0054】
一方、吸込温度≦目標温度−3℃でない場合(S28:NO)、制御部114は、吸込温度≦目標温度−1℃であるか判断する(S30)。吸込温度≦目標温度−1℃である場合(S30:YES)、制御部114は、中程度の出力で放射対流併用空調機11を稼働させる(S31)。具体的には、制御部114は、圧縮機115の運転周波数を20Hz以上40Hz未満に設定する。その後、処理はS35へ遷移する。
【0055】
また、吸込温度≦目標温度−1℃でない場合(S30:NO)、制御部114は、吸込温度<目標温度であるか判断する(S32)。吸込温度<目標温度である場合(S32:YES)、制御部114は、低い出力で放射対流併用空調機11を稼働させる(S33)。具体的には、制御部114は、圧縮機115の運転周波数を例えば10Hz以上20Hz未満に設定する。その後、処理はS35へ遷移する。
【0056】
一方、吸込温度<目標温度でない場合(S32:NO)、制御部114は、最低レベルの出力で放射対流空調機11を稼働させる(S34)。具体的には、制御部114は、圧縮機115の運転周波数を例えば10Hz未満に設定する。その後、処理はS35へ遷移する。
【0057】
S29、S31、S33又はS34の後、制御部114は、吸込温度>目標温度+1℃であるか判断する(S35)。吸込温度>目標温度+1℃である場合(S35:YES)、制御部114はポンプ141が放射パネル15へ送る水の量を減少させる(S36)。例えば、制御部114は、ポンプ141から送り出される水の流量を0.8倍し、処理はS35へ遷移する。
【0058】
一方、吸込温度>目標温度+1℃でない場合(S35:NO)、制御部114は、処理を終了するか判断する(S37)。例えば、コントローラ22を介して運転の停止を指示された場合、処理を終了すると判断し(S37:YES)、暖房運転を終了する。また、処理を終了しないと判断された場合(S37:NO)、処理はS21に戻る。なお、吸込温度>目標温度+1℃でない場合(S35:NO)、ポンプ141の流量が所定の閾値以下であれば、増加させるようにしてもよい。
【0059】
S21及びS22の処理は、運転開始時の立ち上がり時間を短縮するための制御である。立ち上がり時に通気孔から吹き出す空気の量を増加させる制御を行うため、負荷の変動
に早急に対処できる空気式(対流式)の特性を活かして、運転開始から快適な状態になるまでの時間を短縮できるようになる。
【0060】
また、S23からS27までの処理は、放射パネル15の表面温度(流路151を通過する水の温度)が室2内の空気の温度と比較して高いほど、空気熱交換器112で加熱された空気が、通気孔152から通常よりも多く吹き出すように制御するものである。なお、具体的な送風機111の回転数は、適宜決定することができる。
図7Aのようにすれば、室温よりも放射パネル付近(すなわち、室2のうち天井側の空間)に滞留する高温の空気を室2内(室2のうち床面側の空間)に拡散させることができ、空間的な上下の温度差が大きい際にユーザに与える不快感を低減させることができる。
【0061】
さらに、
図7AのS21において、室2の空間的な上下での温度差が所定の閾値以上の場合にもS22へ遷移して送風機111の回転を高速(H)にするようにしてもよい。上下温度差は、例えば室2内の室温センサ23が計測した温度と、天井に設けられた吸込口21から吸い込んだ空気の温度を計測する吸込温度センサ121の吸込温度との差を算出することにより求めてもよいし、室2の上下にセンサを設けて求めるようにしてもよいもよい。このようにすることでも、対流効果により、空間的な上下で温度差が大きい際にユーザに与える不快感を低減させることができる。
【0062】
S28からS34の処理は、室2内の温度と目標温度との差が大きいほど出力を上げて暖房運転を行うものである。なお、具体的な圧縮機115の運転周波数は、上記の例に限定されない。また、負荷が大きいほど通気孔から吹き出す空気の温度及び放射パネル15の表面温度(すなわち、流路151を通過する水の流出温度)が高くなるように制御される。また、流出温度が高くなることにより、S23からS27の処理を通じて通気孔から吹き出す空気の量が増加するように制御される。このような制御により、負荷の変動に早急に対処できる空気式(対流式)の特性を活かして、運転開始から快適な状態になるまでの時間を短縮できるようになる。また、ユーザが設定した温度に近い状態においては、気流によるドラフトや騒音を抑え、放射を主体とした運転を行う。すなわち、熱容量が大きくて搬送動力が小さく温度変化の少ない水と、搬送動力は大きいが負荷を急速に加熱可能な空気とを状況に応じて制御することにより、それぞれの特性を活かして相乗効果を得ることができる。
【0063】
また、S35及びS36の処理は、室2内の温度が目標温度範囲よりも高くなった場合に、放射パネルを流れる水の流量を下げるように制御するものである。このようにすれば、低負荷時に放射パネルの暖房能力を下げて、室2内の過熱を防ぐとともに、ポンプの運転電力を低減することができる。
【0064】
なお、制御部114は、
図6に示した冷房運転と
図7に示した暖房運転とを自動的に切り替えるようにしてもよい。例えば、制御部114は、吸込温度と目標温度とを比較し、目標温度の方が低い場合は冷房運転を実行させ、目標温度の方が高い場合は暖房運転を実行させる。
【0065】
<第2の実施形態>
図8は、第2の実施形態に係る放射空調システム1aの一例を示す概略構成図である。放射空調システム1aが備えるファンコイル11aは、流量調整弁16を介して外部の熱源水を運ぶ送水管3と接続されている。そして、外部から取り入れた熱源水は、空気熱交換器112aを通過した後に送水路14を介して放射パネル15へ送られる。また、流量調整弁16は制御部114と接続されており、制御部114は流量調整弁16の開度を変更することができる。すなわち、制御部114は、空気熱交換器112a及び放射パネル15へ流れる熱源水の量を制御することができる。本実施形態では、上流側に、流出空気
の露点温度に影響する空気熱交換器112a、下流側に放射パネル15となるように、熱源水の流路状において直列に接続することで、放射パネル15から吹き出す空気の露点温度は放射パネル15の表面温度よりも高くなる。なお、第1の実施形態に係る
図1と同様の構成要素には対応する符号を付して説明を省略する。また、放射パネル15は、第1の実施形態と同様のものを用いることができる。
【0066】
図8の放射空調システム1aも、
図6A〜
図7Bとほぼ同様の処理を行う。ただし、S9、S11及びS13並びにS29、S31及びS33において、圧縮機の運転周波数を変更するのではなく、流量調整弁16の開度を変更することにより、ファンコイル11aの出力を制御する。すなわち、本実施形態では、流量調整弁16の開度を大きくすることにより出力を上げる。このような構成であっても、第1の実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0067】
<第3の実施形態>
図9は、第3の実施形態に係る放射空調システム1bの一例を示す概略構成図である。放射空調システム1bは、放射対流併用空調機11の代わりに、ファンコイル11bを用いる。また、放射空調システム1bは、外部の熱源水を運ぶ送水管3と接続されており、ポンプ31を用いて外部の熱源水を空気熱交換器112bに取り入れる。なお、第1の実施形態に係る
図1と同様の構成要素には対応する符号を付して説明を省略する。また、
図8の構成と比較すると、
図9の構成は流量調整弁16を有していない点で異なる。
【0068】
ファンコイル11bは、吸気路12を介して室2内から空気を取り入れる。また、ファンコイル11bは、空気熱交換器112bを有しており、室2内から取り入れた空気と外部から取り入れた熱源水との間で熱交換を行う。また、ファンコイル11bは、送風機111を有しており、空気熱交換器112bを通した空気を送風路13へ送る。送風路13は、ファンコイル11bと放射パネル15とを接続している。また、ファンコイル11bと放射パネル15とが送水路14によっても接続されており、空気熱交換器112bを通過した熱源水が放射パネル15へ送られる。なお、放射パネル15は、第1の実施形態と同様のものを用いることができる。
【0069】
<作用及び効果>
例えば、冷房運転時の室2内の空気は、27℃DB、50%RHであり、露点温度は15.7℃であるものとする。また、外部からの熱源水は、7℃で空気熱交換器112bに導入されるものとする。この場合、例えば、送風路13に送られる空気は、12℃DB、90%RHであり、露点温度は10.41℃となる。また、例えば、送水路14に送られる水は12℃となる。よって、本実施形態に係る放射空調システム1bの場合も、放射パネル15の結露が抑制される。なお、放射パネル15を通過後の水は、例えば17℃に上昇して冷凍機に戻る。このような構成でも、放射パネル15の結露を抑制できる。
【0070】
また、例えば、暖房運転時の室2内の空気は、20℃DB、50%RHであるものとする。また、外部からの熱源水は、40℃で空気熱交換器112bに導入されるものとする。この場合、例えば、送風路13に送られる空気は35℃、送水路14に送られる水も35℃となる。本実施形態に係る放射空調システム1bも、対流効果により快適性が損なわれることを抑制しつつ高温での運転が可能となる。
【0071】
<制御方法>
図10は、放射空調システム1bの冷房運転を制御する方法の一例を示す処理フロー図である。ファンコイル11bの制御部114は、コントローラ22から運転開始の指示を受けると、
図10に示すような処理を行う。なお、制御部114は、吸込温度、吸込湿度、吹出温度、吹出湿度、流出水温度、室内温度等を、各種センサを介して継続的に取得し
たり、送風機111の出力等を変更したりする。
【0072】
まず、制御部114は、吸込空気温度センサ121が取得した吸込温度と設定された目標温度とを比較し、目標温度+3℃≦吸込温度であるか判断する(
図10:S41)。目標温度+3℃≦吸込温度である場合(S41:YES)、制御部114は、高い出力で送風機111を稼働させる(S42)。具体的には、制御部114は、送風機111の回転を高速(H)に設定する。その後、処理はS45へ遷移する。
【0073】
一方、目標温度+3℃≦吸込温度でない場合(S41:NO)、制御部114は、目標温度−1℃≦吸込温度であるか判断する(S43)。目標温度−1℃≦吸込温度である場合(S43:YES)、制御部114は、中程度の出力で送風機111を稼働させる(S44)。具体的には、制御部114は、送風機111の回転を中速(M)に設定する。その後、処理はS45へ遷移する。
【0074】
また、目標温度−1℃≦吸込温度でない場合(S43:NO)、又はS42若しくはS44の後、制御部114は、流出水温度センサ142が取得した流出温度と吹出露点温度とを比較し、流出温度≦吹出露点温度であるか判断する(S45)。なお、吹出露点温度は、吹出空気温度センサ131及び吹出空気湿度センサ132が取得する温度及び湿度に基づいて求めることができる。流出温度≦吹出露点温度である場合(S45:YES)、制御部114は、送風機111の回転を高速(H)に設定する(S46)。その後、処理はS41に戻る。一方、流出温度≦吹出露点温度でない場合(S45:NO)、制御部114は、送風機111の回転を中速(M)に設定する(S47)。その後、制御部114は、目標温度−1℃<吸込温度、又は50%<吸込湿度であるか判断する(S48)。目標温度−1℃<吸込温度、又は50%<吸込湿度である場合(S48:YES)、制御部114は、送風機111の回転を低速(L)に設定する(S49)。その後、制御部114は、処理を終了するか判断する(S50)。例えば、コントローラ22を介して運転の停止を指示された場合、処理を終了すると判断し(S50:YES)、冷房運転を終了する。一方、処理を終了しないと判断された場合(S50:NO)、処理はS41に戻る。
【0075】
本実施形態では、室2内の温度と目標温度との差が大きい場合も、放射パネル15の表面温度よりも、放射パネル15の周囲の空気の露点温度の方が低くなるように制御する場合も、送風機111の回転数を上げることで対応する。このような構成及び制御によっても、放射パネル15の表面温度を室2内の空気の露点温度よりも下げても、放射パネル15の結露を抑制できるようになる。
【0076】
また、空調負荷が減少した場合に送風機111の回転数を下げても、放射冷却の効果により快適性は保たれる。ファンコイル11bの空気熱交換器112bで空気と熱交換した後の熱源水を用いて、放射パネル15でさらに放射冷却できるので、ファンコイルの能力及び放射パネルの能力の両者を利用できる。よって、ファンコイルを用いた空気式の放射空調と比較すると、ファンコイルの容量を小さくしても全体として同等の能力を担保できるとともに、ファンコイルの容量を小さくすることでコストを低減できる。
【0077】
図11は、放射空調システム1bの暖房運転を制御する方法の一例を示す処理フロー図である。ファンコイル11bの制御部114は、コントローラ22から運転開始の指示を受けると、
図11に示すような処理を行う。
【0078】
まず、制御部114は、吸込空気温度センサ121が取得した吸込温度と設定された目標温度とを比較し、吸込温度≦目標温度−3℃であるか判断する(
図11:S51)。吸込温度≦目標温度−3℃である場合(S51:YES)、制御部114は、送風機111の回転を高速(H)に設定する。(S52)。その後、処理はS56へ遷移する。
【0079】
一方、吸込温度≦目標温度−3℃でない場合(S51:NO)、制御部114は、吸込温度≦目標温度+1℃であるか判断する(S53)。吸込温度≦目標温度+1℃である場合(S53:YES)、制御部114は、送風機の回転を中速(M)に設定する(S54)。その後、処理はS56へ遷移する。
【0080】
また、吸込温度≦目標温度+1℃でない場合(S53:NO)、制御部114は、送風機111の回転を低速(L)に設定する(S55)。その後、制御部114は、処理を終了するか判断する(S56)。例えば、コントローラ22を介して運転の停止を指示された場合、処理を終了すると判断し(S56:YES)、暖房運転を終了する。一方、処理を終了しないと判断された場合(S56:NO)、処理はS51に戻る。
【0081】
上記処理は、室2内の温度と目標温度との差が大きいほど送風機111の回転数を上げて暖房運転を行うものである。なお、具体的な条件として示した値は、上記の例に限定されない。また、負荷が大きいほど通気孔から吹き出す空気の量も増加するように制御されるため、放射パネル15が高温になるほど対流効果を向上させることができる。また、空調負荷が減少した場合に送風機111の回転数を下げても、放射暖房の効果により快適性は保たれる。
【0082】
なお、本実施形態においても、制御部114は、
図10に示した冷房運転と
図11に示した暖房運転とを自動的に切り替えるようにしてもよい。例えば、制御部114は、吸込温度と目標温度とを比較し、目標温度の方が低い場合は冷房運転を実行させ、目標温度の方が高い場合は暖房運転を実行させる。
【0083】
<第4の実施形態>
図12は、第4の実施形態に係る放射空調システム1cの一例を示す概略構成図である。放射空調システム1cは、流量調整弁16の代わりに、外部の熱源水の流路を、空気熱交換器112c又は放射パネル15のいずれかに切り替えることができる切替三方弁17を備えている点で、
図8に示した放射空調システム1aとは異なっている。
図12では、
図8と同様の構成要素には対応する符号を付し、以下では差異を中心に説明する。
【0084】
<制御方法>
図13は、放射空調システム1cの冷房運転を制御する方法の一例を示す処理フロー図である。なお、S61からS66及びS68からS70は、
図10のS41からS46及びS48からS50とほぼ対応している。ただし、S66においては、さらに切替三方弁17を空気交換器112c側に切り替え、
図10の例と同様の運転を行う。また、S69においては、さらに切替三方弁17を放射パネル15側に切り替え、熱源水を直接放射パネル15に導入する。S69の処理によれば、放射パネル15の表面温度は、S49の場合と同程度になる。例えば、7℃の熱源水が放射パネル15に流れる。また、27℃DB、50%RHの室内空気を吸気口21から取り入れ、約12℃DB、約90%RHにして放射パネルから吹き出す。そして、放射パネル15と室2内の空気が熱交換し、放射パネルの温度は約12℃に上昇する。このとき、対流冷房と放射パネルの放射冷却で快適性は低下せず、放射パネル15の結露も抑制できる。
【0085】
図14は、放射空調システム1cの暖房運転を制御する方法の一例を示す処理フロー図である。なお、S81からS87は、
図11のS51からS57とほぼ対応している。ただし、S82においては、さらに切替三方弁17を空気交換器112c側に切り替え、
図11の例と同様の運転を行う。また、S84においては、さらに切替三方弁17を空気交換器112c側に切り替え、
図11の例と同様の運転を行う。また、S85においては、さらに切替三方弁17を放射パネル15側に切り替え、熱源水を直接放射パネル15に導
入する。S85の処理によれば、放射パネル15の表面温度はS55の場合と同程度になる。例えば、40℃の熱源水が放射パネル15に流れる。また、20℃DB、50%RHの室内空気を吸気口21から取り入れ、約30℃DB、約32%RHにして放射パネルから吹き出す。そして、放射パネル15と室2内の空気が熱交換し、放射パネルは約30℃になる。熱源水が空気熱交換器を通過することで、対流暖房を行うことができるとともに、放射パネル15を通過する熱源水の温度は下がるため、空間的な上下の温度差が大きい際にユーザに与える不快感を低減させることができ、快適性が保たれる。
【0086】
<パネルの変形例1>
図15は、変形例に係る放射パネル15aを示す平面図である。放射パネル15aは、当該放射パネル15aの周縁に沿ってスリット状の通気孔152aを有する。上述の放射パネル15は、複数の通気孔152から冷却及び除湿された空気を流すことで、放射パネル15aの周囲を露点温度の低い空気で包み、放射パネル15の表面温度を室内空気の露点温度よりも下げても結露を抑制することが可能となっている。すなわち、放射パネル15の全面にわたって通気孔152を設けることで、通気孔152からの噴流によって、露点温度の高い室内空気を放射パネル15の表面に誘引しないようにしている。しかしながら、例えば放射パネル15を室2の天井から吊り下げて設置する場合、通気孔152から流れ出す空気の流れ(噴流)が拡散し、周囲の空気を放射パネル15の側面及び表面に誘引してしまうおそれがある。そして、放射パネル15の側面及び表面に室2内の空気を誘引してしまうと、結露の原因となり得る。そこで、本変形例に係る放射パネル15aは、周縁に沿ってスリット状の通気孔152aを有し、放射パネル15aの周縁付近に除湿された空気をより多く吹き出す。なお、放射パネル15aの周縁に沿って設けられたスリット状の通気孔152aは、換言すれば、中心付近の通気孔152よりも開口面積の大きな通気孔であり、エアカーテンのように、室2内の空気を放射パネル15a側に誘引しないような気流を作るものといえる。このようにすれば、放射パネル15aの側面に室2内の空気が誘引されるのを抑制することができる。また、室2内の空気が多少誘引された場合であっても、当該箇所においてはより多くの除湿された空気を混合させることで。結露を抑制することができる。
【0087】
<パネルの変形例2>
また、スリット状の通気孔は、放射パネルの外周側に向かって切起こし曲げ加工されていてもよい。
図16は、変形例に係る放射パネル15bを示す断面図である。
図17は、変形例に係る放射パネル15bを示す斜視図である。本変形例では、放射パネル15bの周縁付近に設けられたスリット状の通気孔152bは切起こし曲げ加工(すなわち、2回の曲げ加工)がなされ、スリット状の通気孔152bの上に空気の吹出し方向を誘導する吹出方向誘導部156が設けられている。吹出方向誘導部156により、通気孔152bは、放射パネル15bの表面に沿って放射パネル15bの外周方向に空気を吹出す。このようにすれば、放射パネル15bの周囲を露点温度の低い空気で包むとともに、放射パネル15bの側面に室2内の空気が誘引されるのを抑制できる。
【0088】
<パネルの変形例3>
図18は、変形例に係る放射パネル15cを示す断面図である。放射パネル15cは、各通気孔から均等に空気を吹出すよう、チャンバーに充填物18を備える。充填物18は、例えば多孔質体であり、送風路13から送られてくる空気を放出する通気孔152に偏りが生じないよう、均一化する。このような構成によって、通気孔から吹き出す空気を均一化するようにしてもよい。
【0089】
<パネルの変形例4>
放射パネルは、流路151の対向する端部にサプライヘッダ及びリターンヘッダを備えるようにしてもよい。
図19は、変形例に係る放射パネル15dの分解斜視図である。放
射パネル15dはほぼ矩形であり、放射パネル15dの対辺に、流路の幅にわたって設けられ流路に偏りなく冷熱媒を流すためのサプライヘッダ153a、及び流路の幅にわたって設けられ流路151の流出口となるリターンヘッダ154aを有する。このようにすれば、放射パネル15d内に偏りなく冷熱媒を行き渡らせることができる。
【0090】
以上のような放射パネルの変形例は、第1の実施形態から第4の実施形態に適用することができる。また、複数の変形例に係る放射パネルの特徴を組み合わせてもよい。
【0091】
<その他の変形>
上述した例では、放射パネルを天井に設置するものとして説明したが、このような構成には限定されない。例えば、放射パネルは、室2内の壁面に設けたり、床面に立てて置くようにしてもよい。本発明に係る放射パネルは結露を抑制できるため、設置場所を選択する上での制約は少なくなっているといえる。また、上記の例では、放射パネルの内部に冷熱媒を直接流すことで効率よく熱交換を行えるようにしているが、このような構成には限定されない。例えば、水が放射パネルの全面を通過するように細長い流路を形成するようにしてもよく、放射パネルの内部に冷熱媒の流路となる管を備えるようにしてもよい。
【0092】
また、図示した処理フローも一例である。例えば、送風機111の回転数や放射対流併用空調機11の出力(圧縮機の運転周波数や流量調整弁の開度)の大きさは、より多くの段階に分けて制御してもよいし、所定の温度等に基づいて無段階で(線形に)制御してもよい。