特許第6338064号(P6338064)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6338064
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】腸の前処理のための方法及びキット
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/42 20170101AFI20180528BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20180528BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20180528BHJP
   A61K 31/77 20060101ALN20180528BHJP
   A61P 1/10 20060101ALN20180528BHJP
【FI】
   A61K47/42
   A61K47/02
   A61K47/12
   !A61K31/77
   !A61P1/10
【請求項の数】28
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2015-525619(P2015-525619)
(86)(22)【出願日】2013年8月2日
(65)【公表番号】特表2015-528819(P2015-528819A)
(43)【公表日】2015年10月1日
(86)【国際出願番号】US2013053394
(87)【国際公開番号】WO2014022760
(87)【国際公開日】20140206
【審査請求日】2016年7月5日
(31)【優先権主張番号】61/679,183
(32)【優先日】2012年8月3日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/708,430
(32)【優先日】2012年12月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514141592
【氏名又は名称】エムエスエム イノベーションズ、インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】ゴールリック、スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】チフマン、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】オームステッド、メロディ
(72)【発明者】
【氏名】ゴールリック、アダム
【審査官】 天野 貴子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−507281(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/007153(WO,A1)
【文献】 特開2007−228846(JP,A)
【文献】 M.KOBAYASHI et al,Chemical Senses,2010年,vo.35, no.3, p.J11,abstract no.38,doi:10.1093/chemse/bjp098
【文献】 K.ITO et al,Biochemical and Biophysical Research Communications,2007年,vol.360, p.407-411
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/00 − 47/69
A61K 9/00 9/72
A23L 33/00 − 33/29
A61K 31/77
A61K 49/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
味修正キットであって、予め測定された量の少なくとも1つの無機酸または有機酸と、ミラクリンとを有し、前記キットは、対象者に投与される胃腸管前処理組成物の塩味を軽減することによって当該対象者の胃腸管の洗浄を容易にし、前記予め測定された量の少なくとも1つの無機酸または有機酸は、前記胃腸管前処理組成物のpHを約2〜約5.5の範囲にわたるpHへと調節するのに十分である、キット。
【請求項2】
請求項1記載のキットにおいて、前記無機酸または有機酸が、クエン酸、酢酸及びアスコルビン酸、リン酸、リンゴ酸、コハク酸、ギ酸、フマル酸、マレイン酸、アジピン酸、酪酸、グリコン酸、乳酸、シュウ酸、酒石酸、及びこれらの混合物から成る群から選択される、キット。
【請求項3】
請求項1記載のキットにおいて、ミラクリンが、ミラクルフルーツ、ミラクルフルーツの果肉、ミラクルフルーツ粒剤、ミラクルベリー、ミラクルベリーエキス剤、ミラクルフルーツ錠剤、ミラクルベリー錠剤、または遺伝子改変生物により産生されるミラクリンを有する、キット。
【請求項4】
請求項1記載のキットにおいて、前記pHが約3〜約5の範囲にわたる、キット。
【請求項5】
請求項4記載のキットにおいて、前記pHが約4.8である、キット。
【請求項6】
請求項1記載のキットにおいて、ミラクリンが、胃腸管前処理組成物が投与される約1分〜約1時間前に前記対象者に提供される、キット。
【請求項7】
請求項6記載のキットにおいて、ミラクリンが、前記胃腸管前処理組成物が投与される約5分〜約30分前に提供される、キット。
【請求項8】
請求項7記載のキットにおいて、ミラクリンが、前記胃腸管前処理組成物が投与される約10分〜約15分前に提供される、キット。
【請求項9】
請求項6記載のキットにおいて、前記胃腸管前処理組成物の塩味が、ミラクリンが提供されなかった場合の胃腸管前処理組成物の塩味と比較して、少なくとも約20%軽減される、キット。
【請求項10】
請求項9記載のキットにおいて、前記胃腸管前処理組成物の塩味が、少なくとも50%軽減される、キット。
【請求項11】
請求項6記載のキットにおいて、前記胃腸管が腸であり、且つ前記胃腸管前処理組成物が腸前処理溶液である、キット。
【請求項12】
請求項11記載のキットにおいて、前記腸が結腸である、キット。
【請求項13】
請求項1記載のキットにおいて、前記患者に対する診察の、治療の、及び/または外科的な処置を実施する前に前記胃腸管が洗浄される、キット。
【請求項14】
請求項1記載のキットにおいて、前記胃腸管が内視鏡検査の前に洗浄される、キット。
【請求項15】
請求項14記載のキットにおいて、前記内視鏡検査が、大腸内視鏡検査またはS状結腸鏡検査である、キット。
【請求項16】
請求項1記載のキットにおいて、バリウム注腸検査、カプセル内視鏡検査、結腸手術、または胃腸管手術の前に、前記胃腸管が洗浄される、キット。
【請求項17】
請求項1記載のキットにおいて、ミラクリンが、カプセル剤、錠剤、丸薬、粒剤、散剤、小丸剤、固体混合物、溶液、分散体、乳剤、ペースト剤、エキス剤、または天然源からの単離物の形態で提供される、キット。
【請求項18】
請求項6記載のキットにおいて、前記胃腸管前処理組成物が、カリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩、またはそれらの混合物を有する、キット。
【請求項19】
請求項6記載のキットにおいて、前記胃腸管前処理組成物が溶液であり、且つ前記胃腸管前処理組成物の容積が約1リットル〜約4リットルの範囲にわたる、キット。
【請求項20】
請求項6記載のキットにおいて、前記胃腸管前処理組成物がポリエチレングリコール(PEG)を有する、キット。
【請求項21】
味修正キットであって、少なくとも1つのpH修正剤と、ミラクリンとを有し、前記キットは、対象者に投与される胃腸管前処理組成物の塩味を軽減することによって当該対象者の胃腸管の洗浄を容易にし、前記少なくとも1つのpH修正剤は、前記胃腸管前処理組成物のpHを約2〜約5.5の範囲にわたるpHへと調節するのに十分である、キット。
【請求項22】
請求項21記載のキットにおいて、前記pH修正剤が、クエン酸、酢酸及びアスコルビン酸、リン酸、リンゴ酸、コハク酸、ギ酸、フマル酸、マレイン酸、アジピン酸、酪酸、グリコン酸、乳酸、シュウ酸、酒石酸、及びこれらの混合物から成る群から選択される酸である、キット。
【請求項23】
請求項21記載のキットにおいて、前記pH修正剤が、水酸化アンモニウム、炭酸ナト
リウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、二酸化炭素、及びそれらの混合物の群から選
択される、キット。
【請求項24】
患者の胃腸管洗浄を容易にするための請求項1記載のキットを製造するためのミラクリンの使用であって、
前記キットは、予め測定された量の少なくとも1つの無機酸または有機酸とミラクリンとを有し、
前記予め測定された量の少なくとも1つの無機酸または有機酸は、塩味を有する胃腸管前処理組成物のpHを約2〜約5.5に調節するためのものであり、
前記ミラクリンは前記患者に提供されるためのものであり
前記胃腸管前処理組成物前記患者に経口投与される、使用
【請求項25】
請求項24記載の使用において、前記胃腸管が腸であり、且つ前記胃腸管前処理組成物が腸前処理溶液である、使用
【請求項26】
請求項24記載の使用において、前記胃腸管が内視鏡検査の前に洗浄される、使用
【請求項27】
請求項24記載の使用において、前記ミラクリンが、前記胃腸管前処理組成物が投与される約5分〜約30分前に提供されるためのものである使用
【請求項28】
請求項24記載の使用において、前記ミラクリンは、前記胃腸管前処理組成物の塩味を、ミラクリンが提供されなかった場合の胃腸管前処理組成物の塩味と比較して、少なくとも約20%軽減する、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、米国仮出願第61/679,183号(2012年8月3日出願)、及び米国通常出願第13/708,430(2012年12月7日出願)に対する優先権を主張し、それら出願全体が本参照により本出願に組み込まれるものである。
【0002】
発明の分野
本発明は、胃腸管洗浄を容易にする味修正キット、及び、診断の、外科的な、または治療の処置の前に患者の胃腸管を洗浄するための方法に関する。特に、本発明は、胃腸管前処理組成物を快い味にする。
【背景技術】
【0003】
大腸がんは、世界中の男女両方において、三番目に最もありふれたがんである。大腸がんの早期発見は、治癒の可能性を大きく向上させる。大腸内視鏡検査は、大腸がんスクリーニングのための至適基準として広く認識されている。Rex et al., Colorectal cancer prevention 2000:Screening recommendations of the American College of Gastroenterology. Am. J. Gastroenterol. 2000;95:868−877。大腸内視鏡検査は、多くのその他の胃腸病理を診断するのにもまた頻繁に用いられる。
【0004】
大腸内視鏡検査の有効性にもかかわらず、患者の間ではコンプライアンスがしばしば問題点となる。それは主に、患者が大容量の不快な味の溶液を飲むことを要求される腸の前処理処置のためである。大腸内視鏡検査が適切に実施されるためには、結腸は固形物のない状態でなければいけない。従って、大腸内視鏡検査を受ける前に、患者は腸を空にするための腸前処理溶液を飲み込む必要がある。その製剤は、一般に、大量のポリエチレングリコール及び電解質を含有する(例えば、塩化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、及び/または塩化カリウム)。腸を洗浄するためには、大量(例えば、4リットル)の、この塩辛く不快な味の溶液が経口摂取されなければならない。その腸の前処理処置は、大腸内視鏡検査の受診者から大変不愉快としばしば評されている。米国特許公開第20090053304号。
【0005】
不十分な前処理は、不完全な処置全体の最大で三分の一の原因であり、また検査の最大10%を不可能にし、さらにポリープ及び腺腫の発見率に悪影響を及ぼす。Technology Status Evaluation Report: Colonoscopy Preparation, Gastrointestinal Endoscopy, 2009, 69(7):1201−1209。結腸の適切な洗浄の重要性ゆえ、患者コンプライアンスの一要因としての溶液の嗜好性に、更なる焦点があてられるようになってきた。The Prep Is Worse Than The Procedure, Harvard Health Newsletters, Jan. 1, 2010。
【0006】
理想的な腸の前処理は、安全で、有効で、且つ無視できる程度の不快感を伴う患者にとって許容できるものである。他の前処理溶液に比べより安全でより有効であるため、ポリエチレングリコール(PEG)溶液は、大腸内視鏡検査のためのいわゆる「至適基準」として用いられてきた。しかしながら、PEG溶液は患者が良く我慢できるにもかかわらず、患者の5%〜15%は、不快な味及び/または大きな容量ゆえに、前処理を完了しない。RH Hawes et al., Consensus Document on Bowel Preparation before Colonoscopy, Gastrointestinal Endoscopy, 2006, 63(7): 894−909。香味料の添加により腸の前処理溶液をより快い味にするよう、努力がなされてきた。例えば、PEG溶液は、チェリー、シトラスベリー、レモンライム、オレンジ、及びパイナップルなどの複数の風味が入手できる。HalfLytely(登録商標)及びNuLYTELY(登録商標)などの胃腸管前処理溶液からは硫酸塩が除去され、その結果、塩味が減少し、鋭い「腐った卵」臭が減少した。これらの溶液の味を改善するためには、水、ジンジャーエール、Gatorade、CrystalLite、及び炭水化物電解質溶液もまた用いられてきた。しかしながら香味料のパッケージは、塩味及び総合的な味という点では、嗜好性を著しくは変化させない。さらに、風味が改善されることは許容度が改善されることと必ずしも同等ではない。実際に、香味添加物が加えられる場合、製剤のモル浸透圧濃度を変えること、または、爆発性ガスに代謝したり若しくは吸収される水及び塩の量を変えたりしうる基質を製剤に加えることを避けるために、特別な注意が払われなければいけない。RH Hawes et al., Consensus Document on Bowel Preparation before Colonoscopy, Gastrointestinal Endoscopy, 2006, 63(7):894−909。
【0007】
従って、改善された許容度及び軽減された有害作用により有効な洗浄を実現する、快い味の腸の前処理組成物の開発の必要性がなおも存在する。
【0008】
ミラクリンは、西アフリカのガーナ原産の植物ミラクルフルーツ(Richadella dulcifica、 またはSynepalum dulcificum)に由来する糖タンパク質である。ミラクリンは、それ自身は甘くないが、砂糖または人工甘味料を加えることなく食物の酸味を甘い味がするように修正する効果を有する。人がそのベリーの果肉を食べた後、または、人の舌の上でミラクリンの凍結乾燥された抽出物が溶解された後は、レモン及びライムなどの酸味のある物質が甘い味がする。この甘味効果は、最大1から2時間、またはそれより長く持続しうる。
【0009】
ミラクリンは、甘味受容体を砂糖及び他の甘味物質に対してのみではなく酸に対して更に敏感にすることによって味の知覚を修正する。RH Cagan, Chemostimulatory Protein:A New Type of Taste Stimulus, Science, 181(94):32−5(Jul, 6, 1973)、Ravi Kant, Sweet Proteins− Potential Replacement for Artificial Low Calorie Sweetners, Nutrition Journal,2005, 4:5。ミラクリンは、塩辛い味物質を含む混合物において甘い味を引き起こすのにもまた有効である。Capitanio et al., Mixing Taste Illusions: The Effects of Miraculin on Binary and Trinary Mixtures, Journal of Sensory Studies, 26 (2011) 54−61。しかしながら、ミラクルフルーツは酸味のある食品を甘い味がするようにしたが、塩味の度合いなどの他の風味をわずかに高めたとも報告された。Miracle Fruit Research at Dulci Berry Website,2012を参照。
【0010】
本発明は、味修正キット、及び、胃腸管前処理組成物を快い味にするために、例えばミラクリンまたはミラクルベリーを用いる方法を提供する。本発明の効用は、より良い患者コンプライアンスを有し、結果として腸製剤全部の摂取及びよりきれいな結腸粘膜を生じると予期される。
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、以下のものがある(国際出願日以降国際段階で引用された文献及び他国に国内移行した際に引用された文献を含む)。
(先行技術文献)
(特許文献)
(特許文献1) 米国特許第3,849,555号明細書
(特許文献2) 米国特許第3,898,323号明細書
(特許文献3) 米国特許第5,558,071号明細書
(特許文献4) 米国特許第5,886,155号明細書
(特許文献5) 米国特許第6,015,792号明細書
(特許文献6) 米国特許第6,579,851号明細書
(特許文献7) 米国特許第7,169,381号明細書
(特許文献8) 米国特許第7,851,005号明細書
(特許文献9) 米国特許第8,461,129号明細書
(特許文献10) 米国特許出願公開第2013/0136806号明細書
(特許文献11) 米国特許出願公開第2004/0151771号明細書
(特許文献12) 米国特許出願公開第2004/0170698号明細書
(特許文献13) 米国特許出願公開第2006/0051428号明細書
(特許文献14) 米国特許出願公開第2006/0286202号明細書
(特許文献15) 米国特許出願公開第2007/0082061号明細書
(特許文献16) 米国特許出願公開第2007/0116667号明細書
(特許文献17) 米国特許出願公開第2007/0178123号明細書
(特許文献18) 米国特許出願公開第2009/0053304号明細書
(特許文献19) 米国特許出願公開第2009/0205068号明細書
(特許文献20) 米国特許出願公開第2009/0252796号明細書
(特許文献21) 米国特許出願公開第2010/0196513号明細書
(特許文献22) 米国特許出願公開第2011/0076239号明細書
(特許文献23) 米国特許出願公開第2012/0015841号明細書
(特許文献24) 米国特許出願公開第2013/0041004号明細書
(特許文献25) 米国特許出願公開第2013/0084243号明細書
(特許文献26) 米国特許出願公開第2013/0096073号明細書
(特許文献27) 米国特許出願公開第2011/0028412号明細書
(特許文献28) 欧州特許出願公開第2322190号明細書
(特許文献29) 特開平11―228423号公報
(特許文献30) 国際公開第2004/037292号
(特許文献31) 国際公開第2011/007153号
(特許文献32) 国際公開第2013/086382号
(特許文献33) 国際公開第2014/022760号
(非特許文献)
(非特許文献1) Breslin,Paul.Interactions among salty,sour and biller compounds.Trends in Food Science & Technology,Vol.7,page 390−399,December 1996
(非特許文献2) Capitanio et al.,"Mixing Taste Illusions: The Effects of Miraculin on Binary and Trinary Mixtures",Journal of Sensory Studies,26:54−61(2011).
(非特許文献3) Chen et al.,"The Sour Taste−Modifying Protein (Miraculin),Tyrosinase Inhibitors and Antioxidants from Synsepalum Dulcificum",Current Nutrition & Food Science,2009,5,172−179.
(非特許文献4) Dessirier et al.,"Comparison of d’values for the 2−AFC(paired comparison)and 3−AFC discrimination methods: Thurstonian models,sequential sensitivity analysis and power",Food Quality and Preference,10(1):51−58(1998).
(非特許文献5) Diab et al.The palatability of five colonic lavage solutions.Alimentary Pharmacology & Therapeutics.Vol.10,Issue 5 pages 815−819,October 1996
(非特許文献6) Durlach,et al.,"Intensity Perception.I.Preliminary Theory of Intensity Resolution",Journal of Axoustical Society of America,46(2):372−383 (1969).
(非特許文献7) Frijters,J.E.R.,"The paradox of discriminatory nondiscriminators resolved",Chemical Senses & Flavors,4(4):355−8(1979).
(非特許文献8) Frijters,J.E.R.,"Three−stimulus procedures in olfactory psychophysics: an experimental comparison of Thurstone−Ura and three−alternative forced choice models of signal detection theory",Perception & Psychophysics,28(5):390−7(1980).
(非特許文献9) Gregson,RAM.,"A Rating−Scale Method for Determining Absolute Taste Thresholds",Journal of Food Science,27:376−380(1962).
(非特許文献10) Gridgemen,N.T.,"A Reexamination of the Two−Stage Triangle Test for the Perception of Sensory Differences",Journal of Food Science,35(1):87−91,(1970).
(非特許文献11) Hayes,et al.Bowel Preparation Comparison: Flavored versus Unflavored Colyte.Gastroenterology Nursing,Vol 26,3: 106−109,2002
(非特許文献12) Heiken et al.,"Virtual Colonoscopy for Colorectal Cancer Screening: Current Status,",November 2005,Cancer Imaging(International Cancer Imaging Society,5(Spec No A): S133−S139.
(非特許文献13) I.Faus,"Recent developments in the characterization and biotechnological production of sweet−tasting proteins",Appl.Microbiol.Biotechnol.,53:145−151(2000).
(非特許文献14) International Search Report and Written Opinion issued in International Application No.PCT/US13/53394 on December 16,2013,12 pgs.
(非特許文献15) International Search Report and Written Opinion mailed February 6,2013,issued in connection with International Application No.PCT/US12/68528,7 pgs.
(非特許文献16) Johanson et al.,"A Randomized,Multicenter Study Comparing the Safety and Efficacy of Sodium Phosphate Tablets with 2L Polyethylene Glycol Solution Plus Bisacodyl Tablets for Colon Cleansing",American Journal of Gastroenterology,2007; 102:2238−2246.
(非特許文献17) Kato et al.,"Molecular Breeding of Tomato Lines for Mass Production of Miraculin in a Plant Factory",J.Argie.Food Chem.,2010,58(17):9505−10.
(非特許文献18) Kumler,W.D.; Daniels,T.C."Titration Curves and Dissociation Constants of I−Ascorbic Acid(Vitamin C)and Diethyl Dihydroxymaleate"J.Am.Chem.Soc.,1935,57(10),pp 1929−1930
(非特許文献19) Kurihara,K.; Beidler,L.M."Mechanism of the Action of Taste−modifying Protein"Nature 1969,222,1176−1179
(非特許文献20) Lawless et al.,"Direct and indirect scaling of sensory differences in simple taste and ordor mixtures",J.Food Sci.,49,44−51(1984).
(非特許文献21) Lim et al.,"Derivation and Evaluation of a Labeled Hedonic Scale",Chem.Senses,34:739−751(2009).
(非特許文献22) Little,et al.Taste responses to saltiness of experimentally prepared tomato juice samples.J Am Diet Assoc 1984 v84,p1022−1027
(非特許文献23) Mamula,et al.Technology Status Evaluation Report: Colonoscopy Preparation,Gastrointestinal Endoscopy,2009,69 (7); pages 1201−1209.
(非特許文献24) Matsuyama et al.,"Functional Expression of Miraculin,a Taste−Modifying Protein in Escherichia coli",J.Biochem.145(4):445−50(2009).
(非特許文献25) Matter,et al.Colonic Lavage Solutions: Plain vs.Flavored.Am J.Gastroenterol 1993 68:49−52
(非特許文献26) "Miracle Fruit Research",Dulci Berry Miracle Fruit Website 2012,downloaded 7/26/2012 from: http://www.miraclefruitman.com/research.html,8 pgs.
(非特許文献27) Murata,et al.Electrophysiological Studies of Salty Taste Modification by Organic Acids in the Labeller Taste Cell of the Blowfly.Cehm.Senses 27:57−65,2002
(非特許文献28) Neta,E.R.D.et al."Effects of pH Adjustment and Sodium Ions on Sour Taste Intensity of Organic Acids"J.Food Sci.2009,74,4,S165−S169
(非特許文献29) Peryam et al.,"Advanced taste−test method",Food Eng.,24:58−61(1952).
(非特許文献30) Popper et al.,"The effect of attribute questions on overall liking ratings",Food Quality and Preference,15:853−858(2004).
(非特許文献31) Ravi Kant,"Sweet Proteins−Potential Replacement for Artificial Low Calorie Sweeteners",Nutrition Journal,2005,4:5,6 pgs.
(非特許文献32) Rex et al.,"Colorectal cancer prevention 2000: Screening recommendations of the American College of Gastroenterolgoy,Am.J.Gastroenterol,2000,Vol.95,pages 868−877.
(非特許文献33) RH Cagan,"Chemostimulatory Protein: A New Type of Taste Stimulus",Science,181(94):32−5(July 6,1973).
(非特許文献34) RH Hawes et al.,"Consensus Document on Bowel Preparation before Colonoscopy",Gastrointestinal Endoscopy,2006,63(7): 894−909.
(非特許文献35) Stevenson et al.,"Confusing tastes and smells: how odours can inftuence the perception of sweet and sour taste?",Chem Senses,24:624−635(1999).
(非特許文献36) Sun et al.,"Functional expression of the taste−modifying protein,miraculin,in transgenic lettuce",FEBS Lett.2006,580(2):620−6.
(非特許文献37) The Prep Is Worse Than The Procedure,Harvard Health Newsletters,January 1,2010,downloaded 6/20/2011 from: http://harvardpartnersinternational.staywel lsolutionsonline.com/HealthNewsLetters/69,LO 11 Of,2 pgs.
(非特許文献38) Theerasil et al.,"Complete Purification and Characterization of the Taste−modifying Protein,Miraculin,from Miracle Fruit",J.Biol.Chem.,1988,Vol.263,No.23:11536−11539.
(非特許文献39) Tongprasert,et al.,"Improving Quality of Colonoscopy by Adding Simethicone to Sodium Phosphate Bowel Preparation",World Journal of Gastroenterology,2009,15(24):3032−3037.
(非特許文献40) Valentin et al.,"Taste−odour interactions in sweet taste perception",In: Spillane WJ editor,Optimising sweet taste in foods.Cambridge(UK): Woodhead Publishing: 66−84(2006).
(非特許文献41) WEXNER,et al.A Consensus Document on Bowel Preparation Before Colonoscopy: Prepared by a Task Force From The American Society of Colon and Rectal Surgeons(ASCRS),The American Society for Gastrointestinal Endoscopy(ASGE),and The Society of American Gastrointestinal and Endoscopic Surgeons(SAGES),Dis.Colon Rectum 2006; 49:792−809.
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、以下の工程を有する、患者の胃腸管を洗浄するための方法を規定する。(a)塩味を有する胃腸管前処理組成物のpHを測定し、また必要ならそのpHを約3から約6.4の範囲になるように調節する工程、(b)患者に味修正物質を提供する工程、及び(c)その胃腸管前処理組成物を患者に経口投与する工程であって、味修正物質が提供されなかった場合の胃腸管前処理組成物の塩味と比較して、胃腸管調節組成物の塩味が少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約50%、または少なくとも約70%軽減されている工程。胃腸管前処理組成物のpHを測定する工程は、患者に味修正物質を提供する工程の前または後に実施されうる。望ましいpHは、約4から約6.4の範囲にわたりうる。望ましいpHは、約4.5から約5の範囲にわたりうる。特定の実施形態においては、望ましいpHは約4.8である。
【0012】
本発明は、胃腸管洗浄を容易にする味修正キットもまた規定する。本キットは、予め測定された量の、少なくとも無機酸または有機酸と、ミラクルベリー、ミラクリン、または他のミラクリン含有物質などの味修正物質とを有しうる。本キットは、香味料パッケージを含んでいても含んでいなくても良い。本キットは、2つまたはそれより多い容器、パック、またはディスペンサ、並びに、調整及び投与のための説明書を含有しうる。本キットは、あらゆる胃腸管前処理組成物と共に使用されうる。
【0013】
例えば、本発明は、味修正キット、及び腸(例えば、結腸)を洗浄するための方法を提供する。本胃腸管前処理組成物は、腸前処理溶液であっても良い。
【0014】
胃腸管は、患者に対して診断の、治療の、及び/または、外科的な処置を実施する前に洗浄されうる。例えば、胃腸管は、大腸内視鏡検査、S状結腸鏡検査、及び仮想大腸内視鏡検査などの内視鏡検査の前に洗浄される。胃腸管は、バリウム注腸検査、カプセル内視鏡、結腸手術、または胃腸管手術の前に洗浄されうる。
【0015】
味修正物質の非限定的な例は、ソーマチン、モネリン、マビンリン、ブラゼイン、ペンタジン、クルクリン、ネオクリン、ミラクリン、及びそれらの混合物を含む。味修正物質は、カプセル剤、錠剤、丸薬、粒剤、散剤、小丸剤、固体混合物、溶液、分散体、乳剤、ペースト剤、エキス剤、または天然源からの単離物の形態で提供されうる。
【0016】
味修正物質は、ミラクリンなどの酸味修正剤であっても良い。ミラクリンは、ミラクルフルーツ、ミラクルフルーツの果肉、ミラクルフルーツ粒剤、ミラクルベリー、ミラクルベリーエキス剤、ミラクルベリー錠剤、ミラクルフルーツ錠剤、または遺伝子改変生物により産生されるミラクリンなどの、あらゆる適切な形態で与えられうる。
【0017】
味修正物質は、胃腸管前処理組成物が投与される約1分から約2時間、5分から約1時間、約5分から約30分、約1分から約5分、または約10分から約15分前に患者に提供されうる。
【0018】
胃腸管前処理組成物のpHは、少なくとも無機酸または有機酸により調節されても良い。例えば、その酸は、クエン酸、酢酸、アスコルビン酸、リン酸、リンゴ酸、コハク酸、ギ酸、フマル酸、マレイン酸、またはそれらの混合物を含むがこれに限定されない。胃腸管前処理組成物のpHは、水酸化アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、二酸化炭素、またはそれらの混合物によってもまた調節されうる。
【0019】
胃腸管前処理組成物は、カリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩、またはそれらの混合物を含有しても良い。例えば、胃腸管前処理組成物は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、及び重炭酸ナトリウム(炭酸水素ナトリウム)、硫酸ナトリウム、またはそれらの混合物を有する。胃腸管前処理組成物は、少なくとも1つのリン酸ナトリウムを含んでも良い。胃腸管前処理組成物は、少なくとも1つのアルカリ金属(例えば、ナトリウム及びカリウム)塩、及び/または少なくとも1つのアルカリ土類金属(例えば、マグネシウムまたはカルシウム)塩を含有しても良い。
【0020】
胃腸管前処理組成物は、ポリエチレングリコール(PEG)を有しても良い。胃腸管前処理組成物は、溶液であっても良い。胃腸管前処理組成物の容積は、約0.1リットルから約5リットル、または約1リットルから約4リットルの範囲にわたっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、ミラクルベリー錠剤あり及びなしの場合の、被験者にとっての腸前処理溶液の塩味の平均知覚を示すグラフである。
図2図2は、風味パックの添加及びミラクルフルーツの使用の前に腸前処理溶液を試飲した後の、患者調査票の例である。
図3図3は、ミラクルフルーツの使用及び腸前処理溶液への風味パックの添加とともに腸前処理溶液を試飲した後の、患者調査票の例である。
図4図4は、前処理後の患者調査票(つまり、前処理完了後に完成させるもの)の例である。
図5図5は、4人の被験者がミラクルベリー錠剤なしで6つの試飲試料を試飲した後の、その各試料に対する、3つのカテゴリー(甘味、塩味、及び総合的な嗜好性)各々における平均評価を表す。
図6図6は、4人の被験者がミラクルベリー錠剤ありで6つの試飲試料を試飲した後の、その各試料に対する、3つのカテゴリー(甘味、塩味、及び総合的な嗜好性)各々における平均評価を表す。
図7図7は、ミラクルベリー錠剤あり及びなしの場合の、11人の被験者それぞれの甘味及び総合的な嗜好性の平均知覚を示す、例4のためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、診断の、外科的な、または治療の処置の前に患者の胃腸管を洗浄するための方法を提供する。本方法は、患者コンプライアンスを、及びそれゆえ前処理の有効性を改善させうる。特に、本方法は胃腸管前処理組成物を患者が飲みきるのに快い味にする。例えば、本方法は、大腸内視鏡検査を受ける準備をしている患者にとって、腸前処理溶液が塩辛い味がするのを著しく軽減する。
【0023】
本発明は、患者の胃腸管を洗浄するための方法を提供する。本方法は、以下の工程を有する。(a)胃腸管前処理組成物のpHを測定し、また必要ならそのpHを約3から約6.4の範囲になるように調節する工程(つまり、前処理組成物のpHが、例えば約3から約6.4または本明細書開示のその他の範囲などの望ましい範囲の外である場合、そのpHが調節される必要がある)、(b)患者に味修正物質を提供する工程、及び(c)その胃腸管前処理組成物を患者に経口投与する工程。
【0024】
本発明はさらに、患者の胃腸管を洗浄するための方法を提供する。本方法は、以下の工程を有する。(a)塩味を有する胃腸管前処理組成物のpHを測定し、また必要ならそのpHを約3から約6.4の範囲になるように調節する工程(つまり、前処理組成物のpHが、例えば約3から約6.4または本明細書開示のその他の範囲などの望ましい範囲の外である場合、そのpHが調節される必要がある)、(b)患者に味修正物質を提供する工程、及び(c)その胃腸管前処理組成物を患者に経口投与する工程であって、味修正物質が提供されなかった場合の胃腸管前処理組成物の塩味と比較して、胃腸管調節組成物の塩味が少なくとも約20%軽減されている工程。胃腸管前処理組成物のpHを測定する工程は、患者に味修正物質を提供する工程の前または後に実施されうる。
【0025】
味修正物質は、好ましくはミラクリンである。
【0026】
望ましいpH範囲は、約1から約6.9、約2から約6.4、約2.5から約6.4、約3から約6.4、約4から約6.4、約5から約6.4、約3から約6、約3から約5.5、または約3から約5でありうる。
【0027】
好ましい実施形態においては、望ましいpH範囲は約4.5から約5の範囲にわたる。別の好ましい実施形態においては、望ましいpHは約4.8である。
【0028】
本発明の胃腸管前処理組成物は経口投与され、また、食道、胃、並びに、小腸、及び盲腸と結腸と直腸とを含む大腸などの腸を含むがこれに限定されない胃腸管のあらゆる部位を前処理するのに用いられうる。例えば、本方法は、腸を空にするために用いられうる。
【0029】
本発明の本方法は、診断の、治療の、及び/または、外科的な処置の前に胃腸管を洗浄するために用いられうる。外科的な処置の非限定的な例は、結腸手術及び胃腸管手術を含む。診断の処置の非限定的な例は、バリウム注腸検査、カプセル内視鏡、及び大腸内視鏡検査またはS状結腸鏡検査などの内視鏡検査を含む。大腸内視鏡検査は、従来型の大腸内視鏡検査または仮想大腸内視鏡検査であっても良い。Heiken et al., Virtual colonoscopy for colorectal cancer screening: current status, November 2005, Cancer Imaging (International Cancer Imaging Society), 5(Spec No A): S133−S139。本発明の本方法は、例えば細菌性またはウィルス性胃腸炎などの急性胃腸感染の治療において用いられても良い。結腸洗浄は、大腸の手術後の感染を予防するためにもまた有用である。
【0030】
味修正物質は、胃腸管前処理組成物が投与される、約1分から約3時間、約1分から約2時間、約5分から約2時間、約5分から約1.5時間、約5分から約1時間、約5分から約45分、約5分から約30分、約5分から約15分、または約10分から約15分前に患者に投与されうる。
【0031】
本発明は、液体組成物の味を修正するための方法もまた規定する。本方法は、以下の工程を有する。(a)望ましくない味を有する液体組成物のpHを測定し、また必要ならそのpHを約3から約6.4の範囲になるように調節する工程(つまり、液体組成物のpHが、約3から約6.4の範囲または本明細書開示のその他の望ましいpH範囲の外である場合)、(b)対象者に味修正物質を提供する工程、及び(c)その液体組成物を対象者に提供する工程であって、味修正物質が提供されなかった場合の液体組成物の望ましくない味と比較して、液体組成物の望ましくない味が少なくとも約20%軽減されている工程。液体組成物のpHを測定する工程は、対象者に味修正物質を提供する工程の前または後に実施されうる。
【0032】
液体組成物は、胃腸管前処理組成物、口腔ケア組成物、及び薬学的組成物を含むがこれに限られない。
【0033】
対象者(例えば、患者)による1つまたはそれより多い味の知覚は、適切な調査票を用いてまたは個人的な聞き取りにより評価されうる。例えば、対象者が胃腸管前処理組成物(または他の液体組成物)を飲みきった(または試飲した)直後、彼/彼女は調査票を完成させるように求められる。調査票において対象者は、例えば0から10の尺度(または、0から100の尺度、0から5の尺度、0から9の尺度など)を用いて、知覚された組成物の塩味(または他の望ましくない味)の強度を判定するように要求される。対象者は、「0」は「強度無し」または「最低強度」(つまり、塩味または他の望ましくない味が無いまたは最低限)を意味するのに対し、「10」(または「100」など)は「最高強度」の塩味(または他の望ましくない味)を意味する、と指導される。
【0034】
味とは本質的に主観的なものであるので、上記開示の調査票または聞き取りは、同一の患者または対象者において比較可能な味評価を提供する。望ましくない味(例えば、塩味)の軽減は、味修正物質が提供された場合の患者の(または対象者の)味評価を、味修正物質が提供されなかった場合のそれと比較することにより評価されうる。例えば、味修正物質なしの場合の味評価がT、また味修正物質ありの場合の味評価がTとすれば、望ましくない味の軽減百分率は、以下のように算出されうる。
(T−T)/T*100%
【0035】
液体組成物の望ましくない味は、味修正物質が提供されなかった場合の液体組成物の望ましくない味と比較して、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%、軽減されうる。
【0036】
いくらかの実施形態においては、胃腸管前処理組成物の塩味は、味修正物質が提供されなかった場合の胃腸管前処理組成物の塩味と比較して、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%、軽減されうる。
【0037】
1つまたはそれ以上の味は、サーストン尺度を用いても評価されうる。サーストンモデルは、ある連続的な尺度を離散的でおそらく規則正しい反応のカテゴリーに対応づけること記述するための、潜在変数モデルである。このモデルでは、その反応のカテゴリーそれぞれが、値が他の反応変数とは独立に且つ一定の分散値を伴いながら正規分布から引き抜かれる潜在変数に対応する。Lawless et al., (1984), Direct and indirect scaling of sensory differences in simple taste and odor mixtures, J. Food Sci., 49, 44−51。Durlach, et al., (1969) Intensity Perception. I. Preliminary Theory of Intensity Resolution, Journal of the Acoustical Society of America, 46 (2): 372−383。Dessirier et al., 1998, Comparison of d‘ values for the 2−AFC (paired comparison) and 3−AFC discrimination methods: Thurstonian models, sequential sensitivity analysis and power, Food Quality and Preference, 10 (1): 51−58。Frijter, J.E.R., (1980) Three−stimulus procedures in olfactory psychophysics: an experimental comparison of Thurstone−Ura and three−alternative forced choice models of signal detection theory, Perception & Psychophysics, 28 (5): 390−7。Gridgement, N.T., (1970) A Reexamination of the Two−Stage Triangle Test for the Perception of Sensory Differences, Journal of Food Science, 35 (1)。Frijters, J.E.R., (1979) The paradox of discriminatory nondiscriminators resolved, Chemical Senses & Flavor 4 (4): 355−8。Valentin et al., Taste−odour interactions in sweet taste perception, In: Spillane WJ, editor, Optimising sweet taste in foods. Cambridge (UK): Woodhead Publishing; 2006: 66−84。
【0038】
本発明においては、他の評価尺度もまた用いられる。それは、強度尺度、just−about−right (JAR)尺度、及び快不快尺度を含むが、これに限らない。強度尺度においては、強度評価の設問が回答者に、例えばその塩味などの感覚上の属性の強度を、「低」から「高」までの尺度で評価するように求める。just−about−right尺度においては、just−about−right設問が回答者に、例えばその塩味などの感覚上の属性のレベルが、「高すぎる」、「ちょうど良い」、または「低すぎる」かどうかを評価するように求める。Popper et al., The effect of attribute questions on overall liking ratings, Food Quality and Preference, 15 (2004) 853−858。Peryam et al., Advanced taste−test method, Food Eng., 1952, 24:58−61。Lim et al., Derivation and Evaluation of a Labeled Hedonic Scale, Chem. Senses, 34: 739−751, 2009。Gregson, R.A.M., A Rating−Scale Method for Determining Absolute Taste Thresholds, Journal of Food Science, 1962, 27: 376−380。
【0039】
代表的な強度尺度、及び代表的な5段階制JAR尺度が、表1に示される。
【0040】
【表1】
【0041】
塩味、甘味、嗜好性、または他の味の強度は、直線的尺度上で評価されうる。例えば、非体系的もしくは体系的な直線的尺度、または他の適切な直線的尺度である。1つの実施形態においては、評価尺度は、「無し」及び「非常に強い」という端点を有する10cm(または、あらゆる他の適切な長さ)の視覚的なアナログ尺度である。視覚的なアナログ尺度で報告されたすべての評価は、被験者により印がつけられた区分の長さを測定することにより、次いで100段階制の尺度に変換される。Stevenson et al., Confusing tastes and smells: how odours can influence the perception of sweet and sour taste? Chem. Senses, 1999, 24: 624−635。
【0042】
本明細書で用いられる用語「味」は、5種の基本味(つまり、甘い、酸っぱい、塩辛い、苦い、及びうま味)、並びに、つんとする、アルカリ性の、渋い、ピリっとする、乾いた、鋭い、涼味のある、温かい、辛い、燃えるような、酸性の、薬味の効いた、刺激的な、コク味のある、風味のある、ヒリヒリする、及び/または金属質の味などの、他の味を含むあらゆる味を指す。そのような味は、あらゆる及び全ての味と同時に、あらゆる及び全てのあと味を含むべきである。当業者が認識するであろうように、上記リストは全部を含んだものではない。
【0043】
本明細書で用いられる用語「味修正物質」または「味修正剤」は、胃腸管前処理組成物(または液体組成物)を飲みきる間の少なくとも1種の味の知覚を修正することができる、あらゆる物質を指す。それらは、味の知覚を修正するように作用し、または味の特性に影響しうる。用語「修正する」は、変える、変更する、調節する、減少させる、減らす、軽減する、緩和する、制限する、強化する、補充する、または増強することを意味する。例えば、酸味修正剤は酸味の知覚を修正しうる。また、塩味修正剤は塩味の知覚を修正しうる。味修正物質は、それ自身の味を所有しても、またはしなくても良い。
【0044】
味修正物質は、哺乳類の味覚受容細胞及び/または味覚シグナル経路の活性を修正することで機能を果たしうる。具体的には、味は味蕾に位置する感覚細胞を通じて知覚される。異なるシグナル機構が、塩辛い、酸っぱい、甘い、苦い、及びうま味の基本味を感知する。最終的に、これらの基本味の1つとして感知される神経インパルスが、脳において誘因される。例えば、味修正物質が甘味受容体などの味覚受容体に結合しうる場合がある。そして、それにより甘味の知覚を修正する。他の実施形態においては、味修正物質が塩味受容体などの味覚受容体を遮断しても良い。そして、それが塩味の知覚を抑制する。
【0045】
いくらかの実施形態においては、他の味をより大きく感知することは、望ましくない味を遮断することを可能にしうる。例えば、味修正物質の添加による知覚される甘味の感知の増大は、塩味を減少させうる。
【0046】
味の知覚を修正するという味修正物質の効果は、その濃度に依存するかもしれないし、またはしないかもしれない。味修正物質は、単独で、または他の味修正物質と組み合わせて用いられても良い。2つまたはそれ以上の味修正物質が用いられる場合、それらは相加的または相乗的に作用しうる。
【0047】
個々人間には、味の知覚に違いが存在しうる。例えば、1つの味について1種以上の知覚が存在するかもしれない。それは、そのような味が基本味であろうと、他の味であろうと、である。例えば、いくらかの個々人が気がつくことができる、多くの異なる「塩辛い」味があるかもしれない。米国特許第6,015,792号。
【0048】
本発明の味修正物質は、甘味修正剤、酸味修正剤、塩味修正剤、苦味修正剤、うま味修正剤などでありうる。
【0049】
甘味修正剤の非限定的な例は、以下を含む。
(a)タンパク質:ソーマチン、モネリン、マビンリン、ブラゼイン、ペンタジン、クルクリン、ネオクリン、ミラクリン、及び、卵白リゾチーム;
(b)ジヒドロカルコン類、ステビア、ステビオシド類、レバウジオシドA、並びに、ダルコシド及び/またはルブソシドなどの更なるステビオール配糖体、グリチルリチン、ジヒドロフラベノールなどの水溶性甘味剤。糖アルコール(または、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、キシリトール、グリセロール、エリスリトール、ガラクチトール、水素化イソマルツロース、ラクチトール、水素化デンプン加水分解物、L−アミノジカルボン酸アミノアルケン酸エステルアミド、及びそれらの混合物などの多価アルコール類)。グルコース、ガラクトース、及びフルクトースなどの、トリオースで始まるアルドース及びケトースを含むがこれに限定されない単糖類。スクロース、マルトース、ラクトースなどの、単糖類、二糖類、及びオリゴ糖類を含むがこれに限定されない、一般に砂糖として知られる化合物。ポリデキストロース及びマルトデキストリンを含むがこれに限定されない、炭水化物及び多糖類;
(c)可溶性サッカリン塩、つまりサッカリンのナトリウムまたはカルシウム塩、シクラミン酸塩、3,4−ジヒドロ−6−メチル−1,2,3−オキサチアジン−4−オン−2,2−ジオキシドのナトリウム、アンモニウム、またはカルシウム塩、3,4−ジヒドロ−6−メチル−1,2,3−オキサチアジン−4−オン−2,2−ジオキシド(アセスルファム−K)のカリウム塩、並びに、サッカリン、1,6−ジクロロ−1,6−ジデオキシ−ベータ−D−フルクトフラノシル−4−クロロ−4−デオキシ−アルファ−D−ガラクトピラノシド(スクラロース)、6−メチル−1,2,3−オキサチアジン−4(3H)オン2,2−ジオキシド(アセスルファム)、シクロヘキシルスルファミン酸(シクラミン酸)、N−(L−アスパルチル)−N‘(2,2,5,5,テトラメチルシクロペンタノイル)1,1−ジアミノエタン及びその関連化合物の遊離酸の形、グラニジニウム部類の甘味料、ジヒドロカルコン部類の甘味料、ステビオシド、及びこれらの生理的に許容可能な塩、並びにこれらの混合物などの水溶性の人工甘味料;
(d)L−アスパルチル−L−フェニルアラニンメチルエステル(アスパルテーム)、L−アルファアスパルチル−N−(2,2,4,4−テトラメチル−3−チエタニル)−D−アラニンアミド水和物(アリテーム)、N−−[N−(3,3ージメチルブチル)−L−アスパルチル]−L−フェニルアラニン1−メチルエステル(ネオテーム)、L−アスパルチル−L−フェニルグリセリン及びL−アスパルチル−L−2,5ージヒドロフェニル−グリセリンのメチルエステル、L−アスパルチル−2,5ージヒドロ−L−フェニルアラニン、L−アスパルチル−L−(1−シクロヘキセン)−アラニン、及びこれらの混合物などの、L−アスパラギン酸から誘導される甘味料などのジペプチドを基礎とした甘味料;
(e)通常の砂糖(スクロース)の塩素化誘導体などの、天然起源の水溶性甘味料から誘導される水溶性甘味料。例えば、クロロデオキシスクロースまたは例えば製品名称スクラロースで知られるクロロデオキシガラクトスクロースの誘導体などの、クロロデオキシ糖の誘導体。クロロデオキシスクロース及びクロロデオキシガラクトスクロースの誘導体の例は、1−クロロ−1‘−デオキシスクロース、4−クロロ−4−デオキシ−アルファ−D−ガラクトピラノシル−アルファ−D−フルクトフラノシド、または4−クロロ−4−デオキシガラクトスクロース、4−クロロ−4−デオキシ−アルファ−D−ガラクトピラノシル−1−クロロ−1−デオキシ−ベータ−D−フルクト−−フラノシド、または4,1’−ジクロロ−4,1’−ジデオキシガラクトスクロース、1’,6’−ジクロロ−1’,6’−ジデオキシスクロース、4−クロロ−4−デオキシ−アルファ−D−ガラクトピラノシル−1,6−ジクロロ−1,6−ジデオキシ−ベータ−D−−フルクトフラノシド、または4,1’,6’−トリクロロ−4,1’,6’−トリデオキシガラクトスクロース。4,6−ジクロロ−4,6−ジデオキシ−アルファ−D−ガラクトピラノシル−6−クロロ−6−デオキシ−ベータ−D−−フルクトフラノシド、または4,6,6’−トリクロロ−4,6,6’−トリデオキシガラクトスクロース、6,1’,6’−トリクロロ−6,1’,6’−トリデオキシスクロース、4,6−ジクロロ−4,6−ジデオキシ−アルファ−D−ガラクト−ピラノシル−1,6−ジクロロ−1,6−ジデオキシ−ベータ−D−フルクトフラノシド、または4,6,1’,6’−テトラクロロ−4,6,1’,6’−テトラデオキシガラクト−スクロース、及び4,6,1’,6’−テトラデオキシ−スクロース、並びにこれらの混合物を含むがこれに限られない。
【0050】
甘味修正物質のさらなる非限定的な例は、オスランジン、ポリポドシドA、ストロジン、セリゲアインA、ジヒドロクエルセチンー3−アセテート、ペリラルチン、テロスモシドA15、ペリアンドリンI−V、プテロカリオシド類、シクロカリオシド類、ムクロジオシド類、トランス−アネトール、トランス−シンナムアルデヒド、ブリオシド類、ブリオノシド類、ブリオノダルコシド類、カルノシフロシド類、スカンデノシド類、ギペノシド類、トリロバチン、フロリドジン、ジヒドロフラバノール類、ヘマトキシリン、シアニン、クロロゲン酸、アルビジアサポニン、テロスモシド類、ガウジチャウジオシド、モグロシド類、ヘルナンダルシン、グリチルレチン酸、モノアンモニウムグリチルリチン酸、リコリスグリチルリチン酸、シトラスアウランチウム、アラピリダイン、アラピリダイン(N−(1−カルボキシエチル)−6−(ヒドロキシメチル)ピリジニウム−3−オール)分子内塩、ギムネマ酸、シナリン、グルピリダイン、ピリジニウム−ベタイン化合物、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、トレハロース、バニラオレオレジン、バニリン、モナチン(2−ヒドロキシ−2−(インドール−3−イルメチル)−4−アミノグルタル酸)及びその誘導体、Lo han guo(「Lo han kuo」とも呼ばれる)、フラネオール(2,5−ジメチル1−4−ヒドロキシ−3(2H)−フラノン)及び誘導体(例えば、ホモフラネオール、2−エチル−4−ヒドロキシ−5−メチル−3(2H)−フラノン)、ホモフロノール(2−エチル−5−メチル−4−ヒドロキシ−3(2H)−フラノン、及び5−エチル−2−メチル−4−ヒドロキシ−3(2H)−フラノン)、マルトール及び誘導体(例えば、エチルマルトール)、クマリン及び誘導体、ガンマ−ラクトン類(例えば、ガンマ−ウンデカラクトン、ガンマ−ノナラクトン)、デルタ−ラクトン類(例えば、4−メチルデルタラクトン、マソイラクトン、デルタデカラクトン、ツベロラクトン)、メチルソルビン酸、ジバニリン、4−ヒドロキシ−2(または5)−エチル−5(または2)−メチル−3(2H)フラノン2−ヒドロキシ−3−メチル−2−シクロペンテノン、3−ヒドロキシ−4,5−ジメチル−2(5H)−フラノン、フルーツエステル類及びフルーツラクトン類(例えば、酢酸−n−ブチルエステル、酢酸イソアミルエステル、プロピオン酸エチルエステル、酪酸エチルエステル、酪酸−n−ブチルエステル、酪酸イソアミルエステル、3−メチル−酪酸エチルエステル、n−ヘキサン酸エチルエステル、n−ヘキサン酸アリルエステル、n−ヘキサン酸−n−ブチルエステル、n−オクタン酸エチルエステル、エチル−3−メチル−3−フェニルグリシド酸、エチル−2−トランス−4−シス−デカジエン酸)、4−(p−ヒドロキシフェニル)−2−ブタノン、1,1−ジメトキシ−2,2,5−トリメチル−4−ヘキサン、2,6−ジメチル−5−ヘプテン−1−アル、4−ヒドロキシケイ皮酸、4−メトキシ−3−ヒドロキシケイ皮酸、3−メトキシ−4−ヒドロキシケイ皮酸、2−ヒドロキシケイ皮酸、バニリン酸、ホモバニリン酸、バニロマンデリン酸及びフェニルアセトアルデヒド、モノアンモニウムグリチルリチン酸、リコリスグリチルリチン酸、シトラスアウランチウム、アラピリダイン、アラピリダイン(N−(1−カルボキシエチル)−6−(ヒドロキシメチル)ピリジニウム−3−オール)分子内塩、ギムネマ酸、グルピリダイン、ピリジニウム−ベタイン化合物、ネオテーム、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、タガトース、トレハロース、Gタンパク質共役受容体(T2R系及びT1R系)に反応する化合物、2−ヒドロキシ安息香酸(2−HB)、3−ヒドロキシ安息香酸(3−HB)、4−ヒドロキシ安息香酸(4−HB)、2,3−ジヒドロキシ安息香酸(2,3−DHB)、2,4−ジヒドロキシ安息香酸(2,4−DHB)、2,5−ジヒドロキシ安息香酸(2,5−DHB)、2,6−ジヒドロキシ安息香酸(2,6−DHB)、3,4−ジヒドロキシ安息香酸(3,4−DHB)、3,5−ジヒドロキシ安息香酸(3,5−DHB)、2,3,4−トリヒドロキシ安息香酸(2,3,4−THB)、2,4,6−トリヒドロキシ安息香酸(2,4,6−THB)、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸(3,4,5−THB)、4−ヒドロキシフェニル酢酸、2−ヒドロキシイソカプロン酸、3−ヒドロキシケイ皮酸、3−アミノ安息香酸、4−アミノ安息香酸、及びそれらの組み合わせを含む。
【0051】
上記の天然起源の甘味料は、抽出物、またはそれらの抽出物の濃縮された分画の形態をもまたとりうる。特に、ソーマトコッカス抽出物(Katemfe bush)、ステビア亜種(特にStevia rebausiana)の抽出物、スウィングル抽出物(MomordicaまたはSiratia grosvenorii、Lo han guo)、カンゾウ根の抽出物、またグリセルリチア亜種(特にGlycerrhyzia glabra)、キイチゴ亜種(特にRubus suavissimus)、柑橘類抽出物、リッピアダルシスの抽出物、バニラ抽出物、サトウダイコン抽出物、サトウキビ葉エッセンス、同様にこれらの抽出物の濃縮分画である。米国特許第7,851,005号。米国特許公開第20110076239号。Kant, Sweet proteins − Potential replacement for artificial low calorie sweetners, Nutrition Journal 2005, 4:5。I. Faus, Recent developments in the characterization and biotechnological production of sweet−tasting proteins, Appl. Microbiol. Biotechnol. 2000, 53: 145−151。
【0052】
味修正物質は、水溶性(つまり、実質的または完全に水に溶解可能でありうる)、または非水溶性(つまり、水中で乏しい溶解性を示すまたは溶解性無し)。いくらかの実施形態においては、味修正物質の放出速度を制御することが望ましいかもしれない。胃腸管前処理組成物の種類及びその摂取時間応じて、異なる放出速度が望まれるかもしれない。いくらかの実施形態においては、放出速度は、味修正物質の水中での溶解性に基づき、または味修正物質を含有する組成物の剤形に基づくかもしれない。
【0053】
味修正物質は、単独でまたは組成物の一部として、また、単体形、噴霧乾燥形、散剤、ビーズ、液体、固体、溶液、乳剤、分散体、被包形、カプセル剤、錠剤、丸剤、粒剤、小丸剤、固体混合物、ガム、トローチ剤、液相中の分散体、ペースト剤、エキス剤、または天然源から得られる分画または単離物、及びこれらの混合物を含むがこれに限られない、当技術分野で周知のあらゆる適切な形態で用いられうる。
【0054】
味修正物質を含有する組成物は、従来の製薬技術に従えば、少なくとも1つの薬剤担体を有しうる。その担体は、摂取形態に応じて幅広い種類の形態を取りうる。例えば、懸濁液、エリキシル剤及び溶液などの液体経口製剤については、適切な担体及び添加剤は、水、グリコール類、油剤、アルコール類、香味剤、防腐剤、着色剤、及び類似物を含む。散剤、カプセル剤、及び錠剤などの固体経口製剤については、適切な担体及び添加物は、デンプン類、糖類、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、結合剤、粉末化剤、及び類似物を含む。
【0055】
味修正物質は、味修正物質を含有する組成物に対し、約0.01重量%から約100重量%、約0.1重量%から約90重量%、約1重量%から約80重量%、約5重量%から約70重量%、約5重量%から約60重量%、約5重量%から約50重量%、約5重量%から約40重量%、または約5重量%から約30重量%の範囲にわたる量で存在しうる。
【0056】
味修正物質は、対象者の(例えば、患者の)口腔内に、約5秒から約30分、約10秒から約20分、約15秒から約10分、約30秒から約5分、約1分から約5分、約2分から約10分、または約1分から約3分の間、保持されても良い。味修正物質を含有する組成物は、対象者の口腔内で分解または溶解しうる。味修正物質は、対象者の舌に適用されても良い。味修正物質(または味修正物質を含有する組成物)は、また、咀嚼されても良い。
【0057】
ミラクリンは、甘味修正剤及び酸味修正剤の両方であると考えられうる。本発明においては、ミラクリンは、ミラクルフルーツ、ミラクルフルーツ果肉、ミラクルフルーツ果粒、ミラクルベリー、ミラクルベリー抽出物、冷凍ミラクルベリー、冷凍ミラクルベリー抽出物、脱水ミラクルベリー、粉末状のミラクルフルーツ、ミラクルフルーツ錠剤、ミラクルフルーツガム、及びミラクルベリーロリポップからであっても良い。ミラクリンは、また、大腸菌、酵母菌、植物(タバコ、レタス、トマトなど)、昆虫細胞、及び哺乳類細胞を含むがこれに限定されない、いかなる適切な遺伝子改変細胞または生物から産生されても良い。
【0058】
ミラクリンは、米国特許公開第20090205068号、米国特許第5,886,155号、Theerasil et al., Complete Purification and Characterization of the Taste−modifying Protein, Miracurin, from Miracle Fruit, J. Biol. Chem. 1988, Vol. 263, No. 23: 11536−11539、Chen et al., The Sour Taste−Modifying Protein (Miraculin), Tyrosinase Inhibitors and Antioxidants from Synsepalum dulcificum, Current Nutrition & Food Science, 2009, 5, 172−179、Matsuyama et al., 2009, Functional expression of miraculin, a taste−modifying protein in Escherichia coli, J. Biochem. 145 (4): 445−50、Sun et al., Functional expression of the taste−modifying protein, miraculin, in transgenic lettuce, FEBS Lett. 2006, 580 (2): 620−6、Kato et al., Molecular Breeding of Tomato Lines for Mass Production of Miraculin in a Plant Factory. J. Agric. Food Chem. 2010, 58 (17): 9505−10で開示された方法を用いてもまた調整されうる。
【0059】
本発明の胃腸管前処理組成物は、経口投与され、また食道、胃、並びに、小腸、及び、盲腸と結腸と直腸とを含む大腸などの腸を含むがこれに限られない、胃腸管のいかなる部位を前処理するのに用いられても良い。
【0060】
腸洗浄剤、腸洗浄組成物、下剤、瀉下剤、及び洗浄液とも呼ばれる腸前処理組成物は、腸を迅速に空にするために配合処方され、短期的な使用を意図したものである。腸前処理組成物は、例えば結腸瀉下薬、及び結腸洗浄組成物を含む。
【0061】
本発明の胃腸管前処理組成物は、等浸透圧性、または高浸透圧性であっても良い。胃腸管前処理組成物は、1つまたはそれより多い電解質を含有しうる。胃腸管前処理組成物は、少なくとも1つの、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩、またはこれらの混合物を含むがこれに限定されない、塩を含有しうる。例えば、塩は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、重炭酸ナトリウム(炭酸水素ナトリウム)、硫酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、またはこれらの混合物であっても良い。前処理組成物は、少なくとも1つのアルカリ金属塩、及び/または少なくとも1つのアルカリ土類金属塩を有しうる。そのアルカリ金属は、ナトリウム、カリウムなどでありうる。そのアルカリ土類金属は、マグネシウム、カルシウムなどでありうる。
【0062】
胃腸管前処理組成物は、少なくても1つのリン酸ナトリウムを含有しうる。その組成物は、一塩基性及び二塩基性種が様々な割合で、リン酸ナトリウムを有していて良い。
【0063】
本発明の胃腸管前処理組成物における塩濃度は、塩の種類、及び他の要素に応じて変化しうる。例えば、1リットルの前処理組成物は、約0.2gより多い、約0.5gより多い、約1gより多い、約2gより多い、約3gより多い、約5gより多い、約10gより少ない、約9gより少ない、約7.5gより少ない、約7gより少ない、約5gより少ない、約4gより少ない、約2gより少ない、または約1.5gより少ない塩を含有しうる。
【0064】
胃腸管前処理組成剤は、ポリエチレングリコール(PEG)を有しても良い。PEGは、いかなる食品グレード、または医薬品グレードのPEGを有しても良い。PEGの平均分子量は、約900より大きく、約2000より大きく、約2500より大きく、約4500より小さく、または約3000と約8000の間でも良い。例えば、PEG 4000またはPEG 3350であっても良い。PEGは、また、より低分子量のPEGポリマー(PEG 400など)であっても良い。本発明の組成物において用いられるPEGは、1つのPEG種、または2つまたはそれより多い異なるPEG種を有していても良い。
【0065】
本発明の胃腸管前処理組成物中のPEG濃度は、様々でありうる。本発明の胃腸管前処理組成物1リットルは、約90gより多い、約100gより多い、約250gより少ない、約150gより少ない、約140gより少ない、または約125gより少ないPEGを含有しうる。例えば、本発明の組成物は、1リットルあたり100gまたは125gのPEGを有しうる。
【0066】
胃腸管前処理組成物は、約30分から約3日、約1時間から約24時間、約2時間から約12時間、または約1時間から約4時間にわたる期間をかけて投与されうる。投与期間は、連続的な期間、または断続的な期間であっても良い。断続的な投与においては、例えば約半分などの組成物の一部が、診断の、治療の、または外科的な処置が実施される前の夕方に投与され、組成物の残りが処置当日に投与されうる。前処理組成物は、処置、要求される洗浄の度合い、患者の状態(例えば、便秘などの複雑化させる腸の状態の有無)などの様々な要素に応じて、診断の、外科的な、または治療の処置当日、及び/またはその処置の前日(または複数日前)に、1日あたり1回または数回服用されうる。
【0067】
患者は、胃腸管前処理組成物を服用する前に毎回味修正物質を摂取しても良いし、またはその前処理組成物のある一部を摂取する前のみに味修正物質を摂取しても良い。
【0068】
胃腸管前処理組成物は、液体、または固体でありうる。
【0069】
液体(例えば、溶液)の場合、投与される胃腸管前処理組成物の用量または容積は、治療される患者に依存することになる。例えば、小さい子供の治療ではより小さい用量または容積の前処理溶液が適切で、また大人の患者ではより大きい容積の前処理溶液が適切である。胃腸管前処理組成物が液体の場合は、投与される前処理組成物の容積は、約0.1リットルから約5リットル、約0.2リットルから約4.5リットル、約0.5リットルから約4リットル、約1リットルから約4リットル、約1リットルから約3リットル、または約1.5リットルから約2リットルの範囲にわたりうる。患者は、胃腸前処理組成物の全部を飲みきるよう要求されるかもしれないし、あるいは、例えば直腸排出液が透明になるまで、その調節組成物を服用するように求められるかもしれない。
【0070】
胃腸管前処理組成物が溶液の場合、それは例えば、約200mOsmol/kgより高い、約250mOsmol/kgより高い、約250mOsmol/kgから約350mOsmol/kg、約200mOsmol/kgから約800mOsmol/kg、約300mOsmol/kgから約700mOsmol/kg、約330mOsmol/kgから約600mOsmol/kg、約350mOsmol/kgから約600mOsmol/kg、約460mOsmol/kgから約550mOsmol/kg、約350mOsmol/kgから約470mOsmol/kg、約250mOsmol/kgから約470mOsmol/kg、約250mOsmol/kgから約500mOsmol/kg、約250mOsmol/kgから約550mOsmol/kg、約330mOsmol/kgより高い、約350mOsmol/kgより高い、約400mOsmol/kgより高い、約460mOsmol/kgより高い、約600mOsmol/kgより低い、約550mOsmol/kgより低い、約500mOsmol/kgより低い、または約470mOsmol/kgより低いなどの、いかなる適切なモル浸透圧濃度も有しうる。
【0071】
胃腸管前処理組成物は、また、乾燥形(例えば、散剤、錠剤、粒状または他の適切な物理的形態)、または液体形(例えば、シロップ剤、懸濁液、または乳剤)などの濃縮組成物であっても良い。重量、容積、保管量、及び輸送費の軽減を可能にすると同時に、最終形の希釈された組成物と比較して濃縮物の貯蔵期間を長くすることを可能にするため、完成状態の組成物の液体成分の大部分は、濃縮物中には存在しない。最終的な投与できる状態の組成物を調整するときには、濃縮組成物は、水、茶などのあらゆる適切な液体で希釈されうる。
【0072】
市販の胃腸管前処理組成物の非限定的な例は、Colyte、GoLYTELY、NuLytely、TriLYTE、Half−Lytely、MoviPrep、及びMiraLax、GlycoLax、Fleet Phospho−soda、Visicol、OsmoPrep、Fleet、Fleet Enema、Lo−So Prep、GlycoPrep C、及びMagnesium Citrateを含むがこれに限定されない。米国特許公開第20100196513号、及び第20040170698号。Technology Status Evaluation Report: Colonoscopy Preparation, GASTROINTESTINAL ENDOSCOPY 2009 69(7):1201−1209。
【0073】
本方法は、患者に追加の作用剤を投与することもまた含みうる。例えば、ある臨床応用における追加的有効性のために、ビサコジルまたはアスコルビン酸、または便通促進の特性で知られる他の作用剤などの腸刺激剤が、これらの組成物の投与と併せて適切に摂取されても良い。
【0074】
胃腸管前処理組成物は、従来の製薬技術に従えば、少なくても1つの薬剤担体を含有しうる。その担体は、投与に望ましい製剤形態に応じて幅広い種類の形態を取りうる。例えば、懸濁液、エリキシル剤及び溶液などの液体経口製剤については、適切な担体及び添加剤は、水、グリコール類、油剤、アルコール類、香味剤、防腐剤、着色剤、及び類似物を含む。散剤、カプセル剤、及び錠剤などの固体経口製剤については、適切な担体及び添加物は、デンプン類、糖類、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、結合剤、粉末化剤、及び類似物を含む。いくつかの実施形態においては、組成物は、抗酸化剤、アミノ酸、カフェイン、乳化剤、無機物、微量栄養素、植物化合物(植物栄養素)、安定化剤、増粘剤、薬剤、ビタミン類、またはこれらの混合物などの任意の添加剤を含んでも良い。
【0075】
胃腸管前処理溶液(または液体組成物)のpHは、pHメーター、pHセンサー、pH指示薬、pH試験紙などの使用などの、従来型の検査技術を用いて測定されうる。一定の実施形態においては、溶液の成分の知識からpHを計算することもまた可能である。
【0076】
胃腸管前処理溶液は、クエン酸、酢酸及びアスコルビン酸、リン酸、リンゴ酸、コハク酸、ギ酸、フマル酸、マレイン酸、アジピン酸、酪酸、グリコン酸、乳酸、シュウ酸、酒石酸、及びこれらの混合物、または他の容認される食物酢を含むがこれに限定されない、少なくとも無機酸または有機酸により酸性化されうる。
【0077】
胃腸管前処理溶液のpHは、水酸化アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、二酸化炭素、及びこれらの混合物を含むがこれに限定されない化合物によってもまた、調節されうる。
【0078】
組成物のpHを調節する際、pHは、少なくとも約0.05pH単位 、少なくとも約0.1pH単位、少なくとも約0.15pH単位、少なくとも約0.2pH単位、少なくとも約0.3pH単位、少なくとも約0.4pH単位、または少なくとも約0.5pH単位上げられ、または下げられても良い。
【0079】
本方法は、哺乳類、好ましくはヒトに用いられうる。哺乳類は、霊長類、類人猿類、並びに、ネコ科またはイヌ科の動物などの家庭用動物、ウシ属、ウマ科、ヤギ属、ヒツジ、及びブタの動物などだがこれに限られない家畜、ネズミ、ラット、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、イヌ、ネコなどの研究用動物を含むがこれに限られない。
【0080】
本発明は、予め測定された量の、少なくともpH修正剤(例えば、無機酸、もしくは有機酸、または上で論じられた作用剤)と、ミラクリンまたは本明細書において開示されるあらゆる他の味修正物質などの味修正物質とを有する、味修正キットもまた規定する。本キットは、香味料パッケージもまた含みうる。本キットは、2つまたはそれより多い容器、パック、またはディスペンサ、並びに、調整及び投与のための説明書を含有しうる。本キットは、あらゆる胃腸管前処理組成物と共に使用されうる。
【0081】
本キットに含有される組成物は、試験管、バイアル瓶、フラスコ、及びシリンジなどだがこれに限定されない容器中に供給されうる。本キットは、説明資料もまた含有しうる。説明書は紙または他の媒体上に印刷されても良く、且つ/または、フロッピー(登録商標)ディスクまたはCD−ROMなどのあらゆる電子可読媒体を使用して供給されても良い。詳細な説明書は、本キットに含まれても良いし、含まれなくても良い。使用者は、製造業者または流通業者により指定された、または電子メールとして供給された、インターネット上のウェブサイトを訪れるように指示されても良い。
【0082】
本味修正キットは、予め測定された量のpH修正剤を、予め測定された量の酸の全てまたは一部分が胃腸管製剤に加えられた場合に、胃腸管前処理組成物のpHを望まれるpH範囲へと調節するのに少なくとも十分な量で有する。望まれるpH範囲は、約1.0から約6.9まで、約2.0から約6.4まで、約2.5から約6.4まで、約4から約6.4まで、約5.0から約6.4まで、約3.0から約6.0まで、約3.0から約5.5まで、または約3.0から約5まででありうる。
【0083】
本キットは、約0から約30gまでの範囲にわたる、約1mgから約20gまで、約5mgから約15gまで、約10mgから約10gまで、約100mgから約10gまで、約500mgから約5gまで、約500mgから約2gまで、約10mgから約20gまで、約20mgから約15gまでの範囲にわたる、約30mgから約10gまでの範囲にわたる、約50mgから約8gまで、約60mgから約6gまで、または約100mgから約5gまでのpH修正剤を含有しうる。
【0084】
本キットにより供給される予め測定された量のpH修正剤は、クエン酸、酢酸、アスコルビン酸、リン酸、リンゴ酸、コハク酸、ギ酸、フマル酸、マレイン酸、アジピン酸、酪酸、グリコン酸、乳酸、シュウ酸、酒石酸、及びこれらの混合物、または他の容認される食物酢を含むがこれに限定されない、1つまたはそれより多い無機酸または有機酸でありうる。その酸は、例えば散剤、錠剤、もしくはカプセル剤などの固形、または液体であっても良い。
【0085】
本味修正キット中に提供される味修正物質は、ミラクリン、ソーマチン、モネリン、マビンリン、ブラゼイン、ペンタジン、クルクリン、ネオクリン、及び卵白リゾチームであっても良いが、これに限定されない。ミラクリンが味修正物質として使用される場合、ミラクルフルーツ、ミラクルフルーツ果肉、ミラクルフルーツ果粒、ミラクルベリー、ミラクルベリー抽出物、冷凍ミラクルベリー、冷凍ミラクルベリー抽出物、脱水ミラクルベリー、粉末状のミラクルフルーツ、ミラクルフルーツ錠剤、ミラクルフルーツガム、及びミラクルベリーロリポップの形態であっても良い。ミラクリンは、大腸菌、酵母菌、植物、昆虫細胞、及び哺乳類細胞を含むがこれに限定されない、いかなる適切な遺伝子改変細胞または生物から産生されてもまた良い。
【0086】
本味修正物質は、錠剤、カプセル剤、散剤、カシェ剤、またはトローチ剤などの単位投与形態をとっても良い。本味修正物質は、シロップ剤、エリキシル剤、乳剤などとして供給されても良い。単位投与形態は、適切な担体及び/または添加剤を含有しても良い。
【0087】
本キットは、約1mgから約5gまで、約5mgから約4gまで、約10mgから約3gまで、約20mgから約2gまで、約30mgから約1gまで、もしくは約40mgから約500mgまでの範囲にわたる、少なくとも1つの味修正物質を合計量としてまたは単位投与形態中に含有しうる。
【0088】
患者は、酸性化された胃腸管前処理組成物が投与される前に、キット中にある味修正物質を摂取するように指示されるだろう。本味修正物質は、胃腸管前処理組成物が投与される約1分から約3時間、約5分から約2時間、約5分から約1.5時間、約5分から約1時間、約5分から約45分、約5分から約30分、約5分から約15分、または約10分から約15分前に患者に提供されうる。本味修正物質は、約5秒から約30分、約10秒から約20分、約15秒から約10分、約30秒から約5分、約1分から約5分、約2分から約10分、または約1分から約3分の間、患者の口腔中に保持されても良い。味修正物質を含有する組成物は、対象者の口腔中で分解または溶解しうる。あるいは、味修正物質は咀嚼されてもまた良い。
【0089】
望まれる場合は、香味剤を有する風味小包が胃腸管製剤に任意で添加されても良い。香味剤は、胃腸管前処理組成物の風味及び/または臭いを修正するために使用される、天然もしくは人工化合物、またはその2つの組み合わせであっても良い。
【0090】
本発明を実施するための特定の様相の以下の例は、例証の目的のみのために提供され、本発明の範囲を如何ようにも限定することを意図するものではない。
【実施例1】
【0091】
11人の被験者が試飲実験に参加した。被験者は全員非喫煙者で、味の知覚に知られている異常はなかった。味の知覚を変化させるであろういかなる投薬を受けている被験者もいなかった。
【0092】
様々な試飲溶液(下記のNo.1−3)が、市販の結腸用製剤NuLytely(Braintree Laboratories Inc.)を用いて調整された。NuLytely製剤は、パッケージの添付文書に従い、飲料水を用いて混合された。製造業者の処方情報によると、NuLytely散剤は、ポリエチレングリコール 3350(PEG−3350)420g、重炭酸ナトリウム5.72g、塩化ナトリウム11.2g、及び塩化カリウム1.48gを含有する。水を用いて4リットルに容積を合わせると、その溶液は、31.3mmol/LのPEG−3350、65mmol/Lのナトリウム、53mmol/Lの塩素、17mmol/Lの重炭酸、及び5mmol/Lのカリウムを含有する。試料No.1は、NuLytely製剤のみを含有した。試料No.2は、NuLytely製剤、及びNuLytely散剤に添付の風味パック中の配合成分(製造業者により提供)を含有した。
【0093】
各試料32オンスが試飲実験当日に調整され、各試料のpHが測定された。試料は、試飲実験の開始まで冷蔵保存された。
【0094】
試料のpHは、デジタル式の防水pHメーターHM Digital pH meter PH−200を用いて測定された。pHメーターは、General Hydroponicsにより作製された標準pH7.0対照溶液を用いて較正した。装置は測定前に較正した。
【0095】
各試料のpHを、実験開始の5分前に再び測定した。試料調整時からpHに変化はなかった。溶液は沈殿物を含有していなかった。
【0096】
試飲試料No.3のpHは、市販の風味パックを用いて4.8に調節された。この風味パックは、無糖のレモネード風味小包Kool−Aid unsweetened soft drink mix(Kraft)であった。製造業者の小包添付文書によると、風味小包中の粉末は、クエン酸、リン酸カルシウム、マルトデキストリン、塩、並びに、2%より少ない天然風味及び防腐剤を含有した。レモネードの風味パックに加え、市販のレモン抽出物(McCormik & Co.)1.8mlが、NuLytely製剤混合物4リットルに添加された。レモン抽出物は、アルコール、水、及びレモン油を含有した。全成分が添加された後にpHを再度調べ、pH4.8のままであることが確認された。
【0097】
No.1: 本来のNulytely製剤で、風味パックなし pH8.0
No.2: Nulytely製剤で、風味パック添加あり pH8.0
No.3: Nulytely製剤で、レモネード粉末及びレモン抽出物添加あり pH4.8
【0098】
試飲実験
11人の被験者それぞれが試料2オンスを受け取り、それを試飲した。試料No.1から開始し、次いで残りの試料No.2から3と続けた。
【0099】
試飲試料No.3は、ミラクルベリー錠剤とともに試飲された。被験者は、Mberry Miracle Fruit Tablet(1回分あたり400mg、My M Fruit LLCにより流通)1つを与えられた。Mberry錠剤は、ミラクルフルーツ粉末、及びトウモロコシデンプンを含有した。パッケージの使用説明書に従い、錠剤を被験者の舌に置き、5分間かけて口腔内で溶解させた。各錠剤が完全に溶解した後、被験者は試飲試料2オンスを与えられた。
【0100】
試飲試料No.1−3のそれぞれについて、被験者が試料を塩味に関して評価した。各被験者が自身の対照標準として機能した。各試料を評価するために用いられた尺度は、0から10であった。塩味について、ゼロは最も塩辛くなく、また10は大変塩辛い。
【0101】
被験者は各試料を2回ずつ試飲し、塩味を毎回評価した。全ての評価は、データ収集シートに記録され、他の被験者に見えないようにした。
データシートは11人の被験者全員から回収された。塩味に対する平均評価が計算された。表2及び図1を参照。
【0102】
【表2】
【0103】
結果
前処理溶液の塩味は、ミラクルベリーの使用後、著しく減少した。
【実施例2】
【0104】
本研究は、現在市場に出ている標準的なPEG大腸内視鏡検査製剤に味修正キットを添加したものに係る。本キットは、凍結乾燥されたミラクルフルーツ錠剤と、クエン酸を含有する甘味料を含まないレモネード風味パックとを含有する。患者は、製剤の摂取の前に、凍結乾燥されたミラクルフルーツ錠剤を舌の上で溶解させることになる。これは、患者の味の知覚に影響を及ぼすだろう。
【0105】
患者の選定
スクリーニング大腸内視鏡検査を受ける予定の患者が、本研究の対象として考慮される。患者は、以前に大腸内視鏡検査を受けたことがあっても良く、またはなくても良い。味覚にいかなる異常または機能不全がある患者は、本研究からは除外される。同様に、結腸、小腸または胃の手術を受けたことのある患者もまた、患者が本製剤に耐える能力を変更しうるため、除外基準に含まれる。口渇症、口内乾燥症などと診断されている患者は、本研究から除外される。大腸内視鏡検査を実施するための指示は、特定の診断上の病訴に対して出されているべきではなく、むしろスクリーニングまたは監視の目的のために出されているべきである。特定の胃腸に関する病訴を有する患者は、本研究からは除外される。
【0106】
研究設計
例えばCoumadin Plavixなどの血液希釈剤を服用している患者は、大腸内視鏡検査の少なくとも1週間前に、指示を出している医療提供者(例えば、医師)に投薬を中止することの認可を得るために連絡を取らなければいけない。
【0107】
大腸内視鏡検査の処置の3日前に、患者は、すべてのハーブサプリメント類、ビタミン類及び鉄の摂取を中止し、上記のように血液希釈剤を除き日常の処方薬は服用し続け、生の果物または生野菜(調理済みまたは缶詰めの果物/野菜は可)を食べず、また、トウモロコシ、エンドウマメ類、種子類、ポップコーン、またはナッツ類を摂取しないよう指示を受ける。
【0108】
処置の1日前、4リットルのColyteが混合され、また、望まれれば冷蔵される。Colyteは一度混合されたら24時間以内に摂取されなければいけないことに注意する。患者は、午後6時になるまでColyteを飲み始めることが許可されない。患者は、朝食、昼食、及び夕食を含め、1日中透明の液体のみを飲むように指示される。固形食物、乳製品、またはアルコールは許可されない。赤色または紫色のものは許可されない。患者は、リンゴジュース、白クランベリーまたはブドウジュース、棒付きアイスキャンディー、ジェロー、イタリアンアイス、ジンジャーエール、スプライト、ブラックコーヒーまたは茶、Gatoradeを摂取しても良い。患者は、午前11時から午後5時までの間は1時間ごとに、8ozの透明の液体を飲む必要がある。
【0109】
午後6時に、患者は8ozグラス一杯のColyteを飲むことになる。患者は、風味小包を添加するまたはキットからのミラクルフルーツ錠剤を舌上で溶解する前に、Colyte製剤の甘味、塩味、及び嗜好性を評価して調査票を完成させるように求められる(図2)。
【0110】
図2の調査票を完成させたあと、患者は風味小包を残りのColyte製剤に添加し、よく混合する。次いで患者はMiracle Berry錠剤1つを口腔内に入れ、3−5分かけて舌上で溶解させる。錠剤を咀嚼してはいけない。舌上で錠剤を溶解させる本過程は、患者が製剤を飲むことが要求されている時間中、30分ごとに繰り返される。
【0111】
患者は、新たに混合された製剤の最初の8ozをのみ、それからその製剤の甘味、塩味、及び嗜好性を評価して2つ目の患者調査票を完成させるように求められる(図3)。
【0112】
患者は、4リットルのColyte製剤溶液の半分を使い切るまで、10分ごとに8ozの製剤を飲み続ける。製剤の残りの半分は、翌日の処置の5時間前に飲むためにとっておく。製剤の半分を使い切るには、30分ごとに使用されるべきミラクルフルーツ錠剤をおそらく1から4つを要することになる。
【0113】
処置の当日、処置5時間前に、患者はミラクルフルーツ錠剤を舌上で3〜5分かけて溶解させ、次いで8ozのColyteを飲む。これが、全てのColyteを使い切るまで10分ごとに繰り返される。
【0114】
患者は、処置後調査票(図4)を完成させる。大腸内視鏡検査の2時間前は、患者の口腔内には何を入れることも許可されない。透明の液体さえも、である。
【0115】
患者は、大腸内視鏡検査処置の朝は、利尿剤または糖尿病薬を服用しないように指示される。他に処方された医学的に必要な処方薬は、大腸内視鏡検査の少なくとも2時間前に、ひと口の水とともに服用しても良い。患者は、運転し家まで同行する18歳またはそれ以上の大人を必要とする。
【0116】
内視鏡の評価
処置の直後に、結腸粘膜の可視化の質を評価するように設計された調査票を、外来患者用内視鏡検査ユニットの担当の消化器科医に完成させるようお願いすることにより、結腸洗浄の質が評価される。内視鏡での可視性は、結腸内の気泡量、及び結腸前処理の適切性が評価される。内視鏡医は、患者に腸前処理の詳細について質問しないよう指示される。
【0117】
調査票は、内視鏡医に可視化の質を、S.Tongprasert et al., Improving Quality of Colonoscopy by Adding Simethicone to Sodium Phosphate Bowel Preparation, World Journal of Gastroenterology, 2009, 15(24): 3032−3037、及びJ. Johanson et al., A Randomized, Multicenter Study Comparing the Safety and Efficacy of Sodium Phosphate Tablets with 2L Polyethylene Glycol Solution Plus Bisacodyl Tablets for Colon Cleansing, American Journal of Gastroenterology, 2007; 102: 2238−2246に以前に示されたように評価するように求める。可視化及び結腸洗浄の総合的な質は、(1)処置中に観察された大便の量(液体、半固体、または固体)、及び(2)「大便」のみではなく、処置中に観察された「結腸内容物」の量(結腸管腔中の、すべての液体、半固体、及び固体を含む)に基づく。内視鏡医は、以下のように可視化を評価する。「優秀」は、「少量の透明の液体、>90%の粘膜が見え、十分な可視化には最小限の吸引が必要」を意味する。「良い」は、「液体の大便が残っている、>90%の粘膜が見え、十分な可視化にはかなりの吸引が必要」を意味する。「先ず先ず」は、「いくらかの粒子状物質、>90%の粘膜が見え、吸引できる及び/または洗い落とせる液体及び半固体の大便の混合物」を意味する。「劣る」は、「相当量の粒子状物質または固体大便、<90%の粘膜が見え、半固体及び固体の大便の混合物で吸引できないまたは洗い落とせない」を意味する。そして、「許容不可」は、「結腸じゅうに固体の大便」を意味する。
【0118】
内視鏡医は、また、結腸から流動体及び糞便を吸引するのに費やした時間、並びに、総計検査時間に対して粘膜を掃除するために結腸を洗うのに費やした時間を概算するように求められる。内視鏡医は、総計検査時間に対して吸引及び掃除に費やした時間を4段階尺度で評価することになる。「0」は、「ほぼ時間を費やさなかった、総計検査時間の<2%」を意味する。「1」は、「最小限の時間を費やした、総計検査時間の2%−8%」を意味する。「2」は、「いくらかの時間を費やした、総計検査時間の8%−15%」を意味する。そして、「3」は、「大量の時間を費やした、総計検査時間の15%>」を意味する。
【0119】
結腸の5つの領域(直腸S状部、下行部、横行部、上行部、及び盲腸)もまた、気泡の量について評価される。以前に、S.Tongprasert et al., Improving Quality of Colonoscopy by Adding Simethicone to Sodium Phosphate Bowel Preparation, World Journal of Gastroenterology, 2009, 15(24): 3032−3037に示されたように、管腔内の気泡量は、4つの等級に分類される。「0」は、「ない、または最小限のまばらな気泡」を意味する。「1」は、「管腔直径の少なくとも半分を覆う気泡」を意味する。「2」は、「管腔の外周を覆う気泡」を意味する。そして、「3」は、「管腔全体を満たす気泡」を意味する。
【0120】
大腸内視鏡検査の成功率、大腸内視鏡検査の総計所要時間、及び内視鏡医の満足度が評価され、2グループ間で比較される。内視鏡医の満足度は、気泡及び結腸前処理の適切性について自己評価調査票により4段階尺度を用いて評価される。「0」は、「非常に劣る」を意味する。「1」は、「劣る」を意味する。「2」は、「良い」を意味する。そして、「3」は、「非常に良い」を意味する。
【0121】
結果
本研究の結果は、ミラクルベリー錠剤を含む味修正キットとともに胃腸管製剤を服用した患者は、製剤を単独で服用した患者に比べて、腸前処理の要件をより良く満たしたことを示すだろう。これらの結果は、ミラクルベリー錠剤とともに胃腸管製剤溶液を服用した患者は、製剤を単独で服用した患者に比べて、大腸内視鏡検査がより上手く行ったことも示すだろう。
【0122】
許容度及び満足度
胃腸管前処理溶液をミラクルベリー錠剤とともに服用した患者は、胃腸管前処理溶液を単独で服用した患者に比べて、前処理期間中に著しく大きい容積の流動体(例えば、前者が平均3.9から4リットル、後者は平均3リットル)を摂取したと報告するだろう。この2つの前処理方法の総合的な許容度もまた、異なるだろう。
【0123】
胃腸管製剤溶液をキット中のミラクルベリー錠剤とともに摂取した患者が製剤を単独で服用した患者に比べてより満足するだけでなく、胃腸管製剤溶液をミラクルベリー錠剤とともに摂取した患者は製剤が甘く快い味がするとも評価し、また製剤を単独で摂取した者は製剤が不快な味がし塩辛いと評価するだろう。さらに、内視鏡医は、胃腸管製剤溶液をミラクルベリー錠剤とともに摂取した患者の内視鏡検査は、製剤をミラクルベリー錠剤なしで摂取した患者と比べてより満足度が高いとも評価するだろう。データは、標準的な統計基準を用いて解析される。
【0124】
結腸粘膜の内視鏡評価
内視鏡検査を実施した内視鏡医は、胃腸管製剤溶液をミラクルベリー錠剤とともに服用した患者と製剤を単独で服用した患者との間には、結腸粘膜の可視化の質に違いがあると報告するだろう。結腸粘膜の質は、胃腸管製剤溶液をミラクルベリー錠剤とともに服用した患者群の方が、製剤を単独で服用した患者群よりも著しく高くなるだろう。内視鏡医は、胃腸管製剤溶液をミラクルベリー錠剤とともに服用した患者の方が、製剤を単独で服用した患者と比べて、結腸粘膜の可視化がより明瞭だったと報告するだろう。彼らはまた、後者の群よりも前者の群からの患者の方が、患者の結腸領域に管腔内の気泡が少なく、また結腸から流動体及び糞便を吸引し粘膜を掃除するために結腸を洗うのに費やした時間が短かったとも報告するだろう。胃腸管製剤溶液をミラクルベリー錠剤とともに服用した患者では、製剤を単独で服用した者よりも、完了した大腸内視鏡検査の成功率が高く、また大腸内視鏡検査を完了するのに要する時間も短いだろう。
【実施例3】
【0125】
30から55歳の4人の被験者が試飲実験に参加した。彼らは3人が男性、1人が女性で、味の知覚に知られている異常はなかった。全被験者が非喫煙者だった。味の知覚を変えるであろういかなる投薬を受けている被験者もいなかった。
【0126】
様々な試飲溶液(下記のNo.1−6)が、市販の結腸用製剤HalfLytely(Braintree Laboratories Inc.)を用いて調整された。HalfLytely製剤は、パッケージの添付文書に従い、飲料水を用いて混合された。製造業者により提供される風味小包は、本試飲実験には用いられなかった。
【0127】
本試飲実験前の夕方に、各試料16オンスを調整し、各試料のpHが測定された。試料は、試飲実験開始まで一晩冷蔵保存された。
【0128】
試料のpHは、デジタル式の防水pHメーターHM Digital pH meter PH−200を用い、以下の設定で測定した。
・ pH範囲: 0−14
・ 温度範囲: 0−80℃、32−176°F
・ 分解能: 0.01 pH、温度分解能は0.1℃/F
・ 精度: +/− 0.02 pH、温度精度は+/− 2%
・ 較正: デジタル式微調整機能付きデジタル式自動較正(1点)
・ 電極: 交換式ガラス製センサー及び対照チューブ電極
・ 外被: IP−67防水性(浸水可、水に浮く)
・ 電源: 1.5Vボタン型電池x3
・ 寸法: 18.5x3.4x3.4cm
・ 重量: 96.4g (3.4oz)
【0129】
pHメーターは、General Hydroponicsにより作製された標準pH7.0対照溶液を用いて較正した。装置は測定前に較正した。
試飲実験当日、各試料のpHが実験開始の5分前に再び測定された。一晩前の試料調整時からpHに変化はなかった。溶液は一晩の保管後、沈殿物を含有していなかった。
【0130】
試飲試料のpHは、市販の無糖レモネード風味小包Kool−Aid unsweetened soft drink mix (Kraft)を用いることにより調節した。製造業者の小包添付文書によると、風味小包中の粉末は、クエン酸、リン酸カルシウム、マルトデキストリン、塩、及び2%より少ない天然風味及び防腐剤を含有した。必要な場合には、望ましいpHに達するまでKool−Aid粉末を試飲試料に添加した。6つの試飲試料それぞれにおけるpHは、以下の通りである。
No.1 本来の製剤で、Kool−Aid粉末を添加していないもの pH 8.0
No.2 試飲試料 pH 7.0
No.3 試飲試料 pH 6.0
No.4 試飲試料 pH 5.0
No.5 試飲試料 pH 4.0
No.6 試飲試料 pH 3.0
【0131】
試飲実験:
ミラクルベリーなし
4人の被験者それぞれが試料2オンスを受け取り、それを試飲した。上記の最も塩基性の溶液(試料No.1、pH8)から開始し、次いで残りの溶液No.2から6と続けた。試料は、甘味、塩味、及び総合的な嗜好性に関して被験者によって評価された。各被験者が自身の対照標準として機能した。
【0132】
各試料を評価するために用いられた尺度は、0から10であった。甘味については、ゼロは最も甘くなく、また10は大変甘い。塩味についえは、ゼロは最も塩辛くなく、また10は大変塩辛い。総合的な嗜好性についえは、ゼロは最も不快な味、また10は最も快い味である。
【0133】
被験者は各試料を2回ずつ試飲し、甘味、塩味、及び総合的な嗜好性を毎回評価した。全ての評価は、データ収集シートに記録され、他の被験者に見えないようにした。
【0134】
本実験の本部門は、20分間かけて実施された。
【0135】
データシートは4人の被験者全員から回収された。各試飲試料に対する3つのカテゴリー(甘味、塩味、及び総合的な嗜好性)各々における、4人の被験者からの平均評価が計算された(表3及び図5)。
【0136】
【表3】
【0137】
ミラクルベリーあり
4人の被験者は次いで、The Great Green Miracle Fruit Farm Ltd.により生産されたMiracle Frooties錠剤(1回分あたり600mg)を1つ与えられた。Miracle Frooties錠剤は以下のものを含有した。乾燥ミラクルフルーツ果肉、ジャガイモデンプン、微結晶セルロース、二塩基性リン酸カルシウム、及びステアリン酸マグネシウム。
【0138】
パッケージの添付文書に従い、ミラクルフルーツ錠剤が被験者の舌上に置かれ、5分間かけて口腔内で溶解させた。
【0139】
各錠剤が完全に溶解したら、6つの試飲試料の試飲が上記開示のように再び実施された。被験者は試飲試料2オンスが与えられ、試料を甘味、塩味、または総合的な嗜好性に準じて評価した。本実験の本部門においても、同じ0−10の尺度が用いられた。評価は記録され、他の被験者に見えないようにした。
【0140】
本実験の本部門は、20分間かけて実施された。
【0141】
データシートは4人の被験者全員から回収された。各試飲試料に対する3つのカテゴリー(甘味、塩味、及び総合的な嗜好性)各々における、4人の被験者からの平均評価が再度計算された(表4及び図6)。
【0142】
【表4】
【0143】
結果
製剤溶液の総合的な嗜好性は、酸性環境下でのミラクルベリー錠剤の使用後、大いに向上した。ミラクルベリーありの場合、pH5の溶液が最も快い味がする製剤溶液と認められた。
【0144】
製剤溶液の塩味は、ミラクルベリーの使用の後著しく減少し、pHが3から5の間の溶液が最も塩辛くないと認められた。
【0145】
製剤溶液の甘味は、酸性環境下でのミラクルベリー錠剤の使用後、大いに向上した。ミラクルベリーありの場合、pH3の溶液が最も甘いと認められた。
【実施例4】
【0146】
本試飲実験には、11人の被験者が参加した。全被験者が非喫煙者で、味の知覚に知られている異常はなかった。味の知覚を変えるであろういかなる投薬を受けている被験者もいなかった。
【0147】
様々な試飲溶液(下記のNo.1−4)が、市販の結腸用製剤NuLytely(Braintree Laboratories Inc.)を用いて調整された。NuLytely製剤は、パッケージの添付文書に従い、飲料水を用いて混合された。製造業者の処方情報によると、NuLytely散剤は、ポリエチレングリコール 3350(PEG−3350)420g、重炭酸ナトリウム5.72g、塩化ナトリウム11.2g、及び塩化カリウム1.48gを含有する。水を用いて4リットルに容積を合わせると、その溶液は、31.3mmol/LのPEG−3350、65mmol/Lのナトリウム、53mmol/Lの塩素、17mmol/Lの重炭酸、及び5mmol/Lのカリウムを含有する。
【0148】
試料No.1は、NuLytely製剤のみを含有した。試料No.2は、NuLytely製剤、及びNuLytely散剤に添付の風味パック中の配合成分(製造業者により提供)を含有した。
【0149】
各試料32オンスが試飲実験当日に調整され、各試料のpHが測定された。試料は、試飲実験の開始まで冷蔵保存された。
【0150】
試料のpHは、デジタル式の防水pHメーターHM Digital pH meter PH−200を用いて測定された。pHメーターは、General Hydroponicsにより作製された標準pH7.0対照溶液を用いて較正した。装置は測定前に較正された。
【0151】
各試料のpHを、実験開始の5分前に再び測定した。試料調整時からpHに変化はなかった。溶液は沈殿物を含有していなかった。
【0152】
試飲試料No.3及び4のpHは、市販の風味パックを用いて4.8に調節された。この風味パックは、無糖のレモネード風味小包Kool−Aid unsweetened soft drink mix(Kraft)であった。製造業者の小包添付文書によると、風味小包中の粉末は、クエン酸、リン酸カルシウム、マルトデキストリン、塩、並びに2%より少ない天然風味及び防腐剤を含有した。試飲試料No.3については、レモネードの風味パックに加え、市販のレモン抽出物(McCormik & Co.)1.8mlが、NuLytely製剤混合物4リットルに添加された。試飲試料No.4については、レモネードの風味パックに加え、レモン抽出物(McCormik & Co.)1.8ml、及び市販のオレンジ抽出物(McCormik & Co.)1.8mlがNuLytely製剤混合物4リットルに添加された。レモン抽出物(McCormik & Co.)は、アルコール、水、及びレモン油を含有した。オレンジ抽出物(McCormik & Co.)は、アルコール、水、及びオレンジ油を含有した。全成分の添加後に試飲試料No.3及び4のpHを再度調べ、pH4.8のままであることが確認された。
【0153】
No.1: 本来のNulytely製剤で、風味パックなし pH8.0
No.2: Nulytely製剤で、風味パック添加あり pH8.0
No.3: Nulytely製剤で、レモネード粉末及びレモン抽出物添加あり pH4.8
No.4: Nulytely製剤で、レモネード粉末、並びにレモン及びオレンジ抽出物添加あり pH4.8
【0154】
試飲実験
11人の被験者それぞれが試料2オンスを受け取り、それを試飲した。試料No.1から開始し、次いで残りの溶液No.2から4と続けた。
【0155】
試飲試料No.3及び4は、ミラクルベリー錠剤とともに試飲された。被験者は、My M Fruit LLCにより流通しているMberry Miracle Fruit Tablet(1回分あたり400mg)1つを与えられた。Mberry錠剤は、ミラクルフルーツ粉末及びトウモロコシデンプンを含有した。パッケージの使用説明書に従い、ミラクルフルーツ錠剤を被験者の舌に置き、5分間かけて口腔内で溶解させた。各錠剤が完全に溶解した後、被験者は試飲試料2オンスを与えられた。
【0156】
各試料の試飲について、被験者が試料を甘味及び総合的な嗜好性に関して評価した。各被験者が自身の対照標準として機能した。各試料を評価するために用いられた尺度は、0から10であった。甘味については、ゼロは最も甘くなく、また10は大変甘い。総合的な嗜好性については、ゼロは最も不快な味がし、また10は最も快い味がする。
【0157】
被験者は各試料を2回ずつ試飲し、甘味及び総合的な嗜好性を毎回評価した。全ての評価は、データ収集シートに記録され、他の被験者に見えないようにした。
データシートは11人の被験者全員から回収された。各試飲試料に対する2つのカテゴリー(甘味、及び総合的な嗜好性)各々における、11人の被験者からの平均評価が計算された。表5及び図7を参照。
【0158】
【表5】
【0159】
結果
製剤溶液の総合的な嗜好性及び甘味は、酸性環境下(例えば、本実験ではpH4.8)でのミラクルベリー錠剤の使用後、大いに向上した。
【0160】
本発明の範囲は、本明細書の上記で特に示され開示された事柄によって限定されない。当業者は、示された材料、構成、構造、及び寸法の例には適切な代替物があることを認識するだろう。本発明の開示においては、特許及び様々な刊行物を含む多数の参考文献が、引用され議論されている。そのような参考文献の引用及び議論は、単に本発明の開示を明確に説明するために提供され、いかなる参考文献をも本明細書で開示される本発明に対する既存技術であると認めるものではない。本明細書において引用され議論されるすべての参考文献は、それらの全体が本参照により本願に組み込まれるものである。当業者は、本発明の真髄及び範囲から逸れることなく、本明細書で開示される事柄の変型、修正、及び他の実行例を思いつくだろう。本発明のある一定の実施形態が示され開示されたものの、当業者にとっては、本発明の真髄及び範囲から逸れることなく変更や修正がなされうることは明白であろう。前述の開示及び添付の図面において明らかにされる事柄は、限定するものとしてではなく、例示のためのみに提供される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7