特許第6338088号(P6338088)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6338088
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】液状化対策用ドレーンの構築方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/10 20060101AFI20180528BHJP
【FI】
   E02D3/10 104
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-95878(P2014-95878)
(22)【出願日】2014年5月7日
(65)【公開番号】特開2015-212499(P2015-212499A)
(43)【公開日】2015年11月26日
【審査請求日】2016年12月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(72)【発明者】
【氏名】眞野 英之
【審査官】 石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−008450(JP,A)
【文献】 特開2013−253427(JP,A)
【文献】 特開2001−182047(JP,A)
【文献】 特開2006−283484(JP,A)
【文献】 特開平09−125358(JP,A)
【文献】 特開2004−116007(JP,A)
【文献】 米国特許第03690388(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
削孔機でケーシングを軸線周りに回転させて地盤を掘削し、順次前記ケーシングを継ぎ足して液状化層に達する所定長さのドレーン孔を穿設するとともに、前記液状化層に達する前記ドレーン孔を地盤の地表面から斜めに穿設する削孔工程と、
前記ケーシング内の土砂を排出除去する土砂排出除去工程と、
ドレーン材である所定量の粒状物を前記ケーシング内に投入するとともに、前記ケーシング内に挿入配置したオーガーによって前記所定量の粒状物を前記ドレーン孔の先端部側に送り込んで充填させ、且つ前記所定量の粒状物の充填長に応じた長さ分の前記ケーシング及び前記オーガーを引き抜いて分離撤去するドレーン材充填工程とを備え、
ドレーン材である所定量の粒状物の前記ケーシング内への投入、前記オーガーによる前記所定量の粒状物の充填、前記所定量の粒状物の充填長に応じた長さ分の前記ケーシング及び前記オーガーの分離撤去を順次繰り返し行って液状化対策用ドレーンを構築することを特徴とする液状化対策用ドレーンの構築方法。
【請求項2】
請求項1記載の液状化対策用ドレーンの構築方法において、
前記土砂排出除去工程が、前記ケーシング内に高圧水供給管と吸引管を挿入設置し、前記高圧水供給管から高圧水を前記ケーシング内に噴射供給しつつ、前記吸引管で前記ケーシング内の水及び土砂を吸引して前記ケーシング内の清掃を行う清掃工程であることを特徴とする液状化対策用ドレーンの構築方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の液状化対策用ドレーンの構築方法において、
前記削孔工程後に、前記ケーシング及び前記ドレーン孔の先端部側の地盤に薬液を注入し、前記ケーシング及び前記ドレーン孔の先端部側を地盤改良する地盤改良工程を備えていることを特徴とする液状化対策用ドレーンの構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状化対策用ドレーンの構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有効な液状化対策の一つとして、砂地盤等の液状化層に高排水性のドレーンを打設し、地震によって上昇した過剰間隙水圧を早期に消散させ、地盤の液状化を防止する工法が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
また、既存の構造物に対し、ドレーンを用いた液状化対策を講じる場合には、従来、既存の構造物の外周から構造物の直下に向けてドレーンを斜めに打設するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−155557号公報
【特許文献2】特開2001−207437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、構造物の下に斜めドレーンを打設する際には、地表面や構造物の沈下を生じさせないように、ドレーン打設に伴う地盤の緩みを極力抑えることが重要になる。
また、一般に液状化層が深度20mまでに存在するケースが多く、構造物の中心直下まで斜めドレーンを到達させるため、構造物の面積が大きいほど水平に近い角度でドレーンを打設することが必要になる。
さらに、既存の構造物が杭基礎で支持されている場合、杭と杭の間にドレーンを施工する必要が生じ、高い施工精度が求められる。
また、施工スペースが限られるケースが多々あり、狭所でもドレーンの打設施工を行えることが求められる。
さらに、ドレーン本数を増やさずに必要な排水能力を確保するため、ドレーン径を任意に設定できることも重要である。
【0006】
これに対し、従来、斜めドレーンを打設する際には、剛性が高いケーシングを用い、削孔機で地盤を斜めに削孔することにより孔壁の崩壊を防止するようにし、所定の長さで削孔した段階でケーシングの内部に既製のドレーン材を収め、ケーシングを抜くようにしている。このため、ケーシングとドレーン材の間に必然的に隙間が生じ、この隙間によって地盤の緩みが発生し、地盤沈下を招くおそれがあった。
【0007】
また、ケーシングとドレーン材を同時に押し込み、ケーシングのみを引き抜くようにしてケーシングとドレーン材の間に隙間が生じることを抑止する手法もあるが、この場合においても、やはりケーシング体積分の地山の緩みが生じる。さらに、この手法は、押し込み力に限界があるため、小口径のドレーンの構築にその適用が限定され、所望の排水性を確保するために多くのドレーンを打設する必要が生じてしまう。また、小口径の押し込み施工のため、施工角度、方向の精度を確保することが難しく、間隔の狭い既存の杭基礎の間にドレーンを打設するケースなどへの適用が難しい。
【0008】
一方、地盤中に砕石柱を造成し、地震時に発生する過剰間隙水圧を早期に消散させて液状化を防止する鉛直ドレーンのグラベルドレーンが知られており、このグラベルドレーンを斜めドレーンに適用することも考えられる。しかしながら、このグラベルドレーンは、ケーシングのジョイント部の管内径がジョイント加工によって小さくなっているため、斜め施工に適用すると、ジョイント部でドレーン材の礫が詰まり、先端部まで礫を好適に充填することができなくなってしまう。このため、斜めドレーンへの適用は困難である。
【0009】
また、斜めドレーンは、地圧や掘削土砂の排出等の点から、水平に近い角度の方が遠方まで施工しやすいが、例えば掘削後に礫などのドレーン材を充填することが困難になるため、一般に斜めドレーンは水平から60度以上の角度で施工するようにしている。さらに、押し込み力を確保するため、斜めドレーンの施工機械は大型であり、狭隘地(狭所)における施工が困難である。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑み、地盤の緩みを最小限に抑え、任意の径で高精度に施工できるとともに、狭隘地であっても施工を可能にする液状化対策用ドレーンの構築方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
【0012】
本発明の液状化対策用ドレーンの構築方法は、削孔機でケーシングを軸線周りに回転させて地盤を掘削し、順次前記ケーシングを継ぎ足して液状化層に達する所定長さのドレーン孔を穿設するとともに、前記液状化層に達する前記ドレーン孔を地盤の地表面から斜めに穿設する削孔工程と、前記ケーシング内の土砂を排出除去する土砂排出除去工程と、ドレーン材である所定量の粒状物を前記ケーシング内に投入するとともに、前記ケーシング内に挿入配置したオーガーによって前記所定量の粒状物を前記ドレーン孔の先端部側に送り込んで充填させ、且つ前記所定量の粒状物の充填長に応じた長さ分の前記ケーシング及び前記オーガーを引き抜いて分離撤去するドレーン材充填工程とを備え、ドレーン材である所定量の粒状物の前記ケーシング内への投入、前記オーガーによる前記所定量の粒状物の充填、前記所定量の粒状物の充填長に応じた長さ分の前記ケーシング及び前記オーガーの分離撤去を順次繰り返し行って液状化対策用ドレーンを構築することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の液状化対策用ドレーンの構築方法においては、前記土砂排出除去工程が、前記ケーシング内に高圧水供給管と吸引管を挿入設置し、前記高圧水供給管から高圧水を前記ケーシング内に噴射供給しつつ、前記吸引管で前記ケーシング内の水及び土砂を吸引して前記ケーシング内の清掃を行う清掃工程であることが望ましい。
【0014】
さらに、本発明の液状化対策用ドレーンの構築方法においては、前記削孔工程後に、前記ケーシング及び前記ドレーン孔の先端部側の地盤に薬液を注入し、前記ケーシング及び前記ドレーン孔の先端部側を地盤改良する地盤改良工程を備えていることがより望ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の液状化対策用ドレーンの構築方法においては、任意の径で高精度で施工でき、且つ狭隘地でも施工でき、特に排水工法による既存の構造物下の液状化対策に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る液状化対策用ドレーンの構築方法において、削孔機を据え付けた状態を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る液状化対策用ドレーンの構築方法において、ケーシングを継ぎ足しながら削孔し、地盤にドレーン孔を穿設している状態を示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係る液状化対策用ドレーンの構築方法において、ウォータージェットとバキュームでケーシング内の土砂を排出させている状態を示す図である。
図4】本発明の一実施形態に係る液状化対策用ドレーンの構築方法において、ドレーン孔の先端部の地盤に薬液を注入し、地盤改良を行っている状態を示す図である。
図5】本発明の一実施形態に係る液状化対策用ドレーンの構築方法において、ウォータージェットとバキュームでケーシング内の清掃を行っている状態を示す図である。
図6】本発明の一実施形態に係る液状化対策用ドレーンの構築方法において、ケーシング内に所定量の礫を投入するとともに、ケーシング内に挿入したオーガーを用いて礫をドレーン孔の先端部側に順次送り込んで充填させている状態を示す図である。
図7】本発明の一実施形態に係る液状化対策用ドレーンの構築方法において、礫を充填した所定の長さ分だけケーシングを引き抜いている状態を示す図である。
図8】本発明の一実施形態に係る液状化対策用ドレーンの構築方法において、引き抜いたケーシングを分離撤去している状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図1から図8を参照し、本発明の一実施形態に係る液状化対策用ドレーンの構築方法について説明する。
【0018】
ここで、本実施形態は、例えば液状化地盤上に構築された構造物の周囲から構造物の直下の液状化層に打設して構造物の液状化防止対策を施すために用いて好適な液状化対策用ドレーンの構築方法に関するものである。
なお、本発明の液状化対策用ドレーンの構築方法はその適用を構造物の直下の地盤の液状化防止対策として用いることに限定する必要はない。
【0019】
本実施形態の液状化対策用ドレーンの構築方法は、いわゆる斜めドレーンを構築する方法であり、既製のドレーン材ではなく、粒状物である礫をドレーン材として用いる。
【0020】
具体的に、本実施形態の液状化対策用ドレーンの構築方法においては、まず、図1に示すように、削孔機1を構造物の周囲の地盤G上の所定位置に設置する。このとき、削孔方向が水平に対して所定の傾斜角度θで保持されるように削孔機1を据え付ける。
【0021】
次に、図2に示すように、削孔機1で鋼管のケーシング2a(2)を軸線O1周りに回転させつつケーシング2の先端に取り付けたビットで地盤Gを掘削し、順次ケーシング2aを継ぎ足しながら、液状化層に達する所定長さのドレーン孔3を穿設する。なお、本実施形態では、水を供給して泥水を排出しつつ、1m程度の鋼管のケーシングを順次溶接するなどして継ぎ足しながら掘進させ、ドレーン孔を穿設する(削孔工程)。
【0022】
また、所定の長さでドレーン孔3を穿設した段階で、図3に示すように、ケーシング2内に高圧水供給管4と吸引管5を挿入設置し、高圧水供給手段(高圧水供給管、コンプレッサーなどの加圧手段、貯水タンクなど)でウォータージェットの高圧水Wをケーシング2内に噴射供給しつつ、吸引手段(バキューム:吸引管、真空ポンプ等の吸引手段、排水タンクなど)でケーシング2内の水及び土砂Sを吸引し、ケーシング2内から土砂Sを排出させる(土砂排出除去工程)。
【0023】
また、ケーシング2ひいてはドレーン孔3の先端部の地盤Gが砂質土である場合には、この段階で、図4に示すように、ケーシング2内部に注入管6を挿入し、薬液7を注入してケーシング2及びドレーン孔3の先端部側の地盤Gを改良(固結、止水)する(地盤改良工程)。
【0024】
次に、図5に示すように、ケーシング2内に高圧水供給管4と吸引管5を挿入設置し、高圧水供給手段でウォータージェットの高圧水Wをケーシング2内に噴射供給しつつ、吸引手段でケーシング2内の水及び土砂Sを吸引し、ケーシング2内の清掃を行う(土砂排出除去工程/清掃工程)。なお、ケーシング2の先端部側の地盤Gが薬液注入によって改良されていることにより、この清掃作業時にケーシング2の先端部分の地盤Gにボイリングが生じることを防止できる。
【0025】
そして、本実施形態の液状化対策用ドレーンの構築方法においては、この段階で、図6に示すように、ケーシング2の開口から、ドレーン材となる粒径2〜5mm程度の礫(粒状物)8をケーシング2内に所定の量で投入する。このとき、本実施形態では、例えば1本のケーシング2の長さと同等の約1m分の礫8を投入する。そして、ケーシング2内にオーガー9を挿入するとともに削孔機1で軸線O1周りに回転させ、投入した礫8をケーシング2内の先端部側に送り込んで充填させる。
【0026】
また、図6図7図8に示すように、オーガー9を所定量引き抜くとともにケーシング2を所定量引き抜き、引き抜いた分のオーガー9及びケーシング2a(2)を分離撤去する。さらに、新たに所定量の礫8を投入し、オーガー9の回転によって順次先端部側に送り込んで充填させ、再度オーガー9を所定量引き抜くとともにケーシング2を所定量引き抜き、引き抜いた分のオーガー9及びケーシング2a(2)を分離撤去する(ドレーン材充填工程)。
【0027】
このような操作を順次繰り返し行うことにより、ドレーン孔3内に礫8が密実に充填され、液状化対策用ドレーン10が構築される。
【0028】
そして、本実施形態の液状化対策用ドレーンの構築方法においては、既製のドレーン材ではなく、礫(粒状物)8を用いて原位置でドレーン10を形成することにより、ケーシング2引抜き時の地盤Gの緩みを最小限に抑えることができる。
【0029】
また、溶接などで継ぎ足したケーシング2内を清掃することにより、ケーシング2内における礫8の滞留を抑止することができ、さらに、オーガー9によってケーシング2の先端部まで確実に礫8を送り込み、ケーシング2を引く抜き時の礫8の締固めを確実に行うことができる。
【0030】
また、本実施形態の液状化対策用ドレーンの構築方法においては、ケーシング2を継ぎ足しながら削孔機1で削孔してゆく推進工法を用いているため、高い施工精度と任意の径(例えば最大400mm)のドレーン10を構築できる。さらに、ケーシング2を継ぎ足しながら削孔機1で削孔してゆく推進工法を用いているため、狭隘スペースでの施工が可能になる。
【0031】
また、ケーシング2内に所定量の礫8を投入し、順次オーガー9で先端部側に送り込んで密実に充填するようにしているため、例えば水平から30°程度以下の浅い傾斜角度θのドレーン10であっても施工が可能になる。
【0032】
よって、本実施形態の液状化対策用ドレーンの構築方法によれば、任意の径で高精度で施工でき、且つ狭隘地でも施工でき、特に排水工法による既存の構造物下の液状化対策に好適に用いることが可能になる。
【0033】
以上、本発明による液状化対策用ドレーンの構築方法の一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0034】
例えば、土砂排出除去工程でウォータージェットを用いるものとしたが、オーガー9を用いるなどしてケーシング2内の土砂Sを排出するようにしてもよい。また、ドレーン材が礫8であるものとしたが、他の粒状物をドレーン材として用いてもよい。そして、これらの場合においても、勿論、本実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0035】
1 削孔機
2 ケーシング
2a ケーシング
3 ドレーン孔
4 高圧水供給管
5 吸引管
6 注入管
7 薬液
8 礫(粒状物)
9 オーガー
10 液状化対策用ドレーン
G 地盤
O1 軸線
S 土砂
W 高圧水
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8