特許第6338097号(P6338097)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 清水建設株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6338097-トンネル切羽の安定性予測/判定方法 図000002
  • 特許6338097-トンネル切羽の安定性予測/判定方法 図000003
  • 特許6338097-トンネル切羽の安定性予測/判定方法 図000004
  • 特許6338097-トンネル切羽の安定性予測/判定方法 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6338097
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】トンネル切羽の安定性予測/判定方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/00 20060101AFI20180528BHJP
【FI】
   E21D9/00 Z
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-121534(P2014-121534)
(22)【出願日】2014年6月12日
(65)【公開番号】特開2016-933(P2016-933A)
(43)【公開日】2016年1月7日
【審査請求日】2016年12月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(72)【発明者】
【氏名】石井 三郎
【審査官】 石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−214240(JP,A)
【文献】 特開2001−288980(JP,A)
【文献】 特開2004−316117(JP,A)
【文献】 特開2009−299316(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 1/00− 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切羽から掘進方向前方側に向け、トンネルの天端部に先行ボーリング孔を穿設し、
前記先行ボーリング孔内に、切羽前方の地中変位を計測する変位計測手段を設置し、
前記変位計測手段で計測された計測値を、予め三次元解析結果を基に設定した管理限界と比較して切羽の安定性を予測/判定するようにし、
掘進に伴い新たに穿設する前記先行ボーリング孔は、トンネルの幅をDとしたとき、前段で穿設した前記先行ボーリング孔に対して掘進方向に2Dの長さ分ラップさせるように穿設することを特徴とするトンネル切羽の安定性予測/判定方法。
【請求項2】
請求項1記載のトンネル切羽の安定性予測/判定方法において、
トンネルの小土被り部の切羽の安定性を予測/判定する際に用い、
前記変位計測手段で計測された計測値を、地表面沈下の管理限界及び天端地中変位の管理限界と比較して切羽の安定性を予測/判定することを特徴とするトンネル切羽の安定性予測/判定方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のトンネル切羽の安定性予測/判定方法において、
前記変位計測手段によって切羽通過距離5Dまで測定を継続実施することを特徴とするトンネル切羽の安定性予測/判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル切羽の安定性を予測/判定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル工事を安全に進め、必要な補強等の対策工事を的確且つ迅速に行うためには、トンネル周辺地山の状況を精度よく確認・把握することが重要である。特に、全断面掘削工法や補助ベンチ付全断面掘削工法、ロングベンチカット、ショートベンチカット、ミニベンチカットなどのベンチカット工法、側壁導坑先進工法などの地山掘削工法を、地山性状やトンネル断面形状などに応じて適宜選択して用いて施工を行う山岳トンネル工法では、周辺地山の状況、言い換えれば切羽の安定性を、事前に精度よく検知することが重要になる。
【0003】
そして、従来、切羽の安定性を予測/判定する手法としては、例えば、地山強度による予測/判定、破壊平衡式による予測/判定、NATM計測による予測/判定などの手法が用いられている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
【0004】
また、これらの切羽の安定性予測/判定手法によって切羽を安定化させることが必要であると判定された場合には、一般に、長尺鋼管フォアパイリング、長尺鏡ボルト、鏡吹付け等の補助工法を追加施工するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−142659号公報
【特許文献2】特許第5258734号公報
【特許文献3】特許第5319981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、切羽の安定性を予測/判定するための上記地山強度による予測/判定手法は、事前に地山調査を行い地山強度比が2以下で不安定と判定する手法であるが、強度データを掘削域全体で得ることができず、実際には掘削してみなければ分からないということを念頭に用いられるものである。
【0007】
また、破壊平衡式による予測/判定手法は、村山の式等、切羽土塊の滑動力とせん断抵抗の比率から安全率を求めて必要な切羽拘束力を算定するものであり、シールドトンネルなどの切羽安定確保で用いられることが多い。すなわち、山岳トンネルは岩盤を対象とした切羽安定を議論するので、均一な連続体を対象とする破壊平衡式で山岳トンネルの切羽安定を十分に扱いきることが難しい。
【0008】
さらに、NATM計測による予測/判定手法は、トンネル掘削後の壁面変位、支保工応力等を計測してトンネルの安定性を確認する手法であり、支保工の安定性を正確に把握することが可能であるが、壁面変位、支保工応力などから間接的に切羽の安定性を求めるものであり、切羽の安定性に関する評価はあくまで推定の域を脱するものではない。
【0009】
一方、切羽を安定化させるための上記従来の補助工法は、切羽の地山性状の確認や、崩壊の発生など、切羽に異変が認められてから採用するケースが多い。すなわち、掘削してみて追加の有無が決まるものである。また、事前に設計から採用される場合においても、過去の実績に基づいてその必要性が最低限盛り込まれることが多い。
【0010】
このような現状において、特に、小土被りの都市トンネル等を施工する場合、切羽の崩壊が地表陥没を招くことがあり、このような小土被りのトンネル施工時であっても切羽の安定性を確保し安全に施工を行うために、トンネルの切羽の安定性を崩落前に定量的に捉え、精度よく予測/判定できる手法が強く望まれていた。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑み、トンネルの切羽の安定性を崩落前に定量的に捉え、精度よく予測/判定することを可能にしたトンネル切羽の安定性予測/判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
【0013】
本発明のトンネル切羽の安定性予測/判定方法は、切羽から掘進方向前方側に向け、トンネルの天端部に先行ボーリング孔を穿設し、前記先行ボーリング孔内に、切羽前方の地中変位を計測する変位計測手段を設置し、前記変位計測手段で計測された計測値を、予め三次元解析結果を基に設定した管理限界と比較して切羽の安定性を予測/判定するようにし、掘進に伴い新たに穿設する前記先行ボーリング孔は、トンネルの幅をDとしたとき、前段で穿設した前記先行ボーリング孔に対して掘進方向に2Dの長さ分ラップさせるように穿設することを特徴とする。
【0014】
また、本発明のトンネル切羽の安定性予測/判定方法においては、トンネルの小土被り部の切羽の安定性を予測/判定する際に用い、前記変位計測手段で計測された計測値を、地表面沈下の管理限界及び天端地中変位の管理限界と比較して切羽の安定性を予測/判定することを特徴とする。
さらに、本発明のトンネル切羽の安定性予測/判定方法においては、前記変位計測手段によって切羽通過距離5Dまで測定を継続実施することが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のトンネル切羽の安定性予測/判定方法においては、トンネル天端を先行して地中変位を測定できることから、例えば、小土被りの都市トンネル等を施工する場合に、小土被り部の切羽の崩壊や地表陥没などの異常の兆候を切羽前方で早期に検知することができる。これにより、小土被り部の切羽の崩壊や地表陥没を未然に防止することが可能になる。
【0016】
また、掘削前の地中変位を捉えて切羽の安定性を判定するようにしているため、この判定結果に基づいて補助工法等を効果的に、最適な条件で用い、切羽前方の安定性を事前に確保することが可能になる。
【0017】
よって、本発明のトンネル切羽の安定性予測/判定方法によれば、トンネルの切羽の安定性を崩落前に定量的に捉え、精度よく判定することが可能になるとともに、補助工法等を効果的に且つ最適な条件で用いることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係るトンネル切羽の安定性予測/判定方法を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係るトンネル切羽の安定性予測/判定方法で用いる連結傾斜計を示す図である。
図3図2のX1−X1線矢視図である。
図4】トンネル掘削施工時の地表面沈下と天端地中変位の管理限界の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図1から図4を参照し、本発明の一実施形態に係るトンネル切羽の安定性予測/判定方法について説明する。
【0020】
ここで、本実施形態は、例えば、図1に示すような小土被りの都市トンネル等を施工する場合であっても、トンネルTの切羽T1の安定性を崩落前に定量的に捉え、精度よく判定でき、切羽T1の安定性を確保して安全にトンネル掘削施工を行うことを可能にするトンネル切羽の安定性予測/判定方法に関するものである。
【0021】
具体的に、本実施形態のトンネル切羽の安定性予測/判定方法では、図1に示すように、トンネルTの先行地中変位を測定するため、トンネルTの切羽T1から掘進方向前方側に向けて先行ボーリング孔1を穿設する。また、この先行ボーリング孔1を切羽T1の前方のトンネル天端部に穿設する。そして、本実施形態では、先行ボーリング孔1内に、例えば図2及び図3に示すような連結傾斜計(変位計測手段)2を設置し、切羽前方の天端地中変位を測定する。
【0022】
より具体的な例を挙げると、図1に示すように、小土被り部の未固結地山(扇状地礫層等)などが分布している地中範囲の天端部上方に、例えば長さL=80m、ラップ2D=24m(Dはトンネル幅;本実施形態では約12m)、直径φ=116mmの先行ボーリング孔1をボーリング機で穿設し、この先行ボーリング孔1に5mの連結傾斜計2を15個設置して、切羽前方の天端地中変位を測定する。
【0023】
ここで、本実施形態の連結傾斜計2は、図2及び図3に示すように、先行ボーリング孔1内に挿入して配設された例えば直径75mm程度のガイド管3内に、ガイドローラ4によって移動自在(揺動自在)に支持される水平傾斜計5を備え、この水平傾斜計5の変位信号を変換機6、出力ケーブル7で出力し、地中変位を計測できるように構成されている。また、複数の連結傾斜計2は、隣り合う連結傾斜計2同士を連結棒8で連結し、所定の間隔を維持しつつガイド管3内に挿入して配設される。
【0024】
そして、本実施形態のトンネル切羽の安定性予測/判定方法では、上記のように設置した連結傾斜計2によって切羽通過距離5Dまで測定を継続実施し、図4に示すような予め三次元解析結果を基に設定した管理限界と比較することにより、切羽T1の安定性を予測/判定する。
【0025】
これにより、天端部の先行地中変位の測定結果から切羽T2(未掘削域、図1では右方向に掘進する場合で、例えば79+80から78+60の範囲の切羽:地山が軟弱と思われる部分)の崩壊や小土被り部の地表陥没の兆候が確実に検知される。さらに、図1に示すように地中変位計測の先行長とラップ長を24m(2D)以上になるように設定しておけば、計測機の設置遅れによる計測漏れが防止され、確実に切羽T1の崩壊や小土被り部の地表陥没の兆候を検知することができる。
【0026】
このように、本実施形態のトンネル切羽の安定性予測/判定方法においては、変位発生位置の掘削時の安定性が事前に予測/判定されることになり、この判定結果に応じて適切な対策(例えば各種補助工法等)を検討、実施すれば、切羽T1の安定性を確保して安全にトンネル掘削施工が行えることになる。
【0027】
したがって、本実施形態のトンネル切羽の安定性予測/判定方法においては、トンネル天端を先行して地中変位を測定することにより、小土被り部の切羽T2(不図示)の崩壊や地表陥没などの異常の兆候を切羽前方で早期に検知することができる。これにより、小土被り部の切羽T2の崩壊や地表陥没を未然に防止することが可能になる。
【0028】
また、掘削前の地中変位を捉えて切羽T2の安定性を判定するので、この判定結果に基づいて補助工法等を効果的に、最適な条件で用い、切羽前方の安定性を事前に確保することが可能になる。
【0029】
よって、本実施形態のトンネル切羽の安定性予測/判定方法によれば、トンネルTの切羽T2の安定性を崩落前に定量的に捉え、精度よく判定することが可能になるとともに、補助工法等を効果的に且つ最適な条件で用いることが可能になる。
【0030】
以上、本発明によるトンネル切羽の安定性予測/判定方法の一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0031】
例えば、本実施形態では、連結傾斜計2によって先行地中変位を測定するものとして説明を行ったが、先行地中変位の測定を行う変位計測手段は、パイプ歪計や光ファイバーひずみ計測、挿入式方位・傾斜計等であってもよく、先行地中変位を測定することが可能であれば特に限定を必要としない。
【符号の説明】
【0032】
1 先行ボーリング孔
2 連結傾斜計(変位計測手段)
3 ガイド管
4 ガイドローラ
5 水平傾斜計
6 変換機
7 出力ケーブル
8 連結棒
T トンネル
T1 切羽
図1
図2
図3
図4