(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態を
図1から
図8を参照しながら説明する。
図1に示すように、本実施形態では配電盤の一例として閉鎖配電盤1を対象としており、この閉鎖配電盤1は、外殻を形成する筐体2、負荷制御装置3を収容する装置収容室4、装置収容室4の前面開口部を開閉する開閉扉5、開閉扉5に形成され、負荷制御装置3の操作スイッチ3aを操作するための開口6、盤内の母線(導体に相当する)や配線ケーブル(導体に相当する)等を収容する母線収容室7、および、複数のファン8を備えている。本実施形態の負荷制御装置3は、負荷としてモータを想定しており、モータへの電源の供給、過電流の保護、過負荷に対する保護等の機能を有したいわゆるマルチモータリレーユニットである。このような負荷制御装置3を収容した閉鎖配電盤1は、モータコントロールセンター(MCC)と称されることもある。
【0008】
なお、装置収容室4の数や配置は一例であり、
図1に示した構成に限定されるものではない。また、負荷制御装置3としては、モータ以外の負荷を制御するものであってもよいし、装置収容室4に負荷制御装置3以外の装置が収容されていたり、表示パネル等が設けられていたりするような構成であってもよい。また、ファン8の数や配置は一例であり、
図1に示した構成に限定されるものではない。
【0009】
図2は、本実施形態におけるファン駆動装置10Aの構成を示している。このファン駆動装置10Aは、本実施形態で例示する幾つかのファン駆動装置10A〜10Dの1つであるとともに、各ファン駆動装置10A〜10Dにおける基本的な技術的思想を示すものでもある。以下、各ファン駆動装置10A〜10Dに共通の説明をする場合には、単にファン駆動装置10と称するものとする。
【0010】
ファン駆動装置10Aは、ファン8、変換装置11および安定化装置12を備えている。変換装置11は、導体13を流れる電流によって導体13の周囲に生じる磁気エネルギーを電気エネルギーに変換するものであり、本実施形態では電流変換器であるCT(Current Transformer。
図6参照)を採用している。なお、CTの原理は周知であるので詳細な説明は省略するが、一次側に交流電流を流すことによりコア内に磁束の変化が生じ、その磁束の変化に応じた交流電流が二次側に出力されるものである。
【0011】
変換装置11の出力側には、変換装置11から出力される電気エネルギーを安定化する安定化装置12が接続されている。より具体的には、安定化装置12は、変換装置11から出力される交流を直流に変換し、ファン8を駆動するための電力を生成する。そして、ファン8は、安定化装置12から出力される直流電力により駆動される。
【0012】
導体13から放出される磁気エネルギーは、従来では導体13を流れる電流値を検出するために電流センサ等において僅かに利用されていたものの、その大部分はそのまま空中に放出されて利用されていなかった。そこで、本実施形態のファン駆動装置10A、および後述するファン駆動装置10B〜10Dでは、導体13から放出される磁気エネルギーを、ファン8を駆動するための電力として利用している。つまり、従来ではその多くが廃棄されていただけの磁気エネルギーを、有効活用している。
【0013】
図3に、ファン8の消費電力と変換装置11(CT)の定格の一例を示す。本実施形態では、ファン8としていわゆる直流ファンを採用しており、入力電圧が100V、115V、200V、230V、対応周波数が50Hzまたは60Hzであり、概ね33VA程度の消費電力となっている。このファン8は、閉鎖配電盤1に供給される交流電源に応じて適宜選択される。このとき、例えば閉鎖配電盤1の筐体2に設けるファン8は例えば12cmファンとしたり、後述するように負荷制御装置3に設けるファン8は例えば8cmファンにしたりする等、ファン8の大きさも配置等に応じて適宜選択される。
【0014】
このファン8に対応するために、変換装置11(CT)には、1次電流1A〜2000Aに対して、例えば2次電流が1A〜5A、負担VAが15VA〜40VA程度のものが採用される。つまり、変換装置11は、1次電流の大きさに応じた2次電流を出力可能な構成となっている。なお、
図3に示すファン8や変換装置11の定格は一例であり、これに限定されるものではない。また、ファン駆動装置10Aについては、ファン8としていわゆる交流ファンを採用し、安定化装置12を除いた構成としてもよい。
【0015】
図4は、本実施形態におけるファン駆動装置10Bの構成を示している。このファン駆動装置10Bは、安定化装置12の出力側に、電源14に接続された増幅装置15が設けられている。これは、ファン8の定格や数等によっては、変換装置11から出力される電気エネルギーだけでは不足することが想定されるためである。そのような場合には、増幅装置15において、電源14から供給される電力で不足する電気エネルギーを補うことにより、ファン8を駆動できるだけの電力を生成する。なお、増幅装置15は、変換装置11側から出力される電気エネルギーの大きさに応じて、ファン8に供給する電力を変更する構成としてもよい。
【0016】
図5は、本実施形態におけるファン駆動装置10Cの構成を示している。このファン駆動装置10Cは、制御装置16を備えている。この制御装置16は、変換装置11をいわば電流センサとして用い、変換装置11から出力される電気エネルギーの大きさに基づいて、ファン8の駆動を制御する。具体的には、制御装置16は、本実施形態では、変換装置11から出力される電気エネルギーが大きいほど、ファン8の回転数を高くするように制御している。
【0017】
なお、電気エネルギーの大きさとファン8の回転数との関係は、正比例のような線形の関係であってもよいし、電気エネルギーが大きくなるほど回転数が高くなる割合を大きくするような非線形の関係であってもよい。また、制御装置16は、変換装置11から電気エネルギーが出力されたことを起因として、すなわち、通電されたことを起因として、ファン8の駆動を開始するスイッチとして機能するものであってもよいし、変換装置11から出力される電気エネルギーが予め定められている基準値を超えるとファン8を駆動するように制御してもよい。
【0018】
また、ファン駆動装置10Cの場合、ファン8を駆動する電力を電源14から供給する構成としているが、変換装置11から出力される電気エネルギーでファン8を駆動可能であれば電源14を設けない構成としてもよい。この場合、制御装置16で行うファン8の制御はそれほど高速な処理等が不要であることから、制御装置16に消費電力が少ないマイコンを用いることができる。その場合、制御装置16の消費電力はファン8の消費電力に比べれば僅かであると想定されるので、変換装置11の出力側に安定化装置12を設け、制御装置16の電力も変換装置11側から、つまり、磁気エネルギーから供給する構成としてもよい。
【0019】
図6は、本実施形態におけるファン駆動装置10Dの構成を示している。このファン駆動装置10Dは、
図6(A)に示すように、変換装置11の本体にファン8が一体に設けられた構成となっている。なお、ファン駆動装置10Dの電気的構成は、
図2に示したファン駆動装置10Aと実質的に共通している。具体的には、変換装置11は、導体13が貫通するように筒状に形成されており、その下面に下部開口11aが形成され、その上面に上部開口11bが形成されている。そして、下部開口11aに対応して、ファン8が本体に一体に取り付けられている。
【0020】
このため、
図6(B)に示すように変換装置11は、自身を非接触で貫通する導体13に電流(I)が流れると、ファン8が駆動され、下部開口11aから空気が吸入され、上部開口11bや導体が貫通する側の開口から排気され、これによって導体13が冷却される。なお、下部開口11aや上部開口11bの数や配置、変換装置11の貫通方向の長さや大きさは一例であり、
図6に示す構成に限定されるものではない。
【0021】
次に、上記した構成のファン駆動装置10の配置、より具体的には、ファン8の配置について説明する。
図7は、閉鎖配電盤1に対するファン駆動装置10の配置の一例を示すものであり、
図7(A)は閉鎖配電盤1を正面から見た場合の配置、
図7(B)は閉鎖配電盤1を側面から見た場合の配置を模式的に示している。
【0022】
閉鎖配電盤1には、複数の導体13が設けられている。具体的には、閉鎖配電盤1の上部には例えば、三相モータを駆動するS、R、Tの各相に対応して、水平母線13A、水平母線13Bおよび水平母線13Cの3本の水平母線が横方向に配置されており、各水平母線に対して垂直母線13D、垂直母線13Eおよび垂直母線13Fがそれぞれ接続されている。各母線は、導電性材料で形成されており、各負荷制御装置3への電力の供給、および負荷制御装置3により制御されるモータへの電力の供給を行っている。なお、閉鎖配電盤1内の電磁開閉器等、各種の周辺部品については、周知のものを参照すればよいので、図示および説明を省略する。
【0023】
本実施形態の場合、水平母線13Aには、
図7(B)に示すようにファン駆動装置10Bが設けられている。より厳密には、水平母線13Aには、ファン駆動装置10Bの変換装置11(CT)が設けられている。以下、説明の簡略化のために、
図7および後述する
図8では、ファン駆動装置10Bの変換装置11が導体13に設けられていることを、便宜的にファン駆動装置10が設けられていると称して説明する。
【0024】
ファン駆動装置10Bにより駆動されるファン8は、本実施形態では閉鎖配電盤1の上面、および正面最上部側に配置されており、主として閉鎖配電盤1内の排気を行うために設けられている。これらのファン8は、比較的大型のものが採用されることもあり、消費電力が大きいと考えられる。また、閉鎖配電盤1内の換気を行うことから風量もある程度必要とされ、消費電力も大きくなることが予想される。そのため、本実施形態では、増幅装置15を備えているファン駆動装置10Bを設け、複数のファン8を十分に駆動できる構成としている。
【0025】
これにより、水平母線に通電されたとき、ファン駆動装置10Bによりファン8が駆動され、閉鎖配電盤1内の換気を行うことができる。この場合、3つの水平母線13A〜13Bの場合、位相の差はあるものの、基本的には同じ程度の電流が流れると想定されるため、いずれか1つの水平母線にファン駆動装置を設ければよい。なお、ファン駆動装置10Bの代わりにファン駆動装置10A(
図2参照)を複数設け、各ファン駆動装置10Aがそれぞれ1つのファン8を駆動する構成としてもよいし、制御装置16(
図5参照)を設け、電気エネルギーの大きさに応じてファン8の回転数を制御するようにしてもよい。
【0026】
また、各水平母線13A〜13Cには、ファン8と変換装置11(CT)とが一体になったファン駆動装置10Bが設けられている。なお、
図7(B)の場合、図面の簡略化のために、水平母線13Cにのみファン駆動装置10Dを図示している。このファン駆動装置10Dにより、各水平母線13A〜13Cが冷却される。閉鎖配電盤1内で消費される電力は必ず水平母線13A〜13Cから供給されるため、最も大きな電流が流れる水平母線13A〜13Cを冷却することで、閉鎖配電盤1内の温度上昇を低減することができる。
【0027】
また、本実施形態では、負荷制御装置3の後方や側面を冷却するファン8、あるいは開閉扉5に設けられているファン8を駆動するために、閉鎖配電盤1内に収容される各負荷制御装置3に対応して、電気エネルギーの大きさによってファン8の回転数が変化するファン駆動装置10Aが設けられている。このファン駆動装置10Aは、自身が取り付けられている位置よりも図示下方に収容されている負荷制御装置3に通電されているとき、ファン8を駆動して対応する負荷制御装置3を冷却する。
【0028】
この場合、対応する負荷制御装置3が運転中であるときだけでなく、それよりも下方に収容されている負荷制御装置3が運転中であるときにもファン駆動装置10Aによりファン8が駆動される。このため、自身の発熱だけでなく、他の負荷制御装置3からの発熱による影響を低減することができる。すなわち、最も上部に位置している負荷制御装置3については、垂直母線13Dに流れる電流が最も大きくなることからファン8の回転数が最も大きくなる。このため、下方の負荷制御装置3で暖められた空気が対流によって上方の負荷制御装置3に向かって流れても、ファン8の回転数が大きいことから、十分に冷却することができる。
【0029】
一方、下方に収容されている負荷制御装置3に対応するファン駆動装置10Aでは、ファン8の回転数は、自身よりも下方で消費される電力が少ないため、上方に収容されている負荷制御装置3に対応するファン駆動装置10よりも相対的に小さくなる。そして、自身よりも下方で消費される電力が少ないということは、発熱も少ないということであり、ファン8の回転数が相対的に小さくなっていても、ファン駆動装置10Aは十分に対応する負荷制御装置3を冷却することができる。すなわち、電気エネルギーの大きさによってファン8の回転数が変化するファン駆動装置10Aは、熱の発生源の位置と、対流による熱の移動とに相関した状態で、好適に作動する。
【0030】
この場合、閉鎖配電盤1の側面に設けられているファン8を、各負荷制御装置3に対応して設けられているファン駆動装置10Aで駆動してもよい。例えば閉鎖配電盤1の側面に、装置収容室4と同数のファン8を設け、各装置収容室4に負荷制御装置3が設けられた場合、対応する位置のファン8と接続して駆動するようにしてもよい。これにより、負荷制御装置3の収容状況に応じて、ファン8を駆動することができる。
【0031】
なお、
図7(B)では垂直母線13Dにファン駆動装置10Aを設けた例を示しているが、負荷制御装置3の端子部3bにファン駆動装置10を設けてもよい。この場合、ファン駆動装置10が利用する電気エネルギーは対応する負荷制御装置3の消費電力にのみ追従して変化することになる。そのため、負荷制御装置3を専用で冷却したい場合には、端子部3bにファン駆動装置10を設けてもよい。この場合、負荷制御装置3を外部から冷却するだけでなく、負荷制御装置3に接続端子等を設け、負荷制御装置3内に設けられているファン8を、閉鎖配電盤1内の電力の使用状況に応じて駆動するようにしてもよい。
【0032】
図8は、商用電源の受電点となる配電盤20を模式的に示している。この配電盤20内には受電点が設けられており、受電点から導体である水平母線13G〜13Iまでの間は、導体である接続ケーブル13Jにより接続されている。そして、この接続ケーブル13Jに、ファン駆動装置10Aが設けられている。このファン駆動装置10Aの変換装置11は、盤内に設けられている接続板21に取り付けられている。
【0033】
つまり、本実施形態における導体13とは、水平母線等のように導電性材料を板状に形成したいわゆるバスバーだけで無く、導体を線状に形成したケーブル等をも含んでいる。この場合、変換装置11は
図6に示したように中空の筒状に形成されているので、接続ケーブル13Jを通すこともできる。また、ファン8は、図示は省略するが、配電盤20の前面の扉や上面等に設けられている。これにより、ファン駆動装置10Aは、盤内の換気つまりは排熱を行うことができる。なお、ファン駆動装置10Aの代わりに、あるいは、ファン駆動装置10Aに加えてファン駆動装置10Dを設け、接続ケーブル13Jを冷却するようにしてもよい。
【0034】
このように、ファン駆動装置10は、盤内に設けられている導体13を流れる電流により生じる磁気エネルギーを電気エネルギーに変換し、その電気エネルギーを利用してファン8を駆動している。
【0035】
以上説明した実施形態によれば、次のような効果を奏する。
ファン駆動装置10は、配電盤内に設けられている導体を流れる電流により生じる磁気エネルギーを電気エネルギーに変換して出力する変換装置11と、変換装置11から出力される電気エネルギーを利用して駆動されるファン8と、を備えている。これにより、従来では単に空気中に放出されるだけであった磁気エネルギーを利用してファン8を駆動すること、つまり、盤内の換気や冷却を行うことができる。
【0036】
この場合、ファン8は電気エネルギーが供給されると自動で駆動されるので、基本的には制御回路等を設ける必要が無く、追加部品の増加を招くことがない。また、従来はただ単に廃棄されていた磁気エネルギーを利用していることから、消費電力の増加を極力抑制することができる。
【0037】
また、変換装置11として電流変換器(CT)を用いているので、基本的に導体13とは非接触で磁気エネルギーを利用することができる。そのため、仮にファン8が故障しても導体13に与える影響がなく、専用の遮断器等を設ける必要が無い。したがって、追加部品の増加を招くことがない。
また、例えばファン駆動装置10Aのファン8は、変換装置11から出力される電気エネルギーの大きさの変化に追従して回転数が変化するので、制御回路等を設ける必要が無く、追加部品の増加を招くことがない。
【0038】
その一方で、ファン駆動装置10Cのようにファン8を制御する制御装置16を備えてもよく、その場合、制御装置16は、変換装置11側から出力される電気エネルギーを、ファン8を制御する際の制御信号として利用する。この場合、ファン8の制御用に最小限の機能を有するマイコン等を利用すれば、消費電力の増加を極力低減しつつも、細かくファン8を制御することができる。
【0039】
また、ファン駆動装置10Dのように、ファン8を変換装置11に一体に設けてもよい。この場合、変換装置11は必須であるのでいずれにしろ取り付ける必要がある一方、ファン8を単体で取り付ける構造や部品を削減することができるので、部品点数の削減と省スペース化とを図ることができる。
また、このようなファン駆動装置10を配電盤に採用することで、追加部品や消費電力の増加を極力抑制しつつ、配電盤の換気や冷却を行うことができる。
【0040】
(その他の実施形態)
ファン8は、実施形態で例示した配置に限定されることは無く、例えば以下のような部位に配置あるいは取り付けることができる。
例えば負荷制御装置3に対して個別にファン8を設ける場合、負荷制御装置3の前面の操作パネルに配置し、負荷制御装置3内の遮断器、コンタクタ、補助リレーの冷却に用いてもよい。
【0041】
例えば閉鎖配電盤1にファン8を設ける場合、開閉扉5以外の扉(例えば、母線収容室7の扉等)に配置し、盤内全体、負荷制御装置3、母線導体、圧着端子、遮断器などの電気用品等を冷却してもよい。
例えば配電盤20の場合、盤内全体、母線導体、圧着端子、遮断器(図示省略)等の電気用品の冷却に用いてもよい。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。