(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記操作部が、前記背凭れ面における前記ランバーサポートの使用範囲を避けた退避位置まで前記ランバーサポートを移動可能であることを特徴とする請求項1に記載の椅子。
【背景技術】
【0002】
劇場椅子では、音楽鑑賞等で長時間の隣席との密接な距離感における拘束状態での着座を必要とされ、体に疲労や痛みやしびれが蓄積される。またそれらを軽減させるために、着座姿勢を工夫したり目立たない動きを必要とされてきた。これは、上半身や頭を動かすと後列の鑑賞者の視界に入り、心地良さを損なわせてしまう虞があるからである。
他方、事務用椅子にはランバーサポート機能があり、着座者の姿勢・体格差を補正したり、ランバーサポートを位置調整して座り心地を変化させる等、疲労軽減に有効な個人向けの調整機構となっている。ランバーサポートを備えた事務用椅子としては、例えば特許文献1に開示されるものがある。
ランバーサポート機能を備えた劇場椅子としては、例えば特許文献2に開示されるものがある。これは、圧縮空気の供給によりランバーサポート機能を得るものである。
リクライニング操作を行うレバーを肘箱前面に設けた劇場椅子としては、例えば特許文献3に開示されるものがある。
同様な劇場椅子において、肘箱側面にリクライニング操作ボタンを設けた椅子が、例えば特許文献4に開示されている。
同様な劇場椅子において、背凭れの側面に設けたツマミにより背凭れの微調整を可能とするものが、例えば特許文献5に開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1記載の椅子では、ランバーサポートの操作を行う際は背の後面に手を回す必要があり、また外観も損なわれる。
特許文献2記載の椅子では、設備が大掛かりとなり設置が困難で、かつ個々の椅子に対する装置の着脱やメンテナンスも困難である。
特許文献3記載の椅子では、左右で複数席を連結する場合、着座者の操作レバーが隣席のものか自席のものかが判断し辛いものとなる。
特許文献4記載の椅子では、操作ボタンはリクライニングの固定及び解除の操作を行うものであり、背凭れの位置調整は着座者の身体を使った操作によるものであり、身体の動きが大きくなる。
特許文献5記載の椅子では、第三者により不用意にツマミを操作される虞があり、外観も損なわれる。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、左右に複数並んで設置される椅子において、着座者が目立たない動きで容易にランバーサポートを位置調整可能とし、かつランバーサポートの操作部を目立たず簡単に設けることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明に係る椅子は、左右一対の肘掛け部と、着座部と、背凭れ部と、を備え、左右方向に複数並んで設置されて、隣席との間に前記肘掛け部が配置される椅子において、前記背凭れ部の背凭れ面に沿って位置調整可能に設けられるランバーサポートと、前記ランバーサポートの位置調整を行う操作部と、をさらに備え、
前記背凭れ部は、前記左右肘掛け部の間に設けられ、前記着座部上には、平面視で前記左右肘掛け部及び前記背凭れ部に三辺を囲まれる着座空間が形成され、前記背凭れ部は、平面視で前記着座空間を向く前面を背凭れ面とし、前記左右肘掛け部は、平面視で前記着座空間を向く内側面を有し、前記操作部が、前記肘掛け部における
前記内側面、および前記背凭れ部における
前記背凭れ面の少なくとも一箇所に設けられることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、左右方向に複数並んで劇場等に設置される椅子に位置調整可能なランバーサポートを設けることで、長時間の隣席との密接な距離感における拘束状態での着座であっても、ランバーサポートを位置調整して座り心地を変化させる等し、疲労軽減を図ることができる。
そして、左右方向に複数並んで設置される椅子において、平面視コ字状の着座空間に臨む部位に、ランバーサポートの位置調整を行う操作部を設けることで、着座者に対し自席の操作部を明確に認識させるとともに、着座空間から容易に操作部にアクセスすることができる。これにより、目立たない動きでランバーサポートを位置調整しつつ、疲労軽減効果を良好に得ることができる。また、着座中には操作部が外観に露出し難くなり、外観を良好に保つとともに、第三者により不意に操作される虞を軽減できる。
【0008】
また、上記椅子は、前記操作部が、前記背凭れ面における前記ランバーサポートの使用範囲を避けた退避位置まで前記ランバーサポートを移動可能である構成でもよい。
この場合、不特定多数の着座者が使用する劇場等の椅子において、ランバーサポートを不要とする着座者がいても、このような着座者に対して違和感を与えることを抑止できる。
【0009】
また、上記椅子は、前記背凭れ面における前記着座部近傍の下端部に前記退避位置が設定される構成でもよい。
この場合、背凭れ面における着座者との接触が少ない部位をランバーサポートの退避位置として有効活用できるとともに、退避位置にあるランバーサポートを目立たなくできる。
【0010】
また、上記椅子は、前記操作部が、その操作量に応じて前記ランバーサポートの位置を変化させる構成でもよい。
この場合、操作部の機能が、ランバーサポートの出没やリセット操作のみではなく、操作部の可動範囲での操作量に応じてランバーサポートの位置を変化させるので、目立たない動きで容易にランバーサポートの位置調整を行うことができる。
【0011】
また、上記椅子は、少なくとも左右一対の前記操作部を備える構成でもよい。
この場合、左右方向に延びるランバーサポートの両側の位置を左右一対の操作部によりバランス良く変化させ、ランバーサポートの位置調整を確実かつ快適に行うことができる。
【0012】
また、上記椅子は、前記操作部が前記ランバーサポートに設けられる構成でもよい。
この場合、操作部をランバーサポートと一体にして部品点数を削減できるとともに、既存の椅子にもランバーサポートを簡単に追加装着できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、左右に複数並んで設置される椅子において、着座者が目立たない動きで容易にランバーサポートを位置調整可能とし、かつランバーサポートの操作部を目立たず簡単に設けることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明では、椅子の座体上で背凭れに背を向けて着座した着座者の「前方」を図中矢印FRで示し、前記着座者の「上方」を図中矢印UPで示し、上記着座者の「左方」を図中矢印LHで示す。
【0016】
<第一実施形態>
図1に示すように、本実施形態の椅子1は、例えば劇場、講堂、ホール、会議場、講義室等において、左右に複数並んで一体的に連結され、かつこの連結体を前後に複数並べて設置される。
【0017】
椅子1は、フロアFにアンカボルト等によって左右方向で間隔を空けて固定される左右一対の脚部2と、脚部2の上部で左右方向と略直交する板状に設けられる左右一対の肘掛け部3と、左右肘掛け部3間で着座面4aを略水平にした使用位置(図中右側参照)とその前側を上方に変位させて着座面4aを起立させた格納位置(図中左側参照)との間で回動可能に設けられる着座部4と、左右肘掛け部3の後部間から上方に起立するように固定的に設けられる背凭れ部5と、を備える。
【0018】
脚部2は、例えばフロアFに固定される接地脚2aから上方に向けて、左右方向と略直交する板状をなして延びるように形成される。脚部2の上部には、脚部2よりも厚い板状をなす肘掛け部3が被さるように設けられる。脚部2は、例えば鉄鋼製の椅子フレームの一部を構成し、肘掛け部3は、例えば樹脂製や木製(ベニヤ板や木質材料等を含む)の外観部品を構成する。
【0019】
図3を併せて参照し、肘掛け部3は、その上縁部が略水平をなして前後に延びる肘掛け面3aとなる。肘掛け部3は、肘掛け面3aの下方で側面視逆台形状をなすように形成される。肘掛け部3における肘掛け面3aより下方の部位は、左右方向で隣り合う隣席との間の隔壁としても機能する。肘掛け部3の上部は、例えば後上がりの分割線3bを境に別部材で構成され、肘掛け部3の上部を異なる材質で構成可能である。肘掛け部3における分割線3bよりも上方の前上端部3cは、肘掛け面3aを延長するように側面視三角形状をなして前方に突出する。ここで、前記「隔壁」とは、隣席から自席への身体のアクセスを遮断するものであり、空間を遮蔽する壁の他、柵状や網状等を含む。
【0020】
着座部4は、着座面4aを形成する座クッション7と、座クッション7を支持する不図示の座フレームと、座フレームにおける着座面4aとは反対側の裏面を覆う裏面パネル8と、を有する。座クッション7は、クッション材を表皮7aで覆った構成を有する。座フレームにおける着座部4の使用位置での後側にある基端部4bは、左右方向に沿う支持軸9を介して椅子フレームに回動可能に枢支される。着座部4は、使用位置での前側にある先端部4cを上下に変位させるように、支持軸9を中心に回動する。椅子1における例えば支持軸9の周囲には、着座部4を格納位置へ跳ね上げるように付勢する座付勢機構11が設けられる。
【0021】
図1〜
図4を参照し、背凭れ部5は、着座面4aの後部の上方に起立する背凭れ面5aを形成する背クッション12と、背クッション12を後方から支持する背ベース板13と、を備える。背クッション12は、クッション材を表皮12aで覆った構成を有する。背クッション12は、着座者の腰部を後方から支持し易いように、背凭れ面5aの上下中間部よりも下側の高さとなる位置を前方に凸の頂部14とするように形成される。頂部14は、肘掛け部3の上端(肘掛け面3a)よりも下方に設けられる。
【0022】
背凭れ面5aにおける頂部14よりも上方の範囲は、鉛直方向に対して仰向けに形成され、背凭れ面5aにおける頂部14よりも下方の範囲は、鉛直方向に対して俯せに形成される。背ベース板13は、前後方向に直交する鉛直面に対して後傾した平面に沿う平板状をなし、その正面視で上下に長い長方形状に設けられる。背ベース板13は、その下部の左右側部が椅子フレームにそれぞれ固定的に支持される。背ベース板13の下端は、肘掛け部3の下端と同等の高さで終端する。背クッション12の下端は、背ベース板13の下端より上方でかつ、使用位置にある着座部4の着座面4aの後端近傍で終端する。
【0023】
図3、
図5を参照し、椅子1は、背凭れ部5の背凭れ面5a(前面)に沿う使用範囲H1で上下位置を調整可能に設けられるランバーサポート21と、ランバーサポート21の上下位置の調整を行うための操作部25と、着座部4の格納位置への跳ね上げに伴いランバーサポート21を使用範囲H1の下方に設定した退避位置T1に移動させる戻し機構31と、をさらに備える。
【0024】
ランバーサポート21は、背クッション12の表皮12aと表皮12a上にさらに重ねて張設された外皮材22との間の間隙内に上下移動可能に挿入保持されるランバー本体23を有する。外皮材22の左右側縁部は、所定の上下範囲で切り欠かれ、表皮12a及び外皮材22間の間隙を外部に開放するスリット部22aを形成する。左右スリット部22aからは、ランバー本体23の側端部が外部に露出し、この露出した側端部に前記操作部25が取り付けられる。左右スリット部22aは上下に長く、これら左右スリット部22aの上下長さ分をランバー本体23が上下動可能である。
【0025】
操作部25は、ランバー本体23の側端部に前方から取り付けられる。ランバー本体23の側端部及び操作部25は、外皮材22のスリット部22aに沿う縁部を相対的に上下動可能な程度に挟み込む。このような構成により、操作部25を有するランバーサポート21の追加装着や着脱が容易である。そして、着座者が操作部25をスリット部22aに沿って上下動させることで、ランバーサポート21の上下位置を任意に調整可能とされる。ランバー本体23は、表皮12a及び外皮材22に適度な保持力で挟み込まれることで、上下動を可能にしつつ任意の上下位置で停止可能である。操作部25は、ランバー本体23を使用範囲H1で移動可能とし、かつ使用範囲H1からランバーサポート21の初期位置である退避位置T1まで移動可能とする。退避位置T1は、背凭れ面5aにおける使用範囲H1を避けた位置であり、背凭れ面5aにおける頂部14よりも下方の俯せの領域で、使用位置にある着座部4の後端部に近接して設定される。退避位置T1に移動したランバーサポート21(図中符号21’で示す)は、着座者の身体に作用することはない。使用範囲H1は背凭れ面5aにおける頂部14を含めた下方の仰向けの領域であるが、ランバーサポート21の初期位置を頂部14に設定する等、使用範囲H1内の一部をランバーサポート21の初期位置としてもよい。
【0026】
図4を参照し、使用位置にある着座部4上には、平面視で左右肘掛け部3及び背凭れ部5に三辺を囲まれる矩形状の着座空間K1が形成される。そして、操作部25は、背凭れ部5における平面視で着座空間K1に臨む部位(背凭れ面5a)に設けられる。ここで、前記「平面視で着座空間K1に臨む部位」とは、平面視で着座空間K1を向く面の他、当該面に形成された各種形状を構成する面も含む。背凭れ部5の場合は、背凭れ面5aにおける着座空間K1よりも上方(肘掛け面3aよりも上方)の部位を含む。これにより、着座者が自席の操作部25を認識し易く、かつ着座空間K1から容易にアクセス可能となり、さらに着座中に第三者から操作される虞も軽減される。図中符号3dは左右肘掛け部3における着座空間K1側を向く内側面を示す。
【0027】
図5を参照し、戻し機構31は、例えば着座部4の後端部とランバー本体23とを連結する連結ベルト32を有する。連結ベルト32は、着座部4が使用位置にありかつ、ランバー本体23が退避位置T1や使用範囲H1の下側にあるときは、着座部4とランバー本体23との間で弛みをもって配置される(
図5(a)参照)。この連結ベルト32の弛みの分だけ、ランバー本体23を使用範囲H1の上側に移動可能である(
図5(b)参照)。そして、座付勢機構11の付勢力により着座部4が跳ね上がったときには、連結ベルト32が弛みを無くしつつランバー本体23を引き下げ、使用範囲H1の下方の退避位置T1まで移動させる(
図5(c)参照)。戻し機構31は、着座部4の着座面4a(上面)より下方で背凭れ部5の背凭れ面5a(前面)より後方に大部分が設けられる。
【0028】
以上説明したように、本実施形態の椅子1は、左右肘掛け部3と、着座部4と、背凭れ部5と、を備え、左右方向に複数並んで設置されて、隣席との間に肘掛け部3が配置されるものにおいて、背凭れ部5の背凭れ面5aに沿って位置調整可能に設けられるランバーサポート21と、ランバーサポート21の位置調整を行う操作部25と、をさらに備え、操作部25が、背凭れ部5における平面視で左右肘掛け部3及び背凭れ部5に囲まれる着座空間K1に臨む部位に設けられるものである。
【0029】
この構成によれば、左右方向に複数並んで劇場等に設置される椅子1に位置調整可能なランバーサポート21を設けることで、長時間の隣席との密接な距離感における拘束状態での着座であっても、ランバーサポート21を位置調整して座り心地を変化させる等し、疲労軽減を図ることができる。
そして、左右方向に複数並んで設置される椅子1において、平面視コ字状の着座空間K1に臨む部位に、ランバーサポート21の位置調整を行う操作部25を設けることで、着座者に対し自席の操作部25を明確に認識させるとともに、着座空間K1から容易に操作部25にアクセスすることができる。これにより、目立たない動きでランバーサポート21を位置調整しつつ、疲労軽減効果を良好に得ることができる。また、着座中には操作部25が外観に露出し難くなり、外観を良好に保つとともに、第三者により不意に操作される虞を軽減できる。
【0030】
また、操作部25が、背凭れ面5aにおけるランバーサポート21の使用範囲H1を避けた退避位置T1までランバーサポート21を移動可能であることで、不特定多数の着座者が使用する劇場等の椅子1において、ランバーサポート21を不要とする着座者がいても、このような着座者に対して違和感を与えることを抑止できる。
【0031】
また、背凭れ面5aにおける着座部4近傍の下端部に退避位置T1が設定されることで、背凭れ面5aにおける着座者との接触が少ない部位をランバーサポート21の退避位置T1として有効活用できるとともに、退避位置T1にあるランバーサポート21を目立たなくできる。
【0032】
また、操作部25が、その操作量に応じて前記ランバーサポート21の位置を変化させることで、操作部25の機能が、ランバーサポート21の出没やリセット操作のみではなく、操作部25の可動範囲での操作量に応じてランバーサポート21の位置を変化させるので、目立たない動きで容易にランバーサポート21の位置調整を行うことができる。
【0033】
また、少なくとも左右一対の操作部25を備えることで、左右方向に延びるランバーサポート21の両側の位置を左右一対の操作部25によりバランス良く変化させ、ランバーサポート21の位置調整を確実かつ快適に行うことができる。
【0034】
また、操作部25がランバーサポート21に設けられることで、操作部25をランバーサポート21と一体にして部品点数を削減できるとともに、既存の椅子1にもランバーサポート21を簡単に追加装着でき、かつランバーサポート21の着脱を伴うメンテナンスも容易にできる。
【0035】
そして、本実施形態の椅子1は、着座部4が、着座者が着座する略水平な使用位置から背凭れ部5に沿うように起立した格納位置へ跳ね上げ可能とされ、着座部4の格納位置への跳ね上げに伴い、ランバーサポート21を、背凭れ面5aにおけるランバーサポート21の使用範囲H1を避けた退避位置T1まで戻す戻し機構31をさらに備えるものである。
この構成によれば、劇場等に設置される座面跳ね上げ式の椅子1において、着座部4の跳ね上げに伴い、背凭れ面5aの使用範囲H1にあるランバーサポート21を退避位置T1に戻すことで、ランバーサポート21の位置の好みが異なる着座者やランバーサポート21を必要としない着座者に対して違和感を与えることを抑止できる。
【0036】
また、戻し機構31の少なくとも一部が、着座部4の着座面4aより下方かつ背凭れ部5の背凭れ面5aより後方に設けられることで、椅子1として使われることの少ないスペースをランバーサポート21の戻し機構31の配置スペースとして有効活用できるとともに、戻し機構31を設けることにより外観を損ねてしまうことを抑止できる。
【0037】
また、着座部4を格納位置へ跳ね上げるように付勢する座付勢機構11を備え、座付勢機構11の付勢力によってランバーサポート21を退避位置T1に戻すことで、着座者が離席したときは常に、着座部4の格納位置への跳ね上げとともに背凭れ面5aの使用範囲H1にあるランバーサポート21を退避位置T1に戻すことができる。したがって、ランバーサポート21を退避位置T1に戻すための追加の付勢機構を不要にできる。
【0038】
<第二実施形態>
次に、本発明の第二実施形態について、
図6、
図7を参照して説明する。
第二実施形態は、第一実施形態に対して、ランバーサポート21の操作部がランバー本体23から分離した操作レバー125である点、及び形態の異なる戻し機構131を備える点で特に異なる。その他の、第一実施形態と同一構成には同一符号を付して詳細説明は省略する。
【0039】
操作レバー125は、肘掛け部3における平面視で着座空間K1に臨む部位(内側面3d)に設けられる。操作レバー125は、左右方向に沿う回動軸125a回りに回動操作される。操作レバー125は、ランバー本体23の上下位置を調整するランバー位置調整機構124の一部を構成する。ランバー位置調整機構124は、操作レバー125と、操作レバー125の回動軸125a側で一体回動可能に設けられる駆動プーリ126と、背凭れ部5の下方かつ着座部4の後方に配置される従動プーリ127と、両プーリ126,127間に側面視X字状に掛け回される伝動ベルト128と、従動プーリ127とランバーサポート21とを連結するリンク部材129と、を有する。リンク部材129の上端部はランバー本体23に左右方向に沿う上連結軸を介して回動可能に連結され、リンク部材129の下端部は従動プーリ127の外周部に左右方向に沿う下連結軸を介して回動可能に連結される。
【0040】
操作レバー125は、回動軸125aから前方に延びた状態と(
図6(a)参照)、回動軸125aから上方に延びた状態と(
図6(b)参照)、の間で回動する。前者の状態ではランバーサポート21が使用範囲H1の下限位置にあり、後者の状態ではランバーサポート21が使用範囲H1の上限位置にある。これらの間で操作レバー125の回動位置を変化させることで、その操作量に応じてランバーサポート21の上下位置を調整可能である。
【0041】
伝動ベルト128がX字状に掛け回されるのは、操作レバー125を上方に回動させる際にランバーサポート21が上方に移動し、操作レバー125を下方に回動させる際にランバーサポート21が下方に移動するようにして、操作レバー125をランバーサポート21の上下動に合わせて直観的に操作し易くするためである。また、操作レバー125が前向きであると着座者の手先に近付くため、この点でも操作レバー125を操作し易くなる。
【0042】
なお、図示は略すが、操作レバー125が、回動軸125aから後方に延びた状態と、回動軸125aから上方に延びた状態と、の間で回動するものでもよく、この場合、両プーリ126,127間に並列に掛け回された伝動ベルト128でも直観的な操作がし易くなり、かつランバー位置調整機構124の構成が単純になる。操作レバー125は、第一実施形態の操作部25と同様、左右一対設けることが望ましいが、左右一方のみとしてもよい。
【0043】
以上説明したように、本実施形態の椅子101でも、劇場等に設置される椅子101に位置調整可能なランバーサポート21を設けて疲労軽減を図るとともに、ランバーサポート21の位置調整を行う操作部(操作レバー125)が、肘掛け部3における平面視で着座空間K1に臨む部位に設けられることで、着座者が目立たない動きで容易にランバーサポート21を位置調整可能となり、疲労軽減効果を良好に得ることができる。また、着座中には操作部が外観に露出し難くなり、かつ第三者により不意に操作される虞を軽減できる。
【0044】
ここで、
図6では、着座部4の跳ね上げに伴いランバーサポート21を退避位置T1に戻す戻し機構を図示しないが、第一実施形態の戻し機構31を適用できる他、
図7に示す戻し機構131を適用できる。
すなわち、戻し機構131は、着座部4の支持軸9側で一体回動可能に設けられる戻し駆動プーリ132と、前記従動プーリ127と同軸かつ相対回転可能に設けられる戻し従動プーリ133と、両プーリ132,133間に並列に掛け回される戻し伝動ベルト134と、を有する。
【0045】
戻し従動プーリ133の外周には、従動プーリ127に係合可能な戻し突部133aが突設される。戻し従動プーリ133及び戻し突部133aは、着座部4が跳ね上がる際に後回りに回動する。このとき、戻し突部133aは、従動プーリ127に設けられた係止部(本実施形態ではリンク部材129の下連結軸129a)に係合(当接)する。これにより、従動プーリ127も後回りに回動し、リンク部材129を介してランバーサポート21を下降させる。そして、着座部4が格納位置まで跳ね上がった時点で、ランバーサポート21が退避位置T1まで戻される。戻し突部133aは、着座部4が使用位置にあるときは、従動プーリ127の係止部(下連結軸129a)から適宜離間し、ランバーサポート21の上下動を可能とする。
【0046】
本実施形態の椅子101においても、着座部4の格納位置への跳ね上げに伴いランバーサポート21を退避位置T1まで戻す戻し機構131をさらに備えることで、ランバーサポート21の位置の好みが異なる着座者やランバーサポート21を必要としない着座者に対して違和感を与えることを抑止できる。
【0047】
<第三実施形態>
次に、本発明の第三実施形態について、
図8を参照して説明する。
第三実施形態は、第一実施形態に対して、形態の異なる戻し機構231を備える点で特に異なる。その他の、上記実施形態と同一構成には同一符号を付して詳細説明は省略する。
【0048】
戻し機構231は、着座部4の後方に延びて着座部4と一体回動可能に設けられる駆動アーム232と、駆動アーム232の後端部に下端部が連結されるとともに上端部がランバーサポート21に連結される伸縮アーム233と、を有する。伸縮アーム233は、その上下端部が左右方向に沿う回動軸を介して、駆動アーム232及びランバーサポート21にそれぞれ回動可能に連結される。伸縮アーム233は、例えば棒状のシリンダ233a及び該シリンダ233aに摺動可能に保持されるピストンロッド233bを有する。
【0049】
駆動アーム232は、着座部4が跳ね上がる際に後端部を下方へ移動させる。伸縮アーム233は、着座部4が格納位置まで跳ね上がった時点で、退避位置T1まで下降したランバーサポート21と駆動アーム232の後端部との間で伸長しきった状態となる(
図8(c)参照)。この状態から着座部4が使用位置に向けて回動すると、ランバーサポート21が退避位置T1に留まったままで、伸縮アーム233が短縮しつつ傾動する(
図8(a)参照)。その後、例えばランバーサポート21に設けた前記操作部25を操作する等により、伸縮アーム233の伸縮を伴いながらランバーサポート21の上下位置を調整可能である(
図8(b)参照)。なお、第三実施形態に第二実施形態のランバー位置調整機構124を組み合わせてもよい。
【0050】
以上説明したように、本実施形態の椅子201においても、劇場等に設置される椅子201に位置調整可能なランバーサポート21を設けて疲労軽減を図るとともに、着座部4の格納位置への跳ね上げに伴い、ランバーサポート21を退避位置T1まで戻す戻し機構231をさらに備えることで、ランバーサポート21の位置の好みが異なる着座者やランバーサポート21を必要としない着座者に対して違和感を与えることを抑止できる。
【0051】
<第四実施形態>
次に、本発明の第四実施形態について、
図9を参照して説明する。
第四実施形態は、第一実施形態に対して、座付勢機構11とは別にランバーサポート21を退避位置T1に戻すように付勢するランバー付勢機構(オートリール部332)を含む戻し機構331を備える点で特に異なる。その他の、上記実施形態と同一構成には同一符号を付して詳細説明は省略する。
【0052】
戻し機構331は、例えば背凭れ部5の下方に配置されたオートリール部332と、オートリール部332の作動を着座部4の位置に応じて制限するストッパ部333と、を有する。オートリール部332は、例えばゼンマイばね等の付勢手段を有し、左右方向に沿う軸回りに連動ベルト334を巻き取り可能とする。連動ベルト334の先端部は、ランバーサポート21に連結される。連動ベルト334は、オートリール部332の巻き取りが許容された状態では、その付勢力によってランバーサポート21を退避位置T1まで下降させる。ストッパ部333は、例えば左右方向に沿う回動軸333aを中心に回動するベルクランク状のもので、回動軸333aの前方で着座部4の後端部の下方まで延びる前アーム部333bと、回動軸333aの後方でオートリール部332の例えばベルト引出部332aまで延びる後アーム部333cと、を有する。
【0053】
ストッパ部333は、後アーム部333cの先端部をベルト引出部332aに押圧するように付勢される。着座部4が使用位置にあるときには、後アーム部333cの先端部がベルト引出部332aを押圧した状態となり、この状態でオートリール部332による連動ベルト334の巻き取りが停止される(
図9(a),(b)参照)。後アーム部333cの先端部は、例えばラチェット機構等を用いることで、ベルト引出部332aを押圧した状態では連動ベルト334の巻き取りのみを制限し、連動ベルト334の引き出しは許容する。
【0054】
ランバーサポート21には、例えば前記操作部25が設けられ、この操作部25を操作することで、ストッパ部333が連動ベルト334の巻き取りを制限した状態でも、連動ベルト334をオートリール部332から引き出しつつ、ランバーサポート21を上方移動させることが可能である(
図9(b)参照)。また、ランバーサポート21を上方移動した後に下方移動させるときは、連動ベルト334の巻き取りが制限された状態でも、連動ベルト334が弛むことでランバーサポート21の下方移動を可能とする。
【0055】
ストッパ部333は、着座部4が格納位置に変化するときには、着座部4の後端部が前アーム部333bに係合して下方に押し下げることで、ストッパ部333が前回りに回動する(
図9(c)参照)。すると、後アーム部333cによるベルト引出部332aの押圧が解除され、オートリール部332による連動ベルト334の巻き取りが許容される。これにより、着座部4の跳ね上げに連動して、ランバーサポート21の退避位置T1への移動がなされる。
【0056】
以上説明したように、本実施形態の椅子301においても、劇場等に設置される椅子201に位置調整可能なランバーサポート21を設けて疲労軽減を図るとともに、着座部4の格納位置への跳ね上げに伴い、ランバーサポート21を退避位置T1まで戻す戻し機構331をさらに備えることで、ランバーサポート21の位置の好みが異なる着座者やランバーサポート21を必要としない着座者に対して違和感を与えることを抑止できる。
そして、着座部4を格納位置へ跳ね上げるように付勢する座付勢機構11とは別に、ランバーサポート21を退避位置T1に戻すように付勢するオートリール部332を備えることで、背凭れ面5aの使用範囲H1にあるランバーサポート21をより確実に退避位置T1に戻すことができる。また、ランバー付勢機構(オートリール部332)を含む戻し機構331に対して、着座部4は単体で着脱可能であり、かつ着座部4の戻し機構331への連結も着座部4の後端部が前アーム部333bに上方から当接するのみであるため、既存の組み付け手順を大きく変えることなく着座部4を組み付けられる。加えて、ランバーサポート21に前記操作部25を設ける構成であれば、ランバーサポート21の追加装着や着脱を伴うメンテナンスも容易になる。このように、ランバーサポート21及び戻し機構331を備えた椅子301の設置やメンテナンスを容易にできる。
【0057】
なお、この発明は上記各実施形態に限られるものではなく、適宜な変形や改良等が可能である。例えば、着座部が着座面を上方に向けた状態のまま固定された構成でもよい。また、座付勢機構を備えず着座者が手動で着座部を跳ね上げる構成でもよい。ランバーサポートの操作部は、着座者の手先ではなく肘等を用いて操作する構成でもよい。ランバーサポートの操作部は、肘掛け部における平面視で着座空間に臨む部位、背凭れ部における平面視で着座空間に臨む部位、及び座面部における着座空間に臨む部位の少なくとも一箇所に設けられた構成でもよい。