特許第6338220号(P6338220)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6338220
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】胸部安定化装置
(51)【国際特許分類】
   A63B 23/12 20060101AFI20180528BHJP
   A63B 21/065 20060101ALI20180528BHJP
【FI】
   A63B23/12
   A63B21/065
【請求項の数】17
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-526837(P2015-526837)
(86)(22)【出願日】2013年8月19日
(65)【公表番号】特表2015-524716(P2015-524716A)
(43)【公表日】2015年8月27日
(86)【国際出願番号】AU2013000919
(87)【国際公開番号】WO2014026249
(87)【国際公開日】20140220
【審査請求日】2016年8月12日
(31)【優先権主張番号】2012903573
(32)【優先日】2012年8月17日
(33)【優先権主張国】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】515043037
【氏名又は名称】グラビティ フィットネス オーストラリア ピーティーワイ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GRAVITY FITNESS AUSTRALIA PTY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100181021
【弁理士】
【氏名又は名称】西尾 剛輝
(72)【発明者】
【氏名】ディビッド アレクサンダー リチャードソン
(72)【発明者】
【氏名】キャロライン アン リチャードソン
【審査官】 古屋野 浩志
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第02280274(US,A)
【文献】 米国特許第05749838(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 23/12
A63B 21/065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エクササイズ装置であって、
(i)脊柱接触部材と、前記脊柱接触部材から横方向に延びる2つの剛性平面部材とを含む感知手段と、
(ii)前記感知手段を前記エクササイズ装置の着用者の方へ押しつける、調整可能なストラップシステムであって、1又は2の可撓性で伸長可能なストラップを含む調整可能なストラップシステムと、
を含み、
前記脊柱接触部材は凸形状であり、それゆえに頂部を有し、前記2つの剛性平面部材によって規定される平面から突出し、使用時に、前記脊柱接触部材の前記頂部は前記着用者の胸部湾曲の頂部に配置され、かつ前記胸部湾曲を押さえ、それによって触感をフィードバックし、前記剛性平面部材の各々は、前記着用者の肩甲骨の上に配置される、エクササイズ装置。
【請求項2】
前記脊柱接触部材は、前記着用者の前記胸部湾曲に接触する平滑な面を有する、請求項1に記載のエクササイズ装置。
【請求項3】
前記脊柱接触部材は、前記着用者の前記胸部湾曲に接触する、面上の1つ以上の突起を有する、請求項1に記載のエクササイズ装置。
【請求項4】
前記感知手段は、少なくとも1つの圧力センサをさらに含む、請求項1〜のいずれか1項に記載のエクササイズ装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの圧力センサは、前記脊柱接触部材に取り付けられる、請求項に記載のエクササイズ装置。
【請求項6】
圧力センサが各剛性平面部材に取り付けられる、請求項に記載のエクササイズ装置。
【請求項7】
さらなる圧力センサが前記脊柱接触部材に取り付けられる、請求項に記載のエクササイズ装置。
【請求項8】
各圧力センサは、電子圧力センサである、請求項のいずれか1項に記載のエクササイズ装置。
【請求項9】
各電子圧力センサは、圧力監視装置と無線通信する、請求項に記載のエクササイズ装置。
【請求項10】
前記脊柱接触部材および2つの剛性平面部材は独立した構成要素であり、前記2つの剛性平面部材は前記脊柱接触部材に着脱可能に取り付けられるよう構成されている、請求項1〜9のいずれか1項に記載のエクササイズ装置。
【請求項11】
前記調整可能なストラップシステムは、少なくとも1つの可撓性で伸長可能なストラップを含み、前記少なくとも1つの可撓性で伸長可能なストラップは弾性抵抗バンドであり、前記少なくとも1つの弾性抵抗バンドの端部は前記感知手段に固定されるか又は接触する、請求項1〜10のいずれか1項に記載のエクササイズ装置。
【請求項12】
前記調整可能なストラップシステムは、2つの柔軟かつ伸長性のあるストラップを含み、前記柔軟かつ伸長性のあるストラップは弾性抵抗バンドであり、前記2つの弾性抵抗バンドの各々の端部は前記感知手段に固定されるか又は接触する、請求項11に記載のエクササイズ装置。
【請求項13】
前記調整可能なストラップシステムは、各弾性抵抗バンドの長さを調整する少なくとも1つの装置をさらに含む、請求項11または12に記載のエクササイズ装置。
【請求項14】
各弾性抵抗バンドの前記長さを調整する前記装置は、バックル、クリップ、およびクリートからなる群から選択される、請求項13に記載のエクササイズ装置。
【請求項15】
前記調整可能なストラップシステムは、エクササイズ中に、前記着用者の手で把持されるように構成された把持用手段を含む、請求項1114のいずれか1項に記載のエクササイズ装置。
【請求項16】
前記把持用手段は、各弾性抵抗バンドと一体で形成される、請求項15に記載のエクササイズ装置。
【請求項17】
前記把持用手段にはハンドルが含まれる、請求項15に記載のエクササイズ装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肩甲骨−胸部の筋肉を強化する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書における先行技術についての言及は、先行技術が技術常識の一部を形成しているということを認めるもの、または何らかの形で示唆するものではなく、そのようなものとみなされるべきではない。
【0003】
脊柱は、その形状を変えることができ、すべての方向に動くことができる複雑で可撓性の構造体である。脊柱は、椎骨、椎間板、および(胸部で肋骨につながる)椎間関節で構成され、脊髄および身体に延びる神経を収容する。脊柱に影響を及ぼす持続的な負荷、または重負荷がかかっている間、脊柱をその「中立」位置に保持するように働く適切な筋機能によってのみ、この複雑で脆弱な構造体を保護することができる。
【0004】
3つの脊柱湾曲(頸部湾曲、胸部湾曲、および腰仙湾曲)によって形成される中立脊柱は、通常、「S字」形状の中立脊柱位置として説明される。湾曲は、椎骨および椎間板の形状によって、および、最も重要なこととして、3つの湾曲の形状を保つ筋肉によって形成される。3つの湾曲は、脊柱が応力に耐え、垂直な重力によって生じる衝撃負荷を打ち消すばねとして機能するのを可能にする。中立脊柱位置を構成する個々の湾曲は、正しい姿勢の垂直線、すなわち、乳様突起、肩関節の中心、および股関節の中心を通る、側方から見た仮想線の両側に位置する。個々の湾曲についての説明は以下の通りである。
(i)首部の湾曲−凹状の頸部脊柱湾曲は垂直線の前に位置し、頭部の位置と密接に関係している。
(ii)背下部の湾曲−凹状の腰仙脊柱湾曲も垂直線の前に位置し、骨盤および下肢の動きと密接に関係している。
(iii)(肋骨につながった)胸部の湾曲−首部および背下部とは対照的に、凸状の胸部湾曲が正しい姿勢の垂直線の後ろに位置する。
【0005】
凸状の胸部湾曲は、肩甲骨および連結された上肢の動きおよび位置と密接に関係している。胸部の湾曲を堅固に保持するために、肩甲骨−胸筋(主に前鋸筋)は、肩甲骨を胸壁に押し当てて平らになるようにしながら、脊柱に作用する、後方に向けられた筋力を生じさせなければならない。この動作は、上肢用の体重負荷エクササイズを通じた肩甲骨−胸筋(主に前鋸筋)の同時活性化および強化によってのみもたらすことができる(Kendall et al.‘Muscles:Testing and Function,with Posture and Pain’,Lippincott Williams&Wilkins,2005に記載されている前鋸筋のための「体重負荷」試験を参照のこと)。肩甲骨−胸筋(主に前鋸筋)が正常に機能する健康な脊柱では、胸椎はその湾曲を維持し、肩甲骨は、胸郭に押し当てて平らに保たれる。
【0006】
脊柱からなる複雑な構造体は、中立脊柱の3つの個々の湾曲を支持および維持する特殊な深部筋肉組織を通じて保護および管理される。前鋸筋は、深部筋肉組織の重要な部位を形成する。中立脊柱位置の維持は、脊柱が持続的な負荷、または重負荷に対処しているときに、とりわけ、脊柱の軸回転(ねじり)動作のための安定した中心軸をもたらすのに重要である。中立脊柱の維持が重要である動作には以下のものがある。
(i)ウォーキング(脊柱にとっては低負荷)。中立脊柱は、持続時間の間、立位で安定的に維持および支持されて、典型的な「正しい姿勢型(good postural form)」をもたらす。
(ii)(例えば、歯科医または工場労働者などの特定の職業で必要とされる)さらに大きい持続的負荷が必須の長時間にわたる前かがみ動作。脊柱は、中立脊柱位置に脊柱を支持する強い筋肉を必要とする。
(iii)体幹のねじりを伴うゴルフ、クリケット、およびテニスなどのスポーツ。脊柱は、中立脊柱位置が(前かがみ姿勢での)体幹回転の強固な中心軸を形成するのを可能にするために、さらに強い棘筋の短時間の使用を必要とする。
(iv)安全な持ち上げ技術としてのリフティングは、強固な中立脊柱位置の維持にかかっている。特に、著しい重負荷を持ち上げる場合に、脊柱は、ねじり運動を伴うことが多い前かがみ姿勢での中立脊柱位置の維持のために、さらに強い棘筋を必要とする。
【0007】
座っていることの方が多い現代のライフスタイルおよびロボット利用技術により、人々の脊柱姿勢は悪化しつつある。言い換えると、人々の脊柱は弱体化しつつあり、中立脊柱の立位を維持する能力を失いつつある。脊柱湾曲を調整する筋力の低下も、上肢用の体重負荷エクササイズの不足によるものである。したがって、脊柱構造体は、損傷に対してはるかに脆弱になり、脊椎痛、椎間板の損傷および関連痛、骨関節症、ならびに肩および臀部の痛みを伴う他の関節問題を増加させている。
【0008】
脊柱の全体的な弱さは、正しい姿勢の垂直線の両側の正常な自然脊柱湾曲の減少として現れる。自然脊柱湾曲の減少は多くの形態を取り得るが、エクササイズ中には、ほとんどの場合、結果として脊柱は「C字」形状湾曲または逆「C字」形状を有するようになる。脊柱がこれらの位置のいずれかを取る場合のエクササイズは、脊柱を強化するよりもむしろ弱くすることになる。
【0009】
中立脊柱位置において、筋肉は脊柱を支持し、脊柱を損傷から保護することができるので、この位置は、筋肉−骨格の健全性にとって重要と考えられる。胸部湾曲を維持するのは、特に、筋肉の活性化および強化であるが、この胸部湾曲の維持については、中立脊柱を強化するために現在使用されているエクササイズでは対処していない。
【0010】
特に胸部湾曲の場合に、直立したときの前鋸筋の脱力は、平坦な胸部湾曲と「翼状(winging)」の肩甲骨として現れ、肩甲骨の内側縁は、胸壁から離れる方向に持ち上がり、胸椎よりもはるか後方に突出する(図4を参照のこと)。
【0011】
前鋸筋は、大型の骨である肩甲骨の下の非常に深い位置にあるので、表層筋を活性化および訓練するのに通常使用される促通手技を使用することができない。さらに、前鋸筋は、骨の下にあるために、(フィードバック技術として使用される)リアルタイムの超音波画像診断技術を使用して、前鋸筋を観察することも、促通することも、強化することもできない。
【0012】
確実に肩甲骨−胸部を安定化および強化するために、特定のタイプの強化エクササイズが必要とされる。この強化エクササイズとは、軸方向の(体重負荷の)反発力が、上肢全体にわたって長手方向に軸圧縮をもたらし、さらには、胸椎の湾曲を強化する、後方に向けられた筋力を生じさせる上肢体重負荷エクササイズである。上肢体重負荷エクササイズを行う場合に、胸部湾曲の正しい位置を維持するために、正しい姿勢型が維持されることは重要である。
【0013】
したがって、正しい姿勢を監視および維持するのに寄与するだけでなく、肩甲骨−胸部の弱った筋肉を強化する助けとなる新たなフィードバックエクササイズ装置が必要である。そのような装置は、特に、胸郭を後方に移動させ、肩甲骨を胸壁に押し当てて平らな状態に保つその体重負荷機能で前鋸筋を強化することが必然的に必要である。このタイプのエクササイズは、胸部湾曲を強化し、結果的に、中立脊柱位置全体を強化する。
【0014】
国際公開第2007/134380号パンフレットは、腰仙湾曲の位置を監視し、正常な筋肉が機能するのを保証するのに使用されるフィードバック装置について説明している。フィードバックエクササイズ用具は、3つの脊柱湾曲が維持されているかどうか、したがって、3つの脊柱湾曲を支持する深部の筋肉が鍛えられているかどうかに関して、人にフィードバックするので特に重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
使用者が、胸椎の位置および胸椎に対する肩甲骨の位置を感知することを可能にするフィードバックエクササイズ装置を有することが望ましい。したがって、そのようなエクササイズ装置の使用者は、正しい姿勢型を維持し、ひいては、胸椎の湾曲を適切に維持しながら、肩甲骨−胸筋(主に前鋸筋)を強化する上肢体重負荷エクササイズを行うことができる。そのようなエクササイズ装置は、日々の活動中に、または長時間にわたって座っているときに、正しい姿勢型、ひいては、胸部湾曲の正しい位置を維持するために使用することもできる。
【0016】
使用者が、胸椎の位置および胸椎に対する肩甲骨の位置を感知することを可能にし、ひいては、正しい姿勢型および胸部湾曲の維持に関してフィードバックするフィードバックエクササイズ装置が必要であるにもかかわらず、そのような装置は提供されていない。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記を考慮して、本発明は、一形態において、エクササイズ装置に広く属し、エクササイズ装置は、
(i)脊柱接触部材と、脊柱接触部材から横方向に延びる2つの剛性平面部材とを含む感知手段と、
(ii)感知手段を前記エクササイズ装置の着用者に固定する、調整可能なストラップシステムと、
を含み、使用時に、脊柱接触部材は着用者の胸部湾曲に配置され、各剛性平面部材は、着用者の肩甲骨の上に配置される。
【0018】
脊柱接触部材は、エクササイズ装置の使用時に、着用者の胸部湾曲に接触する任意の適切な形状を取ることができる。脊柱接触部材は、2つの剛性平面部材の面から突出するのが好ましい。さらにより好ましくは、脊柱接触部材は凸状構造である。したがって、脊柱接触部材は、着用者の胸部湾曲に押し付けることができ、触感をフィードバックすることができる。
【0019】
脊柱接触部材は、2つの剛性平面部材の面から任意の適切な高さだけ突出することができる。好ましい実施形態では、脊柱接触部材は、2つの剛性平面部材の面から約1.5cm〜2cmの距離だけ突出する。脊柱接触部材が突出する実際の距離は、エクササイズ装置の使用者の背格好に応じて変えることができる。
【0020】
脊柱接触部材は、着用者の胸部湾曲に接触する平滑な面を有することができる。あるいは、脊柱接触部材は、着用者の胸部湾曲に接触する面に1つまたは複数の突起を有することができる。突起は、スパイク、瘤、または他のそのような突出物の形態をとることができて、エクササイズ装置の使用時に、突起の少なくとも1つは、着用者の胸部湾曲と接触する。
【0021】
脊柱接触部材は、胸部湾曲上の脊柱接触部材との接点を刺激する手段をさらに含むことができる。刺激は、電気刺激または振動刺激の形態を取ることができる。
【0022】
2つの剛性平面部材は、脊柱接触部材から横方向に延びて、脊柱接触部材が着用者の胸部湾曲に配置された場合に、各剛性平面部材は、着用者の肩甲骨の上に配置される。剛性平面部材は、任意の適切な材料で形成することができる。製造を容易にし、装置の重量を最小化するために、剛性平面部材は、硬質プラスチックでできているのが好ましい。
【0023】
2つの剛性平面部材はそれぞれ、着用者の肩甲骨に近接した平滑面を有することができる。あるいは、2つの剛性平面部材は、着用者の肩甲骨に近接した面に1つまたは複数の突起を有することができる。突起は、スパイク、瘤、または他のそのような突出物の形態をとることができて、エクササイズ装置の使用時に、各剛性平面部材からの少なくとも1つの突起は、着用者の肩甲骨と接触する。
【0024】
2つの剛性平面部材は、肩甲骨上の接点を刺激する手段をさらに含むことができる。刺激は、電気刺激または振動刺激の形態を取ることができる。
【0025】
感知手段は、少なくとも1つの圧力センサをさらに含むことができる。圧力センサは、脊柱接触部材に取り付けることができ、または圧力センサは、各剛性平面部材に取り付けることもできる。さらなる代替案では、感知手段は、3つの圧力センサを含むことができ、1つは脊柱接触部材に取り付けられ、1つは各剛性平面部材に取り付けられる。各圧力センサは、監視装置にフィードバックを供給することができ、それにより、エクササイズ中に、姿勢に関してフィードバックするか、または日々の活動中に、姿勢に関する意識をもたせる。各圧力センサは、当技術分野で公知の適切な手段によって、監視装置に接続することができる。
【0026】
各圧力センサは、任意の適切なタイプの圧力センサとすることができる。各圧力センサは、電子圧力センサであるのが好ましい。さらにより好ましくは、電子圧力センサは、圧力を検知するのに、フォースコレクタ(force collector)を使用する。電子圧力センサからのフィードバックは、無線で監視装置に送られるのが特に好ましい。
【0027】
特定の実施形態では、脊柱接触部材と、脊柱接触部材から横方向に延びる2つの剛性平面部材とを含む感知手段は、一体構造とすることができる。例えば、脊柱接触部材および剛性平面部材は一体成形することができる。代替の実施形態では、脊柱接触部材および剛性平面部材はロック用ラグによってなど、任意の適切な手段によって連結可能な独立した構成要素とすることができる。
【0028】
感知手段が一体構造である特定の実施形態では、脊柱接触部材は交換することができて、脊柱接触部材は、異なるタイプの脊柱接触部材に容易に交換することができる。例えば、平滑な脊柱接触部材を、突起がある脊柱接触部材に交換する。他の変形型として、2つの剛性平面部材の面に対して様々な高さを有する交換可能な脊柱接触部材がある。
【0029】
脊柱接触部材および剛性平面部材が独立した構成要素である実施形態において、脊柱接触部材は、異なるタイプの脊柱接触部材に容易に交換することができる。例えば、平滑な脊柱接触部材を、突起がある脊柱接触部材に交換する。他の変形型として、2つの剛性平面部材の面に対して様々な高さを有する交換可能な脊柱接触部材がある。
【0030】
調整可能なストラップシステムは、エクササイズ装置の着用者上の所定の位置に感知手段を保持するストラップの任意の適切な組み合わせとすることができる。調整可能なストラップシステムを設けることで、様々に異なるサイズの人たちがエクササイズ装置を着用することが可能になる。ストラップシステムはまた、着用者のある程度の運動を必要とすることがある様々な体重負荷エクササイズに対応するように調整することができる。
【0031】
調整可能なストラップシステムは、少なくとも1つの可撓性で伸長可能なストラップを含むのが好ましい。少なくとも1つの可撓性で伸長可能なストラップは、ゴムを引いた材料ストリップなどの任意の適切な材料で形成することができる。弾性抵抗バンドまたは弾性抵抗ストラップ用にエクササイズ業界で一般的に使用される材料が特に好ましい。
【0032】
調整可能なストラップシステムは、ハーネスの形態で着用者の肩の上および腕の下に密着するように構成されたストラップを含むのが好ましい。このようにして着用者の腕のまわりに密着するストラップシステムは、脊柱接触部材が着用者の胸部湾曲と接触し、各剛性平面部材が着用者の肩甲骨の上に配置されるように、感知手段が配置されるのを可能にする。
【0033】
調整可能なストラップシステムは、任意の適切な調整手段を含むことができる。このため、ストラップシステムは、1つまたは複数のバックルを含むことができる。あるいは、調整手段は、ストラップの長さを調整することを可能にする1つまたは複数のクリップ装置あるいはテンショナを含むことができる。
【0034】
調整可能なストラップシステムは、疑似体重負荷エクササイズ中に着用者が保持するハンドルまたはハンドグリップをさらに含むことができる。ハンドルまたはハンドグリップは、着用者の肩の上および腕の下に密着するストラップに取り外し可能に取り付けることができる。代替の実施形態では、ハンドルまたはハンドグリップは、単に、着用者の肩の上および腕の下に密着するストラップの拡張部または付属品とすることができる。
【0035】
本発明の特に好ましい実施形態では、調整可能なストラップシステムは、感知手段からエクササイズ装置の着用者の各肩の上および下に延び、着用者の前でハンドルまたはハンドグリップを形成するのに十分な長さの、単一の連続弾性バンドを含む。
【0036】
本明細書で説明する任意の特徴は、本発明の範囲内において、本明細書で説明する他の特徴の任意の1つまたは複数との任意の組み合わせで組み合わせることができる。
【0037】
本発明の好ましい特徴、実施形態、および変形型が、本発明を実施する当業者に十分な情報を提供する以下の詳細な説明から分かるであろう。この詳細な説明は、前出の発明の概要の範囲をいかなる形でも限定するとみなすべきではない。詳細な説明は、以下の通りのいくつかの図を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】中立脊柱を示す、人の側面図である。
図2】健全な脊柱を有する人の正しい姿勢を示す側面図である。
図3】脊柱がその中立形状を失った人の画像である。
図4】平らな胸部湾曲と突出した肩甲骨とを示す人の写真である。
図5】本発明の一実施形態によるエクササイズ装置を着用した人の背面図を示している。
図6図5のエクササイズ装置の感知手段の裏面図である。
図7図5のエクササイズ装置の脊柱接触部材の側面図である。
図8】正しい姿勢を示す、本発明の実施形態によるエクササイズ装置の感知手段の断面図である。
図9】平らな胸部湾曲と突出した肩甲骨とを示す、本発明の実施形態によるエクササイズ装置の感知手段の断面図である。
図10A】一方の肩のまわりの調整可能なストラップシステムを示す正面図を示している。
図10B】ストラップシステムの調整に使用されるクリートの拡大図である。
図11】突き出しエクササイズを行うことができる方向を示す、本発明のエクササイズ装置を着用した人の側面図である。
図12】上肢の軸圧縮と軸外旋とを組み合わせた、突き出しエクササイズ(図10の位置52)を行っている、本発明のエクササイズ装置を着用した人の側面図である。
図13】前かがみの悪い姿勢の図である。
図14】前かがみの悪い姿勢の人に付けた、本発明の実施形態によるエクササイズ装置の感知手段の断面図である。
図15】脊柱が後方にアーチ形に湾曲した悪い姿勢の人に付けた、本発明の実施形態によるエクササイズ装置の感知手段の断面図である。
図16】リフティング中に正しい姿勢を維持する助けとなる、本発明の実施形態によるエクササイズ装置を着用した人の図である。
図17】壁にもたれた腕立て伏せエクササイズ中に正しい姿勢を維持する助けとなる、本発明の実施形態によるエクササイズ装置を着用した人の図である。
図18】本発明の代替実施形態によるエクササイズ装置を示している。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1に、中立脊柱12を有する人10の側面図が示されている。乳様突起、肩関節の中心、および股関節の中心を通る、正しい姿勢の仮想の垂直線14が示され、胸部湾曲の頂部18(T5〜T7辺り)と正しい姿勢の垂直線14との間の距離16が示されている。
【0040】
図2に、胸椎が湾曲形状を成し、肩甲骨が胸郭に当たって平らに保たれた正しい姿勢を示す人10の側面図が示されている。このように良好な姿勢を取るには、胸椎湾曲を維持し、さらには、肩甲骨を胸郭に当てて平らに保つように、肩甲骨−胸筋(主に前鋸筋)が機能することが必要である。
【0041】
図3において、人10は、強化エクササイズとして「壁腕立て伏せ」を試みているが、脊柱の本来の形状を失っている。その代わりとして、脊柱は、逆「C字」形状に変わっている。脊柱がこの位置にあるままエクササイズを続けると、脊柱を強化するよりもむしろ弱くすることになる。
【0042】
図4の画像は、平らな胸部湾曲20と、胸壁から離れる方向に持ち上げられ、脊柱の胸部湾曲よりも後方に突出した肩甲骨22とを有する人10を示している。これは、「翼状」の肩甲骨として公知である。
【0043】
図5は、本発明の一実施形態によるエクササイズ装置を着用した人10の背面図を示している。装置は、人10の胸部湾曲に配置された脊柱接触部材26と、脊柱接触部材26から横方向に延びる2つの剛性平面部材28とを含む。剛性平面部材28は、人10の肩甲骨の上に配置されている。脊柱接触部材26および連結された剛性平面部材28は、人10の肩の上および下を通るストラップ30によって所定の位置に保持されている。
【0044】
エクササイズ装置の感知手段32の裏面が図6に示されている。裏面とは、装置の使用時に、着用者10と接触する側である。この実施形態では、脊柱接触部材26は、取付位置で胸部湾曲の表面に押し付けられ、触感をフィードバックする一連のゴム突起34を有する。
【0045】
エクササイズ装置の感知手段32の側面図が図7に示されている。脊柱接触部材26は、取付位置で胸部湾曲の表面に押し付けられ、触感をフィードバックする一連の突起34を有する。このため、脊柱接触部材26は、剛性平面部材28の面から約1.5cm〜2cmの高さ36を有する。
【0046】
正しい姿勢での正しい位置を示す、エクササイズ装置の感知手段32の断面図が図8に示されている。胸椎の頂部18の位置については、脊柱接触部材26および付属突起34を通じて着用者が感知することができる。さらに、剛性平面部材28については、肩甲骨22の上で感知することができる。
【0047】
平らな胸部湾曲を示す、エクササイズ装置の感知手段32の断面図が図9に示されている。弱い胸部湾曲は(図4に示すように)平坦であり(20)、脊柱接触部材26および付属突起34に対向した着用者によって感知することができない。しかし、剛性平面部材28については、「翼状」位置にある肩甲骨22の上で感知することができる。
【0048】
図7図8、および図9を全体的に参照して、肩甲骨−胸部を強化する、具体的には、体重負荷機能で前鋸筋を促通および強化するためにエクササイズ装置を使用できるかどうかは、脊柱接触部材26および付属突起34の高さ36にかかっている。エクササイズ装置の使用とは、(図8のように)姿勢型が正しい場合の、脊柱接触部材26および付属突起34の着用者への感覚フィードバックであり、後方に押して胸部湾曲の頂部を形成し、それにより、体重負荷機能で前鋸筋を活性化するよう着用者を促す。この適切な筋活動により、脊柱接触部材26および付属突起34による圧力が上がり、肩甲骨が胸壁に当たって平坦になることから、剛性平面部材28による圧力が下がる。
【0049】
図10Aは、一方の肩のまわりの調整可能なストラップシステムの正面図を示している。調整可能なストラップシステムの示した部分は、肩弾性エクササイズバンド38、脇下弾性エクササイズバンド40、移動可能なハンドグリップ42、およびクリート44を含む。肩弾性エクササイズバンド38は、連続バンドとして、装置の着用者10の前で、脇下弾性エクササイズバンド40と合流している。クリート44は、弾性エクササイズバンド38、40が着用者のサイズに合わせて調整されるのを可能にする。移動可能なハンドグリップ42は、使用者が、エクササイズ中にエクササイズバンドを容易に把持することを可能にする。
【0050】
図10Bは、図10Aに示すクリート44の拡大図である。クリート44は、弾性エクササイズバンド(図示せず)と係合し、これを保持する上部開口46および底部開口48を有する。
【0051】
使用時、脊柱接触部材および剛性平面部材は、使用者の背中に当てて配置され、脊柱接触部材は着用者の胸部湾曲に配置され、各剛性平面部材は、着用者の肩甲骨の上に配置される。弾性エクササイズバンドは、各肩の上および下に通され、各肩の前に垂直に配置されたクリートに通されて、装置を所定の位置に確実に保持する。脊柱接触部材および剛性平面部材が正しく配置されない場合、脊柱接触部材および剛性平面部材が正しく配置されるまで、弾性エクササイズバンド上のクリート位置を調整することができる。
【0052】
正しい姿勢型を維持しながら、弾性エクササイズバンドを用いた上肢の突き出し疑似体重負荷動作を、胸椎の頂部に接した脊柱接触部材に対する押し戻し動作と組み合わせて行うことで、前鋸筋の適切な補強と、さらには上肢全体および肩甲骨−胸部にわたる軸圧縮とにより、脊柱のこの部位が強化されるのが可能になる。
【0053】
図11は、本発明のエクササイズ装置を着用した人の側面図であり、移動可能なハンドグリップとクリートとの組み合わせにより、突き出しエクササイズを行うことが可能になる様々な方向の一部50、52、54、56、58を示している。
【0054】
本発明によるエクササイズ装置はまた、エクササイズが、上肢の軸回転を疑似体重負荷(軸圧縮)と組み合わせて、様々な位置で行われるのを可能にする。図12は、上肢の軸圧縮および軸外旋と組み合わせた突き出しエクササイズ(図10の位置52)と組み合わせた胸部湾曲の動作を示している。
【0055】
前かがみの悪い姿勢が図13に示されている。図14は、前かがみの悪い姿勢の人に付けた、本発明の実施形態によるエクササイズ装置の感知手段32の断面図である。肩および肩甲骨22は前方に移動しており、もはや剛性平面部材28と接触していない。さらに、脊柱の胸部18に押し当たった脊柱接触部材26の圧力の顕著な上昇がある。
【0056】
図15は、(図3のエクササイズ中のように)脊柱が後方にアーチ形に湾曲した悪い姿勢の人に付けた、本発明の実施形態によるエクササイズ装置の感知手段32の断面図である。肩および肩甲骨22は、剛性平面部材28と接触しており、脊柱の胸部湾曲18に押し当たった脊柱接触部材26の圧力の顕著な低下がある。
【0057】
本発明によるエクササイズ装置は、単に、図14および図15に示す悪い姿勢を矯正する姿勢フィードバック装置として使用することができる。すなわち、エクササイズ装置は、上肢の体重負荷エクササイズ中の使用に限定されない。日々の活動およびエクササイズ中に、エクササイズ装置は、肩甲骨の位置に対する胸椎の頂部の位置に関するフィードバックを提供し、したがって、(図8に示すような)正しい姿勢を維持する助けとなることができる。
【0058】
例えば、(図16に示す)リフティングなどの機能活動で、または(図17に示す)壁にもたれた腕立て伏せエクササイズなどのエクササイズ中に上肢を使用しながら、姿勢に関するフィードバックを提供するために、本発明によるエクササイズ装置を使用することができる。
【0059】
図18に、本発明の代替実施形態によるエクササイズ装置24が示されている。装置24は、装置を着用した人の胸部湾曲に配置される脊柱接触部材26と、脊柱接触部材26から横方向に延びる2つの剛性平面部材28とを含む。剛性平面部材28は、着用者の肩甲骨の上に配置される。脊柱接触部材26および連結された剛性平面部材28は、着用者の肩の上および下を通る調整可能なストラップ30によって所定の位置に保持される。
【0060】
装置24は、独立したハンドル60をさらに含む。ハンドル60は、調整可能なストラップ30上をスライドして、上肢用の多方向疑似体重負荷エクササイズにおいて、調整可能なストラップ30に抗した「突き出し」エクササイズを可能にする。ハンドル60は、調整可能なストラップ30から取り外し可能であり、エクササイズ装置が、姿勢フィードバック装置として容易に使用されるのを可能にする。
【0061】
このように、本発明のエクササイズ装置は、エクササイズ中に、肩甲骨−胸部、特に、前鋸筋を促通および強化するための外部感覚フィードバック装置を提供することがわかる。本発明のエクササイズ装置はまた、日々の活動およびエクササイズ中に、姿勢意識に関するフィードバックを提供し、正しい姿勢を監視するために使用することもできる。
【0062】
本明細書および特許請求の範囲(あるとすれば)では、「含むこと(comprising)」という語ならびに「含む(comprises)」および「含む(comprise)」を含むその派生語は、各所定の完全体を含むが、1つまたは複数のさらなる完全体の包含を排除しない。
【0063】
本明細書全体を通して、「一実施形態」または「実施形態」という表現は、実施形態に関連して説明した特定の特徴、構造、または特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通して、様々なところで出現する「一実施形態において」または「実施形態において」というフレーズは、必ずしもすべて同じ実施形態を指すわけではない。さらに、特定の特徴、構造、または特性は、1つまたは複数の組み合わせで、任意の適切な態様に組み合わせることができる。
【0064】
法を遵守して、本発明は、構造的または方法的特徴にある程度特有の言いまわしで説明した。当然ながら、本明細書で説明した手段には、本発明を実施する好ましい形態が含まれるので、本発明は、示した、または説明した特定の特徴に限定されない。したがって、本発明は、当業者によって適切に解釈される添付の特許請求項(あるとすれば)の適切な範囲内の任意の形態または修正形態で主張される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18