(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書中でコアスパン糸(CSY)から作られる布地について記述する。またポリトリメチレンテレフタラート系ステープル繊維を含むCSYについて記述する。CSYは、これらステープル繊維によって取り囲まれた内部の芯糸からなる糸である。したがって周囲ステープル繊維はCSYの鞘を形成する。コアスパン糸は、芯スレッドの強度および/または伸びと、その表面を形成するステープル繊維の鞘の特徴とを兼ね備える。
【0012】
この布地は、着心地が良く、良好な伸縮回復およびより小さい成長に加えて高い伸縮特性を有する伸縮性のある寸法安定性の織物である。
【0013】
上記特徴に加えてこの布地はまた、デニムのような高伸縮性の分厚い布地、ボトム生地、および服地用布地における成長の実際的側面にも対応する。
【0014】
本明細書中で使用される用語「ポリトリメチレンテレフタラート」または「PTT」は区別なく使用される。このポリトリメチレンテレフタラートは、生物学的起源、生物由来、または石油系である。
【0015】
本明細書中で使用される用語「ステープル繊維」とは、フィラメントとして知られる連続繊維とは違って画一化された長さの繊維を指す。ステープル繊維は、連続フィラメント繊維から特定の長さに切断される。一般にはステープル繊維は、長さ1−1/2インチ〜8インチの範囲の長さに切断される。
【0016】
コアスパン糸は、伸縮性フィラメントを含む内部の芯を有し、第二のステープル繊維と組み合わせたポリトリメチレンテレフタラートステープル繊維の鞘によって取り囲まれる。
【0017】
この伸縮性フィラメントは、スパンデックスフィラメントであることができる。スパンデックスは、その弾性および伸縮性で知られているポリウレタン−ポリ尿素コポリマーである。連続スパンデックスフィラメントはCSYに伸縮性を与える。
【0018】
本明細書中で使用される用語「ポリトリメチレンテレフタラート系ステープル繊維」とは、100%ポリトリメチレンテレフタラート(PTT)ステープル繊維か、あるいはナイロン、スチレン、ポリエチレンテレフタラート(PET)、またはこれらの混紡繊維から選択される別のポリマーのステープル繊維と組み合わせたPTTを指す。
【0019】
本発明の一実施形態ではPTT系ステープル繊維は、綿、ポリエステル、ビスコース、ナイロン、モダール(modal)、テンセル、羊毛、またはこれらの組合せから選択される第二のステープル繊維との組合せである。一実施形態ではポリトリメチレンテレフタラート系ステープル繊維は、綿とビスコースの組合せである。これらはコアスパン糸の鞘を形成する。
【0020】
別の実施形態では、外側の鞘中のポリトリメチレンテレフタラート含量は、10%〜60%、または25%〜50%、または35%〜40%である。鞘の緯糸中で使用されるポリトリメチレンテレフタラートの割合は、CSYにおける伸縮回復特性に寄与する。
【0021】
「織物」は、経糸(経)および緯糸(緯)と呼ばれる二組の糸の絡み合わせによって製造される布地を定義するために使用される。経糸は布地の中を長さ方向に走り、緯糸は布地の中を幅方向に走る。この布地は、平織り、朱子織り、および綾織りなどの当業界でよく知られている技術によって織られる。
【0022】
CSYの芯は、スパンデックスおよびLyrca(登録商標)の群から選択される伸縮性の繊維またはフィラメントであることができる。本発明の一実施形態では、糸中の伸縮性繊維の割合は、2%〜10%、または5〜8%、または5〜6%の範囲であった。
【0023】
本発明の一実施形態では、鞘は本明細書中で述べるようなCSYである緯糸を含み、また経糸は綿、ナイロン、ポリエステル(例えばPET、PTT)、羊毛、ビスコース、およびこれらの組合せから選択されるステープル繊維の糸である。
【0024】
本明細書中で使用される用語「伸縮性のある」とは、一定量の荷重が加えられたときにある一定の長さ割合まで広がる布地の性質を指す。良好な伸縮特性を有する布地は、布地がその最大限まで広がり、加えた荷重の除去後に最少量の成長を布地中に残して回復する能力によって規定される。布地における良好な伸縮特性の例は、約15%の伸縮である。このような布地は「快適伸縮」布地と呼ばれる。伸縮特性および成長は、標準的なASTM国際手順(表1参照)を用いて測定される。
【0025】
本発明の一態様は、コアスパン糸で構成された布地であり、そのコアスパン糸の内部の芯は伸縮性フィラメントを含み、かつ第二の繊維と組み合わせたポリトリメチレンテレフタラート系ステープル繊維の鞘によって取り囲まれている。
【0026】
本発明の布地は、伸縮が解放された後に布地中に最大限の回復および最低減の成長が残ることを意味する高い「寸法安定性」を有する。
【0027】
本明細書中で使用される用語「伸縮回復」とは、布地がその最大限まで広がり、加えた荷重の除去後に最少量の成長を布地中に残して回復する能力を指す。受け入れることができる伸縮回復は、70%を超える伸縮回復率を有する。布地における70%を超える回復および2.5%未満の成長が、それを寸法安定性の布地にする。これら布地の伸縮回復および成長の特性は、布地の寿命全体を通して不変のままである。
【0028】
重量、引張強さ、および引裂強さのような布地の他の特性もまた、標準的なASTM国際手順(表1参照)を用いて記述した。
【0029】
ASTMとは、American Society for Testing and Materials(ASTM International;West Conshohocken,PA)を指す。ASTM Internationalは、毎年、Annual Book of ASTM Standardsを発行している。
【0030】
一実施形態では本発明の布地は、75〜95%または80〜95%の範囲の伸縮回復率を有する。
【0031】
別の実施形態では本発明の布地は、2.5%未満または2.3%未満の成長を有する。
【0032】
高伸縮性(15%を超える)、高回復率(70%を超える)、および低成長(3%未満の)に加えて本発明の布地は、その布地のコアスパン糸中のPTTの鞘のために、良好な着心地を有し、紫外線保護を提供し、また洗濯の間の耐酸および耐アルカリ性を提供する。
【0033】
本発明の布地は、平織り布、デニム生地、ボトム生地、シャツ生地、後染織物、捺染織物、格子縞織物、および縦縞織物から選択される。
【0034】
本明細書中で述べる布地は、例えば衣服、ベッドシーツのような敷布材料、家具、または室内装飾品の製造において使用することができる。
【0035】
本発明の一態様は、鞘がPTTおよび綿のステープル繊維を含む複合繊維であるコアスパン糸の製造方法であり、その工程は、
(a)綿ステープル繊維のためのブロールームプロセス、
(b)綿ステープル繊維のためのカーディング、
(c)スライバラッピング、
(d)リボンラッピング(綿ステープル繊維のラップ形成)、
(e)綿ステープル繊維のコーミング、
(f)PTT系繊維とコーミングステップから得られる綿ステープル繊維との開繊、
(g)これら2種類の繊維のミキシング、
(h)ブロールームプロセス、
(i)カーディング、
(j)練条、
(k)粗紡、
(l)糸製造、
(m)ワインディング、および
(n)コンディショニング
のステップを含む。
【0036】
ステップ(a)〜(e)は、綿ステープル繊維に適用される。綿ステープル繊維のコーミング後、綿ステープル繊維をPTT系繊維と混ぜ合わせ、上記の工程のステップ(f)〜(n)にかける。
【0037】
用語「ブロールームプロセス」とは、開繊およびミキシング後の繊維を「ブロールームライン」で処理する工程を指す。ブロールームラインは、連続して綿繊維を開繊し洗浄する複数の機械からなる。約40%〜70%の夾雑物がブロールーム区域で除去される。ブロールームの目的物(綿およびPTTのステープル繊維)は開繊され、続いて洗浄される。そこで繊維はより大きなタフトサイズ(数百グラム単位)からより小さなタフトサイズ(ミリグラム単位)へ開繊される。これは、その後に繊維由来の泥、塵、砕けた種、砕けた葉、および他の無用の物質を除去する洗浄が続く。この両方の工程は、高品質の糸を製造し、また生産を軽減させるための混打綿を伴う。これは、その後にラップまたはフリース形成が続き、そこで開綿、洗浄された繊維は、ラップと呼ばれる一定の幅および長さを有するシートの形に変えられ、または最新のシステムではこのシートを直接にカーディング機に送ってフリースの形にすることができる。
【0038】
用語「カーディング」とは、繊維のバンチ(bunch)をほぐして個々の繊維にし、個別化した後にそれらを平行な方向に配列させる工程を指す。またそれは、さらに夾雑物および他の異物と、製造にとって容認できない繊維を除去する。この操作は、綿、羊毛、副絹糸、および合成ステープル繊維に対して、細いワイヤブラシを備えた移動コンベヤーベルトおよび回転シリンダからなるカーディング機によって行われる。カーディング機から送達される材料は、スライバまたはカードスライバと呼ばれる。
【0039】
カーディング工程は、繊維が個々の繊維になるように繊維の集合塊を散開させる。しかしながらカードスライバ中の繊維は完全には繊維軸に一列に並ばない、すなわち配向しない。多少の繊維はスライバ中にでたらめに横たわる。したがってカードスライバは、次の機械に進む前に最低限2回のドラフト工程を与えられる。この工程ではスライバは、繊維が長さ方向に引っ張られるようにそれぞれ後続の対が前の対よりも速く回転する、異なる速度で動作する複数組のローラー間を通過する。これらの2回のドラフト操作はまた、スライバラップ機およびリボンラップ機によって達成することもできる。スライバの均一性を向上させるためにスライバは、ダブリングと呼ばれる工程にかけられる。ダブリングは、複数本のスライバを一緒にする工程である。この工程によって、スライバ中に存在する薄い場所と厚い場所が均等にされる。スライバラップ機では、16〜20本のスライバがクリールに掛けられ、送り台を通過してドラフト操作用の3対のドラフトローラーへ移動する。次いで牽伸されたスライバは、そのスライバ材料を圧縮する2対のカレンダローラーに受け取られる。ラップと呼ばれるこの牽伸、圧縮されたスライバ材料はスプールに巻き付けられる。この工程は「ラップ形成」として知られる。
【0040】
「コーミング」は、より繊細な布地を対象とした非常に細い糸に対して行われる追加の繊維配列操作である(安価できめの粗い布地はスライバからこの更なる洗練なしに加工される)。コーミングからのこのスライバに目の細かい櫛が当てられ、ノイルと呼ばれるより短い繊維を分離し、またより長い繊維をより高い平行度レベルまで整列させる。得られるストランドは、コームスライバと呼ばれる。その長い繊維によりコームスライバは、より滑らかでより斑のない糸を提供する。
【0041】
用語「練条」とは、数本のスライバを合わせて1本のストランドにし、引き伸ばしてより長くかつより細くする工程(カーディング後の)を指す。カーディング機から出るスライバは、長さに沿って大きな質量/長さのばらつきを有する。これをできるだけ少なくするために、練条機においてダブリングおよびドラフトのプロセスが行われる。通常は、スライバにおける質量/長さのばらつきを最少レベルに低減させ、かつ繊維を長さ方向に沿って配向させるために2つのこのような練条工程が存在する。練条の第一工程はブレーカ練条と呼ばれ、練条の第二工程はフィニッシャ練条と呼ばれる。練条機は、スライバが通過する数対のローラーを有する。スライバが練条機を通って移動するにつれて引っ張られてより長くかつより細くなるように、それぞれ後続のローラーの対が前の対よりも速い速度で動作する。この操作は数段階を通して繰り返される。
【0042】
フィニッシャ練条機から送達されるスライバは最少の質量/長さのばらつきを有し、かつストランド軸の方を向いた繊維が引張特性に貢献する。しかしながらこのスライバの線密度は、必要とされる最終糸の約140倍である。これは、必要な糸線密度までさらに減らすことを必要とする。これは、さらなるドラフトのプロセスで行われ、粗紡機およびリング精紡機である二段ドラフトプロセスで行われる。個別のステップでのドラフトは大きな質量/長さのばらつきの導入につながるため、このドラフトの二段プロセスが推奨される。しかしながらスライバ中の繊維の本数は減少し続けるため繊維は互いに途切れない形態に保持される必要があり、かつ繊維はその繊維を次の機械で処理することができるような強度を有する必要がある。繊維フリースに強度を与えるために粗紡機でそれに部分的に撚りを与える。部分的なドラフトおよび加撚の全工程は、粗紡準備と呼ばれる。このドラフト操作によってスライバはより細くなり、その得られた生成物は「粗糸」と呼ばれる。
【0043】
用語「糸の精紡」とは、最終の糸の形成工程を指す。コアスパン糸は、弾性繊維の芯とステープル繊維の鞘を有する。コアスピニングは、すでに形成されている糸がその芯になる鞘−芯構造を生み出すように、既存の糸、すなわちフィラメントまたはステープル紡績糸のどちらかの周囲に繊維を巻き付ける工程である。コアスパン糸は、多くの精紡システム、例えばリング精紡システム、コアラップ精紡法、パターン化精紡(patterned spinning)システム、コア−ツイン精紡システム、複合静電精紡システム、ロータ精紡システム、フリクション精紡システム、またはエアジェット精紡システムによって生産される。これらは当業者によく知られている通常のシステムである。本発明の一実施形態は、リング精紡システムを使用して本明細書中で述べるようなコアスパン繊維を生産するPTT系繊維−綿の鞘の精紡である。この工程を
図1に図式的に示す。
【0044】
リング精紡は、コップまたはボビンと呼ばれる小さなパッケージの状態の糸を生産する。リング精紡機からのコップは更なる加工に適さないので、後続の加工段階の要求条件が必要とする追加の目標を達成するためにワインディング工程が役立つ。
【0045】
用語「ワインディング」とは、数個の小さなリングボビンからより大きなパッケージを得る工程を指す。この変換工程は、求められていないまた問題のある不快な欠陥部を切り取る可能性を有する工程である。このような不快な欠陥部を除去する工程は、糸の「クリーニング」と呼ばれる。
【0046】
最後に糸をコンディショニングする必要がある。用語「コンディショニング」とは、もつれの傾向を減らすことによって後続の工程において糸の品質および生産性の持続的な向上を達成するために、短時間で必要な水分を補充するための経済的な装置を準備する工程を指す。空気中の水分は、紡織繊維および糸の物理的性質に大きな影響を及ぼす。相対湿度および温度が空気中の水分の量を決めることになる。紡績の様々な部門における高い相対湿度は望ましくない。しかし他方で高度の水分は糸の物理的性質を向上させる。さらにそれは、糸がその繊維の標準水分率値を達成するのを助ける。
【0047】
本発明の一態様は、鞘がPTTと綿以外の任意の他のステープル繊維との混紡または組合せであるコアスパン糸の製造方法であり、その工程は、
(a)開繊、
(b)ミキシング、
(c)ブロールームプロセス、
(d)カーディング、
(e)練条、
(f)粗紡、
(g)芯糸の製造、
(h)ワインディング、および
(i)コンディショニング
のステップを含む。
【0048】
本発明の一態様は、本発明のコアスパン糸とインディゴ染め綿ステープル繊維糸とを使用したデニム生地の製造法であり、その工程は、
(a)綿糸の整経、
(b)経糸のインディゴ染色および糊付け、
(c)PTT系コアスパン糸とインディゴ染め綿繊維の製織、
(d)毛焼き、
(e)糊抜き、
(f)ヒートセット、
(g)シルケット加工(任意選択)、
(h)仕上げ、および
(i)サンフォライジング
のステップを含む。
【0049】
この工程の全般の外観図を
図2に示す。
【0050】
本発明の一態様は、本発明のコアスパン糸と任意の他のステープル繊維糸とを使用した平織りボトム厚物生地の製造方法であり、その工程は、
(a)整経、
(b)糊付け、
(c)製織、
(d)糊抜き、
(e)精練、
(f)漂白、
(g)ヒートセット、
(h)仕上げ、
(i)サンフォライジング、
(j)綿系布地については任意選択でシルケット加工のステップが、ヒートセットのステップ後、仕上げのステップ前に行われる、
(k)後染め布地については任意選択で後染めのステップが行われ、この染色のステップは仕上げのステップに先行する、
のステップを含む。
【0051】
本発明の一態様は、本発明のコアスパン糸と任意の他のステープル繊維糸とを使用した縦縞布地の製造方法であり、その工程は、
(a)糸染め、
(b)部分整経、
(c)糊付け、
(d)製織、
(e)糊抜き、
(f)精練、
(g)仕上げ、
(h)サンフォライジング、
(i)綿系布地については任意選択でシルケット加工および漂白の更なるステップが行われる、
のステップを含む。
【0052】
製造工程におけるステップの幾つかは、所望の最終製品に応じて修正することができる。例えば、シルケット加工とそれに続く漂白のステップは、布地中に綿ステープル繊維糸が存在する場合のみ仕上げのステップの前に行われる。染色の工程は、色物に対してのみ必要である。平織布が所望の場合に染色のステップが省略されることは当業熟練者には明らかである。
【0053】
本発明の一態様では、ポリトリメチレンテレフタラート系コアスパン糸が布地の緯糸を形成する。
【0054】
用語「捺染」とは、布地の形態で捺染される布地を指す。
【0055】
本明細書中で使用される用語「整経」とは、糸を経糸ビーム上に巻き付ける工程を指す。
【0056】
本明細書中で使用される用語「糊付け」とは、スレッドに一般には澱粉をコーティングする工程を指す。
【0057】
本明細書中で使用される用語「製織」とは、ウィーバースビームから来る経スレッドを、幅方向に挿入される緯糸と織り交ぜる製織工程において織機上で布地を製造する工程を指す。
【0058】
本明細書中で使用される用語「糊抜き」とは、経糸上に塗布されたサイズ剤を酵素または任意の適切な化学薬品の助けを借りて除去する工程を指す。
【0059】
本明細書中で使用される用語「精練」とは、繊維由来の天然ワックスおよび非繊維性不純物と、任意の更なる汚れまたはごみを除去するための綿布に対する化学的洗浄の工程を指す。一般に精練は、キヤーと呼ばれる鉄の容器中で行われる。布地は、遊離脂肪酸と共にセッケンを形成するアルカリ中で煮沸される(けん化)。一般にはキヤーは囲われ、したがって水酸化ナトリウムの溶液は、繊維中のセルロースを分解することになる酸素を閉め出して圧力下で沸騰される。適切な試薬が使用されるならば精練はまた布地からサイズ剤を除去することにもなるが、糊抜きは精練に先行することが多く、布地準備として知られる別の工程とみなされる。準備および精練は、その他の仕上げ工程の大部分にとって不可欠である。この段階でさえ大部分の生来白色の綿繊維は黄色っぽい。
【0060】
用語「ヒートセット」は、普通は乾熱(160℃〜180℃、30〜45秒間)環境で行われる熱工程である。この工程の効果は、布地に寸法安定性、および非常に多くの場合、耐皺性または耐温度性のような他の望ましい特性を与える。
【0061】
本明細書中で使用される用語「シルケット加工」とは、布地をアルカリで処理する工程を指す。この工程は、綿繊維構造由来の天然撚(convolution)を除去し、それを丸みのあるものにして、布地の手触りを改良し、またより光沢のあるものにする。綿系布地ではシルケット加工は布地の強度もまた向上させる。
【0062】
本明細書中で使用される用語「漂白」とは、汚染物、着色性の汚れまたは油の染みを布地から取り除く工程を指す。一般には漂白は、布地を次亜塩素酸ナトリウムまたは過酸化水素の溶液で処理することによって行われる。
【0063】
本明細書中で使用される用語「染色」とは、漂白後の布地を色で染める工程を指す。後染め布地の場合、経糸の綿糸および緯糸のPTT系の糸は、それぞれの既知の染色法によって別々に染められる。格子縞または縦縞の布地の場合、その経糸またはPTT系の芯の緯糸は、別々に染色しても一緒に染色してもよく、また模様はそれに応じて形成される。
【0064】
本明細書中で使用される用語「仕上げ」とは、完成した織物または衣料品の外観、性能、または「手触り」(感触)を向上させるために製織後に布地に対して行われる工程を指す。その様々な仕上げ技術は、バイオ研磨、起毛、縮充、カレンダ加工、抗菌仕上げ、静電防止仕上げ、滑り止め仕上げ、および当業界で知られている他の技術である。適切な仕上げ剤がこれらの仕上げのために使用される。
【0065】
本明細書中で使用される用語「サンフォライジング」とは、特に綿布に対して、また他の天然または化学繊維から作られる織物に対して使用される処理の工程を指す。これは、切断および生産の前に織布を長さおよび幅の両方に伸長、収縮、回復させて、さもなければ洗浄後に起こることになる収縮を低減させる方法である。
【0066】
本明細書中で使用される用語「糸染め」とは、経糸および緯糸においてその糸の染色が必要な場合の工程を指す。これは、高温高圧の染色機中で行われる。
【0067】
本明細書中で使用される用語「部分整経」とは、糸をカラーパターンどおりにドラム上に巻き付ける工程を指す。いったんすべてのヤーンパターンをドラムに巻き取ったら、それらを荒巻整経機に巻き付けて布地に必要な縦縞効果どおりに布地中に挿入することができる。
【0068】
本明細書中で使用される用語「デニム」は、緯糸が2本(「2倍」)以上の経スレッドの下を通るごつごつした綿の綾織物である。デニムは、伝統的にインディゴ染料で青色に染められる。
【0069】
本明細書中で使用される用語「インディゴ染色」とは、インディゴ・ロープ染色工程、インディゴ一枚染めスラッシング(indigo one−sheet dye slashing)、インディゴ二枚染め(indigo double sheet dyeing)などの標準的なインディゴ染色工程を使用してインディゴ染料で綿の経糸繊維を染色する工程を指す。
【0070】
本明細書中で使用される用語「毛焼き」とは、織物商品から突き出ているばら毛(loose fibers)を焼き取る工程を指す。毛焼きは、繊維加工において行われる前処理工程の一部であり、一般には製織後に行われる第一ステップである。毛焼きは、多くの場合、綿布または綿混紡繊維を含む布地に対して行われ、より高い湿潤性(より良好な染色特性、反射の向上、「冷ややか」でない外観)、より滑らかな表面(捺染におけるより良好な明瞭さ)、布構造の目につきやすさの向上、より少ない毛玉、綿毛および糸くずの除去を通じての汚染物の減少をもたらす。一般に毛焼きは、布地の片面または両面を、ガスの炎の上を通過/曝露して、突き出た繊維を焼き取ることを伴う。毛焼きの他の方法には、熱可塑性繊維に対する赤外線毛焼きおよび熱毛焼きが挙げられる。糸の毛焼きは「ガス毛焼き」と呼ばれる。綿などのセルロース繊維は、突き出ている繊維が燃焼して軽い極微量の灰になり、容易に除去されるため簡単に毛焼きされる。
【0071】
下記の非限定的な実施例は例示のためであり、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0072】
言及されるすべての化学物質は、別段の注記がない限り市販のものである。使用されるすべての機械装置は、当業界でよく知られている機械である。
【0073】
実施例1
この実施例は、ポリトリメチレンテレフタラートステープル繊維および綿ステープル繊維を使用してコアスパン糸を作製する工程を例示する。
【0074】
ポリトリメチレンテレフタラートステープル繊維(35kg、繊維長38mm、1.5デニール)およびステープル綿(コーミング済みスライバーからの)繊維(65kg、上位四分位平均長31mm、4.0μg/インチ)を使用した。これら繊維を手で開繊し、次いで混ぜ合せた。これら繊維は、2層の綿と1層のPTTを重ねることによって混ぜ合せた。この工程は、スタックミキシング工程と呼ばれる。次いで材料を垂直に引き抜くことによって全繊維の塊をスタックから引き出し、ブロールームラインに送った。PTT/綿繊維の加工のために選択されるブロールームラインのプロセスパラメータは、
・フィードローラーおよびビーターブレードの設定値=1.7mm
・ラップ線密度=400g/m
・くず回収の設定値は「0」に設定された
・粗開繊(coarse opening)ビーター速度=400rpm
・精開繊(fine opening)ビーター速度=450rpm
であった。
【0075】
ブロールームライン後、その繊維フリースを、アエロニューマチック空気給送システムを使用してカーディング機に送った。カーディング機のためのプロセスパラメータは、
・機械生産量=28kg/時
・フィードプレートおよびリッカ(ゲージ)=32ミル
・フラットゲージ=12、12、10、10、10ミル
・トランペットサイズ=4.0mm
・スライバ線密度=4.5g/m
・リッカ(速度)=750rpm
・シリンダ速度=350rpm
・フラット速度=5インチ/分
であった。
【0076】
スライバはカード機から来ており、長さに沿って非常に大きい質量/長さのばらつきを有する。そのばらつきをできるだけ少なくするためにカードスライバをダブリングし、同時に、得られるスライバ中の繊維を長さ方向に沿ってさらに配向させるために6回ドラフトした。このダブリングおよびドラフト工程は練条機上で行った。このような2つの練条工程は、スライバの質量/長さのばらつきを最少レベルまで減らし、かつ繊維を長さ方向に沿って配向させるために行った。このカードスライバは、下記リストに載せたパラメータを有する二組の練条機上で処理された。
・ボトムローラーゲージ(フロント/バック)=40/44mm
・トランペットの直径=3.8mm
・スライバ線密度(ブレーカおよびフィニッシャにおける)=4.6g/m
・ブレークドラフト=ブレーカ練条機では1.7、フィニッシャ練条機では1.3
・ウェブ張力のドラフト=1
・クリール張力のドラフト=1.02〜1.03
・デリバリ速度=ブレーカ練条機では200〜250mpm、フィニッシャ練条機では350〜400mpm
・ダブリング=ブレーカおよびフィニッシャの両方の練条機に対して6回。
【0077】
フィニッシャ練条機からのスライバを、下記リストに載せたプロセスパラメータを有する粗紡機上で粗糸に変換した。
・スペーササイズ=5.5mm
・スピンドル速度=750rpm
・撚り係数=1.2
・ローラーゲージ=48/64mm
・サドルゲージ=54/60.5mm。
【0078】
粗紡機上で作製された粗糸を、リング精紡機と呼ばれる最終紡績機によりさらにドラフトすることによって糸に変換する。紡がれた糸番手は9.6sNeであった。芯のスパンデックスフィラメントのデニールは70Dであった。スパンデックスは、それをまとめて糸にする前に2.1のドラフトを与えられる。最終の糸中のスパンデックス%は6.3%であった。リング精紡機のプロセスパラメータは、
・ローラーゲージ=42.5/65mm
・サドルゲージ=51/66mm
・コットの硬さ(フロント/バック)=68/83
o
・ブレークドラフト=1.2
・撚り係数=4.3
であった。
【0079】
この機械から得られた最終のパッケージ(コップ)は、約800gの重さ(正味)であった。
【0080】
それらのそれぞれ80gの小さなコップを一緒にし、糸の瑕疵を取り除き、最終的にはワインディング機上でコーンと呼ばれる大きな最終パッケージに巻き付けた。ワインディング機上で維持されるプロセスパラメータは、
・速度=1000mpm
・糸の張力=糸破壊荷重の5〜6%
・パッケージの硬さの設定値=最小
・コーン重量=2.0kg
であった。
【0081】
この糸をオートクレーブ中で70℃において50分間コンディショニングした。布地の幅方向の伸縮性が必要とされる布地製造工程において、この糸のコーンを直接に緯糸として使用した。しかしながらこれらの糸はまた、長さ方向に使用して経糸方向伸縮性または双方向伸縮性の布地を得ることもできる。
【0082】
実施例2
この実施例は、実施例1で得られたコアスパン糸を緯糸として使用するデニム生地の作製工程を例示する。
【0083】
布地は、エアジェット製織機を使用して製造した。経糸は100%インディゴ染め綿ステープル繊維であった。緯糸は、実施例1で得られたコアスパン糸であった。この機械のプロセスパラメータは、
・織機速度=750rpm
・布幅=68インチ
・綾織り=3/1右綾織り
・インチ当たり縦糸打込み数=70
・インチ当たり横糸打込み数=44
・経糸番手=(7.2s+6.4s)Ne(1+1)、100%綿リング糸
・緯糸番手=9.6sNe(70Dスパンデックス(6.27%)コアスパン糸を含む)
であった。
【0084】
得られた布地を布毛焼き機上で、ひと組のバーナー上を80mpmで通過させることによって毛焼きした。表面の突き出た繊維が燃焼され、したがって除去された。次いで布地を、酵素で12〜18時間パディングすることによって糊抜きした。次いでこの布地を水で洗浄する。この布地を、18.5%NaOH溶液により65℃において40mpmで処理することによってシルケット加工した。次いで布地を、ひと組のカレンダローラーを通過させることによって105℃で乾燥した。次いで布地にサンフォライズ加工機を通過させた。これは、スチームチャンバ(Monforte)中でゴムローラー上を50mpmで通過させることによって曲がりと、長さおよび幅の収縮を調整する。これは、最終の衣服を、許容できる収縮の割合および布地の改良された手触りに加えて寸法安定性にする。得られた布地は完成した布地であり、衣服に変換することができる。
【0085】
下記の表1は、上記実施例によって作られるデニム生地の求められる特性に対する試験結果を示す。
【0086】
【表1】
次に、本発明の好ましい態様を示す。
1. ポリトリメチレンテレフタラート系ステープル繊維を第二のステープル繊維と組み合わせて含む鞘によって取り囲まれた伸縮性フィラメントを含む芯を備えたコアスパン糸。
2. 前記伸縮性フィラメントがスパンデックスフィラメントである、上記1に記載のコアスパン糸。
3. 前記第二の繊維が、綿、ビスコース、ポリエステル、ナイロン、モダール、テンセル、羊毛、およびこれらの組合せからなる群から選択される、上記1に記載のコアスパン糸。
4. 前記鞘中の前記ポリトリメチレンテレフタラート系ステープル繊維の含量が、10%〜60%の範囲にある、上記1に記載のコアスパン糸。
5. 前記スパンデックスフィラメントの含量が、2%〜10%の範囲にある、上記2に記載のコアスパン糸。
6. 前記第二のステープル繊維が綿ステープル繊維である、上記1に記載のコアスパン糸。
7. ポリトリメチレンテレフタラート系ステープル繊維を第二のステープル繊維と組み合わせて含む鞘によって取り囲まれた伸縮性フィラメントを含む芯を備えたコアスパン糸を含む布地。
8. 前記布地が経糸と緯糸を有し、かつ前記コアスパン糸が前記緯糸であり、また前記経糸が綿、ナイロン、ポリエステル、羊毛、ビスコース、およびこれらの組合せからなる群から選択される、上記7に記載の布地。
9. 前記布地が、75〜95%の範囲の伸縮回復率および<2.3%の成長を有する、上記7に記載の布地。
10. 前記布地が、衣服、敷布材料、家具、および室内装飾品からなる群から選択される用途に使用される、上記7に記載の布地。