特許第6338263号(P6338263)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6338263低含水性軟質デバイスおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6338263
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】低含水性軟質デバイスおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 15/00 20060101AFI20180528BHJP
   A61L 29/08 20060101ALI20180528BHJP
   G02B 1/10 20150101ALI20180528BHJP
【FI】
   A61L15/00
   A61L29/08 100
   G02B1/10
【請求項の数】12
【全頁数】69
(21)【出願番号】特願2012-540195(P2012-540195)
(86)(22)【出願日】2012年8月10日
(86)【国際出願番号】JP2012070436
(87)【国際公開番号】WO2013024800
(87)【国際公開日】20130221
【審査請求日】2015年8月3日
【審判番号】不服2017-1514(P2017-1514/J1)
【審判請求日】2017年2月2日
(31)【優先権主張番号】特願2011-178666(P2011-178666)
(32)【優先日】2011年8月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】北川 瑠美子
(72)【発明者】
【氏名】中村 正孝
【合議体】
【審判長】 内藤 伸一
【審判官】 村上 騎見高
【審判官】 蔵野 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−501211(JP,A)
【文献】 特開2006−201263(JP,A)
【文献】 特開平10−201840(JP,A)
【文献】 特表平2−503890(JP,A)
【文献】 特開平5−5861(JP,A)
【文献】 特開平3−257420(JP,A)
【文献】 特開平3−240021(JP,A)
【文献】 特開2002−47365(JP,A)
【文献】 特開平8−173522(JP,A)
【文献】 特開平1−254166(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/139304(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 15/00-33/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
含水率が2質量%以下、かつ引張弾性率が10MPa以下であり、
低含水性軟質基材の表面の少なくとも一部に、酸性ポリマーおよび塩基性ポリマーからなる層が形成された軟質部材を備え、
前記酸性ポリマーおよび塩基性ポリマーからなる層は、1層以上の酸性ポリマーからなる層および1層以上の塩基性ポリマーからなる層を含むものであって、
医療デバイスである、低含水性軟質デバイス(ただし、低含水性ソフトコンタクトレンズを除く);
ただし、前記酸性ポリマーおよび前記塩基性ポリマーのうちの少なくとも1種が、アミド基を有するポリマーであり、
前記酸性ポリマーは、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸、ポリ(ビニル安息香酸)、ポリ(チオフェン−3−酢酸)、ポリ(4−スチレンスルホン酸)、ポリビニルスルホン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)、酸性基を有する多糖類、およびこれらの塩、下記A群から選ばれる2種以上のモノマーの共重合体、および下記A群から選ばれるモノマーと下記B群から選ばれるモノマーとの共重合体から選ばれ、
また、前記塩基性ポリマーは、ポリ(アリルアミン)、ポリ(ビニルアミン)、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(ビニルベンジルトリメチルアミン)、ポリアニリン、ポリ(アミノスチレン)、ポリ(N,N−ジアルキルアミノエチルメタクリレート)、ポリ(N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)、アミノ多糖類、およびこれらの塩、下記C群から選ばれる2種以上のモノマーの共重合体、および下記C群から選ばれるモノマーと下記B群から選ばれるモノマーとの共重合体から選ばれる;
A群:(メタ)アクリル酸、ビニル安息香酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、およびこれらの塩;
B群:N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルアセトアミド、N−メチル−N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、アクリロイルモルホリン、およびアクリルアミド;
C群:アリルアミン、ビニルアミン(前駆体としてN−ビニルカルボン酸アミド)、ビニルベンジルトリメチルアミン、アミノ基含有スチレン、アミノ基含有(メタ)アクリレート、アミノ基含有(メタ)アクリルアミド、およびこれらの塩;
また、前記酸性ポリマーおよび前記塩基性ポリマーのうち、
アミド基を有する前記酸性ポリマーは、前記A群から選ばれるモノマーと前記B群から選ばれるモノマーとの共重合体であり、
アミド基を有する前記塩基性ポリマーは、前記C群から選ばれるモノマーと前記B群から選ばれるモノマーとの共重合体である。
【請求項2】
前記軟質部材はチューブ形状を有する、請求項1に記載の低含水性軟質デバイス。
【請求項3】
前記軟質部材はシート状またはフィルム状をなす、請求項1に記載の低含水性軟質デバイス。
【請求項4】
前記医療デバイスは、皮膚用被覆材、創傷被覆材、皮膚用保護材、または、皮膚用薬剤担体を含む請求項に記載の低含水性軟質デバイス。
【請求項5】
前記軟質部材は収納容器形状を有する、請求項1に記載の低含水性軟質デバイス。
【請求項6】
前記軟質部材は粒状を有する請求項1に記載の低含水性軟質デバイス。
【請求項7】
前記低含水性軟質基材が、下記成分Aの重合体、または下記成分Aおよび成分Bとの共重合体を主成分とする請求項1〜のいずれか1項に記載の低含水性軟質デバイス;
成分A:1分子あたり複数の重合性官能基を有し、数平均分子量が6000以上のポリシロキサン化合物;
成分B:フルオロアルキル基を有する重合性モノマー。
【請求項8】
前記成分Aが1分子あたり2個の重合性官能基を有するポリシロキサン化合物である請求項に記載の低含水性軟質デバイス。
【請求項9】
請求項1〜のいずれか1項に記載の低含水性軟質デバイスを製造する方法であって、
前記酸性ポリマーおよび塩基性ポリマーからなる層を、1種以上の酸性ポリマー溶液による処理を1回以上、および1種以上の塩基性ポリマー溶液による処理を1回以上行うことにより形成することを特徴とする低含水性軟質デバイスの製造方法。
【請求項10】
前記酸性ポリマーおよび塩基性ポリマーからなる層を、前記酸性ポリマー溶液による処理を1回または2回、および前記塩基性ポリマー溶液による処理を1回または2回、合計で3回処理を行うことにより形成することを特徴とする請求項に記載の低含水性軟質デバイスの製造方法。
【請求項11】
前記酸性ポリマーおよび塩基性ポリマーからなる層を、2種の酸性ポリマー溶液による処理を2回および前記塩基性ポリマー溶液による処理を1回行うことにより形成することを特徴とする請求項に記載の低含水性軟質デバイスの製造方法。
【請求項12】
下記工程1〜工程3をこの順に含む、請求項1に記載の低含水性軟質デバイスの製造方法(ただし、低含水性軟質デバイスから低含水性ソフトコンタクトレンズを除く);
<工程1>
1分子あたり複数の重合性官能基を有し、数平均分子量が6000以上のポリシロキサン化合物である成分A、および、フルオロアルキル基を有する重合性モノマーである成分Bを含む混合物を重合し、所望の形状の成型体を得る工程;
<工程2>
成型体を塩基性ポリマー溶液に接触させた後、余剰の前記塩基性ポリマー溶液を洗浄除去する工程;
<工程3>
成型体を酸性ポリマー溶液に接触させた後、余剰の前記酸性ポリマー溶液を洗浄除去する工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低含水性軟質デバイスおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、種々の分野において、シリコーンゴム、PVC、ナイロンエラストマー、LDPE、ハイドロゲル(ヒドロゲル)等の樹脂製軟質材料が多様な用途に用いられている。例えば、軟質基材の用途としては、生体内に導入したり、生体表面を被覆したりする医療デバイスや、細胞培養シート、組織再生用足場材料等のバイオテクノロジー用デバイスや、顔用パック等の美容デバイスや、靴の中敷等の日用品が挙げられる。
【0003】
ところで、例えば医療デバイスの一つである皮膚用被覆材として、ハイドロゲル素材が用いられることがある。このハイドロゲル素材は、多量の水を含んでいる(含水率が25%程度〜80%程度)。そのため、皮膚用被覆材を皮膚に貼付した場合、該被覆材から水分が蒸発する現象が生じ、使用者は乾燥感を覚え、不快と感じることがあった。また、ハイドロゲル素材は、多量の水を含んでいることから、細菌繁殖のリスクが懸念されていた。
【0004】
近年では、より含水率が低い軟質材料(低含水性)を適用した医療デバイスも知られている。たとえば、特許文献1には、低含水シリコーン含有エラストマーからなるコンタクトレンズ材料が開示されている。また、特許文献2および3には、シリコーンまたは約10質量%〜約80質量%の間の水含有量を有するシリコーンハイドロゲルからなる医療デバイスに対し、親水性を高めるための表面処理を施したシリコーン医療デバイスが開示されている。
【0005】
生体内に導入したり、生体表面に貼付したりして使用される軟質デバイスについても、従来よりも良好な親水性、易滑性、柔軟性といった特性を与えることができれば、使用者(患者等)にとっては、使用感(装用感)が良くなり、苦痛を低減することができるので、より好ましい。
【0006】
軟質基材の表面を改質する方法に関しては、種々知られているが、その中で2種類以上のポリマー材料の層を1層ずつコーティングして積層する方法が知られている(たとえば特許文献4〜6を参照)。中でも反対の荷電を有する2つのポリマー材料を1層ずつ交互にコーティングする方法は、LbL法などと呼ばれ、材料の各々の層が、異なる材料の他の層と非共有結合的に結合されると考えられている。しかしながら、この方法の有用性が明示されている軟質基材はシリコーンハイドロゲル素材のものだけであり、それ以外の低含水性軟質基材に対する有用性は知られていなかった。また、従来のLbLコーティングは4層〜20層程度といった多層で行われており、製造工程が長くなり製造コストの増大を招くおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2001−527141号公報
【特許文献2】特表2003−500686号公報
【特許文献3】特表2003−529419号公報
【特許文献4】特表2002−501211号公報
【特許文献5】特表2005−538418号公報
【特許文献6】特表2009−540369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
軟質材料によって形成された軟質デバイスの内、生体表面に直接貼付したり、生体内に挿入するなどして用いられる軟質デバイスにおいては、親水性に加えて、易滑性および長時間使用しても乾燥し難く、柔軟性を保つことができ、かつ、形状の変化が少ない(即ち、収縮し難い)ことが求められる。生体内に導入したり、生体表面に貼付したりして使用される軟質デバイスについても、従来よりも良好な親水性、易滑性、柔軟性といった特性を与えることができれば、使用者(患者等)にとっては、使用感(装用感)が良くなり、苦痛を低減することができるので、より好ましい。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、親水性に加え、良好な易滑性を有し、さらに、長時間使用しても乾燥し難く、柔軟性を保つことができ、かつ、形状の変化が少ない低含水性軟質デバイスを提供することを目的とする。また、本発明は、上記特性を有する低含水性軟質基材からなる低含水性軟質デバイスを、簡便なプロセスで安価に製造することができる低含水性軟質デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明は下記の構成を有する。
【0011】
本発明の低含水性軟質デバイスは、低含水性軟質基材の表面の少なくとも一部に、酸性ポリマーおよび塩基性ポリマーからなる層が形成された軟質部材を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明の低含水性軟質デバイスは、低含水性軟質でありながら、表面に良好な濡れ性と易滑性が付与されるため、濡れた状態(あるいは湿った状態)で使用される態様に好ましく適用できる。
【0013】
本発明の好ましい態様において、上記軟質部材は、チューブ形状を有しても良い。このような形状を有する低含水性軟質デバイスは、例えば、医療デバイスとして好適に用いることができる。
【0014】
具体的には、上記医療デバイスは、輸液チューブ、気体輸送チューブ、排液チューブ、血液回路、被覆チューブ、カテーテル、ステント、シース、チューブコネクター、アクセスポート、または、内視鏡被覆材などである。
【0015】
また、本発明の別の好ましい態様において、上記軟質部材は、シート状またはフィルム状をなしても良い。このような形状を有する低含水性軟質デバイスは、例えば、医療デバイス、バイオテクノロジー用デバイス、農業/ガーデニングデバイス、濾過デバイス、防汚デバイス、および美容デバイスのうちのいずれかとして好適に用いることができる。
【0016】
具体的には、上記医療デバイスは、皮膚用被覆材、創傷被覆材、皮膚用保護材、または、皮膚用薬剤担体を含むことが好ましい。
【0017】
また、上記バイオテクノロジー用デバイスは、細胞培養シートまたは組織再生用足場材料などである。
【0018】
また、上記農業/ガーデニングデバイスは、保湿シートなどである。
【0019】
また、上記濾過デバイスは、気液分離膜などである。
【0020】
本発明のさらに別の好ましい態様において、上記軟質部材は、収納容器形状を有しても良い。このような形状を有する低含水性軟質デバイスは、例えば、医療デバイスとして好適に用いることができる。
【0021】
具体的には、上記医療デバイスは、薬剤担体、カフ、または、排液バッグなどである。
【0022】
本発明のさらに別の好ましい態様において、上記軟質部材は、粒状を有しても良い。このような形状を有する低含水性軟質デバイスは、例えば、農業/ガーデニングデバイスとして好適に用いることができる。具体的には、上記農業/ガーデニングデバイスは、農業/ガーデニング用の粒状保湿材などである。
【0023】
上記において、低含水性軟質基材が、下記成分Aの重合体、または下記成分Aおよび成分Bとの共重合体を主成分とすることが好ましい;
成分A:1分子あたり複数の重合性官能基を有し、数平均分子量が6000以上のポリシロキサン化合物
成分B:フルオロアルキル基を有する重合性モノマー
本明細書において、ポリシロキサン化合物とは、Si−O−Si−O−Si結合を有する化合物である。
【0024】
また本発明は、下記工程1〜工程3をこの順に含む低含水性軟質デバイスの製造方法である;
<工程1>
1分子あたり複数の重合性官能基を有し、数平均分子量が6000以上のポリシロキサン化合物である成分A、および、フルオロアルキル基を有する重合性モノマーである成分Bを含む混合物を重合し、所望の形状の成型体を得る工程;
<工程2>
成型体を塩基性ポリマー溶液に接触させた後、余剰の該塩基性ポリマー溶液を洗浄除去する工程;
<工程3>
成型体を酸性ポリマー溶液に接触させた後、余剰の該酸性ポリマー溶液を洗浄除去する工程。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、乾燥感が少なく、細菌繁殖のリスクが少ない低含水性軟質デバイスに対し、親水性に加え、長時間使用しても乾燥し難く、柔軟性を保つことができ、かつ、形状の変化が少ないという特性を付与することができる。また、本発明によれば、上記特性を有する低含水性軟質デバイスを、簡便なプロセスで安価に製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、本発明の低含水性軟質デバイスの一例である輸液チューブを示す斜視図である。
図2図2は、本発明の低含水性軟質デバイスの一例であるカテーテルの先端部を示す斜視図である。
図3図3は、本発明の低含水性軟質デバイスの一例であるステントの一部を示す斜視図である。
図4図4は、本発明の低含水性軟質デバイスの一例である内視鏡の先端部を示す斜視図である。
図5図5は、本発明の低含水性軟質デバイスの一例である気液分離膜の一部を示す斜視図である。
図6図6は、本発明の低含水性軟質デバイスの一例である保湿シートを示す模式図である。
図7図7は、本発明の低含水性軟質デバイスの一例である薬剤担体を示す斜視図である。
図8図8は、本発明の低含水性デバイスの一例である粒状保湿材を示す模式図である。
図9図9は、サンプルのフィルムと人工皮革の間の動摩擦力を測定する装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の低含水性軟質デバイスは、たとえば、生体内に導入されて輸液、気体輸送、排液等を行うチューブや回路、内部に治療器具や観察器具を包摂して生体内に導入されるチューブ、生体表面を被覆して生体表面を保護または治療する被覆材、薬剤等を包摂して生体内に導入される担体、一部が生体内に導入されて、生体内からの排液を収容するバッグといった医療デバイスや;細胞培養シート、組織再生用足場材料といったバイオテクノロジー用デバイスや;保湿シート、保湿材といった農業/ガーデニングデバイスや;濾過デバイスや;生物付着防止材料、タンパク質付着防止材料、脂質付着防止剤量といった防汚デバイスや;顔用バック等の美容デバイス等である。本発明の低含水性軟質デバイスは、用途に応じて、チューブ形状、シート状、フィルム状、球冠形状、収納容器形状、粒状等、様々な形態を有する。
【0028】
本発明において、低含水性とは含水率が10質量%以下であることを意味する。また、軟質とは引張弾性率が10MPa以下であることを意味する。
【0029】
ここで、含水率は、例えば、フィルム形状の試験片の乾燥状態の質量と、ホウ酸緩衝液による湿潤状態の質量とから、{(湿潤状態での質量)−(乾燥状態での質量)/湿潤状態での質量}により与えられる。
【0030】
本明細書において、湿潤状態とは、試料を室温(25℃)の純水あるいはホウ酸緩衝液中に24時間以上浸漬した状態を意味する。湿潤状態での物性値の測定は、試料を純水中あるいはホウ酸緩衝液中から取り出し、表面水分を拭き取った後、可及的速やかに実施される。
【0031】
また、本明細書において、乾燥状態とは、湿潤状態の試料を40℃で16時間真空乾燥した状態を意味する。該真空乾燥における真空度は2hPa以下とする。乾燥状態での物性値の測定は、上記真空乾燥の後、可及的速やかに実施される。
【0032】
本明細書においてホウ酸緩衝液とは、特表2004−517163号公報の実施例1中に記載の「塩溶液」である。具体的には塩化ナトリウム8.48g、ホウ酸9.26g、ホウ酸ナトリウム(四ホウ酸ナトリウム十水和物)1.0g、およびエチレンジアミン四酢酸0.10gを純水に溶かして1000mLとした水溶液である。
【0033】
本発明の低含水性軟質デバイスは低含水性であることから、本発明の低含水性軟質デバイスが、例えば生体表面に貼付して用いられる医療デバイスである場合、生体表面に貼付している間に使用者が感じる乾燥感が小さく、装用感に優れるという特徴を有する。また本発明の低含水性軟質デバイスは低含水性であることから、本発明の低含水性軟質デバイスが例えば生体に直接接触し得る医療デバイスや細胞培養シート等のバイオテクノロジー用デバイスである場合、細菌の繁殖リスクが小さいという利点を有する。含水率は5%以下がより好ましく2%以下がさらに好ましく、1%以下が最も好ましい。含水率が高すぎると、乾燥感が大きくなったり、細菌の繁殖リスクが高まるおそれが懸念されるため、好ましくない。
【0034】
本発明の低含水性軟質デバイスの引張弾性率は、0.01〜5MPaが好ましく、0.1〜3MPaがより好ましく、0.1〜2MPaがさらに好ましく、0.1〜1MPaがよりいっそう好ましく、0.1〜0.6MPaが最も好ましい。引っ張り弾性率が小さすぎると、軟らかすぎてハンドリングが難しくなる傾向がある。引っ張り弾性率が大きすぎると、硬すぎて装用感が悪くなる傾向がある。引っ張り弾性率が2MPa以下になると良好な装用感が得られ、1MPa以下になるとさらに良好な装用感が得られるので好ましい。引張弾性率は、ホウ酸緩衝液による湿潤状態の試料にて測定される。
【0035】
本発明の低含水性軟質デバイスの引張伸びは100%〜1000%が好ましく、200%〜700%がより好ましい。引張伸びが小さいと、低含水性軟質デバイスが破れやすくなるので好ましくない。引張伸びが大きすぎる場合には、低含水性軟質デバイスが変形しやすくなる傾向があり好ましくない。引張伸びは、ホウ酸緩衝液による湿潤状態の試料にて測定される。
【0036】
本発明の低含水性軟質デバイスは、十分な保水性を有し、所定時間保管した後でも、保管前と同程度の軟らかさおよび乾き具合を有していることが好ましい。保水性は、所定温度、所定湿度の環境下で所定時間保持した場合の保管前と保管後の状態を、人指で触って状態観察することにより評価される。
【0037】
本発明の低含水性軟質デバイスは、ホウ酸緩衝液に対する動的接触角(前進時、浸漬速度:0.1mm/sec)が100゜以下が好ましく、90゜以下がより好ましく、80゜以下がさらに好ましい。動的接触角はより低いことが好ましく、65゜以下が好ましく、60゜以下がより好ましく、55゜以下がさらに好ましく、50゜以下が一層好ましく、45゜以下が最も好ましい。動的接触角は、ホウ酸緩衝液による湿潤状態の試料にて測定される。
【0038】
また、本発明の低含水性軟質デバイスが例えば生体表面に貼付して用いられる医療デバイスである場合、装用者の皮膚等への貼り付きを防止するためには、低含水性軟質デバイスの表面の液膜保持時間が長いことが好ましい。ここで、液膜保持時間とは、ホウ酸緩衝液に浸漬した低含水性軟質デバイスを液から引き上げ、空中に表面が垂直になるように保持した際に、低含水性軟質デバイス表面の液膜が切れずに保持される時間である。液膜保持時間は、5秒以上が好ましく、10秒以上がさらに好ましく、20秒以上が最も好ましい。
【0039】
また、本発明の低含水性軟質デバイスが例えば生体内に挿入して用いられる医療デバイスである場合、低含水性軟質デバイスの表面が優れた易滑性を有することが好ましい。易滑性を表す指標としては、本明細書の実施例に示した方法で測定される摩擦が小さい方が好ましい。摩擦は、60gf(0.59N)以下が好ましく、50gf(0.49N)以下がより好ましく、40gf(0.39N)以下がさらに好ましく、30gf(0.29N)以下が最も好ましい。また、摩擦が極端に小さいと脱着用時の取扱が難しくなる傾向があるので、摩擦は5gf(0.049N)以上が好ましく、10gf(0.098N)以上であることがより好ましい。摩擦は、ホウ酸緩衝液による湿潤状態の試料にて測定される。
【0040】
低含水性軟質デバイスの防汚性は、ムチン付着、脂質(パルミチン酸メチル)付着、および人工涙液浸漬試験により、評価することができる。これらの評価による付着量が少ないものほど、装用感に優れるとともに、細菌繁殖リスクが低減されるために好ましい。ムチン付着量は5μg/cm以下が好ましく、4μg/cm以下がより好ましく、3μg/cm以下が最も好ましい。
【0041】
本発明の低含水性軟質デバイスが例えば生体表面に貼付して用いられる医療デバイスである場合、低含水性軟質デバイスは、高い酸素透過性を有することが好ましい。酸素透過係数[×10−11(cm/sec)mLO/(mL・hPa)]は50〜2000が好ましく、100〜1500がより好ましく、200〜1000がさらに好ましく、300〜700が最も好ましい。酸素透過性を大きくしすぎると機械物性などの他の物性に悪影響が出る場合があり好ましくない。酸素透過係数は、乾燥状態の試料にて測定される。
【0042】
本発明の低含水性軟質デバイスは、所望の形状(例えば、チューブ形状、シート状、フィルム状、収納容器形状、粒状等)の成型体(以下、基材と呼ぶ)を含み、該基材の表面の少なくとも一部に、酸性ポリマーおよび塩基性ポリマーからなる層が形成されている。
【0043】
基材は、下記成分Aの重合体、または下記成分Aおよび成分Bとの共重合体を主成分とすることが好ましい;
成分A:1分子あたり複数の重合性官能基を有し、数平均分子量が6000以上のポリシロキサン化合物である成分Aの重合体
成分B:フルオロアルキル基を有する重合性モノマー
ここで、主成分とは、乾燥状態の基材質量を基準(100質量%)として50質量%以上含まれる成分であることを意味する。
【0044】
成分Aの数平均分子量は6000以上であることが好ましい。発明者らは、成分Aの数平均分子量がこの範囲にあることで、柔軟で装用感に優れ、しかも耐折り曲げ性などの機械物性に優れた低含水性軟質デバイスが得られることを見出した。成分Aのポリシロキサン化合物の数平均分子量は、耐折り曲げ性などの機械物性により優れた低含水性軟質デバイスが得られることから、8000以上が好ましい。成分Aの数平均分子量は8000〜100000の範囲にあることが好ましく、9000〜70000の範囲にあることがより好ましく、10000〜50000の範囲にあることが一層好ましい。成分Aの数平均分子量が小さすぎる場合には耐折り曲げ性などの機械物性が低くなる傾向があり、特に6000未満では耐折り曲げ性が低くなる。成分Aの数平均分子量が大きすぎる場合には、柔軟性や透明性が低下する傾向があり好ましくない。
【0045】
本発明において、成分Aの数平均分子量は、クロロホルムを溶媒として用いたゲル浸透クロマトグラフィー法(GPC法)で測定されるポリスチレン換算の数平均分子量である。質量平均分子量および分散度(質量平均分子量を数平均分子量で除した値)も同様の方法で測定される。
【0046】
なお、本明細書においては、質量平均分子量をMw、数平均分子量をMnで表す場合がある。また分子量1000を1kDと表記することがある。例えば「Mw33kD」という表記は「質量平均分子量33000」を表す。
【0047】
成分Aは、1分子あたり複数の重合性官能基を有するポリシロキサン化合物である。成分Aの重合性官能基の数は、1分子あたり2個以上であればよいが、より柔軟(低弾性率)な低含水性軟質デバイスが得られやすいという観点からは、1分子あたり2個が好ましい。特に分子鎖の両末端に重合性官能基を有する構造が好ましい。
【0048】
成分Aの重合性官能基としては、ラジカル重合可能な官能基が好ましく、炭素炭素二重結合を有するものがより好ましい。好ましい重合性官能基の例としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、α−アルコキシメチルアクリロイル基、マレイン酸残基、フマル酸残基、イタコン酸残基、クロトン酸残基、イソクロトン酸残基、およびシトラコン酸残基などである。これらの中でも高い重合性を有することから(メタ)アクリロイル基が最も好ましい。
【0049】
なお、本明細書において(メタ)アクリロイルという語はメタクリロイルおよびアクリロイルの両方を表すものであり、(メタ)アクリル、(メタ)アクリレートなどの語も同様である。
【0050】
成分Aとしては、下記式(A1)の構造を有するものが好ましい。
【0051】
【化1】
【0052】
式(A1)中、XおよびXはそれぞれ独立に重合性官能基を表す。R〜Rはそれぞれ独立に、水素、炭素数1〜20のアルキル基、フェニル基、および炭素数1〜20のフルオロアルキル基から選ばれた置換基を表す。LおよびLは、それぞれ独立に2価の基を表す。aおよびbは、それぞれ独立に0〜1500の整数を表す。ただしaとbは同時に0ではない。
【0053】
およびXとしては、ラジカル重合可能な官能基が好ましく、炭素炭素二重結合を有するものが好ましい。好ましい重合性官能基の例としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、α−アルコキシメチルアクリロイル基、マレイン酸残基、フマル酸残基、イタコン酸残基、クロトン酸残基、イソクロトン酸残基、およびシトラコン酸残基などである。これらの中でも高い重合性を有することから(メタ)アクリロイル基が最も好ましい。
【0054】
〜Rの好適な具体例は、水素;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基などの炭素数1〜20のアルキル基;フェニル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、トリフルオロプロピル基、テトラフルオロプロピル基、ヘキサフルオロイソプロピル基、ペンタフルオロブチル基、ヘプタフルオロペンチル基、ノナフルオロヘキシル基、ヘキサフルオロブチル基、ヘプタフルオロブチル基、オクタフルオロペンチル基、ノナフルオロペンチル基、ドデカフルオロヘプチル基、トリデカフルオロヘプチル基、ドデカフルオロオクチル基、トリデカフルオロオクチル基、ヘキサデカフルオロデシル基、ヘプタデカフルオロデシル基、テトラフルオロプロピル基、ペンタフルオロプロピル基、テトラデカフルオロオクチル基、ペンタデカフルオロオクチル基、オクタデカフルオロデシル基、およびノナデカフルオロデシル基などの炭素数1〜20のフルオロアルキル基である。これらの中で、低含水性軟質デバイスに良好な機械物性と高酸素透過性を与えるという観点からさらに好ましいのは、水素およびメチル基であり、最も好ましいのはメチル基である。
【0055】
およびLとしては、炭素数1〜20の2価の基が好ましい。中でも式(A1)の化合物が高純度で得られやすい利点を有することから、下記式(LE1)〜(LE12)で表される基が好ましく、中でも下記式(LE1)、(LE3)、(LE9)および(LE11)で表される基がより好ましく、下記式(LE1)および(LE3)で表される基がさらに好ましく、下記式(LE1)で表される基が最も好ましい。なお、下記式(LE1)〜(LE12)は、左側が重合性官能基XまたはXに結合する末端、右側がケイ素原子に結合する末端として描かれている。
【0056】
【化2】
【0057】
式(A1)中、aおよびbは、それぞれ独立に各繰返し単位の数を表す。aおよびbはそれぞれ独立に0〜1500の範囲が好ましい。aとbの合計値(a+b)は、80以上が好ましく、100以上がより好ましく、100〜1400がより好ましく、120〜950がより好ましく、130〜700がさらに好ましい。
【0058】
〜Rが全てメチル基の場合、b=0であり、aは、80〜1500が好ましく、100〜1400がより好ましく、120〜950がより好ましく、130〜700がさらに好ましい。この場合、aの値は、成分Aのポリシロキサン化合物の分子量によって決まる。
【0059】
本発明の成分Aは1種類のみ用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
成分Aと共重合させる他の化合物としては、フルオロアルキル基を有する重合性モノマーである成分Bが好ましい。成分Bはフルオロアルキル基に起因する臨界表面張力の低下により、撥水撥油性の性質を持ち、これにより、低含水性軟質デバイス表面が生体の体液中のタンパク質や脂質などの成分によって汚染されることを抑える効果がある。また、成分Bは、柔軟で装用感に優れ、しかも耐折り曲げ性などの機械物性に優れた低含水性軟質デバイスを与える効果がある。成分Bのフルオロアルキル基の好適な具体例は、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、トリフルオロプロピル基、テトラフルオロプロピル基、ヘキサフルオロイソプロピル基、ペンタフルオロブチル基、ヘプタフルオロペンチル基、ノナフルオロヘキシル基、ヘキサフルオロブチル基、ヘプタフルオロブチル基、オクタフルオロペンチル基、ノナフルオロペンチル基、ドデカフルオロヘプチル基、トリデカフルオロヘプチル基、ドデカフルオロオクチル基、トリデカフルオロオクチル基、ヘキサデカフルオロデシル基、ヘプタデカフルオロデシル基、テトラフルオロプロピル基、ペンタフルオロプロピル基、テトラデカフルオロオクチル基、ペンタデカフルオロオクチル基、オクタデカフルオロデシル基、およびノナデカフルオロデシル基などの炭素数1〜20のフルオロアルキル基である。より好ましくは、炭素数2〜8のフルオロアルキル基、例えば、トリフルオロエチル基、テトラフルオロプロピル基、ヘキサフルオロイソプロピル基、オクタフルオロペンチル基、およびドデカフルオロオクチル基であり、最も好ましくはトリフルオロエチル基である。
【0061】
成分Bの重合性官能基としてはラジカル重合可能な官能基が好ましく、炭素炭素二重結合を有するものがより好ましい。好ましい重合性官能基の例としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、α−アルコキシメチルアクリロイル基、マレイン酸残基、フマル酸残基、イタコン酸残基、クロトン酸残基、イソクロトン酸残基、およびシトラコン酸残基などであるが、これらの中でも高い重合性を有することから(メタ)アクリロイル基が最も好ましい。
【0062】
柔軟で装用感に優れ、しかも耐折り曲げ性などの機械物性に優れた低含水性軟質デバイスが得られる効果が大きいことから、成分Bとして最も好ましいのは(メタ)アクリル酸フルオロアルキルエステルである。かかる(メタ)アクリル酸フルオロアルキルエステルの具体例としては、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロプロピル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート、ヘプタフルオロブチル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ノナフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ドデカフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ドデカフルオロヘプチル(メタ)アクリレート、ドデカフルオロオクチル(メタ)アクリレート、およびトリデカフルオロヘプチル(メタ)アクリレートが挙げられる。トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロエチル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ドデカフルオロオクチル(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。最も好ましくはトリフルオロエチル(メタ)アクリレートである。
【0063】
本発明のB成分は1種類のみ用いてもよいし、2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0064】
共重合体中における成分Bの好ましい含有量は、成分A100質量部に対して、10〜500質量部、より好ましくは20〜400質量部、さらに好ましくは20〜200質量部である。成分Bの使用量が少なすぎる場合は、得られる低含水性軟質デバイスに白濁が生じたり、耐折り曲げ性などの機械物性が不十分になったりする傾向がある。
【0065】
また、基材に用いる共重合体としては、成分Aおよび成分Bに加えて、成分Aおよび成分Bとは異なる成分(以下成分C)をさらに共重合させたものを用いてもよい。
【0066】
成分Cとしては、共重合体のガラス移転点を室温あるいは0℃以下に下げるものがよい。これらは凝集エネルギ−を低下させるので、共重合体にゴム弾性と柔らかさを与える効果がある。
【0067】
成分Cの重合性官能基としてはラジカル重合可能な官能基が好ましく、炭素炭素二重結合を有するものがより好ましい。好ましい重合性官能基の例としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、α−アルコキシメチルアクリロイル基、マレイン酸残基、フマル酸残基、イタコン酸残基、クロトン酸残基、イソクロトン酸残基、およびシトラコン酸残基などであるが、これらの中でも高い重合性を有することから(メタ)アクリロイル基が最も好ましい。
【0068】
成分Cとして、柔軟性や耐折り曲げ性などの機械的特性の改善のために好適な例は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、好ましくはアルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルであり、その具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘプチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、およびn−ステアリル(メタ)アクリレート等を挙げることができ、より好ましくは、n−ブチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレートである。これらの中でアルキル基の炭素数が1〜10の(メタ)アクリル酸アルキルエステルはさらに好ましい。アルキル基の炭素数が大きすぎると得られる低含水性軟質デバイスの透明性が低下する場合があり好ましくない。
【0069】
さらに、機械的性質、表面濡れ性、低含水性軟質デバイスの寸法安定性などを向上させるためには、所望に応じ、以下に述べるモノマーを共重合させることができる。
【0070】
機械的性質を向上させるためのモノマーとしては、例えばスチレン、tert−ブチルスチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物等が挙げられる。
【0071】
表面濡れ性を向上させるためのモノマーとしては、例えばメタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、グリセロールメタクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリレート、メチレンビスアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルアセトアミド、およびN−ビニル−N−メチルアセトアミド等が挙げられる。中でもN,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリレート、メチレンビスアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルアセトアミド、およびN−ビニル−N−メチルアセトアミドなどのアミド基を含有するモノマーが好ましい。
【0072】
低含水性軟質デバイスの寸法安定性を向上させるためのモノマーとしては、例えばエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ビスフェノールAジメタクリレート、ビニルメタクリレート、アクリルメタクリレートおよびこれらのメタクリレート類に対応するアクリレート類、ジビニルベンゼン、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。
【0073】
成分Cは、1種類のみ用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0074】
成分Cの好ましい使用量は、成分A100質量部に対して、0.001〜400質量部、より好ましくは0.01〜300質量部、さらに好ましくは0.01〜200質量部、最も好ましくは0.01〜30質量部である。成分Cの使用量が少なすぎる場合は成分Cに期待する効果が得られにくくなる。成分Cの使用量が多すぎる場合は得られる低含水性軟質デバイスに白濁が生じたり耐折り曲げ性などの機械物性が不十分になったりする傾向がある。
【0075】
さらにまた、基材に用いる共重合体として、成分Aに加えて、成分Mをさらに共重合させたものを用いてもよい。成分Mは、「1分子あたり1個の重合性官能基、およびシロキサニル基を有する単官能モノマー」である。
【0076】
本明細書において、シロキサニル基とはSi−O−Si結合を有する基を意味する。
【0077】
成分Mのシロキサニル基は直鎖状であることが好ましい。シロキサニル基が直鎖状であれば、得られる低含水性軟質デバイスの形状回復性が向上する。ここで直鎖状とは、重合性基を有する基と結合したケイ素原子を起点とする、一本の線状に連なるSi−(O−Si)n−1−O−Si結合で示される構造を指す(ただし、nは2以上の整数を表す)。得られる低含水性軟質デバイスが十分な形状回復性を得るためにはnは3以上の整数が好ましく、4以上がより好ましく、5以上がさらに好ましく、6以上が最も好ましい。ここで、「シロキサニル基が直鎖状である」とはシロキサニル基が上記の直鎖状構造を有し、かつ直鎖状構造の条件を満たさないSi−O−Si結合を有さないことを意味する。
【0078】
基材は、数平均分子量が300〜120000である成分Mを含む共重合体を主成分とすることが好ましい。ここで、主成分とは乾燥状態の基材質量を基準(100質量%)として50質量%以上含まれる成分であることを意味する。
【0079】
成分Mの数平均分子量は、300〜120000であることが好ましい。成分Mの数平均分子量がこの範囲にあることで、柔軟(低弾性率)で装用感に優れ、しかも耐折り曲げ性などの機械物性に優れた基材が得られる。成分Mの数平均分子量は、耐折り曲げ性などの機械物性により優れ、かつ形状回復性に優れた基材が得られることから、500以上がより好ましい。成分Mの数平均分子量は、1000〜25000の範囲にあることがより好ましく、5000〜15000の範囲にあることが一層好ましい。成分Mの数平均分子量が小さすぎる場合には耐折り曲げ性や形状回復性などの機械物性が低くなる傾向があり、特に500未満では耐折り曲げ性、および形状回復性が低くなることがある。成分Mの数平均分子量が大きすぎる場合には、柔軟性や透明性が低下する傾向があり好ましくない。
【0080】
成分Mの重合性官能基としては、ラジカル重合可能な官能基が好ましく、炭素炭素二重結合を有するものがより好ましい。好ましい重合性官能基の例としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、α−アルコキシメチルアクリロイル基、マレイン酸残基、フマル酸残基、イタコン酸残基、クロトン酸残基、イソクロトン酸残基、およびシトラコン酸残基などである。これらの中でも高い重合性を有することから(メタ)アクリロイル基が最も好ましい。
【0081】
成分Mとしては、下記式(ML1)の構造を有するものが好ましい。
【0082】
【化3】
【0083】
式中、Xは重合性官能基を表す。R11〜R19はそれぞれ独立に、水素、炭素数1〜20のアルキル基、フェニル基、および炭素数1〜20のフルオロアルキル基から選ばれた置換基を表す。Lは2価の基を表す。cおよびdは、それぞれ独立に0〜700の整数を表す。ただしcとdは同時に0ではない。
【0084】
としては、ラジカル重合可能な官能基が好ましく、炭素炭素二重結合を有するものが好ましい。好ましい重合性官能基の例としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、α−アルコキシメチルアクリロイル基、マレイン酸残基、フマル酸残基、イタコン酸残基、クロトン酸残基、イソクロトン酸残基、およびシトラコン酸残基などである。これらの中でも高い重合性を有することから(メタ)アクリロイル基が最も好ましい。
【0085】
また、成分Mの重合性官能基は、良好な機械物性の低含水性軟質デバイスが得られやすいことから、成分Aの重合性官能基と共重合可能であることがより好ましく、成分Mと成分Aが均一に共重合されることで良好な表面特性を有する低含水性軟質デバイスが得られやすいことから、成分Aの重合性官能基と同一であることがさらに好ましい。
【0086】
11〜R19の好適な具体例は、水素;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基などの炭素数1〜20のアルキル基;フェニル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、トリフルオロプロピル基、テトラフルオロプロピル基、ヘキサフルオロイソプロピル基、ペンタフルオロブチル基、ヘプタフルオロペンチル基、ノナフルオロヘキシル基、ヘキサフルオロブチル基、ヘプタフルオロブチル基、オクタフルオロペンチル基、ノナフルオロペンチル基、ドデカフルオロヘプチル基、トリデカフルオロヘプチル基、ドデカフルオロオクチル基、トリデカフルオロオクチル基、ヘキサデカフルオロデシル基、ヘプタデカフルオロデシル基、テトラフルオロプロピル基、ペンタフルオロプロピル基、テトラデカフルオロオクチル基、ペンタデカフルオロオクチル基、オクタデカフルオロデシル基、およびノナデカフルオロデシル基などの炭素数1〜20のフルオロアルキル基である。これらの中で、低含水性軟質デバイスに良好な機械物性と高酸素透過性を与えるという観点からさらに好ましいのは、水素およびメチル基であり、最も好ましいのはメチル基である。
【0087】
としては、炭素数1〜20の2価の基が好ましい。中でも式(ML1)の化合物が高純度で得られやすい利点を有することから、下記式(LE1)〜(LE12)で表される基が好ましく、中でも下記式(LE1)、(LE3)、(LE9)および(LE11)で表される基がより好ましく、下記式(LE1)および(LE3)で表される基がさらに好ましく、下記式(LE1)で表される基が最も好ましい。なお、下記式(LE1)〜(LE12)は、左側が重合性官能基Xに結合する末端、右側がケイ素原子に結合する末端として描かれている。
【0088】
【化4】
【0089】
式(ML1)中、cとdの合計値(c+d)は、3以上が好ましく、10以上がより好ましく、10〜500がより好ましく、30〜300がより好ましく、50〜200がさらに好ましい。
【0090】
11〜R18が全てメチル基の場合、d=0であり、cは、3〜700が好ましく、10〜500がより好ましく、30〜300がより好ましく、50〜200がさらに好ましい。この場合、cの値は、成分Mの分子量によって決まる。
【0091】
本発明の低含水性軟質デバイスの基材において、成分Mは1種類のみ用いてもよいし、2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0092】
本発明の低含水性軟質デバイスの基材が適当な量の成分Mを含有することにより、架橋密度が減少してポリマーの自由度が大きくなり、適度に柔らかい低弾性率の基材を実現することができる。これに対し、成分Mの含有量が少なすぎると架橋密度が高くなり、基材が硬くなる。また、成分Mの含有量が多すぎると軟らかくなりすぎ、破れやすくなるため好ましくない。
【0093】
また、本発明の低含水性軟質デバイスの基材において、成分Mと成分Aとの質量比は、成分A100質量部に対して成分Mが5〜200質量部、より好ましくは7〜150質量部、最も好ましくは10〜100質量部、であることが好ましい。成分Mの含有量が、成分A100質量部に対し5質量部を下まわると、架橋密度が高くなり、基材が硬くなる。また、成分Mの含有量が、成分A100質量部に対し200質量部を超えると、軟らかくなりすぎ、破れやすくなるため好ましくない。
【0094】
基材は、表面にコーティングされるポリマーとの間に共有結合を介さずに強固な密着性を得るため、また、良好な酸素透過性を有するために、ケイ素原子を5質量%以上含むことが好ましい。ケイ素原子の含有量(質量%)は、乾燥状態の基材質量を基準(100質量%)として算出される。基材のケイ素原子含有率は5質量%〜36質量%が好ましく、7質量%〜30質量%がより好ましく、10質量%〜30質量%がさらに好ましく、12質量%〜26質量%が最も好ましい。ケイ素原子の含有率が大きすぎる場合は引張弾性率が大きくなる場合があり好ましくない。
【0095】
基材におけるケイ素原子の含有量は以下の方法で測定することができる。十分乾燥した基材を白金るつぼに秤取し、硫酸を加えてホットプレートおよびバーナーで加熱灰化する。灰化物を炭酸ナトリウムで融解し、水を加えて加熱溶解した後、硝酸を加え水で定容する。この溶液について、ICP発光分光分析法によりケイ素原子を測定し、基材中の含有量を求める。
【0096】
本発明の低含水性軟質デバイスが、例えば生体内に挿入される光学製品の表面(例えば内視鏡先端に設けられたカメラ)に用いられる医療デバイスである場合、透明性が高いことが好ましい。透明性の基準としては、目視した際に透明で濁りがないことが好ましい。さらに低含水性軟質デバイスは、投影機で観察した場合、濁りがほとんど、または、全く観察されないことが好ましく、濁りが全く観察されないことが最も好ましい。
【0097】
成分Aの分散度(質量平均分子量を数平均分子量で除した値)は、6以下が好ましく、3以下がより好ましく、2以下がさらに好ましく、1.5以下が最も好ましい。成分Aの分散度が小さい場合、他の成分との相溶性が向上し、得られる低含水性軟質デバイスの透明性が向上する、得られる低含水性軟質デバイスに含まれる抽出可能な成分が減る、低含水性軟質デバイスの基材の成型に伴う収縮率が小さくなる、などの利点が生じる。
【0098】
基材の成型に伴う収縮率は、例えば基材がフィルム形状であり、該基材を板間重合で成型する場合、次式により算出した対応する4辺の成型比の平均値によって評価される。
【0099】
1辺の成型比=(成型後の1辺の長さ)/(型の空隙部の1辺の長さ)
ここで、「型の空隙部」とは、フィルムを成型するのに用いられる、該フィルムの形状に対応する形状の空隙部であり、通常は2枚の板とガスケットで構成される空隙部である。
【0100】
また、例えば基材が球冠形状(球面の一部を平面で切り取った形状)であり、該基材をモールド重合で成型する場合、成型に伴う収縮率は、成型比=[直径]/[モールドの空隙部の直径]で評価することができる。ここで直径とは球冠の縁部が構成する円の直径である。
【0101】
成型比は、1に近いほど高品位の低含水性軟質デバイスを安定に製造することが容易となる。成型比は0.85〜2.0の範囲が好ましく、0.9〜1.5の範囲がより好ましく、0.91〜1.3の範囲が最も好ましい。
【0102】
また、本発明の低含水性軟質デバイスの乾燥による収縮率(以下、収縮率)は、例えば基材がフィルム形状の場合、ホウ酸緩衝液による湿潤状態(保管前)の試験片の4辺の長さと、この試験片を所定環境下に所定時間保管した後の試験片の4辺の長さとを測定し、次式により算出した対応する各辺の収縮率の平均値によって評価される。
1辺の収縮率(%)={(保管前の1辺の長さ)−(保管後の1辺の長さ)}
/(保管前の1辺の長さ)×100
さらに、例えば基材が球冠形状(球面の一部を平面で切り取った形状)である場合、収縮率は、収縮率(%)=[保管後の直径]/[保管前の直径]で評価することができる。ここで直径とは球冠の縁部が構成する円の直径である。
【0103】
収縮率は、成型体の形状変化が少ないことから20以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましく、5以下であることがよりいっそう好ましく、1未満であることが最も好ましい。
【0104】
本発明の低含水性軟質デバイスは、紫外線吸収剤、色素、着色剤、湿潤剤、スリップ剤、医薬および栄養補助成分、相溶化成分、抗菌成分、離型剤等の成分をさらに含んでいてもよい。上記した成分はいずれも、非反応性形態または共重合形態で含有され得る。
【0105】
紫外線吸収剤を含む場合、低含水性軟質デバイスを皮膚用被覆材として用いると、装用者の皮膚を有害紫外線から保護することができる。また、着色剤を含む場合、低含水性軟質デバイスが着色されて、識別が容易になり、取扱時の利便性が向上する。
【0106】
上記した成分はいずれも、非反応性形態または共重合形態で含有され得る。上記成分を共重合した場合、すなわち重合性基を有する紫外線吸収剤、重合性基を有する着色剤などを使用した場合は、該成分が基材に共重合されて固定化されるので溶出の可能性が小さくなるので好ましい。
【0107】
基材は、紫外線吸収剤および着色剤から選ばれる成分、ならびに、これら以外の2種類以上の成分C(以下、成分Ck)からなることが好ましい。その場合、成分Ckとしては、炭素数1〜10の(メタ)アクリル酸アルキルエステルから少なくとも1種類、上記表面濡れ性を向上させるためのモノマーから少なくとも1種類が選ばれることが好ましい。成分Ckを2種類以上使用することにより、紫外線吸収剤や着色剤との親和性が増し、透明な基材を得ることが容易になる。
【0108】
紫外線吸収剤を用いる場合、その好ましい使用量は、成分A100質量部に対して、0.01〜20質量部、より好ましくは0.05〜10質量部、さらに好ましくは0.1〜2質量部である。着色剤を用いる場合、その好ましい使用量は、成分A100質量部に対して、0.00001〜5質量部、より好ましくは0.0001〜1質量部、さらに好ましくは0.0001〜0.5質量部である。紫外線吸収剤や着色剤の含有量が少なすぎる場合は、紫外線吸収効果や着色効果が得られにくくなる。逆に、多すぎる場合はこれらの成分を基材中に溶解せしめることが難しくなる。成分Ckの好ましい使用量は、それぞれ、成分A100質量部に対して、0.1〜100質量部、より好ましくは1〜80質量部、さらに好ましくは2〜50質量部である。成分Ckの使用量が少なすぎる場合は、紫外線吸収剤や着色剤との親和性が不足して透明な基材を得るのが難しくなる傾向がある。成分Ckの使用量が多すぎる場合も得られる低含水性軟質デバイスに白濁が生じたり耐折り曲げ性などの機械物性が不十分になったりする傾向があり好ましくない。
【0109】
また、本発明の低含水性軟質デバイスの基材は、架橋度が2.0〜18.3の範囲であることが好ましい。架橋度は、下記式(Q1)で表される。
【0110】
【化5】
【0111】
式(Q1)において、Qnは1分子あたりn個の重合性基を有するモノマーの合計ミリモル量、Wnは1分子あたりn個の重合性基を有するモノマーの合計質量(kg)を表す。また、モノマーの分子量が分布を有する場合は、数平均分子量を用いてミリモル量を計算することとする。
【0112】
本発明の基材の架橋度が、2.0より小さくなると、柔らかすぎてハンドリングが難しくなり、18.3より大きくなると硬すぎて装用感または使用感が悪くなる傾向があるので好ましくない。架橋度のより好ましい範囲は3.5〜16.0であり、さらに好ましい範囲は8.0〜15.0であり、最も好ましい範囲は9.0〜14.0である。
【0113】
低含水性軟質デバイスの基材として、例えば、チューブ形状、シート状、フィルム状、球冠形状(レンズ形状)、収納容器形状、または粒状等の成型体を製造する方法としては、公知の方法を使用することができる。例えば、いったん、丸棒や板状の重合体を得て、これを切削加工等によって所望の形状に加工する方法、モールド重合法、およびスピンキャスト重合法などを使用することができる。低含水性軟質デバイスを切削加工で得る場合には、低温での冷凍切削が好適である。
【0114】
一例として、成分Aを含む原料組成物をモールド重合法により重合してシート状またはフィルム状の低含水性軟質デバイスを製造する方法について、次に説明する。まず、一定の形状を有する2枚のモールド部材間の空隙に原料組成物を充填する。モールド部材の材料としては、樹脂、ガラス、セラミックス、金属等が挙げられる。光重合を行う場合は光学的に透明な素材が好ましいので、樹脂またはガラスが好ましく使用される。モールド部材の形状や原料組成物の性状によっては、低含水性軟質デバイスに一定の厚みを与え、かつ、空隙に充填した原料組成物の液モレを防止するために、ガスケットを用いてもよい。空隙に原料組成物を充填したモールドは、続いて紫外線、可視光線またはこれらの組み合わせなどの活性光線を照射されるか、もしくはオーブンや液槽中などで加熱されることにより、充填した原料組成物を重合する。2通りの重合方法を併用する方法もありうる。すなわち、光重合の後に加熱重合したり、または加熱重合後に光重合することもできる。光重合の具体的態様は、例えば水銀ランプや紫外線ランプ(例えばFL15BL、東芝)の光のような紫外線を含む光を短時間(通常は1時間以下)照射する。熱重合を行う場合には、組成物を室温付近から徐々に昇温し、数時間ないし数十時間かけて60℃〜200℃の温度まで高めて行く条件が、低含水性軟質デバイスの光学的な均一性および品位を保持し、かつ再現性を高めるために好まれる。
【0115】
重合においては、重合をしやすくするために過酸化物やアゾ化合物に代表される熱重合開始剤または光重合開始剤を添加することが好ましい。熱重合を行う場合は、所望の反応温度において最適な分解特性を有するものが選択される。一般的には、10時間半減期温度が40〜120℃のアゾ系開始剤および過酸化物系開始剤が好適である。光重合を行う場合の光開始剤としてはカルボニル化合物、過酸化物、アゾ化合物、硫黄化合物、ハロゲン化合物、および金属塩などを挙げることができる。これらの重合開始剤は単独または混合して用いられる。重合開始剤の量は、重合混合物に対し最大で5質量%までが好ましい。
【0116】
重合する際は、重合溶媒を使用することができる。溶媒としては有機系、無機系の各種溶媒が適用可能である。溶媒の例としては、水;メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ノルマルブチルアルコール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール、t−アミルアルコール、テトラヒドロリナロール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールおよびポリエチレングリコール等のアルコール系溶剤;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、イソプロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテルおよびポリエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、乳酸エチルおよび安息香酸メチル等のエステル系溶剤;ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタンおよびノルマルオクタン等の脂肪族炭化水素系溶剤;シクロへキサンおよびエチルシクロへキサン等の脂環族炭化水素系溶剤;アセトン、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;ベンゼン、トルエンおよびキシレン等の芳香族炭化水素系溶剤;並びに石油系溶剤が挙げられる。これらの溶媒は単独で用いてもよく、また2種以上を混合して用いてもよい。
【0117】
本発明の低含水性軟質デバイスは、基材表面の少なくとも一部に、酸性ポリマーおよび塩基性ポリマーからなる層(以下、コーティング層と呼ぶ)が形成されていることが必要である。コーティング層を有することで、低含水性軟質デバイス表面に良好な濡れ性と易滑性が付与され、優れた装用感を与え、または不快な使用感を抑制することができる。
【0118】
発明者らは、本発明の低含水性軟質デバイスが、低含水性かつ軟質であるにも関わらず、また基材が中性であっても、表面に酸性ポリマーおよび塩基性ポリマーからなるコーティング層を形成することによって、低含水性軟質デバイス表面に十分な濡れ性、易滑性および防汚性を付与することが可能であることを見出した。
【0119】
本発明の低含水性軟質デバイスのコーティング層は、基材との間に共有結合を有する必要はない。簡便な工程での製造が可能となることから、コーティング層は基材との間に共有結合を有さないことが好ましい。コーティング層は、基材との間に共有結合を有さなくても、実用的な耐久性を有する。
【0120】
コーティング層は、下記に詳細に説明する酸性ポリマー溶液および塩基性ポリマー溶液で基材表面を処理することにより形成することができる。ここで、溶液としては、水溶液が好ましい。また、水溶液とは水を主たる成分とする溶液である。
【0121】
コーティング層は、1種以上の酸性ポリマー、および1種以上の塩基性ポリマーからなることが好ましい。2種以上の酸性ポリマーまたは2種以上の塩基性ポリマーを用いると、低含水性軟質デバイス表面に易滑性や防汚性などの性質を発現させやすいためにより好ましい。特に2種以上の酸性ポリマーと1種以上の塩基性ポリマーを使用した場合にその傾向が強まるのでさらに好ましい。
【0122】
コーティング層は、1種以上の酸性ポリマー溶液による処理を1回以上、および1種以上の塩基性ポリマー溶液による処理を1回以上行うことにより形成されることが好ましい。
【0123】
ここで1種のポリマーとは、1の合成反応により製造されたポリマー群を意味する。また、構成するモノマー種が同一であっても、配合比を変えて合成したポリマーは1種ではない。
【0124】
また、コーティング層は、1種以上の酸性ポリマー溶液による処理および1種以上の塩基性ポリマー溶液による処理を、好ましくはそれぞれ1〜5回、より好ましくはそれぞれ1〜3回、さらに好ましくはそれぞれ1〜2回行うことにより基材の表面に形成される。酸性ポリマー溶液による処理の回数と塩基性ポリマー溶液による処理の回数は異なっていてもよい。
【0125】
本発明において、酸性ポリマー溶液による処理および塩基性ポリマー溶液による処理が合計2回または3回という極めて少ない回数で優れた濡れ性や易滑性を付与しうる。これは製造工程の短縮化という観点から、工業的に非常に重要な意味を持つ。その意味で、本発明の低含水性軟質デバイスにおいて、酸性ポリマー溶液による処理を1回または2回、および前記塩基性ポリマー溶液による処理を1回または2回、合計で2回または3回処理を行うことにより形成されていることが好ましい。
【0126】
コーティング層は、2種の酸性ポリマー溶液による処理を各1回および塩基性ポリマー溶液による処理を1回、合計で3回処理を行うことにより形成されていることが特に好適である。
【0127】
なお、発明者らは、コーティング層が、酸性ポリマーおよび塩基性ポリマーのいずれか一方のみを含むだけでは、濡れ性や易滑性の発現がほとんど見られないことも確認している。
【0128】
塩基性ポリマーとしては、塩基性を有する複数の基をポリマー鎖に沿って有するホモポリマーまたは共重合ポリマーを好適に用いることができる。塩基性を有する基としてはアミノ基およびその塩が好適である。たとえば、このような塩基性ポリマーの好適な例は、ポリ(アリルアミン)、ポリ(ビニルアミン)、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(ビニルベンジルトリメチルアミン)、ポリアニリン、ポリ(アミノスチレン)、ポリ(N,N−ジアルキルアミノエチルメタクリレート)などのアミノ基含有(メタ)アクリレート重合体、ポリ(N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)などのアミノ基含有(メタ)アクリルアミド重合体およびこれらの塩などである。以上はホモポリマーの例であるが、これらの共重合体(すなわち上記塩基性ポリマーを構成する塩基性モノマーどうしの共重合体、あるいは塩基性モノマーと他のモノマーの共重合体)も好適に用いることができる。
【0129】
塩基性ポリマーが共重合体である場合、該共重合体を構成する塩基性モノマーとしては、重合性の高さという点でアリル基、ビニル基、および(メタ)アクリロイル基を有するモノマーが好ましく、(メタ)アクリロイル基を有するモノマーが最も好ましい。該共重合体を構成する塩基性モノマーとして好適なものを例示すれば、アリルアミン、ビニルアミン(前駆体としてN−ビニルカルボン酸アミド)、ビニルベンジルトリメチルアミン、アミノ基含有スチレン、アミノ基含有(メタ)アクリレート、アミノ基含有(メタ)アクリルアミド、およびこれらの塩である。これらの中でも重合性の高さからアミノ基含有(メタ)アクリレート、アミノ基含有(メタ)アクリルアミド、およびこれらの塩がより好ましく、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、およびこれらの塩が最も好ましい。
【0130】
塩基性ポリマーは、第四級アンモニウム構造を有するポリマーであってもよい。第四級アンモニウム構造を有するポリマー化合物は、低含水性軟質デバイスのコーティングに使用されると、低含水性軟質デバイスに抗微生物性を付与することができる。
【0131】
酸性ポリマーとしては、酸性を有する複数の基をポリマー鎖に沿って有するホモポリマーまたは共重合ポリマーを好適に用いることができる。酸性を有する基としては、カルボキシル基、スルホン酸基およびこれらの塩が好適であり、カルボキシル基およびその塩が最も好適である。たとえば、このような酸性ポリマーの好適な例は、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸、ポリ(ビニル安息香酸)、ポリ(チオフェン−3−酢酸)、ポリ(4−スチレンスルホン酸)、ポリビニルスルホン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)およびこれらの塩などである。以上はホモポリマーの例であるが、これらの共重合体(すなわち上記酸性ポリマーを構成する酸性モノマーどうしの共重合体、あるいは酸性モノマーと他のモノマーの共重合体)も好適に用いることができる。
【0132】
酸性ポリマーが共重合体である場合、該共重合体を構成する酸性モノマーとしては、重合性の高さという点でアリル基、ビニル基、および(メタ)アクリロイル基を有するモノマーが好ましく、(メタ)アクリロイル基を有するモノマーが最も好ましい。該共重合体を構成する酸性モノマーとして好適なものを例示すれば、(メタ)アクリル酸、ビニル安息香酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、およびこれらの塩である。これらの中で、(メタ)アクリル酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、およびこれらの塩がより好ましく、最も好ましいのは(メタ)アクリル酸、およびその塩である。
【0133】
塩基性ポリマーおよび酸性ポリマーのうちの少なくとも1種が、アミド基および水酸基から選ばれた基を有するポリマーであることが好ましい。塩基性ポリマーおよび/または酸性ポリマーがアミド基を有する場合、濡れ性のみならず易滑性のある表面を形成できるために好ましい。塩基性ポリマーおよび/または酸性ポリマーが水酸基を有する場合、濡れ性のみならず体液等に対する防汚性に優れた表面を形成できるために好ましい。
【0134】
上記酸性ポリマーおよび塩基性ポリマーのうちの2種以上が、水酸基およびアミド基から選ばれた基を有するポリマーであることがより好ましい。すなわち、低含水性軟質デバイスが、水酸基を有する酸性ポリマー、水酸基を有する塩基性ポリマー、アミド基を有する酸性ポリマーおよびアミド基を有する塩基性ポリマーから選ばれた2種以上を含むことが好ましい。この場合、易滑性のある表面が形成される効果、または体液等に対する防汚性に優れた表面を形成できる効果がより顕著に発現できるために好ましい。
【0135】
また、コーティング層が、水酸基を有する酸性ポリマーおよび水酸基を有する塩基性ポリマーから選ばれた少なくとも1種、ならびにアミド基を有する酸性ポリマーおよびアミド基を有する塩基性ポリマーから選ばれた少なくとも1種を含むことがさらに好ましい。この場合、易滑性のある表面が形成される効果、および体液等に対する防汚性に優れた表面を形成できる効果の両方が発現できるために好ましい。
【0136】
アミド基を有する塩基性ポリマーの例としては、アミノ基を有するポリアミド類、部分加水分解キトサン、塩基性モノマーとアミド基を有するモノマーの共重合体などを挙げることができる。
【0137】
アミド基を有する酸性ポリマーの例としては、カルボキシル基を有するポリアミド類、酸性モノマーとアミド基を有するモノマーの共重合体などを挙げることができる。
【0138】
水酸基を有する塩基性ポリマーの例としては、キチンなどのアミノ多糖類、塩基性モノマーと水酸基を有するモノマーの共重合体などを挙げることができる。
【0139】
水酸基を有する酸性ポリマーの例としては、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、カルボキシメチルセルロース、カルボキシプロピルセルロースなどの酸性基を有する多糖類、酸性モノマーとアミド基を有するモノマーの共重合体などを挙げることができる。
【0140】
アミド基を有するモノマーとしては、重合の容易さの点で(メタ)アクリルアミド基を有するモノマーおよびN−ビニルカルボン酸アミド(環状のものを含む)が好ましい。かかるモノマーの好適な例としては、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルアセトアミド、N−メチル−N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、アクリロイルモルホリン、およびアクリルアミドを挙げることができる。これら中でも易滑性の点で好ましいのは、N−ビニルピロリドンおよびN,N−ジメチルアクリルアミドであり、N,N−ジメチルアクリルアミドが最も好ましい。
【0141】
水酸基を有するモノマーの好適な例としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、グリセロール(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミド、ヒドロキシスチレン、ビニルアルコール(前駆体としてカルボン酸ビニルエステル)を挙げることができる。水酸基を有するモノマーとしては、重合の容易さの点で(メタ)アクリロイル基を有するモノマーが好ましく、(メタ)アクリル酸エステルモノマーはより好ましい。これらの中で、涙液に対する防汚性の点で好ましいのは、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、およびグリセロール(メタ)アクリレートであり、中でもヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが最も好ましい。
【0142】
塩基性モノマーとアミド基を有するモノマーの共重合体として好ましい具体例は、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート/N−ビニルピロリドン共重合体、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート/N,N−ジメチルアクリルアミド共重合体、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド/N−ビニルピロリドン共重合体、およびN,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド/N,N−ジメチルアクリルアミド共重合体である。最も好ましくはN,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド/N,N−ジメチルアクリルアミド共重合体である。
【0143】
酸性モノマーとアミド基を有するモノマーの共重合体として好ましい具体例は、(メタ)アクリル酸/N−ビニルピロリドン共重合体、(メタ)アクリル酸/N,N−ジメチルアクリルアミド共重合体、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸/N−ビニルピロリドン共重合体、および2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸/N,N−ジメチルアクリルアミド共重合体である。最も好ましくは(メタ)アクリル酸/N,N−ジメチルアクリルアミド共重合体である。
【0144】
塩基性モノマーと水酸基を有するモノマーの共重合体として好ましい具体例は、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート/ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート共重合体、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート/グリセロール(メタ)アクリレート共重合体、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド/ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、およびN,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド/グリセロール(メタ)アクリレート共重合体である。最も好ましくはN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート/ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート共重合体である。
【0145】
酸性モノマーとアミド基を有するモノマーの共重合体として好ましい具体例は、(メタ)アクリル酸/ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート共重合体、(メタ)アクリル酸/グリセロール(メタ)アクリレート共重合体、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸/ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート共重合体、および2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸/グリセロール(メタ)アクリレート共重合体である。最も好ましくは(メタ)アクリル酸/ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート共重合体である。
【0146】
上記塩基性モノマーあるいは酸性モノマーと他のモノマーの共重合体を用いる場合、その共重合比率は[塩基性モノマーあるいは酸性モノマーの質量]/[他のモノマーの質量]が、1/99〜99/1が好ましく、2/98〜90/10がより好ましく、10/90〜80/20がさらに好ましい。共重合比率がこの範囲にある場合に、易滑性や涙液に対する防汚性などの機能を発現しやすくなる。
【0147】
コーティング層の種々の特性、たとえば厚さを変えるために、酸性ポリマーおよび塩基性ポリマーの分子量を変えることができる。具体的には、分子量を増すと、一般にコーティング層の厚さは増す。しかし、分子量が大きすぎる場合、粘度増大により取り扱い難さが増す可能性がある。そのため、本発明で使用される酸性ポリマーおよび塩基性ポリマーは、2000〜150000の分子量を有することが好ましい。より好ましくは、分子量5000〜100000であり、さらに好ましくは、75000〜100000である。酸性ポリマーおよび塩基性ポリマーの分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー法(水系溶媒)で測定されるポリエチレングリコール換算の質量平均分子量である。
【0148】
コーティング層の塗布は、たとえばWO99/35520、WO01/57118または米国特許公報第2001−0045676号に記載されているような多数の方法で達成することができる。
【0149】
本発明の低含水性軟質デバイスは、基材表面の少なくとも一部に、酸性ポリマーおよび塩基性ポリマーからなる層(以下、コーティング層と呼ぶ)が形成されているが、該層内の少なくとも一部が架橋されていても良い。また、本発明の低含水性軟質デバイスにおいては、上記基材と上記層との間で少なくとも一部が架橋されていても良い。ここで、架橋とは、ポリマー同士が自らの官能基または架橋剤を用いて橋架け構造を作って結合することである。
【0150】
上記架橋は、基材に少なくとも酸性ポリマーおよび塩基性ポリマーを付着させた状態で放射線を照射することにより生じさせることができる。放射線は、各種のイオン線、電子線、陽電子線、エックス線、γ線、中性子線が好ましく、より好ましくは電子線およびγ線である。最も好ましいのはγ線である。
【0151】
上述のようにコーティング層内やコーティング層と基材との間で架橋を生じさせることにより、低含水性軟質デバイスの表面に良好な濡れ性と易滑性が付与され、優れた装用感を与えることができる。一方で、放射線照射により基材内部にも架橋を生じ、低含水性軟質デバイスが硬くなりすぎる場合がある。その場合は基材中の成分Aを適宜、成分Mに置き換えて共重合することにより、基材内部の過度の架橋を抑制することができる。
【0152】
次に、本発明の低含水性軟質デバイスの製造方法について説明する。本発明の低含水性軟質デバイスは、所望の形状(たとえば、チューブ形状、シート状、フィルム状、球冠形状(レンズ状)、収納容器形状、粒状等)の成型体(基材)の表面に、1種以上の酸性ポリマー溶液と1種以上の塩基性ポリマー溶液をそれぞれ1〜5回、より好ましくはそれぞれ1〜3回、さらに好ましくはそれぞれ1〜2回塗布してコーティング層を形成することにより得られる。酸性ポリマー溶液の塗布工程と塩基性ポリマー溶液の塗布工程の回数は異なっていてもよい。
【0153】
発明者らは、本発明の低含水性軟質デバイスの製造方法において、1種以上の酸性ポリマー溶液の塗布工程および1種以上の塩基性ポリマー溶液の塗布工程が合計2回または3回という極めて少ない回数で優れた濡れ性や易滑性を付与しうることを見出した。これは製造工程の短縮化という観点から、工業的に非常に重要な意味を持つ。
【0154】
なお、発明者らは、本発明の低含水性軟質デバイスにおいて、酸性ポリマー溶液の塗布工程または塩基性溶液の塗布工程のいずれか一方のみを1回施すだけでは、濡れ性や易滑性の発現がほとんど見られないことも同時に確認している。
【0155】
濡れ性、易滑性、および製造工程短縮の観点から、コーティング層の塗布は、下記の構成1〜4から選ばれた構成で施されることが好ましい。下記の表記は、成型体表面に左から順に各塗布工程が施されることを表している。
【0156】
構成1:塩基性ポリマー溶液の塗布/酸性ポリマー溶液の塗布
構成2:酸性ポリマー溶液の塗布/塩基性ポリマー溶液の塗布
構成3:塩基性ポリマー溶液の塗布/酸性ポリマー溶液の塗布/塩基性ポリマー溶液の塗布
構成4:酸性ポリマー溶液の塗布/塩基性ポリマー溶液の塗布/酸性ポリマー溶液の塗布
これらの構成の中でも、構成1と構成4が、得られる低含水性軟質デバイスが特に優れた濡れ性を示すためにより好ましい。
【0157】
酸性ポリマー溶液および塩基性ポリマー溶液を塗布するにあたって、基材の表面は、未処理であっても、処理済みであってもよい。ここで基材の表面が処理済みであるとは、基材の表面を公知の手法によって表面処理または表面改質することをいう。表面処理または表面改質の好適な例としては、プラズマ処理、化学的改質、化学的官能化、およびプラズマコーティングなどである。
【0158】
本発明の低含水性軟質デバイスの製造方法の好ましい態様の1つは、下記工程1〜工程3をこの順に含むものである。
<工程1>
1分子あたり複数の重合性官能基を有し、数平均分子量が6000以上のポリシロキサン化合物である成分A、および、フルオロアルキル基を有する重合性モノマーである成分Bを含む混合物を重合し、所望の形状(たとえば、チューブ形状、シート状、フィルム状、球冠形状、収納容器形状、粒状)の成型体を得る工程。
<工程2>
成型体を塩基性ポリマー溶液に接触させた後、余剰の該塩基性ポリマー溶液を洗浄除去する工程。
<工程3>
成型体を酸性ポリマー溶液に接触させた後、余剰の該酸性ポリマー溶液を洗浄除去する工程。
【0159】
上記のように、成型体を酸性ポリマー溶液および塩基性ポリマー溶液に順次接触させることにより、該成型体上に酸性ポリマーおよび塩基性ポリマーからなる層を形成することができる。その後、余剰のポリマーを十分に洗浄除去することが好ましい。
【0160】
該成型体を酸性ポリマー溶液または塩基性ポリマー溶液に接触させる方法としては、浸漬法(ディップ法)、刷毛塗り法、スプレーコーティング法、スピンコート法、ダイコート法、スキージ法などの種々のコーティング手法を適用できる。
【0161】
溶液の接触を浸漬法で行う場合、浸漬時間は、多くの因子に応じて変化させることができる。酸性ポリマー溶液または塩基性ポリマー溶液への成型体の浸漬は、好ましくは、1〜30分間、より好ましくは2〜20分間、そして最も好ましくは1〜5分間の間行う。
【0162】
酸性ポリマー溶液および塩基性ポリマー溶液の濃度は、酸性ポリマーないし塩基性ポリマーの性質、所望のコーティング層の厚さ、およびその他の多数の因子に応じて変化させることができる。好ましい酸性ポリマーまたは塩基性ポリマーの濃度は、0.001〜10質量%、より好ましくは0.005〜5質量%、そして最も好ましくは0.01〜3質量%である。
【0163】
酸性ポリマー溶液および塩基性ポリマー溶液のpHは、好ましくは2〜5、より好ましくは2.5〜4.5に維持することが好ましい。
【0164】
余剰の酸性ポリマーおよび塩基性ポリマーの洗浄除去は、一般に清浄な水または有機溶媒を用いて、コーティング後の成型体をすすぐことによって行われる。すすぎは該成型体を水または有機溶媒に浸漬したり、水流や有機溶媒流にさらすことで行うことが好ましい。すすぎは、1つの工程で完了させてもよいが、すすぎの工程を複数回行うほうが、効率的であることが認められた。2〜5の工程ですすぎを行うのが好ましい。すすぎ溶液へのそれぞれの浸漬には、1〜3分間を費やすのが好ましい。
【0165】
すすぎ溶液としては純水も好ましいが、コーティング層の密着を高めるために、好ましくは2〜7、より好ましくは2〜5、そしてさらにより好ましくは2.5〜4.5のpHに緩衝された水溶液も好適に用いられる。
【0166】
過剰のすすぎ溶液の乾燥または除去を行う工程を含んでも良い。成型体を大気雰囲気下に単に放置することによって、成型体はある程度乾燥させることができるが、緩やかな空気流を表面に送ることによって、乾燥を亢進することが好ましい。空気流の流速は、乾燥する材料の強度、および材料の機械的固定(fixturing)の関数として調節することができる。成型体を完全に乾燥してしまう必要はない。ここでは、成型体の乾燥よりはむしろ、成型体表面に密着した溶液の液滴を除去することが重要である。したがって、成型体表面上の水または溶液の膜が除去される程度にまで乾燥するだけでよく、その方が工程時間の短縮のつながるために好ましい。
【0167】
酸性ポリマーと塩基性ポリマーとは交互に塗布することが好ましい。交互に塗布することで、一方だけでは得られない優れた濡れ性や易滑性、さらには優れた装用感または使用感を有する低含水性軟質デバイスを得ることができる。
【0168】
コーティング層は、非対称であることができる。ここで「非対称」とは、低含水性軟質デバイスの第一の面と反対側の第二の面とで異なるコーティング層を有することをいう。ここで「異なるコーティング層」とは、第一の面に形成されたコーティング層と第二の面に形成されたコーティング層とが、異なる表面特性または機能性を有することをいう。
【0169】
コーティング層の厚さは、塩化ナトリウムなどの一つまたはそれ以上の塩を酸性ポリマー溶液または塩基性ポリマー溶液に加えることによって、調節することができる。好ましい塩濃度は、0.1〜2.0質量%である。塩の濃度が上昇するにつれて、高分子電解質は、より球状の立体構造をとる。しかし濃度が高くなりすぎると、高分子電解質は、成型体表面に、沈着するとしても良好には沈着しない。より好ましい塩濃度は、0.7〜1.3質量%である。
【0170】
本発明の低含水性軟質デバイスの製造方法の別の好ましい態様の1つは、さらに下記工程4を含むものである。
<工程4>
上記工程1〜3をこの順に含む方法で得た成型体に放射線を照射する工程。
【0171】
放射線の照射は、成型体をコーティング液に浸漬した状態で行っても良いし、成型体をコーティング液から引き出して洗浄した後で行っても良い。また、成型体をコーティング液以外の液体に浸漬した状態で放射線の照射を行うことも好ましく行われる。この場合、照射線がより効率的に作用するために好ましい。この場合、コーティングした成型体を浸漬するために使用する液体のための溶媒は有機系、無機系の各種溶媒が適用可能であり特に制限はない。例を挙げれば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、tert−ブタノール、tert−アミルアルコール、3,7−ジメチル−3−オクタノールなどの各種アルコール系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの各種芳香族炭化水素系溶媒、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、石油エーテル、ケロシン、リグロイン、パラファインなどの各種脂肪族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどの各種ケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、フタル酸ジオクチル、二酢酸エチレングリコールなどの各種エステル系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、トリエチレングリコールジアルキルエーテル、テトラエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールブロック共重合体、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールランダム共重合体などの各種グリコールエーテル系溶媒であり、これらは単独あるいは混合して使用することができる。これらのうち、最も好ましいのは水である。成型体を水系の液体に浸漬した状態で放射線の照射を行う場合、水系の液体としては、純水のほかに、生理食塩水、リン酸系の緩衝液(好ましくはpH7.1〜7.3)、ホウ酸系の緩衝液(好ましくはpH7.1〜7.3)が好適である。
【0172】
成型体を容器に密閉した状態で放射線を照射すれば、成型体の滅菌を同時に行うことができるという利点がある。
【0173】
放射線としては、好ましくはγ線を用いると良い。この場合、照射するγ線の線量は少なすぎると成型体とコーティング層の十分な結合が得られず、多すぎると成型体の物性低下を招くことから、0.1〜100kGyが好ましく、15〜50kGyがより好ましく、20〜40kGyが最も好ましい。これにより、コーティング層内の少なくとも一部およびコーティング層と成型体との間の少なくとも一部が架橋され、コーティング層の耐久性(例えば擦り洗い耐久性)を向上させることができる。
【0174】
本発明の低含水性軟質デバイスは、たとえばチューブ形状に成型された軟質部材を備える。具体的には、本発明の低含水性軟質デバイスとして、生体内に挿入されて使用される輸液チューブ、気体輸送チューブ、排液チューブ、血液回路、種々の部材を被覆する被覆チューブ、カテーテル、ステント、シース、チューブコネクター、アクセスポート、または、内視鏡被覆材等の医療デバイスを挙げることができる。
【0175】
図1は、本発明の低含水性軟質デバイス(医療デバイス)の一例である輸液チューブの一部を示す斜視図である。この輸液チューブ10本体が、上述した低含水性軟質基材によって形成されている。
【0176】
図2は、本発明の低含水性軟質デバイス(医療デバイス)の一例であるカテーテルの先端部を示す斜視図である。このカテーテル20本体が、上述した低含水性軟質基材によって形成されている。
【0177】
図3は、本発明の低含水性軟質デバイス(医療デバイス)の一例であるステントの一部を示す斜視図である。このステント30は、ステント本体31を上述した低含水性軟質基材32によって被覆した構造を有する。
【0178】
図4は、本発明の低含水性軟質デバイス(医療デバイス)の一例である内視鏡被覆材が適用された内視鏡の先端部を示す斜視図である。この内視鏡40は、軟質素材で形成され変形自在な挿入管41と、挿入管の先端部42とを含む。先端部42の内部には、カメラおよび照明を含む光学系43が設けられている。また、先端部42の端面44は、照明光およびその反射光が透過可能な材料(ガラス等)によって形成されている。これらの挿入管41および先端部42の全体は、上述した低含水性軟質基材45によって被覆されている。
【0179】
また、本発明の低含水性軟質デバイスは、たとえばシート状またはフィルム状をなす軟質部材を備える。具体的には、本発明の低含水性軟質デバイスとして、生体表面に貼付して用いられる皮膚用被覆材、創傷被覆材、皮膚用保護材、若しくは皮膚用薬剤担体といった医療デバイスや、細胞培養シート若しくは組織再生用足場材料といったバイオテクノロジー用デバイスや、分離膜(気液分離膜)等の濾過デバイスや、船底等の生物付着防止に用いられる被覆材といった防汚デバイス、土の乾燥を防ぐ保湿シートといった農業/ガーデニングデバイスや、顔用パック(低含水性軟質基材に美容液を含水させたもの)といった美容デバイスや、かつら、靴の中敷、衛生用品といった日用品等を挙げることができる。
【0180】
本発明の低含水性軟質デバイスは、眼用レンズとして用いると、角膜への貼り付き感を感じる装用者が発生する可能性がゼロではないことから、眼用レンズ以外の用途に用いることが好ましい。
【0181】
図5は、本発明の低含水性軟質デバイス(濾過デバイス)の一例である気液分離膜の一部を示す斜視図である。図5に示す気液分離膜50は、液体を収容可能な容器の少なくとも1つの面を形成する。この気液分離膜50が、上述した低含水性軟質基材によって形成されている。このような気液分離膜50を有する容器に、例えば酸素が溶け込んだ液体を注入すると、気液分離膜50は、その内の酸素のみを透過させる。それにより、液体と酸素とを分離することができる。
【0182】
図6は、本発明の低含水性軟質デバイス(農業/ガーデニングデバイス)の一例である保湿シートを示す模式図である。図6に示す保湿シート60が、上述した低含水性軟質基材によって形成されている。この保湿シート60に開口61を設け、土62に植えられた植物63を開口61に通すようにして、保湿シート60を土62に被せる。それにより、土62の乾燥を防ぐことができる。
【0183】
また、本発明の医療デバイスは、たとえば球冠形状をなす部材を備える。具体的には、本発明の低含水性軟質デバイスとして、軟質眼用レンズ(ソフトコンタクトレンズ)、眼内レンズ、人工角膜、角膜インレイ、角膜オンレイ、メガネレンズといった眼用医療デバイスを挙げることができる。
【0184】
また、本発明の低含水性軟質デバイスは、たとえば収納容器形状に成型された軟質部材を備える。具体的には、本発明の低含水性軟質デバイスとして、生体内に導入される薬剤担体、生体内に挿入されて使用されるカフ、または、生体内に挿入される上記排液用チューブと連結した排液バッグといった医療デバイスを挙げることができる。
【0185】
図7は、本発明の低含水性軟質デバイス(医療デバイス)の一例である薬剤担体を示す斜視図である。この薬剤担体70本体が、上述した低含水性軟質基材によって形成されている。
【0186】
また、本発明の低含水性軟質デバイスは、たとえば粒状をなす部材を備える。具体的には、本発明の低含水性軟質デバイスとして、土の表面や土の代わりに配置される粒状保湿材といった農業/ガーデニングデバイスを挙げることができる。
【0187】
図8は、本発明の低含水性軟質デバイス(農業用/ガーデニングデバイス)の一例である粒状保湿材を示す模式図である。図8に示す粒状保湿材80が、上述した低含水性軟質基材によって形成されている。観葉植物81等を鉢植えする際に、含水させた粒状保湿材80を土の代わり配置することにより、根82の乾燥を防ぐと共に、衛生的に植物を栽培することができる。
【0188】
この他にも、本発明の低含水性軟質デバイスは、上記例示した低含水性軟質デバイスに限定されず、様々な形状に成型して用いることができる。
【実施例】
【0189】
以下、本発明の実施例を具体的に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0190】
分析方法および評価方法
(1)分子量
GPC法により、以下の条件でポリスチレン換算の質量平均分子量ならびに数平均分子量を測定した。
【0191】
ポンプ 東ソー DP−8020
検出器 東ソー RI−8010
カラムオーブン 島津 CTO−6A
オートサンプラー 東ソー AS−8010
カラム:東ソー TSKgel GMHHR−M
(内径7.8mm×30cm、粒子径5μm)×2本
カラム温度:35℃
移動相:クロロホルム
流速:1.0mL/分
サンプル濃度:0.4質量%
注入量:100μL
標準サンプル:ポリスチレン(分子量1010〜109万)。
【0192】
(2)伸び
球冠形状(球面の一部を平面で切り取った形状、縁部が形成する円の直径約14mm、厚さ約0.1mm)のサンプルから規定の打抜型を用いて、幅(最小部分)5mm、長さ14mm、厚さ0.2mm程度の試験片を切り出し、該試験片を手で初期の1.5倍(伸び50%)まで引っ張った。5つの試験片を試験し、切断しなかった試験片の数を表記した。
【0193】
(3)耐折り曲げ性
球冠形状(縁部の直径約14mm、厚さ約0.1mm)の試験片を指で二つに折り曲げた後、指で強く揉むようにした。5つの試験片を試験し下記の基準で判定した。
【0194】
A:全ての試験片が破損しない
B:破損しない試験片がある
C:全ての試験片が破損するが、破損の程度は軽度である
D:全ての試験片が破損し、破損の程度がCとEの中間である
E:全ての試験片が粉々に破損する。
【0195】
(4)透明性
球冠形状(縁部の直径約14mm、厚さ約0.1mm)の試験片を目視観察し、下記の基準で透明性を評価した:
A:濁りがなく透明
B:AとCの中間程度の白濁
C:白濁があり半透明
D:CとEの中間程度の白濁
E:白濁し透明性が全くない。
【0196】
(5−1)含水率
球冠形状(縁部の直径約14mm、厚さ約0.1mm)の試験片を使用した。試験片を真空乾燥器で40℃、16時間乾燥し質量(Wd)を測定した。その後、純水に浸漬して40℃恒温槽に一晩以上おいて含水させた後、表面水分をワイピングクロス(日本製紙クレシア製”キムワイプ(登録商標)”)で拭き取って質量(Ww)を測定した。次式にて含水率を求めた。得られた値が1%未満の場合は測定限界以下と判断し、「1%未満」と表記した。
含水率(%)=100×(Ww−Wd)/Ww …(1)。
【0197】
(5−2)含水率
フィルム形状の試験片を用意し、該試験片をホウ酸緩衝液に浸漬して室温で24時間以上おいた後、表面水分をワイピングクロス(日本製紙クレシア製”キムワイプ(登録商標)”)で拭き取って質量(Ww)を測定した。その後、真空乾燥器で40℃、16時間乾燥し、質量(Wd)を測定した。これらの質量Wd、Wwから、上式(1)により含水率を算出した。得られた値が1%未満の場合は測定限界以下と判断し、「1%未満」と表記した。
【0198】
(6)保水性
ホウ酸緩衝液による湿潤状態のフィルム形状の試験片を48時間、温度33.1℃、湿度90%のデシケータ中に保管した後、人指で触って状態観察を行い、下記の基準で評価した:
A:保管前後で試験片の軟らかさおよび乾き具合に差がない
B:48時間保管後、保管前と比較して試験片の硬さが少し増し、乾燥が少しみられる
C:48時間保管後、保管前と比較して試験片の硬さが著しく増し、乾燥感が高い。
【0199】
(7)水濡れ性
球冠形状(縁部の直径約14mm、厚さ約0.1mm)の試験片を、室温でビーカー中のホウ酸緩衝液中に24時間以上浸漬した。試験片とホウ酸緩衝液の入ったビーカーを超音波洗浄器にかけた(1分間)。試験片をホウ酸緩衝液から引き上げ、試験片の縁部が形成する円の直径方向が垂直になるように空中に保持した際の表面の様子を目視観察し、下記の基準で判定した:
A:表面の液膜が20秒以上保持する
B:表面の液膜が10秒以上20秒未満で切れる
C:表面の液膜が5秒以上10秒未満で切れる
D:表面の液膜が1秒以上5秒未満で切れる
E:表面の液膜が瞬時に切れる(1秒未満)。
【0200】
(8)動的接触角測定
動的接触角サンプルとして、フィルム状に成型したサンプルから切り出した5mm×10mm×0.1mm程度のサイズのフィルム状の試験片、または球冠形状(縁部の直径約14mm、厚さ約0.1mm)のサンプルから切り出した幅5mmの短冊状試験片を、ホウ酸緩衝液による湿潤状態で使用し、ホウ酸緩衝液に対する前進時の動的接触角を測定した。測定装置として、株式会社レスカ(RHESCA)製 動的濡れ性試験器 WET-6000を使用し、浸漬速度は0.1mm/sec、浸漬深さは7mmとした。
【0201】
(9)引張弾性率、破断伸度
ホウ酸緩衝液による湿潤状態の球冠形状(縁部の直径約14mm、厚さ約0.1mm)のサンプルから規定の打抜型を用いて幅(最小部分)5mm、長さ14mm、厚さ0.2mmの試験片を切り出した。該試験片を用い、オリエンテック社製のテンシロン(登録商標) RTM−100型を用いて引張試験を実施した。引張速度は100mm/分で、グリップ間の距離(初期)は5mmであった。
【0202】
(10)易滑性
球冠形状(縁部の直径約14mm、厚さ約0.1mm)のサンプルを用いた。易滑性はホウ酸緩衝液による湿潤状態のサンプルを人指で5回擦った時の感応評価で行った:
A:非常に優れた易滑性がある
B:AとCの中間程度の易滑性がある
C:中程度の易滑性がある
D:易滑性がほとんど無い(CとEの中間程度)
E:易滑性が無い。
【0203】
(11)ムチン付着
ムチンとしてCALBIOCHEM社のMucin, Bovine Submaxillary Gland(カタログ番号499643)を使用した。球冠形状(縁部の直径約14mm、厚さ約0.1mm)のサンプルを0.1%濃度のムチン水溶液に20時間37℃の条件で浸漬させた後、BCA(ビシンコニン酸)プロテインアッセイ法によってサンプルに付着したムチンの量を定量した。
【0204】
(12)脂質付着
500mlのビーカーに攪拌子(36mm)を入れ、パルミチン酸メチル1.5gと純水500gを入れた。ウォーターバスの温度を37℃に設定し、前述のビーカーをウォーターバスの中央に置き、マグネチックスターラーで1時間攪拌した。回転速度は600rpmとした。球冠形状(縁部の直径約14mm、厚さ約0.1mm)のサンプルを1枚ずつバスケットに入れ、前述のビーカー内に投入し、そのまま攪拌した。1時間後、攪拌を止め、バスケット内のサンプルを40℃の水道水と家庭用液体洗剤(ライオン製“ママレモン(登録商標)”)でこすり洗いした。洗浄後のサンプルをホウ酸緩衝液(pH7.1〜7.3)の入ったスクリュー管内に入れ、氷浴に1時間浸漬した。スクリュー管を氷浴が取り出した後、にサンプルの白濁を目視観察し、下記の基準でサンプルへのパルミチン酸メチルの付着量を判定した:
A:白濁が無く透明である
B:白濁した部分がわずかにある
C:白濁した部分が相当程度ある
D:大部分が白濁している
E:全体が白濁している。
【0205】
(13)人工涙液浸漬試験
球冠形状(縁部の直径約14mm、厚さ約0.1mm)のサンプルを使用した。人工涙液として、オレイン酸プロピルエステルの代わりにオレイン酸を使用する以外は国際公開第2008/127299号パンフレット、32頁、5〜36行に記載の方法にしたがって調製した涙様液(TLF)緩衝液を使用した。培養用マルチプレート(24ウェル型、材質ポリスチレン、放射線滅菌済み)の1ウェル中に人工涙液2mLを入れ、サンプル1枚を浸漬した。100rpm、37℃で24時間振とうした。その後サンプルを取り出し、リン酸緩衝液(PBS)で軽く洗浄した後、人工涙液2mLを入れ替えたウェル中にサンプルを浸漬した。さらに、100rpm、37℃で24時間振とうした後、PBSで軽く洗浄し、目視でサンプルの白濁度合いを評価することで付着物量を観察した。評価は下記基準で行った:
A:白濁が観察されない
B:白濁した部分がわずかにある(面積で1割未満)
C:白濁した部分が相当程度ある(面積で1割〜5割)
D:大部分(面積で5割〜10割)が白濁しているが裏側が透けて見える
E:全体が濃く白濁しており、裏側が透けて見えにくい。
【0206】
(14)透明性(投影機)
ガラスシャーレにホウ酸緩衝液を入れ、球冠形状(縁部の直径約14mm、厚さ約0.1mm)のサンプルを入れた。万能投影機(ニコン製 MODEL V−10A)を用いてシャーレの中のサンプルに上下から光を当てた際の透明性を目視観察し、下記の基準で評価した:
A:白濁が無く透明である
B:白濁した部分がわずかにある
C:白濁した部分が相当程度ある
D:大部分が白濁している
E:全体が白濁している。
【0207】
(15)着色度
球冠形状(縁部の直径約14mm、厚さ約0.1mm)のサンプルの着色度(青色の濃さ)を目視観察し、下記の基準で評価した:
A:一見して着色が認められる
B:AとCの中間程度の着色度
C:わずかに着色が認められる
D:CとDの中間程度の着色度
E:着色が認められない。
(16)収縮率
フィルム形状の試験片を48時間、温度33.1℃、湿度90%のデシケータ中に保管し、保管前後のサイズ収縮率を算出した。ホウ酸緩衝液に試験片を浸漬し室温で24時間以上おいた後、表面水分をワイピングクロス(日本製紙クレシア製”キムワイプ(登録商標)”)で拭き取って、長方形型の試験片の四辺の長さ(L1〜L4)を測定した。その後、試験片を48時間、温度33.1℃、湿度90%のデシケータ中に保管した。保管後の試験片の四辺の長さ(L5〜L8、数字の小さい順にL1〜L4にそれぞれ対応)を測定した。次式にてまず一辺の収縮率を求めた:
一辺の収縮率(%)=(L1−L5)/L1×100
一辺の収縮率(%)=(L2−L6)/L2×100
一辺の収縮率(%)=(L3−L7)/L3×100
一辺の収縮率(%)=(L4−L8)/L4×100
さらに、これらの一辺の収縮率の平均を試験片の収縮率とした。
【0208】
(17)成型比
サンプル(球冠形状)の直径を、それを成型するのに使用したモールドの空隙部(サンプル形状に対応した形状を有する)の直径で除して求めた。ここで直径とは球冠の縁部が構成する円の直径である。
【0209】
(18)摩擦
図9に示す装置を用いて、サンプルのフィルムと人工皮革の間の動摩擦力を測定した。横方向に引っ張るための釣り糸を取り付けた26mm×26mm×1.4mmのガラス板の片面に人工皮革1(出光テクノファイン株式会社製“サプラーレ(登録商標)”、型番PBZ13001)を貼り付けた。人工皮革は裏面が外側になるように貼り付けた。60mm×60mm×0.25mmのホウ酸緩衝液による湿潤状態のフィルム2を水平なゴム板3に載せ、フィルムの表面をホウ酸緩衝液で十分に濡らした。その上に前述のガラス板を人工皮革がフィルム側になるように載せ、さらにその上に小さい鉄球の入ったプラスチック容器4(鉄球と容器の合計質量50g)を載せた。滑車を介して引張試験機(オリエンテック社製RTM−100)で、ガラス板に取り付けた釣り糸を水平方向に100mm/minの速度で引っ張り、このときに引張試験機にかかる力により、人工皮革(裏面)とフィルムの間の動摩擦力を測定した。
【0210】
(19)煮沸耐久性
球冠形状(縁部の直径約14mm、厚さ約0.1mm)のサンプルを使用した。密閉バイアル瓶中にサンプルを清浄な純水に浸漬した状態で入れた。121℃、30分間、オートクレーブ滅菌を行った後、室温まで冷却した。これを1サイクルとして、5サイクルを繰り返した。その後、上記(6)の水濡れ性評価を行った。
【0211】
(20)擦り洗い耐久性A
球冠形状(縁部の直径約14mm、厚さ約0.1mm)のサンプルを使用した。手のひらの中央に窪みを作ってそこにサンプルを置き、そこに洗浄液(日本アルコン株式会社製、“オプティフリー(登録商標)”)を加えて、もう一方の手の人差し指の腹で表裏10回ずつ擦った後、清浄な“オプティフリー(登録商標)”の入ったスクリュー管に入れ4時間以上静置した。以上の操作を1サイクルとして、15サイクル繰り返した。その後、サンプルを純水で洗浄し、ホウ酸緩衝液中に浸漬した。その後、上記(7)の水濡れ性評価を行った。
【0212】
(21)擦り洗い耐久性B
“オプティフリー(登録商標)”のかわりに“レニュー(登録商標)”(ボシュロム)を使用して、上記(20)と同様に行った。
(参考例1)
成分Aとして両末端にメタクリロイル基を有するポリジメチルシロキサン(DMS−R31、Gelest, Inc.、後述の式(M2)の化合物、質量平均分子量3.0万、数平均分子量1.3万)(20質量部)、成分Bとしてトリフルオロエチルアクリレート(ビスコート3F、大阪有機化学工業株式会社)(80質量部)、イルガキュア(登録商標)1850(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ、2質量部)およびテトラヒドロリナロール(20質量部)を混合し撹拌した。均一で透明なモノマー混合物が得られた。このモノマー混合物を試験管に入れ、タッチミキサーで攪拌しながら減圧20Torr(27hPa)にして脱気を行い、その後アルゴンガスで大気圧に戻した。この操作を3回繰り返した。窒素雰囲気のグローブボックス中で透明樹脂(ポリ4−メチルペンテン−1)製モールドに、上記モノマー混合物を注入し、蛍光ランプ(株式会社東芝、FL−6D、昼光色、6W、4本)を用いて光照射(8000ルクス、20分間)して重合した。重合後に、モールドごと60質量%イソプロピルアルコール水溶液中に浸漬して、モールドから球冠形状の成型体(縁部の直径約14mm、厚さ約0.1mm)を剥離した。得られた成型体を、大過剰量の80質量%イソプロピルアルコール水溶液に60℃、2時間浸漬した。さらに、成型体を大過剰量の50質量%イソプロピルアルコール水溶液に室温、30分間浸漬し、次に大過剰量の25質量%イソプロピルアルコール水溶液に室温、30分間浸漬し、次に大過剰量の純水に室温、30分間浸漬した。最後に、成型体を密閉バイアル瓶中に清浄な純水に浸漬した状態で入れ、121℃、30分間、オートクレーブ滅菌を行った。得られた成型体の含水率は1%未満であった。得られた成型体の評価結果を表1に示した。
(参考例2〜12)
成分Aと成分Bの使用量を表1中に記載した量に変更した以外は参考例1と全く同様にして成型体を得た。得られた成型体の含水率はいずれも1%未満であった。得られた成型体の評価結果を表1に示した。
【0213】
【表1】
【0214】
(参考例13〜19)
成分Aとして両末端にメタクリロイル基を有するポリジメチルシロキサン(DMS−R22、Gelest, Inc.、後述の式(M2)の化合物、質量平均分子量8.3千、数平均分子量7.4千)を表2中に記載した量使用し、成分Bとしてトリフルオロエチルアクリレート(ビスコート3F、大阪有機化学工業株式会社)を表2中に記載した量使用した以外は参考例1と全く同様にして成型体を得た。得られた成型体の含水率は1%未満であった。得られた成型体の評価結果を表2に示した。
【0215】
【表2】
【0216】
(参考例20〜24)
成分Aとして両末端にメタクリロイル基を有するポリジメチルシロキサン(X−22−164C、信越化学工業株式会社、質量平均分子量7.2千、数平均分子量4.8千)(50質量部)を使用し、成分Bとして表3中に記載したフルオロアルキル基を有するモノマー(50質量部)を使用した以外は参考例1と全く同様にして成型体を得た。得られた成型体の評価結果を表3に示した。
【0217】
【表3】
【0218】
ビスコート3FM: トリフルオロエチルメタクリレート(大阪有機化学工業)
ビスコート8F: オクタフルオロペンチルアクリレート(大阪有機化学工業)
ビスコート3F: トリフルオロエチルアクリレート(大阪有機化学工業)
ビスコート17F: ヘプタデカフルオロデシルアクリレート(大阪有機化学工業)
HFIP−M: ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート(セントラル硝子)。
(参考例25〜37)
成分Aとして表4中に記載した両末端にメタクリロイル基を有するポリジメチルシロキサン(後述の式(M2)の化合物)を表4中に記載した量使用し、成分Bは使用せず、成分Cとして表4中に記載したモノマー(50質量部)を表4中に記載した量使用した以外は参考例1と全く同様にして成型体を得た。得られた成型体の評価結果を表4に示した。
【0219】
【表4】
【0220】
合成品1および2(後述の式(M2)の化合物)は、公知の方法により表4に示した分子量のものを合成した。
<合成例>
実施例においてコーティングに供した共重合体の合成例を示す。本合成例において共重合体の分子量は以下に示す条件で測定した。
(GPC測定条件)
装置:島津製作所製 Prominence GPCシステム
ポンプ:LC−20AD
オートサンプラ:SIL−20AHT
カラムオーブン:CTO−20A
検出器:RID−10A
カラム:東ソー社製GMPWXL(内径7.8mm×30cm、粒子径13μm)
溶媒:水/メタノール=1/1(0.1N硝酸リチウム添加)
流速:0.5mL/分
測定時間:30分
サンプル濃度:0.1質量%
注入量:100μL
標準サンプル:Agilent社製ポリエチレンオキシド標準サンプル(0.1kD〜1258kD)
(合成例1)
<CPVPA:N−ビニルピロリドン/アクリル酸(モル比2/1)>
500mL三口フラスコにN−ビニルピロリドン(66.68g、0.60mol)、アクリル酸(21.62g、0.30mol)、ジメチルスルホキシド(353.96g)、重合開始剤VA−061(和光純薬工業株式会社、0.1408g、0.562mmol)、2−メルカプトエタノール(43.8μL、0.63mmol)を加え、三方コック、還流冷却管、温度計、メカニカルスターラを装着した。モノマー濃度は20質量%であった。三口フラスコ内部を真空ポンプで脱気して、アルゴン置換を3回繰り返した後、50℃で0.5時間撹拌し、その後70℃に昇温して、6.5時間撹拌した。重合終了後、重合反応液を室温まで冷却し、水100mLを加えた後、アセトン400mL中に注ぎ入れて一晩静置した。翌日、アセトンをさらに200mL加え静置し、上澄み液をデカンテーションで除いた。得られた固形分をアセトン/水=400mL/100mLで7回洗浄した。固形分を真空乾燥機で60℃、一晩乾燥させた。液体窒素を入れ、スパチュラで破砕した後、真空乾燥機で60℃、3時間乾燥させた。このようにして得られた共重合体の分子量はMn:46kD、Mw:180kD(Mw/Mn=3.9)であった。
(合成例2)
<CPVPA:N−ビニルピロリドン/アクリル酸(モル比1/2)>
500mL三口フラスコにN−ビニルピロリドン(33.34g、0.30mol)、アクリル酸(43.24g、0.60mol)、ジメチルスルホキシド(307.08g)、重合開始剤VA−061(和光純薬工業株式会社、0.1408g、0.562mmol)、2−メルカプトエタノール(43.8μL、0.63mmol)を加え、三方コック、還流冷却管、温度計、メカニカルスターラを装着した。モノマー濃度は20質量%であった。三口フラスコ内部を真空ポンプで脱気して、アルゴン置換を3回繰り返した後、50℃で0.5時間撹拌し、その後70℃に昇温して、6.5時間撹拌した。重合終了後、重合反応液を室温まで冷却し、水100mLを加えた後、アセトン500mL中に注ぎ入れて一晩静置した。次の日、アセトンをさらに200mL加えた後、上澄み液をデカンテーションで除いた。得られた固形分をアセトン/水=700mL/100mLで7回洗浄した。固形分を真空乾燥機で60℃、一晩乾燥させた。液体窒素を入れ、スパチュラで破砕した後、真空乾燥機で60℃、3時間乾燥させた。このようにして得られた共重合体の分子量はMn:65kD、Mw:202kD(Mw/Mn=3.1)であった。
(合成例3)
<CPVPA:N−ビニルピロリドン/アクリル酸(モル比90/10)>
500mL三口フラスコにN−ビニルピロリドン(NVP、90.02g、0.81mol)、アクリル酸(6.49g、0.09mol)、ジメチルスルホキシド(386.8g)、重合開始剤VA−061(和光純薬工業株式会社、0.1408g、0.562mmol)、2−メルカプトエタノール(2−ME、43.8μL、0.63mmol)を加え、三方コック、還流冷却管、温度計、メカニカルスターラを装着した。モノマー濃度は20質量%であった。三口フラスコ内部を真空ポンプで脱気して、アルゴン置換を3回繰り返した後、50℃で0.5時間撹拌し、その後70℃に昇温して、6.5時間撹拌した。重合終了後、重合反応液を室温まで冷却し、水100mLを加えた後、アセトン500mL中に注ぎ入れて一晩静置した。次の日、アセトンをさらに200mL、ヘキサンを100mL加えた後、上澄み液をデカンテーションで除いた。得られた固形分をアセトン/水=500mL/100mLで7回洗浄した。固形分を真空乾燥機で60℃、一晩乾燥させた。液体窒素を入れ、スパチュラで破砕した後、真空乾燥機で60℃、3時間乾燥させた。このようにして得られた共重合体の分子量はMn:35kD、Mw:130kD(Mw/Mn=3.8)であった。
(合成例4)
<CPVPA:N−ビニルピロリドン/アクリル酸(モル比80/20)>
N−ビニルピロリドンを0.72mol、アクリル酸を0.18mol、それぞれ使用し、それ以外は合成例3と同様に行った。このようにして得られた共重合体の分子量はMn:45kD、Mw:193kD(Mw/Mn=4.4)であった。
(合成例5)
<CPDA:N,N−ジメチルアクリルアミド/アクリル酸(モル比2/1)>
500mL三口フラスコにN,N−ジメチルアクリルアミド(59.50g、0.600mol)、アクリル酸(21.62g、0.300mol)、純水(325.20g)、重合開始剤VA−061(和光純薬工業株式会社、0.1408g、0.562mmol)、2−メルカプトエタノール(43.8μL、0.63mmol)を加え、三方コック、還流冷却管、温度計、メカニカルスターラを装着した。モノマー濃度は20質量%であった。三口フラスコ内部を真空ポンプで脱気して、アルゴン置換を3回繰り返した後、50℃で0.5時間撹拌し、その後70℃に昇温して、6.5時間撹拌した。重合終了後、重合反応液をエバポレータで400gまで濃縮し、2−プロパノール/n−ヘキサン=500mL/500mL中に注ぎ入れて静置後、上澄み液をデカンテーションで除いた。得られた固形分を2−プロパノール/n−ヘキサン=250mL/250mLで3回洗浄した。固形分を真空乾燥機で60℃、一晩乾燥させた。液体窒素を入れ、スパチュラで破砕した後、真空乾燥機で60℃、3時間乾燥させた。このようにして得られた共重合体の分子量はMn:55kD、Mw:192kD(Mw/Mn=3.5)であった。
(合成例6)
<CPDA:N,N−ジメチルアクリルアミド/アクリル酸(モル比1/2)>
500mL三口フラスコにN,N−ジメチルアクリルアミド(29.70g、0.300mol)、アクリル酸(43.20g、0.600mol)、純水(292.40g)、重合開始剤VA−061(和光純薬工業株式会社、0.1408g、0.562mmol)、2−メルカプトエタノール(43.8μL、0.63mmol)を加え、三方コック、還流冷却管、温度計、メカニカルスターラを装着した。モノマー濃度は20質量%であった。三口フラスコ内部を真空ポンプで脱気して、アルゴン置換を3回繰り返した後、50℃で0.5時間撹拌し、その後70℃に昇温して、6.5時間撹拌した。重合終了後、重合反応液をエバポレータで350gまで濃縮し、2−プロパノール/n−ヘキサン=500mL/500mL中に注ぎ入れて静置後、上澄み液をデカンテーションで除いた。得られた固形分を2−プロパノール/n−ヘキサン=250mL/250mLで3回洗浄した。固形分を真空乾燥機で60℃、一晩乾燥させた。液体窒素を入れ、スパチュラで破砕した後、真空乾燥機で60℃、3時間乾燥させた。このようにして得られた共重合体の分子量はMn:87kD、Mw:235kD(Mw/Mn=2.7)であった。
(合成例7)
<CPDA:N,N−ジメチルアクリルアミド/アクリル酸(モル比90/10)>
500mL三口フラスコにN,N−ジメチルアクリルアミド(DMA、80.30g、0.810mol)、アクリル酸(6.49g、0.090mol)、純水(347.90g)、重合開始剤VA−061(和光純薬工業株式会社、0.1408g、0.562mmol)、2−メルカプトエタノール(2−ME、43.8μL、0.63mmol)を加え、三方コック、還流冷却管、温度計、メカニカルスターラを装着した。モノマー濃度は20質量%であった。三口フラスコ内部を真空ポンプで脱気して、アルゴン置換を3回繰り返した後、50℃で0.5時間撹拌し、その後70℃に昇温して、6.5時間撹拌した。重合終了後、重合反応液をエバポレータで470gまで濃縮し、2−プロパノール/n−ヘキサン=500mL/500mL中に注ぎ入れて静置後、上澄み液をデカンテーションで除いた。得られた固形分を2−プロパノール/n−ヘキサン=250mL/250mLで5回洗浄した。固形分を真空乾燥機で60℃、一晩乾燥させた。液体窒素を入れ、スパチュラで破砕した後、真空乾燥機で60℃、3時間乾燥させた。このようにして得られた共重合体の分子量はMn:54kD、Mw:162kD(Mw/Mn=3.0)であった。
(合成例8)
<CPDA:N,N−ジメチルアクリルアミド/アクリル酸(モル比95/5)>
三口フラスコにN,N−ジメチルアクリルアミド(DMA、0.19mol)、アクリル酸(AA、0.01mol)、純水、重合開始剤VA−061(和光純薬工業株式会社、0.093mmol)、2−メルカプトエタノール(2−ME、0.07mmol)を加え、三方コック、還流冷却管、温度計、メカニカルスターラを装着した。モノマー濃度は20質量%であった。三口フラスコ内部を真空ポンプで脱気して、アルゴン置換を3回繰り返した後、50℃で0.5時間撹拌し、その後70℃に昇温して、6.5時間撹拌した。重合終了後、重合反応液をエバポレータで350gまで濃縮し、2−プロパノール/n−ヘキサン=200mL/200mL中に注ぎ入れて静置後、上澄み液をデカンテーションで除いた。得られた固形分を2−プロパノール/n−ヘキサン=100mL/100mLで3回洗浄した。固形分を真空乾燥機で60℃、一晩乾燥させた。液体窒素を入れ、スパチュラで破砕した後、真空乾燥機で60℃、3時間乾燥させた。このようにして得られた共重合体の分子量はMn:77kD、Mw:229kDであった。
(合成例9〜16)
<CPDA:N,N−ジメチルアクリルアミド/アクリル酸>
N,N−ジメチルアクリルアミド(DMA)、アクリル酸(AA)、重合開始剤VA−061、および2−メルカプトエタノール(2−ME)の使用量、ならびにモノマー濃度を表5中に記載した値とし、合成例8と同様の手順で行った。
【0221】
【表5】
【0222】
(合成例17)
<CPDEAC:N,N−ジエチルアクリルアミド/アクリロイルモルホリン>
300mL三口フラスコにN,N−ジエチルアクリルアミド(12.71g、0.100mol)、N−アクリロイルモルホリン(14.12g、0.100mol)、t−アミルアルコール(63.20g)、重合開始剤VA−061(和光純薬工業株式会社、0.0310g、0.124mmol)を加え、三方コック、還流冷却管、温度計、メカニカルスターラを装着した。モノマー濃度は30質量%であった。三口フラスコ内部を真空ポンプで脱気して、アルゴン置換を3回繰り返した後、70℃で1時間撹拌し、その後75℃に昇温して、4時間撹拌した。重合終了後、室温まで冷却し、エバポレータで溶媒を留去した後、n−ヘキサン/メタノール=300mL/80mL、130mL/35mL、100mL/20mL、100mL/10mLで各1回洗浄した。固形分を真空乾燥機で60℃、一晩乾燥させた。液体窒素を入れ、スパチュラで破砕した後、真空乾燥機で60℃、3時間乾燥させた。このようにして得られた共重合体の分子量はMn:49kD、Mw:162kD(Mw/Mn=3.3)であった。
(合成例18)
<CPACDM:アクリロイルモルホリン/N,N−ジメチルアクリルアミド/>
300mL三口フラスコにN−アクリロイルモルホリン(14.20g、0.101mol)、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMA、9.92g、0.100mol)、t−アミルアルコール(96.63g)、重合開始剤VA−061(和光純薬工業株式会社、0.0310g、0.124mmol)、2−メルカプトエタノール(86μL、1.23mmol)を加え、三方コック、還流冷却管、温度計、メカニカルスターラを装着した。モノマー濃度は20質量%であった。三口フラスコ内部を真空ポンプで脱気して、アルゴン置換を3回繰り返した後、70℃で1時間撹拌し、その後75℃に昇温して、4時間撹拌した。重合終了後、室温まで冷却し、エバポレータで溶媒を留去した後、n−ヘキサン/メタノール=400mL/30mL、500mL/40mL、130mL/3mL、200mL/7mLで各1回洗浄した。固形分を真空乾燥機で60℃、一晩乾燥させた。液体窒素を入れ、スパチュラで破砕した後、真空乾燥機で60℃、3時間乾燥させた。このようにして得られた共重合体の分子量はMn:4.3kD、Mw:17kD(Mw/Mn=4.1)であった。
(合成例19)
<CPDEDM:N,N−ジエチルアクリルアミド/N,N−ジメチルアクリルアミド>
300mL三口フラスコにN,N−ジエチルアクリルアミド(DEAA、19.22g、0.151mol)、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMA、14.88g、0.150mol)、TAA(104.65g)、重合開始剤VA−061(和光純薬工業株式会社、0.0465g、0.186mmol)を加え、三方コック、還流冷却管、温度計、メカニカルスターラを装着した。モノマー濃度は25質量%であった。三口フラスコ内部を真空ポンプで脱気して、アルゴン置換を3回繰り返した後、70℃で1.5時間撹拌し、その後75℃に昇温して、3.5時間撹拌した。重合終了後、室温まで冷却し、エバポレータで溶媒を留去した後、n−ヘキサン/メタノール=500mL/0mL、250mL/25mL、200mL/30mL、200mL/3mLで各1回洗浄した。固形分を真空乾燥機で60℃、一晩乾燥させた。液体窒素を入れ、スパチュラで破砕した後、真空乾燥機で60℃、3時間乾燥させた。このようにして得られた共重合体の分子量はMn:90kD、Mw:327kD(Mw/Mn=3.7)であった。
(合成例20)
<CPHEDM:N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド/N,N−ジメチルアクリルアミド>
300mL三口フラスコにN−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド(15.04g、0.100mol)、N,N−ジメチルアクリルアミド(9.96g、0.100mol)、t−アミルアルコール(99.80g)、重合開始剤VA−061(和光純薬工業株式会社、0.0310g、0.124mmol)を加え、三方コック、還流冷却管、温度計、メカニカルスターラを装着した。モノマー濃度は20質量%であった。三口フラスコ内部を真空ポンプで脱気して、アルゴン置換を3回繰り返した後、70℃で1時間撹拌し、その後75℃に昇温して、4時間撹拌した。重合終了後、室温まで冷却した後、n−ヘキサン/メタノール=200mL/100mL、200mL/100mL、100mL/40mL、100mL/60mLで各1回洗浄した。固形分を真空乾燥機で60℃、一晩乾燥させた。液体窒素を入れ、スパチュラで破砕した後、真空乾燥機で60℃、3時間乾燥させた。このようにして得られた共重合体の分子量はMn:109kD、Mw:660kD(Mw/Mn=6.1)であった。
(合成例21)
<CPHA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸(モル比3/1)>
300mL三口フラスコに2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA、17.1g、0.15mol)、アクリル酸(AA、3.6g、0.05mol)、ジメチルスルホキシド(48.4g)、重合開始剤VA−061(和光純薬工業株式会社、0.0310g、0.124mmol)を加え、三方コック、還流冷却管、温度計、メカニカルスターラを装着した。モノマー濃度は30質量%であった。三口フラスコ内部を真空ポンプで脱気して、アルゴン置換を3回繰り返した後、60℃で0.5時間撹拌し、その後70℃に昇温して、4.5時間撹拌した。重合終了後、重合反応液を室温まで冷却し、エタノール100mLを加えた後、水500mL中に注ぎ入れて一晩静置した。翌日、上澄み液を捨て、得られた固形分を水500mLでさらに2回洗浄した。固形分を真空乾燥機で60℃、一晩乾燥させた。液体窒素を入れ、スパチュラで破砕した後、真空乾燥機で60℃、3時間乾燥させた。このようにして得られた共重合体の分子量はMn:61kD、Mw:267kD(Mw/Mn=4.4)であった。
(合成例22)
<CPHA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸(モル比3/1)>
300mL三口フラスコに2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA、10.3g、0.09mol)、アクリル酸(AA、2.2g、0.03mol)、ジメチルスルホキシド(49.7g)、重合開始剤VA−061(和光純薬工業株式会社、0.009g、0.038mmol)、2−メルカプトエタノール(2−ME、2.6μL、0.038mmol)を加え、三方コック、還流冷却管、温度計、メカニカルスターラを装着した。モノマー濃度は20質量%であった。三口フラスコ内部を真空ポンプで脱気して、アルゴン置換を3回繰り返した後、60℃で0.5時間撹拌し、その後70℃に昇温して、4.5時間撹拌した。重合終了後、重合反応液を室温まで冷却し、エタノール20mLを加えた後、水500mL中に注ぎ入れて一晩静置した。翌日、上澄み液を捨て、得られた固形分を水500mLでさらに2回洗浄した。固形分を真空乾燥機で60℃、一晩乾燥させた。液体窒素を入れ、スパチュラで破砕した後、真空乾燥機で60℃、3時間乾燥させた。このようにして得られた共重合体の分子量はMn:83kD、Mw:188kD(Mw/Mn=2.3)であった。
(合成例23)
<CPHA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸(モル比3/1)>
300mL三口フラスコに2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA、10.3g、0.09mol)、アクリル酸(AA、2.2g、0.03mol)、ジメチルスルホキシド(49.8g)、重合開始剤VA−061(和光純薬工業株式会社、0.009g、0.038mmol)、2−メルカプトエタノール(2−ME、7.8μL、0.111mmol)を加え、三方コック、還流冷却管、温度計、メカニカルスターラを装着した。モノマー濃度は20質量%であった。三口フラスコ内部を真空ポンプで脱気して、アルゴン置換を3回繰り返した後、60℃で0.5時間撹拌し、その後70℃に昇温して、4.5時間撹拌した。重合終了後、重合反応液を室温まで冷却し、エタノール20mLを加えた後、水500mL中に注ぎ入れて一晩静置した。翌日、上澄み液を捨て、得られた固形分を水500mLでさらに2回洗浄した。固形分を真空乾燥機で60℃、一晩乾燥させた。液体窒素を入れ、スパチュラで破砕した後、真空乾燥機で60℃、3時間乾燥させた。このようにして得られた共重合体の分子量はMn:50kD、Mw:96kD(Mw/Mn=1.9)であった。
(合成例24)
<CPHA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸(モル比1/1)>
200mL三口フラスコに2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA、11.4g、0.10mol)、アクリル酸(AA、7.21g、0.10mol)、ジメチルスルホキシド(74.5g)、重合開始剤VA−061(和光純薬工業株式会社、0.016g、0.062mmol)を加え、三方コック、還流冷却管、温度計、メカニカルスターラを装着した。モノマー濃度は20質量%であった。三口フラスコ内部を真空ポンプで脱気して、アルゴン置換を3回繰り返した後、60℃で0.5時間撹拌し、その後70℃に昇温して、6.5時間撹拌した。重合終了後、重合反応液を室温まで冷却し、水1000mL/エタノール10mL中に注ぎ入れて一晩静置した。翌日、上澄み液を捨て、得られた固形分を水700mLでさらに2回洗浄した。固形分を真空乾燥機で60℃、一晩乾燥させた。液体窒素を入れ、スパチュラで破砕した後、真空乾燥機で60℃、3時間乾燥させた。このようにして得られた共重合体の分子量はMn:79kD、Mw:226kD(Mw/Mn=2.9)であった。
(合成例25)
以下、純水とは逆浸透膜で濾過して精製した水を表す。
<p(DMAA/AA):N,N−ジメチルアクリルアミド/アクリル酸(モル比2/1)>
500mL三口フラスコにN,N−ジメチルアクリルアミド(59.50g、0.600mol)、アクリル酸(21.62g、0.300mol)、純水(325.20g)、重合開始剤VA−061(和光純薬工業株式会社、0.1408g、0.562mmol)、2−メルカプトエタノール(43.8μL、0.63mmol)を加え、三方コック、還流冷却管、温度計、メカニカルスターラを装着した。モノマー濃度は20質量%であった。三口フラスコ内部を真空ポンプで脱気して、アルゴン置換を3回繰り返した後、50℃で0.5時間撹拌し、その後70℃に昇温して、6.5時間撹拌した。重合終了後、重合反応液をエバポレータで400gまで濃縮し、2−プロパノール/n−ヘキサン=500mL/500mL中に注ぎ入れて静置後、上澄み液をデカンテーションで除いた。得られた固形分を2−プロパノール/n−ヘキサン=250mL/250mLで3回洗浄した。固形分を真空乾燥機で60℃、一晩乾燥させた。液体窒素を入れ、スパチュラで破砕した後、真空乾燥機で60℃、3時間乾燥させた。このようにして得られた共重合体の分子量はMn:55kD、Mw:192kD(Mw/Mn=3.5)であった。
(参考例38)
コーティング溶液の調製
<PEI溶液A>
ポリエチレンイミン(P3143、シグマアルドリッチ、分子量75万)を純水に溶解して1質量%水溶液とした。
<PEI溶液B>
ポリエチレンイミン(P−70、167−11951、和光純薬工業株式会社、分子量7万)を純水に溶解して1質量%水溶液とした。
<PAA溶液>
ポリアクリル酸(169−18591、和光純薬工業株式会社、分子量25万)を純水に溶解して1.2質量%水溶液とした。
<PAAM溶液A>
ポリアリルアミン(PAA−15C、日東紡績株式会社、分子量1.5万)を純水に溶解して1質量%水溶液とした。
<PAAM溶液B>
ポリアリルアミン(PAA−25、日東紡績株式会社、分子量2.5万)を純水に溶解して1質量%水溶液とした。
<PAS溶液>
ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体(PAS−H−10L、日東紡績株式会社、分子量20万)を純水に溶解して1質量%水溶液とした。
<共重合体の溶液>
それぞれ、表6に示した合成例で得られた共重合体を、表6に示した溶媒に溶解して表6に示した濃度の溶液とした。
【0223】
【表6】
【0224】
NVP:N−ビニルピロリドン
DMA:N,N−ジメチルアクリルアミド
DEAA:N,N−ジエチルアクリルアミド
ACMO:アクリロイルモルホリン
HEAA:N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
AA:アクリル酸
<その他の溶液>
それぞれ、表7に示した物質を純水に溶解し、表7に示した濃度の水溶液とした。
【0225】
【表7】
【0226】
ヒアルロン酸Na:ヒアルロン酸ナトリウム(CHA)(チッソ株式会社)
キミカアルギンI−3:アルギン酸ナトリウム(株式会社キミカ)
キミロイドHV:アルギン酸プロピレングリコールエステル(株式会社キミカ)
NS−300(カルメロース):カルボキシメチルセルロース(五徳薬品株式会社)
サンローズ(登録商標)(APP−84):カルボキシメチルセルロース
(日本製紙ケミカル株式会社)
コンドロイチン硫酸Na:コンドロイチン硫酸ナトリウム(生化学工業株式会社)
グリロイド6C:タマリンドガム(大日本住友製薬株式会社)
ラボールガムCG−SFT:キサンタンガム(大日本住友製薬株式会社)
参考評価例1〜3)
表8中に示した各参考例で得られた成型体をPEI溶液Aに30分間浸漬した後、3つの純水浴にそれぞれ5分間浸漬した。次に該成型体をPAA溶液に30分間浸漬した後、3つの純水浴にそれぞれ5分間浸漬した。得られた低含水性軟質基材サンプルの濡れ性および動的接触角を評価した。結果を表8に示した。表中の−はその溶液によるコーティング操作が行われていないことを意味する。
参考評価例4〜6)
表8中に示した各参考例で得られた成型体をPAA溶液に30分間浸漬した後、3つの純水浴にそれぞれ5分間浸漬した。次にPEI溶液Aに30分間浸漬した後、3つの純水浴にそれぞれ5分間浸漬した。次に該成型体をPAA溶液に30分間浸漬した後、3つの純水浴にそれぞれ5分間浸漬した。得られた低含水性軟質基材サンプルの濡れ性および動的接触角を評価した。結果を表8に示した。
参考評価例7〜14)
表8中に示した各参考例で得られた成型体を、表8中に示した第1溶液に30分間浸漬した後、3つの純水浴にそれぞれ5分間浸漬した。次に表8中に示した第2溶液に30分間浸漬した後、3つの純水浴にそれぞれ5分間浸漬した。次に該成型体を表8中に示した第3溶液に30分間浸漬した後、3つの純水浴にそれぞれ5分間浸漬した。得られた低含水性軟質基材サンプルの濡れ性および動的接触角を評価した。結果を表8に示した。
(比較例1〜3)
表8中に示した各参考例で得られた成型体の濡れ性および動的接触角を評価した。結果を表8に示した。表中の−はその溶液によるコーティング操作が行われていないことを意味する。
(比較例4〜6)
表8中に示した各参考例で得られた成型体をPEI溶液Aに30分間浸漬した後、該成型体を3つの純水浴にそれぞれ5分間浸漬した。得られた低含水性軟質基材サンプルの濡れ性および動的接触角を評価した。結果を表8に示した。表中の−はその溶液によるコーティング操作が行われていないことを意味する。
(比較例7〜9)
表8中に示した各参考例で得られた成型体をPAA溶液に30分間浸漬した後、3つの純水浴にそれぞれ5分間浸漬した。得られた低含水性軟質基材サンプルの濡れ性および動的接触角を評価した。結果を表8に示した。表中の−はその溶液によるコーティング操作が行われていないことを意味する。
【0227】
【表8】
【0228】
(参考例39〜42)
成分Aとして両末端にメタクリロイル基を有するポリジメチルシロキサン(DMS−R31、Gelest, Inc.、後述の式(M2)の化合物、数平均分子量1.3万)(50質量部)、を使用し、成分Bとして表9中に記載したフルオロアルキル基を有するモノマー(50質量部)を使用した以外は参考例1と全く同様にして低含水性軟質基材サンプルを得た。得られた低含水性軟質基材サンプルの評価結果を表9に示した。
【0229】
【表9】
【0230】
ビスコート3FM:トリフルオロエチルメタクリレート(大阪有機化学工業株式会社)
ビスコート8F :オクタフルオロペンチルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社)
ビスコート17F:ヘプタデカフルオロデシルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社)
HFIP−M :ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート(セントラル硝子株式会社)
(参考例43)
成分Aとして両末端にメタクリロイル基を有するポリジメチルシロキサン(DMS−R31、Gelest, Inc.、質量平均分子量3.0万、後述の式(M2)の化合物、数平均分子量1.3万)(50質量部)、成分Bとしてトリフルオロエチルアクリレート(ビスコート3F、大阪有機化学工業株式会社)(46質量部)、成分Cとしてメチルメタクリレート(3質量部)、成分Cとして重合性基を有する紫外線吸収剤(RUVA−93、式(M1)で表される化合物、大塚化学株式会社)(1質量部)、重合開始剤“イルガキュア(登録商標)”1850(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ、2質量部)およびt−アミルアルコール(10質量部)を混合し撹拌した。均一で透明なモノマー混合物が得られた。このモノマー混合物を試験管に入れ、タッチミキサーで攪拌しながら減圧20Torr(27hPa)にして脱気を行い、その後アルゴンガスで大気圧に戻した。この操作を3回繰り返した。窒素雰囲気のグローブボックス中で透明樹脂(ポリ4−メチルペンテン−1)製のモールドにモノマー混合物を注入し、蛍光ランプ(株式会社東芝、FL−6D、昼光色、6W、4本)を用いて光照射(8000ルクス、20分間)して重合した。重合後に、モールドごと60質量%イソプロピルアルコール水溶液中に浸漬して、モールドから球冠形状の成型体(縁部の直径約14mm、厚さ約0.1mm)を剥離した。得られた成型体を、大過剰量の80質量%イソプロピルアルコール水溶液に60℃、2時間浸漬した。さらに、成型体を、大過剰量の50質量%イソプロピルアルコール水溶液に室温、30分間浸漬し、次に大過剰量の25質量%イソプロピルアルコール水溶液に室温、30分間浸漬し、次に大過剰量の純水に室温、30分間浸漬した。最後に、成型体を密閉バイアル瓶中に清浄な純水に浸漬した状態で入れ、121℃、30分間、オートクレーブ滅菌を行った。得られた成型体の含水率は1%未満であった。また、モールドとして2枚のガラス板とガスケットを使用して同様の操作を行い、60mm×60mm×0.25mmのフィルム状サンプルを得た。
【0231】
【化6】
【0232】
(参考例44〜47、および70〜75)
表10に示した成分を用い、参考例43と同様に行って、球冠形状の成型体、および60mm×60mm×0.25mmのフィルム状サンプルを得た。なお、表中の−はその成分を用いていないことを意味する。
【0233】
【表10】
【0234】
DMS−R31:式(M2)の化合物 Mw 30kD,Mn 13kD、
Gelest, Inc.
FM−7726:式(M2)の化合物 Mw 29kD,Mn 26kD、
チッソ株式会社
FM−7726L:式(M2)の化合物 Mw 31kD,Mn 20kD、
チッソ株式会社
X−22−164C:式(M2)の化合物 Mw 7.2kD,Mn 4.8kD、 信越化学工業株式会社
DMS−R22:式(M2)の化合物 Mw 8.3kD,Mn 7.4kD、
Gelest, Inc.
式(M2)において、nは繰返し単位の数を表し、化合物の分子量によって決まる。
【0235】
【化7】
【0236】
ビスコート3F:トリフルオロエチルアクリレート
MMA:メチルメタクリレート
EHMA:2−エチルヘキシルアクリレート
DMAA:N,N−ジメチルアクリルアミド
DMAEA:N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート
DMAPAA:N,N−ジエチルアミノプロピルアクリルアミド
DEAEMA:N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート
TAA:t−アミルアルコール
AA:アクリル酸
MAA:メタクリル酸
(参考例48)
成分Aとして両末端にメタクリロイル基を有するポリジメチルシロキサン(FM7726、チッソ株式会社、前述の式(M2)の化合物、質量平均分子量29kD、数平均分子量26kD)(49質量部)、成分Bとしてトリフルオロエチルアクリレート(ビスコート3F、大阪有機化学工業株式会社)(45質量部)、成分Cとして2−エチルヘキシルアクリレート(5質量部)、成分CとしてN,N−ジメチルアクリルアミド(1質量部)、成分Cとして重合性基を有する紫外線吸収剤(RUVA−93、大塚化学株式会社)(1質量部)、成分Cとして重合性基を有する着色剤[(Uniblue A、シグマアルドリッチ、式(M3)](0.1質量部)、重合開始剤“イルガキュア(登録商標)”819(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ、0.75質量部)およびt−アミルアルコール(10質量部)を混合し撹拌した。メンブレンフィルター(0.45μm)でろ過して不溶分を除いてモノマー混合物を得た。このモノマー混合物を試験管に入れ、タッチミキサーで攪拌しながら減圧20Torr(27hPa)にして脱気を行い、その後アルゴンガスで大気圧に戻した。この操作を3回繰り返した。窒素雰囲気のグローブボックス中で透明樹脂(ポリ4−メチルペンテン−1)製のモールドにモノマー混合物を注入し、蛍光ランプ(株式会社東芝、FL−6D、昼光色、6W、4本)を用いて光照射(8000ルクス、20分間)して重合した。重合後に、モールドごと60質量%イソプロピルアルコール水溶液中に浸漬して、モールドから球冠形状の成型体(縁部の直径約14mm、厚さ約0.1mm)を剥離した。得られた成型体を、大過剰量の80質量%イソプロピルアルコール水溶液に60℃、2時間浸漬した。さらに、成型体を大過剰量の50質量%イソプロピルアルコール水溶液に室温、30分間浸漬し、次に大過剰量の25質量%イソプロピルアルコール水溶液に室温、30分間浸漬し、次に大過剰量の純水に室温、30分間浸漬した。最後に、成型体を密閉バイアル瓶中に清浄な純水に浸漬した状態で入れ、121℃、30分間、オートクレーブ滅菌を行た。得られた成型体の含水率は1%未満であった。また、モールドとして2枚のガラス板とガスケットを使用して同様の操作を行い、60mm×60mm×0.25mmのフィルム状サンプルを得た。
【0237】
【化8】
【0238】
(参考例49〜69)
表10に示した成分を用い、参考例48と同様に行って、球冠形状の成型体、および60mm×60mm×0.25mmのフィルム状サンプルを得た。なお、表中の−はその成分を用いていないことを意味する。
(実施例および参考評価例15〜183(実施例として17〜28、53、55〜59、61〜67、93、95〜99、104、106〜109、149〜183、参考評価例として15、16、29〜52、54、60、68〜92、94、100〜103、105、110〜148)、比較例10〜30、および対照例1と2)
表11〜16に示した各参考例で得られた成型体または市販コンタクトレンズを、表11〜16に示した第1溶液に30分間浸漬した後、3つの純水浴にそれぞれ5分間浸漬した。次に、該成型体または市販コンタクトレンズを表11〜16中に示した第2溶液に30分間浸漬した後、3つの純水浴にそれぞれ5分間浸漬した。以上の操作を第3〜第5溶液についても同様に繰り返した。得られた低含水性軟質基材の評価を実施した。結果を表11〜16に示した。なお、表中の−はその溶液によるコーティング操作が行われていないこと、またはその評価が行われていないことを意味する。
【0239】
なお、対照例には、軟質基材であるシリコーンハイドロゲルによって形成された市販のソフトコンタクトレンズを用いた。
【0240】
【表11-1】
【0241】
【表11-2】
【0242】
SHG−A:市販シリコーンハイドロゲルソフトコンタクトレンズA
SHG−B:市販シリコーンハイドロゲルソフトコンタクトレンズB
【0243】
【表12】
【0244】
【表13】
【0245】
*1:CPHA溶液EとCPDA溶液Aの1:1(質量)混合物
*2:CPHA溶液AとCPDA溶液Aの1:1(質量)混合物
【0246】
【表14】
【0247】
【表15】
【0248】
【表16】
【0249】
参考評価例184)
<酸素透過率測定>
実施例62と同様にして作成したフィルム(厚み0.19mm)を20mm×20mmの大きさに切ってサンプルとした。酸素透過率測定装置OX−TRAN2/21形(株式会社日立ハイテクノロジーズ)を用いて酸素透過率測定を行った。キャリアガスとして窒素98%/水素2%の混合ガスを用い、測定ガスとして窒素79.3%/酸素20.7%の混合ガスを用いた。またガスの加湿は行わなかった。該サンプルの酸素透過率は390×10−11(cm/sec)(mLO)/(mL・hPa)であった。なお、同一装置で同一条件で測定した株式会社メニコン製ガス透過性ハードコンタクトレンズ“メニコンZ(登録商標)”の酸素透過率は150×10−11(cm/sec)(mLO)/(mL・hPa)、東レ株式会社製ガス透過性ハードコンタクトレンズ“ブレスオーハード(登録商標)”の酸素透過率は120×10−11(cm/sec)(mLO)/(mL・hPa)であった。
(参考例81)
着色剤の作製
50mLスクリュー瓶に20g純水を入れた。UniBlue A(品番298409、シグマアルドリッチ)を0.5g加え、37℃のインキュベータ中で溶解させた。溶解後、1N塩酸を4g添加し、pH試験紙でpH約1〜2であることを確認した。酢酸エチルを24g添加し、軽く攪拌した。混合物を100mLナスララスコに移し、静置した。
UniBlue Aが酢酸エチル側に移るので下層の水層を捨てた。酢酸エチル層を100mLナスフラスコに移し、20℃のエバポレータで蒸発させた。その後、真空乾燥器で40℃、16時間乾燥させ、酸型UniBlue Aを得た〔推定構造式(M4)〕。
【0250】
【化9】
【0251】
(参考例82)
コーティング溶液の調製
<PAA溶液>
ポリアクリル酸(169−18591、和光純薬工業株式会社、分子量25万)を純水に溶解して1.2質量%水溶液とした。
<PEI溶液>
ポリエチレンイミン(P3143、シグマアルドリッチ、分子量75万)を純水に溶解して1質量%水溶液とした。
<p(DMAA/AA)溶液>
発明者らがラボで合成した合成例25のN,N−ジメチルアクリルアミド/アクリル酸共重合体を純水に溶解して1質量%水溶液とした。
<PAMPS溶液>
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ポリマー(シグマアルドリッチ、分子量200万、15質量%水溶液)を純水に溶解して1.5質量%水溶液とした。
(参考例83)
成分Aとして両末端にメタクリロイル基を有するポリジメチルシロキサン(FM7726、JNC、式(M5)の化合物、質量平均分子量29kD、数平均分子量26kD)(50質量部)、成分Bとしてトリフルオロエチルアクリレート(ビスコート3F、大阪有機化学工業株式会社)(45質量部)、成分Cとして2−エチルヘキシルアクリレート(3質量部)、成分Cとしてジメチルアミノエチルアクリレート(1質量部)、成分Cとして重合性基を有する紫外線吸収剤(RUVA−93、大塚化学株式会社)(1質量部)、成分Cとして重合性基を有する参考例81の着色剤、酸型UniBlue A(0.04質量部)、重合開始剤“イルガキュア(登録商標)”819(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ、0.75質量部)およびt−アミルアルコール(10質量部)を混合し撹拌した。メンブレンフィルター(0.45μm)でろ過して不溶分を除いてモノマー混合物を得た。このモノマー混合物をアルゴン雰囲気下で脱気した。窒素雰囲気下のグローブボックス中で、10cm角、厚さ3mmのガラス板2枚(うち1枚には剥離しやすいようにアルミシールを貼付)の間に、厚さ100μmのパラフィルムの中央部を切り抜いたものを2枚スペーサーとして挟み込んだものの空隙にモノマー混合物を充填し、光照射(株式会社東芝FL6D、1.01mW/cm、20分間)して硬化させることによりフィルム状の成型体を得た。
【0252】
【化10】
【0253】
得られた成型体(フィルム)を、60質量%イソプロパノール(IPA)水溶液に60℃で30分間浸漬しガラス板から剥離後、さらに80質量%IPA水溶液に60℃、2時間浸漬して残存モノマーなどの不純物を抽出し、50質量%IPA水溶液、25質量%IPA水溶液と段階的にIPA濃度を下げた液におよそ30分ずつ浸漬し、最後に2時間以上水に浸漬して水和した。
(参考例84)
式(M6)で表されるシリコーンモノマー(13.4質量部)、N,N−ジメチルアクリルアミド(37.0質量部)、式(M7)で表されるシリコーンモノマー(36.6質量部)、光開始剤イルガキュア1850(1.26質量部)、紫外線吸収剤(RUVA−93、大塚化学株式会社)(1.26質量部)メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル(9.2質量部)、トリエチレングリコールジメタクリレート(1.26質量部)、式(M8)で表されるUniBlue A(0.02質量部)、テトラヒドロリナロール(23.9質量部)を混合し撹拌した。その後、参考例83と同様の操作を行い、フィルムを作製した。
【0254】
【化11】
【0255】
【化12】
【0256】
【化13】
【0257】
(参考例85)
式(M6)で表されるシリコーンモノマー(13.4質量部)、N,N−ジメチルアクリルアミド(28.0質量部)、式(M7)で表されるシリコーンモノマー(36.6質量部)、ポリビニルピロリドン(Mw約50万、12.0質量部)、光開始剤イルガキュア1850(1.0質量部)、紫外線吸収剤(RUVA−93、大塚化学株式会社)(1.0質量部)メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル(7.0質量部)、トリエチレングリコールジメタクリレート(1.0質量部)、式(M8)で表される染料モノマー(0.02質量部)、テトラヒドロリナロール(32.0質量部)を混合し撹拌した。その後、参考例83と同様の操作を行い、フィルムを作製した。
(参考例86)
式(M6)で表されるシリコーンモノマー(13.4質量部)、N,N−ジメチルアクリルアミド(22.2質量部)、式(M7)で表されるシリコーンモノマー(36.6質量部)、ポリビニルピロリドン(Mw約50万、20.0質量部)、光開始剤イルガキュア1850(0.76質量部)、紫外線吸収剤(RUVA−93、大塚化学株式会社)(0.76質量部)メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル(5.5質量部)、トリエチレングリコールジメタクリレート(0.76質量部)、式(M8)で表される染料モノマー(0.02質量部)、テトラヒドロリナロール(50.0質量部)を混合し撹拌した。その後、参考例83と同様の操作を行い、フィルムを作製した。
(参考例87)
参考例85のポリビニルピロリドンの代わりにポリジメチルアクリルアミド(Mw約50万、12.0質量部)を用いて、参考例83と同様の操作を行いフィルムを作製した。
(参考例88)
参考例86のポリビニルピロリドンの代わりにポリジメチルアクリルアミド(Mw約50万、20.0質量部)を用いて、参考例83と同様の操作を行いフィルムを作製した。
<保水性の評価>
(実施例191)
参考例83で得られたフィルムをPAA溶液に室温で30分間浸漬した後、ビーカー中の純水で軽く濯ぎ洗いした。フィルムを新しい純水が入ったビーカーに移し、超音波洗浄器にかけた(30秒間)。さらに、新しい純水が入ったビーカー中で軽く濯ぎ洗いした。次いで、PEI溶液、p(DMAA/AA)溶液の順に同様の操作を繰り返した。コーティング操作を終えた後、コーティングしたフィルムをUMサンプル瓶中のホウ酸緩衝液(pH7.1〜7.3)中に浸漬した状態で入れ、121℃で30分間、オートクレーブ滅菌を行った。滅菌後のフィルムを48時間、温度33.1℃、湿度90%のデシケータ中に保管して保水性の評価を行った。フィルムは、48時間保管後も、保水性と軟らかさがあった。評価結果を表17に示した。
【0258】
【表17】
【0259】
参考評価例192)
参考例83で得られたフィルムをPAA溶液に室温で30分間浸漬した後、ビーカー中の純水で軽く濯ぎ洗いした。フィルムを新しい純水が入ったビーカーに移し、超音波洗浄器にかけた(30秒間)。さらに、新しい純水が入ったビーカー中で軽く濯ぎ洗いした。次いで、PEI溶液、PAMPS溶液の順に同様の操作を繰り返した。コーティング操作を終えた後、コーティングしたフィルムをUMサンプル瓶中のホウ酸緩衝液(pH7.1〜7.3)中に浸漬した状態で入れ、121℃で30分間、オートクレーブ滅菌を行った。滅菌後のフィルムを48時間、温度33.1℃、湿度90%のデシケータ中に保管して保水性の評価を行った。フィルムは、48時間保管後も保水性と軟らかさがあった。評価結果を表17に示した。
(比較例31〜35)
表17中に示した各参考例で得られたフィルムをUMサンプル瓶中のホウ酸緩衝液(pH7.1〜7.3)中に浸漬した状態で入れ、121℃で30分間、オートクレーブ滅菌を行った。滅菌後のフィルムを48時間、温度33.1℃、湿度90%のデシケータ中に保管して保水性の評価を行った。48時間保管後のフィルムを皮膚にのせたところ、乾燥感があり硬かった。評価結果を表17に示した。

【産業上の利用可能性】
【0260】
本発明は低含水性軟質デバイスに関するものであり、医療デバイス、バイオテクノロジー用デバイス、農業/ガーデニングデバイス、濾過デバイス、防汚デバイス、美容デバイス、その他日用品において有用である。
【符号の説明】
【0261】
1 人工皮革
2 サンプルフィルム
3 ゴム板
4 鉄球の入ったプラスチック容器
10 輸液チューブ
20 カテーテル
30 ステント
31 ステント本体
32 低含水性軟質基材
40 内視鏡
41 挿入管
42 先端部
43 光学系
44 端面
45 低含水性軟質基材
50 気液分離膜
60 保湿シート
61 開口
62 土
63 植物
70 薬剤担体
80 粒状保湿材
81 観葉植物
82 根
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9