(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
異物噛み込みを正確に検知できる程度に、バルブの種類、サイズ及びアクチュエータのサイズ等を考慮してバルブの開閉動作時に、分割した分割区間を設定し、バルブの動作量予測値である閾値テーブルをデータメモリに予め記憶させ、データメモリに予め記憶させたバルブの閾値テーブルに基づき各分割区間でのバルブの動作量の閾値を求め、一方、前記分割区間毎におけるバルブの動作量を測定すると共に、前記バルブの動作量と前記閾値とを比較し、その比較結果から前記分割区間毎に異物の噛み込みの異常を検知することを特徴とする噛み込み検知機能付きバルブ用電動アクチュエータ。
異常を検知した時には、一旦モータの電源を切ってバルブの動作を停止させた後、所定の範囲で逆方向に動作し、次に正方向に動作しながら前記分割区間毎にバルブの動作量を測定して前記閾値と逐次比較する揺動運転を行い、異常が解消された時は正方向への動作を続け、異常が解消されない時は揺動運転を繰り返し、前記揺動運転を予め設定した回数行っても異常が解消されない時にはエラーと判定し、装置全体の動作を停止するようにした請求項1に記載の噛み込み検知機能付きバルブ用電動アクチュエータ。
バルブの開閉動作時に、前記分割区間毎にモータを断続通電運転し、モータへの通電がOFFの時にその区間内でのバルブの動作量を測定して異物の噛み込みの異常を検知するようにした請求項1又は2に記載の噛み込み検知機能付きバルブ用電動アクチュエータ。
異常を検知した時には、前記分割区間の整数倍の時間だけモータを逆方向に動作させた後、前記分割区間の整数倍の時間だけモータを正方向に動作させる揺動運転を行う請求項3に記載の噛み込み検知機能付きバルブ用電動アクチュエータ。
【背景技術】
【0002】
配管系統を流れる流体中に異物が含まれていると、配管系統に設けられたバルブを開閉する際に流体内に混在していた異物がバルブ内の流体通過部分で弁体と噛み込みを起こすことがある。バルブ内でこのような異物の噛み込みが発生すると、弁体が開閉動作の途中で停止してバルブを所望の開閉状態にすることができなくなって流量の制御ができなくなるだけでなく、弁体を駆動するモータのコイルに過電流が流れ、コイルが焼損する原因となることがある。
【0003】
最近注目されている雨水を利用した中水道では、水源である雨水中のゴミを完全に除去することができないので、その配管系に使用されるバルブではこのような異物噛み込みが発生する蓋然性が高く、その対策を講じる必要がある。
【0004】
従来から、種々の方式により噛み込みを検知するとともに、噛み込んだ異物を自動的に配管系の流れの方向に排除する噛み込み防止機能を備えたバルブ用電動アクチュエータに関する技術が提案されている。
【0005】
このような電動アクチュエータとしては、特許文献1に、弁体に異物が噛み込んで、バルブの規定開閉時間以上タイマ及びモータに通電されると逆転タイマが作動し、一定時間逆転動作が行われるバイパス回路が形成され、モータは逆転動作を行い次にまた一定時間正転動作を行う反復動作を繰り返し、正転、逆転の反復動作により異物が排出された後は、開又は閉の予め定められた所定の位置で停止する異物噛み込み防止機構付電動バルブが提案されている。
【0006】
また、特許文献2には、アクチュエータの出力軸に取り付けられた弁体が異物を噛み込んだ際に、出力軸に発生する過大トルクを出力軸にモータの回転を伝えるウォーム軸が変位することにより検出し、一旦電動弁を逆動作させることにより弁体内部の異物を流体の圧力により排除する電動弁の自動制御方式が提案されている。
【0007】
さらに特許文献3には、モータ電流検出手段により閉弁中のモータに流れる電流を検出し、異物の噛み込みによる過電流(ロック電流)を検知すると、モータを逆回転して弁体を開弁方向へ一定角度戻した後、開放された異物が弁体から外れるのに十分な時間が経過するとモータを正転して閉弁方向に動かし、再度過負荷による過電流を検出すると、モータを逆転して弁体を開弁方向へ一定角度戻した後、モータを正転して閉弁方向へ動かす排出動作を複数回繰り返す電動弁が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、この特許文献1に記載された電動バルブでは、弁体の開閉動作中に異物の噛み込みが発生しても、既定開閉時間が経過するまではモータへの通電が継続されて噛み込み状態が続くため、バルブの弁体、アクチュエータを破損するおそれが解消されていない。また、異物が排出されるまでの間、モータの正転、逆転の反復動作が繰り返されるので、この動作により異物の排出ができない場合には、長時間に亘って噛み込み状態が継続し、バルブの弁体、アクチュエータを破損するおそれがあるだけでなく、流体の制御を正常に行えなくなる可能性もある。
【0010】
特許文献2に記載された電動弁の自動制御方式では、運転回数が増すとともにウォームギア、ウォームホイールが摩耗し、ウォームギアの軸方向のガタが大きくなることが知られており、このガタにより検出トルクにヒステリシスが発生し、過大トルクの発生時に正確に検出ができない問題点がある。また、全開側と全閉側のそれぞれの方向にトルクを検出する場合、検出部の構造が複雑になるという問題もある。
【0011】
特許文献3に記載された電動弁をバラフライ弁の開閉に使用した場合には、特に、ジスクが閉動作する際の全閉近傍閉動作(ジスクのシート乗り上げ時)で生じる急激なトルク上昇を噛み込みの発生と誤検知し、誤作動するおそれがある。
【0012】
特許文献4に記載された電動バルブは、タイマ手段の計時が予めメモリ手段に記憶させた所要時間に達すると、センサ手段で検出したバルブの移動量と、メモリ手段に記憶させた所要時間にバルブが移動する所定の移動量とを比較し、その比較した結果に基づいて異常を検知するとともに、所要時間に達した以降は、メモリ手段に記憶する所要時間とその所要時間にバルブが移動する所定の移動量とから算出される単位時間当りの移動量に、タイマ手段の計時を掛け合わせた移動量と、センサ手段で検出する移動量とを逐次比較し、その比較した結果に基づいて異常を検知している。
このため、モータの作動時間がメモリ手段に記憶させた所要時間に達した以降は、バルブが目標位置に達するのを待つことなく、異常の発生を直ちに検知することができるが、同文献には、この所要時間はバルブが全作動範囲の1/4を移動するのに要する時間を算出して基準の予測時間とするか、もしくは、この予測時間の下限値を3秒、上限値を5秒に設定すると記載されており、モータの作動時間がこの予測時間に達する以前に噛み込み等の異常が発生した場合には、最短でも3秒間は異常の発生を検知することができず、噛み込みによる過度の負荷によりモータやバルブが損傷する危険がある。
また、メモリ手段に記憶させた所要時間に達した以降は、メモリ手段に記憶する所要時間とその所要時間にバルブが移動する所定の移動量とから算出される単位時間当りの移動量に、タイマ手段の計時を掛け合わせた移動量と、センサ手段で検出する移動量とを逐次比較しているが、例えば、バタフライ弁のように、ジスクがシートに乗り上げた全閉位置近傍での動作では弁体の動作が遅くなる特性を有するバルブにおいては、算出される単位時間当たりの移動量が、全閉位置近傍とそれ以外の位置とでは大きく異なるので、その結果、所要時間にバルブが移動する所定の移動量を計測する際のバルブ開度位置や動作方向の違いにより、単位時間当りの移動量にタイマ手段の計時を掛け合わせた求めた移動量の判断基準としての妥当性が大きく異なることとなる。
【0013】
本発明は、上記の課題点を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、バルブの動作方向にかかわらず、流体の圧力や流速等の変動やバルブの特性による一時的なモータのトルク上昇を噛み込発生と誤検知することなく、異物の噛み込みを正確、かつモータの作動開始直後であっても直ちに検知することができるとともに、異物の噛み込みを検知した場合には異物の排出動作を自動的に行い、異物の排出ができない場合には作動を停止してバルブ、アクチュエータにダメージを与えることを防止し、外部に噛み込み発生の警報を発することができ、かつ所要のバルブと簡単に組み合わせて使用することができる噛み込み検知機能付きバルブ用電動アクチュエータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、
異物噛み込みを正確に検知できる程度に、バルブの種類、サイズ及びアクチュエータのサイズ等を考慮してバルブの開閉動作時に
、分割した分割区間を設
定し、バルブの動作量予測値である閾値テーブルをデータメモリに予め記憶させ、データメモリに予め記憶させたバルブの閾値テーブルに基づき各分割区間でのバルブの動作量の閾値を求め、一方、前記分割区間毎におけるバルブの動作量を測定すると共に、前記バルブの動作量と前記閾値とを比較し、その比較結果から前記分割区間毎に異物の噛み込
みの異常を検知することを特徴とする噛み込み検知機能付きバルブ用電動アクチュエータである。
【0015】
請求項2に係る発明は、異常を検知した時には、一旦モータの電源を切ってバルブの動作を停止させた後、所定の範囲で逆方向に動作し、次に正方向に動作しながら前記分割区間毎にバルブの動作量を測定して前記閾値と逐次比較する
揺動運
転を行い、異常が解消された時は正方向への動作を続け、異常が解消されない時は揺動運転を繰り返し、前記揺動運転を予め設定した回数行っても異常が解消されない時にはエラーと判定し、装置全体の動作を停止するようにした噛み込み検知機能付きバルブ用電動アクチュエータである。
【0016】
請求項3に係る発明は、バルブの開閉動作時に、前記分割区間毎にモータを断続通電運転し、モータへの通電がOFFの時にその区間内でのバルブの動作量を測定して異物の噛み込
みの異常を検知す
る噛み込み検知機能付きバルブ用電動アクチュエータである。
【0017】
請求項4に係る発明は、異常を検知した時には、前記分割区間の整数倍の時間だけモータを逆方向に動作させた後、前記分割区間の整数倍の時間だけモータを正方向に動作させる揺動運転を行
う噛み込み検知機能付きバルブ用電動アクチュエータである。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る発明によると、バルブの開閉動作時に、全閉近傍から全開までの範囲に一定時間間隔で分割した分割区間を設け、その分割区間毎にその区間におけるバルブの動作量(弁の回転角度等)を測定し、この測定した動作量と、予め、前記分割区間毎にバルブの開度特性(弁の角度等)に応じて設定したバルブの動作量予測値(閾値)のうち、バルブの動作量を測定した分割区間に属する前記閾値とを逐次比較しているので、バルブの動作方向に係わらず、バルブに異物の噛み込み等が発生した場合には、バルブが動作目標位置(全閉位置又は全開位置)に達するまでの時間を待つことなく、その分割区間単位毎に直ちに異常を検知することができる。
【0019】
また、バルブの動作速度は弁体の位置(開度等)によって変化することが多いが、その位置に対応した移動量を分割区間毎に閾値として設定することにより、例えばバタフライ弁のように全閉位置近傍で弁体がシートに乗り上げることによるステムトルクの増加により急激に移動量が減少することがあってもそれを異常と判断することなく、弁種に特有な挙動を加味して噛み込み発生等の判断を行うことが可能となり、誤検知を少なくしながら素早く異常を検知することができる。
【0020】
請求項2に係る発明によると、異常を検知したら直ちに一旦バルブの動作を停止することで、噛み込みによる過度な負荷の増大を防ぎ、バルブやモータの損傷を防ぐことができる。また、バルブの動作停止後、一定の範囲までバルブの位置を戻し、再び動作させる動作(揺動運転)によって、異物の噛み込みを解消し、異物を下流方向に自動的に流出させる可能性を増やすことができる。
【0021】
異常を検知した際の揺動運転における逆方向動作後の正方向動作時においても、分割区間毎にその分割区間におけるバルブの動作量を測定し、この測定した動作量と、その分割区間に属する閾値とを逐次比較するので、噛み込みが解消したか否かを極短時間で検知することができ、噛み込みが解消していない場合には、直ちに次の揺動運転に移行することができるので、バルブ、モータ、ギア機構等に過大なトルクが印加される時間を極めて短時間に限定し、ダメージを防止することができる。
また、揺動運転での逆方向動作により異常の噛み込みが解消されれば、正方向へのバルブの動作をそのまま継続させるので、最低限の揺動運転の回数で噛み込みの解消を図ることができる。さらに、所定の回数だけ搖動運転を行っても異常が検知される場合には、エラーと判定して装置全体の動作を停止するので、バルブに何らかの異常が発生したことにより、管路の流量制御が正常に行えない状態にあることを直ちに知ることができる。
【0022】
請求項3に係る発明によると、分割区間毎にモータを断続通電運転し、モータへの通電がOFFの時、すなわちモータのトルクが作用しないタイミングで分割区間毎にバルブの動作量の測定及びその分割区間での閾値との比較を行うので、異物の噛み込みが生じた場合には、バルブやモータに全く負荷がかかっていない状態で直ちに噛み込みを検知し、モータへ再通電を行うことなくバルブの動作を停止させるので、バルブやモータの損傷をさらに防ぐことができる。
【0023】
請求項4に係る発明によると、噛み込み等の異常の発生を検知したら、分割区間の時間の整数倍の時間だけモータに通電して大きく逆方向へと動作する揺動運転するので、効果的に異物の噛み込み解消を図ることができる。所定回数の揺動運転によっても異常が解消されなければ、装置全体の動作を停止させることにより、噛み込みによりバルブやモータに過度の負荷がかかり損傷することを防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明における噛み込み検知機能付きバルブ用電動アクチュエータ(以下、単に「バルブ用電動アクチュエータ」という。)の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、バルブ用電動アクチュエータの一実施形態の構成ブロック図を示している。
図1に示すように、バルブ用電動アクチュエータ1はバルブ2の上部に、弁体3のステム4と直結して取り付けられ、外部電源5の供給を受け、操作パネル6により操作されて前記バルブ2の開閉を実施している。
【0026】
図中、バルブ用電動アクチュエータ1は、駆動機構11と、前記弁体3の作動状況を前記ステム4の角度位置に基づき認識する作動センサ機構12と、前記作動センサ機構12からの信号に基づき噛み込みの発生を検知するとともに前記駆動機構11の作動を制御する制御回路13と、アクチュエータの動作条件を前記制御回路13に設定する動作機能設定部14と、バルブの開閉動作を事前に行い、その結果に基づいて正常動作時におけるバルブの作動位置毎のバルブの開閉速度やステムトルク値をメモリに記憶させる際に使用する自己学習設定部15と、前記操作パネル6から入力されたバルブ操作信号を前記制御回路13に伝達する入出力インターフェース回路16と、前記制御回路13からの制御信号に基づき前記駆動機構11に電力を供給するモータ駆動回路17と、前記外部電源5から供給される電力から前記制御回路13及び前記モータ駆動回路17に必要な直流電源を生成する電源回路18とから構成されている。
【0027】
駆動機構11は、モータ21と、複数のギアを組み合わせて前記モータ21の回転を減速するギア減速機構22と、前記ギア減速機構22で減速された前記モータ21の回転をアクチュエータの外部に出力する出力軸23により構成されている。モータ21の回転動力はギア減速機構22に伝達され、出力軸23を介してバルブ2のステム4にトルク伝達されており、ステム4を介してバルブ2の弁体3を回動させ、バルブ2の開閉を行うことができる。モータ21には、交流(AC)非同期モータもしくは直流(DC)モータを使用することができ、本実施例では直流モータを使用した。また、ギア減速機構22は、所要の減速比を有するものであれば減速方式は自由であるが、本実施例では、分割区間毎にモータを断続通電運転し、モータへの通電がOFFの時にその区間内でのバルブの動作量を測定して異物の噛み込み等の異常を検知するため、減速機構のかみ合い率が高くバックラッシュが殆んどないサイクロン減速機を使用して前記出力軸23に生じるガタを最小限に抑え、検出誤差が殆んど生じないようにしている。
【0028】
作動センサ機構12は、前記駆動機構11の出力軸23の上部に、前記出力軸23と同軸に立設した制御軸24に設けられ、バルブ2の弁体3が全開位置又は全閉位置に達した際に前記モータ21への電力供給を遮断して弁体3を全開位置又は全閉位置に保持する主リミットスイッチ25a、25bと、前記制御軸24に設けられバルブ2の弁体3が全開位置又は全閉位置に達したことを前記制御機構11に連絡する信号を発する補助リミットスイッチ26a、26bと、前記制御軸24の回転角度を計測して弁体3のステム軸4の角度位置を検知する回転角度センサ27から構成されている。二個の主リミットスイッチ25a、25b及び二個の補助リミットスイッチ26a、26bは、主リミットスイッチ同士、補助リミットスイッチ同士が90度の位相差を以って制御軸24に取り付けられており、弁体3の全開、全閉状態を検知することができる。
【0029】
前記制御軸24と前記出力軸23と前記ステム4は同一回転軸を有するように固定されているので、前記制御軸24の角度位置を測定することによりステム4の角度位置を検知することができる。本実施例では、回転角度センサとしてポテンショメータを使用したが、ロータリーエンコーダを使用することもできる。なお、ロータリーエンコーダを使用する場合には、後述するA/Dコンバータの代わりにデジタルカウンタ又はデコード回路を用いることによって、デジタル信号でバルブのステム角度情報を得ることができる。
【0030】
制御回路13は、バルブの種類別にバルブの動作量予測値(閾値)テーブルを記憶したデータメモリ(EEPROM:Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)28と、前記回転角度センサ27からのアナログ信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータ29と、異物の噛み込み発生の検知と前記駆動機構11の制御を行うCPU30と、前記モータ21の作動開始からの時間経過を計測し、前記CPU30の動作基準を提供するタイマーカウンタ31とから構成されている。
【0031】
以下に、CPU30で行う異物の物噛み込み検知方法について詳細に説明する。
電動モータにより駆動するバルブに異物の噛み込み等が発生し、ステムトルクが上昇すると、当然に該電動モータの負荷トルクも上昇するが、電動モータとしてAC非同期モータあるいはDCモータを使用している場合には、電動モータの負荷トルクの上昇に伴って電動モータの回転数が低下する特性がある。このため、AC非同期モータあるいはDCモータを使用している電動バルブに異物の噛み込みが発生すると、ステムトルクの増加によりステム回転速度が低下して、バルブの開閉時間に遅れが発生する。本発明におけるバルブ用電動アクチュエータの異物噛み込みの検知方法は、この「トルク−開閉時間特性(バルブの開度特性)」を利用している。
【0032】
ここで、本発明のおける全閉近傍から全開までの範囲とは、全閉近傍からスタートして全開までの範囲と、全開からスタートして全閉近傍までの範囲をいい、特に、中心型バタフライ弁にとってこの範囲は重要である。すなわち、
図2に示すように、中心型バタフライ弁32は、
短円筒型のボデー33の内周に
短円筒状のゴムシートリング34を装着し、そのゴムシートリング34の内周に上下のステム35、36を介して円板状のジスク37を開閉させるものである。この場合、ジスク37の上下ボス部38、39は、全閉から全開までゴムシートリング34の上下部分に常時接触し、例えば、ジスク37の全開から全閉への動作範囲においては、順次ジスク37の上下部分から中央部分に向けてジスク37の外周面40がゴムシートリング34に摺接するから、上下ステム35、36のトルクが大きくなる傾向を有している。一方、全閉から全開への動作範囲においては、全開から全閉への動作範囲の場合より、上下ステム35、36のトルクが小さくなる傾向にある。従って、中心型バタフライ弁のジスクの動作速度は、ジスク(弁体)の角度位置によって変化する傾向にある。
【0033】
図3(a)に、中心型バタフライ弁が全開位置から全閉位置に動作する場合の作動時間とバルブ開度の関係を模式的に示している。本図に示すように、バルブの動作速度(ステムの回転速度)は、モータに一定の電圧を負荷しても、上述したようにバルブ開度位置により異なり、常に一定であるわけではない。いま、モータに電力を給電した瞬間から一定時間間隔で分割区間42を設定し、バルブ動作速度を計測すると、各分割区間42でのバルブ動作速度(度/秒)を求めることができる。そして、この各分割区間42でのバルブの動作速度(度/秒)に分割区間42を設定した一定の時間間隔(秒)を乗じると、分割区間でのバルブ動作量(度)を求めることができる。
【0034】
この様にして求めた分割区間42毎のバルブ動作量は、正常な状態での計測結果に基づくものであり、いわばそのバルブのその使用条件における動作量の最大値である。実際にバルブを使用する場面では、種々の条件により制限を受け、この動作量まで達しないことが予想されるので、この値をそのまま判断基準として使用することは適当ではない。そのため、実環境での種々の影響を考慮するために安全率を考慮し、事前に求めた分割区分毎のバルブ動作量を安全率(1以上の数値)で除した値をバルブの動作量予測値(閾値)として設定する。
【0035】
図3(b)において、連続線で表されているのがこの閾値43である。また、本図で分割区間42毎に柱状グラフで示されているのが実際に計測したその分割区間でのバルブ動作量44である。本図に示すように、各分割区間42でのバルブ動作量44が閾値43を上回っている場合には、異物噛み込み等の異常が発生することなくバルブが正常に作動していると判定することができる。
【0036】
このように、分割区間42毎のバルブ動作量44とその分割区間に属する閾値43とを比較して判定する本発明におけるバルブ用電動アクチュエータの異物噛み込みの検知方法は、前述した「開度−ステム特性(バルブの開度特性)」を有する中心型バタフライ弁に使用した場合に特に効果がある。
【0037】
図4(a)には、中心型バタフライ弁を開閉する場合の弁開度とステムトルク値との関係の一例を示すが、単にステムトルクの急激な上昇を異物の噛み込みと判断する検知方法では、全閉位置近傍の急激なステムトルクの上昇と噛み込みによるステムトルクの上昇を区別することは困難であるが、本発明におけるバルブ用電動アクチュエータの異物噛み込みの検知方法では、分割区間毎にバルブ開度に応じた閾値が設定されており、分割区間毎にバルブ動作量と閾値を比較して判定しているので、バルブの「開度−ステム特性(バルブの開度特性)」の影響を受けることなく正確に異常を検知することができる。
【0038】
また
図4(b)には、中心型バタフライ弁を開閉する場合のバルブ作動時間とバルブ動作角度(ステム角度)の関係の一例を示すが、全閉位置近傍ではバルブ作動時間とバルブ動作角度の関係が線形ではないので、全閉位置からある時間が経過するまでのバルブの動作量を計測して単位作動時間当たりの平均動作量を求めても、その値に基づいて全開位置近傍のバルブ動作角度を予測すると誤差が非常に大きくなってしまう不都合がある。一方、本発明におけるバルブ用電動アクチュエータの異物噛み込みの検知方法では、分割区間毎にバルブ動作量と閾値を比較して判定しているので、バルブ開度の予測値に誤差が発生することはあり得ず、正確に異常を検知することができる。
【0039】
次に、データメモリ28に記憶させるデータテーブルの一例を表1に示し、このデータテーブルを作成する方法と、各分割区間の閾値を設定する方法を説明する。
表1の作成にあたっては、バルブを実際に使用する環境状態で作動させ、ステム角度を0度から90度まで等間隔で24分割した25ポイント毎にステムトルク(N・m)、及び動作スピード(度/秒)を測定し、この動作スピード(度/秒)を安全率1.2で除した値を動作スピード閾値(度/秒)としている。データメモリ28にこのデータテーブルを記憶させ、CPU30内で動作スピード閾値(度/秒)に分割区間を設定した際の時間間隔を乗じることにより、各分割区間でのバルブ動作量の閾値(度)を求めている。
なお、CPU30内でバルブ動作量の閾値(度)を計算するため、データテーブルから動作スピード閾値を読み込む場合には、例えば、全閉→全開方向の場合、ステム角度が、角度区分0から1にある場合には2.56(度/秒)を、角度区分1から2にある場合には2.54(度/秒)を読み込むようにしている。
また、上記の計測は、全閉→全開方向の場合だけでなく、全開→全閉方向の場合についても実施し、その結果から表1を作成した。
【0040】
本実施例では、ステム角度を0度から90度まで24分割してデータを取得するとともに、一定時間間隔を400m秒として分割区間を設定して表1を作成したが、ステム角度を何分割すべきか、分割区間の時間間隔をどの程度に設定すれば正確な検知が可能であるのかは、バルブの種類、サイズ、またアクチュエータのサイズ等により異なるので、適用にあたっては実験を行い、その結果に基づいてこれらの値を適切に設定する必要がある。
【0042】
また、CPU30はモータ駆動回路17を介してモータ21に供給する電力を制御しているが、タイマーカウンタ31からの信号に基づき、モータ21の断続通電運転を行っている。すなわち、
図5に示すように、各分割区間42を通電時間45と測定時間46に区分し、モータ21への電力の給電を通電時間45内に行い、その分割区間でのバルブ動作量44の測定及び閾値との比較・判定をモータ21への給電が行われない測定時間46内に行っている。本実施例では、通電時間と測定時間の比を3:1とし、通電時間を300m秒、測定時間を100m秒に設定した。
【0043】
このように、バルブ動作量の測定及び閾値との比較・判定は略400m秒間隔で行われるので、異物の噛み込みが発生した場合には、直ちに(実用上では、瞬時に)異常を検知することができる。このような異常検知の即応性は、中心型バタフライ弁のようにジスクが全開位置から全閉位置に動作する過程でジスクの縁が順次シールに乗り上げ、常に異物の噛み込みが発生し易い特性を有するバルブに対して好適である。
【0044】
また、モータ21への給電が行われていないため、トルクが作用しないタイミングで異常の検知を行うので、異常を検知した場合には、バルブやモータに全く負荷がかかっていない状態で、モータ21への再給電を中止してバルブの動作を停止させることができるので、バルブやモータの損傷を防止することができる。
【0045】
CPU30は、異物の噛み込みが検知された場合には、タイマーカウンタ31による計時が進行してもモータ21への給電を再開することなく、一旦モータ21の電源を切った状態にしてバルブの動作を停止させた後、後述する方法により設定する所定の範囲で逆方向に動作し、その後、正方向に動作する揺動運転を行い、噛み込んだ異物を自動的に下流方向に流出させることを目指す。
【0046】
図6において、異物噛み込み検知後のバルブの動作を説明する。今、n番目の分割区間47でのバルブ動作量48は、閾値43を超えているので噛み込みは検知されない。次のn+1番目の分割区間49でのバルブ動作量50は、閾値43を超えていないので、噛み込みが検知される。すると、CPU30は、後述する方法で設定される分割区間の整数倍だけの時間バルブを逆方向に動作させる。ここで、仮にこの整数倍が3倍であるとすると、バルブはn+2番目の分割区間51、n+3番目の分割区間52、n+4番目の分割区間53を合わせた区間54の時間分だけ逆方向に動作し、動作量55だけ逆作動するが、この時には閾値43との比較は行われない。バルブの逆方向への動作が完了すると、CPU30はn+5番目の分割区間56でバルブを正方向に動作させる。この分割区間56でのバルブ動作量57は閾値43を超えていないので噛み込みが検知され、バルブは2回目の逆方向への動作を開始し、n+6番目の分割区間58、n+7番目の分割区間59、n+8番目の分割区間60を合わせた区間61の時間分だけ逆方向に動作し、動作量62だけ逆作動した後、n+9番目の分割区間63での正方向への動作に移行する。この逆方向作動により異物の噛み込みが解消すると、分割区間63でのバルブ動作量64は閾値43を超えるので、噛み込みが解消したと判定され、次の分割区間では正方向の動作を継続する。
【0047】
以上説明したように、本発明におけるバルブ用電動アクチュエータでは、揺動運動の正方向動作においても分割区間毎にバルブの動作量を測定して閾値と逐次比較しているので、揺動運転での逆方向動作において異物の噛み込みが解消していないことを正方向動作に移行後の最初の分割区間で直ちに検知することができ、しかもモータ21への給電が行われていないタイミングの測定時間46内に異常の検知を行うので、バルブやモータに全く負荷がかかっていない状態で、モータ21への再給電を中止してバルブの動作を停止させることができるので、バルブやモータの損傷を防止することができる。
【0048】
また、噛み込みを検知した後の揺動運転において、逆方向動作で噛み込みが解消しない場合には、正方向動作に移行後の最初の分割区間で異常を検知し、その開度位置から更に分割区間の整数倍だけ逆方向動作を行うので、揺動運転の回数が増す毎に順次逆方向へのバルブ動作量(偏移量)が増加するので、異物の噛み込みが解消し易くなる。
【0049】
既定回数の揺動運転を行っても噛み込みが解消しない場合には、CPU30はモータ21への給電を中止するとともに、入力インターフェース16を介して操作パネル6にエラー警報を出力し、バルブに異物の噛み込みが発生して流体の制御に問題が生じていること、及びバルブの分解による異物の除去が必要なことを警告するので、迅速に所要の対応を採ることができる。
【0050】
動作設定部14は、分割区間内部比設定部65と、整数倍設定部66と揺動回数設定部67と、全閉全開非検出設定部68で構成されている。本実施例においては、動作設定部14としてディップスイッチを使用しており、表2に示すように、分割区間内部比設定、整数倍設定、揺動回数設定、全閉全開非検出設定、噛み込み検知の要否をB0からB9の10個のスイッチに割り当てた。後述するように、各スイッチを「1(ON)」又は「0(OFF)」の位置に合わせることにより簡単に動作設定を行うことができ、また設定状態を目視で容易に確認することができる。
なお、動作機能設定部14により多数のスイッチを備えたディップスイッチを使用し、それにより分割区間を設定する時間間隔を変更するようにすることもできる。
【0052】
分割区間内の通電時間と測定時間の比率は、ディップスイッチのB0及びB1スイッチにより設定することができる。表3に示すようにB0及びB1スイッチを設定することにより、分割区間内の通電時間と測定時間の比率を2:1から5:1までの範囲で指定することができる。
【0054】
揺動運転時に、バルブを分割区間の時間間隔の何倍の時間だけ逆方向動作をさせるかは、ディップスイッチのB2及びB3スイッチにより設定することができる。表4に示すようにB2及びB3スイッチを設定することにより、バルブを逆転運転させる時間を分割区間の2から5倍に範囲で指定することができる。
【0056】
揺動運転を実施する回数は、ディップスイッチのB4及びB5スイッチにより設定することができる。表5に示すようにB4及びB5スイッチを設定することにより、バルブを逆転運転させる回数を2から5回の範囲で指定することができる。
【0058】
バルブの種類によっては、全開位置もしくは全開位置にある状態からからバルブを作動させようとすると、弁体とシール部材とが干渉する影響が大きいため、作動状態が一定しない場合がある。このようなバルブを対象にした場合には、作動状況が一定しない動作範囲でバルブ動作量の測定と閾値との比較を行う噛み込み検知を行うと、かえって噛み込み検知が不正確になる不具合が生じる。このため、噛み込み検知が若干遅れることを受容し、このような動作範囲内の分割区間では、バルブの噛み込み検知は行わないこととし、
図3に示す噛み込み検知マスク領域を設定できるようにした。この領域の設定は、表6に示すように、B6乃至B8スイッチを設定することにより、全開位置又は全閉位置の単独で、もしくは全開位置及び全閉位置の双方で、0度から5度まで、0度から10度までの動作範囲を設定することができる。
【0060】
異物の噛み込み検知の要否は、ディップスイッチのB9スイッチにより設定することができる。異物の噛み込み検知が必要な場合には「1」に、不要な場合は「0」に設定する。このように、本発明のおけるバルブ用電動アクチュエータは、噛み込み検知が必要な個所にも、また不要な個所にも簡単な操作により所要の機能を選択して使用することができる。
【0061】
自己学習設定部15は、バルブを事前に実際に使用する環境状態で作動させ、その動作結果に基づいて正常作動時における弁体位置毎の弁体の動作スピードやステムトルクのデータテーブルをメモリ28に記憶させるための操作部位である。
【0062】
入力インターフェース部16は、操作パネル6からのバルブ全開あるいは全閉に入力をCPU30に伝達し、CPU30からの噛み込み発生のエラー信号を操作パネル6側に伝達する機能を有している。
【0063】
モータ駆動回路17は、CPU30からの信号を受け、弁体が所定の方向に回転するようにモータ21に電力を供給する機能を有している。
【0064】
電源回路18は、外部電源5から電力(交流又は直流)の供給を受け、制御回路13及びモータ駆動回路17に電力を供給するが、外部電源5が交流の場合には直流に変換した後に制御回路13に供給する。
【0065】
以下に、本発明におけるバルブ用電動アクチュエータによりバルブの噛み込みを検知する方法について説明する。
図7乃至9は、本発明におけるバルブ用電動モジュールによりバルブの噛み込みを検知する制御のフローチャートである。
【0066】
まず、ステップ101においてアクチュエータに初期設定を行う。このステップでは、揺動回数のカウントレジスタの回数をゼロにセットする。次のステップ102では、動作設定部14で設定された揺動回数及び逆方向動作時間設定倍数(分割区間の設定時間間隔に乗ずる整数倍の値)の読み込みを行う。ステップ103では、バルブ開閉入力信号の読み込みを行い、ステップ104では入力信号が入力されたか否かが、ステップ105では全開入力であるか否かが判断される。
【0067】
入力信号が全閉入力である場合にはフローはステップ106Rに移行し、入力信号が全開入力である場合にはフローはステップ106Lに移行する。
【0068】
バルブが全閉状態であったとすると、ステップ106で全開側補助リミットスイッチがOFFであるか(バルブが閉じているか)が判断され、OFFであればバルブは閉じているのでフローはCに移行し、ONであればバルブは全開位置にあるのでステップ102に戻り、次の開閉入力信号があるまで待機する。
【0069】
ステップ105で全閉入力が入力されたと判断した後は、ステップ106Rで全閉側補助リミットスイッチがOFFであるか(バルブが全閉位置に達していないか)が判断され、OFFであればバルブはまだ全閉位置に達していないので、ステップ107Rでモータに通電され、バルブは全閉方向に動作する。また、全閉側補助リミットスイッチがONであれば、バルブは全閉位置に達しているので、フローはステップ102に戻る。
【0070】
全閉方向(正方向)に動作したバルブは、ステップ108Rで全開側補助リミットスイッチがOFFであるか(バルブが全開位置に達していないか)が判断され、OFFであればバルブは全開位置ではないのでステップ109Rに移行し、ステップ109Rでその分割区間でのバルブ動作量の計測が行われる。ONであればバルブは全開位置なのでステップ107Rに戻る。
【0071】
ステップ110Rでは、データテーブルからステップ109Rで計測した分割区間に対応する分割区間に属する閾値が読み込まれ、バルブ動作量と閾値との比較か行われる。バルブ動作量が閾値を超えていれば、ステップ111Rで揺動回数をゼロに設定する。バルブ動作量が閾値に達していなければ、ステップ116Rに進む。
【0072】
ステップ112Rでは、全閉側補助リミットスイッチがOFFであるか(バルブが全閉位置に達していないか)が判断され、OFFであればバルブはまだ全閉位置に達していないので、ステップ109Rに戻って次の分割区間でのバルブ動作量の測定が繰り返される。また、全閉側補助リミットスイッチがONであれば、バルブは全閉位置に達しているので、ステップ113Rで全閉側主リミットスイッチがONであるか(モータへの給電が停止されているか)が判断され、ONであれば未だモータがバルブを閉止する方向に作動中であるので、OFFになるまでこの判定を繰り返す。OFFと判断されると、ステップ114Rでモータに対する閉方向への通電が停止され、バルブは全閉位置で停止する。
【0073】
この後、ステップ115Rでのインターバルを経た後、ステップ102に戻る。
【0074】
ステップ110Rでバルブ動作量が閾値に達していないと判断されると、異物の噛み込みが発生していると判断され、揺動運転を実施するためにステップ116Rでモータへの給電を止めて閉方向への回転を停止させ、ステップ117Rで揺動回数のカウントに1回を追加する。
【0075】
ステップ118Rでのインターバルを経た後、ステップ119Rでモータが開方向(逆方向)に回転するように給電を開始し、ステップ120Rでバルブの逆方向動作時間を計測し、ステップ121Rでバルブの逆方向への動作時間が、ステップ102で逆方向動作倍数を読み込んで設定した設定動作時間を超えているか否かの判定が行われる。バルブの逆方向への動作時間が設定動作時間を超えていた場合には、ステップ122Rでモータに対する開方向への給電が停止され、バルブは噛み込み位置より閉方向に偏移した位置で停止する。バルブの逆方向動作時間が設定動作時間を超えていない場合には、ステップ119Rに戻り、ステップ121Rでバルブの逆方向への動作時間が設定動作時間を超えたと判断するまで、バルブの逆方法への動作が継続する。
【0076】
ステップ122Rでバルブへの給電を停止した後、ステップ123Rでのインターバルを経た後、ステップ124Rで、揺動運転回数がステップ102で読み込んだ設定揺動回数を超えているか否かの判定が行われる。揺動運転回数が設定揺動回数を超えていない場合には、ステップ107Rへ戻り、モータに全閉方向(正方向)への給電が行われ、ステップ109Rでのバルブ動作量の計測、ステップ110Rでの計測したバルブ動作量と閾値の比較が行われる。直前のバルブの逆方向への動作により異物の噛み込みが解消した場合には、ステップ110Rに移行して全閉方向(正方向)への動作を継続し、噛み込みが解消していない場合には、ステップ116Rに移行して揺動運転を継続する。
【0077】
ステップ124Rで、揺動運転回数が設定揺動回数を超えたと判断された場合には、スッテプ125に移行し、噛み込み発生のエラー表示が入力インターフェース16を介して操作パネルに表示される。
【0078】
以上は、全開位置にあるバルブに全閉入力が入力された場合の制御のフローチャートを説明したが、全閉位置にあるバルブに全開入力が入力された場合には、ステップ105からステップ106Lに移行し、その後のフローは、バルブを閉側に動作させるか開側に動作させるかに違いが存在するだけで、他のフローは前述した全開位置にあるバルブに全閉入力が入力された場合とバルブの動作方向が逆になる以外は同様である。そして、ステップ124Lで、揺動運転回数が設定揺動回数を超えたと判断された場合には、スッテプ125に移行し、噛み込み発生のエラー表示が入力インターフェース16を介して操作パネルに表示される。
【0079】
以上説明したように、本発明におけるバルブ用電動アクチュエータは、バルブの開閉動作時に、全閉近傍から全開までの範囲に短時間の一定時間間隔で分割した分割区間を設け、その分割区間毎にその区間におけるバルブの動作量を測定し、この測定した動作量と、予め前記分割区間毎にバルブの開度特性に応じて設定したバルブの動作量予測値(閾値)とを逐次比較し、その比較結果から分割区間毎に異物の噛み込み等の異常を検知しているので、異物の噛み込みが発生した場合には極めて短時間で(実用上では、瞬時に)異常を検知することができる。
【0080】
また、各分割区間を通電時間と測定時間に分割し、モータを断続通電運転し、噛み込みの検知はモータのトルクが作用しないタイミングで行うので、異常を検知した場合には、バルブやモータに全く負荷がかかっていない状態で、バルブの動作を停止させることができるので、バルブやモータに過負荷よる損傷が発生することを防止することができる。
【0081】
これに加え、噛み込み発生時に異物を自動的に排出するために行うバルブの揺動運転では、逆方向動作によっても異物の噛み込みが解消しなかった場合には、逆方向動作から正方向動作に移行した直後の分割区間で噛み込みが解消していないことを検知することができ、直ちに次の揺動運動を開始することができる。また、次の揺動運動では、バルブの逆方向への動作量がその前の揺動運動よりも増加するので、噛み込んだ異物を排出し易くすることができる。
【0082】
さらに、本発明におけるバルブ用電動アクチュエータは、既存の補助リミットスイッチ及びポテンショメータを利用し、新たなメカ機構部を一切追加する必要がなく、アクチュエータの筐体の内部にディップスイッチを追加する等により外観寸法を従来と同一に保ったままで噛み込み防止機能を持たせたため、既存の配管系に簡単に取り付けることができるので、その利用価値は非常に大きいものがある。
【0083】
以上の説明は弁体が回転する回転型のバルブを対象として行ったが、作動センサ機構内部の構成を工夫することにより、直線移動型のバルブに対しても適用することができる。