(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基板を収容するチャンバーの上方から前記チャンバー内に気体を供給すると共に、基板よりも下方に配置される排気口から前記チャンバー内の気体を排出することにより、前記チャンバー内に下降気流を形成する気流形成工程と、
前記気流形成工程と並行して、前記チャンバー内に配置された基板に薬液を供給する薬液供給工程と、
前記気流形成工程および薬液供給工程と並行して、前記チャンバー内で水を噴霧するミスト噴射工程とを含み、
前記気流形成工程は、前記チャンバー内に下降気流を形成する通常置換工程と、前記通常置換工程での下降気流の速度よりも高速の下降気流を前記チャンバー内に形成する置換促進工程とを含み、
前記薬液供給工程およびミスト噴射工程は、前記置換促進工程と並行して実行される、基板処理方法。
前記薬液供給工程において基板に供給される薬液は、前記チャンバー内の基板に向けて薬液を吐出する薬液ノズルから吐出されるときの温度が水の沸点以上で、水を含む薬液である、請求項1に記載の基板処理方法。
前記気流形成工程は、基板の上方に位置するように前記チャンバー内に配置された整流板を上下方向に貫通する複数の貫通穴から下方に気体を吐出する工程を含む、請求項1または2に記載の基板処理方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
薬液ノズルから薬液が吐出されると、薬液成分を含む薬液雰囲気が基板の近くで発生する。チャックピンやカップに薬液が衝突したときも、薬液雰囲気が基板の近くで発生する。特に、100℃以上のSPMが薬液ノズルから吐出される場合には、SPMに含まれる水の蒸発により、SPMの液滴やミストが薬液ノズルから激しく噴出する。SPMとレジストとの反応により基板からヒューム(煙のような気体)が発生する場合もある。
【0005】
殆どの薬液雰囲気は、チャンバー内に形成されたクリーンエアーのダウンフローや排気設備の吸引力によって、カップ内に送り込まれる。しかしながら、一部の薬液雰囲気が、カップの外の空間に拡散し、乾燥後の基板に付着する場合がある。また、一部の薬液雰囲気が、基板の上方に配置された部材やチャンバーの内壁面に付着する場合もある。この場合、基板が汚染されるおそれがある。
【0006】
特許文献1には、チャンバー内に拡散した薬液ミストに水滴をかけ、薬液ミストを水滴に吸収させることが開示されている。しかしながら、SPMの供給が停止された後に微細な水滴が噴射されるので、水滴の噴射が開始される前の期間は、薬液雰囲気がチャンバー内に拡散し、チャンバーの内壁面等に付着する場合がある。したがって、基板が汚染されるおそれがある。
【0007】
そこで、本発明の目的の一つは、薬液雰囲気に起因する基板の汚染を低減できる基板処理方法および基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するための請求項1記載の発明は、基板を収容するチャンバーの上方から前記チャンバー内に気体を供給すると共に、基板よりも下方に配置される排気口から前記チャンバー内の気体を排出することにより、前記チャンバー内に下降気流を形成する気流形成工程と、前記気流形成工程と並行して、前記チャンバー内に配置された基板に薬液を供給する薬液供給工程と、前記気流形成工程および薬液供給工程と並行して、前記チャンバー内で水を噴霧するミスト噴射工程とを含
み、前記気流形成工程は、前記チャンバー内に下降気流を形成する通常置換工程と、前記通常置換工程での下降気流の速度よりも高速の下降気流を前記チャンバー内に形成する置換促進工程とを含み、前記薬液供給工程およびミスト噴射工程は、前記置換促進工程と並行して実行される、基板処理方法である。「水」は、水を主成分とする液体を意味する。「水」は、純水(脱イオン水:Deionized water)であってもよいし、薬液濃度が低い水溶液(たとえば、10〜100ppm程度の水溶液)であってもよい。
【0009】
この方法によれば、チャンバー内に下降気流が形成されている状態で、チャンバー内の基板に向けて薬液が吐出される。これにより、薬液が基板に供給される。さらに、チャンバー内に下降気流が形成されており、薬液が基板に向けて吐出されている状態で、水がチャンバー内で噴霧される。これにより、水のミストがチャンバー内に形成される。
チャンバー内で薬液雰囲気が発生したとしても、この薬液雰囲気は、チャンバー内を漂う水のミストに接触する。この接触により、水の粒子が薬液の粒子に結合し、より大きくかつ重い液体の粒子、すなわち、水の粒子と薬液の粒子との結合体が形成される。粒子の重量が増加するので、薬液雰囲気が浮遊しにくくなる。さらに、粒子が大きくなるので、下降気流から粒子に加わる下向きの力が増加する。そのため、薬液雰囲気は、基板よりも下方に配置される排気口に向かって下方に流れ、排気口を通じてチャンバーから排出される。これにより、薬液雰囲気の拡散を抑制または防止できるので、薬液雰囲気に起因する基板およびチャンバー等の汚染を低減できる。
さらに、水がチャンバー内で噴霧されており、下降気流の速度が高められている状態で、チャンバー内の基板に向けて薬液が吐出される。チャンバー内を下方に流れる下降気流の速度が増加しているので、薬液雰囲気が浮遊しにくい上に、下降気流から薬液雰囲気に加わる下向きの力が増加する。したがって、薬液雰囲気をより確実にかつ速やかにチャンバーから排出できる。
【0011】
請求項
2に記載の発明は、前記薬液供給工程において基板に供給される薬液は、前記チャンバー内の基板に向けて薬液を吐出する薬液ノズルから吐出されるときの温度が水の沸点以上で、水を含む薬液である、請求項
1に記載の基板処理方法である。
この方法によれば、水の沸点以上の高温の薬液が、チャンバー内の基板に向けて薬液ノズルから吐出される。薬液の温度が水の沸点以上なので、薬液に含まれる水の蒸発により、薬液の液滴やミストが薬液ノズルから激しく噴出する。しかしながら、このとき発生する薬液雰囲気は、チャンバー内を漂う水のミストに捕捉され、その後、排気口を通じてチャンバーの外に排出される。したがって、薬液雰囲気が発生しやすい高温の薬液を基板に供給する場合でも、薬液雰囲気に起因する基板およびチャンバー等の汚染を低減できる。
【0012】
請求項
3に記載の発明は、前記気流形成工程は、基板の上方に位置するように前記チャンバー内に配置された整流板を上下方向に貫通する複数の貫通穴から下方に気体を吐出する工程を含む、請求項1
または2に記載の基板処理方法である。
この方法によれば、整流板を上下方向に貫通する複数の貫通穴から下方に気体が吐出される。基板は、整流板の下方に配置される。薬液雰囲気は、チャンバー内を上昇して整流板の下面に付着するおそれがある。特に、薬液ノズルから激しく噴出した薬液の液滴やミストが整流板の下面に付着するおそれがある。
【0013】
整流板の上方にはチャンバー内に気体を送る送風ユニットなどの他の装置が配置されている。整流板の下面に付着した薬液を洗い流すために、純水などの洗浄液を整流板の下面に向けて吐出すると、整流板の貫通穴を通過した洗浄液が送風ユニット等にかかるおそれがある。つまり、整流板は、スプラッシュガードなどの基板の周囲に配置される部材よりも洗浄しにくい。
【0014】
前述のように、水のミストをチャンバー内に発生させることによって、薬液雰囲気や薬液の液滴等が上方に流れることを抑制または防止できる。したがって、薬液雰囲気や薬液の液滴等が整流板の下面に付着することを抑制または防止できる。これにより、整流板の下面が薬液で汚染されることを抑制または防止できる。
請求項
4に記載の発明は、前記薬液供給工程は、基板と前記整流板とが直接向かい合った状態で前記チャンバー内の基板に向けて薬液を吐出する工程を含む、請求項
3に記載の基板処理方法である。「基板と前記整流板とが直接向かい合った状態」は、基板の少なくとも一部が有体物を介さずに整流板に向かい合った状態を意味する。
【0015】
この方法によれば、基板と整流板とが直接向かい合った状態で、チャンバー内の基板に向けて薬液が吐出される。遮断板等の他の部材が基板と整流板との間に配置されている場合には、整流板が遮断板等によって保護されるので、薬液雰囲気が整流板に付着しにくい。これとは反対に、基板の少なくとも一部が部材を介さずに整流板に対向している場合には、遮断板等がある場合よりも薬液雰囲気が整流板に付着しやすい。しかしながら、水のミストをチャンバー内に発生させることによって、薬液雰囲気や薬液の液滴等が整流板に到達することを抑制または防止できるので、洗浄が容易でない整流板の汚染を低減できる。
【0016】
請求項
5に記載の発明は、基板を収容するチャンバーと、前記チャンバーの上方から前記チャンバー内に気体を供給すると共に、基板よりも下方に配置される排気口から前記チャンバー内の気体を排出することにより、前記チャンバー内に下降気流を形成する気流形成手段と、前記チャンバー内に配置された基板に薬液を供給する薬液供給手段と、前記チャンバー内でミストを噴射するミスト噴射手段と、前記気流形成手段、薬液供給手段、およびミスト噴射手段を制御する制御手段とを含む、基板処理装置である。
【0017】
前記制御手段は、基板を収容する前記チャンバーの上方から前記チャンバー内に気体を供給すると共に、基板よりも下方に配置される前記排気口から前記チャンバー内の気体を排出することにより、前記チャンバー内に下降気流を形成する気流形成工程と、前記気流形成工程と並行して、前記チャンバー内に配置された基板に薬液を供給する薬液供給工程と、前記薬液供給工程と並行して、前記チャンバー内で水を噴霧するミスト噴射工程とを実行する。
前記気流形成工程は、前記チャンバー内に下降気流を形成する通常置換工程と、前記通常置換工程での下降気流の速度よりも高速の下降気流を前記チャンバー内に形成する置換促進工程とを含む。前記薬液供給工程およびミスト噴射工程は、前記置換促進工程と並行して実行される。この構成によれば、前述の効果と同様な効果を奏することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
基板処理装置1は、半導体ウエハ等の円板状の基板Wを一枚ずつ処理する枚葉式の装置である。
図1に示すように、基板処理装置1は、基板Wを処理する処理ユニット2と、処理ユニット2に基板Wを搬送する搬送ロボット(図示せず)と、基板処理装置1を制御する制御装置3とを含む。
【0020】
図1に示すように、処理ユニット2は、箱形のチャンバー4と、チャンバー4内で一枚の基板Wを水平な姿勢で保持しながら、基板Wの中央部を通る鉛直な回転軸線A1まわりに基板Wを回転させるスピンチャック12と、スピンチャック12を取り囲む筒状のカップ33とを含む。処理ユニット2は、さらに、スピンチャック12に保持されている基板Wに向けて薬液を吐出する薬液ノズル19と、スピンチャック12に保持されている基板Wに向けてリンス液を吐出するリンス液ノズル28と、チャンバー4内でミストを噴射するミスト噴射ノズル46とを含む。
【0021】
図1および
図2に示すように、チャンバー4は、基板Wが出入りする搬入搬出口5aが設けられた箱型の隔壁5と、搬入搬出口5aを開閉するシャッター6とを含む。隔壁5は、スピンチャック12およびカップ33の下方に配置された下壁7と、スピンチャック12およびカップ33の上方に配置された上壁8と、スピンチャック12およびカップ33の周囲に配置された側壁9とを含む。搬入搬出口5aは、チャンバー4の側壁9に設けられている。シャッター6は、搬入搬出口5aが開く開位置と、搬入搬出口5aが閉じる閉位置(
図2に示す位置)との間で側壁9に対して移動可能である。図示しない搬送ロボットは、搬入搬出口5aを通じてチャンバー4に基板Wを搬入し、搬入搬出口5aを通じてチャンバー4から基板Wを搬出する。
【0022】
図1に示すように、処理ユニット2は、チャンバー4の上方からその内部にクリーンエアー(フィルターによってろ過された空気)を送るFFU10(ファン・フィルタ・ユニット)を含む。図示はしないが、FFU10は、基板処理装置1が配置されるクリーンルーム内の空気を送る羽根と、羽根を回転させる電動モータと、羽根によって送られた空気をろ過するフィルターとを含む。FFU10は、チャンバー4の上方に配置されている。FFU10は、チャンバー4の上壁8を鉛直方向に貫通する送風口5bの上方に配置されている。送風口5bは、平面視で基板Wに重なる位置に配置されている。
【0023】
図1に示すように、チャンバー4は、FFU10によって隔壁5内に送られたクリーンエアーを整流する整流板11を含む。整流板11は、FFU10とスピンチャック12との間の高さに配置されている。整流板11は、水平な姿勢で保持されている。整流板11は、隔壁5の内部を整流板11の上方の上方空間SP1と整流板11の下方の下方空間SP2とに仕切っている。上壁8と整流板11との間の上方空間SP1は、クリーンエアーが拡散する拡散空間であり、下壁7と整流板11との間の下方空間SP2は、基板Wの処理が行われる処理空間である。上方空間SP1の高さは、下方空間SP2の高さよりも小さい。
【0024】
図1に示すように、整流板11は、上壁8の下面で開口する送風口5bの下方に配置されている。FFU10は、送風口5bから上方空間SP1にクリーンエアーを送る。整流板11は、厚み方向に貫通する複数の貫通穴11aがその全域に形成された多孔プレートである。送風口5bを通過したクリーンエアーの大部分は、整流板11に衝突し、方向転換する。これにより、FFU10によって送られたクリーンエアーが上方空間SP1を拡散する。上方空間SP1に充満したクリーンエアーは、整流板11を厚み方向に貫通する複数の貫通穴11aを通過し、整流板11の全域から下方に流れる。これにより、整流板11の全域から下方向に流れる均一なクリーンエアーの下降気流、つまりダウンフローが、下方空間SP2に形成される。制御装置3は、FFU10がチャンバー4内にクリーンエアーを常時供給するようにFFU10を制御している。
【0025】
図1に示すように、スピンチャック12は、水平な姿勢で保持された円板状のスピンベース13と、スピンベース13の上面周縁部から上方に突出する複数のチャックピン14と、複数のチャックピン14に基板Wを把持させるチャック開閉ユニット15とを含む。スピンチャック12は、さらに、スピンベース13の中央部から回転軸線A1に沿って下方に延びるスピン軸16と、スピン軸16を回転させることによりスピンベース13およびチャックピン14を回転軸線A1まわりに回転させるスピンモータ17とを含む。スピンチャック12は、水平な姿勢で保持された円板状の吸着ベースの上面に基板Wの下面(裏面)を吸着させるバキュームチャックであってもよい。
【0026】
図1に示すように、処理ユニット2は、薬液ノズル19に供給される薬液を案内する薬液配管20と、第1原液タンク(図示せず)から薬液配管20に供給される第1原液を案内する第1原液配管21と、第1原液配管21に介装された第1原液バルブ22と、第1原液配管21から薬液配管20に供給される第1原液を加熱するヒータ23と、第2原液タンク(図示せず)から薬液配管20に供給される第2原液を案内する第2原液配管24と、第2原液配管24に介装された第2原液バルブ25とを含む。
【0027】
第1原液バルブ22および第2原液バルブ25が開かれると、第1原液および第2原液が薬液配管20内で混ざり合う。したがって、第1原液および第2原液の混合液(混合薬液)が、薬液配管20から薬液ノズル19に供給され、薬液ノズル19から下方に吐出される。第1原液の一例は、硫酸であり、第2原液の一例は、過酸化水素水である。したがって、混合薬液は、SPM(硫酸と過酸化水素水との混合液)である。
【0028】
薬液配管20には、ヒータ23によって所定温度に調整された硫酸と、常温(たとえば、20℃〜30℃)の過酸化水素水とが供給される。過酸化水素水と混合される前の硫酸の温度は、薬液ノズル19から吐出されるときのSPMの温度が水の沸点以上となるように調節されている。過酸化水素水と混合される前の硫酸の温度は、100℃以上(たとえば150℃〜200℃)であってもよいが、硫酸と過酸化水素水との混合により希釈熱が発生するので、薬液ノズル19から吐出されるときのSPMの温度が水の沸点以上であれば、過酸化水素水と混合される前の硫酸の温度は、100℃未満であってもよい。
【0029】
処理ユニット2は、薬液ノズル19が先端部に取り付けられたノズルアーム26と、ノズルアーム26を移動させることにより薬液ノズル19を移動させる薬液ノズル移動ユニット27とを含む。薬液ノズル移動ユニット27は、カップ33の周囲に配置されている。
図2に示すように、薬液ノズル移動ユニット27は、カップ33の周囲で鉛直方向に延びる回動軸線A2まわりにノズルアーム26を回動させることにより、平面視で基板Wの中央部を通る円弧状の軌跡に沿って薬液ノズル19を水平に移動させる。薬液ノズル移動ユニット27は、薬液ノズル19が基板Wの上方に位置する処理位置と、薬液ノズル19が基板Wの周囲に退避した退避位置(
図2に示す位置)との間で、薬液ノズル19を移動させる。
【0030】
図1に示すように、処理ユニット2は、リンス液ノズル28に供給されるリンス液を案内するリンス液配管29と、リンス液配管29に介装されたリンス液バルブ30と、リンス液ノズル28が先端部に取り付けられたノズルアーム31と、ノズルアーム31を水平に移動させることによりリンス液ノズル28を水平に移動させるリンス液ノズル移動ユニット32とを含む。リンス液ノズル移動ユニット32は、スピンチャック12の周囲で上下方向に延びる回動軸線A3まわりにノズルアーム31を回動させることにより、平面視で基板Wの中央部を通る円弧状の軌跡に沿ってリンス液ノズル28を水平に移動させる。リンス液の一例は、純水(脱イオン水:Deionized water)である。リンス液は、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水、および希釈濃度(たとえば、10〜100ppm程度)の塩酸水のいずれかであってもよい。
【0031】
図1に示すように、カップ33は、スピンチャック12を取り囲む円筒状の外壁34と、外壁34とスピンチャック12との間でスピンチャック12を取り囲む筒状のスプラッシュガード35と、スプラッシュガード35を鉛直に昇降させるガード昇降ユニット38とを含む。外壁34は、チャンバー4に固定されており、スプラッシュガード35は、チャンバー4に対して昇降可能である。
【0032】
図1に示すように、スプラッシュガード35は、回転軸線A1に向かって斜め上に延びる筒状の傾斜部36と、傾斜部36の下端部(外端部)から下方に延びる円筒状の案内部37とを含む。外壁34は、径方向(回転軸線A1に直交する方向)に間隔を空けて案内部37を取り囲んでいる。傾斜部36の上面は、回転軸線A1に向かって斜め上に延びている。傾斜部36は、基板Wおよびスピンベース13よりも大きい内径を有する円環状の上端を含む。傾斜部36の上端は、スプラッシュガード35の上端35aに相当する。
図2に示すように、スプラッシュガード35の上端35aは、平面視で基板Wおよびスピンベース13を取り囲んでいる。
【0033】
図1に示すように、ガード昇降ユニット38は、スプラッシュガード35の上端35aが基板Wよりも下方に位置する下位置(
図1において二点鎖線で示す位置)と、スプラッシュガード35の上端35aが基板Wよりも上方に位置する上位置(
図1において実線で示す位置)との間で、スプラッシュガード35を昇降させる。下位置は、搬送ロボット(図示せず)とスピンチャック12との間で基板Wの受け渡しが行われる退避位置である。上位置は、基板Wからその周囲に飛散する処理液をスプラッシュガード35の内周面で受け止める処理位置である。スプラッシュガード35によって受け止められた処理液は、カップ33内から排出され、図示しない回収装置または排液装置に導かれる。
【0034】
図1に示すように、処理ユニット2は、カップ33の内部を通じてチャンバー4内の気体をチャンバー4の外に排出する排気ダクト40と、排気ダクト40内を流れる排気の速度を増減させる排気ダンパー41とを含む。図示はしないが、排気ダンパー41は、排気流路を形成するダンパー本体と、ダンパー本体によって形成された排気流路を開閉する弁体と、弁体を移動させることにより排気ダンパー41の開度(排気流路の流路面積)を変更するアクチュエータと、弁体の位置を検出する位置センサーと含む。排気ダクト40は、カップ33の外壁34の周囲に配置されている。排気ダクト40の上流端は、外壁34に設けられた排気口42に接続されている。排気ダクト40および排気口42は、スピンベース13よりも下方に配置されている。排気ダクト40内の気体は、基板処理装置1が設置される工場に設けられた排気設備(図示せず)によって常時吸引される。
【0035】
カップ33内の気体は、排気ダクト40を通じて伝達される排気設備の吸引力によって、排気口42の方へ下方に吸い寄せられる。カップ33よりも上方の空間を漂う気体は、排気ダクト40からカップ33に伝達される吸引力によって、スプラッシュガード35の上端35aの内側の空間の方に吸い寄せられる。そのため、チャンバー4内の気体は、カップ33および排気ダクト40の内部を通じてチャンバー4の外に排出される。
【0036】
図1に示すように、処理ユニット2は、カップ33の周囲でチャンバー4の下方空間SP2を上下に仕切る仕切板43を含む。仕切板43は、カップ33の外壁34とチャンバー4の側壁9との間に配置されている。仕切板43は、カップ33の外壁34とチャンバー4の側壁9とによって支持されている。仕切板43は、スピンモータ17よりも上方に配置されている。排気ダクト40は、仕切板43の下方に配置されている。
図1は、仕切板43の上面が水平な例を示している。仕切板43の上面は、回転軸線A1に向かって斜め下に延びるように傾斜していてもよい。
【0037】
図2に示すように、仕切板43の内端部は、カップ33の外壁34の外周面に沿って配置されている。仕切板43の外端部は、チャンバー4の側壁9の内面に沿って配置されている。薬液ノズル移動ユニット27は、仕切板43に設けられた挿通部44を通って、仕切板43の下方から仕切板43の上方まで延びている。同様に、リンス液ノズル移動ユニット32は、仕切板43に設けられた挿通部45を通って、仕切板43の下方から仕切板43の上方まで延びている。薬液ノズル19およびノズルアーム26は、仕切板43よりも上方に配置されている。同様に、リンス液ノズル28およびノズルアーム31は、仕切板43よりも上方に配置されている。仕切板43は、一枚の板であってもよいし、同じ高さに配置された複数枚の板であってもよい。
【0038】
処理ユニット2は、ミスト噴射ノズル46に供給される液体を案内する液体配管47と、液体配管47に介装された液体バルブ48と、ミスト噴射ノズル46に供給される気体を案内する気体配管49と、気体配管49に介装された気体バルブ50とを含む。ミスト噴射ノズル46に供給される液体の一例は、純水である。ミスト噴射ノズル46に供給される気体の一例は、窒素ガスである。
図1は、一つのミスト噴射ノズル46が処理ユニット2に設けられている例を示しているが、処理ユニット2は、複数のミスト噴射ノズル46を備えていてもよい。
【0039】
ミスト噴射ノズル46は、液体配管47から供給される液体と気体配管49から供給される気体とをミスト噴射ノズル46の内部または外部で衝突させることにより、複数の液滴を生成する、二流体ノズルである。ミスト噴射ノズル46は、ベンチュリ効果(Venturi effect)を利用して複数の液滴を生成してもよいし、超音波振動を利用して複数の液滴を生成してもよいし、液体を複数の穴から同時に噴射することにより複数の液滴を生成してもよい。
【0040】
ミスト噴射ノズル46は、平面視において基板Wよりも外方(基板Wの回転軸線A1から離れる方向)に配置されている。また、ミスト噴射ノズル46は、基板Wと整流板11との間の高さに配置されている。薬液ノズル19およびノズルアーム26は、ミスト噴射ノズル46よりも下方に配置されている。同様に、リンス液ノズル28およびノズルアーム31は、ミスト噴射ノズル46よりも下方に配置されている。ミスト噴射ノズル46は、チャンバー4の側壁9から内方(基板Wの回転軸線A1に近づく方向)に突出している。ミスト噴射ノズル46の先端部は、下方空間SP2に配置されている。ミスト噴射ノズル46の先端部は、基板Wの上方の空間に向けて複数の純水の液滴を円錐状に噴射する。液滴の粒径は、たとえば、数十μm〜数百μmである。
【0041】
ミスト噴射ノズル46から噴射された純水のミストは、整流板11の下面に沿って水平に広がりながら、整流板11の各貫通穴11aから吐出されるクリーンエアーのダウンフローによって下方に押し流される。さらに、下方空間SP2を漂う純水のミストは、スプラッシュガード35の上端35aの内側の空間の方に吸い寄せられる。ミスト噴射ノズル46が純水のミストを噴射している間は、下方空間SP2、特に、基板Wおよびカップ33と整流板11との間の空間全体に純水のミストが充満している状態が維持される。その一方で、ミスト噴射ノズル46が純水のミストの噴射を停止すると、ダウンフローによって純水のミストが下方空間SP2から速やかに排出される。
【0042】
次に、基板処理装置1によって行われる基板Wの処理例(第1処理例および第2処理例)について説明する。以下で行われる処理は、不要になったレジストパターンを基板Wから除去するレジスト除去処理である。以下の各動作は、制御装置3が基板処理装置1を制御することにより実行される。
図3は、基板処理装置1によって実行される基板Wの処理の一例(第1処理例)を説明するための工程図である。
【0043】
処理ユニット2によって基板Wが処理されるときには、薬液ノズル19およびリンス液ノズル28がスピンチャック12の上方から退避しており、スプラッシュガード35が下位置に位置している状態で、搬送ロボットのハンド(図示せず)によって、基板Wがチャンバー4内に搬入される。これにより、表面が上に向けられた状態で基板Wが複数のチャックピン14の上に置かれる。その後、搬送ロボットのハンドがチャンバー4の内部から退避し、チャンバー4の搬入搬出口5aがシャッター6で閉じられる。
【0044】
基板Wが複数のチャックピン14の上に置かれた後は、複数のチャックピン14が基板Wの周縁部に押し付けられ、基板Wが複数のチャックピン14によって把持される。その後、スピンモータ17が駆動され、基板Wの回転が開始される。これにより、基板Wが所定の液処理速度(たとえば数百rpm)で回転する。続いて、液体バルブ48および気体バルブ50が開かれ、ミスト噴射ノズル46からの純水のミストの噴射が開始される(
図3のステップS1)。これにより、下方空間SP2、特に、基板Wおよびカップ33と整流板11との間の空間全体に純水のミストが行き渡る。
【0045】
次に、薬液ノズル移動ユニット27が、薬液ノズル19を退避位置から処理位置に移動させ、ガード昇降ユニット38が、スプラッシュガード35を下位置から上位置に移動させる。これにより、薬液ノズル19が基板Wの上方に移動すると共に、スプラッシュガード35の上端35aが基板Wよりも上方に配置される。この状態で、第1原液バルブ22および第2原液バルブ25が開かれ、薬液ノズル19からの薬液(SPM)の吐出が開始される(
図3のステップS2)。
【0046】
薬液ノズル移動ユニット27は、薬液ノズル19を移動させることにより、基板Wの上面に対する薬液の着液位置を基板Wの中央部と基板Wの周縁部との間で移動させる。第1原液バルブ22および第2原液バルブ25が開かれてから所定時間が経過すると、第1原液バルブ22および第2原液バルブ25が閉じられ、薬液ノズル19からの薬液の吐出が停止される(
図3のステップS3)。その後、薬液ノズル移動ユニット27が、薬液ノズル19を基板Wの上方から退避させる。
【0047】
薬液ノズル19から吐出された薬液は、回転している基板Wの上面に着液した後、遠心力によって基板Wの上面に沿って外方に流れる。基板Wの上面周縁部に達した薬液は、基板Wの周囲に飛散し、スプラッシュガード35の内周面に受け止められる。このようにして、薬液が基板Wの上面全域に供給され、基板Wの上面全域を覆う薬液の液膜が基板W上に形成される。これにより、基板Wの上面全域が薬液で処理される。つまり、基板W上のレジスト膜が剥離される。さらに、制御装置3は、基板Wが回転している状態で、基板Wの上面に対する薬液の着液位置を基板Wの中央部と基板Wの周縁部との間で移動させるので、薬液の着液位置が基板Wの上面全域を通過する。そのため、基板Wの上面が均一に処理される。
【0048】
図4に示すように、薬液ノズル19から薬液が吐出されると、薬液成分を含む薬液雰囲気が基板Wの近くで発生する。チャックピン14やカップ33に薬液が衝突したときも、薬液雰囲気が基板Wの近くで発生する。また、100℃以上のSPMが薬液ノズル19から吐出されるので、SPMに含まれる水の蒸発により、SPMの液滴やミストが薬液ノズル19から激しく噴出する。噴出する勢いが強いので、薬液ノズル19から噴出したSPMの液滴やミストは整流板11の下面に付着する場合がある。SPMとレジストとの反応により基板Wからヒュームが発生する場合もある。殆どの薬液雰囲気は、ダウンフローや排気設備の吸引力によって、カップ33内に送り込まれる。しかしながら、一部の薬液雰囲気が、下方空間SP2に拡散する場合がある。
【0049】
図4に示すように、制御装置3は、純水のミストが下方空間SP2に充満している状態で、薬液ノズル19に薬液を吐出させる。下方空間SP2を漂う薬液雰囲気は、下方空間SP2を漂う純水のミストに接触する。この接触により、純水の粒子が薬液の粒子に結合し、より大きくかつ重い液体の粒子、すなわち、純水を取り込んだ薬液の粒子が形成される。薬液の粒子の重量が増加するので、薬液雰囲気が浮遊しにくくなる。さらに、薬液の粒子が大きくなるので、FFU10からの送風と排気ダクト40への排気とによって薬液の粒子に加わる下向きの力が増加する。そのため、薬液雰囲気が浮遊しにくくなる。これにより、下方空間SP2を漂う薬液雰囲気が、カップ33の内部を通じてチャンバー4から排出される。そのため、下方空間SP2での薬液雰囲気の滞留が抑制または防止される。
【0050】
薬液ノズル19からの薬液の吐出が停止された後は、リンス液ノズル移動ユニット32が、リンス液ノズル28を退避位置から処理位置に移動させる。これにより、リンス液ノズル28が基板Wの上方に移動する。その後、リンス液バルブ30が開かれ、リンス液ノズル28からのリンス液(純水)の吐出が開始される(
図3のステップS4)。リンス液ノズル移動ユニット32は、リンス液ノズル28を移動させることにより、基板Wの上面に対するリンス液の着液位置を基板Wの中央部と基板Wの周縁部との間で移動させる。リンス液バルブ30が開かれてから所定時間が経過すると、リンス液バルブ30が閉じられ、リンス液ノズル28からのリンス液の吐出が停止される(
図3のステップS5)。その後、リンス液ノズル移動ユニット32が、リンス液ノズル28を基板Wの上方から退避させる。
【0051】
リンス液ノズル28から吐出されたリンス液は、回転している基板Wの上面に着液した後、遠心力によって基板Wの上面に沿って外方に流れる。これにより、基板W上の薬液が純水によって洗い流され、基板Wの上面全域を覆う純水の液膜が形成される。ミスト噴射ノズル46からの純水のミストの噴射が継続されているので、基板W上の薬液をリンス液に置換する際に発生した薬液雰囲気は、下方空間SP2を漂う純水のミストに捕捉され、その後、カップ33の内部を通じてチャンバー4の外に排出される。これにより、下方空間SP2での薬液雰囲気の滞留が抑制または防止される。
【0052】
リンス液ノズル28からのリンス液の吐出が停止された後は、液体バルブ48および気体バルブ50が閉じられ、ミスト噴射ノズル46からのミストの噴射が停止される(
図3のステップS6)。下方空間SP2に残留している全てまたは殆ど全てのミストは、FFU10からの送風と排気ダクト40への排気とによって、チャンバー4から速やかに排出される。その後、基板Wがスピンモータ17によって回転方向に加速され、液処理速度よりも大きい乾燥速度(たとえば数千rpm)で基板Wが回転する(
図3のステップS7)。これにより、基板Wに付着しているリンス液が基板Wの周囲に振り切られ、基板Wが乾燥する。基板Wの高速回転が開始されてから所定時間が経過すると、スピンモータ17および基板Wの回転が停止される。
【0053】
基板Wの回転が停止された後は、ガード昇降ユニット38が、スプラッシュガード35を上位置から下位置に移動させる。さらに、複数のチャックピン14による基板Wの保持が解除される。搬送ロボットは、薬液ノズル19およびリンス液ノズル28がスピンチャック12の上方から退避しており、スプラッシュガード35が下位置に位置している状態で、ハンドをチャンバー4の内部に進入させる。その後、搬送ロボットは、ハンドによってスピンチャック12上の基板Wを取り、この基板Wをチャンバー4から搬出する。
【0054】
図5は、基板処理装置1によって実行される基板Wの処理の一例(第2処理例)を説明するための工程図である。
第2処理例は、ダウンフローの速度を増加させる点で、第1処理例と異なる。すなわち、制御装置3は、薬液ノズル19からの薬液の吐出が開始される前に、ダウンフローの速度、つまり、整流板11の貫通穴11aでの気体の吐出速度を通常速度から置換促進速度に増加させる(
図5のステップS8)。そして、制御装置3は、ミスト噴射ノズル46からのミストの噴射が停止された後、ダウンフローの速度を置換促進速度から通常速度に減少させる(
図5のステップS9)。つまり、制御装置3は、ダウンフローの速度を通常速度に戻す。
【0055】
ダウンフローの速度を増加させるとき、制御装置3は、FFU10を制御することによりFFU10からの気体の供給流量を通常供給流量から促進供給流量に増加させてもよいし、排気ダンパー41の開度を変更することにより排気ダクト40への気体の排出流量を通常排出流量から促進排出流量に増加させてもよい。また、制御装置3は、気体の供給流量および排出流量の両方を増加させることにより、ダウンフローの速度を増加させてもよい。なお、基板Wの処理時(チャンバー4の搬入搬出口5aが閉じられているとき)だけ排気風量を増加させる理由は、エネルギー浪費の問題もあるが、搬入搬出口5aが開いているときに排気風量を増加させると、搬入搬出口5aで負圧が発生し、外気がチャンバー4内に流入する可能性が高まるからである。
【0056】
前述のように、下方空間SP2を漂う薬液雰囲気は、下方空間SP2を漂う純水のミストに捕捉され、純水のミストと共に排気ダクト40内に排出される。さらに、ダウンフローの速度が高められるので、薬液雰囲気に含まれる液体の粒子(純水の粒子と薬液の粒子との結合体)に加わる下向きの力が増加する。そのため、下方空間SP2を漂う薬液雰囲気が速やかにクリーンエアーに置換される。これにより、基板W上のリンス液の液膜に薬液雰囲気が混入したり、乾燥後の基板Wに薬液雰囲気が付着したりすることを抑制または防止できる。さらに、薬液雰囲気がチャンバー4の内壁面等に残留することを抑制または防止できる。
【0057】
以上のように本実施形態では、チャンバー4内にダウンフローが形成されている状態で、チャンバー4内の基板Wに向けて薬液が吐出される。これにより、薬液が基板Wに供給される。さらに、チャンバー4内にダウンフローが形成されており、薬液が基板Wに向けて吐出されている状態で、純水がチャンバー4内で噴霧される。これにより、純水のミストがチャンバー4内に形成される。
【0058】
チャンバー4内で薬液雰囲気が発生したとしても、この薬液雰囲気は、チャンバー4内を漂う純水のミストに接触する。この接触により、純水の粒子が薬液の粒子に結合し、より大きくかつ重い液体の粒子、すなわち、純水の粒子と薬液の粒子との結合体が形成される。粒子の重量が増加するので、薬液雰囲気が浮遊しにくくなる。さらに、粒子が大きくなるので、ダウンフローから粒子に加わる下向きの力が増加する。そのため、薬液雰囲気は、基板Wよりも下方に配置される排気口42に向かって下方に流れ、排気口42を通じてチャンバー4から排出される。これにより、薬液雰囲気の拡散を抑制または防止できるので、薬液雰囲気に起因する基板Wおよびチャンバー4等の汚染を低減できる。
【0059】
また
図5に示す第2処理例では、純水がチャンバー4内で噴霧されており、ダウンフローの速度が高められている状態で、チャンバー4内の基板Wに向けて薬液が吐出される。チャンバー4内を下方に流れるダウンフローの速度が増加しているので、薬液雰囲気が浮遊しにくい上に、ダウンフローから薬液雰囲気に加わる下向きの力が増加する。したがって、薬液雰囲気をより確実にかつ速やかにチャンバー4から排出できる。
【0060】
また本実施形態では、水の沸点以上の高温の薬液が、チャンバー4内の基板Wに向けて薬液ノズル19から吐出される。薬液の温度が水の沸点以上なので、薬液に含まれる水の蒸発により、薬液の液滴やミストが薬液ノズル19から激しく噴出する。しかしながら、このとき発生する薬液雰囲気は、チャンバー4内を漂う純水のミストに捕捉され、その後、排気口42を通じてチャンバー4の外に排出される。したがって、薬液雰囲気が発生しやすい高温の薬液を基板Wに供給する場合でも、薬液雰囲気に起因する基板Wおよびチャンバー4等の汚染を低減できる。
【0061】
また本実施形態では、整流板11を上下方向に貫通する複数の貫通穴11aから下方に気体が吐出される。基板Wは、整流板11の下方に配置される。薬液雰囲気は、チャンバー4内を上昇して整流板11の下面に付着するおそれがある。特に、薬液ノズル19から激しく噴出した薬液の液滴やミストが整流板11の下面に付着するおそれがある。
整流板11の上方にはチャンバー4内に気体を送るFFU10が配置されている。整流板11の下面に付着した薬液を洗い流すために、純水などの洗浄液を整流板11の下面に向けて吐出すると、整流板11の貫通穴11aを通過した洗浄液がFFU10等にかかるおそれがある。つまり、整流板11は、スプラッシュガード35などの基板Wの周囲に配置される部材よりも洗浄しにくい。
【0062】
前述のように、純水のミストをチャンバー4内に発生させることによって、薬液雰囲気や薬液の液滴等が上方に流れることを抑制または防止できる。したがって、薬液雰囲気や薬液の液滴等が整流板11の下面に付着することを抑制または防止できる。これにより、整流板11の下面が薬液で汚染されることを抑制または防止できる。
また本実施形態では、基板Wと整流板11とが直接向かい合った状態で、チャンバー4内の基板Wに向けて薬液が吐出される。遮断板等の他の部材が基板Wと整流板11との間に配置されている場合には、整流板11が遮断板等によって保護されるので、薬液雰囲気が整流板11に付着しにくい。これとは反対に、基板Wの少なくとも一部が部材を介さずに整流板11に対向している場合には、遮断板等がある場合よりも薬液雰囲気が整流板11に付着しやすい。しかしながら、純水のミストをチャンバー4内に発生させることによって、薬液雰囲気や薬液の液滴等が整流板11に到達することを抑制または防止できるので、洗浄が容易でない整流板11の汚染を低減できる。
【0063】
本発明の実施形態の説明は以上であるが、本発明は、前述の実施形態の内容に限定されるものではなく、本発明の範囲内において種々の変更が可能である。
たとえば、第1処理例および第2処理例では、純水のミストの噴射を開始する時期(
図3および
図5のステップS1)が、薬液ノズル19からの薬液の吐出が開始される前であり、純水のミストの噴射を停止する時期(
図3および
図5のステップS6)が、リンス液ノズル28からのリンス液の吐出が停止された後である場合について説明した。しかし、純水のミストを噴射している期間の少なくとも一部が、薬液ノズル19が薬液を吐出している期間と重複するのであれば、ミストの噴射を開始する時期とミストの噴射を終了する時期は、いずれの時期であってもよい。
【0064】
また、第2処理例では、ダウンフローの速度の増加を開始する時期(
図5のステップS8)が、ミストの噴射を開始する前であり、ダウンフローの速度の増加を停止する時期(
図5のステップS9)が、ミストの噴射を停止した後である場合について説明した。しかし、ダウンフローの速度が増加している期間の少なくとも一部が、純水のミストを噴射している期間と重複するのであれば、ダウンフローの速度の増加を開始する時期とダウンフローの速度の増加を停止する時期は、いずれの時期であってもよい。
【0065】
また、前述の実施形態では、ミスト噴射ノズル46が、チャンバー4の側壁9から内方に突出している場合について説明したが、
図6に示すように、ミスト噴射ノズル46は、整流板11から下方に突出していてもよい。ミスト噴射ノズル46からのミストの噴射方向は、水平方向に限らず、下方向であってもよい。
また、
図6に示すように、処理ユニット2は、外径が基板Wの直径よりも大きい円板状の遮断板251と、遮断板251を昇降させる遮断板昇降ユニット254とをさらに備えていてもよい。遮断板251は、整流板11とスピンチャック12との間に配置されている。遮断板251の中心線は、回転軸線A1上に配置されている。遮断板251は、回転軸線A1に沿って上下方向に延びる支軸252によって水平な姿勢で支持されている。支軸252は、遮断板251の上方で水平に延びる支持アーム253に支持されている。
【0066】
遮断板昇降ユニット254は、支持アーム253を鉛直方向に移動させることにより、薬液ノズル19等のスキャンノズルが基板Wと遮断板251との間に進入できない高さまで遮断板251の下面が基板Wの上面に近接する下位置と、下位置よりも上方の上位置(
図6に示す位置)との間で、遮断板251を昇降させる。制御装置3は、たとえば基板Wを乾燥させるときに(
図3および
図5のステップS7)、遮断板251を下位置に位置させながら、遮断板251の下面中央部で開口する吐出口から窒素ガスを吐出させる。
【0067】
また、前述の実施形態では、基板Wに供給される薬液がSPMである場合について説明したが、SPM以外の薬液が基板Wに供給されてもよい。たとえば、パーティクルを基板Wから除去する洗浄処理を行うために、室温のフッ酸(フッ化水素酸)を基板Wに供給してもよいし、SiN膜などの窒化膜を基板Wから除去する選択エッチング処理を行うために、100℃以上(たとえば、140℃〜160℃)の高温のリン酸(リン酸の水溶液)を基板Wに供給してもよい。
【0068】
また、前述の実施形態では、純水が、ミスト噴射ノズル46に供給される場合について説明したが、薬液濃度が低い水溶液(たとえば、10〜100ppm程度の水溶液)が、ミスト噴射ノズル46に供給されてもよい。また、ミスト噴射ノズル46に供給される気体は、窒素ガス以外の不活性ガスであってもよいし、ドライエア(乾燥空気)であってもよい。
【0069】
また、前述の実施形態では、基板処理装置が、円板状の基板を処理する装置である場合について説明したが、基板処理装置は、多角形の基板を処理する装置であってもよい。
また、前述の全ての実施形態のうちの二つ以上が組み合わされてもよい。