特許第6338324号(P6338324)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6338324
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】印刷画像処理システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/12 20060101AFI20180528BHJP
【FI】
   G06F3/12 320
   G06F3/12 345
   G06F3/12 379
   G06F3/12 385
【請求項の数】2
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-126528(P2013-126528)
(22)【出願日】2013年6月17日
(65)【公開番号】特開2015-1866(P2015-1866A)
(43)【公開日】2015年1月5日
【審査請求日】2016年2月18日
【審判番号】不服2017-10028(P2017-10028/J1)
【審判請求日】2017年7月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士ゼロックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原 裕樹
【合議体】
【審判長】 千葉 輝久
【審判官】 山田 正文
【審判官】 松田 岳士
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4905604(JP,B1)
【文献】 特開2001−309104(JP,A)
【文献】 特開平10−171615(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F3/12
B41J29/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
解釈装置と、1以上の印刷画像データ生成装置とを有し、
前記解釈装置は、
印刷データに含まれる再利用対象の要素の中間データを記憶する記憶手段と、
前記印刷データを解釈して各ページの中間データを生成する解釈手段であって、前記各ページの中間データとして、当該ページ中の再利用対象でない要素については当該要素を解釈して得た中間データを含み、再利用対象の要素については前記記憶手段に記憶された当該要素を特定する特定情報を含んだ中間データを生成すると共に、前記再利用対象の要素を解釈して得た中間データを当該中間データに対応する前記特定情報と関連付けて記記憶手段に記憶させる解釈手段と、
を有し、
前記印刷画像データ生成装置は、
前記解釈装置から出力された各ページの中間データを受け取り、前記印刷データに対応する各ページの印刷画像データを生成し、生成した印刷画像データを印刷装置に供給すると共に、前記解釈装置から受け取ったページの中間データから前記特定情報を検出すると、前記記憶手段から当該特定情報に対応する前記再利用対象の要素の中間データを取得し、取得した当該中間データを用いて当該再利用対象の要素の印刷画像データを生成し、生成した当該要素の印刷画像データを当該ページの印刷画像データに組み込むものであり、
記記憶手段から前記特定情報に対応する中間データをネットワーク経由で取得する第1の手段と、
記記憶手段から前記特定情報に対応する中間データをメモリマップドファイル方式で取得する第2の手段と、
前記解釈装置が当該印刷画像データ生成装置とは異なるコンピュータ装置上に構成されている場合は前記第1の手段を動作させ、前記解釈装置が当該印刷画像データ生成装置と同じコンピュータ装置上に構成されている場合は前記第2の手段を動作させる制御を行う手段と、
を有することを特徴とする印刷画像処理システム。
【請求項2】
コンピュータ装置を、ネットワークを介して解釈装置と協働する複数の印刷画像データ生成装置のうちの1つとして機能させるためのプログラムであって、
前記解釈装置は、
印刷データに含まれる再利用対象の要素の中間データを記憶する記憶手段と、
前記印刷データを解釈して各ページの中間データを生成する解釈手段であって、前記各ページの中間データとして、当該ページ中の再利用対象でない要素については当該要素を解釈して得た中間データを含み、再利用対象の要素については前記記憶手段に記憶された当該要素を特定する特定情報を含んだ中間データを生成すると共に、前記再利用対象の要素を解釈して得た中間データを当該中間データに対応する前記特定情報と関連付けて前記記憶手段に記憶させる解釈手段と、
を有し、
前記プログラムは、前記コンピュータ装置を、
前記解釈装置から出力された各ページの中間データを受け取り、前記印刷データに対応する各ページの印刷画像データを生成し、生成した印刷画像データを印刷装置に供給すると共に、前記解釈装置から受け取ったページの中間データから前記特定情報を検出すると、前記記憶手段から当該特定情報に対応する前記再利用対象の要素の中間データを取得し、取得した当該中間データを用いて当該再利用対象の要素の印刷画像データを生成し、生成した当該要素の印刷画像データを当該ページの印刷画像データに組み込む手段、
記記憶手段から前記特定情報に対応する中間データをネットワーク経由で取得する第1の手段、
記記憶手段から前記特定情報に対応する中間データをメモリマップドファイル方式で取得する第2の手段、
前記解釈装置が当該印刷画像データ生成装置とは異なるコンピュータ装置上に構成されている場合は前記第1の手段を動作させ、前記解釈装置が当該印刷画像データ生成装置と同じコンピュータ装置上に構成されている場合は前記第2の手段を動作させる制御を行う手段、
として機能させるためのものであることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷画像処理システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、バリアブル印刷データから印刷イメージを生成する印刷制御装置が開示されている。この装置は、再利用オブジェクトの利用頻度を計算する再利用オブジェクト利用頻度計算部と、バリアブル印刷データを解釈して再利用オブジェクト及び一時利用オブジェクトを抽出しラスタライズするバリアブル印刷データ解析部と、キャッシュメモリ及び外部記憶装置と、各々の再利用オブジェクトを利用頻度に基づいて重み付けし、キャッシュメモリに保存できなくなるまで、利用頻度が高い順に、再利用オブジェクトの画像データをキャッシュメモリに保存する保存形態判定部と、再利用オブジェクト及び一時利用オブジェクトの画像を合成する画像合成処理部と、印刷イメージを印刷装置に転送する印刷イメージ転送部と、を有する。
【0003】
特許文献2に開示されたシステムは、複数ページの編集処理データのうち、各ページに共通な部分である共通部と、各ページに固有な部分である非共通部とをそれぞれ選択し、個別にファイルとして保存するレイアウトデータ分割保存手段と、レイアウトデータ分割保存手段により保存された共通部ファイルと非共通部ファイルを転送するレイアウトデータ転送手段と、レイアウトデータ転送手段により転送された共通部ファイルと非共通部ファイルとを合成し、各ページ毎に合成されたデータを出力する出力手段とを備える。
【0004】
特許文献3には、ページ記述言語(以下「PDL」と呼ぶ。PDLはPage Description Languageの略)の印刷データを印刷装置で取り扱い可能なビットマップ等の画像データに変換するための機構を、PDLから中間データへ変換する中間データ生成部と、中間データを画像データに変換する描画データ生成部の2段階に分け、中間データ生成部と描画データ生成部をそれぞれ複数並列動作させるシステムが開示されている。特許文献3の図13図20に関する説明では、複数のページで繰り返し利用されるフォームの取り扱いについての例が示されている。その説明では、フォームの中間データ又は画像データを描画データ生成部内のキャッシュメモリに保存し、そのフォームが含まれるページの画像データを生成する際にキャッシュメモリから取り出したフォームのデータを用いることが示されている。
【0005】
特許文献4に開示された印刷システムでは、PDLの印刷データをラスター画像データに変換する処理のための装置を、前段のフロントエンド装置と後段のバックエンド装置との2つの段階の装置に分けている。そして、前段は複数のフロントエンド装置による並列構成とするとともに、後段は1つのバックエンド装置内に搭載された複数の処理回路による並列構成としている。バックエンド装置内の複数の処理回路は、そのバックエンド装置内にあるキャッシュメモリを共用する。キャッシュメモリ内には、フォームなど、複数のページで共通利用されるオブジェクトのデータがキャッシュされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−192531号公報
【特許文献2】特開平09−016791号公報
【特許文献3】特開2011−070337号公報
【特許文献4】特開2012−200955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、印刷される画像を作成する際に使用されない要素のデータが解釈装置から印刷画像データ生成装置に転送されることのないシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
参考例の構成は、解釈装置と、前記解釈装置にネットワークを介して接続された複数の印刷画像データ生成装置とを有し、前記解釈装置は、印刷データに含まれる再利用対象の要素の中間データを記憶する再利用要素記憶手段と、前記印刷データを解釈して各ページの中間データを生成する解釈手段であって、前記各ページの中間データとして、当該ページ中の前記再利用対象でない要素については当該要素を解釈して得た中間データを含み、前記再利用対象の要素については前記再利用要素記憶手段内に記憶された当該要素を特定する特定情報を含んだ中間データを生成すると共に、前記再利用対象の要素を解釈して得た中間データを当該中間データに対応する前記特定情報により読み出し可能な形で前記再利用要素記憶手段に記憶させる解釈手段と、を有し、前記複数の印刷画像データ生成装置の各々は、前記解釈装置から出力された各ページの中間データを受け取り、それら各ページの中間データを用いて、前記印刷データに対応する、印刷装置が取り扱い可能な形式の各ページの印刷画像データを生成し、生成した各ページの印刷画像データを前記印刷装置に供給すると共に、前記解釈装置から受け取ったページの中間データから前記特定情報を検出すると、前記ネットワークを介して前記解釈装置の前記再利用要素記憶手段から当該特定情報に対応する前記再利用対象の要素の中間データを取得し、取得した当該中間データを用いて当該再利用対象の要素の印刷画像データを生成し、生成した当該要素の印刷画像データを当該ページの印刷画像データに組み込む、ことを特徴とする印刷画像処理システムである。
【0009】
請求項1に係る発明は、解釈装置と、1以上の印刷画像データ生成装置とを有し、前記解釈装置は、印刷データに含まれる再利用対象の要素の中間データを記憶する記憶手段と、前記印刷データを解釈して各ページの中間データを生成する解釈手段であって、前記各ページの中間データとして、当該ページ中の再利用対象でない要素については当該要素を解釈して得た中間データを含み、再利用対象の要素については前記記憶手段に記憶された当該要素を特定する特定情報を含んだ中間データを生成すると共に、前記再利用対象の要素を解釈して得た中間データを当該中間データに対応する前記特定情報と関連付けて記記憶手段に記憶させる解釈手段と、を有し、前記印刷画像データ生成装置は、前記解釈装置から出力された各ページの中間データを受け取り、前記印刷データに対応する各ページの印刷画像データを生成し、生成した印刷画像データを印刷装置に供給すると共に、前記解釈装置から受け取ったページの中間データから前記特定情報を検出すると、前記記憶手段から当該特定情報に対応する前記再利用対象の要素の中間データを取得し、取得した当該中間データを用いて当該再利用対象の要素の印刷画像データを生成し、生成した当該要素の印刷画像データを当該ページの印刷画像データに組み込むものであり、前記記憶手段から前記特定情報に対応する中間データをネットワーク経由で取得する第1の手段と、前記記憶手段から前記特定情報に対応する中間データをメモリマップドファイル方式で取得する第2の手段と、前記解釈装置が当該印刷画像データ生成装置とは異なるコンピュータ装置上に構成されている場合は前記第1の手段を動作させ、前記解釈装置が当該印刷画像データ生成装置と同じコンピュータ装置上に構成されている場合は前記第2の手段を動作させる制御を行う手段と、を有することを特徴とする印刷画像処理システムである。
【0010】
参考例の構成は、コンピュータ装置を、ネットワークを介して解釈装置と協働する複数の印刷画像データ生成装置のうちの1つの印刷画像データ生成装置として機能させるためのプログラムであって、前記解釈装置は、印刷データに含まれる再利用対象の要素の中間データを記憶する再利用要素記憶手段と、前記印刷データを解釈して各ページの中間データを生成する解釈手段であって、前記各ページの中間データとして、当該ページ中の前記再利用対象でない要素については当該要素を解釈して得た中間データを含み、前記再利用対象の要素については前記再利用要素記憶手段内に記憶された当該要素を特定する特定情報を含んだ中間データを生成すると共に、前記再利用対象の要素を解釈して得た中間データを当該中間データに対応する前記特定情報により読み出し可能な形で前記再利用要素記憶手段に記憶させる解釈手段と、を有し、前記プログラムは、前記コンピュータ装置を、前記解釈装置から出力された各ページの中間データを受け取り、それら各ページの中間データを用いて、前記印刷データに対応する、印刷装置が取り扱い可能な形式の各ページの印刷画像データを生成し、生成した各ページの印刷画像データを前記印刷装置に供給すると共に、前記解釈装置から受け取ったページの中間データから前記特定情報を検出すると、前記ネットワークを介して前記解釈装置の前記再利用要素記憶手段から当該特定情報に対応する前記再利用対象の要素の中間データを取得し、取得した当該中間データを用いて当該再利用対象の要素の印刷画像データを生成し、生成した当該要素の印刷画像データを当該ページの印刷画像データに組み込む手段、として機能させるものであることを特徴とするプログラムである。
【0011】
請求項2に係る発明は、コンピュータ装置を、ネットワークを介して解釈装置と協働する複数の印刷画像データ生成装置のうちの1つとして機能させるためのプログラムであって、前記解釈装置は、印刷データに含まれる再利用対象の要素の中間データを記憶する記憶手段と、前記印刷データを解釈して各ページの中間データを生成する解釈手段であって、前記各ページの中間データとして、当該ページ中の再利用対象でない要素については当該要素を解釈して得た中間データを含み、再利用対象の要素については前記記憶手段に記憶された当該要素を特定する特定情報を含んだ中間データを生成すると共に、前記再利用対象の要素を解釈して得た中間データを当該中間データに対応する前記特定情報と関連付けて前記記憶手段に記憶させる解釈手段と、を有し、前記プログラムは、前記コンピュータ装置を、前記解釈装置から出力された各ページの中間データを受け取り、前記印刷データに対応する各ページの印刷画像データを生成し、生成した印刷画像データを印刷装置に供給すると共に、前記解釈装置から受け取ったページの中間データから前記特定情報を検出すると、前記記憶手段から当該特定情報に対応する前記再利用対象の要素の中間データを取得し、取得した当該中間データを用いて当該再利用対象の要素の印刷画像データを生成し、生成した当該要素の印刷画像データを当該ページの印刷画像データに組み込む手段、前記記憶手段から前記特定情報に対応する中間データをネットワーク経由で取得する第1の手段、前記記憶手段から前記特定情報に対応する中間データをメモリマップドファイル方式で取得する第2の手段、前記解釈装置が当該印刷画像データ生成装置とは異なるコンピュータ装置上に構成されている場合は前記第1の手段を動作させ、前記解釈装置が当該印刷画像データ生成装置と同じコンピュータ装置上に構成されている場合は前記第2の手段を動作させる制御を行う手段、として機能させるためのものであることを特徴とするプログラムである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1又は3に係る発明によれば、印刷される画像を作成する際に使用されない要素のデータが解釈装置から印刷画像データ生成装置に転送されることのないシステムを提供することができる。
【0013】
請求項2又は4に係る発明によれば、単一のプログラムで、解釈装置が印刷画像データ生成装置と異なるコンピュータ装置で実行されている場合と同じコンピュータ装置で実行されている場合の両方に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態のシステム構成を示す図である。
図2】実施形態のRIP及びBEPの内部構成の例を示す図である。
図3】実施形態の描画処理部が実行する処理手順の一例を示す図である。
図4】変形例のシステム構成を示す図である。
図5】変形例のRIP及びBEPの内部構成の例を示す図である。
図6】変形例の描画処理部が実行する処理手順の一例を示す図である。
図7】BEPが再利用オブジェクトスプールからデータ取得方式を動的に切り替える処理手順の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1を参照して、本実施形態の第1のシステム構成例を説明する。
【0016】
図1に示すシステム構成は、クライアント装置10、印刷画像処理システム100、および印刷装置50を備える。
【0017】
クライアント装置10は、LAN(ローカルエリアネットワーク)等のネットワーク60を介して印刷画像処理システム100の少なくともCEP20に接続されている。
【0018】
クライアント装置10は、印刷画像処理システム100に対して印刷データを含んだ印刷指示を送信する装置である。クライアント装置10が送信する印刷データは、ページ記述言語(以下「PDL」と称す。PDLはPage Description Languageの略)で記述されている。
【0019】
印刷装置50は、紙等の媒体に印刷を行う装置であり、その形式は特に限定されない。例えば、連続紙プリンタであってよいし、カット紙プリンタであってもよい。また、印刷方式も、電子写真方式、インクジェット方式のいずれでもよく、また他の方式であってもよい。
【0020】
印刷画像処理システム100は、CEP20、RIP30、及び複数のBEP40から構成される。
【0021】
CEP(CEntral Processor:中央制御処理装置)20は、印刷画像処理システム100全体の制御を司る装置である。すなわち、CEP20は、クライアント装置10から印刷データを含んだ印刷指示を受信し、その印刷指示に応じた印刷処理を実行するために、RIP30及び複数のBEP40を制御する。例えば、CEP20は、RIP30に印刷データを送信し、処理させる。CEP20は、印刷画像処理システム100内に1つ設けられる。また、システム内にRIP30が複数存在する構成では、CEP20は、各RIP30に対して印刷データ内の異なるページを分配し、それら複数のRIP30に複数のページを並列的に解釈させる。
【0022】
RIP(Raster Image Processor:解釈処理装置)30は、CEP20から受信した印刷データのPDL記述を解釈し、その解釈結果に従って、印刷データが表す各ページの画像を表現する中間データを生成する。
【0023】
中間データは、クライアント装置10が生成したPDLデータと、印刷装置50が取り扱い可能なデータ形式(例えばラスター形式)の印刷画像データと、の中間の粒度のデータ形式のデータである。中間データ形式は、例えば、PDLで記述された画像オブジェクトを単純な形状の微小要素に細分化して表現する。中間データ形式としては、例えばディスプレイリスト形式が知られているが、本実施形態のシステムで用いる中間データ形式はこれに限らない。
【0024】
RIP30は、印刷データを解釈してページごとに中間データを生成し、生成した各ページの中間データをBEP40に送信する。図1のシステムでは、BEP40が複数あるので、RIP30は、それら複数のBEP40に対してページ単位で中間データを分配する。
【0025】
BEP(Back End Processor:バックエンド処理装置)40は、RIP30から受信した各ページの中間データを処理して、それら各ページの印刷画像データ(例えばラスター形式)を生成し、生成した印刷画像データを印刷装置50に供給して印刷させる。図1のシステム構成では、n個(nは2以上の整数)のBEP40を並列に動作させることで、印刷画像データの生成処理の速度向上を図っている。
【0026】
図1の例では、CEP20、RIP30及び各BEP40が、それぞれ、物理的に異なる複数のコンピュータ装置120、130、140−1、140−2、・・・140−n上に構築されている。コンピュータ装置120、130、140−1、140−2、・・・140−nは、LAN等のネットワーク62、64を介して通信可能となっている。CEP20とRIP30はネットワーク62経由で通信し、RIP30及び各BEP40はネットワーク64経由で通信する。ネットワーク62と64とは共通のネットワークであってよい。また、ネットワーク62及び64の少なくとも一方がネットワーク60と共通のネットワークであってもよい。
【0027】
BEP40がインストールされた各コンピュータ装置140−1、140−2、・・・、140−nと印刷装置50とは通信手段66により接続されている。通信手段66は、LAN等のネットワークであってもよいし、各コンピュータ装置140−1、140−2、・・・、140−nと印刷装置50とを一対一でつなぐ通信ケーブルであってもよい。
【0028】
なお、各コンピュータ装置120、130、140−1、140−2、・・・140−nは、ハードウエアとして、CPU(中央演算装置)、メモリ(一次記憶)、各種I/O(入出力)インタフェース、通信インタフェースなどがバスを介して接続された回路構成を有する。それら各コンピュータ装置は、通信インタフェースを介して、他の装置との間でデータの授受を行う。また、バスに対し、例えばI/Oインタフェース経由で、キーボードやマウスなどの入力装置、及び、液晶ディスプレイなどの表示装置が接続される。また、バスには、I/Oインタフェースを介して、HDD(ハードディスクドライブ)やSSD(ソリッドステートドライブ)などの二次記憶が接続され、更に、CD、DVD、ブルーレイ(商標)ディスク、フラッシュメモリなどの各種規格の可搬型の不揮発性記録媒体を読み取るためのディスクドライブが接続されてもよい。これら各種ドライブは、メモリに対する外部記憶装置として機能する。後述するCEP20、RIP30、又はBEP40の機能を記述したプログラムが、可搬型の記録媒体を経由して、またはネットワーク経由で、HDDなどの二次記憶に保存され、コンピュータ装置にインストールされる。二次記憶に記憶されたプログラムがメモリに読み出されCPUにより実行されることにより、CEP20、RIP30、又はBEP40が実現される。なお、CEP20、RIP30、及びBEP40の一部の機能(例えばビットマップ画像に対する画像処理)は、ハードウエア回路(例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)やDRP(Dynamic Reconfigurable Processor))として実装されてもよい。
【0029】
また、各コンピュータ装置120、130、140−1、140−2、・・・140−nは、それぞれ個別にインストールされたOS(オペレーティングシステム)により制御される。CEP20、RIP30、及びBEP40のプログラムは、それぞれ対応するコンピュータ装置120、130、140−1、140−2、・・・140−nのOS上で動作する。OSは、個々のコンピュータ装置の動作制御や、ネットワーク60、62、64等を介するそれらコンピュータ装置間の通信制御などを司る。
【0030】
図1に例示した印刷画像処理システム100は、RIP30の数が1つであったが、システム100内に複数のRIP30を設けてもよい。この場合、複数のRIP30はそれぞれ別々のコンピュータ装置上にインストールされてもよい。また、2以上のRIP30が1台のコンピュータ装置にインストールされてもよい。
【0031】
この点はBEP40についても同様であり、2以上のBEP40が1台のコンピュータ装置にインストールされてもよい。また、CEP20とRIP30とが1台のコンピュータ装置にインストールされてもよい。
【0032】
ただし、図1の例では、少なくともRIP30とBEP40とは異なるコンピュータ装置にインストールされているものとする。
【0033】
なお、互いに「異なる」コンピュータ装置とは、必ずしも別々の筐体に内蔵されたものである必要はない。例えば、ブレードサーバ等のように、それぞれCPU、メモリ、バス等を実装した基板を複数個、1つの筐体に搭載した装置があるが、この種の装置における個々の基板も「コンピュータ装置」の一種である。
【0034】
次に、図2を参照して、RIP30及びBEP40について更に詳しく説明する。RIP30は、制御部32、解釈部34及び再利用オブジェクトスプール36を有する。
【0035】
制御部32は、RIP30の動作制御を行う。制御部32は、CEP20及びBEP40の制御部42と通信して制御データ、例えば命令、問い合わせ、応答、各装置の状態を示す情報など、をやりとりしながら、RIP30における解釈処理を制御する。例えば、CEP20から印刷データの解釈の開始指示を受け取って解釈部34に解釈を開始させたり、BEP40の制御部42からページの中間データが受け入れ不可であるとの通知を受けて解釈部34の動作を一時停止させたりする。また、RIP30が複数存在するシステム構成の場合、CEP20から、解釈すべきページの割り当て(例えばページ番号で指定される)を受け、解釈部34に対し、印刷データ(PDLデータ)のうちそのページについて中間データを出力するように指示する。
【0036】
解釈部34は、CEP20から入力される印刷データのPDL記述を解釈し、その解釈結果に基づき、印刷データがPDLで表現している各ページの画像を中間データ形式で表現した中間データを生成する。
【0037】
PDLには、ページの画像の生成がそのページ以前のPDLデータの解釈結果に依存するページ非独立タイプのものと、ページごとのPDLデータのみで当該ページの画像を生成できるページ独立タイプのものが存在する。前者の場合、解釈部34は、CEP20から印刷指示に付随した印刷データ(PDLデータ)全体を受け取り、その印刷データを先頭から解釈し、そのうちCEP20から割り当てられたページについてのみ、その解釈結果に応じて中間データを生成する。後者(ページ独立)の場合、解釈部34は、CEP20からページ単位のPDLデータを受け取り、これを解釈して当該ページの中間データを生成する。いずれの場合も、システム内に1つしかRIP30が存在しない場合は、印刷データの全ページを解釈し、全ページの中間データを生成する。
【0038】
印刷すべき各ページは、それぞれ1以上のオブジェクト(画像要素)を含んでいる。例えば、オブジェクトには、文字、グラフィックス(線画、図形)、イメージ(連続調画像)などの種類がある。そして、ページ中に含まれるオブジェクトの中には、再利用されるもの、すなわち印刷データの全ページの画像の中に複数回現れるものがある。例えば、PstScript(登録商標)の場合、フォームやイメージなどといったタイプのオブジェクトがその一例である。本実施形態では、そのような再利用されるオブジェクトの中間データを、RIP30が動作するコンピュータ装置130内に設けられた再利用オブジェクトスプール36にスプールし、再利用に備える。
【0039】
すなわち、解釈部34は、印刷データを解釈してページの中間データを生成する中で、印刷データから再利用対象のオブジェクトを見つけると、そのオブジェクト(以下「再利用オブジェクト」と呼ぶ)の解釈結果の中間データを再利用オブジェクトスプール36に保存する。一方、ページの中間データ内のその再利用オブジェクトの部分には、そのオブジェクトの解釈結果の中間データの代わりに、再利用オブジェクトスプール36に保存した当該オブジェクトの中間データを特定するための特定情報を記述する。例えば、再利用オブジェクトの中間データをファイルとして再利用オブジェクトスプール36に保存する場合、ページの中間データ内のその再利用オブジェクトの部分には、そのファイルの格納場所を示すURL(Uniform Resource Locator)や、そのURLを含むHTTP(Hypertext Transfer Protocol)等の通信プロトコル等の記述が特定情報として組み込まれる。
【0040】
解釈部34は、例えば、印刷データ中のPDLの描画命令の種類から当該描画命令が表すオブジェクトが再利用されるタイプか否かを判定し、その判定結果に従って上述の処理を行う。
【0041】
また、解釈部34は、解釈の過程で印刷データから再利用オブジェクトを見つけた場合、同じ再利用オブジェクトの中間データが既に再利用オブジェクトスプール36内に保存されているかどうかを調べ、保存されている場合には、そのオブジェクトの解釈処理を省略してもよい。この場合、解釈部34は、そのオブジェクトの解釈は行わず、再利用オブジェクトスプール36内にあるそのオブジェクトの中間データを特定する特定情報をページの中間データに組み込む処理を行えばよい。なお、同じ再利用オブジェクトであるかどうかは、例えば、印刷データ(PDLデータ)に含まれるオブジェクトのID(識別情報)が同じであるか否かにより判定すればよい。また、別の例として、オブジェクトの画像内容を規定するパラメータ(例えば、描画コマンド、そのコマンドの引数、そのコマンドの実行時点での解釈部34の状態を示す状態変数の値)の組、又はその組から求められる特徴量(例えばそのパラメータ組のハッシュ値)をそのオブジェクトのフィンガープリント(指紋)として用い、フィンガープリントが一致するか否かに応じて、オブジェクト同士が同じであるかどうかを判定してもよい。この場合、再利用オブジェクトスプール36には、各再利用オブジェクトの中間データを、そのオブジェクトのフィンガープリントと対応づけて記憶しておけばよい。
【0042】
再利用オブジェクトスプール36を用いることで、再利用オブジェクトについては解釈処理の実行は1回だけで済む。
【0043】
ここで、解釈部34は、再利用されるタイプ(例えばフォーム)のオブジェクトのすべてを上述のように再利用オブジェクトとして扱う必要はない。例えば、再利用されるタイプのオブジェクトでも、非常に単純な形状のものや非常に小さいものなどは、毎回解釈を行っても解釈部34の処理負荷、処理時間がさほど増えず、BEP40が再利用オブジェクトスプール36からそのオブジェクトの中間データを取得するのに要する処理負荷、処理時間を考えると、再利用オブジェクトとしない方がシステム全体の処理速度が向上する。このように、再利用されるタイプのオブジェクトであっても、スプールしない方がシステム全体の処理速度が速くなると判断されるものについては、解釈部34は、再利用オブジェクトとしては取り扱わず、そのオブジェクトの解釈結果の中間データをページの中間データに組み込むようにしてもよい。
【0044】
なお、再利用オブジェクトスプール36に保存されるオブジェクトは、中間データ形式でのオブジェクトである。中間データ形式のオブジェクトは、元のPDLデータでのオブジェクトを表すものであってもよいし、元のPDLデータのオブジェクトを細分化したものであってもよい。
【0045】
解釈部34は、順次、生成したページの中間データをBEP40の描画処理部44に送信する。
【0046】
BEP40は、制御部42と描画処理部44を有する。制御部42は、BEP40の動作制御を行う。制御部42は、CEP20、RIP30の制御部32及び印刷装置50と通信して制御データをやりとりしながら、BEP40における描画(すなわち印刷画像データの生成)処理を制御する。例えば、CEP20又はRIP30の制御部32からページ描画の要求を受け取り、その要求に応じて当該ページの中間データを描画処理部44に処理させる。また、印刷装置50の状態に応じて、ページの印刷画像データの生成や印刷装置50への転送の実行や一時停止を行う。
【0047】
描画処理部44は、RIP30の解釈部34から受信したページの中間データを解釈して、そのページの印刷画像データ(例えばラスターデータ)を生成する。描画処理部44は、この生成処理の中でページの中間データの中から再利用オブジェクトスプール36内の再利用オブジェクトの中間データを特定する特定情報を検出すると、その特定情報を用いてRIP30に対してその中間データを要求する。そして、要求の結果得られた再利用オブジェクトの中間データを解釈し、その解釈の結果得られたそのオブジェクトの印刷画像データを、ページの印刷画像データに組み込む(例えば、ページの印刷画像データを保持するページメモリ(ページの画像用に確保されたメモリ領域)上に、そのオブジェクトの印刷画像データを書き込む)。
【0048】
図3に、BEP40が実行する処理手順の一例を示す。
【0049】
この手順では、BEP40の制御部42が、例えばRIP30からコマンドを受信すると、そのコマンドがページのラスタライズ要求(すなわち印刷画像データの作成を要求するコマンド)であるか、停止要求(印刷データの最終ページまで処理が完了した時に到来する、印刷ジョブの終了を指示する要求)であるかを判定する(S10)。受信したコマンドがラスタライズ要求であれば、その要求に関連づけてRIP30から送信されるページの中間データを受信し(S12)、受信した中間データを描画処理部44に処理させる。描画処理部44は、そのページの中間データの先頭から順に1つずつオブジェクトを読み込み、処理していく(S14)。すなわち、描画処理部44は、読み込んだオブジェクトが再利用オブジェクトであるか否かを判定し(S16)、再利用オブジェクトでなければ、当該オブジェクトを解釈して印刷画像データを生成し、生成した印刷画像データをページメモリに書き込む(S18)。S14で読み込んだオブジェクトが再利用オブジェクトであるか否かは、そのオブジェクトが、スプールされた再利用オブジェクトを特定する特定情報で表されているか否かにより判定すればよい。
【0050】
一方、S14で読み込んだオブジェクトが再利用オブジェクトである場合、すなわちそのオブジェクトが上述した特定情報を対象とする描画コマンドである場合、描画処理部44は、コンピュータ装置140のOSに対してバッファ46の確保を要求する(S20)と共に、ページの中間データを送ってきたRIP30に対し、その再利用オブジェクトの中間データの転送を要求する(S22)。
【0051】
S22では、描画処理部44は、例えば、コンピュータ装置140のOS等が提供するAPI(Application Programming Interface)等を用いて、特定情報が指し示すファイル(すわち、スプール36内の再利用オブジェクトの中間データのファイル)を要求する。この要求に応じてOSは、例えば、その特定情報がローカル(すなわち当該コンピュータ装置140内)のファイルではなく、特定の通信プロトコル(例えばHTTPやFTP(File Transfer Protocol))に対応していると判定した場合、その通信プロトコルを用いて、特定情報が示す格納場所を指し示すデータ要求(例えばHTTP GETリクエスト)をネットワーク64経由で、コンピュータ装置130に送る。この要求に応じ、RIP30からBEP40に対してソケット通信によりそのファイルのデータが転送されることになる。ここで、コンピュータ装置130及び140のそれぞれのOSは、ソケット通信のために、各自のメモリ内にバッファを確保する。BEP40内には、受信用の46がメモリ上に確保される。
【0052】
RIP30を有するコンピュータ装置130は、コンピュータ装置140(BEP40)からの要求に応じ、要求された再利用オブジェクトの中間データをネットワーク64経由のソケット通信で転送する。転送されてきた中間データは、バッファ46に蓄積される(S24)。要求した再利用オブジェクトの中間データ全体がバッファ46に蓄積されると、描画処理部44は、バッファ46内にある中間データを順に処理し、その中間データを印刷画像データに変換する(S18)。
【0053】
S18の後、描画処理部44は、ページの中間データの最後まで処理を終えたかどうかを判定する(S26)。この判定の結果が否定(N)の場合、描画処理部44はS14に戻り、その中間データ中の次のオブジェクトの描画コマンドについて処理を行う(S14〜S24)。S26の判定結果が肯定(Y)の場合、描画処理部44は、S10に戻り、RIP30から次のコマンドを受信する。
【0054】
再利用オブジェクトの中間データを保存するスプールをBEP40に持たせる従来構成の場合、各再利用オブジェクトがそれぞれどのページで利用されるかわからない一般的な状況では、RIP30は、すべての再利用オブジェクトの中間データを、すべてのBEP40に配信しなければならなかった。このことは、BEP40が担当するページ以外で用いられる再利用オブジェクトのデータをそのBEP40に配信することになる。このため従来構成では、BEP40は、結果的に使用しない再利用オブジェクトのデータまで保持するため大きなメモリ・ディスク容量を必要としていた。またすべての再利用オブジェクトのデータをすべてのBEP40に配信するため、ネットワーク64の帯域が圧迫される懸念もあった。
【0055】
これに対し、以上に説明した図1のシステム構成では、RIP30は、再利用オブジェクトの中間データを自装置内の再利用オブジェクトスプール36にスプールし、各BEP40が、それぞれ自分に割り当てられたページに含まれる再利用オブジェクトのみをRIP30内の再利用オブジェクトスプール36から取得する。逆に言えば、この構成では、BEP40で使用されない再利用オブジェクトはそのBEP40には送られない。したがって、BEP40は、使用しない再利用オブジェクトの中間データを記憶する必要がなく、これはBEP40のメモリやディスクの容量の節約につながる。また、使用されない再利用オブジェクトをRIP30からBEP40に送ることもないので、ネットワーク64の帯域の節約につながる。
【0056】
また、BEP40の数が1つのシステム構成でも、RIP30とBEP40とが別々のコンピュータ装置上に構築されている場合、再利用オブジェクト用のスプールをBEP40に設ける従来構成では、BEP40が複数ある場合と同様の問題が生じる。例えば、大量のページを含む印刷データのうち一部のページのみを印刷する印刷ジョブの場合、印刷されるページに含まれる再利用オブジェクトが印刷されないページの印刷データ内で定義されている場合もある。このような場合を考慮すると、RIP30は、全ページの印刷データを先頭から順に解釈し、その解釈の過程で見つけた再利用オブジェクトの中間データをすべてスプールすることが必要となる。したがって、スプールをBEP40側のコンピュータ装置140に設けると、結果的に使用されない再利用オブジェクトまでコンピュータ装置140に配信し、コンピュータ装置140内に記憶させることになってしまう。
【0057】
これに対し、図1のように、再利用オブジェクトスプール36をRIP30側のコンピュータ装置130に設け、BEP40が自らが処理するページで必要な再利用オブジェクトのみをそのスプール36から取得する方式を採用すれば、そのような問題は回避される。
【0058】
次に、図4図6を参照して、変形例を説明する。図1の例では、RIP30とBEP40とが別々のコンピュータ装置130及び140上に構築されていたが、この変形例では、図4に示すように、RIP30とBEP40とが同一のコンピュータ装置110上に構築されている。なお、図4の例では、CEP20も同じコンピュータ装置110上に構築されているが、これはこの変形例にとって必須のことではない。
【0059】
このようにRIP30とBEP40が同一コンピュータ装置110上に設けられている場合、再利用オブジェクトの中間データをネットワーク経由でRIP30からBEP40に転送する必要がないので、通信帯域の圧縮という問題は生じない。しかし、BEP40が行う処理が図1図3の例と同じであると、同一コンピュータ装置110内で実行されるプログラム同士の間(すなわちRIP30とBEP40の間)でデータ転送処理やバッファ46の容量確保が行われることになる。
【0060】
すなわち、図2の例の描画処理部44は、再利用オブジェクトの中間データの取得のために、RIP30に対してソケット通信によりデータ転送要求を行った。これに応じてBEP40のコンピュータ装置140のメモリ上にバッファ46が確保され、このバッファ46をめがけてRIP30側から中間データが転送された。このような再利用オブジェクトの取得方式は、RIP30がBEP40と同じコンピュータ装置110内に設けられている場合にもそのまま適用できるが、ある程度のサイズのバッファ46をあらかじめ確保する必要があったり、バッファリングのために処理にある程度の遅延が生じる可能性がある。
【0061】
これに対し、この変形例では、そのようなバッファ容量確保やバッファ利用のデータ転送を行わずに済む方式を示す。
【0062】
図5に、この変形例におけるRIP30とBEP40の構成を示す。図5の例において、RIP30は、図2の例と同じものでよい。
【0063】
一方、BEP40の描画処理部44aは、再利用オブジェクトの中間データを取得するための方式として、図2の例における描画処理部44とは異なる方式を用いる。すなわち、描画処理部44aは、再利用オブジェクトスプール36にスプールされた再利用オブジェクトの中間データを、メモリマップドファイル方式で取得する。
【0064】
メモリマップドファイル方式は、明示的な読み込みコマンド(例えばread)、書き込みコマンド(例えばwrite)を用いずに、あたかもメモリに対する読み書きのように、ファイルに対して読み書きを行う方式である。メモリマップドファイル方式の機能はOSにより提供される。例えば、UNIX(登録商標)系のOSは、メモリマップドファイルを用いるためのAPIとしてmmapを提供している。描画処理部44aは、ページの中間データ内から見つけた再利用オブジェクトのスプールデータを取得する場合、読み込みコマンドの代わりに、mmap等のメモリマップドファイルコマンドを用いる。このコマンドの引数には、その再利用オブジェクトを示す特定情報から得られる、そのオブジェクトの識別情報が含まれる。このコマンドを受け取ったコンピュータ装置110のOSは、コンピュータ装置110のOSのファイルシステム(再利用オブジェクトスプール36に該当)が管理するその再利用オブジェクトの中間データファイルを、メモリマップドファイル48としてメモリ空間上にマッピングする。メモリマップドファイルコマンドの機能により、その中間データファイル全体をメモリ空間に読み込まなくても、描画処理部44aは、その中間データファイルの中身へのランダムアクセスが可能になる。描画処理部44aは、メモリ空間上にマップされたメモリマップドファイル48にアクセスして中間データの必要な部分を読み出し、これを処理して、その再利用オブジェクトの印刷画像データを生成する。
【0065】
なお、再利用オブジェクトの取得方式以外の点については、描画処理部44aは図2の例の描画処理部44と同じでよい。また、描画処理部44a以外の点については、BEP40は、図2のBEP40と同じ構成でよい。
【0066】
図6に、この変形例のBEP40の処理手順の一例を示す。図6の処理手順では、S14でページの中間処理データから読み込んだオブジェクトが、S16で再利用オブジェクトであると判定された場合、描画処理部44は、その再利用オブジェクトをメモリマップドファイル方式で取得する(S26)。具体的には、例えば、再利用オブジェクトスプール36内にあるその再利用オブジェクトのファイルをオープンし、オープンしたファイルを対象としてメモリマップドファイルコマンドを発する。これにより、コンピュータ装置110のOSにより、再利用オブジェクトのファイルがメモリ上にマップされる。描画処理部44aは、そのメモリ上にマップされたファイルのデータを読み込み、処理する(S18)。なお、図6に示したフローのうち、S26以外の各ステップは、図3に示したフローの同じ符号のステップと同様の処理でよい。
【0067】
以上、再利用オブジェクトスプール36からの中間データの取得方式が異なる2種類のBEP40及びBEP40を例示した。ここで、一例として、それらBEP40及びBEP40の両方の機能(すなわち両方の中間データ取得方式)を有するBEPを用いてもよい。この両方の機能を有するBEPは、システム構成に応じて、いずれの機能を用いるかを選択する。すなわち、RIP30が当該BEPと異なるコンピュータ装置内にあるシステム構成の場合には、BEPは図1図3に示した(ネットワーク経由での)データ転送によるデータ取得方式を用い、RIP30が当該BEPと同じコンピュータ装置内にある場合には、図4図6に示したメモリマップドファイルによるデータ取得方式を用いる。図7に、この例におけるBEPの処理手順の例を示す。
【0068】
図7の手順では、BEPが起動したとき、又は印刷画像処理システムのシステム構成が変更された場合、BEPの制御部42は、CEP20からシステム構成情報を取得する(S30)。このシステム構成情報は、RIP30が当該BEPと同一コンピュータ装置内にあるかどうかを示す情報を含む。CEP20は、印刷画像処理システム全体を制御するためにシステム構成を把握しているので、システム構成情報を提供し得る。システム構成情報を受け取ったBEPは、その情報に基づきRIP30が当該BEPと同じコンピュータ装置上に存在するかどうかを判定する(S32)。この判定の結果、RIP30が異なるコンピュータ装置にあるとわかった場合、制御部42は、BEP内の描画処理部を、ネットワーク経由でのデータ転送によりスプールデータを取得する第1方式の描画処理部44に設定する(S34)。逆に、RIP30がBEPと同じコンピュータ装置にあるとわかった場合、制御部42は、BEP内の描画処理部を、メモリマップドファイル方式によりスプールデータを取得する第2方式の描画処理部44aに設定する(S36)。
【0069】
以上、本発明の実施形態及び変形例を説明したが、それら実施形態及び変形例はあくまで説明のための例示に過ぎない。本発明の範囲内で様々な変形や改良が可能である。
【符号の説明】
【0070】
10 クライアント装置、20 CEP、30 RIP、32,42 制御部、34 解釈部、36 再利用オブジェクトスプール、40 BEP、44,44a 描画処理部、46 バッファ、48 メモリマップドファイル、50 印刷装置、60,62,64 ネットワーク、66 通信手段、100 印刷画像処理システム、110,120,130,140−1,140−2,140−n コンピュータ装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7