【実施例】
【0038】
以下に、本発明の実施例について説明する。なお、
実施例1、3、4は本発明の実施例ではなく参考例である。また、「重量%」は、糸の比重が糸の種類によって大きく異なることがないことから、糸の太さの比に基づいて、算出した。
【0039】
(実施例1)
本実施例は、吸水マットに関する。
【0040】
[マイクロファイバーフィラメント糸の作製]
太さ110dt(デシテックス)/144f(フィラメント)のマイクロファイバー原糸を、6本引き揃え、S方向に50回/mの仮撚りをした後、所定の色に染色した。これにより、太さ660dtのマイクロファイバーフィラメントの仮撚り糸を作製した。
【0041】
[マットパイルの作製]
原液着色した、太さ165dt/48fの8本のポリエステル原糸を2本引き揃え、Z方向に50回/mの上撚りをした。これにより、太さ2640dtのAパイル糸(PETパイル糸)を作製した。
【0042】
上記マイクロファイバーフィラメントの仮撚り糸1本と、太さ660dtのBCFナイロン糸1本との間に、太さ110dtの融着糸
(第2融着糸)を1本配置した。融着糸は、ポリアミド系熱融着性繊維からなり、120℃で融着するようになっている。この融着糸が、仮撚りのマイクロファイバーフィラメント糸とBCFナイロン糸との螺旋状の接触界面の中央部に直線状に位置するように、S方向に220回/mの下撚りをした。この下撚り糸を、加湿加熱機によって120℃で20分間加熱し、融着糸を溶融し、仮撚りのマイクロファイバーフィラメント糸とBCFナイロン糸とを接着した。これにより、第1パイル原糸を作製した。
【0043】
太さ660dtの2本のBCFナイロン糸をS方向に220回/mの下撚りをして、第2パイル原糸を作製した。
【0044】
上記第1パイル原糸1本と上記第2パイル原糸1本との間に、太さ110dtの融着糸
(第1融着糸)を1本配置した。この融着糸が、第1パイル原糸と第2パイル原糸の螺旋状の接触界面の中央部に直線状に位置するように、Z方向に220回/mの上撚りをして、太さ2860dtの上撚りパイルを作製した。この上撚りパイルを、加湿加熱機によって120℃で20分間加熱した。この加熱により、融着糸を溶融し、第1パイル原糸と第2パイル原糸とを接着して、B1パイル糸(吸水パイル糸)を作製した。
【0045】
[マット原反の作製]
次に、Aパイル糸、Aパイル糸、Aパイル糸、Aパイル糸、B1パイル糸の順番に、これら5本のパイル糸を一組として繰り返して糸立てし、下記の条件にてタフティングして、マット原反を作製した。
基布…ポリエステル不織布:120g/m
2
タフト密度…・ゲージ方向:8個/インチ
・ステッチ方向:7個/インチ
・パイル形状:オールカット
・パイル長:5mm
・パイル目付量:500g/m
2
【0046】
上記一組のパイル糸において、パイル糸の合計の太さは13260dtであり、マイクロファイバーフィラメント糸の合計の太さは660dtである。このため、マイクロファイバーフィラメント糸の重量は、一組のパイル糸の全重量に対して660/13260、すなわち5.0重量%である。
【0047】
[吸水マットの作製]
上記マット原反を90cm×75cmの大きさに裁断し、それに下記のゴムシートを下記の条件で接合して、マット原反にマット基材が接合してなる吸水マットを作製した。
ゴムシート:未加硫NBRラバー(加硫薬剤配合)、1.5mm厚
加圧条件:3kg/cm
2
加硫条件:170℃×15分
【0048】
(実施例2)
B2パイル糸を次のように作製し、Aパイル糸、B2パイル糸、B2パイル糸、B2パイル糸の順番に、これら4本のパイル糸を一組として繰り返して糸立てした。その他は実施例1と同様にして、吸水マットを作製した。
【0049】
太さ660dtの2本のBCFナイロン糸の間に、太さ110dtの融着糸
(第3融着糸)を1本配置した。この融着糸が、2本のBCFナイロン糸間の螺旋状の接触界面の中央部に直線状に位置するように、S方向に220回/mの下撚りをした。この下撚り糸を、加湿加熱機によって120℃で20分間加熱し、融着糸を溶融して、2本のBCFナイロン糸を接着した。これにより、第3パイル原糸を作製した。
【0050】
上記第1パイル原糸と上記第3パイル原糸との間に、太さ110dtの融着糸を1本配置した。この融着糸が、第1パイル原糸と第3パイル原糸との間の螺旋状の接触界面の中央部に直線状に位置するように、Z方向に220回/mの上撚りをして、太さ2970dtの上撚りパイルを作製した。この上撚りパイルを、加湿加熱機によって120℃で20分間加熱した。この加熱により、融着糸を溶融し、第1パイル原糸と第3パイル原糸とを接着した。これにより、B2パイル糸(吸水パイル)を作製した。
【0051】
上記一組のパイル糸において、パイル糸の合計の太さは11510dtであり、マイクロファイバーフィラメント糸の合計の太さは1980dtである。このため、マイクロファイバーフィラメント糸の重量は、一組のパイル糸の全重量に対して1980/11510、すなわち17.2重量%である。
【0052】
(実施例3)
B3パイル糸を次のように作製し、4本のB3パイル糸を一組として繰り返して糸立てした。その他は実施例1と同様にして、吸水マットを作製した。
【0053】
2本の上記第1パイル原糸の間に、太さ110dtの融着糸を1本配置した。この融着糸が、2本の第1パイル原糸の螺旋状の接触界面の中央部に直線状に位置するように、Z方向に220回/mの上撚りをして、太さ2970dtの上撚りパイルを作製した。この上撚りパイルを、加湿加熱機によって120℃で20分間加熱した。この加熱により、融着糸を溶融し、2本の第1パイル原糸を接着した。これにより、B3パイル糸(吸水パイル)を作製した。
【0054】
上記一組のパイル糸において、パイル糸の合計の太さは11880dtであり、マイクロファイバーフィラメント糸の合計の太さは5280dtである。このため、マイクロファイバーフィラメント糸の重量は、一組のパイル糸の全重量に対して5280/11880、すなわち44.4重量%である。
【0055】
(実施例4)
実施例1のB1パイル糸の融着糸の太さがそれぞれ110dtであったのを77dtにして、B4パイル糸(吸水パイル)を作製した。このB4パイル糸を繰り返して糸立てした。その他は実施例1と同様にして、吸水マットを作製した。
【0056】
B4パイル糸の太さは2794dtであり、融着糸の合計の太さは154dtである。このため、融着糸の重量は、B4パイル糸の全重量に対して154/2794、すなわち5.5重量%である。
【0057】
(実施例5)
実施例2のB2パイル糸を繰り返して糸立てした。その他は実施例1と同様にして、吸水マットを作製した。
【0058】
B2パイル糸の太さは2970dtであり、融着糸の合計の太さは330dtである。このため、融着糸の重量は、一組のパイル糸の全重量に対して330/2970、すなわち11.1重量%である。
【0059】
(実施例6)
実施例2のB2パイル糸の融着糸の太さがそれぞれ110dtであったのを220dtにして、B6パイル糸(吸水パイル)を作製した。このB6パイル糸を繰り返して糸立てした。その他は実施例1と同様にして、吸水マットを作製した。
【0060】
B6パイル糸の太さは3300dtであり、融着糸の合計の太さは660dtである。このため、融着糸の重量は、B6パイル糸の全重量に対して660/3300、すなわち20.0重量%である。
【0061】
(実施例7)
実施例2のB2パイル糸の下撚りおよび上撚りの撚り回数がそれぞれ220回/mであったのを160回/mにして、B7パイル糸(吸水パイル)を作製した。Aパイル糸とB7パイル糸とを一組として繰り返して糸立てした。その他は実施例1と同様にして、吸水マットを作製した。
【0062】
(実施例8)
Aパイル糸とB2パイル糸とを一組として繰り返して糸立てした。その他は実施例1と同様にして、吸水マットを作製した。
【0063】
(実施例9)
実施例2のB2パイル糸の下撚りおよび上撚りの撚り回数がそれぞれ220回/mであったのを240回/mにして、B9パイル糸(吸水パイル)を作製した。Aパイル糸とB9パイル糸とを一組として繰り返して糸立てした。その他は実施例1と同様にして、吸水マットを作製した。
【0064】
(比較例1)
Aパイル糸、Aパイル糸、Aパイル糸、Aパイル糸、Aパイル糸、Aパイル糸、B1パイル糸の順番に、これら7本のパイル糸を一組として繰り返して糸立てし、その他は実施例1と同様にして、吸水マットを作製した。
【0065】
上記一組のパイル糸において、パイル糸の合計の太さは18460dtであり、マイクロファイバーフィラメント糸の合計の太さは660dtである。このため、マイクロファイバーフィラメント糸の重量は、一組のパイル糸の全重量に対して660/18460、すなわち3.6重量%である。
【0066】
(比較例2)
B12パイル糸を次のように作製し、その他は実施例1と同様にして、吸水マットを作製した。
【0067】
2本の上記マイクロファイバーフィラメントの仮撚り糸の間に、太さ110dtの融着糸を1本配置した。この融着糸が、2本のマイクロファイバーフィラメントの仮撚り糸の間の螺旋状の接触界面の中央部に直線状に位置するように、S方向に220回/mの下撚りをした。この下撚り糸を、加湿加熱機によって120℃で20分間加熱し、融着糸を溶融して、マイクロファイバーフィラメントの仮撚り糸同士を接着した。これにより、第4パイル原糸を作製した。
【0068】
上記第1パイル原糸と上記第4パイル原糸との間に、太さ110dtの融着糸を1本配置した。この融着糸が、第1パイル原糸と第4パイル原糸との間の螺旋状の接触界面の中央部に直線状に位置するように、Z方向に220回/mの上撚りをして、太さ2970dtの上撚りパイルを作製した。この上撚りパイルを、加湿加熱機によって120℃で20分間加熱した。この加熱により、融着糸を溶融し、第1パイル原糸と第3パイル原糸とを接着した。これにより、B12パイル糸(吸水パイル)を作製した。
【0069】
次に、4本のB12パイル糸を一組として、繰り返して糸立てした。
【0070】
上記一組のパイル糸において、パイル糸の合計の太さは11880dtであり、マイクロファイバーフィラメント糸の合計の太さは7920dtである。このため、マイクロファイバーフィラメント糸の重量は、一組のパイル糸の全重量に対して7920/11880、すなわち66.7重量%である。
【0071】
(比較例3)
実施例1のB1パイル糸の融着糸の太さがそれぞれ110dtであったのを55dtにして、B13パイル糸(吸水パイル)を作製した。このB13パイル糸を繰り返して糸立てした。その他は実施例1と同様にして、吸水マットを作製した。
【0072】
B13パイル糸の太さは2750dtであり、融着糸の合計の太さは110dtである。このため、融着糸の重量は、B4パイル糸の全重量に対して154/2794、すなわち4.0重量%である。
【0073】
(比較例4)
実施例2のB2パイル糸の融着糸の太さがそれぞれ110dtであったのを330dtにして、B14パイル糸(吸水パイル)を作製した。このB14パイル糸を繰り返して糸立てした。その他は実施例1と同様にして、吸水マットを作製した。
【0074】
B14パイル糸の太さは3630dtであり、融着糸の合計の太さは990dtである。このため、融着糸の重量は、B14パイル糸の全重量に対して990/3630、すなわち27.3重量%である。
【0075】
(比較例5)
実施例2のB2パイル糸の下撚りおよび上撚りの撚り回数がそれぞれ220回/mであったのを130回/mにして、B15パイル糸(吸水パイル)を作製した。Aパイル糸とB15パイル糸とを一組として繰り返して糸立てした。その他は実施例1と同様にして、吸水マットを作製した。
【0076】
(比較例6)
実施例2のB2パイル糸の下撚りおよび上撚りの撚り回数がそれぞれ220回/mであったのを270回/mにして、B16パイル糸(吸水パイル)を作製した。Aパイル糸とB16パイル糸とを一組として繰り返して糸立てした。その他は実施例1と同様にして、吸水マットを作製した。
【0077】
(吸水性)
実施例1〜9および比較例1〜6の吸水マットについて、次のような、歩行による靴底マット水拭き取り試験を行って、吸水性を調べた。
【0078】
(マットのNEW加工)
吸水マットを、50キロ洗濯機・乾燥機において、負荷率80%にて、洗浄乾燥した。その後、マットに起毛加工を施した。
【0079】
(吸水性試験)
まず、上記吸水マットを鋏で20cm×30cmの大きさに裁断し、この裁断されたマット片を20℃、65%湿度環境内に一昼夜放置する。
【0080】
次に、上記マット片の重量と綿ウエスの重量を測定する。そして、水を張ったトレーに、靴底を2秒間浸し、その後、その靴底でスノコを2回踏み、靴底に付着する水分量が一定量(例えば1.4g〜1.8g)になるようにする。次に、マット片を2秒踏んだ後、綿ウエスを5回踏んで、靴底の残水を拭き取る。そして、マット片および綿ウエスのそれぞれの重量を測定する。これを2回繰り返し、マット片が靴底から拭き取った水分量で評価した。その結果を表1〜3に示す。ここで、マット片が靴底から拭き取った水分量が靴底に付着していた水分量の90%を超えている場合に、結果良好(○)とした。
【0081】
なお、マット片の重量変化量が、マット片が靴底から拭き取った水分量に相当する。また、マット片の重量変化量と綿ウエスの重量変化量とを合わせた量が、靴底に付着していた水分量に相当する。
【0082】
(耐洗濯性)
実施例1〜9および比較例1〜6の吸水マットについて、次のような、洗濯乾燥後のパイル先端開き試験を行って、耐洗濯性を調べた。
【0083】
(洗濯乾燥条件)
上記吸水マットに、以下の条件で洗濯作業および乾燥作業を行って、吸水マットのパイル糸の先端の開き、マイクロファイバーフィラメント糸やBCF糸の脱落や剥離などを目視で評価した。その結果を表1〜3に示す。ここで、パイル糸の先端の開き等が確認できなかった場合に、耐洗濯性が良好である(○)とした。
・洗濯試験機:ターゴットメータ
・洗濯条件:60℃、30分間、回転数120rpm
・乾燥機:家庭用タンブラー乾燥機
・乾燥条件:乾くまで
【0084】
【表1】
【0085】
表1は、実施例1〜3および比較例1、2の結果を示している。ここで、実施例1〜3および比較例1、2は、吸水マットにおけるマイクロファイバーフィラメント糸比率、つまり、パイル糸の全重量に対するマイクロファイバーフィラメント糸の重量比率であるマイクロファイバー糸比率のみが異なっている。
【0086】
実施例1〜3の吸水マットは、吸水性および耐洗濯性が良好である。これに対して、比較例1の吸水マットは、耐洗濯性が良かったが、吸水性があまり良くなかった。これは、比較例3の吸水マットのマイクロファイバー糸比率が小さいので、吸水性能が低かったためである。比較例4の吸水マットは、吸水性が良かったが、耐洗濯性があまり良くなかった。これは、比較例4の吸水マットのマイクロファイバー糸比率が大きいので、繰り返しの洗浄・乾燥によって、パイル糸の先端が開いたり、マイクロファイバーフィラメント糸の脱落や剥離があったためである。したがって、マイクロファイバー糸比率は、好ましくは、5.0%〜44.4%である。
【0087】
【表2】
【0088】
表2は、実施例4〜6および比較例3、4の結果を示している。ここで、実施例4〜6および比較例3、4は、吸水マットにおける融着糸比率、つまり、パイル糸の全重量に対する融着糸の重量比率である融着糸比率のみが異なっている。
【0089】
実施例4〜6の吸水マットは、吸水性および耐洗濯性が良好である。これに対して、比較例3の吸水マットは、吸水性が良かったが、耐洗濯性があまり良くなかった。これは、比較例3の吸水マットの融着糸比率が小さいので、繰り返しの洗浄・乾燥によって、パイル糸の先端が開いたり、マイクロファイバーフィラメント糸やBCF糸の脱落や剥離があったためである。比較例4の吸水マットは、吸水性があまり良くなかったが、耐洗濯性が良かった。これは、比較例4の吸水マットの融着糸比率が大きいので、吸水性能が低下したためである。したがって、融着糸比率は、好ましくは、5.5%〜20.0%である。
【0090】
【表3】
【0091】
表3は、実施例7〜9および比較例5、6の結果を示している。ここで、実施例7〜9および比較例5、6は、吸水マットにおけるパイル糸の下撚り回数および上撚り回数のみが異なっている。
【0092】
実施例7〜9の吸水マットは、吸水性および耐洗濯性が良好である。これに対して、比較例5の吸水マットは、吸水性および耐洗濯性があまり良くなかった。これは、比較例5の吸水マットのパイル糸の下撚り回数および上撚り回数が少ないため、吸水性能が低下すると共に、繰り返しの洗浄・乾燥によって、パイル糸の先端が開いたり、マイクロファイバーフィラメント糸やBCF糸の脱落や剥離があった。比較例6の吸水マットは、吸水性があまり良くなかったが、耐洗濯性が良かった。これは、比較例6の吸水マットのパイル糸の下撚り回数および上撚り回数が多いので、吸水性能が低下したためである。したがって、パイル糸の下撚り回数および上撚り回数は、好ましくは、160回/m〜240回/mである。
【0093】
本発明の具体的な実施の形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々変更して実施することができる。