特許第6338364号(P6338364)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6338364
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】吸水マット
(51)【国際特許分類】
   A47G 27/02 20060101AFI20180528BHJP
【FI】
   A47G27/02 D
   A47G27/02 101C
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-254198(P2013-254198)
(22)【出願日】2013年12月9日
(65)【公開番号】特開2015-112143(P2015-112143A)
(43)【公開日】2015年6月22日
【審査請求日】2016年11月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000133445
【氏名又は名称】株式会社ダスキン
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100118625
【弁理士】
【氏名又は名称】大畠 康
(74)【代理人】
【識別番号】100144200
【弁理士】
【氏名又は名称】奥西 祐之
(72)【発明者】
【氏名】横越 道夫
(72)【発明者】
【氏名】金山 健彦
(72)【発明者】
【氏名】越智 清治
【審査官】 大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−282339(JP,A)
【文献】 特開2002−155438(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第0965300(EP,A1)
【文献】 特開2010−150708(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3108152(JP,U)
【文献】 特開平5−9860(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 27/02
D02G 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基布に複数種類のパイル糸がタフトされてなるマット原反、を有する吸水マットにおいて、
少なくとも一種類の上記パイル糸は、マイクロファイバーフィラメント糸を含み、且つ吸水性を有する、吸水パイル糸であり、
上記吸水パイル糸は、第1パイル原糸と、第2パイル原糸と、第1融着糸とを有しており、
上記第1パイル原糸は、少なくとも1本の上記マイクロファイバーフィラメント糸を含む複数の糸と、第2融着糸とを有しており、
上記第1パイル原糸の上記複数の糸は、上記第2融着糸と共に下撚りされ、上記第2融着糸の溶融によって互いに接着されたものであり、
上記第2パイル原糸は、2本のBCFナイロン糸を含む複数の糸が第3融着糸と共に下撚りされて上記第3融着糸の溶融によって互いに接着されたものであり、
上記第1パイル原糸および上記第2パイル原糸は、上記第1融着糸と共に上撚りされ、上記第1融着糸の溶融によって互いに接着されたものであり、
上記下撚りおよび上記上撚りの撚り回数は、160〜240回/mであり、
上記第1融着糸および上記第2融着糸の全重量は、上記基布にタフトされた全種類のパイル糸の全重量に対して5.5〜20.0%であり、
上記マイクロファイバーフィラメント糸の重量は、上記基布にタフトされた全種類のパイル糸の全重量に対して5.0〜44.4%であることを特徴とする吸水マット。
【請求項2】
少なくとも一部の上記吸水パイル糸において、上記第1パイル原糸および上記第2パイル原糸には、それぞれ、モノフィラメント糸が含まれている、請求項1に記載の吸水マット。
【請求項3】
上記パイル糸の長さは、4〜7mmである、請求項1または2に記載の吸水マット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として吸水目的で使用する吸水マットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、吸水マットとしては、特開2005−245488号公報(特許文献1)に記載されているものがある。この吸水マットは、基布にパイル糸がタフトされたものであり、図4に示すように、パイル糸80は、第1パイル原糸81と第2パイル原糸82とが、その間に配置された1本の融着糸83と共に上撚りされて接着されて作製されたものである。第1パイル原糸81および第2パイル原糸82は、それぞれ、吸水糸91とBCF糸92とが合わせて下撚りされて作製されたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−245488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の吸水マットでは、第1パイル原糸81および第2パイル原糸82は、それぞれ、吸水糸91とBCF糸92とが合わせて下撚りされているだけであり、吸水糸91とBCF糸92とは接着されていない。このため、吸水マットを繰り返し洗濯および乾燥すると、特にパイル糸80の先端において第1パイル原糸81と第2パイル原糸82とが分離して、開いてしまうことがあった。これにより、吸水マットの洗濯および乾燥に対する耐久性、すなわち耐洗濯性が十分ではないという問題があった。また、パイル糸80の先端が開いて毛細管現象の低下が生じ、吸水マットの吸水性が低下するという問題があった。
【0005】
そこで、本発明の課題は、耐洗濯性を向上できると共に吸水性が低下するのを防止できる吸水マットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、基布に複数種類のパイル糸がタフトされてなるマット原反、を有する吸水マットにおいて、少なくとも一種類の上記パイル糸は、マイクロファイバーフィラメント糸を含み、且つ吸水性を有する、吸水パイル糸であり、上記吸水パイル糸は、第1パイル原糸と、第2パイル原糸と、第1融着糸とを有しており、上記第1パイル原糸は、少なくとも1本のマイクロファイバーフィラメント糸を含む複数の糸と、第2融着糸とを有しており、上記第1パイル原糸の上記複数の糸は、上記第2融着糸と共に下撚りされ、上記第2融着糸の溶融によって互いに接着されたものであり、上記第2パイル原糸は、2本のBCFナイロン糸を含む複数の糸が第3融着糸と共に下撚りされて上記第3融着糸の溶融によって互いに接着されたものであり、上記第1パイル原糸および上記第2パイル原糸は、上記第1融着糸と共に上撚りされ、上記第1融着糸の溶融によって互いに接着されたものであり、上記下撚りおよび上記上撚りの撚り回数は、160〜240回/mであり、上記第1融着糸および上記第2融着糸の全重量は、上記基布にタフトされた全種類のパイル糸の全重量に対して5.5〜20.0%であり、上記マイクロファイバーフィラメント糸の重量は、上記基布にタフトされた全種類のパイル糸の全重量に対して5.0〜44.4%であることを特徴としている。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、少なくとも一部の上記吸水パイル糸において、上記第1パイル原糸および上記第2パイル原糸には、それぞれ、モノフィラメント糸が含まれている。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、パイル糸の長さは、4〜7mmである。
【発明の効果】
【0009】
一般に、マイクロファイバーフィラメント糸は、太さが1.1デシテックス(dt)以下であり、水濡れ性に優れており、毛細管現象によって極めて吸水性が高い。また、マイクロファイバーフィラメント糸は、フィラメント糸であり、耐洗濯性が十分であり、吸水性を持続することができる。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、吸水マットの少なくとも一種類のパイル糸がマイクロファイバーフィラメント糸を含み、マイクロファイバーフィラメント糸の重量は、基布にタフトされた全種類のパイル糸の全重量に対して5.0〜44.4%である。したがって、マイクロファイバーフィラメント糸によって、吸水パイル糸の耐洗濯性を向上できると共に吸水性が低下するのを防止できる。
【0011】
また、第1パイル原糸の下撚りおよび第2パイル原糸の下撚りの撚り回数と、第1パイル原糸および第2パイル原糸の上撚りの撚り回数とは、それぞれ160〜240回/mであり、第1融着糸および第2融着糸の全重量は、基布にタフトされた全種類のパイル糸の全重量に対して5.5〜20.0%である。このため、第1パイル原糸および第2パイル原糸は、第1融着糸と共に上撚りされ、第1融着糸の溶融によって互いに強固に接着されている。このため、吸水マットを繰り返し洗濯しても、吸水パイル糸の先端が開いて毛細管現象が低下してしまうのを防止できる。したがって、吸水パイル糸の耐洗濯性を向上できると共に吸水性が低下するのを防止できる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、少なくとも一部の上記吸水パイル糸の第1パイル原糸および第2パイル原糸の複数の糸には、それぞれ、モノフィラメント糸が含まれている。このため、吸水パイル糸の剛性が上がって吸水パイル糸の直立性が向上し、吸水パイル糸のブラッシング効果を向上できる。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、パイル糸の長さは、4〜7mmであるので、吸水マットの厚さを従来よりも低減できる。このため、より多くの場所に吸水マットを設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態の吸水マットを構成するパイル糸の構成を示す簡略構成図である。
図2】上記吸水マットを構成する別のパイル糸の構成を示す簡略構成図である。
図3】上記吸水マットの縦断面模式図である。
図4】従来の吸水マットを構成するパイル糸の構成を示す簡略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を図示の実施形態により詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態の吸水マットを構成する吸水パイル糸10の構成を簡略化して示している。図1に示すように、吸水パイル糸10は、第1パイル原糸11と、第2パイル原糸12と、第1パイル原糸11と第2パイル原糸12との間に配置された第1の融着糸13と、を有している。第1パイル原糸11と第2パイル原糸12とが螺旋状に上撚りされ、第1パイル原糸11と第2パイル原糸12との螺旋状の接触界面の中央部に第1の融着糸13が直線状に位置している。上記上撚りの撚り回数は、160〜240回/mである。第1の融着糸13の溶融によって、第1パイル原糸11と第2パイル原糸12とが上記螺旋状の接触界面にて互いに接着されている。
【0017】
第1パイル原糸11は、マイクロファイバーフィラメント糸21と、BCFナイロン糸22と、マイクロファイバーフィラメント糸21とBCFナイロン糸22との間に配置された第2の融着糸23と、を含んでいる。マイクロファイバーフィラメント糸21とBCFナイロン糸22とを含む複数の糸が螺旋状に下撚りされ、これら複数の糸の螺旋状の接触界面の中央部に第2の融着糸23が直線状に位置している。上記下撚りの撚り回数は、160〜240回/mである。第2の融着糸23の溶融によって、マイクロファイバーフィラメント糸21とBCFナイロン糸22とを含む複数の糸が上記螺旋状の接触界面にて互いに接着されている。
【0018】
第2パイル原糸12は、2本のBCFナイロン糸22を含んでいる。2本のBCFナイロン糸22を含む複数の糸が螺旋状に下撚りされている。上記下撚りの撚り回数は、160〜240回/mである。
【0019】
図2は、本発明の一実施形態の吸水マットを構成する他の吸水パイル糸20の構成を簡略化して示している。図1の吸水パイル糸10の構成と相違する点を説明すると、この吸水パイル糸20では、モノフィラメント糸24が第1パイル原糸11Aおよび第2パイル原糸12Aにそれぞれ含まれている。なお、この図2において、図1と同一の符号は、図1と同じ構成であるため、その説明を省略する。
【0020】
第1パイル原糸11Aでは、マイクロファイバーフィラメント糸21とBCFナイロン糸22とモノフィラメント糸24とを含む複数の糸が螺旋状に下撚りされ、これら複数の糸の螺旋状の接触界面の中央部に第2の融着糸23が直線状に位置している。上記下撚りの撚り回数は、160〜240回/mである。第2の融着糸23の溶融によって、マイクロファイバーフィラメント糸21とBCFナイロン糸22とモノフィラメント糸24とを含む複数の糸が上記螺旋状の接触界面にて互いに接着されている。
【0021】
第2パイル原糸12Aでは、2本のBCFナイロン糸22とモノフィラメント糸24とを含む複数の糸が螺旋状に下撚りされている。上記下撚りの撚り回数は、160〜240回/mである。
【0022】
マイクロファイバーフィラメント糸21の重量は、吸水マットを構成するパイル糸の全重量に対して5.0〜44.4%である。また、第1,第2融着糸13、23の全重量は、上記パイル糸の全重量の5.5〜20.0%である。
【0023】
図3は、本発明の一実施形態の吸水マットの縦断面模式図である。この吸水マット7は、マット原反71がマット基材72上に接合されて構成されている。マット原反71は、上記構成の吸水パイル糸10、20を含むパイル糸5が基布711にタフトされて構成されている。マット基材72は、未加硫ゴムシートを、基布711の裏面に押し付けて、加硫することにより、得られている。
【0024】
パイル糸5の長さは、4〜7mmである。パイル糸5は、図3ではカットパイルの形状を有しているが、ループパイルでもよく、カットパイルとループパイルとが混在したものでもよい。
【0025】
上記構成の吸水マットは、パイル糸5がマイクロファイバーフィラメント糸21とBCFナイロン糸22との両方を含んでいる。マイクロファイバーフィラメント糸21の重量は、パイル糸5の全重量に対して5.0〜44.4%である。したがって、上記構成の吸水マットによれば、マイクロファイバーフィラメント糸21によって吸水パイル糸10、20の耐洗濯性を向上できると共に吸水性が低下するのを防止できる。
【0026】
また、上記下撚りの撚り回数と、上記上撚りの撚り回数は、それぞれ160〜240回/mである。また、第1,第2融着糸13、23の全重量は、パイル糸5の全重量に対して5.5〜20.0%である。第1パイル原糸11、11A、第2パイル原糸12、12Aおよび吸水パイル糸10、20が撚られると共に第1,第2融着糸13、23によって強固に接着されている。このため、上記吸水マットを繰り返し洗濯しても、吸水パイル糸10、20の先端が開いて毛細管現象が低下してしまうのを防止できる。したがって、吸水パイル糸10、20の耐洗濯性を向上できると共に吸水性が低下するのを防止できる。
【0027】
なお、マイクロファイバーフィラメント糸21の全重量が上記パイル糸の全重量の5.0%未満である場合には、吸水パイル糸10、20の吸水性が低下してしまう。また、マイクロファイバーフィラメント糸21の全重量がパイル糸の全重量の44.4%を超える場合には、吸水パイル糸10、20の剛性が低下して吸水パイル糸10、20の直立性が低下し、吸水パイル糸10、20のブラッシング効果も低下してしまう。
【0028】
第1,第2融着糸13、23の全重量がパイル糸5の全重量の5.5%未満である場合には、第1パイル原糸11の複数の糸の接着、第1パイル原糸11Aの複数の糸の接着、第1パイル原糸11と第2パイル原糸12との接着、および第1パイル原糸11Aと第2パイル原糸12Aとの接着を十分に確保できない。一方、第1,第2融着糸13、23の全重量がパイル糸5の全重量の20.0%を超える場合には、第1,第2融着糸13、23が過剰になり、吸水パイル糸10、20の吸水性が低下してしまう。
【0029】
また、少なくとも一部の吸水パイル糸10、20の第1パイル原糸11Aおよび第2パイル原糸12Aは、モノフィラメント糸24を含んでいる。このため、吸水パイル糸10、20の剛性が上がって吸水パイル糸10、20の直立性が向上し、吸水パイル糸10、20のブラッシング効果を向上できる。
【0030】
また、パイル糸5の長さは、4〜7mmである。このため、吸水マットの厚さを従来よりも低減できるので、より多くの場所に吸水マットを設置することができる。
【0031】
また、BCFナイロン糸22は、ナイロンからなっている。このため、吸水パイル糸10、20の弾性回復力が向上するので、吸水パイル糸10、20のブラッシング効果を向上できる。
【0032】
なお、パイル糸5を構成する繊維としては、木綿などの天然繊維;レーヨン、アセテート繊維などの再生繊維;ポリビニルアルコール繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリエステル繊維、ポリ塩化ビニル繊維などの合成繊維;を用いることができる。また、パイル糸5としては、2種以上の混紡糸又は混繊フィラメント糸でもよい。更に、パイル糸5の形態としては、同一種類又は異なる種類の複数本の合糸又は撚糸でもよい。
【0033】
第1,第2融着糸13、23の融点の温度は、80℃〜140℃が好ましい。ここで、融点の下限温度80℃は、洗浄する際の温度で第1,第2融着糸13、23が溶けないという条件を満たすことができ、融点の上限温度140℃は、第1,第2融着糸13、23が溶融する際に、撚り合わされる繊維に熱変形などの損傷を与えないという条件を満たすことができる。
【0034】
第1,第2融着糸13、23の素材としては、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、オレフィン系樹脂などを用いることができる。特に、ポリアミド系樹脂が好ましい。
【0035】
ポリアミド系樹脂としては、例えば、N6、N66、N610、N11、N12などのホモポリマー;N6/N66、N6/N610、N66/N610、N6/N612、N66/N12などのコポリマー;N6/N66/N610、N6/N66/N12、N6/N612/N12などの三元共重合ポリマー;及びN6/N66/N11/N12、N6/N66/N610/N12、N6/N69/N610/N12などの四元共重合ポリマーなどを用いることができるが、特に、N6/N66/N610/N12の四元共重合体を好ましく用いることができる。また、上記ポリマーに、他のポリマー、例えばポリオレフィンやポリエステルなどを、混合してなる、ポリマーアロイを、用いてもよい。何故なら、これらは、弾性回復性や接着性に優れており、また、汚染性が低いからである。
【0036】
第1,第2融着糸13、23は、第1パイル原糸11の複数の糸の接着、第1パイル原糸11Aの複数の糸の接着、第1パイル原糸11と第2パイル原糸12との接着、および第1パイル原糸11Aと第2パイル原糸12Aとの接着を十分に確保するために、16dt以上の太さを有するフィラメント糸であることが好ましい。この場合には、第1,第2融着糸13、23が上記下撚りおよび上記上撚りにおける上記螺旋状の接触界面の中央部に直線状に位置することが、容易となる。
【0037】
溶融時における加熱は、第1,第2融着糸13、23が溶融する温度以上であれば、乾熱及び湿熱のいずれで行ってもよい。より安定した加熱を行うためには、湿熱が好ましく、その温度は、80℃〜150℃が好ましい。
【実施例】
【0038】
以下に、本発明の実施例について説明する。なお、実施例1、3、4は本発明の実施例ではなく参考例である。また、「重量%」は、糸の比重が糸の種類によって大きく異なることがないことから、糸の太さの比に基づいて、算出した。
【0039】
(実施例1)
本実施例は、吸水マットに関する。
【0040】
[マイクロファイバーフィラメント糸の作製]
太さ110dt(デシテックス)/144f(フィラメント)のマイクロファイバー原糸を、6本引き揃え、S方向に50回/mの仮撚りをした後、所定の色に染色した。これにより、太さ660dtのマイクロファイバーフィラメントの仮撚り糸を作製した。
【0041】
[マットパイルの作製]
原液着色した、太さ165dt/48fの8本のポリエステル原糸を2本引き揃え、Z方向に50回/mの上撚りをした。これにより、太さ2640dtのAパイル糸(PETパイル糸)を作製した。
【0042】
上記マイクロファイバーフィラメントの仮撚り糸1本と、太さ660dtのBCFナイロン糸1本との間に、太さ110dtの融着糸(第2融着糸)を1本配置した。融着糸は、ポリアミド系熱融着性繊維からなり、120℃で融着するようになっている。この融着糸が、仮撚りのマイクロファイバーフィラメント糸とBCFナイロン糸との螺旋状の接触界面の中央部に直線状に位置するように、S方向に220回/mの下撚りをした。この下撚り糸を、加湿加熱機によって120℃で20分間加熱し、融着糸を溶融し、仮撚りのマイクロファイバーフィラメント糸とBCFナイロン糸とを接着した。これにより、第1パイル原糸を作製した。
【0043】
太さ660dtの2本のBCFナイロン糸をS方向に220回/mの下撚りをして、第2パイル原糸を作製した。
【0044】
上記第1パイル原糸1本と上記第2パイル原糸1本との間に、太さ110dtの融着糸(第1融着糸)を1本配置した。この融着糸が、第1パイル原糸と第2パイル原糸の螺旋状の接触界面の中央部に直線状に位置するように、Z方向に220回/mの上撚りをして、太さ2860dtの上撚りパイルを作製した。この上撚りパイルを、加湿加熱機によって120℃で20分間加熱した。この加熱により、融着糸を溶融し、第1パイル原糸と第2パイル原糸とを接着して、B1パイル糸(吸水パイル糸)を作製した。
【0045】
[マット原反の作製]
次に、Aパイル糸、Aパイル糸、Aパイル糸、Aパイル糸、B1パイル糸の順番に、これら5本のパイル糸を一組として繰り返して糸立てし、下記の条件にてタフティングして、マット原反を作製した。
基布…ポリエステル不織布:120g/m
タフト密度…・ゲージ方向:8個/インチ
・ステッチ方向:7個/インチ
・パイル形状:オールカット
・パイル長:5mm
・パイル目付量:500g/m
【0046】
上記一組のパイル糸において、パイル糸の合計の太さは13260dtであり、マイクロファイバーフィラメント糸の合計の太さは660dtである。このため、マイクロファイバーフィラメント糸の重量は、一組のパイル糸の全重量に対して660/13260、すなわち5.0重量%である。
【0047】
[吸水マットの作製]
上記マット原反を90cm×75cmの大きさに裁断し、それに下記のゴムシートを下記の条件で接合して、マット原反にマット基材が接合してなる吸水マットを作製した。
ゴムシート:未加硫NBRラバー(加硫薬剤配合)、1.5mm厚
加圧条件:3kg/cm
加硫条件:170℃×15分
【0048】
(実施例2)
B2パイル糸を次のように作製し、Aパイル糸、B2パイル糸、B2パイル糸、B2パイル糸の順番に、これら4本のパイル糸を一組として繰り返して糸立てした。その他は実施例1と同様にして、吸水マットを作製した。
【0049】
太さ660dtの2本のBCFナイロン糸の間に、太さ110dtの融着糸(第3融着糸)を1本配置した。この融着糸が、2本のBCFナイロン糸間の螺旋状の接触界面の中央部に直線状に位置するように、S方向に220回/mの下撚りをした。この下撚り糸を、加湿加熱機によって120℃で20分間加熱し、融着糸を溶融して、2本のBCFナイロン糸を接着した。これにより、第3パイル原糸を作製した。


【0050】
上記第1パイル原糸と上記第3パイル原糸との間に、太さ110dtの融着糸を1本配置した。この融着糸が、第1パイル原糸と第3パイル原糸との間の螺旋状の接触界面の中央部に直線状に位置するように、Z方向に220回/mの上撚りをして、太さ2970dtの上撚りパイルを作製した。この上撚りパイルを、加湿加熱機によって120℃で20分間加熱した。この加熱により、融着糸を溶融し、第1パイル原糸と第3パイル原糸とを接着した。これにより、B2パイル糸(吸水パイル)を作製した。
【0051】
上記一組のパイル糸において、パイル糸の合計の太さは11510dtであり、マイクロファイバーフィラメント糸の合計の太さは1980dtである。このため、マイクロファイバーフィラメント糸の重量は、一組のパイル糸の全重量に対して1980/11510、すなわち17.2重量%である。
【0052】
(実施例3)
B3パイル糸を次のように作製し、4本のB3パイル糸を一組として繰り返して糸立てした。その他は実施例1と同様にして、吸水マットを作製した。
【0053】
2本の上記第1パイル原糸の間に、太さ110dtの融着糸を1本配置した。この融着糸が、2本の第1パイル原糸の螺旋状の接触界面の中央部に直線状に位置するように、Z方向に220回/mの上撚りをして、太さ2970dtの上撚りパイルを作製した。この上撚りパイルを、加湿加熱機によって120℃で20分間加熱した。この加熱により、融着糸を溶融し、2本の第1パイル原糸を接着した。これにより、B3パイル糸(吸水パイル)を作製した。
【0054】
上記一組のパイル糸において、パイル糸の合計の太さは11880dtであり、マイクロファイバーフィラメント糸の合計の太さは5280dtである。このため、マイクロファイバーフィラメント糸の重量は、一組のパイル糸の全重量に対して5280/11880、すなわち44.4重量%である。
【0055】
(実施例4)
実施例1のB1パイル糸の融着糸の太さがそれぞれ110dtであったのを77dtにして、B4パイル糸(吸水パイル)を作製した。このB4パイル糸を繰り返して糸立てした。その他は実施例1と同様にして、吸水マットを作製した。
【0056】
B4パイル糸の太さは2794dtであり、融着糸の合計の太さは154dtである。このため、融着糸の重量は、B4パイル糸の全重量に対して154/2794、すなわち5.5重量%である。
【0057】
(実施例5)
実施例2のB2パイル糸を繰り返して糸立てした。その他は実施例1と同様にして、吸水マットを作製した。
【0058】
B2パイル糸の太さは2970dtであり、融着糸の合計の太さは330dtである。このため、融着糸の重量は、一組のパイル糸の全重量に対して330/2970、すなわち11.1重量%である。
【0059】
(実施例6)
実施例2のB2パイル糸の融着糸の太さがそれぞれ110dtであったのを220dtにして、B6パイル糸(吸水パイル)を作製した。このB6パイル糸を繰り返して糸立てした。その他は実施例1と同様にして、吸水マットを作製した。
【0060】
B6パイル糸の太さは3300dtであり、融着糸の合計の太さは660dtである。このため、融着糸の重量は、B6パイル糸の全重量に対して660/3300、すなわち20.0重量%である。
【0061】
(実施例7)
実施例2のB2パイル糸の下撚りおよび上撚りの撚り回数がそれぞれ220回/mであったのを160回/mにして、B7パイル糸(吸水パイル)を作製した。Aパイル糸とB7パイル糸とを一組として繰り返して糸立てした。その他は実施例1と同様にして、吸水マットを作製した。
【0062】
(実施例8)
Aパイル糸とB2パイル糸とを一組として繰り返して糸立てした。その他は実施例1と同様にして、吸水マットを作製した。
【0063】
(実施例9)
実施例2のB2パイル糸の下撚りおよび上撚りの撚り回数がそれぞれ220回/mであったのを240回/mにして、B9パイル糸(吸水パイル)を作製した。Aパイル糸とB9パイル糸とを一組として繰り返して糸立てした。その他は実施例1と同様にして、吸水マットを作製した。
【0064】
(比較例1)
Aパイル糸、Aパイル糸、Aパイル糸、Aパイル糸、Aパイル糸、Aパイル糸、B1パイル糸の順番に、これら7本のパイル糸を一組として繰り返して糸立てし、その他は実施例1と同様にして、吸水マットを作製した。
【0065】
上記一組のパイル糸において、パイル糸の合計の太さは18460dtであり、マイクロファイバーフィラメント糸の合計の太さは660dtである。このため、マイクロファイバーフィラメント糸の重量は、一組のパイル糸の全重量に対して660/18460、すなわち3.6重量%である。
【0066】
(比較例2)
B12パイル糸を次のように作製し、その他は実施例1と同様にして、吸水マットを作製した。
【0067】
2本の上記マイクロファイバーフィラメントの仮撚り糸の間に、太さ110dtの融着糸を1本配置した。この融着糸が、2本のマイクロファイバーフィラメントの仮撚り糸の間の螺旋状の接触界面の中央部に直線状に位置するように、S方向に220回/mの下撚りをした。この下撚り糸を、加湿加熱機によって120℃で20分間加熱し、融着糸を溶融して、マイクロファイバーフィラメントの仮撚り糸同士を接着した。これにより、第4パイル原糸を作製した。
【0068】
上記第1パイル原糸と上記第4パイル原糸との間に、太さ110dtの融着糸を1本配置した。この融着糸が、第1パイル原糸と第4パイル原糸との間の螺旋状の接触界面の中央部に直線状に位置するように、Z方向に220回/mの上撚りをして、太さ2970dtの上撚りパイルを作製した。この上撚りパイルを、加湿加熱機によって120℃で20分間加熱した。この加熱により、融着糸を溶融し、第1パイル原糸と第3パイル原糸とを接着した。これにより、B12パイル糸(吸水パイル)を作製した。
【0069】
次に、4本のB12パイル糸を一組として、繰り返して糸立てした。
【0070】
上記一組のパイル糸において、パイル糸の合計の太さは11880dtであり、マイクロファイバーフィラメント糸の合計の太さは7920dtである。このため、マイクロファイバーフィラメント糸の重量は、一組のパイル糸の全重量に対して7920/11880、すなわち66.7重量%である。
【0071】
(比較例3)
実施例1のB1パイル糸の融着糸の太さがそれぞれ110dtであったのを55dtにして、B13パイル糸(吸水パイル)を作製した。このB13パイル糸を繰り返して糸立てした。その他は実施例1と同様にして、吸水マットを作製した。
【0072】
B13パイル糸の太さは2750dtであり、融着糸の合計の太さは110dtである。このため、融着糸の重量は、B4パイル糸の全重量に対して154/2794、すなわち4.0重量%である。
【0073】
(比較例4)
実施例2のB2パイル糸の融着糸の太さがそれぞれ110dtであったのを330dtにして、B14パイル糸(吸水パイル)を作製した。このB14パイル糸を繰り返して糸立てした。その他は実施例1と同様にして、吸水マットを作製した。
【0074】
B14パイル糸の太さは3630dtであり、融着糸の合計の太さは990dtである。このため、融着糸の重量は、B14パイル糸の全重量に対して990/3630、すなわち27.3重量%である。
【0075】
(比較例5)
実施例2のB2パイル糸の下撚りおよび上撚りの撚り回数がそれぞれ220回/mであったのを130回/mにして、B15パイル糸(吸水パイル)を作製した。Aパイル糸とB15パイル糸とを一組として繰り返して糸立てした。その他は実施例1と同様にして、吸水マットを作製した。
【0076】
(比較例6)
実施例2のB2パイル糸の下撚りおよび上撚りの撚り回数がそれぞれ220回/mであったのを270回/mにして、B16パイル糸(吸水パイル)を作製した。Aパイル糸とB16パイル糸とを一組として繰り返して糸立てした。その他は実施例1と同様にして、吸水マットを作製した。
【0077】
(吸水性)
実施例1〜9および比較例1〜6の吸水マットについて、次のような、歩行による靴底マット水拭き取り試験を行って、吸水性を調べた。
【0078】
(マットのNEW加工)
吸水マットを、50キロ洗濯機・乾燥機において、負荷率80%にて、洗浄乾燥した。その後、マットに起毛加工を施した。
【0079】
(吸水性試験)
まず、上記吸水マットを鋏で20cm×30cmの大きさに裁断し、この裁断されたマット片を20℃、65%湿度環境内に一昼夜放置する。
【0080】
次に、上記マット片の重量と綿ウエスの重量を測定する。そして、水を張ったトレーに、靴底を2秒間浸し、その後、その靴底でスノコを2回踏み、靴底に付着する水分量が一定量(例えば1.4g〜1.8g)になるようにする。次に、マット片を2秒踏んだ後、綿ウエスを5回踏んで、靴底の残水を拭き取る。そして、マット片および綿ウエスのそれぞれの重量を測定する。これを2回繰り返し、マット片が靴底から拭き取った水分量で評価した。その結果を表1〜3に示す。ここで、マット片が靴底から拭き取った水分量が靴底に付着していた水分量の90%を超えている場合に、結果良好(○)とした。
【0081】
なお、マット片の重量変化量が、マット片が靴底から拭き取った水分量に相当する。また、マット片の重量変化量と綿ウエスの重量変化量とを合わせた量が、靴底に付着していた水分量に相当する。
【0082】
(耐洗濯性)
実施例1〜9および比較例1〜6の吸水マットについて、次のような、洗濯乾燥後のパイル先端開き試験を行って、耐洗濯性を調べた。
【0083】
(洗濯乾燥条件)
上記吸水マットに、以下の条件で洗濯作業および乾燥作業を行って、吸水マットのパイル糸の先端の開き、マイクロファイバーフィラメント糸やBCF糸の脱落や剥離などを目視で評価した。その結果を表1〜3に示す。ここで、パイル糸の先端の開き等が確認できなかった場合に、耐洗濯性が良好である(○)とした。
・洗濯試験機:ターゴットメータ
・洗濯条件:60℃、30分間、回転数120rpm
・乾燥機:家庭用タンブラー乾燥機
・乾燥条件:乾くまで
【0084】
【表1】
【0085】
表1は、実施例1〜3および比較例1、2の結果を示している。ここで、実施例1〜3および比較例1、2は、吸水マットにおけるマイクロファイバーフィラメント糸比率、つまり、パイル糸の全重量に対するマイクロファイバーフィラメント糸の重量比率であるマイクロファイバー糸比率のみが異なっている。
【0086】
実施例1〜3の吸水マットは、吸水性および耐洗濯性が良好である。これに対して、比較例1の吸水マットは、耐洗濯性が良かったが、吸水性があまり良くなかった。これは、比較例3の吸水マットのマイクロファイバー糸比率が小さいので、吸水性能が低かったためである。比較例4の吸水マットは、吸水性が良かったが、耐洗濯性があまり良くなかった。これは、比較例4の吸水マットのマイクロファイバー糸比率が大きいので、繰り返しの洗浄・乾燥によって、パイル糸の先端が開いたり、マイクロファイバーフィラメント糸の脱落や剥離があったためである。したがって、マイクロファイバー糸比率は、好ましくは、5.0%〜44.4%である。
【0087】
【表2】
【0088】
表2は、実施例4〜6および比較例3、4の結果を示している。ここで、実施例4〜6および比較例3、4は、吸水マットにおける融着糸比率、つまり、パイル糸の全重量に対する融着糸の重量比率である融着糸比率のみが異なっている。
【0089】
実施例4〜6の吸水マットは、吸水性および耐洗濯性が良好である。これに対して、比較例3の吸水マットは、吸水性が良かったが、耐洗濯性があまり良くなかった。これは、比較例3の吸水マットの融着糸比率が小さいので、繰り返しの洗浄・乾燥によって、パイル糸の先端が開いたり、マイクロファイバーフィラメント糸やBCF糸の脱落や剥離があったためである。比較例4の吸水マットは、吸水性があまり良くなかったが、耐洗濯性が良かった。これは、比較例4の吸水マットの融着糸比率が大きいので、吸水性能が低下したためである。したがって、融着糸比率は、好ましくは、5.5%〜20.0%である。
【0090】
【表3】
【0091】
表3は、実施例7〜9および比較例5、6の結果を示している。ここで、実施例7〜9および比較例5、6は、吸水マットにおけるパイル糸の下撚り回数および上撚り回数のみが異なっている。
【0092】
実施例7〜9の吸水マットは、吸水性および耐洗濯性が良好である。これに対して、比較例5の吸水マットは、吸水性および耐洗濯性があまり良くなかった。これは、比較例5の吸水マットのパイル糸の下撚り回数および上撚り回数が少ないため、吸水性能が低下すると共に、繰り返しの洗浄・乾燥によって、パイル糸の先端が開いたり、マイクロファイバーフィラメント糸やBCF糸の脱落や剥離があった。比較例6の吸水マットは、吸水性があまり良くなかったが、耐洗濯性が良かった。これは、比較例6の吸水マットのパイル糸の下撚り回数および上撚り回数が多いので、吸水性能が低下したためである。したがって、パイル糸の下撚り回数および上撚り回数は、好ましくは、160回/m〜240回/mである。
【0093】
本発明の具体的な実施の形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0094】
5 パイル糸
7 吸水マット
10、20 吸水パイル糸
11、11A 第1パイル原糸
12、12A 第2パイル原糸
13 第1の融着糸
21 マイクロファイバーフィラメント糸
22 BCFナイロン糸
23 第2の融着糸
24 モノフィラメント糸
図1
図2
図3
図4