特許第6338400号(P6338400)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6338400
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】スタッドレスタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 7/00 20060101AFI20180528BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20180528BHJP
   C08K 3/16 20060101ALI20180528BHJP
   C08K 3/28 20060101ALI20180528BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20180528BHJP
   B60C 11/00 20060101ALI20180528BHJP
【FI】
   C08L7/00
   C08L9/00
   C08K3/16
   C08K3/28
   B60C1/00 A
   B60C11/00 B
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-39016(P2014-39016)
(22)【出願日】2014年2月28日
(65)【公開番号】特開2015-160946(P2015-160946A)
(43)【公開日】2015年9月7日
【審査請求日】2016年12月26日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】児島 良治
【審査官】 松浦 裕介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−211314(JP,A)
【文献】 特開平03−140343(JP,A)
【文献】 米国特許第05208273(US,A)
【文献】 特開2008−138046(JP,A)
【文献】 特開2007−217543(JP,A)
【文献】 特開昭51−037941(JP,A)
【文献】 特開2000−265164(JP,A)
【文献】 特開平07−026250(JP,A)
【文献】 特開平03−266706(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC C08L 1/00 − 101/14
C08K 3/00 − 13/08
B60C 1/00 − 19/12
C09K 5/00 − 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム組成物を用いて作製したキャップトレッドを有するスタッドレスタイヤであって、
該ゴム組成物は、ゴム成分と、硝酸アンモニウム、臭化ナトリウム、塩化カリウム及び塩化マグネシウムからなる群より選択される少なくとも1種の塩類と、シリカとを含有し、
前記ゴム成分100質量%中の天然ゴム及びブタジエンゴムの合計含有量が30〜100質量%であり、
前記ゴム成分100質量部に対して、前記塩類の含有量が1〜10質量部であるスタッドレスタイヤ。
【請求項2】
カーボンブラックを更に含有し、
前記ゴム成分100質量部に対して、前記シリカの含有量が10〜80質量部、前記カーボンブラックの含有量が10〜40質量部である請求項1記載のスタッドレスタイヤ。
【請求項3】
スルフェンアミド系加硫促進剤と、グアニジン系加硫促進剤とを更に含有する請求項1又は2記載のスタッドレスタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスタッドレスタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
氷雪路面走行用としてスパイクタイヤの使用やタイヤへのチェーンの装着がされてきたが、粉塵問題等の環境問題が発生するため、これに代わる氷雪路面走行用タイヤとしてスタッドレスタイヤが開発された。スタッドレスタイヤは、一般路面に比べて路面凹凸が大きい雪上路面で使用されるため、材料面及び設計面での工夫がなされている。例えば、低温特性に優れたジエン系ゴムを配合したゴム組成物や、軟化効果を高めるために軟化剤を多量に配合したゴム組成物が開発されてきた(例えば、特許文献1)。
【0003】
スタッドレスタイヤの雪氷上性能を向上させる手段としては、ゴム組成物中のブタジエンゴムの配合量を増やす方法などが試みられてきた。しかしながら、ブタジエンゴムの配合量を増やし過ぎると、ゴム中のモビリティが高くなりすぎて、種々の薬品のブルーミングが発生してしまうため、ブタジエンゴムの配合量を増やすには限度があった。また、ブタジエンゴムの配合量を増やした場合には、ブタジエンゴムの増量に伴い、ゴム組成物中の天然ゴム比率が下がるため、ゴムの強度が不足し、耐摩耗性能が悪化するという問題があった。
【0004】
スタッドレスタイヤの雪氷上性能を向上させるためのその他の手段としては、引っかき素材としてグラスファイバーをゴム組成物に配合する方法も知られている。しかしながら、この方法においても、耐摩耗性能の低下が懸念され、スタッドレスタイヤの雪氷上性能を向上させる方法として十分な方法とは言えなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−091482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、良好な耐摩耗性能を維持しつつ、雪氷上性能を向上させることができるスタッドレスタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ゴム組成物を用いて作製したキャップトレッドを有するスタッドレスタイヤであって、該ゴム組成物は、ゴム成分と、硝酸アンモニウム、臭化ナトリウム、塩化カリウム及び塩化マグネシウムからなる群より選択される少なくとも1種の塩類とを含有し、前記ゴム成分100質量%中の天然ゴム及びブタジエンゴムの合計含有量が30〜100質量%であり、前記ゴム成分100質量部に対して、前記塩類の含有量が1〜10質量部であるスタッドレスタイヤに関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、天然ゴム及びブタジエンゴムの合計含有量が所定量のゴム成分と、所定量の硝酸アンモニウム等の塩類とを含むゴム組成物を用いて作製したキャップトレッドを有するスタッドレスタイヤであるので、良好な耐摩耗性能を維持しつつ、雪氷上性能(氷雪上でのグリップ性能)を向上させたスタッドレスタイヤを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のスタッドレスタイヤは、天然ゴム及びブタジエンゴムの合計含有量が所定量のゴム成分と、所定量の硝酸アンモニウム等の塩類とを含むゴム組成物を用いて作製したキャップトレッドを有するスタッドレスタイヤである。キャップトレッドとは、多層構造を有するトレッドの表層部である。2層構造のトレッドの場合には、表面層(キャップトレッド)及び内面層(ベーストレッド)から構成される。
【0010】
上記ゴム組成物に含まれる硝酸アンモニウム等の塩類は、水と吸熱反応を起こし、水を凍らせる性質がある。そのため、タイヤと氷雪路面の接地面内で発生する水を凍らせることができ、これにより良好な耐摩耗性能を維持しつつ、氷雪上でのグリップ性能(雪氷上性能)を確保することができる。更に、本発明では、低温特性に優れる天然ゴムやブタジエンゴムを上記塩類と共に配合することにより、相乗的に雪氷上性能を改善できる。
【0011】
本発明において、ゴム成分100質量%中の天然ゴム(NR)及びブタジエンゴム(BR)の合計含有量は、30〜100質量%である。本発明では、NR、BRのいずれかを配合すればよいが、本発明の効果がより好適に得られるという点から、BRを配合することが好ましく、NRとBRを併用することがより好ましい。なお、上記合計含有量は、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上であり、100質量%であることが最も好ましい。
【0012】
上記NRとしては、TSR20、RSS#3などの一般的に用いられているものが挙げられる。
【0013】
本発明の効果がより良好に得られるという点から、ゴム成分100質量%中のNRの含有量は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上であり、好ましくは85質量%以下、より好ましくは75質量%以下、更に好ましくは70質量%以下、特に好ましくは60質量%以下である。
【0014】
BRとしては特に限定されず、例えば、JSR(株)製のBR730、BR51、日本ゼオン(株)製のBR1220、宇部興産(株)製のBR130B、BR150B、BR710等の高シス含量BR、日本ゼオン(株)製のBR1250H等の低シス含量BR等を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0015】
上記BRのシス含量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上である。これにより、より良好な雪氷上性能が得られる。
なお、本明細書において、シス含量は、赤外吸収スペクトル分析により算出される値である。
【0016】
本発明の効果がより良好に得られるという点から、ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、特に好ましくは50質量%以上である。また、該含有量は、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。70質量%を超えると、良好な耐摩耗性能が得られるものの、雪氷上性能(氷雪上でのグリップ性能)が劣るおそれがある。
【0017】
上記NR、BR以外に本発明で使用できるゴム成分としては、例えば、イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ブタジエン−イソプレン共重合体ゴム、ブチルゴムなどが挙げられる。
【0018】
上記ゴム組成物に含まれる塩類としては、硝酸アンモニウム、臭化ナトリウム、塩化カリウム、又は塩化マグネシウムが挙げられる。これらの塩類は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、硝酸アンモニウムが好ましい。なお、本発明で使用できる硝酸アンモニウム、臭化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウムとしては特に限定されず、市販品を使用することができる。
【0019】
上記塩類の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、1質量部以上であり、好ましくは1.5質量部以上、より好ましくは2質量部以上である。また、該含有量は、10質量部以下であり、好ましくは9質量部以下、より好ましくは8質量部以下である。1質量部未満であると、充分に本発明の効果が発揮されないおそれがある。一方、10質量部を超えると、タイヤの耐摩耗性能が悪化するおそれがある。
【0020】
上記ゴム組成物は、カーボンブラックを含むことが好ましい。カーボンブラックを配合することにより、補強効果が得られ、本発明の効果がより良好に得られる。
【0021】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は50m/g以上が好ましく、90m/g以上がより好ましい。50m/g未満では、充分な補強性が得られず、充分な耐摩耗性、雪氷上性能が得られないおそれがある。該NSAは、180m/g以下が好ましく、130m/g以下がより好ましい。180m/gを超えると、分散させるのが困難となり、耐摩耗性能が悪化する傾向がある。
なお、カーボンブラックのNSAは、JIS K 6217−2:2001によって求められる。
【0022】
カーボンブラックのジブチルフタレート吸油量(DBP)は、50ml/100g以上が好ましく、100ml/100g以上がより好ましい。50ml/100g未満では、充分な補強性が得られず、充分な耐摩耗性能、雪氷上性能が得られないおそれがある。また、カーボンブラックのDBPは、200ml/100g以下が好ましく、135ml/100g以下がより好ましい。200ml/100gを超えると、加工性、耐摩耗性が低下するおそれがある。
なお、カーボンブラックのDBPは、JIS K6217−4:2001に準拠して測定される。
【0023】
カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上である。10質量部未満では、充分な補強性が得られず、充分な耐摩耗性能、雪氷上性能が得られないおそれがある。該含有量は、好ましくは80質量部以下、より好ましくは60質量部以下、更に好ましくは40質量部以下である。80質量部を超えると、分散性が悪化し、耐摩耗性能が悪化する傾向がある。
【0024】
上記ゴム組成物は、シリカを含むことが好ましい。シリカを配合することにより、補強効果が得られ、本発明の効果がより良好に得られる。シリカとしては、例えば、乾式法シリカ(無水シリカ)、湿式法シリカ(含水シリカ)などが挙げられる。なかでも、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。
【0025】
シリカの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは40m/g以上、より好ましくは70m/g以上、更に好ましくは110m/g以上である。40m/g未満であると、充分な補強性が得られず、充分な耐摩耗性能、雪氷上性能が得られないおそれがある。また、シリカのNSAは、好ましくは220m/g以下、より好ましくは200m/g以下である。220m/gを超えると、シリカが分散しにくくなり、耐摩耗性能が悪化するおそれがある。
なお、シリカのNSAは、ASTM D3037−93に準じてBET法で測定される値である。
【0026】
シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上である。10質量部未満では、充分な補強性が得られず、充分な耐摩耗性能、雪氷上性能が得られないおそれがある。該含有量は、好ましくは80質量部以下、より好ましくは60質量部以下、更に好ましくは40質量部以下である。80質量部を超えると、分散性が悪化し、耐摩耗性能が悪化する傾向がある。
【0027】
上記ゴム組成物は、シリカを含む場合、シリカとともにシランカップリング剤を含むことが好ましい。
シランカップリング剤としては、ゴム工業において、従来からシリカと併用される任意のシランカップリング剤を使用することができ、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド等のスルフィド系、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシランなどのビニル系、3−アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノ系、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランのグリシドキシ系、3−ニトロプロピルトリメトキシシランなどのニトロ系、3−クロロプロピルトリメトキシシランなどのクロロ系等が挙げられる。なかでも、スルフィド系が好ましく、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドがより好ましい。
【0028】
シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上である。1質量部未満では、充分な補強性が得られず、充分な耐摩耗性能、雪氷上性能が得られないおそれがある。また、該シランカップリング剤の含有量は、好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。15質量部を超えると、コストの増加に見合った効果が得られない傾向がある。
【0029】
上記ゴム組成物は、オイルを含むことが好ましい。オイルを配合することにより、ゴムの硬度が低下し、より良好な雪氷上性能が得られる。
【0030】
オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油脂、その混合物等を用いることができる。プロセスオイルとしては、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル(アロマオイル)等が挙げられる。植物油脂としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生湯、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、桐油等が挙げられる。なかでも、アロマオイルが好ましい。
【0031】
オイルの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは20質量部以上である。5質量部未満では、充分な雪氷上性能が得られないおそれがある。また、オイルの含有量は、好ましくは80質量部以下、より好ましくは60質量部以下、更に好ましくは50質量部以下である。80質量部を超えると、耐摩耗性能が悪化するおそれがある。
【0032】
上記ゴム組成物には、前記成分以外にも、タイヤ工業において一般的に用いられている配合剤、例えば、ワックス、ステアリン酸、酸化亜鉛、老化防止剤、硫黄等の加硫剤、加硫促進剤等の材料を適宜配合してもよい。
【0033】
加硫促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、チオウレア系、グアニジン系、ジチオカルバミン酸系、アルデヒド−アミン系若しくはアルデヒド−アンモニア系、イミダゾリン系、又はキサンテート系加硫促進剤等が挙げられる。これら加硫促進剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、スルフェンアミド系加硫促進剤が好ましく、スルフェンアミド系加硫促進剤と、ジフェニルグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤とを併用することがより好ましい。
【0034】
スルフェンアミド系加硫促進剤としては、例えば、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DCBS)等が挙げられる。なかでも、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、CBSが好ましく、CBSと、ジフェニルグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤とを併用することがより好ましい。
【0035】
上記ゴム組成物は、一般的な方法で製造される。すなわち、バンバリーミキサーやニーダー、オープンロールなどで前記各成分を混練りし、その後加硫する方法等により製造できる。
【0036】
上述のとおり、上記ゴム組成物は、スタッドレスタイヤのキャップトレッドとして用いられる。
【0037】
多層構造のトレッドは、シート状にしたものを、所定の形状に貼り合わせる方法や、2本以上の押出し機に装入して押出し機のヘッド出口で2層以上に形成する方法により作製することができる。
【0038】
本発明のスタッドレスタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法により製造される。すなわち、ゴム成分、硝酸アンモニウム等の塩類、及び必要に応じて上記各種配合剤を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でキャップトレッドなどの形状に合わせて押し出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することで、本発明のスタッドレスタイヤが得られる。
【0039】
本発明のスタッドレスタイヤは、乗用車用スタッドレスタイヤとして好適に用いることができる。
【実施例】
【0040】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0041】
以下に、実施例及び比較例で用いた各種薬品について説明する。
天然ゴム:RSS#3
ブタジエンゴム:日本ゼオン(株)製のBR1220(シス含量:96質量%)
カーボンブラック:三菱化学(株)製のシーストN220(NSA:114m/g、DBP:114ml/100g)
シリカ:エボニックデグッサ社製のウルトラシルVN3(NSA:175m/g、平均一次粒子径:15nm)
シランカップリング剤:エボニックデグッサ社製のSi75(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
硝酸アンモニウム:和光純薬工業(株)製の硝酸アンモニウム
臭化ナトリウム:和光純薬工業(株)製の臭化ナトリウム
塩化カリウム:和光純薬工業(株)製の塩化カリウム
塩化マグネシウム:和光純薬工業(株)製の塩化マグネシウム
オイル:(株)ジャパンエナジー製のプロセスX−140(アロマオイル)
ワックス:大内新興化学工業(株)製のサンノックN
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「椿」
老化防止剤:住友化学(株)製のアンチゲン6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
硫黄:軽井沢硫黄(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤(1):大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤(2):大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(N,N’−ジフェニルグアニジン)
【0042】
(実施例及び比較例)
表1に示す配合内容に従い、(株)神戸製鋼所製の1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を約150℃の条件下で5分間混練りし、混練り物を得た(この際、仕様によってはオイルを2分割投入して混練りを行った。)。次に、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を表1に示す配合内容で添加し、オープンロールを用いて、約80℃の条件下で3分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物をキャップトレッドの形状に成形し、タイヤ成型機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを形成し、170℃で15分間加硫し、試験用タイヤ(サイズ:195/65R15)を製造した。
【0043】
得られた試験用タイヤについて下記の評価を行った。結果を表1に示す。
【0044】
(硬度[Hs])
JIS K6253に準じて、タイプA硬さ計にて−10℃で、試験用タイヤのキャップトレッドから切り出したゴム組成物の硬度を測定した。比較例1を100として指数表示した。数値が大きいほど硬度が高いことを示す。
【0045】
(雪氷上性能)
上記試験用タイヤを国産2000ccのFR車に装着し、下記条件下で氷雪上を実車走行し、雪氷上性能を評価した。雪氷上性能評価としては、具体的には、上記車両を用いて氷上又は雪上を走行し、時速30km/hでロックブレーキを踏み、停止させるまでに要した停止距離(氷上制動停止距離、雪上制動停止距離)を測定し、下記式により指数表示した。指数が大きいほど、氷雪上でのグリップ性能が良好である。
(制動性能指数)=(比較例1の制動停止距離)/(各配合の制動停止距離)×100
(氷上) (雪上)
試験場所:北海道名寄テストコース 北海道名寄テストコース
気温 :−1℃〜−6℃ −2℃〜−10℃
【0046】
(耐摩耗性能)
試験用タイヤを国産FF車に装着し、走行距離8000km後のタイヤトレッド部の溝深さを測定し、タイヤ溝深さが1mm減るときの走行距離を算出し、下記式により指数表示した。指数が大きいほど、耐摩耗性能が良好である。なお、指数が95以上の場合に良好であると判断した。
(耐摩耗性指数)=(1mm溝深さが減るときの走行距離)/(比較例1のタイヤ溝が1mm減るときの走行距離)×100
【0047】
【表1】
【0048】
表1より、天然ゴム及びブタジエンゴムの合計含有量が所定量のゴム成分と、所定量の硝酸アンモニウム等の塩類とを含むゴム組成物を用いてタイヤを作製した実施例では、良好な耐摩耗性能を維持しつつ、雪氷上性能(氷雪上でのグリップ性能)を向上させることができることが明らかとなった。