特許第6338405号(P6338405)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6338405
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】リニアモータ用電機子
(51)【国際特許分類】
   H02K 41/02 20060101AFI20180528BHJP
   H02K 41/03 20060101ALI20180528BHJP
【FI】
   H02K41/02 Z
   H02K41/03 A
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-47615(P2014-47615)
(22)【出願日】2014年3月11日
(65)【公開番号】特開2015-173523(P2015-173523A)
(43)【公開日】2015年10月1日
【審査請求日】2017年1月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】中崎 修
(72)【発明者】
【氏名】守谷 幸次
【審査官】 樋口 幸太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−504725(JP,A)
【文献】 特表2009−526506(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/004858(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 41/02
H02K 41/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リニアモータ用の電機子であって、
コアと、
前記コアに形成される管挿入部と、
前記管挿入部内に配置される冷却管と、
前記管挿入部の内壁面から内側に突出する複数の凸部と、を備え、
前記冷却管は、前記凸部に接触することにより前記管挿入部の内壁面と接触せずに前記管挿入部の内壁面から間隔を空けて保持されることを特徴とするリニアモータ用電機子。
【請求項2】
前記管挿入部の内壁面と前記冷却管の間に充填される樹脂材を更に備えることを特徴とする請求項1に記載のリニアモータ用電機子。
【請求項3】
前記管挿入部内に配置され、前記冷却管のうねりを矯正するための矯正部材を更に備えることを特徴とする請求項1または2に記載のリニアモータ用電機子。
【請求項4】
前記管挿入部の内壁面に形成される差込溝部を更に備え、
前記矯正部材は、前記差込溝部内に一部を差し込むことにより管挿入部内に配置されることを特徴とする請求項3に記載のリニアモータ用電機子。
【請求項5】
前記冷却管と前記コアの間の熱抵抗が、前記管挿入部内における冷却管の管軸方向の位置に応じて変化するように構成されることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のリニアモータ用電機子。
【請求項6】
前記冷却管の管軸方向の位置に応じて前記複数の凸部と冷却管の接触面積が変化するように構成されることを特徴とする請求項5に記載のリニアモータ用電機子。
【請求項7】
前記管挿入部内に配置され、前記冷却管のうねりを矯正するための矯正部材を更に備え、
前記冷却管の管軸方向の位置に応じて、前記矯正部材と冷却管の接触面積が変化するように構成されることを特徴とする請求項5または6に記載のリニアモータ用電機子。
【請求項8】
前記管挿入部内に配置され、前記冷却管を管挿入部の内壁面側に向けて押し付ける押付部材を更に備え、
前記冷却管の管軸方向の位置に応じて、前記押付部材による押付力が変化するように構成されることを特徴とする請求項5から7のいずれかに記載のリニアモータ用電機子。
【請求項9】
前記冷却管の管軸方向の位置に応じて前記冷却管の管径が変化するように構成されることを特徴とする請求項5から8のいずれかに記載のリニアモータ用電機子。
【請求項10】
前記コアのヨーク部からモータ駆動方向に間隔を空けて突出する複数のティース部と、
前記ティース部に巻き回されるコイルと、を更に備え、
前記冷却管と前記コアの間の熱抵抗は、前記モータ駆動方向と前記ティース部の突出方向とに直交する方向のコアの中間部より、その方向のコアの端部の方が小さくなるように構成されることを特徴とする請求項5から9のいずれかに記載のリニアモータ用電機子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニアモータの固定子又は可動子として用いられる電機子に関する。
【背景技術】
【0002】
リニアモータに用いられる電機子は、コアと、コアにモータ駆動方向に複数設けられるティース部と、ティース部に巻き回されるコイルを備える。コイルが通電により発熱すると、コアの温度上昇により電機子の性能に悪影響を及ぼす恐れがある。この対策として、通常、ティース部間に形成されるスロット部には冷却管が配置される(特許文献1参照)。冷却管内に供給される冷媒によりコアが冷却され、その温度上昇が抑えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−35698号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コアの温度上昇を効果的に抑えるうえで、冷却管によるコアの冷却性能が良好であるほと好ましい。本発明者は、このような要求を実現するうえで、電機子の構造に関して改善の余地があると認識するに至った。
【0005】
本発明は、こうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、冷却管による電機子のコアの冷却性能を改善できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、リニアモータ用電機子に関する。リニアモータ用電機子は、コアと、コアに形成される管挿入部と、管挿入部内に配置される冷却管と、管挿入部の内壁面から内側に突出する複数の凸部と、を備え、冷却管は、凸部に接触することにより管挿入部の内壁面から間隔を空けて保持されることを特徴とする。
【0007】
この態様によれば、冷却管と凸部の接触により、管挿入部の内壁面から一定以上の間隔が空くように冷却管が位置決めされる。よって、管挿入部内での冷却管の接触位置のばらつきが抑えられ、冷却管と管挿入部の間に溶融樹脂を流し込んだとき、冷却管により溶融樹脂の流動が阻害され難くなる。このため、樹脂材より熱伝達率の低い気泡が生じ難くなり、冷却管による電機子コアの冷却性能が良好となる。
【発明の効果】
【0008】
本発明のある態様によれば、冷却管による電機子のコアの冷却性能を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る電機子が用いられるリニアモータを示す側面断面図である。
図2】第1実施形態に係る電機子を示す分解斜視図である。
図3】第1実施形態に係る電機子コアの管挿入部内に配置される冷却管を示す正面断面図である。
図4】第1実施形態に係る電機子コアの管挿入部内に配置される冷却管を示す拡大側面断面図である。
図5】第1実施形態に係る電機子コアの管挿入部内に冷却管を配置するときの途中状態を示す拡大側面断面図である。
図6】第1実施形態に係る電機子コアの管挿入部内に矯正部材を配置するときの途中状態を示す拡大正面断面図である。
図7】第2実施形態に係る電機子コアの管挿入部内に矯正部材を配置するときの途中状態を示す拡大正面断面図である。
図8】電機子の底面図を示す。
図9】(a)は第3実施形態に係る電機子を示す正面断面図であり、(b)、(c)はそれぞれ電機子コアの端部、中間部の側面断面図である。
図10】(a)は第4実施形態に係る電機子を示す正面断面図であり、(b)、(c)はそれぞれ電機子コアの端部、中間部の側面断面図である。
図11】(a)は第5実施形態に係る電機子を示す正面断面図であり、(b)、(c)はそれぞれ電機子コアの端部、中間部の側面断面図である。
図12】(a)は第6実施形態に係る電機子を示す正面断面図であり、(b)はその拡大正面断面図である。
図13】第6実施形態に係る電機子を示す拡大側面断面図である。
図14】(a)は第7実施形態に係る電機子を示す正面断面図であり、(b)、(c)はそれぞれ電機子コアの端部、中間部の側面断面図である。
図15】変形例に係る電機子コアを示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施の形態)
図1は第1実施形態に係る電機子40が用いられるリニアモータ10を示す。リニアモータ10は、界磁子30と、電機子40を備える。界磁子30が固定子であり、電機子40が可動子である。以下、リニアモータ10の駆動方向を方向Xとし、方向Xの方向軸と垂直な面内において直交する2方向を方向Y、方向Zとして説明する。
【0011】
界磁子30は、界磁子コア31と、複数の磁石33を備える。界磁子コア31はモータ駆動方向Xに延びる直方体状の部材である。各磁石33は永久磁石であるが、電磁石でもよい。各磁石33は、モータ駆動方向Xに異なる磁極(N極、S極)が交互に位置するように設けられる。
【0012】
電機子40は、界磁子30と間隔を空けて配置される。図2は電機子40の分解斜視図を示す。電機子40は、電機子コア41を備える。電機子コア41は、複数の積層体47を積層して構成される。積層体47は電磁鋼板であるが、他の金属板でもよい。また、電機子コア41は焼結フェライト等の焼結体により構成されてもよい。
【0013】
電機子コア41は、モータ駆動方向Xに延びる直方体状のヨーク部42と、ヨーク部42からモータ駆動方向Xに間隔を空けて突出する複数(図示は9個)のティース部43と、ティース部43に対してモータ駆動方向Xの両側に形成される複数(図示は10個)のスロット部45を備える。ティース部43やスロット部45は、界磁子30と対向する電機子コア41の内側部41aに設けられる。なお、方向Yはティース部43の突出方向に対応し、方向Zは電機子コア41の奥行方向(積層体47の積層方向)に対応する。
【0014】
電機子コア41は、ティース部43とスロット部45がモータ駆動方向Xに交互に設けられる凹凸形状、つまり、櫛歯形状を有する。各ティース部43にはそれぞれコイル49が巻き回され、スロット部45内にはコイル49が配置される。
【0015】
以上のリニアモータ10は、コイル49の通電により生じる磁界と磁石33の磁界との相互作用により電機子40に推力が発生し、モータ駆動方向Xに電機子40が移動する。
【0016】
電機子40は、電機子コア41等の他に、管挿入部51と、冷却管60と、矯正部材70と、樹脂材80を更に備える。
【0017】
管挿入部51は、電機子コア41の外側部41bにおいて、モータ駆動方向Xに複数(図示は10個)設けられる。図3は管挿入部51内に配置される冷却管60を示す正面断面図である。管挿入部51は、電機子コア41の奥行方向Zに貫通する溝状に形成され、ティース部43の突出方向Yに開口部52が設けられる。
【0018】
図2に戻り、冷却管60は銅等の金属材料を素材とする。冷却管60は、モータ駆動方向Xに間隔を空けて設けられる複数(図示は10個)のコア冷却部61と、隣り合うコア冷却部61の端部をつなぐ連設部63とを含む。コア冷却部61は管挿入部51の数に対応した数が設けられる。コア冷却部61の断面は円筒状に形成される。冷却管60は、各コア冷却部61と連設部63とが波状に蛇行するように設けられ、その内側に連続した流路が形成される。この冷却管60は管体を曲げ加工することにより製作される。
【0019】
冷却管60は、各コア冷却部61が別々の管挿入部51内に配置され、連設部63が電機子コア41より奥行方向Zの外側に配置される。冷却管60に水等の冷媒を送り込むと、その流路の流入側(図2のP1部)から流出側(図2のP2部)に向かう方向Qに冷媒が流れ、コア冷却部61内の冷媒により電機子コア41が冷却される。
【0020】
図4は管挿入部51内に配置される冷却管60の拡大側面断面図である。管挿入部51の内壁面55には、底側の底面57と、底面57から管挿入部51の開口部52側に延びる一対の側面58とが含まれる。
【0021】
管挿入部51には、その内壁面55から内側に突出する複数の凸部53が設けられる。凸部53には、管挿入部51の底面57から突出する第1凸部53Aと、管挿入部51の側面58から突出する第2凸部53Bとが含まれる。
【0022】
各凸部53は電機子コア41の一部として一体成形される。各凸部53は、奥行方向Zに長い突条として形成される。各凸部53の断面は、管挿入部51の内側に向けて凸状に湾曲する円弧状に形成される。
【0023】
冷却管60のコア冷却部61は各凸部53に接触する。各凸部53は円弧状に形成されるため、奥行方向Zと直交する断面において、各凸部53と冷却管60は点接触する。冷却管60は、各凸部53と接触することにより、管挿入部51の内壁面55から間隔L1を空けて保持される。言い換えると、冷却管60は、各凸部53との接触により、管挿入部51の内壁面55から一定以上の間隔L1が空くように位置決めされる。この間隔L1は後述する。ここでいう管挿入部51の内壁面55とは、管挿入部51を形成する壁面から凸部53を形成する壁面を除いたものをいう。
【0024】
管挿入部51には一対の差込溝部59が形成される。各差込溝部59は、管挿入部51の各側面58の対向する位置であって、各凸部53より管挿入部51の開口側に形成される。差込溝部59は奥行方向Zに溝状に延びるように形成され、奥行方向Zの両端側が開口する。
【0025】
矯正部材70は板状に形成され、一対の差込溝部59内に幅方向両端部70aが配置される。矯正部材70はFRP(Fiber Reinforced Plastics)等の樹脂材料を素材とするが、他の金属材料等を素材としてもよい。矯正部材70は、図3に示すように、管挿入部51の奥行方向Zの長さL1と合わせた長さL2、つまり、長さL1と略一致する長さL2を有する。矯正部材70は、後述のように、冷却管60のうねりを矯正するために配置される。
【0026】
冷却管60のコア冷却部61と管挿入部51の間には樹脂材80が充填される。樹脂材80はモールド樹脂等であり、空気より熱伝達率が大きい素材が用いられる。この樹脂材80の充填により、冷却管60と電機子コア41の間で熱伝達され易くなり、冷却管60による電機子コア41の冷却性能が良好となる。
【0027】
ここで、冷却管60と管挿入部51の内壁面55の間に溶融樹脂を流し込んだとき、これらが接触したり、これらの間隔L1があまりに狭いと、冷却管60により溶融樹脂の流動が阻害され、これらの間に未充填の領域が残り気泡が生じ得る。これを防止するため、この間隔L1は、このような冷却管60による溶融樹脂の流動を阻害しないような大きさに設定される。この間隔L1は実験、解析等により求められるが、その一例としては、冷却管60の直径が4.0[mm]の場合、0.4〜0.5[mm]である。
【0028】
次に、電機子コア41の管挿入部51内に冷却管60を固定するための方法の一例を説明する。
【0029】
まず、管挿入部51内に冷却管60を配置する。冷却管60は、管挿入部51の開口部52から管挿入部51の底側に挿入し、第1凸部53Aに接触するまで移動させる。ここで、製造誤差等の誤差により冷却管60がすべての凸部53と接触できない場合がある。この場合、第1凸部53Aの断面が円弧状に形成されるため、図5(a)に示すように、冷却管60が第1凸部53Aに接触しただけでは第1凸部53Aにより安定して支持されない。よって、冷却管60が他の凸部53のある方向(図5(a)では方向R)に変位し易くなり、図5(b)に示すように、複数の凸部53に接触した状態で安定して支持され易くなる。
【0030】
つづいて、図6(a)に示すように、管挿入部51の一対の差込溝部59内に矯正部材70を差し込む。矯正部材70は、各差込溝部59の奥行方向Zの開口部59aから差し込むことにより、管挿入部51内に配置される。このように、矯正部材70は管挿入部51内に容易に配置できる。
【0031】
ここで、冷却管60は管体を曲げ加工して製作されるため、曲げ加工時に加わる曲げ力により径方向のうねりが生じ易い。冷却管60のコア冷却部61に突出方向Yの大きいうねりがあると、管挿入部51の開口部52から冷却管60がはみ出してしまい、電機子40の組み立てが困難になり得る。この場合でも、矯正部材70を差し込むと、矯正部材70が冷却管60のうねりがある部位に接触する。矯正部材70を更に差し込むと、図6(b)に示すように、冷却管60が管挿入部51の底側にある第1凸部53Aに押し付けられ、その押し付けにより変形してうねりが矯正される。
【0032】
つづいて、冷却管60と矯正部材70と管挿入部51の内壁面55とにより囲まれた箇所に樹脂材80を充填する。この箇所には溶融樹脂を流し込み、その溶融樹脂を硬化させることにより樹脂材80を充填する。このとき、溶融樹脂は管挿入部51の奥行方向Zの開口から流し込んでもよいし、矯正部材70に設けた貫通孔から流し込んでもよい。
【0033】
本実施形態に係る電機子40の作用効果を説明する。電機子40の管挿入部51に凸部53がない場合、管挿入部51内での冷却管60の相対位置が決まらず、これらの接触位置にばらつきが生じる。よって、冷却管60と管挿入部51の間に溶融樹脂を流し込んだとき、その注入位置によっては、管挿入部51と冷却管60との接触位置近傍で、冷却管60により溶融樹脂の流動が阻害され、樹脂材80の充填状況にばらつきが生じてしまう。このばらつきは、樹脂材80内での気泡の発生につながり、気泡は樹脂材80より熱伝達率が低いことから、冷却管60による電機子コア41の冷却性能の低下を招く。
【0034】
この点、本実施形態に係る電機子40によれば、冷却管60と凸部53の接触により、管挿入部51の内壁面55から一定以上の間隔が空くように冷却管60が位置決めされる。よって、管挿入部51内での冷却管60の接触位置のばらつきが抑えられ、冷却管60と管挿入部51の間に溶融樹脂を流し込んだとき、冷却管60により溶融樹脂の流動が阻害され難くなる。このため、樹脂材80内に気泡が生じ難くなり、冷却管60による電機子コア41の冷却性能が良好となる。
【0035】
また、冷却管60と複数の凸部53が接触しており、その接触部分を通して電機子コア41に熱伝達され易くなる。よって、冷却管60による電機子コア41の冷却性能が良好となる。
【0036】
また、冷却管60にうねりがある場合でも、そのうねりが矯正部材70により矯正される。よって、管挿入部51の開口部52から冷却管60がはみ出る等して電機子40の組み立てが困難になる場合が生じ難くなり、電機子40の組み立て性が良好となる。
【0037】
[第2実施形態]
図7は第2実施形態に係る電機子40を示す。以下の実施の形態では、第1の実施の形態で説明した要素と同一の要素に同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0038】
第2実施形態に係る電機子40は、第1実施形態と比較して矯正部材70の構成が相違する。矯正部材70は、管挿入部51の奥行方向Zの長さL1より短い長さL3を有する。矯正部材70は、管挿入部51の奥行方向Zの両端部51aに一つずつ配置される。この場合でも、冷却管60のうねりを矯正する効果がある程度は得られ、電機子40の組み立て性が良好となる。
【0039】
[第3実施形態]
図8は電機子コア41の底面図を示す。電機子コア41は、主として、コイル49が通電されたときの発熱により温度上昇する。このコイル49は、スロット部45内に配置されるスロット挿入部49aと、スロット部45の外側に配置されるコイルエンド部49bとを含む。電機子コア41は、奥行方向Zの中間部41cがスロット挿入部49aにより主に加熱され、奥行方向Zの両端部41dがスロット挿入部49aとコイルエンド部49bにより主に加熱される。よって、電機子コア41は中間部41cより両端部41dがコイルエンド部49bにより加熱され易くなる。このため、電機子コア41は奥行方向Zに温度勾配が生じ易く、熱膨張により奥行方向Zに直交する方向の反りが生じる恐れがある。
【0040】
第3実施形態に係る電機子40は、この温度勾配に起因する電機子コア41の反りを抑えるため、以下の構成を採用している。なお、以下の説明では、電機子コア41の奥行方向Zの両端部41dを単に両端部41dといい、その奥行方向Zの中間部41cを単に中間部41cという。
【0041】
図9(a)は第3実施形態に係る電機子40を示す正面断面図であり、(b)、(c)はそれぞれ電機子コア41の端部41d、中間部41cの側面断面図である。
【0042】
電機子コア41の複数の凸部53は、その奥行方向Zの位置に応じて、冷却管60との接触面積が変化するように構成される。詳細には、電機子コア41の両端部41dにおいて、第1凸部53Aは、図9(b)に示すように、冷却管60と接触する部分が、冷却管60の外周面に沿うように凹状に湾曲する形状を有する。第2凸部53Bは、管挿入部51の内側に向けて凸状に湾曲する円弧状に形成される。奥行方向Zに直交する断面において、第1凸部53Aは冷却管60の外周面に沿って面接触し、第2凸部53Bは冷却管60と点接触する。
【0043】
電機子コア41の中間部41cにおいて、各凸部53の断面は、図9(c)に示すように、管挿入部51の内側に向けて凸状に湾曲する円弧状に形成される。各凸部53は、奥行方向Zに直交する断面において、冷却管60と点接触する。
【0044】
これにより、電機子コア41の中間部41cより両端部41dの方が、奥行方向Zに直交する断面において、冷却管60と各凸部53との接触面積の合計が大きくなる。
【0045】
電機子コア41の中間部41cでは、凸部53と冷却管60の接触面積が小さいため、これらの間で熱伝達され難くなる。一方、電機子コア41の両端部41dでは、凸部53と冷却管60の接触面積が大きいため、これらの間で熱伝達され易くなる。言い換えると、冷却管60と電機子コア41の間の熱の伝え難さを表す熱抵抗は、電機子コア41の中間部41cより両端部41dの方が小さくなる。この熱抵抗は管挿入部51内における冷却管60の管軸方向の位置に応じて変化することになる。
【0046】
これにより、電機子コア41は、コイル49により加熱され易い両端部41dが冷却管60により冷却され易くなり、その両端部41dより加熱され難い中間部41cが冷却管60により冷却され難くなる。よって、電機子コア41の奥行方向Zの温度勾配が抑えられ、熱膨張による電機子コア41の反りが抑えられる。
【0047】
なお、各凸部53の形状は、電機子コア41の中間部41cより両端部41dの方が、冷却管60との接触面積の合計が大きければよく、上述の例に限定されない。
【0048】
[第4実施形態]
第3実施形態では、奥行方向Zの位置に応じて、冷却管60と複数の凸部53の接触面積を変化させるため、冷却管60と接触する凸部53の形状を変化させた。この接触面積を変化させるためには凸部53の数を変化させてもよい。
【0049】
図10(a)は第4実施形態に係る電機子40を示す正面断面図であり、(b)、(c)はそれぞれ電機子コア41の端部41d、中間部41cの側面断面図である。
【0050】
電機子コア41は、図10(b)に示すように、その両端部41dにおいて、三つの第1凸部53Aと二つの第2凸部53Bを備える。冷却管60は合計5つの凸部53と接触する。電機子コア41は、図10(c)に示すように、その中間部41cにおいて、一つの第1凸部53Aと二つの第2凸部53Bを備える。冷却管60は合計3つの凸部53と接触する。電機子コア41の中間部41cより両端部41dの方が、奥行方向Zに直交する断面において、冷却管60と各凸部53の接触面積の合計が大きくなる。
【0051】
本実施形態に係る電機子40によっても、電機子コア41の奥行方向Zの温度勾配が抑えられ、熱膨張による電機子コア41の反りが抑えられる。
【0052】
なお、各凸部53の数は、電機子コア41の両端部41dの方が中間部41cより多ければよく、上述の例に限定されない。
【0053】
[第5実施形態]
図11(a)は第5実施形態に係る電機子40を示す正面断面図であり、(b)、(c)はそれぞれ電機子コア41の端部41d、中間部41cの側面断面図である。
【0054】
電機子40は、電機子コア41の奥行方向Zの位置に応じて、矯正部材70と冷却管60の接触面積が変化するように構成される。詳細には、矯正部材70の幅方向中間部70bの厚みは、図11(b)に示すように、電機子コア41の両端部41dにおいて、厚みT1[mm]となるように形成される。この厚みT1は、矯正部材70を管挿入部51内に配置したときに、冷却管60に接触する大きさに設定される。
【0055】
矯正部材70の幅方向中間部70bの厚みは、図11(c)に示すように、電機子コア41の中間部41cにおいて、T1より小さい厚みT2[mm]となるように形成される。厚みT2は、厚みT1の部分が冷却管60に接触したときに、その厚みT2の部分が冷却管60に接触しない大きさに設定される。また、矯正部材70は樹脂材80より熱伝導率に優れた素材により形成される。
【0056】
電機子コア41の両端部41dでは、冷却管60が矯正部材70と接触するため、冷却管60から矯正部材70を通して熱伝達され易くなる。一方、電機子コア41の中間部41cでは、冷却管60が矯正部材70と接触しないため、冷却管60から矯正部材70を通して熱伝達され難くなる。この場合も、冷却管60と電機子コア41の熱抵抗は、電機子コア41の中間部41cより両端部41dの方が小さくなる。
【0057】
これにより、電機子コア41は、コイル49により加熱され易い両端部41dが冷却管60により冷却され易くなり、加熱され難い中間部41cが冷却管60により冷却され難くなり、電機子コア41の奥行方向Zの温度勾配が抑えられる。
【0058】
[第6実施形態]
図12(a)は第6実施形態に係る電機子40を示す正面断面図であり、(b)は電機子コア41の端部41dの拡大正面断面図である。図13は電機子コア41の管挿入部51の拡大側面断面図である。なお、図12(b)では樹脂材80を省略している。
【0059】
電機子40は、複数の凸部53や矯正部材70を備えておらず、押付部材90を備える。押付部材90は管挿入部51内に配置される。押付部材90は電機子コア41の両端部41dのそれぞれに一つずつ設けられる。押付部材90は板状に形成され、一対の差込溝部59内に幅方向両端部90aが配置される。押付部材90は金属材料を素材とするが、樹脂材料等の他の材料を素材としてもよい。
【0060】
差込溝部59は、奥行方向Zの開口部59aに向かうにつれて管挿入部51の突出方向Yの開口部52側に傾斜する傾斜面59bが形成される。押付部材90は、その幅方向の端部90aにおいて管挿入部51の突出方向Yの開口部52側に案内面91が形成される。押付部材90の端部90aを差込溝部59に差し込むと、その案内面91が差込溝部59の傾斜面59bに接触する。押付部材90を更に差し込むと、差込溝部59の傾斜面59bと案内面91の接触により、押付部材90が冷却管60に近づくように案内される。
【0061】
押付部材90が冷却管60に接触した状態で更に押付部材90を差し込むと、冷却管60が管挿入部51の内壁面55に押し付けられる。押付部材90の差込量を増減させると、押付部材90による冷却管60への押付力が増減する。押付部材90は冷却管60を押し付けた状態で樹脂材80により固定される。
【0062】
これにより、電機子コア41の両端部41dにおいて、押付部材90により管挿入部51の内壁面55に押し付ける押付力が冷却管60に作用し、電機子コア41の中間部41cにおいて押付力が冷却管60に作用しない。つまり、電機子40は、奥行方向Zの位置に応じて、押付部材90による押付力が変化するように構成される。
【0063】
電機子コア41の両端部41dでは、押付部材90により冷却管60に押付力が作用するため、冷却管60と管挿入部51の内壁面55が密着するように両者の接触面積が大きくなる。一方、電機子コア41の中間部41cでは、冷却管60に押付力が作用しないため、冷却管60と管挿入部51の内壁面55の接触面積が両端部41dより小さくなる。よって、電機子コア41の両端部41dでは、冷却管60と管挿入部51の間で発生する接触熱抵抗が低減し、電機子コア41から冷却管60に熱伝達され易くなる。一方、電機子コア41の中間部41cでは、これらの間の接触熱抵抗が両端部41dより大きくなり、電機子コア41から冷却管60に熱伝達され難くなる。
【0064】
これにより、電機子コア41は、コイル49により加熱され易い両端部41dが冷却管60により冷却され易くなり、加熱され難い中間部41cが冷却管60により冷却され難くなり、電機子コア41の奥行方向Zの温度勾配が抑えられる。
【0065】
なお、電機子コア41の両端部41dの方が中間部41cより大きな押付力が作用するように構成されていればよく、電機子コア41の中間部41cにも別の押付部材を配置し、その押付部材90により冷却管60に押付力を作用させてもよい。
【0066】
また、上述の例では、電機子コア41が複数の凸部53を備えていない例を説明したが、複数の凸部53を備える電機子コア41に押付部材90が用いられてもよい。この場合、押付部材90は、電機子コア41の両端部41dにおいて、冷却管60を管挿入部51の凸部53、つまり、管挿入部51の内壁面55側に押し付ける。これにより、冷却管60と管挿入部51の凸部53が密着するように両者の接触面積が大きくなり、冷却管60と凸部53の間で発生する接触熱抵抗が低減し、電機子コア41から冷却管60に熱伝達され易くなる。
【0067】
[第7実施形態]
図14は第7実施形態に係る電機子40を示す正面断面図であり、(b)、(c)はそれぞれ電機子コア41の端部41d、中間部41cの側面断面図である。
【0068】
電機子コア41は、奥行方向Zの位置に応じて、冷却管60の管径が変化するように構成される。詳細には、冷却管60の外径は、図14(b)に示すように、電機子コア41の両端部41dにおいて、外径R1[mm]となるように形成される。また、冷却管60の外径は、図14(c)に示すように、電機子コア41の中間部41cにおいて、R1より小さい外径R2[mm]となるように形成される。
【0069】
電機子コア41の両端部41dでは、冷却管60の外径が大きいため、その外周側の樹脂材80との接触面積が大きくなり、その周囲の電機子コア41との間で樹脂材80を通して熱伝達され易くなる。一方、電機子コア41の中間部41cでは、冷却管60の外径が小さいため、その外周側の樹脂材80との接触面積が小さくなり、その周囲の電機子コア41との間で樹脂材80を通して熱伝達され難くなる。この場合も、冷却管60と電機子コア41の熱抵抗は、電機子コア41の中間部41cより両端部41dの方が小さくなる。
【0070】
これにより、電機子コア41は、コイル49により加熱され易い両端部41dが冷却管60により冷却され易くなり、加熱され難い中間部41cが冷却管60により冷却され難くなり、電機子コア41の奥行方向Zの温度勾配が抑えられる。
【0071】
なお、上述の第3〜第7実施形態では、電機子コア41の奥行方向Zでの温度勾配を抑えるため、コイル49により加熱され難い中間部41cの熱抵抗は変化させず、加熱され易い両端部41dの熱抵抗を小さくするように構成した。この他にも、コイル49により加熱され難い中間部41cの熱抵抗を大きくし、加熱され易い両端部41dの熱抵抗を変化させないように構成して、電機子コア41の奥行方向Zの温度勾配を抑えるようにしてもよい。
【0072】
また、冷却管60と電機子コア41の熱抵抗を電機子コア41の奥行方向Zの位置に応じて変化させるうえで、冷却管60や樹脂材80の熱伝導抵抗を奥行方向Zで変化させてもよい。また、第3〜第7実施形態に係る構造を組み合わせて、冷却管60と電機子コア41の熱抵抗を電機子コア41の奥行方向Zで変化させてもよい。
【0073】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎない。また、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が可能である。
【0074】
上述の実施形態では、本発明に係る電機子40を可動子に適用した例を説明したが、固定子に適用されてもよい。固定子に適用される場合も、電機子40は、界磁子30である可動子と対向する電機子コア41の内側部41aにティース部43が設けられ、そのティース部43にコイル49が巻き回される。
【0075】
電機子コア41の管挿入部51はティース部43の突出方向Yに開口部52が形成される溝状に形成されたが、その開口部52がない貫通孔として形成されてもよい。また、管挿入部51の形状は上述のものに限定されない。
【0076】
また、冷却管60が配置される管挿入部51は、スロット部45が形成される電機子コア41の内側部41aとは逆側の外側部41bに形成されたが、その管挿入部51としてスロット部45が用いられてもよい。この場合、管挿入部51としてのスロット部45の内壁面に複数の凸部53が設けられ、スロット部45内に冷却管60が配置され、その冷却管60より開口側に矯正部材70が配置されてもよい。
【0077】
冷却管60に複数のコア冷却部61を設け、各コア冷却部61を複数の管挿入部51内に配置し、単一の冷却管60により一つの電機子コア41を冷却する例を説明した。他の変形例では、複数の管挿入部51内に別々の冷却管60を配置し、複数の冷却管60により一つの電機子コア41を冷却してもよい。また、コア冷却部61の断面は円筒状に形成されたが、角筒状等に形成されてもよい。
【0078】
各凸部53は奥行方向Zに長い突条として形成されたが、奥行方向Zに間隔を空けた複数の突起として形成されてもよい。また、凸部53は、奥行方向Zに直交する断面において、複数の凸部53のうちの何れかが接触していればよい。
【0079】
また、凸部53の断面は、図15に示すように、管挿入部51の内側に向けて尖る三角形状に形成されてもよい。この場合でも、凸部53の断面を円弧状に形成した場合と同様に、冷却管60が複数の凸部53に接触した状態で安定して支持され易くなる。
【符号の説明】
【0080】
10・・・リニアモータ、40・・・電機子、41c・・・中間部、41d・・・端部、42・・・ヨーク部、43・・・ティース部、49・・・コイル、51・・・管挿入部、53・・・凸部、55・・・内壁面、59・・・差込溝部、60・・・冷却管、70・・・矯正部材、80・・・樹脂材、90・・・押付部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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