特許第6338410号(P6338410)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6338410
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】冷凍保存性向上剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 3/36 20060101AFI20180528BHJP
   C12N 1/16 20060101ALN20180528BHJP
【FI】
   A23L3/36 Z
   !C12N1/16 Z
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-53895(P2014-53895)
(22)【出願日】2014年3月17日
(65)【公開番号】特開2014-230540(P2014-230540A)
(43)【公開日】2014年12月11日
【審査請求日】2017年1月12日
(31)【優先権主張番号】特願2013-96123(P2013-96123)
(32)【優先日】2013年5月1日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】312015749
【氏名又は名称】興人ライフサイエンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160978
【弁理士】
【氏名又は名称】榎本 政彦
(72)【発明者】
【氏名】中尾 英二
(72)【発明者】
【氏名】安松 良恵
(72)【発明者】
【氏名】福田 雄典
(72)【発明者】
【氏名】阿孫 健一
【審査官】 川合 理恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−239866(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/065732(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 3/00
C12N 1/00−7/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/WPIDS/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
Scopus
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酵母菌体残渣から抽出して得られる冷凍保存性向上剤であって、
固形分当たりの食物繊維含量が10重量%以上、かつ蛋白質含量が15重量%以上である冷凍保存性向上剤
【請求項2】
前記酵母がキャンディダ・ユティリスである請求項1に記載の冷凍保存性向上剤。
【請求項3】
前記食物繊維に占めるマンナンの割合が50重量%以上の、請求項1または2に記載の冷凍保存性向上剤。
【請求項4】
冷凍保存を必要とする食品に、請求項1〜のいずれか一項に記載の冷凍保存性向上剤を1〜0.0001重量%含有させることを特徴とする、前記食品の冷凍保存性を向上させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、食品用の酵母、望ましくは酵母菌体残渣から抽出される冷凍保存性向上剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品の長期保存において、冷凍保存は非常に有効な方法であり、生鮮食料品や加工食品の長期保存方法として一般的に用いられている。
しかしながら、多くの食品はいったん冷凍保存すると、解凍しても冷凍前とまったく同じ状態には戻らず、食味、食感、外観などにかかる品質が低下してしまうため、その問題を解決するために、さまざまな方法が考えられてきた。
【0003】
たとえば、不凍タンパク質(AFP)を食品に添加することで氷結晶の生成を抑制し、食品の冷凍変性を防止できることが見出されている。AFPの取得方法として、遺伝子組み換え菌体からとる方法(特許文献1)や、ワカサギやカイワレなどの天然物から抽出する方法が報告されている(特許文献2)。
【0004】
特許文献3には、酵母菌体等を培養して得られる代謝物を添加することで、冷凍そばなどの冷凍食品の保存性が高められること、このような代謝組成物は旨味を有する有機酸を含むため、添加した食品に旨味も付与できることが報告されている。
特許文献4には、植物性の飲食品にセロオリゴ糖を添加する方法により、穀物、野菜、フルーツからなる冷凍飲食品の冷凍保存性が向上することが報告されている。
また、ガラクトマンナンを酵素又は微生物により低分子化させたものを食品に添加することで、タンパク質の冷凍変性を防止できることも報告されている(特許文献5)。
【0005】
一方、酵母には核酸、アミノ酸、ペプチドなどの成分が含まれており、その抽出物は医薬品であるグルタチオンの原料や、天然の調味料である酵母エキスとして用いることができる。
酵母エキスの製造方法としては、抽出する酵素や媒体などにより種々の方法が知られており、たとえば特許文献6が挙げられる。
【0006】
酵母から酵母エキス等を抽出した後の菌体残渣はグルカン、マンナン、マンノプロテイン、タンパク質、脂質、核酸を主要な成分とするものである。
このような酵母菌体残渣を処理する方法、有効利用する方法については複数の公知文献があり、たとえば、特許文献7には、酵母エキス残渣を特定の酵素で可溶化して排水処理する方法が記載されている。特許文献8には酵母エキス残渣を微生物に資化させてマンノースを製造する方法、特許文献9には酵母エキス残渣をアルカリ処理後洗浄して薬理用組成物を得る方法、特許文献10には酵母エキス残渣に細胞壁溶解酵素等を作用させて微生物培養基材を得る方法が記載されている。
このような状況の中で、酵母菌体残渣のさらなる有効活用方法が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO94/03617、特表平10−508759号公報
【特許文献2】特表2000−515751号公報、特開2003−250572号公報、特開2007−153834号公報
【特許文献3】特開2003−144118号公報
【特許文献4】特開2010−226995号公報
【特許文献5】特開2008−143986号公報、特開2012−224650号公報
【特許文献6】特開平5−252894号公報、特開平6−113789号公報、特開平9−56361号公報
【特許文献7】特開平7−184640号公報
【特許文献8】特開平10−57091号公報
【特許文献9】特開2001−55338号公報
【特許文献10】特開2007−006838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
解決しようとする課題は、食品の冷凍保存性向上効果に優れ、食品として安全性が高く、かつ呈味性の無い冷凍保存性向上剤を、低コストかつ環境負荷の少ない方法で製造することである。また、酵母抽出物の副産物として生成する酵母菌体残渣の有効利用である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題の解決につき鋭意研究の結果、酵母菌体残渣からの熱抽出物に冷凍保存性向上効果があることを見出した。
【0010】
すなわち本発明は、
(1)酵母から抽出して得られる冷凍保存性向上剤、
(2)酵母菌体残渣から抽出して得られる冷凍保存性向上剤、
(3)前記酵母がキャンディダ・ユティリスである上記(1)または(2)の冷凍保存性向上剤、
(4)固形分当たりの食物繊維含量が10重量%以上、かつ蛋白質含量が15重量%以上である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の冷凍保存性向上剤、
(5)前記食物繊維中のマンナン含量が50重量%以上である、上記(4)記載の冷凍保存性向上剤
(6)冷凍保存を必要とする食品に(1)〜(5)のいずれかに記載の冷凍保存性向上剤を1〜0.0001重量%含有させることを特徴とする、前記食品の冷凍保存性を向上させる方法
にかかるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、食経験があり安全性が確認されているトルラ酵母から、優れた効果を有する冷凍保存性向上剤が得られる。
この冷凍保存性向上剤は、冷凍する食品または冷凍を必要とする物に少量添加することで、冷凍で生じる品質低下を抑制し、冷凍保存性を向上させることができる。この冷凍保存性向上剤自体には呈味性がないため、添加した食品に異味を付与することがない。
また、酵母を原料とするため、動植物を原料とする場合と比較して、供給不安、価格変動、品質変動のリスクが少ない。
さらに、原料として酵母エキス等を抽出した後の菌体残渣を用いることができ、そこから簡単な工程で冷凍保存性向上剤が取得できる。トルラ酵母の菌体残渣は、調味料である酵母エキスや他の有用成分の生産に伴って大量に副生しており、本発明はその酵母菌体残渣を有効利用できるため、コスト、廃棄物削減の点でも、きわめて有利である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明を具体的に説明する。
本発明でいう酵母とは、遺伝子組み換えを行わず、食品製造用に用いうる酵母であり、具体的にはキャンディダ・ユティリス、サッカロミセス・セレビシエ等が挙げられ、中でもキャンディダ・ユティリスが望ましい。
【0013】
本発明の酵母菌体残渣とは、酵母に熱水、酸・アルカリ性溶液、自己消化、機械的破砕、細胞壁溶解酵素、蛋白質分解酵素、リボヌクレアーゼ、またはデアミナーゼのいずれか一つ以上を用いて抽出処理することにより、酵母エキスまたは有用成分を抜いた後の残渣である。例として、興人ライフサイエンス(株)製の「KR酵母」が挙げられる。
このような残渣は一般的に、グルカン、マンナン、蛋白質、脂質、核酸を主要な成分とするものであるが、構造的にはグルカン、マンナン、蛋白質と他の成分が複合体となって強固に結合していることが推察される。
本発明の冷凍保存性向上剤を製造するために用いる酵母菌体残渣としては、特に酵母から酸抽出した後の残渣が、高活性の冷凍保存性向上剤が得られるため、望ましい。
【0014】
本発明の冷凍保存性向上剤を取得する工程として、まず上述の酵母菌体残渣に水を加えて、乾燥菌体重量で約10重量%濃度の菌体懸濁液を調製する。必要であれば、菌体懸濁液のpHを中性付近に調整し、遠心分離で酵母菌体残渣を取得し、再度水を加えて約10重量%濃度の菌体懸濁液を調製する工程を入れる。それを80〜100℃で10分以上、望ましくは20分加熱処理を行った後、遠心分離機にて沈殿物を除去し、上清液として、食物繊維と蛋白質を含有する画分を取得する。この画分をそのまま、又は乾燥して冷凍保存性向上剤とする。
この冷凍保存性向上剤の固形分あたりの食物繊維含量が10重量%以上、望ましくは25重量%以上で、かつ蛋白質含量が15重量%以上、望ましくは20重量%以上のものは、強い冷凍保存性向上効果を有する。さらに、該食物繊維に占めるマンナンの割合が高いほど効果が高く、望ましくは50重量%以上、さらに望ましくは70重量%以上である。一方、強い呈味成分であるイノシン酸、グアニル酸、グルタミン酸の含量は低いことが望ましい。
【0015】
冷凍保存性向上剤に含まれるタンパク質含量は冷凍保存性向上剤を6N 塩化水素にて110℃、24時間加水分解したのち前処理を行い全自動アミノ酸分析計にて測定して求めた。また、食物繊維であるグルカン及びマンナン含量は冷凍保存性向上剤を1N硫酸にて110℃、3.5時間加水分解して中和後、加水分解生成物であるマンノース、グルコースを液体クロマトグラフィーにて測定し、グルカン・マンナンへ換算して求めた。
【0016】
酵母菌体残渣を原料として上記の製法により得られた冷凍保存性向上剤は、使用分野としては冷凍して保存する食品いわゆる冷凍食品の品質保持として好適に用いうるが、特に食品に限定されるものではなく、冷凍品に広くに使用することができる。
【実施例】
【0017】
以下、実施例を挙げて、本発明を詳細に説明する。
【0018】
<製造例1>
キャンディダ・ユティリスCs7529株(FERM BP−1656株)の10%菌体懸濁液を10N-硫酸でpH3.5に調整し、60℃、30分間加熱処理した後、遠心分離機で酵母エキスと酵母菌体残渣とに分離した。その後、酵母残渣を水で10重量%に調製した。10%濃度酵母残渣懸濁液1000gをpH7.0に調整後、遠心分離にて上清を除去した。沈殿物を水で懸濁して90℃、20分間加熱処理を行った。その後、遠心分離により得られた上清液を濃縮、凍結乾燥させて約6gの粉末状の冷凍保存性向上剤(サンプル1)を得た。
サンプル1中の食物繊維含量は26.6重量%、タンパク含量は21重量%であった。また、この食物繊維中に占めるマンナン含量は90.4%であった。
<製造例2>
キャンディダ・ユティリスCs7529株(FERM BP−1656株)の10%菌体懸濁液を10N-硫酸でpH3.5に調整し、60℃、30分間加熱処理した後、遠心分離機で酵母エキスと酵母菌体残渣とに分離した。その後、酵母残渣を水で8重量%に調製した。8%濃度酵母残渣懸濁液18kgをpH7.0に調整後、セパレーター(アルファ・ラバル遠心分離機:LAPX202BGT-24-50/60)にて固形物と上清を分離し、固形物を回収した。固形物を水で懸濁し、8%濃度溶液とした。再びセパレーターで固形物と上清を分離し、固形物を回収した。固形物を水で懸濁し90℃、20分間加熱処理を行い、冷水で冷却した。その後、セパレーターで上清を回収し、大型エバポール及びエバポレーターで濃縮し、凍結乾燥させて約80gの粉末状の冷凍保存性向上剤(サンプル2)を得た。
サンプル2中の食物繊維含量は15.0重量%、タンパク含量は23.9重量%であった。また、この食物繊維中に占めるマンナンの量は67.4重量%であった。
<製造例3>
KR酵母酵を水で10重量%に調製した。10%濃度KR酵母懸濁液1000gをpH7.0に調整後、遠心分離にて上清を除去した。沈殿物を水で懸濁して90℃、20分間加熱処理を行った。その後、遠心分離により得られた上清液を濃縮、凍結乾燥させて冷凍保存性向上剤(サンプル3)を得た。サンプル3中の食物繊維含量は30.5重量%、タンパク含量は20.7重量%であった。また、この食物繊維中に占めるマンナンの量は94.6重量%であった。
【0019】
<実施例1> 加水全卵冷凍試験
鶏卵と水を2.4対1の重量比で撹拌混合し、加水全卵を作製した。加水全卵へ製造例で得られた冷凍保存性向上剤(サンプル1)を0.01重量%溶解して脱気後、蓋付きの円形容器に入れて−20℃で一晩冷凍した。冷凍された加水全卵の凍結の形状を目視評価した。その結果を図1の1に示す。
【0020】
<比較例1>
実施例1において、サンプル1の冷凍保存性向上剤を添加しないこと以外は、実施例1と同様に行った。その結果を図1の2に示す。
【0021】
<比較例2>
実施例1において、サンプル1の代わりにショ糖を16.7重量%添加したこと以外は、実施例1と同様に行った。その結果を図1の3に示す。
【0022】
<比較例3>
実施例1において、サンプル1の代わりにRNA(RNA含量99重量%)を0.01重量%添加したこと以外は、実施例1と同様に行った。その結果を図1の4に示す。
【0023】
評価の結果、実施例1で得られた冷凍加水全卵は、氷の結晶が目視では観察されず、卵液の表面が均一で滑らかであった。それに対し、比較例1、2、3はいずれも明らかに氷の結晶の成長が観察され、卵液の表面に不規則な凹凸と色のむらを生じていた。
【0024】
<実施例2> だし巻き卵冷凍試験
表1に示す配合比(重量)で調製しただし入り卵51gに対し、製造例で得られた冷凍保存性向上剤(サンプル1)の0.01g/ml溶液を0.5g添加してよくかき混ぜ、サンプル1を約0.01重量%含んだだし入り卵を調製した。これを型に入れて、90℃で30分間加熱した後、室内で放冷してから−20℃で2日間冷凍した。冷凍後、室温で解凍して断面、食感、ドリップ、味を評価した。その結果を図2の5に示す。
【0025】
【表1】
【0026】
<比較例4>
実施例2において、サンプル1の代わりに水を添加したこと以外は、実施例2と同様に行った。その結果を図2の6に示す。
【0027】
評価の結果、実施例2で得られただし巻き卵は比較例4と比べて、中に空洞ができておらず食感と味も冷凍前と変わらなかった。また、ドリップもほとんど生じていなかった。比較例4ではだし巻き卵の中に多数の空洞ができてスポンジ状になっており、食感と味が悪くなった。また、ドリップも生じた。
【0028】
<実施例3>焼成卵白の冷凍試験
市販の鶏卵を卵黄と卵白に分け、卵白をよくかき混ぜてから超音波装置で30秒脱気した。冷凍保存性向上剤(サンプル1)を容器へ0.05g測りとり、水15gを入れてサンプル1を溶解した。そこへ、脱気した卵白を35g添加し均一に混ぜた。サンプル1は全量の0.1重量%である。得られた卵白溶液を90℃、15分で焼成した。焼成した卵白は室内で放冷してから-20℃で3日間保存した。冷凍保存後、室温で解凍して卵白ゲルの断面にスが入っていないかどうか観察した。その結果を図3Aに示した。
【0029】
<比較例5>
実施例3において、サンプル1の代わりに水を添加したこと以外は、実施例3と同様に行った。その結果を図3Bに示す。
【0030】
<比較例6>
実施例4において、サンプル1の代わりにキサンタンガムを添加したこと以外は、実施例3と同様に行った。その結果を図3Cに示す。
【0031】
評価の結果、実施例3で得られた焼成卵白は比較例5、6と比べて、中に空洞ができておらず食感と味も冷凍前とほとんど変わらなかった。また、ドリップもほとんど生じていなかった。比較例5、6では焼成卵白中に空洞ができてスポンジ状になっており、食感と味が悪くなった。また、ドリップも生じた。
【0032】
<実施例4>焼き鮭の凍結融解試験
市販の鮭の切り身を80gずつ測り取った。冷凍保存性向上剤(サンプル1)の0.05重量%水溶液及び0.5重量%水溶液をそれぞれ100ml、別の袋にいれ、それぞれ に鮭を入れて真空パックし、4℃で3時間漬け込んだ。そのあと余分な水分を取り除き、−20℃で一晩冷凍した。冷凍した鮭は室温で解凍した後、魚焼きグリルで焼いた。焼いた鮭は粗熱を取った後に、紙タオルでドリップを回収し、ドリップ量を測定した。
【0033】
<比較例7>
実施例4において、サンプル1の水溶液の代わりに水を添加したこと以外は、実施例4と同様に行った。
【0034】
評価の結果、0.05%または0.5%サンプル1溶液に漬け込んだ鮭の焼成後のドリップ量はそれぞれ0.94g、1.02gであった。比較例7ではドリップ量が2.07gであった。サンプル1溶液で鮭を漬け込む事で鮭を冷凍障害から保護し、焼成後のドリップを軽減し歩留まりのよい焼成鮭を作成することができた。
【0035】
<実施例5>焼成卵白の冷凍試験
市販の鶏卵を卵黄と卵白に分け、卵白をよくかき混ぜてから超音波装置で30秒脱気した。冷凍保存性向上剤(サンプル2)を容器へ0.05g測りとり、水15gを入れてサンプル2を溶解した。そこへ、脱気した卵白を35g添加し均一に混ぜた。サンプル2は全量の0.1重量%である。卵白溶液を90℃、15分で焼成した。焼成した卵白は室内で放冷してから-20℃で3日間保存した。冷凍保存後、室温で解凍して卵白ゲルの断面にスが入っていないかどうか観察した。
<実施例6>
実施例5において、サンプル2の代わりにサンプル3を添加したこと以外は、実施例5と同様に行った。
【0036】
<比較例8>
実施例5において、サンプル2の代わりに水を添加したこと以外は、実施例5と同様に行った。
【0037】
評価の結果、実施例5、6で得られた焼成卵白は比較例8と比べて、中に空洞ができておらず冷凍前とほとんど変わらなかった。また、ドリップもほとんど生じていなかった。比較例8では焼成卵白中に空洞ができてスポンジ状になっており、食感と味が悪くなった。また、ドリップも生じた。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上説明してきたように、本発明の冷凍保存性向上剤を冷凍する物にあらかじめ添加しておくことにより、冷凍による変性や品質低下を抑制することができる。本発明の冷凍保存性向上剤は、冷凍食品などの加工食品、生鮮食料品のほか、食品以外の物の冷凍保存にも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】加水全卵冷凍試験(実施例1、比較例1、比較例2、比較例3)の結果を示す写真である。
図2】だし巻き卵冷凍試験(実施例2、比較例4)の結果を示す写真である。
図3】焼成卵白の冷凍試験(実施例3、比較例5、比較例6)の結果を示す写真である。
【符号の説明】
【0040】
1 実施例1:加水全卵に本発明の冷凍保存性向上剤を添加して冷凍したもの
2 比較例1:加水全卵に何も添加せずに冷凍したもの
3 比較例2:加水全卵にショ糖を添加して冷凍したもの
4 比較例3:加水全卵にRNAを添加して冷凍したもの
5 実施例2:本発明の冷凍保存性向上剤を添加しただし巻き卵を凍結融解させたもの
6 比較例4:冷凍保存性向上剤を添加しないだし巻き卵を凍結融解させたもの
7 実施例3:本発明の冷凍保存性向上剤を添加した焼成卵白を凍結融解させたもの
8 比較例5:冷凍保存性向上剤を添加していない焼成卵白を凍結融解させたもの
9 比較例6:キサンタンガムを添加した焼成卵白を凍結融解させたもの
図1
図2
図3