【実施例】
【0016】
図1において符号10はコントローラ、12は溶接トランスケース、14は溶接ヘッドである。コントローラ10は電源スイッチ16、プログラム選択入力部18、表示パネル20を持つ。プログラム選択入力部18では、例えば定電流制御、低電圧制御、定電力制御、固定パルス幅制御などのいずれかの制御モードを選択する。
【0017】
溶接ヘッド14は、上下動可能な上のクランプ部22aと、所定高さに固定された下のクランプ部22bを持ち、これらのクランプ部22a,22bにそれぞれ溶接電極24a,24bが固定されている。各電極24a,24bはウェルドケーブル26によって溶接トランスケース12に収容された溶接トランス28(
図2)の二次側に整流器であるダイオード30、30(
図2)を介して接続されている。この溶接トランス28の一次側はパワーケーブル32(
図1)によってコントローラ10に接続されている。
【0018】
溶接ヘッド14の可動クランプ部22aは、ばね(図示せず)を介してエアシリンダ(共に図示せず)により上下に駆動される。また両電極24a,24bの間にはワークの溶接部(図示せず)が置かれる。
【0019】
足踏みスイッチ(図示せず)から送られるオン信号はアクチュエータケーブル34を介してコントローラ10に送られ、この信号(押圧信号)によってエアシリンダは作動する。そして電極24a,24bの溶接部に対する押圧力が一定値になるとリミットスイッチ(図示せず)がオンとなり、このオン信号がアクチュエータケーブル34を介してコントローラ10に送られる(
図3のステップS100)。コントローラ10はこのオン信号に基づいて溶接動作を開始させる。すなわちこのオン信号がスタート信号となる。
【0020】
図1で36はウェルドセンスケーブルであり、溶接トランス28の二次側電流を示す信号をコントローラ10に導く。この信号は溶接電流値を示す信号である。38は電圧検出用ケーブルであり、クランプ部22a,22bに接続されている。このケーブル38は電極24a,24b間の電圧を検出してコントローラ10に導く。
【0021】
次にコントローラ10の主回路を
図2に基づいて説明する。この図で40は3相交流電源などの電源である。この電源40から3つの相がそれぞれ電源スイッチ16(
図1)を介してインバータ42に導かれる。
【0022】
インバータ42は、4個のNPNトランジスタからなるブリッジで構成される。このインバータ42は電源40の三相交流をダイオード(図示せず)にて整流し、ダイオード(図示せず)で平滑した直流電源をPWM制御して高周波数の電流に変換し、溶接トランス28の一次側に供給する。この溶接トランス28の二次側出力は整流器のダイオード30、30で全波整流され、溶接電極24a,24bに導かれる。
【0023】
44はPWM制御部であり、インバータ42をPWM(Pulse Width Modulation)方式によって電力制御する。なおこのPWM制御部44は、例えば定電流、定電圧、定電力、固定パルス幅などの4種の異なる制御方式を選択可能である。この選択は前記したプログラム選択入力部18(
図1、2)で行う。これらの制御方式については、特許文献1に詳細に説明されているのでここでは説明しない。
【0024】
PWM制御部44は、選択された方式に対応するプログラムで設定される溶接条件に基づいてインバータ42のトランジスタをオン/オフ制御する。この溶接条件は、電流設定パターンA(
図4に点線で示す)を含み、溶接条件設定部46で設定される。
図2で48は増幅乗算部であり、前記溶接電極24a、24bに流れる溶接電流Iと両電極間の溶接電圧Vを示す信号i、vを増幅し、またこれらの乗算により電力Wを算出する。これら電流I、電圧V、電力WはPWM制御部44に導かれ、ここで前記したように選択されたプログラムに従ってPID制御の比例成分P、積分成分I、微分成分Dの各成分を重み付けし、負帰還量が算出される。
【0025】
50はゼロクロス検出部であり、前記溶接条件設定部46で求めた電流設定パターンAと、増幅乗算部48で求めた実際の溶接電流波形I(
図4の実線)とを比較して、両者の偏差を取り、この偏差のゼロクロスを検出し、予め設定した監視範囲a(
図4)内での交差回数(ゼロクロス回数)を積算する。この積算値Nは、比較判定部52で基準値N
0と比較され、N>N
0であれば制御が不適切であるとしてその結果を比較判定結果出力部54に出力すると共に警告表示部56により警告音などで警告する。
【0026】
この警告を受けて操作者はPWM制御部44に負帰還する前記PID制御の各成分の重み付けを修正し、ゼロクロス回数の積算値Nが設定値N
0を超えないように設定する。なおこの設定値N
0は、モニタリング条件入力部58で入力され、設定値メモリ60に記憶しておく。
【0027】
なおこのモニタリング条件入力部58では偏差の変動幅の許容範囲を決める基準値±D
0も設定しておき、この基準値D
0は前記ゼロクロス検出部50に送られて、ここで溶接電流の偏差Dがこの基準値の幅すなわち±D
0の幅内にあるか否かを検出する。この場合基準値D
0は、偏差Dの変動幅が過大であるか否かを求めるためのしきい値である。この偏差Dの絶対値|D|が基準値±D
0の幅より大なら偏差Dは過大で制御不安定であり、基準値±D
0の幅内にあれば制御安定と判定する。
【0028】
次に動作を
図2、3、4を用いて説明する。前記したように電極24a,24bの溶接部に対する押圧力が一定値になるとリミットスイッチ(図示せず)がオンとなり、このオン信号がアクチュエータケーブル34を介してコントローラ10に送られる(
図3、ステップS100)。コントローラ10はこのオン信号に基づいて電源40に通電を開始し(ステップS102)、溶接動作を開始させる。
【0029】
コントローラ10は、予めプログラム選択入力部18で選択された制御モードに対応する制御プログラムなどに対応して、溶接条件設定部46で溶接条件を設定する。この溶接条件は制御モードにより異なり、例えば定電流制御の場合には制御の目標となる電流設定パターンAを含む(ステップS104)。
【0030】
PWM制御部44は、この溶接条件に従ってインバータ42の各トランジスタをオン・オフ制御し、高周波の所定電圧、電流を溶接トランス28の一次側に導く。溶接トランス28の二次側に誘起される交流は、ダイオード30、30によって全波整流され電極24a、24bに導かれ、溶接が始まる。
【0031】
溶接電流iと溶接電圧vとが検出されて、増幅乗算部48に入力される。ここでこれら電流iと電圧vの信号が増幅されて電流I、電圧Vが求められ、またこれらの積である電力Wが算出される。PWM制御部44ではこれら電流I、電圧V、電力Wを用いて、PID制御の負帰還量を演算し、インバータ42をPWM制御する(ステップS106)。
【0032】
増幅乗算部48で求めた電流Iと、溶接条件設定部46で設定した目標制御パターン(例えば定電流制御の場合には電流設定パターンA)とは、ゼロクロス検出部50に送られ、ここでこれらの偏差Dが検出される(ステップS108)。この偏差Dは、溶接時間に比べて十分に短い周期でサンプリングされる。この偏差Dは
図4(A)に示すように、制御がスムーズ(安定)で適切である時には小さいが、同図(B)に示すように、制御が非スムーズ(不安定)であるときには正負に激しく変化する。
【0033】
ゼロクロス検出部50では所定の監視範囲aにおいてこの偏差Dが正負に変化するゼロクロスを検出し(ステップS110)、その正負変化回数N、すなわちゼロクロス回数Nを積算する(ステップS112)。比較判定部52ではこのゼロクロス回数Nをメモリ60に記憶した設定値N
0と比較し(ステップS114)、N>N
0なら比較判定結果出力部54にブザーなどの音を出力すると共に、警告表示部56にアラーム表示する(ステップS116)。
【0034】
またこの実施例では、このゼロクロス検出部50で検出した偏差Dを、メモリ60から入力される基準値D
0と比較し、偏差Dの絶対値|D|がこの基準値D
0の幅より大となったこと(偏差Dの変動幅が基準値D
0の正負の幅よりも過大になったこと)を検出して(ステップS118)、警告を発する(ステップS116)ようにしている。このようにゼロクロス回数Nを監視するだけでなく、偏差Dの変動幅(振幅)も監視しているので、制御が不安定になったことを高精度に検出することができる。
【0035】
以上のようにして比較判定部52で制御不安定と判定しなければ、溶接箇所の溶接に必要な溶接電流の通電が終了したか否かを判定し(ステップS120)、終了していなければさらにステップ106に戻って以上の動作を繰り返す。その途中で比較判定部52が制御不安定と判定すれば、たとえばコントローラ10の警告表示部56に溶接不良であることを表示し、溶接途中で制御安定と判定すれば溶接良好と表示して(ステップS122)、溶接動作を終了する(ステップS124)。