(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記仕切部は、互いに対向して前記シール部を挟圧する周方向の端面が、径方向に延びる前記仕切部の側辺を通り軸心と平行な面に対して傾斜していることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の液封入式防振装置。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。
図1は液封入式防振装置1の平面図であり、
図2は液封入式防振装置1の正面図である。
図1及び
図2に示すように液封入式防振装置1は、円筒状に形成された内側部材10と、内側部材10を同心状に取り囲む円筒状の外側部材20と、外側部材20と内側部材10との間に介設される防振基体30とを備えている。
【0021】
図3は
図1のIII−III線における液封入式防振装置1の断面図であり、
図4は
図1のIV−IV線における液封入式防振装置1の断面図であり、
図5は
図2のV−V線における液封入式防振装置1の断面図である。
図3に示すように内側部材10は、円筒状に形成された筒部11と、筒部11の軸方向中央から径方向外側に向かって略球状に膨出する膨出部12とを備えている。
【0022】
外側部材20は、内側部材10を同心状に取り囲む円筒状の部材であり、円筒状に形成された筒部21と、筒部21の内周面に加硫接着されると共にゴム状弾性体から構成されるゴム膜22と、筒部21が外嵌される中間筒40とを備えている。
【0023】
図3に示すように防振基体30は、内側部材10と外側部材20とを連結すると共にゴム状弾性体から構成される部材である。防振基体30は、内側部材10及び外側部材20の軸方向両側に円環状に形成される一対の径方向隔壁31と、径方向隔壁31間に形成されるゴム膜部32とを備えている。径方向隔壁31及びゴム膜部32は一体に加硫成形され、径方向隔壁31の内周は筒部11の外周に、ゴム膜部32の内周は膨出部12の外周に加硫接着される。径方向隔壁31の外周は、内側部材10を同心状に取り囲む中間筒40の嵌合周壁41の内周に加硫接着される。一対の径方向隔壁31によって外側部材20の軸方向両端が閉鎖されることにより、液室71,72が形成される。液室71,72にはエチレングリコール等の不凍液(液体)が封入される。
【0024】
図4に示すように中間筒40は、筒部21が外嵌される一対のリング状の嵌合周壁41と、嵌合周壁41同士を連結すると共に嵌合周壁41よりも径方向内側に位置し軸直角方向断面が円弧状の連結壁42とを備えている。連結壁42は、径方向隔壁31と一体に加硫成形される一対の軸方向隔壁33が、内周面に加硫接着される。また、連結壁42は、径方向隔壁31と一体に加硫成形されるゴム膜状の外面部34が、外周面に加硫接着される。外面部34には、ゴム状弾性体から構成されると共に径方向外側へ向かって突設されるシール部35及び外面リップ37a(いずれも後述する)が、軸方向中央に突設される。
【0025】
外面部34の軸方向両側に、ゴム状弾性体から構成される壁面部36,38が形成される。壁面部36,38は、内側部材10を挟んで軸方向隔壁33の各々の径方向外側に配置され、それぞれ径方向外側へ向かって延設される。一対の壁面部36は、壁面部36間の軸方向距離が、壁面部38間の軸方向距離より大きく設定される。
【0026】
図5に示すように液室71,72は、径方向隔壁31の間を軸方向に連結する軸方向隔壁33により周方向に区画される。これにより、内側部材10を挟んで相対する略対称な2つの液室71,72が形成される。
図3及び
図5に示すように、内側部材10と外側部材20(筒部21)との間に一対のオリフィス形成部材50が配置される。オリフィス形成部材50は、液室71,72を連通するオリフィス73(
図5参照)を形成するための部材である。
【0027】
次に、
図6を参照してオリフィス形成部材50について説明する。
図6はオリフィス形成部材50の斜視図である。
図6に示すようにオリフィス形成部材50は、断面円弧状に形成される本体部51と、本体部51の径方向内側に形成されると共にゴム膜部32(内側部材10)の軸直角方向(
図5左右方向)に配置される断面円弧状のストッパ52と、本体部51の周方向両側にそれぞれ突設される第1突部53及び第2突部58とを備えている。オリフィス形成部材50は一体成形された金属製または合成樹脂製の部材である。
【0028】
第1突部53は、湾曲状に形成される底面部54と、底面部54の幅方向(軸方向)の両側縁に径方向外側へ向けて立設されると共に周方向に延在する一対の立壁部55と、一対の立壁部55の間に並設されつつ径方向外側へ向けて底面部54に立設されると共に周方向へ延在する仕切部56とを備えている。底面部54に立壁部55及び仕切部56が立設されることで、仕切部56を挟んで軸方向に隣り合う第1凹溝57a及び第2凹溝57bが形成される。第1凹溝57a及び第2凹溝57bは、第1突部53の周方向の端部に開口する。
【0029】
第2突部58は、湾曲状に形成される底面部59と、底面部59の幅方向(軸方向)の両側縁に径方向外側へ向けて立設されると共に周方向に延在する一対の立壁部60とを備えている。底面部59に立壁部60が立設されることで第2凹溝57bが形成される。第2凹溝57bは、オリフィス形成部材50(第1突部53、本体部51及び第2突部58)の周方向に亘って形成される。第1突部53に凹設された第1凹溝57aは、本体部51の第2突部58寄りに形成された連通開口60が端部に形成され、本体部51の軸方向に開口する。
【0030】
一対のオリフィス形成部材50は、第1突部53同士および第2突部58同士が突き合わされ、連結壁42と筒部21との間に配置される(
図5参照)。本実施の形態では、
図4に示すように、第1突部53(底面部54)は、仕切部56の周方向の端面56a(
図6参照)間にシール部35が位置するように壁面部36の軸方向内側に配置され、第2突部58(底面部59)は壁面部38の軸方向内側に配置される。第1突部53及び第2突部58がそれぞれ突き合わされることにより、第1凹溝57a及び第2凹溝57b(
図6参照)により筒部21(ゴム膜22)の内側にオリフィス73が形成される。
【0031】
液封入式防振装置1は、軸方向隔壁33の延設方向(
図5上下方向)と交差する方向に軸直角方向荷重が入力されると、軸方向隔壁33が弾性変形して内側部材10と外側部材20とが相対変位する。液室71,72を区画する軸方向隔壁33が変形するので、液室71,72の液圧変動が生じ、液室71,72内の液体がオリフィス73を通って流れる。オリフィス73によって液共振が生じ、振動が減衰される。
【0032】
次に
図7及び
図8を参照して、液封入式防振装置1の詳細な構成について説明する。
図7は内側部材10(筒部11)及び中間筒40(嵌合周壁41)が防振基体30で連結された成形体80の側面図であり、
図8は
図7の矢印VIII方向視における成形体80の正面図である。
【0033】
図7に示すように成形体80は、内側部材10(筒部11)及び中間筒40(嵌合周壁41)が防振基体30で連結された部材であり、シール部35は、外面部34の軸方向中央に径方向外側へ向かって突設される。シール部35は、ゴム状弾性体から構成されると共に外面部34と一体成形されている。シール部35は、径方向高さ(
図7左右方向寸法)が、壁面部36の径方向高さより少し小さめに設定される。外面部34及び壁面部36は、ゴム状弾性体から構成されると共に外面部34及び壁面部36とそれぞれ一体成形される突条状のリップ37が設けられる。
【0034】
外面リップ37aは、シール部35の軸方向両側の外面部34に突設される一対のリップ37であり、断面略半円状に形成されると共に、一対の壁面部36に亘って軸方向(
図7上下方向)に延在される。外面リップ37aは、径方向高さ(
図7左右方向寸法)が、シール部35の径方向高さより小さく設定される。具体的には、外面リップ37aの径方向高さは、オリフィス形成部材50(
図6参照)の底面部54の径方向厚さより小さく設定される。
【0035】
壁面リップ37bは、シール部35を軸方向に投影した位置の壁面部36にそれぞれ突設される一対のリップ37であり、断面略半円状に形成されると共に、外面リップ37aに連成されつつ壁面部36に沿って径方向に延在される。壁面リップ37bは、径方向長さ(
図7左右方向寸法)が、壁面部36の径方向高さと略同一に設定され、軸方向高さ(
図7上下方向寸法)が、オリフィス形成部材50(
図6参照)の立壁部55の軸方向厚さより小さく設定される。
【0036】
図8に示すようにシール部35は、正面視して略矩形の角柱状に形成される。シール部35は、軸方向幅(
図8上下方向寸法)が、オリフィス形成部材50(
図6参照)の仕切部56の周方向の端面56aの軸方向幅(
図4上下方向寸法)より小さく設定される。外面リップ37aは、周方向幅(
図8左右方向寸法)が、シール部35の周方向厚さ(端面35a間の
図8左右方向寸法)と同一に設定される。また、壁面リップ37bは、周方向幅(
図8左右方向寸法)が、シール部35の周方向厚さ(端面35a間の
図8左右方向寸法)と同一に設定される。
【0037】
本実施の形態では、シール部35は、周方向(
図8左右方向)の端面35aに突条状の突条部35bが突設されている。突条部35bは、各端面35aに複数本形成され、それぞれが径方向(
図8紙面垂直方向)に延在する。また、シール部35の周方向厚さ(端面35a間の
図8左右方向寸法)は1〜3mm、好ましくは2〜3mmに設定される。
【0038】
なお、シール部35、外面リップ37a及び壁面リップ37bは、ゴム状弾性体から構成される外面部34や防振基体30等を加硫成形する成形型(図示せず)の型合わせ面に形成される。外面部34及び壁面部36に突設されるシール部35、外面リップ37a及び壁面リップ37bを成形体80の型合わせ面に形成することにより、シール部35、外面リップ37a及び壁面リップ37bが成形体80の脱型の妨げになることを防ぐことができる。よって、成形体80の脱型作業性を確保できる。
【0039】
次に
図9及び
図10を参照して、液封入式防振装置1の製造方法について説明する。
図9はオリフィス形成部材50が組み付けられた成形体80の正面図であり、
図10はオリフィス形成部材50が組み付けられた成形体80の背面図である。成形体80は、内側部材10と中間筒40とを成形型(図示せず)に装着した後、防振基体30を加硫成形すると共に内側部材10及び中間筒40に加硫接着することにより得られる。得られた成形体80に対して中間筒40を縮径加工することにより防振基体30に予圧縮を与える。
【0040】
次いで
図9に示すように、壁面部36の間に一対のオリフィス形成部材50の底面部54を嵌挿する。このときは、対面する仕切部56の周方向の端面56a間にシール部35を挟み込み、外面リップ37aを底面部54間に位置させ、壁面リップ37bを立壁部55間に位置させる。同様に、
図10に示すように壁面部38の間に一対のオリフィス形成部材50の底面部59を嵌挿する。
【0041】
次いで、オリフィス形成部材50が組み付けられた成形体80に、液体中で筒部21を被せた後に筒部21を縮径し、その両端部を内側に折曲することにより外側部材20を配置する。筒部21が縮径されることで、一対のオリフィス形成部材50の底面部54,54間の隙間と底面部59,59間の隙間とが詰められる。これにより、仕切部56,56の各端面56a,56aにシール部35が挟圧されると共に、底面部59,59が突き当てられる。同時に、底面部54,54に外面リップ37aが挟圧されると共に、立壁部55,55に壁面リップ37bが挟圧される。その結果、壁面部36間で第1凹溝57aと第2凹溝57bとが連通接続され、壁面部38間で第2凹溝57b同士が連通接続されることで、オリフィス73(
図3参照)が形成される。これにより、液封入式防振装置1が得られる。
【0042】
液封入式防振装置1は、周方向に延びるオリフィス73により液室71,72(
図3参照)が互いに連通される。具体的には、一方の液室71に開口する連通開口61と他方の液室72に開口する連通開口61とが、第1凹溝57a、第2凹溝57b及び第1凹溝57aにより連通される。その結果、オリフィス形成部材50により外周部材20の内周側を略1周半する長さのオリフィス73が形成される。
【0043】
以上のように第1凹溝57aと第2凹溝57bとを仕切る仕切部56の端面56a間にシール部35が挟圧されることでオリフィス73が形成されるので、仕切部56,56間に隙間が生じることを防止できる。その結果、オリフィス形成部材50間を行き来する液体の短絡が防止される。
【0044】
ここで、液体の運動による減衰係数が最大となる周波数はオリフィス73の長さに依存するので、オリフィス形成部材50間を行き来する液体が短絡すると、設計通りの減衰性能が確保できないおそれがある。本実施の形態によれば、シール部35により液体の短絡を防止できるので、減衰性能を確保できる。
【0045】
また、シール部35があるので、オリフィス形成部材50や成形体80の寸法にばらつきがあっても、筒部21を縮径して液封入式防振装置1を製造するときに、仕切部56の端面56aをシール部35に押し付けて液漏れが生じない程度にシール部35を弾性変形させることで、液体の短絡を防止できる。よって、液封入式防振装置1の製造工程において、オリフィス形成部材50や筒部21、成形体80の寸法管理等を厳格にする必要をなくすことができる。即ち、シール部35によって減衰性能を確保しつつ製造工程管理を簡易化できる。
【0046】
なお、シール部35は、軸方向幅(
図8上下方向寸法)が、オリフィス形成部材50(
図6参照)の仕切部56の端面56aの軸方向幅より小さく設定されるので、端面56aによってシール部35が挟圧されたときに、押し潰されたシール部35が端面56aの幅方向へはみ出して第1凹溝57aや第2凹溝57bの溝幅を狭くすることを防止できる。これにより、オリフィス73の断面積が小さくなることを防ぎ、減衰性能を確保できる。
【0047】
ここで、シール部35は、周方向厚さ(端面35a間の
図8左右方向寸法)が1〜3mm、好ましくは2〜3mmに設定されるので、シール部35の弾性変形量を確保して、液体の短絡を防ぎつつ成形体80等の寸法ばらつきの許容値を確保することができる。これに対し、シール部35の周方向厚さが2mmより小さくなるにつれ、シール部35の弾性変形量が小さくなる傾向がみられ、1mmより小さくなると、この傾向が著しくなると共にシール部35を一体成形し難くなる。一方、シール部35の周方向厚さが3mmより大きくなると、互いに突き合わされた底面部54間の間隔が大きくなるので、底面部54間から液体の漏洩が生じ易くなる可能性がある。
【0048】
また、シール部35は外面部34に連成されると共に径方向外側へ向かって突設されている。一対のオリフィス形成部材50は、外面部34及び壁面部36内に第1突部53(
図6参照)が嵌挿され、仕切部56の端面56aがシール部35の位置で突き合わせられる。従って、別部材としてシール部を用意する必要をなくすことができる。よって、液封入式防振装置1の製造工程において、一対のオリフィス形成部材50間にシール部35を配置する作業性を向上できる。
【0049】
また、シール部35は周方向の端面35aに突条部35bが突条状に突設され、突条部35bは径方向に延在するので、突条部35bにより、軸方向(
図9上下方向)に隣り合う第1凹溝57aと第2凹溝57bとを短絡しようとする液体の流動抵抗を高めることができる。その結果、オリフィス形成部材50や筒部21、成形体80の寸法ばらつき等によってシール部35への仕切部56の端面56aの押付け力が小さくなった場合でも、突条部35bがあるので液体の短絡を抑制できる。よって、液封入式防振装置1の減衰性能を確保できる信頼性を向上できる。
【0050】
液封入式防振装置1は、シール部35の軸方向両側の外面部34に突設される外面リップ37aが、一対の壁面部36に亘って軸方向に延在され、一対のオリフィス形成部材50にそれぞれ押し付けられる。ここで、一対のオリフィス形成部材50にシール部35が挟圧されることで、挟圧されたシール部35の周方向厚さの分だけ、一対のオリフィス形成部材50の周方向端部間に隙間が形成される可能性がある。その場合、その隙間から液体が漏れてオリフィス形成部材50と外面部34との間に液体が浸入する可能性がある。しかし、外面リップ37aがあるので、オリフィス形成部材50と外面部34との間に液体が浸入することを防止できる。外面リップ37aによりオリフィス形成部材50と外面部34との間への液体の浸入を防ぐことで、減衰性能を確保できる。
【0051】
なお、外面リップ37aは、径方向高さが、オリフィス形成部材50(
図6参照)の底面部54の径方向厚さより小さく設定されるので、底面部54によって外面リップ37aが挟圧されたときに、外面リップ37aが底面部54の径方向へはみ出して第1凹溝57aや第2凹溝57bの溝深さを小さくすることを防止できる。これにより、オリフィス73の断面積が小さくなることを防ぎ、減衰性能を確保できる。
【0052】
また、液封入式防振装置1は、シール部35を軸方向に投影した位置の壁面部36に突設される一対の壁面リップ37bが、径方向に延在される。ここで、一対のオリフィス形成部材50にシール部35が挟圧されることで、挟圧されたシール部35の周方向厚さの分だけ、一対のオリフィス形成部材50の周方向端部間に隙間が形成される可能性がある。その場合、その隙間から液体が漏れてオリフィス形成部材50と壁面部36との間に液体が浸入する可能性がある。しかし、壁面リップ37bがあるので、オリフィス形成部材50と壁面部36との間に液体が浸入することを防止できる。壁面リップ37bによりオリフィス形成部材50と壁面部36との間への液体の浸入を防ぐことで、減衰性能を確保できる。
【0053】
なお、壁面リップ37bは、軸方向高さが、オリフィス形成部材50(
図6参照)の立壁部55の軸方向厚さより小さく設定されるので、立壁部55によって壁面リップ37bが挟圧されたときに、壁面リップ37bが立壁部55の厚さ方向へはみ出して第1凹溝57aや第2凹溝57bの溝幅を小さくすることを防止できる。これにより、オリフィス73の断面積が小さくなることを防ぎ、減衰性能を確保できる。
【0054】
また、外面リップ37aの周方向幅(
図8左右方向寸法)及び壁面リップ37bの周方向幅(
図8左右方向寸法)は、シール部35の周方向厚さ(端面35a間の
図8左右方向寸法)と同一に設定されるので、一対のオリフィス形成部材50によってシール部35が挟圧されるときに、外面リップ37a及び壁面リップ37bが同様に挟圧される。これにより、挟圧されたシール部35の周方向厚さの分だけ一対のオリフィス形成部材50の周方向端部間に形成される隙間が、外面リップ37a及び壁面リップ37bによって埋められる。従って、外面部34と底面部54との間や立壁部55と壁面部36との間に隙間が生じていたとしても、外面リップ37a及び壁面リップ37bによって、外面部34と底面部54との間や立壁部55と壁面部36との間への液体の浸入を防止できる。これにより、液封入式防振装置1の減衰性能を確保できる。
【0055】
次に
図11を参照して第2実施の形態について説明する。第1実施の形態では、軸心Oと平行に仕切部56の端面56aが形成されるオリフィス形成部材50を備える液封入式防振装置1について説明した。これに対し第2実施の形態では、オリフィス形成部材150の仕切部56の端面151が、軸心Oと平行な面に対して傾斜する場合について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
図11はオリフィス形成部材150が組み付けられた第2実施の形態における液封入式防振装置101の成形体の正面図である。なお、
図11は、壁面部36間に嵌挿されたオリフィス形成部材150の仕切部56の端面151が、外面部34に突設されたシール部135に接触する前の状態が図示されている。また、
図11に示す液封入式防振装置101は、オリフィス形成部材150の組み付け状態の理解を容易にするため、外側部材20等の図示が省略されている。
【0056】
図11に示すように液封入式防振装置101は、外面部34の軸方向中央に径方向外側(
図11紙面手前側)へ向かってシール部135が突設されている。シール部135は、ゴム状弾性体から円柱状に形成されると共に外面部34と一体成形されている。
【0057】
オリフィス形成部材150は、仕切部56の周方向の端面151が、仕切部56の径方向に延びる側辺151aを通り軸心Oと平行な面に対して傾斜している。その端面151の傾斜に合わせて、オリフィス形成部材150の周方向の端部の全体が、軸方向(
図11上下方向)に亘って直線状に傾斜している。
【0058】
以上のように仕切部56の端面151が、側辺151aを通り且つ軸心Oと平行な面に対して傾斜しているので、仕切部56の端面56aが軸心Oと平行に形成される場合(第1実施の形態)と比較して、端面151の面積を大きくできる。その結果、端面151間に挟圧されて弾性変形するシール部135を、端面151から軸方向へはみ出し難くすることができる。端面151からのシール部135のはみ出し量が大きくなると、オリフィス73を行き来する液体の運動に影響を与え、減衰性能が低下する可能性が生じるところ、シール部135のはみ出しを抑制できるので、液封入式防振装置101の減衰性能を確保できる信頼性を向上できる。
【0059】
また、シール部135が円筒状に形成されているので、軸心Oに対して傾斜する端面151(傾斜面)がシール部135に押し付けられたときに、シール部135の側面を端面151に密接させることができる。よって、シール性を確保できる。
【0060】
なお、外面部34及び壁面部36はリップ37(
図8参照)が省略されている点で、第1実施の形態と相違する。リップ37が設けられていなくても、外面部34及び壁面部36にオリフィス形成部材150の第1突部53(
図6参照)を密接させ、外面部34及び壁面部36とオリフィス形成部材150との間に隙間が生じないようにすることで、その隙間からの液体の漏洩を防止できる。
【0061】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、上記実施の形態で挙げたオリフィス形成部材50,150やシール部35,135等の形状は一例であり、他の形状を採用することは当然可能である。
【0062】
上記各実施の形態では、外面部34にシール部35,135が突設される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、外面部34にシール部35,135を設ける代わりに、筒部21の内周面に加硫接着されるゴム膜22にシール部を一体に設けることは当然可能である。この場合、シール部は、ゴム膜22の内周面から径方向内側へ向かって突出させる。成形体80にオリフィス形成部材50,150を装着した後、筒部21を被せるときに、オリフィス形成部材50,150の端面56a,151が対向する位置と筒部21に設けられたシール部の位置とを合致させ、オリフィス形成部材50,150の端面56a,151が対向する位置にシール部を挿入する。次いで、筒部21を縮径することにより、オリフィス形成部材50,150の端面56a,151間でシール部を挟圧することができる。
【0063】
また、外面部34やゴム膜22にシール部を一体成形する代わりに、シール部を、外面部34やゴム膜22とは別部材にすることは当然可能である。この場合、成形体80にオリフィス形成部材50,150を装着した後、オリフィス形成部材50,150の端面56a,151が対向する位置にシール部を挿入する。次いで、筒部21を縮径することにより、オリフィス形成部材50,150の端面56a,151間でシール部を挟圧することができる。
【0064】
上記第1実施の形態では、外面部34及び壁面部36にリップ37が形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、リップ37を省略することは当然可能である。
【0065】
上記各実施の形態では、内筒11の外周に膨出部12が一体形成され、膨出部12がゴム膜部32で覆われる内側部材10について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、膨出部12及びゴム膜部32を省略することは当然可能である。この場合には、膨出部12及びゴム膜部32が省略された分だけ、オリフィス形成部材50,150のストッパ52と内側部材の間隔が大きくなってしまう。そこで、ストッパ52を内側部材に向かって突出させることにより、大荷重が入力されたときに内側部材と第1ストッパ52とが干渉されるようにする。これにより防振基体30の変位を規制できるので、耐久性を確保できる。この場合に、内筒11の外周やストッパ52の表面に衝撃緩衝用のゴム膜を設けることは当然可能である。
【0066】
また、上記各実施の形態では、内筒11の外周に膨出部12が一体形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。合成樹脂製やゴム製等の別部材を内筒11の外周に巻き付けたり接着したりして、内筒11に膨出部を設けることは当然可能である。
【0067】
上記実施の形態では、軸直角方向荷重が入力される液封入式防振装置1,101について説明した。そのため、オリフィス形成部材50,150のストッパ52を、内側部材10の膨出部12に対して軸直角方向に配置した。即ち、膨出部12及びストッパ52を、内側部材10の軸心Oを対称軸として線対称状となるように設定した。しかし、液封入式防振装置は必ずしもこれに限られるものではなく、膨出部12やストッパ52の位置は、荷重入力方向に応じて適宜設定できる。例えば、荷重入力方向が軸方向(軸心O方向)と斜交する方向であれば、膨出部12及びストッパ52は、軸心Oに対して斜交する直線を対称軸として線対称状となるように設定する。