(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
裏面(2b)側にエア導入口(26e)が設けられると共にダクト経路の表面(2a)側にエア噴出口(25a)が複数設けられた配風ダクト(2)を、発泡型(6)にセットし、その後、発泡原料(g)の注入及び型閉じを経て、該配風ダクト(2)が埋設されるシートパッド(1)を発泡成形し、乗員当接側のシートパッド表面(1a)に成形された複数の空気吹出口(10)に前記各エア噴出口(25a)が合致し、且つ該シートパッド(1)の裏面(1b)側に前記エア導入口(26e)が露出する配風ダクト入りシートパッドの製造方法であって、
前記配風ダクト(2)が、合成樹脂製で、その裏面(2b)側にエア導入口(26e)が在る基部(26)から導管(21)が分岐して延在し、表面(2a)側にエア噴出口(25a)が該導管(21)の箇所を含めて複数設けられ、且つ分岐した各導管(21)のうち、少なくとも一つの導管(21)の先端部(211)に外方へ張り出す外鍔(29)が設けられ、且つ該外鍔(29)の鍔板面(293)が、略同一平面上に分岐配設される複数の前記導管(21)でつくるその平面と略平行に配されるようにすると共に、前記発泡型(6)を分割型にして、シートパッド表面(1a)側を形成する一の分割型(61)の型面(610)で、セットされる配風ダクト(2)の外鍔(29)に対応する部位に、頭部(641)が出っ張る係合部材(64)を立設させて、
該頭部(641)に衝突する外鍔(29)が、その合成樹脂の有する弾性変形又は/及び前記係合部材(64)の弾性変形で乗り越え、外鍔(29)の裏面(2b)側に係合部材(64)の頭部(641)を係止させて、配風ダクト(2)を一の前記分割型(61)にセットすることを特徴とする配風ダクト入りシートパッドの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るシートパッド用配風ダクト、配風ダクト入りシートパッド及びその製造方法について詳述する。
(1)実施形態1
本シートパッド用配風ダクト、配風ダクト入りシートパッド及びその製造方法は、そのシートパッドを、乗員の背もたれを構成するバックパッドに適用する。
図1〜
図10は本発明のシートパッド用配風ダクト、配風ダクト入りシートパッド及びその製造方法の一形態で、
図1は配風ダクトの表面側から見た斜視図、
図2は
図1のII-II線矢視図、
図3,
図4は
図1の配風ダクトを組み込んだ配風ダクト入りシートパッドの表面側斜視図,裏面側斜視図、
図5は
図4のV-V線矢視図、
図6は配風ダクトのセット後、型開状態で発泡原料を注入している発泡型の説明断面図、
図7は
図6の発泡原料注入後に型閉じした様子を示す説明断面図、
図8は
図7に続いて発泡成形する様子を示す説明断面図、
図9は
図1〜
図8に代わる他態様図で、 (イ)が導管先端部周りの要部斜視図、(ロ)が(イ)のIX-IX線矢視図、
図10は (イ)が導管先端部周りの要部断面図、(ロ)が(イ)の斜視図、(ハ)が配風ダクト入りシートパッドの要部断面図を示す。尚、欠肉部19,外鍔29,係合部材64を強調して大きく描き、
図5は各空気吹出口10,エア噴出口25aを通る断面図とする。
図6〜
図8は、図面を判り易く描くため、配風ダクト2をキャビティCの高さ方向中央に配し、且つ配風ダクト2の断面を示すハッチングを省き、
図8では係合部材64を省く。
【0011】
(1a)シートパッド用配風ダクト
配風ダクト2(以下、単に「配風ダクト」や「ダクト」ともいう。)は、ポリプロピレン樹脂等からなる樹脂製管状部材で、シートパッド1に組み込まれる。ここでは、裏面2b側にエア導入口26eが在る基部26から導管21が分岐して延在し、表面2a側にエア噴出口25aが該導管21の箇所を含めて複数設けられるバックパッド用の配風ダクト2である。本発明の「表面側」は乗員が座部に腰掛ける時に当接する面の側をいう。
【0012】
配風ダクト2は、ダクト入りバックパッド1Aが完成した段階で、表面側に形成される複数の空気吹出口10に各エア噴出口25aが導通する一方、バックパッド裏面1bのほぼ中央から、先端口がエア導入口26eになるエア導入部261が露出する配管である。配風ダクト2は、バックパッド裏面1b寄りに配され、配風ダクト2の略中央に位置する基部26の裏面側にエア導入部261を形成して、該エア導入部261が相手部材と接続される。
そして、分岐した前記各導管21のうち、少なくとも一つの導管21の先端部211に外方へ張り出す外鍔29が設けられ、且つ該外鍔29の鍔板面293が、略同一平面上に分岐配設される複数の前記導管21でつくるその平面と略平行に配される。外鍔29の鍔板面293は、その部位のバックパッド裏面1bとほぼ平行になる(
図5)。
【0013】
本実施形態の配風ダクト2は、導管
21が扁平であり、エア導入口26eに平行な長径とエア導入口26eに垂直な短径とする。エア導入口26eは、車両に配風ダクト入りシートパッドとして正規状態で取付けられると、
図5のようにほぼ垂直面になる。
図2のごとく導管21の筒外径dが表裏方向長さd1よりも車幅方向となる筒幅方向の長さd2の方が長い扁平管で、且つブロー成形により導管21と前記基部26と前記外鍔29とが一体成形される。基部26につながる案内部22を経て横筒部23の導管21が車幅方向に延び、その両端から一対の縦筒部24の導管21が紙面上方(バックパッド上方)に延びる。一方、案内部22から一対の縦筒部24の導管21が紙面斜め下方(バックパッド斜め下方)に広がるように延びる。バックパッド上方は、バックパッド1Aが車両に搭載され、乗員が座って、背もたれが可能な
図5の正規状態下でのバックパッド1Aの上方をいう。略中央に配される中空ボックス状の基部26から、平面視略X字状に四方に延びる導管21を備えたブロー成形ダクトになっている。
そして、分岐した各導管21には、その先端口210を塞ぐ袋部28が設けられ、且つ該袋部28周りの導管先端部211の側壁部分211aから、分岐配設される複数の導管21でつくる平面と鍔板面293とが略平行に保たれるようにして、外方へ張り出す板片状の外鍔29が設けられる。導管先端部211の側壁部分211aで、
図2のごとくその高さ方向中間部位から外鍔29が張り出す。
【0014】
具体的には、
図1〜
図8のごとく導管21が、エア導入口26eの在る前記基部26から四方に分岐延在し、基部26から四方に遠ざかる四箇所の各導管21の先端部211に外鍔29をそれぞれ設けている。ブロー成形で造られる配風ダクト2は、分岐した各導管21の先端口210を塞ぐ袋部28が設けられ、且つ導管21が基部26から四方に延在し、その四方に分岐配設される四つの各導管21の先端部211に前記外鍔29がそれぞれ設けられる。
図1,
図5のごとく、基部26から四方に略同一平面上になるようにして延びた四つの導管21の先端を、ブロー成形による袋部28で閉じたままにするが、袋部28周りの導管先端部211の表面2a側にエア噴出口25aが設けられる。そして、袋部28周りの導管先端部211の側壁部分211aから、略同一面上に分岐した複数の導管21がつくる平面と、袋部28域を取り巻く鍔板面293とが略平行に保たれるようにして、扇形した外鍔29が図示のごとく一定幅で外方へ張り出す。この鍔板面293は、ブロー成形によって形成される袋部28のパーティングラインに設けることもできる。
【0015】
バックパッド1Aの空気吹出口10に合致させ、着座した乗員に快適エアを吹き出す所の前記エア噴出口25aは、
図1のごとく平面視略X字状に四方へ延びた導管先端部211に在る四個の他、そこに至る導管21途中,案内部22に計六個設ける。
基部26から遠ざかる四方先端に位置する各導管先端部211に外鍔29を設けることによって、たとえ配風ダクト2が反っていても、該外鍔29を利用して、バックパッド1Aの発泡成形で、エア噴出口25aを塞いで発泡型6へ配風ダクト2を楽にセットできる。例えば、
図6のように、バックパッド表面1a側を形成する下型型面610で、セットされる配風ダクト2の外鍔29に対応する部位に、頭部641が配風ダクト2側へ出っ張る軸状係合部材64を立設させた発泡型6を用意する。金属製係合部材64の軸径よりも頭部641の外径を一回り大きくしている。すると、発泡型6への配風ダクト2のセットで、頭部641に衝突する外鍔29がその合成樹脂の有する弾性変形(又は/及び係合部材64の弾性変形)で乗り越え、外鍔の裏面29b側に係合部材64の頭部641を係止させて、エア噴出口25aを封止させた状態でセットできるようになる。頭部641の上面側は係合部材64が乗り越え易くするため、丸みが付けられる。
【0016】
また、
図1〜
図8の配風ダクト2を採用し、
図6〜
図8の係合部材64に代えて、細長板状片からなる
図9ごとくの一対の金属製係合部材64を用いることもできる。型面610に起立する両係合部材64は、軸部先端に在るそれぞれの頭部641が、対向する相手側係合部材64へ上方傾斜して近づく前出部分641aと、該前出部分641aの上端で対向する相手側係合部材64から上方傾斜して離れていく後退部分641bと、で側面視「く」字状に形成される。両係合部材64が最も近づく前出部分641a間の距離W1が、ここにセットされる外鍔29付き配風ダクト2の幅W2よりも小さく設定される。かくして、頭部641に衝突する外鍔29が、係合部材64を
図9(ロ)の矢印のごとく外方へ弾性変形させて(又は/及び外鍔29の合成樹脂の有する弾性変形で)頭部641を乗り越え、その後は、弾性復元し、外鍔裏面29b側が頭部641に係止されることによって、エア噴出口25aを封止して発泡型6へ配風ダクト2をセットできるようになる。
【0017】
外鍔29は、
図10の他態様図に示す切欠部291が設けられるとより好ましい。外鍔29に、その外周縁から弧状に切欠く切欠部291が設けられると、空気吹出口10を塞いで、発泡型6に配風ダクト2をより確実にセットできるからである。切欠部291周りの外鍔の裏面29b側に係合部材64に係る頭部641の係止する部位が増え、各導管先端部211が基部26に対し反っていても、係合部材64の頭部641が切欠部291周りの弧状ラインに沿って堅実に係止して、該外鍔29を押さえ込み、配風ダクト2を矯正できる。浮き上がっていた導管先端部211近くの空気吹出口10であってもこれを塞いで、配風ダクト2を矯正して水平にし、発泡型6に確実にセットできる。
外鍔29を設ける箇所は、導管21が基部26から四方に延在し、その四方に分岐配設される四つの各導管21の先端部211にそれぞれ設けるのが好ましい。すなわち、バックパッド用配風ダクト2にあっては、
図1のごとく車幅方向の両端域で、且つその上下方向に延びる導管21のうちの上端域と下端域に外鍔29を設けるのが好ましい。ブロー成形等により、反り度合いが大きくなる配風ダクト2の車幅方向両端域で且つ長手方向(バックパッド1Aの上下方向)の両端域に、合計四つの外鍔29を設けて、これらを係合部材64で押さえ付けるのが、外鍔29の数を少なくして反りの矯正に最も効果を上げる。
尚、エア導入部261を短筒部にし、さらにフランジ27を設けてもよい(
図11参照)。
図10(ロ)の配風ダクト2は、袋部28周りの先端部だけでなく、導管21の本体主部側の広い範囲で外鍔29を延在させ、導管21が浮き上がりやすい箇所についても係合部材64が適宜設けられるようにしている。
【0018】
(1b)配風ダクト入りシートパッド
配風ダクト2入りシートパッド1は、該配風ダクト2と、これをインサート成形して一体化されるシートパッド1と、シートパッド裏面1bに配される裏面材3と、を具備する(
図3〜
図5)。
配風ダクト2は(1)の配風ダクトと同じで、詳細説明を省く。
【0019】
シートパッド1は、その発泡成形で、表面1aに前記エア噴出口25aと合致する空気吹出口10が一定深さで設けられるようにして、配風ダクト2をインサート成形して一体化された発泡体である。空気吹出口10の方がエア噴出口25aの口径よりも大きい。シートパッド裏面1b側にエア導入口26eが覗くようにして、シートパッド1の裏面1b寄りに配風ダクト2が埋設一体化される。配風ダクト2をシートパッド1の裏面寄りに配設するのは、シートパッド表面1aから配風ダクト2までの距離をできるだけ大きくとって、シートパッド1によるクッション性,快適性を得るためである。
本実施形態のシートパッド1は、座席シートの背もたれを構成するバックパッド1Aとする。配風ダクト2に係る導管21の筒外径dが表裏方向長さd1よりも車幅方向となる筒幅方向の長さd2の方が長い扁平管を有する配風ダクト2を用いる。導管21は扁平であり、エア導入口26eに平行な長径とエア導入口26eに垂直な短径からなる。バックパッド1Aの厚みが座部用クッションパッド1Bよりも薄くても、所望のクッション性,快適性を得るためである。エア導入口26e側に、空調機器から快適エアが管内に送り込まれる管状相手部材を接続することにより、快適エアが基部26内,案内部22内,導管21内の流路uを通り、エア噴出口25aを通過して各空気吹出口10から乗員へと配風される配風ダクト2入りバックパッド1Aになっている。
【0020】
本シートパッド1には、その発泡成形で、表面1aから前記外鍔29の裏面29b側に達する中空軸状の欠肉部19が設けられる。シートパッド1の発泡成形で、シートパッド表面1a側を形成する分割型61に配風ダクト2をセットすることになるが、エア噴出口25aから発泡原料gが導管21内へ入り込まぬようにした係合部材64の跡がシートパッド1に残る。外鍔29を利用して配風ダクト2を位置決めセットするのに用いた前記係合部材64の跡穴が欠肉部19となる。欠肉部19は、シートパッド1の表面1aから前記切欠部291周りの外鍔の裏面29b側に達する。符号190は係合部材の頭部641がつくる穴部分を示す。頭部641が外鍔裏面29bに達して、配風ダクト2を発泡型6に確実なセット固定を果たす。
欠肉部19の穴径は、配風ダクト2を発泡型6にセットできれば足り、空気吹出口10の口径に比べて小さい。発泡型6への配風ダクト2のセットで、
図6〜
図8のような円柱状係合部材64を用いた場合は、
図3のような小さな欠肉部19の円形穴がシートパッド表面1aに現れる。発泡型6への配風ダクト2のセットで、
図9のような細長板状の係合部材64を用いた場合は、図示を省くが、その係合部材64の横断面形状の矩形溝穴がシートパッド表面1aに現れる。
【0021】
裏面材3はバックパッド裏面1bの大きさに合わせた不織布等からなる布地材である。裏面側に露出するエア導入部261周りは、くり抜いてくり抜き部分30とする(
図4)。次に述べる配風ダクト2入りシートパッドの製造方法のごとく、バックパッド1Aの発泡成形で、その裏面1b側にあたる型面630に裏面材3をインサートして、配風ダクト2を覆ってバックパッド裏面1bに、該裏面材3が被着一体化される。尚、図中、符号14は吊溝、符号14aは縦溝、符号14bは横溝を示す。
【0022】
(1c)配風ダクト入りシートパッドの製造方法
シートパッド1(バックパッド1A)の製造は、これに先立ち、配風ダクト2と裏面材3を準備する。配風ダクト2,裏面材3は(1),(2)で述べたものと同じで、詳細説明を省く。
【0023】
配風ダクト2入りバックパッド1Aの製造に用いる発泡型6は、
図6,
図7ごとくの分割型で、下型61と上型62と中型63とを備える。ヒンジ69を支点にして
図6から
図7のごとく型閉じすると、全体的に凹み度合いが大きな下型61(一の分割型)の型面610と、中型63の型面630と,上型62との型面620とで、パッド本体11に配風ダクト2,裏面材3が一体化するバックパッド1AのキャビティCをつくる。
下型61には、型面610の各所を柱状に盛り上げて、
空気吹出口10形成用の隆起部611が設けられる。本実施形態は、さらに各隆起部611の上端面にエア噴出口25aの口径に合わせた半球状の突部611aを設ける。型閉じで、隆起部611の上面と共に、突部611aでエア噴出口25aを封じるようにする。
【0024】
また、下型61の型面610でバックパッド1Aの表面1a側を成形し、中型63の型面630でバックパッド1Aの裏面1b側を成形するが、下型型面610に金属製係合部材64を立設する。バックパッド表面1a側を形成する一の分割型61たる下型の型面610で、セットされる配風ダクト2の外鍔29に対応する部位に、頭部641が配風ダクト2側へ出っ張る軸状係合部材64を起立させる。そして、下型61への配風ダクト2のセットで、出っ張る頭部641に外鍔29が当たるものの、外鍔29の合成樹脂の有する弾性変形又は/及び前記係合部材64の弾性変形で乗り越え、外鍔の裏面29b側に係合部材64の頭部641を係止させて、配風ダクト2を下型61にセット可能とする。
【0025】
前記発泡型6,配風ダクト2,裏面材3を用いて、配風ダクト2入りバックパッド1Aが例えば以下のように製造される。配風ダクト2のエア導入口26eには予めシールテープ4が貼着される。
【0026】
まず、発泡型6を型開状態とする(
図6)。この型開状態下、中型63に裏面材3をセットする。
裏面材3のセットと相前後して、配風ダクト2を下型61にセットする。下型61への配風ダクト2のセットで、下型型面610に配風ダクト2を単にセットしようとすると、頭部641に外鍔29が当たってしまうが、頭部641周りの外鍔29を上から押し付けることによって、頭部641を乗り越え、下型61に配風ダクト2を位置決めセットできる。
本配風ダクト2の導管21は、
図2のような横断面形状で、その筒外径dが表裏方向長さd1よりも車幅方向となる筒幅方向の長さd2の方が長い扁平管にして、
図1のように四方に延びる。そのため、四方先端へ延びた導管先端部211が、基部26に対し
図1の紙面垂直方向に反る傾向にある。下型61への配風ダクト2のセットで、隆起部611の上端面(ここでは突部611a)からエア噴出口25aが離れてしまう不具合が起こる。配風ダクト2の載置セットにより、エア噴出口25aの内周縁に当接させてエア噴出口25aを封じるための突部611aを設けても、型閉じ工程へ進まないと役立たない。単なる配風ダクト2の載置セットでは、型閉じ前に、エア噴出口25aから該発泡原料gが侵入する不具合が生じる。
【0027】
本製法は、斯かる不具合を前記外鍔29及び前記係合部材64を設けて解消する。頭部641に衝突する外鍔29が、その合成樹脂の有する弾性変形又は/及び前記係合部材64の弾性変形で乗り越え、外鍔の裏面29b側に係合部材64の頭部641を係止させて、配風ダクト2を下型61にセットする。たとえ反り返って突部611aからエア噴出口25aが浮き上がってしまっている配風ダクト2であっても、該エア噴出口25aを塞ぐことができる。頭部641に外鍔29が衝突するが、該外鍔29を押し付けることによって、外鍔29の合成樹脂の有する弾性変形(又は/及び前記係合部材64の弾性変形)で通過させる。通過した(乗り越えた)外鍔29を頭部641が係止固定し、外鍔29を裏面29b側から押さえ付ける格好になるので、当初は突部611aから離れていたエア噴出口25aが突部611aに密着し封止されるようになる。導管21の四方へ管状に延びた先の四つの先端部211に在る外鍔29が、四方端で係合部材64の頭部641によって係止固定されるので、セット前は
図6の鎖線図示のごとく弓状に反っていた配風ダクト2であっても、ほぼ同一水平面状に矯正され、エア噴出口25aの口が塞がれる。型閉じ完了前に、発泡原料gの注入でエア噴出口25aから導管21内へ入り込んでしまう不具合が解消される。
【0028】
係合部材64は、
図6〜
図8のごとく四方の導管先端部211の先に延びる外鍔29の箇所に各一本ずつ設けるだけでなく、
図10(ロ)のごとく導管先端部211の先に延びる外鍔29の箇所と導管先端部211の両側壁に在る外鍔29の箇所の方にも設けるとより好ましくなる。エア噴出口25aに突部611aをより強力に密着させて封止できるからである。
また、
図10(ロ)のように外鍔29に、その外周縁から弧状に切欠く切欠部291を設けると、より好ましくなる。係合部材64の頭部641に係止される部分が、切欠部291をつくる外鍔外周縁で増えるので、エア噴出口25aの封止をより確かなものにできるからである。
【0029】
また、係合部材64に関しては、
図9ごとくの細長板状片からなる金属製係合部材64を用いることもできる。既述のごとく頭部641が側面視「く」字状に形成される。前出部分641a間の距離W1に対し、ここにセットされる配風ダクト2の幅W2を若干大きく設定する。配風ダクト2のセットで、頭部641に衝突する外鍔29が、係合部材64を
図9の矢印のごとく外方へ弾性変形させて(又は/及び外鍔29の合成樹脂の有する弾性変形で)頭部641を乗り越えた後、係合部材64,外鍔29の弾性復元力で外鍔裏面2b側に係合部材64の頭部641が係止して、エア噴出口25aを封止し、下型61へ配風ダクト2を良好にセットできる。
【0030】
次に、型開状態を保ったまま、下型61のキャビティCを形成する型面610に、注入ノズルNL等を使用してバックパッド成形用ウレタン発泡原液等の発泡原料gを所定量注入する(
図6)。
続いて、上型62を作動させ型閉じする(
図7)。上型62と下型61と中型63との型閉じで、配風ダクト2がインサートセットされたバックパッド用キャビティCができる。
【0031】
前記型閉じの後、バックパッド1Aの発泡成形に移る。
図7の型閉じ状態を所定時間維持し、
図8ごとくの配風ダクト2が埋設一体化されるバックパッド1Aを発泡成形する。
ここで、
図2のごとく扁平化させた導管21にするほど、配風ダクト2自体に反りや変形などが生じ易くなる。下型61に配風ダクト2をセットしても、配風ダクト2が隆起部611から浮き上がる度合いが増す。エア噴出口25aを塞ぎきれないケースが起こり得る。しかるに、本発明は、下型61にセットされた配風ダクト2のエア噴出口25a周りが、多少浮いても、既述のごとく係合部材64が外鍔29に係止してその口を閉じ、うまくシールする。さらに、空気吹出口10形成用の隆起部611の上端面に半球状突部611aを設けて、下型61にセットされた配風ダクト2に係るエア噴出口25a内へ突部611aを入り込ませてその口を塞ぐ。突部75の外周面は、様々な内径に対応可能な半球状球帯で形成される。係合部材64による外鍔29の係止でエア噴出口25aが在る導管先端部211を下方へ押さえつけるので、例えばエア噴出口25aの内径が少し小さくても、半球状突部のエア噴出口25aへ入り込む度合いを微妙に減らして、その口を確実に塞ぐことができる。
【0032】
かくして、発泡型6へ配風ダクト2,裏面材3がインサートされた状態下で、バックパッド1Aが発泡成形される。ここで、ダクト主部たる導管21がバックパッド1Aの裏面寄りに配され、バックパッド裏面1bからはエア導入口26eが露出する(
図4)。裏面材3が配風ダクト2の裏面側略全体を覆う。配風ダクト裏面2b側を覆う裏面材3は、擦れ防止だけでなく、乗員の背もたれによるバックパッド1Aの変形で、バックパッド1Aから配風ダクト2がもげるのを防ぐ。
【0033】
バックパッド1Aの発泡成形を終え、脱型すれば、所望のダクト入りバックパッド1Aが得られる。脱型時に、係合部材64の頭部641が成形されたバックパッド1Aと干渉するが、バックパッド1Aがクッション性に富む発泡体であるので、該頭部641は簡単に抜き取ることができる。ダクト2入りバックパッド1Aに図示しない表皮を被せると、車両用座席シートの背もたれ用シートバックになる。尚、符号65は一対の係合部材64をつなぐベース部、符号nは締結部材、符号629,639は形合せ面、符号67は支持バー、符号68はアーム、符号68aはフック、符号PNはピンを示す。
【0034】
(2)実施形態2
本実施形態のシートパッド用配風ダクト、配風ダクト入りシートパッド及びその製造方法は、そのシートパッド1を乗員が座る座部を構成するクッションパッド1Bに適用する。
図11は配風ダクトを裏面側から見た斜視図、
図12は
図11の配風ダクトを表面側から見た平面図、
図13はクッションパッドの斜視図、
図14は
図13のXIV-XIV線矢視図、
図15は型開状態で配風ダクトを下型にセットした説明断面図を示す。尚、
図14,
図15は紙面左側に設けられる外鍔29,係合部材64,欠肉部19の図示を省略する。
【0035】
配風ダクト2は座部を構成するクッションパッド用配風ダクトで、裏面2b側にエア導入口26eが在る基部26から導管21が分岐して延在し、表面2a側にエア噴出口25aが該導管21の箇所を含めて複数設けられる。
図11のような平面視略H字状した配風流路を有するブロー成形ダクトで、その表面2a側に導管21に対し短管からなるノズル部25を複数箇所に立設し(
図12)、各ノズル部25の先端開口をエア噴出口25aとする。また、
図14で説明すれば、配風ダクト2は横筒部23からなる導管21から上昇気味に案内部22を張り出し、その先端で裏面側に屈曲してエア導入部261を形成する。実施形態1ごとくの箱状基部26が存在せず、エア導入部261が基部26を兼ねる。エア導入部261の先端開口がエア導入口26eとなり、該エア導入部261周りの筒状部に外フランジ27が設けられる。
【0036】
そして、横断面が扁平化した同じく
図2のような導管21にして、導管先端部211から、導管21の車幅方向となる筒幅方向の幅のままで、舌片状の外鍔29が
図11,
図12のごとく延在する。車幅方向の両端域で、且つ車両前後方向に延びる導管21のうちの前端域と後端域に、四つの外鍔29を設ける。バックパッド用配風ダクト2と同様、その車幅方向両端域で且つ長手方向(車両前後方向)の両端域に、合計四つの外鍔29を設けて、これら外鍔29を押さえ付けるのが、外鍔29の数を少なくして反りの矯正に成果を上げる。さらに外鍔29に、その先端外周縁から弧状に切欠く切欠部291が設けている。
【0037】
配風ダクト入りシートパッドの製造方法は、配風ダクト2の下型61へのセットで、実施形態1と同じく、係合部材64の頭部641に衝突する外鍔29が、その合成樹脂の有する弾性変形(又は/及び前記係合部材64の弾性変形)で頭部641を乗り越え、外鍔の裏面29b側に係合部材64の頭部641を係止させる(
図15)。また、配風ダクト2入りシートパッド1は、その表面1aに欠肉部19が形成される(
図13,
図14)。他の構成は実施形態1と同様で、その説明を省く。実施形態1と同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0038】
(3)効果
このように構成したシートパッド用配風ダクト、配風ダクト入りシートパッド及びその製造方法によれば、四方に延びる配風ダクトの導管21が反るようなことがあっても、発泡型6へのセットが容易にして且つ確実になる。配風ダクト2を埋設一体化するシートパッド1の発泡成形で、エア噴出口25aからの発泡原料gの侵入が起こらず、品質安定,歩留まり向上を果たす。
【0039】
特に、背もたれ用バックパッド1Aに組み込む配風ダクト2の場合、座部側クッションパッド1Bと違って、パッド厚みが小さい。座部側クッションパッド1Bにあっても、パッド厚の薄肉化が予想される。配風ダクト2はできるだけバックパッド裏面1b寄りに配し、さらに扁平化させることが必要になっている。斯かる場合、ブロー成形で配風ダクト2を造ると、基部26に対し導管先端部211が反る傾向にある。導管先端部211の表面2a側にはエア噴出口25aが設けられている。反りのない配風ダクト2であれば、下型61に空気吹出口10を形成する隆起部611、さらに隆起部上面に突部611aを形成する場合は、下型61へのセットが、配風ダクト2を所定位置に載置するだけで、隆起部611の上面や突部611aでエア噴出口25aを塞いでセット完了する。しかし、導管先端部211等が反った状態となると、該導管先端部211のエア噴出口25aが
図6の鎖線のごとく隆起部611,突部611aから浮き上がり、発泡原料gの注入後、型閉じまでに、発泡原料gが該エア噴出口25aから導管21内へ侵入してしまう。
これに対し、本発明は導管21の先端部211に外鍔29を設け、且つ外鍔29に対応する下型61の部位に、頭部641が配風ダクト2側へ出っ張る係合部材64を立設して、外鍔29の合成樹脂の有する弾性変形又は/及び前記係合部材64の弾性変形で乗り越え、外鍔29の裏面29b側に係合部材64の頭部641を係止させて、配風ダクト2を下型61にセットする。頭部641が外鍔29の合成樹脂の有する弾性変形又は/及び前記係合部材64の弾性変形で乗り越えると、外鍔29の裏面29b側に係合部材64の頭部641が係止し、
図6の鎖線状態にある反った導管先端部211の矯正が可能になる。
【0040】
図6の下型61への配風ダクト2のセットでは、型面上方から該配風ダクト2を所定位置に下ろし、頭部641と干渉する外鍔29を下方へ押し付けるだけで、口が開いた状態になっていたエア噴出口25aを隆起部611の上端面に当接させ、簡単に塞いでセットできる。隆起部611の上部に半球状突部611aを設ければ、この突部611aをエア噴出口25a内へ入り込ませてより確実にその口を塞ぐことができる。導管21内に入り込んだ発泡原料gは後加工で取り除くにしても、製品化されたシートパッド1の成形後であり、製品品質を確保しながらの後加工作業に苦労する。取り除くことができなければ製品不良となり、歩留まり低下を招くが、本発明は斯かる不具合を難なく解消する。
さらに、外鍔29,係合部材64,突部611aで配風ダクト2を位置決め固定しており、配風ダクト2のセットを終えれば、発泡原料注入から型閉じが完了するまでの間に不用意な外力が加わっても、セットされた配風ダクト2が位置ズレすることもない。シートパッド1の
表面1a側に欠肉部19が現れるが、同じくシートパッド表面1a側に現れる空気吹出口10よりも小さくでき、特に問題にならない。シートパッド表面1aは表皮が被されて乗員座席
となるので、座席製品の意匠面に現れない。
このように、本発明は配風ダクト2のセットで作業負担を少なくして生産性を落とすことなく、導管先端部211の浮き上がりを防止でき、配風ダクト2入りシートパッド1の品質維持を図って歩留まり向上を図ることができるなど優れた効果を発揮する。
【0041】
尚、本発明においては前記実施形態に示すものに限られず、目的,用途に応じて本発明の範囲で種々変更できる。シートパッド1,欠肉部19,配風ダクト2,外鍔29,軸状部材64等の形状,大きさ,個数,材質等は用途に合わせて適宜選択できる。例えば、エア導入口26eがある基部26から導管21が分岐して延在し、上記エア導入口26eに対向する表面2a側にエア噴出口25aが、該導管21の先端もしくは中間途中の部位をも含めて複数設けられるシートパッド用配風ダクト2であって、分岐した各導管21のうち、少なくとも一つの導管21の閉じた先端部211から外鍔29が延出し、且つその鍔板面293が上記エア導入口26eの開口面に平行な平面に形成されてなることを特徴とするシートパッド用配風ダクトである(
図5)。また、ブロー成形されてなり、上記鍔板面293は、上記ブロー成形時のパーティングラインに沿って形成されたことを特徴とするシートパッド用配風ダクトなどである。