【実施例1】
【0016】
図1,3において符号10は主制御手段(主コントローラ)、12は電源部、14は溶接機である。16は主制御手段10に設けた電源スイッチである(
図1)。主コントローラ10は、
図3に示す制御部10A、モータドライバー10B、パルスカウント部10C、厚さ判定部10D、中止判定部10Eなどを有する。この主コントローラ10の前面には、表示パネル20が取り付けられている。
【0017】
制御部10AはCPUで構成され、パルスカウント部10C、厚さ判定部10D、中止判定部10Eはこの制御部10Aの制御プログラムに組み込まれたソフトウェアにより構成される。表示パネル20は、メニュー画面や、熱加工に伴う種々のデータや設定値(設定値の許容範囲を含む。)などを表示する表示部20Aとしての機能と、その表面に設けた透明なタッチセンサ(図示せず)からなる入力手段である設定部20Bの機能とを持つ(
図3)。この設定部20Bから後記する種々の設定値が設定される。
【0018】
溶接機14は
図2に詳細に示すように、基台22と、この基台22から垂直に起立する支柱24と、この支柱24に昇降可能に保持されたステッピングモータ26によって昇降される昇降ヘッド28と、この昇降ヘッド28に上下動可能に保持されて下方へ突出するロッド30と、このロッド30の下端に固定されたヒータチップ(ツール)32とを持つ。このロッド30は、昇降ヘッド28に固定された筒34内に装填されたコイルばね36によって、下向きに付勢されている。
【0019】
モータ26はステッピングモータが望ましいが、回転角度センサを内蔵するサーボモータであってもよく、その回転量によって昇降ヘッド28の位置を制御できるものであればよい。支柱24にはラック26Aが固定され、このラック26Aに噛合するウォームギヤ26Bがこのモータ26によって回転駆動される(
図2)。ウォームギヤ26Bの正逆転によって、ラック26Aおよびこれと一体の支柱24に対して昇降ヘッド28が上下動する。モータ26の回転量(回転角度)と昇降ヘッド28の昇降量とは正比例している。
【0020】
コイルばね36の上端は、筒34の上端に螺合されたばね力調節手段となるキャップ38に支持されている。コイルばね36の下端は、ロッド30の上端に取り付けられたばね力検出センサーである圧力センサー40に支持されている。この圧力センサー40は、例えば歪みゲージ(ロードセル)、圧電素子、感圧ダイオードなど種々の検出原理のものから適切なものを用いることができる。この圧力センサー40に代えて、前記キャップ38の回転量を示す目盛りを用いてコイルばね36のばね力を設定しても良い。
【0021】
ロッド30には下限位置設定部材となるストッパとしての板42が固定され、この板42はロッド30の下降時に昇降ヘッド28の内底壁に当接して位置決めされる(
図2の位置)。ヒータチップ32をワークに接触させた位置から昇降ヘッド28をさらに所定量下降させることにより、ヒータチップ32のワークに対する押圧力を所定圧力に設定することができる。すなわち熱溶着の前にコイルばね36の圧縮量を一定に設定する。この場合、一方(例えば昇降ヘッド28)の側に発光体(発光ダイオード)と受光体(フォトセンサ)40A(
図2では重なっている。)を対向させて固定し、これらの間に進入/退出する遮光板40Bを他方(例えばロッド30)に固定しておき、昇降ヘッド28に対するロッド30の相対移動量が予め設定した所定量になったことを受光体40Aで検出するようにすれば良い。
【0022】
ヒータチップ32は上方に開くスリットを形成して略U字状とした電気抵抗材料で作られ、両端間に電流を流すことによって瞬時に発熱するものである。このヒータチップ32はウェルドケーブル44(
図1)によって、電源部12に収容された溶接トランス12A(
図3)の二次側に接続されている。
【0023】
また電源部12は、溶接トランス12Aと、ヒータチップ32の温度制御手段となる電流制御部12Bを備える。電流制御部12Bは主コントローラ10の制御部10Aが出力する温度指令P
1に基づいてヒータチップ32の温度を制御する。すなわちこの電流制御部12Bにはヒータチップ32の先端付近に固定した熱電対46(
図3)が検出するヒータチップ温度θがフィードバックされ、このヒータチップ温度θを温度指令P
1に一致させるようにパルス幅制御したパルス電流P
2を溶接トランス12Aに送る。溶接トランス12Aはこのパルス電流P
2を昇圧してヒータチップ32に送り発熱させる。
【0024】
モータドライバー10Bは制御部10Aが出力する回転指令Q
1に基づいてモータ26を制御する。すなわちモータドライバー10Bは、この回転指令Q
1によって正逆いずれかの回転方向に所定回転量だけモータ26を回転させる。ここにモータ26はステッピングモータあるいはサーボモータでありその回転量によって昇降ヘッド28の高さが正確に制御される。
【0025】
48は被熱加工対象となるワークである。このワーク48は、例えば基板50の表面にクシ刃状に形成したプリント回路の接続端子に、フレキシブルプリント配線板(FPC)52の電極を重ねて熱溶着するものとする。この場合には、熱溶着部のいずれかには予めはんだメッキをしたり、クリームはんだを供給しておくものとする。ヒータチップ32は、この熱溶着部に上方から押圧され、この状態で発熱されてはんだを溶融しハンダ付けする。
【0026】
主コントローラ10の制御部10Aには、前記設定部20Bの設定に基づいて前記モータドライバー10Bの回転方向、回転量、ヒータチップ32の温度などが入力され、これらに基づいて制御部10Aは、モータドライバー10Bに回転指令Q
1を、電流制御部12Bに温度指令P
1を出力する。
【0027】
パルスカウント部10Cは、このモータ26の回転に伴って制御部10Aが出力する駆動パルス数をカウントする。すなわちこのパルスカウント部10Cが持つカウンタは、昇降ヘッド28の基準位置(ホームポジション、HP)で0にクリヤしてから昇降ヘッド28を下降させる際のモータ回転数(回転量)に対応するパルス数Nを積算する。ここに基準位置HPからワークをセットしていない状態のワーク48の載置台上面までの距離Hは予め設定され、この距離Hに相当するパルス数N
0も予め設定されているものとする(
図5の(A))。
【0028】
厚さ判定部10Dは、ワークの非セット時とセット時におけるこのパルスカウント数N(N
0、N
1)をそれぞれ求め、これらの差D=N
0−N
1を求め、この差Dにモータ26の1駆動パルスに対する昇降ヘッド28の昇降量aを積算することにより、ワークの厚さT=a×Dを求めることができる。なおN
0は、ヒータチップ32が基台上面に接触してばねの36を所定圧縮量n圧縮するまでの回転量であり、N
1は、ヒータチップ32がワーク48に接触してばね36を所定圧縮量n圧縮するまでの回転量である。
【0029】
中止判定部10Eは、この検出したワークの厚さTが、設定範囲内にあるか否かを判定し、設定範囲内にあれば制御部10Aにそのまま加熱加工を進めさせる。設定範囲を外れたと判定した時には、直ちに警告を出し、加熱加工を中止させる。
【0030】
次に
図4を用いて動作を説明する。主コントローラ10の電源スイッチ16をオンにすると、主コントローラ10のCPUが起動し表示パネル20にメニュー画面が表示される。オペレータはメニュー画面で「データ設定」を選択し、種々のデータ(設定値)を設定する。ここで設定するデータは、主としてワーク48の熱加工の押圧力、加熱温度、熱加工の終了条件などに対応するデータと、昇降ヘッド28の基準位置HPからワーク載置台表面までの高さH、ばね36の設定圧縮量h、ワークの厚さTなどに関するデータを含んでいる。
【0031】
熱加工の開始前には、ヒータチップ32のロッド30は常にばね36により下方に押圧され、ストッパとなる板42が昇降ヘッド28の内底壁に当接することにより下限位置に保持されている。ここにばね36のばね力(押圧力、圧縮圧力)は、ばね力調節手段となるキャップ38によって初期設定される。すなわちこのキャップ38を回転することによりばね36のばね力を調節し、必要に応じてこのばね力を検出する圧力センサ40の検出値が所定値になるように初期設定する。このばね力の初期設定は、キャップ38の回転位置によって予め設定しておいても良いのは前記したとおりである。
【0032】
データの設定と、ばね36のばね力設定が終わると、ワーク48を除去しておく(ステップ100)。主コントローラ10のCPUからなる制御部10Aはモータ26により昇降ヘッド28を基準位置(ホームポジションHP、
図5、6)に上昇させる(
図4のステップS102)。またパルスカウント部(カウンタ)10Cはカウント値Nを0にセットする(ステップS104)。この状態で制御部10Aは昇降ヘッド32をこの位置から下降させ、従ってヒータチップ32を下降させるが、この時の下降量はモータ26を回転させるモータ駆動パルスのパルス数Nをパルスカウント部10Cで積算(カウント)することにより求めることができる(ステップS106)。
【0033】
ヒータチップ32が基台22の上面(ワークセット部の上面)に当接すると、ロッド30のストッパである板42は昇降ヘッド28の内底壁から離れ、ロッド30の位置を固定したまま、昇降ヘッド28が下降を続ける。この昇降ヘッド28の下降により、この昇降ヘッド28と一体の筒34と、この筒34の上端に螺合したキャップ38も下降するから、ばね36は圧縮される。この時、ばね36の圧縮量が所定量hになると、前記フォトセンサ40Bで検出され(ステップS108)、モータ26は停止される(ステップS110)。
【0034】
パルスカウント部10Cは、昇降ヘッド28の基準位置HPからこのモータ停止位置までのパルスカウント値N=N
0を積算しているから、このカウント値N
0を制御部10Aのメモリに記憶する。次にワーク48をセットして(ステップS114)、同様にステップS102〜S112の処理を行い、この時のカウント値N1をメモリする(ステップS112)。
【0035】
厚さ判定部10Dでは、これらの積算値N
0、N
1を用いてワーク28の厚さTを次のようにして判定する。すなわちこの積算値N
0、N
1の差D=N
0−N
1を演算し、この差Dのカウント数に、モータ26の1駆動パルスに対応する昇降ヘッド28の移動量(昇降量)をaを積算して、ワーク厚さT=a×Dとする(ステップS116)。
【0036】
中止判定部10Eは、この検出したワーク厚さTが予め設定した許容範囲内であるか否かを判定し(ステップS118)、許容範囲内なら問題なしとして加熱加工を進め(ステップS120)、熱加工後に冷却する(ステップS122)。そして昇降ヘッド28を基準位置HPに復帰させて(ステップS124)、処理したワークを排出し(ステップS126)、続けて処理するワークがあれば(ステップS128)ステップS114に戻って次のワークに交換する。またステップS118において、ワーク厚さTが許容範囲を外れていると判定した時には警告を出して(ステップS130)、熱加工処理を中止する(ステップS132)。