(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
透明高分子基材、および請求項1〜6いずれかに記載のハードコーティング組成物を、基材に塗装することによって形成されるハードコート層を有するハードコートフィルムであって、ハードコート層が屈折率1.535〜1.545を有する、ハードコートフィルム。
透明高分子基材の一方の面上に、ハードコート層が積層されており、かつ、透明高分子基材の他の一方の面上に、アンチブロッキング層が形成された、請求項7〜9いずれかに記載のハードコートフィルム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記の問題点を解決することを課題とする。より特定すれば、本発明は、これまで本発明者等が開発したハードコーティング組成物を改善して、基材であるポリカーボネート基材との密着性をより高くし、湿熱条件下でも長期間密着性が維持できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、(A)アクリル骨格を有し、アクリレート当量が500〜2000の側鎖にラジカル重合性不飽和基を有するアクリル樹脂、
(B)2またはそれ以上のアクリレート基を有する、フェノールノボラック型アクリレート、
(C)炭素数2または3のアルキレンオキシド単位をモノマー一分子中に2〜4モル当量有する、ビスフェノール骨格含有ジアクリレート、および
(D)3またはそれ以上のアクリレート基を有する多官能アクリレート
を含有し、
全樹脂成分100質量部に対して、成分(A)は10〜30質量部、成分(B)は15〜25質量部、成分(C)は20〜40質量部、成分(D)は5〜55質量部含まれることを特徴とするハードコーティング組成物を提供するものであり、これにより上記課題が解決される。
【0010】
前記アクリル樹脂(A)は、好ましくはアクリレート基当量700〜1500g/molを有する。
【0011】
前記アクリル樹脂(A)は、好ましくは下記式(a)と下記式(b)で表される共重合体である。
【化1】
(1)
[式中、R
1とR
2は水素原子またはメチル基であり、R
3は炭素数1〜12の直鎖または分岐鎖アルキル基または炭素数3〜10のシクロアルキル基であり、R
4は水素原子またはメチル基である。mとnは二重結合当量で変動する値である。]
【0012】
前記フェノールノボラック型アクリレート(B)は、好ましくは下記式(2)
【化2】
(2)
[式(2)中、R
5は、HまたはCH
2OHであり、R
6は、HまたはOHであり、kは2〜5であり、pは0〜5である。]
で示される。
【0013】
前記ビスフェノール骨格含有ジアクリレート(C)は、好ましくは下記式(3)で示される。
【化3】
(3)
[式(3)中、aは2〜4であり、bは4〜8であり、qは1〜2であり、sは1〜2である。]
【0014】
前記ハードコーティング組成物は、好ましくは、酸化防止剤を全樹脂成分100質量部に対して1.1〜1.9質量部含み、前記酸化防止剤が下記一般式(4)を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤である。
【化4】
(4)
【0015】
本発明はまた、透明高分子基材および上記のハードコーティング組成物を、基材に塗装することによって形成されるハードコート層を有するハードコートフィルムであって、ハードコート層が屈折率1.535〜1.545を有する、ハードコートフィルムを提供する。
【0016】
前記ハードコート層は、好ましくは、ZnO、TiO
2、CeO
2、SnO
2、ZrO
2またはインジウム−スズ酸化物を実質上含まず、それらの総含有量がハードコート層の固形分重量の0.0001質量%以下である。
【0017】
前記ハードコート層の厚さは、好ましくは、10μm以下である。
【0018】
本発明は、透明高分子基材の一方の面上に、ハードコート層が積層されており、かつ、透明高分子基材の他の一方の面上に、アンチブロッキング層が形成された、ハードコートフィルムも提供する。
【0019】
本発明は、更に、前記アンチブロッキング層は、第1成分および第2成分を含むアンチブロッキング層形成組成物によって形成された層であり、
第1成分は不飽和二重結合含有アクリル共重合体を含み、第2成分は多官能アクリレートを含み、
第1成分のSP値(SP1)および第2成分のSP値(SP2)の差△SPが1〜2の範囲内であり、
アンチブロッキング層形成組成物を塗装した後に、第1成分と第2成分が相分離を生じ、表面に微細な凹凸を有するアンチブロッキング層が形成されるハードコートフィルムも提供する。
【0020】
好ましくは、前記透明高分子基材の一方の面または両方の面にハードコート層を設ける。
【発明の効果】
【0021】
本発明のハードコーティング組成物は、ポリカーボネート基材に塗布することによりハードコート層を形成する。形成されたハードコート層は、良好な硬度を有すると共に、高い視認性および伸長性を有することを特徴とする。本発明により形成されたハードコート層は、レベリング性が高いことを特徴とする。そのため、ポリカーボネートフィルムなどの屈折率が高い基材フィルム上に、本発明におけるハードコート層を設けた場合であっても、1.535−1.545という屈折率を有していることに加え、塗膜が平滑になることにより干渉縞が発生しないという利点がある。
【0022】
本発明のハードコーティング組成物から形成されたハードコート層は、金属酸化物などの高屈折率剤を含まないことを特徴とする。そのため、得られるハードコート層は、高い伸長性を有するという特徴がある。
【0023】
本発明は、上記特許文献4の改良であり、特許文献4に配合しているエステル骨格を有する多官能ウレタンアクリレートを、本発明では側鎖にアクリレート基を有し、そのアクリレート基当量が500〜2000g/molのアクリル樹脂に変更した。特許文献4の多官能ウレタンアクリレートは、その骨格がエステル骨格であり、酸素や水で加水分解する傾向がある。本発明ではこの成分を、アクリル骨格を有するアクリル樹脂に変更することにより、加水分解による影響を抑え、高温高湿度の湿熱条件下でも長期間密着性を確保することができる。
【0024】
本発明のハードコート層を形成するハードコーティング組成物中には、特定のアクリル樹脂が含まれており、上述のようにより高いレベルの密着性試験においても高い密着性(特に、湿熱条件下でも長期間の密着性)が確保でき、しかもポリカーボネート基材上にハードコート層を形成した場合においても干渉縞を発生させない効果が得られる。ポリカーボネート基材との屈折率差が大きくなると、通常、干渉縞を発生してしまうが、本発明で用いるハードコーティング層は、1.535−1.545という屈折率を有していても、干渉縞を発生させない効果が見られる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
ハードコーティング組成物
本発明のハードコーティング組成物は、
(A)側鎖にアクリレート基を有し、そのアクリレート基当量が500〜2000g/molを有するアクリル樹脂、
(B)2またはそれ以上のアクリレート基を有する、フェノールノボラック型アクリレート、
(C)炭素数2または3のアルキレンオキシド単位をモノマー一分子中に2〜4モル当量有する、ビスフェノール骨格含有ジアクリレート、および
(D)3またはそれ以上のアクリレート基を有する多官能アクリレート
を含む。そして上記ハードコーティング組成物に含まれる全樹脂成分100質量部に対して、成分(A)は10〜30質量部、成分(B)は15〜25質量部、成分(C)は20〜40質量部、成分(D)は5〜55質量部含まれる。
【0026】
(A)側鎖にアクリレート基を有し、そのアクリレート基当量が500〜2000g/molを有するアクリル樹脂
本発明のハードコーティング組成物は、側鎖にアクリレート基を有し、そのアクリレート基当量が500〜2000g/molを有するアクリル樹脂(A)を含む。この特定のアクリル樹脂(A)を含むことによって、得られるハードコート層がポリカーボネート基材へ十分な密着性を発揮し、また、形成するハードコート層の屈折率が1.535−1.545であっても、干渉縞を防ぐことができる。アクリレート基の当量は、500〜2000g/molであり、好ましくは700〜1500g/molである。アクリレート基の当量が500g/molより少ないと、硬化収縮による密着性が低下し、アクリレート基の当量が2000g/molより大きすぎると、反応性が低下し、密着性を低下させる懸念がある。
【0027】
本発明で用いるアクリル樹脂(A)は、好ましくは重量平均分子量5000〜100000、好ましくは10000〜20000を有するが、必ずしもこれらに限定されない。分子量が高くなり過ぎると、粘度が高くなる傾向があり、平滑性が損なわれ干渉縞が悪化し、分子量が低すぎると、粘度が下がる傾向があり、塗面の平滑性が保てず干渉縞が悪化する。
【0028】
本明細書において、各成分の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によって測定することができる。重量平均分子量の測定においては、HLC−8220GPC(東ソー株式会社製)などの高速GPC装置などを用いることができる。HLC−8220GPC(東ソー株式会社製)を用いた、重量平均分子量の具体的な測定条件として、試験サンプル2gを秤量し、真空乾燥機内にて40℃2時間処理し水分を除去した後、THF溶液にて0.2%の濃度となるように希釈し、カラム注入量:10μl、流速:0.35ml/minの条件で測定する態様が挙げられる。
【0029】
前記アクリル樹脂(A)は、上記のアクリレート基当量を満たし、かつアクリル骨格を有すれば特に限定的ではないが、好ましくは前記アクリル樹脂(A)が下記式(a)と(b)で表されるような繰返し単位を有する共重合体である
【化5】
(1)
[式中、R
1とR
2は水素原子またはメチル基であり、R
3は炭素数1〜12の直鎖または分岐鎖アルキル基または炭素数3〜10のシクロアルキル基であり、R
4は水素原子またはメチル基である。mとnは整数であるが、二重結合当量で変動する値であり、重合度により変化する値である。]
【0030】
上記アクリル酸の繰返し単位(a)は、(メタ)アクリル酸とアルキルアルコールとのエステル(以下、「(メタ)アクリル酸アルキルエステル」と言う。)から誘導される部分であり、アルキルアルコールは炭素数1〜12直鎖または分岐鎖アルキルアルコールまたは炭素数3〜10のシクロアルキルアルコールである。(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)の例としては、たとえば(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸n−ブチルエステル、(メタ)アクリル酸i−ブチルエステル、(メタ)アクリル酸t−ブチルエステル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸ベンジルエステル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸イソボニルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルエステルなどが挙げられる。また(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0031】
上記アクリル樹脂(A)の繰返し単位(b)は、(メタ)アクリル酸とグリシジルアルコールとの反応により、(メタ)グリシジル酸グリシジルエステルを得て、それと上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)と反応して共重合体を得た後に、共重合体中に存在するグリシジル基と(メタ)アクリル酸とを反応することにより形成する。
【0032】
本発明においては、ハードコーティング組成物中に含まれる全樹脂成分100質量部に対して、成分(A)のアクリル樹脂は10〜30質量部含まれることを条件とする。成分(A)の量が10質量部より少ないもしくは30質量部を超える場合は、密着力を損なう。
【0033】
(B)2またはそれ以上のアクリレート基を有する、フェノールノボラック型アクリ
レート
上記ハードコーティング組成物は、成分(B)2またはそれ以上のアクリレート基を有する、フェノールノボラック型アクリレートを含む。ハードコーティング組成物がフェノールノボラック型アクリレート(B)を含むことによって、得られるハードコート層が、透明であり、かつ、高い硬度を有する高屈折率層となる。これにより、干渉縞の発生を効果的に防ぐことができる。
【0034】
フェノールノボラック型アクリレート(B)は、下記式(2)
【化6】
(2)
[式(3)中、R
5は、HまたはCH
2OHであり、R
6は、HまたはOHであり、kは2〜5であり、pは0〜5である。]
で示される、フェノールノボラック型アクリレートであるのが好ましい。上記式(3)中、mは2〜4でありpは0〜3であるであるのがより好ましく、mは2〜4でありpは0〜1であるのがさらに好ましい。
【0035】
フェノールノボラック型アクリレート(B)の重量平均分子量は、400〜2500であるのが好ましく、450〜2000であるのがさらに好ましい。また、フェノールノボラック型アクリレート(B)の水酸基価は、100〜180mgKOH/gであるのが好ましく、120〜160mgKOH/gであるのがさらに好ましい。
【0036】
上記フェノールノボラック型アクリレート(B)は、ハードコーティング組成物中に含まれる樹脂成分100質量部に対して15〜25質量部含まれることを条件とする。フェノールノボラック型アクリレート(B)の量が15質量部未満である場合、得られるハードコート層の屈折率が低くなることで視認性の悪化、フェノールノボラック型アクリレート(A)の量が25質量部を超える場合は、ポリカーボネートフィルムとの密着性が低下する不具合がある。
【0037】
(C)炭素数2または3のアルキレンオキシド構造を分子中に2〜4mol有する、ビスフェノール骨格含有のジアクリレート
本発明のハードコーティング組成物は、(C)アルキレンオキシド構造を分子中に2〜4mol有する、ビスフェノール骨格含有のジアクリレートを含む。このジアクリレート(C)は、ビスフェノール骨格を含有することでポリカーボネートフィルムなどポリカーボネート基材との濡れ性を向上させ、ハードコート層との密着力を高める利点がある。ジアクリレート(C)の具体例は、ビスフェノールAをエチレンオキシドで鎖延長し、それに(メタ)アクリル酸を反応したものが挙げられる。
【0038】
本発明においては、ハードコーティング組成物中に含まれる樹脂成分100質量部に対して、成分(C)は20〜40質量部含まれることを条件とする。成分(C)の量が20質量部より少ない場合は、ポリカーボネートフィルムなどの透明高分子基材との密着力が低下する不具合があり、成分(C)の量が40質量部を超える場合は、得られるハードコート層の屈折率が低下し、視認性を損なう不具合がある。
【0039】
(D)3またはそれ以上のアクリレート基を有する多官能アクリレート
本発明のハードコーティング組成物は、3またはそれ以上のアクリレート基を有する多官能アクリレートを含む。この多官能アクリレートは通常モノマーと言われる分子量であるが、2以上の分子が結合したオリゴマーであっても良い。これらの多官能アクリレートモノマーは、ハードコーティング組成物を塗装した後の活性エネルギー線の照射により、(メタ)アクリロイル基の反応に基づく硬化反応が生じ、高硬度を有するハードコート層が得られるという利点がある。
【0040】
3またはそれ以上のアクリレート基を有する多官能アクリレートの例としては、例えば、ヒドロキシプロピル化トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、およびこれらのオリゴマーなどが挙げられる。これらの多官能アクリレートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0041】
本発明においては、ハードコーティング組成物中に含まれる樹脂成分100質量部に対して、成分(D)は5〜55質量部含まれることを条件とする。成分(D)の量が5質量部より少ない場合は、ポリカーボネートフィルムなどの透明高分子基材との密着力が低下する不具合があり、成分(D)の量が55質量部を超える場合は、得られるハードコート層の屈折率が低下し、視認性を損なう不具合がある。
【0042】
光重合開始剤など
本発明のハードコーティング組成物は光重合開始剤を含むのが好ましい。光重合開始剤が存在することによって、紫外線などの活性エネルギー線照射により樹脂成分が良好に重合することとなる。光重合開始剤の例として、例えば、アルキルフェノン系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、チタノセン系光重合開始剤、オキシムエステル系重合開始剤などが挙げられる。アルキルフェノン系光重合開始剤として、例えば2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノンなどが挙げられる。アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤として、例えば2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドなどが挙げられる。チタノセン系光重合開始剤として、例えば、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウムなどが挙げられる。オキシムエステル系重合開始剤として、例えば、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(0−アセチルオキシム)、オキシフェニル酢酸、2−[2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステル、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルエステルなどが挙げられる。これらの光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0043】
上記光重合開始剤のうち、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1および2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンなどがより好ましく用いられる。
【0044】
光重合開始剤の好ましい量は、上記成分(A)、(B)、(C)および(D)100質量部に対して、0.01〜20質量部であり、より好ましくは1〜10質量部である。
【0045】
本発明で用いられるハードコーティング組成物は、溶媒を含んでもよい。溶媒は、特に限定されるものではなく、組成物中に含まれる成分、塗装される基材の種類および組成物の塗装方法などを考慮して適時選択することができる。用いることができる溶媒の具体例としては、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒;ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、アニソール、フェネトールなどのエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、エチレングリコールジアセテートなどのエステル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのセロソルブ系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン系溶媒;などが挙げられる。これらの溶媒を単独で使用してもよく、また2種以上を併用して使用してもよい。これらの溶媒のうち、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒およびケトン系溶媒が好ましく使用される。
【0046】
本発明のハードコーティング組成物は、必要に応じて、種々の添加剤を添加することができる。このような添加剤として、帯電防止剤、可塑剤、界面活性剤、酸化防止剤などの常用の添加剤が挙げられる。
【0047】
上記添加剤の中で酸化防止剤は、種々の公知のものを使用することができるが、例えばフェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤またはリン系酸化防止剤等種々のものが用いられるが、それらの中でヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましく、更に下記化学式(I)を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤が最も好ましい
【0049】
上記化学式(I)のヒンダードフェノール系酸化防止剤は、全樹脂成分100質量部に対して1.1〜1.9質量部の量でハードコーティング組成物中に配合することにより、湿熱密着性試験で750時間を超えて、1500時間でも密着性が維持できるようになる。
【0050】
上記ハードコーティング組成物は、上記構成によって、ZnO、TiO
2、CeO
2、SnO
2、ZrO
2またはインジウム−スズ酸化物などの金属酸化物からなる高屈折率剤などを含ませなくても、高い屈折率を有するハードコート層を形成することができることに特徴がある。そのため、上記ハードコーティング組成物は、ZnO、TiO
2、CeO
2、SnO
2、ZrO
2およびインジウム−スズ酸化物からなる群から選択される金属酸化物などの高屈折率剤を含まないのが好ましい。より詳しくは、上記ハードコーティング組成物を用いて形成されるハードコート層中に含まれる、ZnO、TiO
2、CeO
2、SnO
2、ZrO
2およびインジウム−スズ酸化物の総含有量がハードコート層中の0.0001質量%以下であるのが好ましい。金属酸化物などの高屈折率剤が、ハードコート層中に存在する場合は、樹脂成分のみの層と比較して、一般に伸長性および耐屈曲性が劣ることとなるためである。
【0051】
ハードコートフィルム
本発明はさらに、上記ハードコーティング組成物を用いて形成されるハードコートフィルムも提供する。このハードコートフィルムは、上記ハードコーティング組成物を、ポリカーボネート基材に塗装することによって形成されるハードコート層、を有する。そして本発明におけるハードコート層は、1.535〜1.545という高い屈折率を有している。
【0052】
本発明のハードコートフィルムにおいては、透明高分子基材として、PETフィルムまたはポリカーボネートフィルムが好ましく用いられる。特に、透明高分子基材がポリカーボネートフィルムの場合、本発明のハードコーティング組成物を塗布すると、高い密着性が得られる。密着性は、湿熱条件下(85℃で85%相対湿度の条件下)で750時間を超える湿熱密着性を発揮する。これらのフィルムの屈折率は、通常用いられるハードコートフィルムを構成する樹脂成分の屈折率と比較して高いため、ハードコート層との屈折率差が大きくなり、干渉縞の発生頻度が高くなるという問題がある。
【0053】
ここで干渉縞とは、透明フィルムおよび透明コート層などから構成される多層体において、各界面で反射する光が干渉しあうことによって生じる虹彩状反射をいう。この干渉縞は、特に、3波長発光型蛍光灯の照射下において、顕著に現れる傾向がある。3波長発光型蛍光灯は、ものがハッキリクッキリ見えるということを特徴とする特定の波長の発光強度が強いことを特徴とする蛍光灯である。
【0054】
本発明のハードコーティング組成物は、高いレベリング性を有するハードコート層を形成することができることを特徴とする。そのため、PETフィルムまたはポリカーボネートフィルムなどの透明基材フィルム上に透明ハードコート層を形成しても、表面が平滑な層を形成するため干渉縞が発生しにくい。
【0055】
なお、本発明のハードコーティング組成物は、上記PETフィルムまたはポリカーボネートフィルム以外の基材フィルムに塗装してもよい。このような基材フィルムとして、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム、ジアセチレンセルロースフィルム、アセテートブチレートセルロースフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリアクリル系樹脂フィルム、ポリウレタン系樹脂フィルム、ポリエステルフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、(メタ)アクリルニトリルフィルムなどが挙げられる。
【0056】
透明高分子基材の厚さは、用途に応じて適時選択することができるが、一般に20〜300μm程で用いられる。
【0057】
ハードコート層は、透明高分子基材上に、上記のハードコーティング組成物を塗布することにより形成される。ハードコーティング組成物の塗布方法は、ハードコーティング組成物および塗装工程の状況に応じて適時選択することができ、例えばディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やエクストルージョンコート法(米国特許2681294号明細書)などにより塗布することができる。
【0058】
ハードコート層の厚みは、特に制限されるものではなく、種々の要因を考慮して適時設定することができる。例えば、0.01〜20μmのハードコート層が得られるようにハードコーティング組成物を塗布することができる。
【0059】
コーティング組成物の塗布により得られた塗膜を硬化させることによって、ハードコート層が形成される。この硬化は、必要に応じた波長の活性エネルギー線を発する光源を用いて照射することによって行うことができる。照射する活性エネルギー線として、例えば露光量0.1〜1.5J/cm
2の光、好ましくは0.3〜1.5J/cm
2の光を用いることができる。またこの照射光の波長は特に限定されるものではないが、例えば360nm以下の波長を有する照射光などを用いることができる。このような光は、高圧水銀灯、超高圧水銀灯などを用いて得ることができる。
【0060】
本発明のハードコートフィルムは、高屈折率剤を用いなくても、ハードコート層の屈折率1.535〜1.545と高い屈折率が達成されていることを特徴とする。ハードコート層の屈折率は、例えば、アッベ屈折計を用いて、JIS K7142に準拠して測定することができる。
【0061】
本発明のハードコートフィルムは、全光線透過率が85%以上であるのが好ましく、90%以上であるの がより好ましい。また、本発明のハードコートフィルムは、ヘイズが2%以下であるのが好ましく、1%以下であるのがより好ましい。
【0062】
本発明においては、ZnO、TiO
2、CeO
2、SnO
2、ZrO
2などの高屈折率剤を含まなくても高屈折率化が達成されているため、このような高屈折率剤を含める必要がない。そのため、上記のように高い全光線透過率および低いヘイズ値を達成することが可能となる。
【0063】
全光線透過率(T
t(%))は、ハードコートフィルムに対する入射光強度(T
0)とハードコートフィルムを透過した全透過光強度(T
1)とを測定し、下記式により算出される。
【数1】
【0064】
ヘイズは、JIS K7105に準拠して、下記式より算出される。
【数2】
H:ヘイズ(曇価)(%)
T
d:拡散透光率(%)
T
t:全光線透過率(%)
【0065】
全光線透過率およびヘイズ値の測定は、例えばヘイズメーター(スガ試験機社製)を用いて測定することができる。
【0066】
タッチパネルを搭載するスマートフォンなどの携帯電話、タブレットPC、携帯情報端末機器などにおいては、機器の小型・薄型化および軽量化が強く求められている。そのため、タッチパネル電極を構成する部材においても、基材フィルムの薄膜化が求められている。一方で、基材フィルムの厚さを薄くすることによって、基材フィルムにハードコート層を設けた場合においてフィルムの反りまたはカールが生じる不具合の発生頻度が高くなり、作業性・生産性が低下するという問題がある。これらの不具合は、ハードコート層と基材フィルムとの物理的性質(例えば熱収縮率、熱膨張率など)が相違することに依存すると考えられる。本発明におけるハードコートフィルムは高い伸長性を有するため、種々の基材に対しカールが小さくなる傾向がある。
【0067】
本発明におけるハードコートフィルムには、用途に応じて透明導電層、光学干渉により反射率を制御する光学干渉層を必要に応じて適切な順に、組み合わせて用いることができる。これら透明導電層、光学干渉層、ハードコート層の積層順は用途に応じて発現を期待される機能を果たしていれば特に限定するものではない。これらの積層順を例えばタッチパネル用基板として用いる場合、透明導電層をA、光学干渉層をB、本発明の対象となるハードコート層をC、透明高分子基材をD、本発明の対象外となるハードコート層をEとすると、例えばA/B/C/D/E、A/B/C/D/C、A/B/B/C/D/E、A/B/B/C/D/C、A/C/D/E/B、A/C/D/C/B、A/C/D/E/B/B、A/C/D/C/B/Bなどとすることができる。
【0068】
先に述べた光学干渉層は、高屈折率層と低屈折率層を適宜組み合わせることにより反射光を防止あるいは抑制する層を指す。光学干渉層は少なくとも一層の高屈折率層と少なくとも一層の低屈折率層より構成される。高屈折率層と低屈折率層の組み合わせ単位を二つ以上とすることも出来る。光学干渉層が一層の高屈折率層と一層の低屈折率層から構成される場合、光学干渉層の膜厚は30nm〜150nmが好ましく、更に好ましくは50nm〜150nmである。光学干渉層は、湿式法、乾式法のいずれの方法でも形成することができる。例えば湿式法ではドクターナイフ、バーコーター、グラビアロールコーター、カーテンコーター、ナイフコーター、スピンコータ-等、スプレー法、浸漬法等、乾式法ではスパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等のPVD法あるいは印刷法、CVD法などを適応することが出来る。
【0069】
タッチパネル等を構成する透明導電性積層体は、一般に、透明導電層を有するフィルムである。この透明導電層は、特に制限はいが、酸化インジウムを含む結晶質層、より具体的にはITO(インジウム−スズ酸化物)およびIZO(インジウム−亜鉛酸化物)などの、インジウムを主成分とする結晶質層が好適に用いられる。透明導電層の形成方法としては、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等のPVD法あるいは塗工法、印刷法、CVD法があるが、PVD法またはCVD法が好ましい。
【0070】
透明導電層を設けるためのこれらの加工処理を行うことによって、ハードコート層を有する基材フィルムに部分的負荷がかかるため、透明導電性積層体の透明導電層、ハードコート層と基材フィルムとの間における熱収縮率・熱膨張率の相違に基づくフィルムのよれが生じることがある。本発明のハードコーティング組成物を用いて設けられるハードコート層は、高い視認性および良好な硬度を有すると共に、高い伸長性を有することを特徴とする。得られるハードコート層が高い伸長性を有することによって、透明導電層を設ける段階における加熱などにより、基材フィルムが局所的に熱膨張した場合であっても、ハードコート層が良好に追随し、その結果、フィルムのよれなどの不具合が発生しないという利点がある。
【0071】
ハードコート層の伸長性について、より具体的には、ハードコーティング組成物が塗装される透明高分子基材が、厚さ20〜300μmのPETフィルムであるハードコートフィルムの場合において、このハードコートフィルムを20℃において、引っ張り速度5mm/秒の条件において、MD方向に15%引き伸ばした際、ハードコート層にクラックが発生しない状態が挙げられる。ここで、ハードコート層の膜厚として、例えば0.05〜10μmである場合が挙げられる。
【0072】
一般に、高分子基材フィルムの製造は、溶融状態にある樹脂基材を、ロール状に巻き取りながら、縦方向(巻き取り方向:MD方向)と横方向(TD方向:MD方向に対して直交する方向)の2方向に延伸し、均一な厚さのフィルムを製造する、二軸延伸法によって製造される。この製造方法においては、MD方向に高い応力が残ることとなる。そのため、得られたフィルムは、特にMD方向において、熱膨張・熱収縮が生じる傾向がある。得られたハードコートフィルムを、高分子基材フィルム製造時において巻き取られた方向であるMD方向に引き伸ばす試験を行うことによって、クラック(フィルム割れ)などの発生を効果的に検証することができるという利点がある。
【0073】
また、ハードコートフィルムを構成する透明高分子基材が、ポリカーボネートフィルムである場合は、ハードコートフィルムの耐屈曲性を検証することによって、形成されたハードコート層の伸長性能を評価することができる。ポリカーボネートは、耐熱性および耐衝撃性などの物理的性能が優れる素材である一方で、特にフィルム厚が薄いポリカーボネートフィルムの場合においては、折り曲げなどの応力によって、クラック(割れ)が発生することがある。このようにフィルム厚が薄いポリカーボネートフィルムを基材フィルムとして用いる場合において、この基材フィルム上に形成されるハードコート層の伸長性が高い場合は、ハードコート層を設けることによって、基材フィルムのクラックの発生を防ぐことが可能となる。本発明のハードコーティング組成物によって形成されるハードコート層は、高い伸長性を有している。そのため、フィルム厚が薄いポリカーボネートを基材フィルムとして用いるハードコートフィルムにおいて、曲げ応力に対する靱性を向上させることができるという利点がある。より具体的には、ハードコーティング組成物が塗装される透明高分子基材が、厚さ30〜200μmのポリカーボネートフィルムであるハードコートフィルムの場合において、このハードコートフィルムを、25℃および60度/秒の条件において180°折り曲げた場合であっても、ハードコート層および基材の何れにおいてもクラックが発生しない状態が挙げられる。ここで、ハードコート層の膜厚として、例えば0.05〜10μmある場合が挙げられる。
【0074】
本発明のハードコーティング組成物を用いて形成されるハードコート層は、良好な硬度を有すると共に、高い視認性および伸長性を有することを特徴とする。本発明のハードコーティング組成物によって形成される透明ハードコート層は、レベリング性が高いことを特徴とする。そのため、PETフィルムまたはポリカーボネートフィルムなどの屈折率が高い基材フィルム上に、本発明における透明ハードコート層を設けた場合であっても、干渉縞が発生しないという利点がある。本発明のハードコーティング組成物は、特にポリカーボネートフィルムを透明高分子基材とした場合に、極めて高い密着性、特に85℃85%相対湿度において750時間を超える密着性、更に1500時間を超える密着性を発揮することができる。本発明におけるハードコート層は、特に、タッチパネル電極を構成する、透明導電層を有するフィルムにおいて好適に用いることができる。
【0075】
アンチブロッキング層
本発明の導電性積層体は、ポリカーボネート基材の一方の面上に、ハードコート層が積層された構造を有する。この導電性積層体は、必要に応じて、ポリカーボネート基材の他の一方の面上に、アンチブロッキング層が形成されていてもよい。他の一方の面上にアンチブロッキング層を形成することによって、導電性積層体の製造工程におけるブロッキング現象の発生を抑えることができ、製造時における保存安定性が向上するという利点がある。
【0076】
アンチブロッキング層を形成する組成物として、例えば、第1成分および第2成分を含むアンチブロッキング層形成組成物が挙げられる。第1成分のSP値(SP1)および第2成分のSP値(SP2)の差△SPが1〜2の範囲内であり、アンチブロッキング層形成組成物を塗装した後に、第1成分と第2成分が相分離を生じ、表面に微細な凹凸を有するアンチブロッキング層が形成される、アンチブロッキング層形成組成物であるのがより好ましい。
【0077】
第1成分として、不飽和二重結合含有アクリル共重合体が用いられる。不飽和二重結合含有アクリル共重合体は、例えば(メタ)アクリルモノマーと他のエチレン性不飽和二重結合を有するモノマーとを共重合した樹脂、(メタ)アクリルモノマーと他のエチレン性不飽和二重結合およびエポキシ基を有するモノマーとを反応させた樹脂、(メタ)アクリルモノマーと他のエチレン性不飽和二重結合およびイソシアネート基を有するモノマーとを反応させた樹脂などにアクリル酸やグリシジルアクリレートなどの不飽和二重結合を有しかつ他の官能基を有する成分を付加させたものなどが挙げられる。これらの不飽和二重結合含有アクリル共重合体は1種を単独で用いてもよく、また2種以上を混合して用いてもよい。この不飽和二重結合含有アクリル共重合体は、重量平均分子量で2000〜100000であるのが好ましく、5000〜50000であるのがより好ましい。
【0078】
第2成分のモノマーまたはオリゴマーとして、多官能性不飽和二重結合含有モノマーまたはそのオリゴマーであるのがより好ましい。なお、本明細書でいう「オリゴマー」とは、繰り返し単位を有する重合体であって、この繰り返し単位の数が3〜10であるものをいう。多官能性不飽和二重結合含有モノマーとして、例えば、多価アルコールと(メタ)アクリレートとの脱アルコール反応物である多官能アクリレート、具体的には、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどを用いることができる。この他にも、ポリエチレングリコール#200ジアクリレート(共栄社化学(株)社製)などの、ポリエチレングリコール骨格を有するアクリレートモノマーを使用することもできる。これらの多官能性不飽和二重結合含有モノマーは1種を単独で用いてもよく、また2種以上を混合して用いてもよい。第2成分は、多官能アクリレートであるのがより好ましい。
【0079】
第1成分および第2成分が上記組み合わせである場合に好ましい有機溶媒として、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール系溶媒;アニソール、フェネトールプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルなどのエーテル系溶媒などが挙げられる。これらの溶媒は1種を単独で用いてもよく、また2種以上の有機溶媒を混合して用いてもよい。
【0080】
上記アンチブロッキング層形成組成物は、光重合開始剤を含むのが好ましい。光重合開始剤として、例えば、2−ヒドロキシ−2メチル−1フェニル−プロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタンノン−1などが挙げられる。
【0081】
上記アンチブロッキング層形成組成物は、第1成分および第2成分それぞれのSP値の差によって相分離がもたらされる。この相分離によって、表面に微細な凹凸を有するアンチブロッキング層が形成されることとなる。第1成分のSP値と第2成分のSP値との差は1以上であるのが好ましく、1〜2の範囲内であるのがより好ましい。第1成分のSP値と第2成分のSP値との差が1以上ある場合は、互いの樹脂の相溶性が低く、それによりアンチブロッキング層形成組成物の塗布後に第1成分と第2成分との相分離がもたらされると考えられる。
【0082】
SP値とは、solubility parameter(溶解性パラメーター)の略であり、溶解性の尺度となるものである。SP値は数値が大きいほど極性が高く、逆に数値が小さいほど極性が低いことを示す。
【0083】
例えば、SP値は次の方法によって実測することができる[参考文献:SUH、CLARKE、J.P.S.A−1、5、1671〜1681(1967)]。
【0084】
測定温度:20℃
サンプル:樹脂0.5gを100mlビーカーに秤量し、良溶媒10mlをホールピペットを用いて加え、マグネティックスターラーにより溶解する。
溶媒:
良溶媒…ジオキサン、アセトンなど
貧溶媒…n−ヘキサン、イオン交換水など
濁点測定:50mlビュレットを用いて貧溶媒を滴下し、濁りが生じた点を滴下量とする。
【0085】
樹脂のSP値δは次式によって与えられる。
【0087】
Vi:溶媒の分子容(ml/mol)
φi:濁点における各溶媒の体積分率
δi:溶媒のSP値
ml:低SP貧溶媒混合系
mh:高SP貧溶媒混合系
【0088】
上記アンチブロッキング層形成組成物は、必要に応じて、帯電防止剤、可塑剤、界面活性剤、酸化防止剤、および紫外線吸収剤などの常用の添加剤を含んでもよい。
【0089】
アンチブロッキング層形成組成物には、上記の第1成分および第2成分のほかに、通常使用される樹脂が含まれてもよい。上記アンチブロッキング層形成組成物は、上記のような第1成分および第2成分を用いることによって、樹脂粒子などを含ませなくても、凹凸を有する樹脂層を形成することができることに特徴がある。そのため、上記アンチブロッキング層形成組成物は、樹脂粒子を含まないのが好ましい。しかしながら、上記アンチブロッキング層形成組成物は、必要に応じて、無機粒子または有機粒子、若しくはそれらの複合物を少なくとも一種以上含んでもよい。これらの粒子は、特に表面に凹凸を形成する目的のために添加されるのではなく、相分離や析出を制御して、より均一で微細な凹凸を形成する為に添加される。これらの粒子の粒径は、平均粒径で0.5μm以下、好ましくは0.01〜0.3μmである。0.5μmを超えると、若干透明性が低下する。
【0090】
無機粒子の例としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ゼオライト、雲母、合成雲母、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、フッ化マグネシウム、スメクタイト、合成スメクタイト、バーミキュライト、ITO(酸化インジウム/酸化錫)、ATO(酸化アンチモン/酸化錫)、酸化錫、酸化インジウムおよび酸化アンチモンからなる群から選択される少なくとも1種類が挙げられる。
【0091】
有機粒子の例としては、アクリル、オレフィン、ポリエーテル、ポリエステル、ウレタン、ポリエステル、シリコーン、ポリシラン、ポリイミドおよびフッ素粒子からなる群から選択される少なくとも1種類が挙げられる。
【0092】
上記アンチブロッキング層形成組成物は、第1成分および第2成分、そして必要に応じた溶媒、光重合開始剤、触媒、光増感剤などの添加剤を混合することにより調製される。アンチブロッキング層形成組成物中における第1成分と第2成分との比率は、0.1:99.9〜50:50が好ましく、0.3:99.7〜20:80がより好ましく、0.5:99.5〜10:90がさらに好ましい。重合開始剤、触媒および光増感剤を用いる場合は、第1成分および第2成分そして必要に応じた他の樹脂(これらを合わせて「樹脂成分」という。)100質量部に対して、0.01〜20質量部、好ましくは1〜10質量部加えることができる。溶媒を用いる場合は、上記樹脂成分100質量部に対して、1〜9900質量部、好ましくは10〜900質量部加えることができる。
【0093】
上記アンチブロッキング層形成組成物を塗装し、次いで硬化させることによって、表面に微細な凹凸を有するアンチブロッキング層を形成することができる。アンチブロッキング層形成組成物の塗装方法として、例えばディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やエクストルージョンコート法などが挙げられる。アンチブロッキング層の厚さとして、例えば、0.01〜20μmの厚さである態様が挙げられる。
【0094】
アンチブロッキング層形成組成物を塗装した後、光を照射することによって、相分離および硬化させることができる。照射する光として、例えば露光量0.1〜3.5J/cm
2の光、好ましくは0.5〜1.5J/cm
2の光を用いることができる。またこの照射光の波長は特に限定されるものではないが、例えば、360nm以下の波長を有する照射光などを用いることができる。このような光は、高圧水銀灯、超高圧水銀灯などを用いて得ることができる。このように光を照射することによって、相分離および硬化が生じることとなる。
【実施例】
【0095】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。実施例中、「部」および「%」は、ことわりのない限り、質量基準による。
【0096】
製造例1 アクリル樹脂(1)の製造
撹拌羽根、温度計、滴下装置、温度制御装置、ガス導入口および冷却管を備えた反応装置に、酢酸ブチル70部を仕込み、窒素ガスを導入しつつ、撹拌下110℃まで昇温した。次に、グリシジルメタクリレート15.3部、メチルメタクリレート76.8部、n−ブチルアクリレート7.9部からなる混合物と、パーブチルO(日本油脂社製)2.0部を酢酸ブチル25.0部に溶解した溶液とを、反応装置中に3時間かけて滴下した。滴下終了後、1時間熟成させ、さらに、パーブチルO(日本油脂社製)1.0部を酢酸ブチル25.0部に溶解した溶液を、反応装置中に1時間かけて滴下した。滴下終了後1時間110度を維持した後、120℃に昇温し更に2時間熟成させ反応を完結させた。次に窒素ガスから空気に変更して90℃まで攪拌下冷却しアクリル酸7.8部、P−メトキシフェノール0.3部を仕込んだ。更に臭化テトラブチルアンモニウム0.6部を酢酸ブチル3.0部に溶解した溶液を投入して105℃まで昇温して反応させた。反応は酸価によりモニタリングし、固形分の酸価が5以下になるまで反応させた。尚酸価はJIS−5601−2−1に準じて行い、反応溶液を0.1N-水酸化カリウム溶液で滴定して次式により計算した。
【0097】
酸価={(KOH溶液の滴下量[mL])×(KOH溶液のモル濃度[mol/L])}/(固形分の重量[g])
【0098】
反応終了後、酢酸ブチルを12.0部投入して冷却し、アクリル当量1000のアクリルアクリレート(1)を得た。105℃×3時間後の不揮発分は45.1[%]であった。
【0099】
製造例2〜5 アクリル樹脂(2)〜(5)の製造
製造例1と同様な方法で表1に示す配合にてアクリルアクリレート(2)〜(5)を製造した。
【0100】
【表1】
【0101】
製造例6 フェノールノボラック型アクリレートの製造
攪拌装置、温度計、滴下漏斗および還流装置のついた反応装置に、フェノールノボラック樹脂(重量平均分子量700〜900、エポキシ当量150〜200)150gおよびエピクロルヒドリン550gを混合し、100℃、100〜200mgの減圧条件下にて48.5%の水酸化ナトリウム水溶液110gを2時間かけて滴下した。反応終了後、温度を室温まで冷却し過剰の水酸化ナトリウム水溶液を酸で中和、減圧下にて加熱し過剰のエピクロルヒドリンを除去した後、生成物をメチルイソブチルケトンに溶解させ、水洗濾別により副生成塩を除去してフェノールノボラック型のエポキシ樹脂溶液を得た。
得られたフェノールノボラック型のエポキシ樹脂の固形分100重量部に対し、メトキノン1000ppm、トリフェニルホスフィン2000ppmを加え、100℃にてアクリル酸を滴下し、酸価が1mgKOH/g以下になるまで反応させフェノールノボラック型エポキシアクリレートを得た。
【0102】
得られたフェノールノボラック型エポキシアクリレートは、重量平均分子量が950であり、水酸基価は140mgKOH/g、屈折率は1.572であった。
【0103】
得られたフェノールノボラック型のエポキシ樹脂の固形分100重量部に対し、メトキノン1000ppm、トリフェニルホスフィン2000ppmを加え、100℃にてアクリル酸を滴下し、酸価が1mgKOH/g以下になるまで反応させフェノールノボラック型エポキシアクリレート(2)を得た。
【0104】
得られたフェノールノボラック型エポキシアクリレート(2)は、重量平均分子量が1200であり、水酸基価は137mgKOH/g、屈折率は1.571であった。
【0105】
製造例7 多官能ウレタンアクリレートの製造
温度計、冷却管、攪拌装置を備えた1Lの4口フラスコに1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールとのポリカーボネートジオール(旭化成ケミカルズ社製PCDL T−5652、数平均分子量:2000)341gと、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物(昭和高分子社製リポキシSP−16LDA)17gと、イソホロンジイソシアネート43gと、ジブチルスズジラウレート(反応触媒)0.2g、メチルエチルケトン(有機溶媒)400gとを投入し、70℃において約24時間攪拌し、反応させた。反応後、赤外線吸収スペクトルによりイソシアネート残基が観測されなくなったのを確認した。このようにして、数平均分子量30000、不飽和度0.23mol/kgの不飽和基含有ウレタン樹脂を得た。
【0106】
実施例1
成分(A)として、製造例1で得られたアクリル樹脂(1)、成分(B)として、製造例6で得られたフェノールノボラック型エポキシアクリレート(1)を、成分(C)として、ビスフェノールAエチレンオキサイド2mol変性ジアクリレート、成分(D)として、ペンタエリスリトールトリアクリレートを用いてハードコーティング組成物を調製した。表1に示された原料を、表1に示された固形分質量で順次混合し、撹拌して、ハードコーティング組成物を得た。
【0107】
ハードコートフィルムの作成
得られたハードコーティング組成物を、帝人化成製100μm光学用PCフィルム(ピュアエース)上に滴下し、バーコーター#9を用いて塗工した。塗工後、70℃にて1分間乾燥させ、紫外線照射機(Fusion製)にて350mJの紫外線を照射し、ポリカーボネートフィルムおよび膜厚3.0μmのハードコート層を有するハードコートフィルムを得た。ハードコート層の屈折率は、JIS K0062に準拠した方法により、アッベ屈折率計を用いて測定し、1.542であった。
【0108】
実施例2〜18
成分(A)の種類および量を表2に記載されたものに変更し、また成分(B)〜(D)の量を表1に記載されたものに変更し、実施例1と同様にして、ハードコーティング組成物を調製した。得られたハードコーティング組成物を用いて、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。ハードコート層の膜厚は3.0μmで、屈折率はJIS K0062に準拠するアッベ屈折率計で測定して1.542であった。
【0109】
比較例1
この例では、特許文献4の発明に該当する組成で、本願のアクリル樹脂に代えて製造例7で得られたポリエステル系ウレタンアクリレートを用いた例を示す。その組成は表3の比較例1の配合でハードコーティング組成物を調製し、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。ハードコート層の膜厚は3.0μmで、屈折率はJIS K0062に準拠するアッベ屈折率計で測定して1.542であった。
【0110】
比較例2〜10
表3の比較例2〜10に示された配合により、ハードコーティング組成物を、実施例1と同様にして調製した。得られたハードコーティング組成物を用いて、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。ハードコート層の膜厚は3.0μmで、屈折率はJIS K0062に準拠するアッベ屈折率計で測定して1.542であった。
【0111】
上記実施例1〜18および比較例1〜10において得られたハードコートフィルムについて、下記評価を行った。評価結果を表2および3に示す。
【0112】
干渉縞評価
ポリカーボネート基材上に各実施例1〜18または比較例1〜10のハードコーティング組成物をバーコーターで塗工した後、70℃の乾燥炉に1分間放置し、更にFusion−H光源で露光してそれぞれの実施例または比較例に対応する試験片を得た。得られた試験片を100×100mmの黒色アクリル板に光学フィルム用粘着剤を用いハードコート塗工面が表面にくるように貼り合せた。スタンド式3波長蛍光灯(TWINBARD製 SLH−399型)の蛍光管から垂直下10cmの距離にサンプルを設置して目視観察をし、評価結果が○以上のサンプルについては、更に太陽光下での目視観察を実施し、下記の評価基準に基づき、判定した。
【0113】
◎ : 干渉縞(干渉模様)が3波長蛍光灯下でも太陽光下でも視認されない。
○ : 3波長蛍光灯下で干渉縞(干渉模様)が視認されないが太陽光下では僅かに視認される。
△ : 干渉縞(干渉模様)が僅かに視認される。
× : 干渉縞(干渉模様)がはっきりと視認される。
【0114】
密着性試験1(初期密着性)
JIS K5400に準拠して密着性試験を実施した。実施例1〜18及び比較例1〜10で得られたハードコートフィルムに、カッターナイフを用いて、1mm
2のカット(碁盤目)が100個できるようにクロスカットを施した。次いで、作成した碁盤目の上にセロハン粘着テープを完全に付着させ、テープの一方の端を持ち上げて上方に剥がした。この剥離動作を同一箇所で3回実施した。その後、剥がれた碁盤目の数を、以下に記載の基準に沿って判定した。下記評価基準で8以上を合格とする。
【0115】
10:剥がれなし
8:剥がれが5目以内である
6:剥がれが5目を超えて15目以内である
4:剥がれが15目を超えて35目以内である
2:剥がれが35目を超えて65目以内である
0:剥がれが65目を超えて100目以内である
【0116】
湿熱密着性試験(85℃×85%×500H後)
実施例1〜18及び比較例1〜10で得られたハードコートフィルムを、85℃×85%RHの湿熱試験にて500時間処理した。湿熱処理1時間後にカッターナイフを用いて、1mm
2のカット(碁盤目)が100個できるようにクロスカットを施した。次いで、作成した碁盤目の上にセロハン粘着テープを完全に付着させ、テープの一方の端を持ち上げて上方に剥がした。この剥離動作を同一箇所で3回実施した。その後、剥がれた碁盤目の数を、密着性試験1と同様の基準にて6段階評価で判定した。
【0117】
湿熱密着性試験(85℃×85%×750H後)
実施例1〜18及び比較例1〜10で得られたハードコートフィルムを、85℃×85%RHの湿熱試験にて750時間処理した。湿熱処理1時間後にカッターナイフを用いて、1mm
2のカット(碁盤目)が100個できるようにクロスカットを施した。次いで、作成した碁盤目の上にセロハン粘着テープを完全に付着させ、テープの一方の端を持ち上げて上方に剥がした。この剥離動作を同一箇所で3回実施した。その後、剥がれた碁盤目の数を、密着性試験1と同様の基準にて6段階評価で判定した。
【0118】
湿熱密着性試験(85℃×85%×1500H後)
実施例1〜18及び比較例1〜10で得られたハードコートフィルムを、85℃×85%RHの湿熱試験にて1500時間処理した。湿熱処理1時間後にカッターナイフを用いて、1mm
2のカット(碁盤目)が100個できるようにクロスカットを施した。次いで、作成した碁盤目の上にセロハン粘着テープを完全に付着させ、テープの一方の端を持ち上げて上方に剥がした。この剥離動作を同一箇所で3回実施した。その後、剥がれた碁盤目の数を、密着性試験1と同様の基準にて6段階評価で判定した。
【0119】
【表2】
【0120】
【表3】
【0121】
上記表2および表3中、
・ビスフェノールA EO変性(2mol)ジアクリレート:東亜合成株式会社製、アロニックスM−211B、ビスフェノールA EO(2mol)変性ジアクリレート
・イルガキュアー184:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、光重合開始剤
・ヒンダードフェノール系酸化防止剤(1)イルガノックス1726
このヒンダードフェノール系酸化防止剤(1)は以下の化学式(I)を有する:
【化8】
(I)
・ヒンダードフェノール系酸化防止剤(2)イルガノックス1010
を示す。
【0122】
実施例のハードコーティング組成物を用いて形成されたハードコート層を有するハードコーティングフィルムは、何れも、干渉縞の発生がなく、良好な硬度を有していた。さらに得られたハードコーティングフィルムは、伸長性および耐屈曲性も高く、初期密着性の他、ハードコートフィルムとしての密着性、湿熱密着性試験においても750時間を超えても密着性に問題の無いものであった。実施例12〜18は、特にヒンダードフェノール系酸化防止剤を含むものであるが、上記の化学式(I)を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤の量が適量の場合(実施例13〜15)、湿熱密着性が1500時間を超えてもよい状態が続いていることがわかる。
【0123】
比較例1は本発明の先願である特許文献4の実施例を示すものであるが、湿熱密着性試験で500時間後では良い性能であるものの、750時間を超える湿熱密着性試験では悪い結果が出ている。比較例2は、製造例4のアクリレート基の当量が2200g/molであるアクリル樹脂(4)を用いたものであり、湿熱密着性試験で750時間を超える時に密着性が劣った。比較例3では、製造例5のアクリレート樹脂のアクリレート基当量が400g/molであるアクリル樹脂(5)を用いたもので、湿潤密着性試験で750実感を超える時に密着性が劣る。比較例4は、成分(B)のフェノールノボラック型アクリレートの量が10重量部と少ない場合であり、やはり湿潤密着性試験で750時間を超えると、密着性が劣る。比較例5は、成分(A)のアクリル樹脂と成分(C)のビスフェノール骨格含有ジアクリレートの量が本発明の範囲より少ない場合の例であり、やはり湿熱密着性試験で750時間を超えると、密着性が劣る。比較例6および7は、成分(A)のアクリル樹脂が本発明の範囲より少ない場合(比較例6)および多い場合(比較例7)を示す例であり、共に湿熱密着性試験で750時間を超えると密着性が悪くなる。比較例8は成分(D)の多官能アクリレートを含まない態様であり、密着性が初期から悪い。比較例9と10は、共に成分(A)が共に本発明の範囲より少なく、かつ成分(B)の量が多い場合(比較例9)と成分(C)の量が多い場合(比較例10)の態様であり、共に湿熱密着性試験で750時間を超えると密着性が悪くなる。
【0124】
また、これらの実施例および比較例の結果からも、本発明によって得られるハードコート層において、高い密着性効果(特に湿熱密着性試験で750時間を超える密着性)が達成されていることがわかる。