(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記縮径部の内周面が、縦断面にて、前記最小径部から前記大径部に達するまで、前記仮想楕円の弧に沿って湾曲している、請求項1に記載のドライアイススノー洗浄装置。
前記縮径部の内周面が、縦断面にて、前記最小径部から前記大径部に向かって前記仮想楕円の弧に沿って湾曲し、さらに前記仮想楕円および前記大径部の各々に接する仮想円または仮想楕円の弧に沿って湾曲して前記大径部に達している、請求項1に記載のドライアイススノー洗浄装置。
前記混合部において、前記ドライアイススノーが螺旋状に流動するように、前記液化炭酸ガス供給系が前記噴射用ガス供給系に対して偏心した状態で接続されている、請求項1から5のいずれか1項に記載のドライアイススノー洗浄装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の各実施形態に係るドライアイススノー洗浄装置について図面を参照して説明する。以下の実施形態の説明においては、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0016】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係るドライアイススノー洗浄装置の構成を示す模式図である。
図1に示すように、本発明の実施形態1に係るドライアイススノー洗浄装置100は、液化炭酸ガスを供給する液化炭酸ガス供給系と、噴射用ガスを供給する噴射用ガス供給系と、液化炭酸ガス供給系における下流側に設けられた絞り部140と、液化炭酸ガス供給系と噴射用ガス供給系とを接続し、絞り部140を通過して生成されたドライアイススノーを含む炭酸ガスと噴射用ガスとを混合して混合ガスを生成する混合部180と、混合部180と接続され、混合ガスを噴射するノズル190とを備える。
【0017】
液化炭酸ガス供給系は、液化炭酸ガスを貯蔵する液化炭酸ガス貯蔵容器110と、液化炭酸ガス貯蔵容器110に接続されて液化炭酸ガスの流路となる液化炭酸ガス管120と、液化炭酸ガス管120の途中に設けられた第1開閉部130と、液化炭酸ガス管120の下流側に設けられた絞り部140とを含む。液化炭酸ガス供給系は、液化炭酸ガス管120の内部の圧力を測定する圧力計、および、圧力計の下流側に設けられ、液化炭酸ガス中の不純物を取り除くフィルタをさらに含む。
【0018】
第1開閉部130は、手動で開閉可能なバルブにて構成されている。ただし、第1開閉部130が、自動で開閉可能なバルブにて構成されていてもよい。絞り部140は、オリフィス板またはニードル弁などの液化炭酸ガスの流路を絞る部材から構成されている。絞り部140は、第1開閉部130より下流側に設けられている。
【0019】
噴射用ガス供給系は、噴射用ガスを供給する噴射用ガス供給源150と、噴射用ガス供給源150に接続されて噴射用ガスの流路となる噴射用ガス管160と、噴射用ガス管160の途中に設けられた第2開閉部170とを含む。噴射用ガス供給系は、噴射用ガス管160の内部の圧力を測定する圧力計、および、圧力計の下流側に設けられ、噴射用ガス中の不純物を取り除くフィルタをさらに含む。
【0020】
噴射用ガス管160は、必要に応じてヒータなどの加熱器により加熱される。噴射用ガス管160を加熱することにより、被洗浄物の汚れの種類および状態に応じて洗浄効果が高まるように噴射用ガスの温度を調整できるとともに被洗浄物が結露することを抑制できる。
【0021】
第2開閉部170は、手動で開閉可能なバルブにて構成されている。ただし、第2開閉部170が、自動で開閉可能なバルブにて構成されていてもよい。噴射用ガスとしては、たとえば、ドライエアー、窒素ガス、アルゴンガスまたは炭酸ガスなど、炭酸ガスに対して不活性なガスを用いることができる。
【0022】
混合部180は、液化炭酸ガス管120の先端、噴射用ガス管160の先端およびノズル190の後端の各々と、気密に接続されている。混合部180は、円筒状の形状を有している。混合部180の先端側の内面は、ノズル190の後端側の内面と連続している。すなわち、混合部180の先端側の内径は、ノズル190の後述する大径部の内径と略同じである。
【0023】
図2は、本発明の実施形態1に係るドライアイススノー洗浄装置のノズルの構造を示す断面図である。
図2に示すように、本発明の実施形態1に係るドライアイススノー洗浄装置100のノズル190は、ノズル190の軸方向に沿って順に位置する、大径部190a、縮径部190bおよび拡径部190cを含む。
【0024】
大径部190aは、混合部180と接続されて一定の内径D
1を有する。大径部190aの内周面191は、横断面にて円形である。すなわち、大径部190aは、円筒状の形状を有している。
【0025】
縮径部190bは、大径部190aと接続されて大径部190aから離れるに従って内径が縮小しており、拡径部190cとの境界に位置する最小径部193を含む。最小径部193の内径d
1は、ノズル190全体において最も小さい。
【0026】
縮径部190bの内周面192は、横断面にて円形であり、縦断面にて、最小径部193から大径部190aに向かって、ノズル190の軸方向に平行な長軸を有する仮想楕円C
1の弧に沿って湾曲している。仮想楕円C
1のノズルの軸方向の軸の長さAは、仮想楕円C
1のノズルの径方向の軸の長さBより長い(A>B)。仮想楕円C
1は、長径(ノズルの軸方向の軸の長さA)が短径(ノズルの径方向の軸の長さB)に比較して1.1倍以上であることが好ましい。
【0027】
本実施形態においては、縮径部190bの内周面192が、縦断面にて、最小径部193から大径部190aに達するまで、仮想楕円C
1の弧に沿って湾曲している。仮想楕円C
1の長軸は、大径部190aの内周面191の延長上に位置している。仮想楕円C
1の短軸上に、最小径部193が位置している。
【0028】
拡径部190cは、縮径部190bと接続されて縮径部190bから離れるに従って一定の割合で内径が拡大しており、拡径部190cの先端が、ノズル190の噴射口195である。噴射口195の内径d
2は、最小径部193の内径d
1より大きく、大径部190aの内径D
1より小さい。大径部190aの内径D
1が、最小径部193の内径d
1の2.3倍以上4.6倍以下であることが好ましい。
【0029】
以下、本発明の実施形態1に係るドライアイススノー洗浄装置100の動作について説明する。まず、液化炭酸ガス供給系においては、液化炭酸ガス貯蔵容器110から液化炭酸ガス管120内に液化炭酸ガスを流入させる。液化炭酸ガス管120に設けられた圧力計によって、液化炭酸ガス管120内の液化炭酸ガスの圧力が測定される。
【0030】
次に、第1開閉部130が開いて、液化炭酸ガス管120内の液化炭酸ガスは、絞り部140を通過する。絞り部140を通過した液化炭酸ガスは、断熱膨張して冷却される。その結果、ドライアイススノーが生成される。ドライアイススノーを含む炭酸ガスは、混合部180の内部に流入する。
【0031】
噴射用ガス供給系においては、噴射用ガス供給源150から噴射用ガス管160内に噴射用ガスを流入させる。噴射用ガス管160に設けられた圧力計によって、噴射用ガス管160内の噴射用ガスの圧力が測定される。次に、第2開閉部170が開いて、噴射用ガス管160内の噴射用ガスは、混合部180の内部に流入する。
【0032】
混合部180において、ドライアイススノーを含む炭酸ガスと噴射用ガスとは混合されて混合ガスになる。混合部180にて生成された混合ガスは、ノズル190の大径部190aの内部に流入する。
【0033】
大径部190aの内部に流入したある一定以上の圧力を有する混合ガスは、縮径部190bを通過する際に加速され、最小径部193を通過する時には流速が音速になり、拡径部190cを通過する際にさらに加速され、噴射口195から噴射される時には流速が超音速になっている。このように、大径部190aの内部に流入した際の混合ガスの圧力は、混合ガスが最小径部193を通過する時に、流速が音速となる圧力であればよい。噴射口195から噴射された混合ガスを被洗浄物に噴き付けることにより、被洗浄物を洗浄することができる。
【0034】
本実施形態に係るドライアイススノー洗浄装置100のノズル190においては、縮径部190bの内周面192が、縦断面にて、最小径部193から大径部190aに向かって、ノズル190の軸方向に平行な長軸を有する仮想楕円C
1の弧に沿って湾曲しているため、最小径部193が角張っておらず滑らかに接続されている。
【0035】
これにより、混合ガスが縮径部190bから拡径部190cに流入する際に、ドライアイススノーが最小径部193にて詰まることを抑制することができる。その結果、ノズル190からドライアイススノーを安定して噴き付けられるとともに、噴射速度を超音速に維持することができる。よって、ドライアイススノー洗浄装置100において安定して高い洗浄能力を得ることができる。なお、大径部190aの内部に流入した際の混合ガスの圧力を、炭酸ガスの三重点圧力以上とすることにより、ノズル190からドライアイススノーをさらに安定して噴射することができる。
【0036】
ここで、ノズルの構造が互いに異なるドライアイススノー洗浄装置の洗浄能力を比較した実験例について説明する。
【0037】
(実験例1)
実験例1においては、実施例1に係るノズル190、比較例1に係るノズル890および比較例2に係るノズル990をそれぞれ有する3種類のノズルドライアイススノー洗浄装置について実験した。実施例1に係るノズル190は、実施形態1に係るドライアイススノー洗浄装置100のノズル190と同様の構造を有する。
【0038】
図3は、比較例1に係るドライアイススノー洗浄装置のノズルの構造を示す断面図である。
図4は、比較例2に係るドライアイススノー洗浄装置のノズルの構造を示す断面図である。
【0039】
図3に示すように、比較例1に係るドライアイススノー洗浄装置のノズル890は、ノズル890の軸方向に沿って順に位置する、大径部890a、縮径部890bおよび拡径部890cを含む。
【0040】
大径部890aは、混合部180と接続されて一定の内径D
81を有する。大径部890aの内周面891は、横断面にて円形である。すなわち、大径部890aは、円筒状の形状を有している。
【0041】
縮径部890bは、大径部890aと接続されて大径部890aから離れるに従って内径が縮小しており、拡径部890cとの境界に位置する最小径部893を含む。最小径部893の内径d
81は、ノズル890全体において最も小さい。縮径部890bの内周面892は、横断面にて円形である。縮径部890bは、大径部890aから離れるに従って一定の割合で内径が縮小している。
【0042】
拡径部890cは、縮径部890bと接続されて縮径部890bから離れるに従って一定の割合で内径が拡大しており、拡径部890cの先端が、ノズル890の噴射口895である。噴射口895の内径d
82は、最小径部893の内径d
81より大きく、大径部890aの内径D
81より小さい。
【0043】
図4に示すように、比較例2に係るドライアイススノー洗浄装置のノズル990は、噴射用ガスが流れる外管の内側に、炭酸ガスが流れる内管が設けられた、同軸2重管構造を有している。外管は、円筒状の形状を有している。外管の内周面991は、横断面にて円形である。内管は、円筒状の形状を有している。内管の内周面992は、横断面にて円形である。
【0044】
内管の先端は、外管の内部に位置し、ドライアイススノーを含む炭酸ガスを噴射する噴射口993である。外管の先端が、ノズル990の噴射口994である。噴射口993から噴射されたドライアイススノーを含む炭酸ガス、および、外管の内周面991と内管の外周面との間を通過した噴射用ガスが、噴射口994から噴射される。
【0045】
実施例1、比較例1および比較例2の各々に係るドライアイススノー洗浄装置において、共通の洗浄条件として、液化炭酸ガス貯蔵容器における液化炭酸ガスの充填圧力を6MPa、液化炭酸ガス管における液化炭酸ガスの流量を7kg/h、ノズルから噴射される噴射用ガスの噴射圧力を0.5MPaとした。また、ノズルの先端と被洗浄物との距離を50mm、ノズルの中心軸と被洗浄物の洗浄面とが互いに垂直になるようにノズルを位置させ、噴射時間(洗浄時間)を30秒とした。
【0046】
実施例1および比較例1の各々におけるノズル190,890においては、大径部の内径D
1=D
81=10.7mm、最小径部の内径d
1=d
81=3.2mm、噴射口の内径d
2=d
82=3.8mmとした。実施例1におけるノズル190においては、縮径部190bの内周面192が沿う仮想楕円C
1の長径(ノズルの軸方向の軸の長さA)を7.5mm、仮想楕円C
1の短径(ノズルの径方向の軸の長さB)を6.0mmとした。比較例2におけるノズル890においては、縮径部890bの内周面892の縮径率(径方向/軸方向)を1.4とした。比較例2におけるノズル990においては、内管の噴射口993の内径を1.6mm、噴射口994の内径を3.9mmとした。
【0047】
被洗浄物としては、グラファイト基板と、塗料が焼き付け塗布されたスチール缶とを用いた。グラファイト基板を洗浄する際は、ノズルの位置をグラファイト基板に対して移動させずに洗浄した。スチール缶を洗浄する際は、スチール缶の表面を一定速度で走査するようにノズルを移動させて洗浄した。
【0048】
洗浄能力の評価として、実施例1、比較例1および比較例2の各々に係るドライアイススノー洗浄装置にて洗浄後のグラファイト基板の削れた深さをデジタルマイクロメータを用いて計測した。また、実施例1、比較例1および比較例2の各々に係るドライアイススノー洗浄装置にて洗浄後のスチール缶の塗料が除去された面積(幅×長さ)をノギスを用いて計測した。
【0049】
図5は、実験例1の結果をまとめたグラフである。
図5においては、縦軸に、グラファイト基板の削れた深さ(mm)、および、スチール缶の塗料が除去された面積(mm
2)、横軸にサンプル名を示している。
【0050】
図5に示すように、実施例1に係るドライアイススノー洗浄装置においては、グラファイト基板の削れた深さが40mm、スチール缶の塗料が除去された面積が60mm
2であった。比較例1に係るドライアイススノー洗浄装置においては、グラファイト基板の削れた深さが5mm、スチール缶の塗料が除去された面積が0mm
2であった。比較例2に係るドライアイススノー洗浄装置においては、グラファイト基板の削れた深さが4mm、スチール缶の塗料が除去された面積が0mm
2であった。
【0051】
比較例1に係るドライアイススノー洗浄装置においては、ドライアイススノーがノズル890内で詰まり、ドライアイススノーの噴射が不安定となるとともに噴射速度が低下したため、ドライアイススノー洗浄装置の洗浄能力が低下した。比較例2に係るドライアイススノー洗浄装置においては、ドライアイススノーの噴射速度が低く、ドライアイススノー洗浄装置の洗浄能力が低かった。
【0052】
実施例1に係るドライアイススノー洗浄装置においては、ドライアイススノーがノズル190内で詰まることがなく、安定して高速でドライアイススノーを噴射することができた。上記の実験例1の結果から、実施例1に係るドライアイススノー洗浄装置は、安定して高い洗浄能力を得られることが確認できた。
【0053】
次に、ノズルの縮径部の内周面が沿う仮想楕円の形状が互いに異なるドライアイススノー洗浄装置の洗浄能力を比較した実験例について説明する。
【0054】
(実験例2)
実験例1においては、実施例1に係るノズル190、比較例3に係るノズルおよび比較例4に係るノズルをそれぞれ有する3種類のノズルドライアイススノー洗浄装置について実験した。
【0055】
比較例3に係るノズルにおいては、ノズルの縮径部の内周面が沿う仮想楕円を円(A=B)とし、大径部の内径、最小径部の内径および噴射口の内径の各々は、実施例1に係るノズル190と同一寸法とした。
【0056】
比較例4に係るノズルにおいては、縮径部の内周面が、縦断面にて、最小径部から大径部に向かって、ノズルの軸方向に平行な短径を有する仮想楕円の弧に沿って湾曲している。すなわち、比較例4に係るノズルにおいては、仮想楕円のノズルの軸方向の軸の長さAが、ノズルの径方向の軸の長さBより短い(A<B)。比較例4に係るノズルにおいては、大径部の内径、最小径部の内径および噴射口の内径の各々は、実施例1に係るノズル190と同一寸法とした。
【0057】
実施例1、比較例3および比較例4の各々に係るドライアイススノー洗浄装置において、共通の洗浄条件として、実験例1と同様に、液化炭酸ガス貯蔵容器における液化炭酸ガスの充填圧力を6MPa、液化炭酸ガス管における液化炭酸ガスの流量を7kg/h、ノズルから噴射される噴射用ガスの噴射圧力を0.5MPaとした。また、ノズルの先端と被洗浄物との距離を50mm、ノズルの中心軸と被洗浄物の洗浄面とが互いに垂直になるようにノズルを位置させ、噴射時間(洗浄時間)を30秒とした。
【0058】
比較例3に係るノズルにおいては、縮径部の内周面が沿う仮想楕円のノズルの軸方向の軸の長さAおよびノズルの径方向の軸の長さBをともに6.0mmとした。比較例4に係るノズルにおいては、縮径部の内周面が沿う仮想楕円のノズルの軸方向の軸の長さAを4.5mm、仮想楕円のノズルの径方向の軸の長さBを6.0mmとした。
【0059】
被洗浄物としては、実験例1と同様に、グラファイト基板と、塗料が焼き付け塗布されたスチール缶とを用いた。グラファイト基板を洗浄する際は、ノズルの位置をグラファイト基板に対して移動させずに洗浄した。スチール缶を洗浄する際は、スチール缶の表面を一定速度で走査するようにノズルを移動させて洗浄した。
【0060】
洗浄能力の評価として実験例1と同様に、実施例1、比較例3および比較例4の各々に係るドライアイススノー洗浄装置にて洗浄後のグラファイト基板の削れた深さをデジタルマイクロメータを用いて計測した。また、実施例1、比較例3および比較例4の各々に係るドライアイススノー洗浄装置にて洗浄後のスチール缶の塗料が除去された面積(幅×長さ)をノギスを用いて計測した。
【0061】
図6は、実験例2の結果をまとめたグラフである。
図6においては、縦軸に、グラファイト基板の削れた深さ(mm)、および、スチール缶の塗料が除去された面積(mm
2)、横軸にサンプル名を示している。
【0062】
図6に示すように、比較例3に係るドライアイススノー洗浄装置においては、グラファイト基板の削れた深さが12mm、スチール缶の塗料が除去された面積が24mm
2であった。比較例4に係るドライアイススノー洗浄装置においては、グラファイト基板の削れた深さが11mm、スチール缶の塗料が除去された面積が9mm
2であった。
【0063】
比較例3および比較例4の各々に係るドライアイススノー洗浄装置においては、縮径部の内周面とドライアイススノーとの流動抵抗が大きいため、ドライアイススノーの噴射速度が低下し、ドライアイススノー洗浄装置の洗浄能力が低下した。
【0064】
実施例1に係るドライアイススノー洗浄装置は、縮径部190bの内周面192が、縦断面にて、最小径部193から大径部190aに向かって、ノズル190の軸方向に平行な長軸を有する仮想楕円C
1の弧に沿って湾曲していることにより、縮径部190bの内周面192とドライアイススノーとの流動抵抗を低減して、高速でドライアイススノーを噴射することができた。
【0065】
上記の実験例2の結果から、実施例1に係るドライアイススノー洗浄装置は、安定して高い洗浄能力を得られることが確認できた。上記の効果を安定して得るために、仮想楕円C
1は、長径(ノズルの軸方向の軸の長さA)が短径(ノズルの径方向の軸の長さB)に比較して1.1倍以上であることが好ましい。
【0066】
なお、縮径部190bとの接触長さが長くなってドライアイススノーが気化することを抑制するために、仮想楕円C
1は、長径(ノズルの軸方向の軸の長さA)が短径(ノズルの径方向の軸の長さB)に比較して3.0倍以下であることが好ましい。
【0067】
また、大径部190aの内径D
1が、最小径部193の内径d
1の2.3倍以上4.6倍以下であることが好ましい。この範囲においては、絞り部140を通過して生成されたドライアイススノーを、大径部190aにてある程度の大きさまで粒成長させた後、縮径部190bにて押し固めて粒径を小さくすることによってある程度の硬度まで硬くすることができる。その結果、ドライアイススノーが最小径部193にて詰まることを抑制しつつ、ドライアイススノーを噴き付けた際の衝撃力を高めて、ドライアイススノー洗浄装置100の洗浄能力を向上することができる。
【0068】
仮に、大径部190aの内径D
1が、最小径部193の内径d
1の2.2倍以下である場合、絞り部140を通過して生成されたドライアイススノーの粒成長の度合いが低いため、縮径部190bにてドライアイススノーを押し固めて硬くすることができない。
【0069】
仮に、大径部190aの内径D
1が、最小径部193の内径d
1の4.7倍以上である場合、絞り部140を通過して生成されたドライアイススノーの粒成長の度合いが大きすぎるため、洗浄に不適となる。
【0070】
以下、本発明の実施形態2に係るドライアイススノー洗浄装置について説明する。なお、本発明の実施形態2に係るドライアイススノー洗浄装置は、ノズルの縮径部の形状のみ実施形態1に係るドライアイススノー洗浄装置と異なるため、他の構成については説明を繰り返さない。
【0071】
(実施形態2)
図7は、本発明の実施形態2に係るドライアイススノー洗浄装置のノズルの構造を示す断面図である。
図7に示すように、本発明の実施形態2に係るドライアイススノー洗浄装置のノズル290は、ノズル290の軸方向に沿って順に位置する、大径部290a、縮径部290bおよび拡径部290cを含む。
【0072】
大径部290aは、混合部180と接続されて一定の内径D
21を有する。大径部290aの内周面291は、横断面にて円形である。すなわち、大径部290aは、円筒状の形状を有している。
【0073】
縮径部290bは、大径部290aと接続されて大径部290aから離れるに従って内径が縮小しており、拡径部290cとの境界に位置する最小径部293を含む。最小径部293の内径d
21は、ノズル290全体において最も小さい。
【0074】
縮径部290bの内周面292は、横断面にて円形であり、縦断面にて、最小径部293から大径部290aに向かって、ノズル290の軸方向に平行な長軸を有する仮想楕円C
21の弧に沿って湾曲している。仮想楕円C
21のノズルの軸方向の軸の長さaは、仮想楕円C
21のノズルの径方向の軸の長さbより長い(a>b)。
【0075】
本実施形態においては、縮径部290bの内周面292が、縦断面にて、最小径部293から大径部290aに向かって仮想楕円C
21の弧に沿って湾曲し、さらに仮想楕円C
21および大径部290aの各々に接する仮想円C
22の弧に沿って湾曲して大径部290aに達している。すなわち、縮径部290bの内周面292は、半径rの仮想円C
22の弧に沿う第1内周面292aと、仮想楕円C
21の弧に沿う第2内周面292bとから構成されている。仮想楕円C
21の短軸上に、最小径部293が位置している。
【0076】
拡径部290cは、縮径部290bと接続されて縮径部290bから離れるに従って一定の割合で内径が拡大しており、拡径部290cの先端が、ノズル290の噴射口295である。噴射口295の内径d
22は、最小径部293の内径d
21より大きく、大径部290aの内径D
21より小さい。
【0077】
本実施形態に係るドライアイススノー洗浄装置のノズル290においても、縮径部290bの内周面292が、縦断面にて、最小径部293から大径部290aに向かって、ノズル290の軸方向に平行な長軸を有する仮想楕円C
21の弧に沿って湾曲しているため、最小径部293が角張っていない。
【0078】
これにより、混合ガスが縮径部290bから拡径部290cに流入する際に、ドライアイススノーが最小径部293にて詰まることを抑制することができる。その結果、ノズル290からドライアイススノーを安定して噴き付けられるとともに、噴射速度を超音速に維持することができる。よって、本実施形態に係るドライアイススノー洗浄装置において安定して高い洗浄能力を得ることができる。
【0079】
なお、縮径部290bの内周面292が、縦断面にて、最小径部293から大径部290aに向かって仮想楕円C
21の弧に沿って湾曲し、さらに仮想楕円C
21および大径部290aの各々に接する仮想楕円の弧に沿って湾曲して大径部290aに達していてもよい。この場合、仮想楕円C
21および大径部290aの各々に接する仮想楕円の長軸が、ノズル290の軸方向に平行であることが好ましい。この場合、縮径部290bの内周面292とドライアイススノーとの流動抵抗を低減して、高速でドライアイススノーを噴射することができる。
【0080】
以下、本発明の実施形態3に係るドライアイススノー洗浄装置について説明する。なお、本発明の実施形態3に係るドライアイススノー洗浄装置は、混合部の構造のみ実施形態1に係るドライアイススノー洗浄装置と異なるため、他の構成については説明を繰り返さない。
【0081】
(実施形態3)
図8は、本発明の実施形態3に係るドライアイススノー洗浄装置の混合部の構造を示す断面図である。
図9は、
図8の混合部をIX−IX線矢印印方向から見た図である。
図8,9に示すように、本発明の実施形態3に係るドライアイススノー洗浄装置は、混合部380において、ドライアイススノーが螺旋状に流動するように、液化炭酸ガス供給系が噴射用ガス供給系に対して偏心した状態で接続されている。
【0082】
具体的には、縦断面にて、噴射用ガス管360とノズル190とが同軸配置され、横断面にて、液化炭酸ガス管320の中心軸が噴射用ガス管360の中心軸に対して偏心している。すなわち、横断面にて、噴射用ガス管360の中心軸に直交する軸に対して、液化炭酸ガス管320の中心軸がずれている。
【0083】
その結果、液化炭酸ガス管320の絞り部を通過して生成されたドライアイススノー11は、混合部380にて噴射用ガス管360から流入した噴射用ガス15と混合された際に、遠心力31によって噴射用ガス管360の内周面に沿って矢印30で示すように螺旋状に流動しながら凝集した状態でノズル190の内部に流入する。
【0084】
ノズル190から噴射されたドライアイススノーは凝集して粒径が大きくなるとともに硬くなっているため、被洗浄物から汚れを剥離させる能力が高くなっている。これにより、ドライアイススノー洗浄装置の洗浄能力を向上することができる。
【0085】
本実施形態に係るドライアイススノー洗浄装置において、混合部380以外の構成を実施例1に係るドライアイススノー洗浄装置と同様にして、実験例1と同様の実験をした結果、スチール缶の塗料が除去された面積が165mm
2であった。なお、実施例1に係るドライアイススノー洗浄装置の混合部180は、横断面にて、液化炭酸ガス管120の中心軸が噴射用ガス管160の中心軸に対して偏心していない。この実験結果から、本実施形態に係るドライアイススノー洗浄装置は、高い洗浄能力を有することが確認できた。
【0086】
上記の各実施形態の構成において、組み合わせ可能な構成を適宜組み合わせてもよい。上記のドライアイススノー洗浄装置は、樹脂加工製品、ゴム製品、電子機器、ガラス製品、印刷機器、プリンテッドエレクトロニクス分野の部品または装置などに付着した、バリ、油(有機物)、パーティクル(粉)、スケール、錆(酸化膜)、離型剤、接着剤などの除去、および、グラファイト(炭素)製品などの研磨加工に対して、有効な洗浄加工能力を有している。
【0087】
なお、今回開示した上記実施形態はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。