特許第6338519号(P6338519)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6338519
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】可搬式液化天然ガス供給設備
(51)【国際特許分類】
   F17C 9/02 20060101AFI20180528BHJP
【FI】
   F17C9/02
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-251489(P2014-251489)
(22)【出願日】2014年12月12日
(65)【公開番号】特開2016-114113(P2016-114113A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2017年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】502450631
【氏名又は名称】エア・ウォーター・プラントエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109472
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 直之
(72)【発明者】
【氏名】山内 樹
(72)【発明者】
【氏名】前田 卓
(72)【発明者】
【氏名】河野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】大岡 靖典
【審査官】 吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−105451(JP,A)
【文献】 特開2012−067787(JP,A)
【文献】 特開平06−117599(JP,A)
【文献】 特開2013−160330(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 9/02
F17C 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯留タンクから供給を受けた液化天然ガスを気化して天然ガスを得る気化手段と、
上記気化手段で気化された上記天然ガスを一時的に貯留するバッファタンクと、
上記バッファタンクに一時的に貯留された上記天然ガスを天然ガス使用設備に対して供給するために減圧する減圧手段と、
上記バッファタンクに一時的に貯留された上記天然ガスの一部を加圧ポンプで加圧して上記貯留タンクに戻すことにより、上記貯留タンクに対して上記液化天然ガスを取り出すときの圧力を付与するための加圧手段と、
上記気化手段、上記バッファタンク、上記減圧手段および上記加圧手段を搬送可能なユニットにするユニット手段とを備え
さらに、上記貯留タンクから取り出された上記液化天然ガスの供給を受け入れる受入ルートと、上記加圧手段で加圧された上記天然ガスを上記貯留タンクに戻すために送り出す送出ルートの組が、それぞれ別の貯留タンクに対応するよう、複数設けられている
ことを特徴とする可搬式液化天然ガス供給設備。
【請求項2】
上記加圧手段は、上記加圧ポンプで加圧された上記天然ガスを必要な圧力で蓄える蓄圧器を含む
請求項1記載の可搬式液化天然ガス供給設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化天然ガスを蒸発気化させ、ガス状として需要者に供給するための可搬式液化天然ガス供給設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
天然ガスは、天然に存在する化石燃料であり、メタンを主成分とした炭化水素ガスである。上記天然ガスは、主として工業用や発電用のガス燃料に用いられ、産業用の用途も増加する傾向にある。最近は、埋蔵残存量に不安のある重油や灯油に替わって、天然ガスの需要が増加している。
【0003】
液化天然ガス(以下「LNG」という)は、天然ガスを輸送したり貯蔵したりすることを目的として、上記天然ガスを冷却して液化したものである。
【0004】
北米や中国など、天然ガスの産出が見込まれる大陸においては一般に、ガス状の天然ガスをそのままパイプラインを用いて運搬し供給する。近隣地域での産出が少ない日本やアジア諸国などでは、天然ガスを液化したLNGとして運搬し貯蔵することが行われる。
【0005】
上記LNGの運搬と貯蔵は、一般的につぎのように行われる。まず、LNGをタンカーなどで海上輸送し、LNG受入基地(「一次基地」ともいう)へ陸揚げする。その後、LNG用のタンクローリによって使用場所の近辺に設置したLNGサテライト設備(「サテライト基地」ともいう)まで陸上運搬される。
【0006】
上記LNGサテライト設備は、LNGの貯蔵と供給を兼ね備えた設備である。上記LNGサテライト設備は一般に、貯槽、加圧蒸発器、気化器などを備えて構成される。
【0007】
このようなLNGサテライト設備に関する先行技術文献として、下記の特許文献1および特許文献2が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2013−92184号公報
【特許文献2】特開2007−85403号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
〔設置工事に関する問題〕
上述したLNGサテライト設備を設置する際、配管や機器の位置合わせを精度よく行うことが要求される。上記配管としては、液状のLNGを貯槽から気化器に移送する配管、気化器で気化したガス状の天然ガスを供給する配管などがある。これらの配管には、圧力計や流量計などの機器を介在させる必要がある。これらの配管や機器は、ガス漏れを起こさない状態に設置しなければならない。このため、上記配管や機器は、高さ方向や水平方向における位置合わせ精度を高くして溶接することが要求される。
【0010】
ところが、上記LNGサテライト設備の設置工事は、一般に屋外での作業となる。したがって溶接作業も天候の影響を受け、精度を確保しながら作業するのが困難である。組立後の耐圧検査や気密検査なども同様である。このように、上記LNGサテライト設備の設置工事には大変な手間がかかるという問題がある。
【0011】
〔特許文献1〕
上記特許文献1では、LNGサテライト設備を設置する工事において、屋外での作業を減らす工夫がなされている。
すなわち上記特許文献1には、つぎの開示がある。
〔0015〕図1および図2に示すように、本実施形態のLNGサテライト設備Xは、液化天然ガス(LNG)を貯蔵する貯槽ユニット1と、LNGを気化する気化ユニット3と、配管ユニット2とを備えて構成されており、屋外の据え付け場所に設置固定されたものである。
〔0018〕配管ユニット2は、貯槽ユニット1からのLNGを気化ユニット3に移送するためのLNG用配管21と、気化ユニット3から導出されるガス状の天然ガスを通すガス用配管22とを備えて構成されている。
〔0020〕本実施形態において、配管ユニット2は、例えば図2図4によく表れているように、下段部23Aおよび上段部23Bを有する2段式の架台23を備えており、上記したLNG用配管21およびガス用配管22は、架台23に組み込まれている。より詳細には、LNG用配管21は、架台23の下段部23Aに配置され、ガス用配管22は架台23の上段部23Bに配置されている。
〔0021〕架台23の下段部23Aと上段部23Bの間には、板材231が設けられている。
【0012】
上記特許文献1記載の技術では、設置時間をある程度短縮できるものの、依然として組立作業の多くを設置現場の屋外で行う必要がある。したがって、設置工事に手間がかかるという問題は依然として解決されていない。
【0013】
〔設備規模に関する問題〕
LNGサテライト設備は、全て同程度の規模ではない。つまり、ユーザーによる継続的なLNGの必要量に応じ、大規模のものや中小規模のものが設置される。具体的には、貯槽や供給能力を、ユーザーに応じた規模となるよう設計する。
【0014】
このとき、貯槽の貯蔵量が3t以上の規模になると、耐震設計とすることが義務づけられている。したがって、この規模のLNGサテライト設備は、基礎部分および各パーツなどに耐震設計のものを採用しなければならない。
【0015】
貯槽の貯蔵量が3t未満ですむ中小規模のユーザーは、耐震設計の義務はなくなる。しかしながら、そのような中小規模のLNGサテライト設備であっても、基本的には貯蔵量3t以上の規模に準じた設計や構成が採用される。つまり、それだけ設置工事に手間がかかるのである。
【0016】
〔特許文献2〕
上記特許文献2は、天然ガス小規模貯蔵・供給施設であるサテライト基地が開示されている。
すなわち上記特許文献2には、つぎの開示がある。
〔0017〕大型LNG貯蔵タンク32のLNGは、後述するバルクコンテナ10に充填される。LNGが充填されたバルクコンテナ10は荷揚げ桟橋に運ばれ、コンテナクレーンによってバージ船(汎用船)18に積載される。一隻のバージ船18には数個から数十個のバルクコンテナ10が積み込まれ、荷崩れ等を防止するために一般的に用いられているコンテナ固定器具(図示せず)によって連結された状態で船体に固定される。積み込みが完了した後に、バージ船18はバルクコンテナ10を、サテライト基地24の最寄りの貨物港22(受け入れ港)まで海上輸送する。貨物港22では積み込み作業と逆の手順で、コンテナ固定器具の解除した後に、コンテナクレーンを用いてバルクコンテナ10を荷下ろしする。貨物港22に荷下ろしされたバルクコンテナ10は、コンテナ輸送に用いられる一般的なトレーラー20に乗せ代えられて、液化天然ガス小規模貯蔵・供給施設であるサテライト基地24まで輸送される。
〔0019〕ここでバルクコンテナ10は、図2に示すように、LNGを超低温に保持するための断熱構造を有する略楕円柱形上のバルク容器16を、鉄骨材で直方体形状に形成したラーメン構造のコンテナ本体34の内部に寝かせた状態で固定したものである。このバルク容器16は、従来のタンクローリー車のタンク部分(バルク容器)と同様の構造である。図からもわかるように、コンテナ本体34には鉄骨材の筋交いおよび垂直材が補強のために取り付けられている。バルク容器16はコンテナ本体34に内包されているが、その全体が覆われているわけではないので外部からその状態を観察することができる。その一方、バルク容器16がコンテナ本体によって保護されているので、バルクコンテナ10をトレーラー20に搭載して輸送している際に、トレーラー20が万一交通事故等にあったとしても、従来のバルク容器がむき出しになった状態のタンクローリー車と比べてバルク容器16が破損する危険性を少なくすることができる。
〔0020〕輸送されたバルクコンテナ10は、そのままサテライト基地24に一時的に設置される(図1参照)。設置されたバルクコンテナ10は、従来の各サテライト基地に建設されていたLNGタンク6を兼用するものである。したがって、従来のように各サテライト基地にLNGタンクを建設する必要がなくなり、サテライト基地の設備及び運転費用を低減することができる。
〔0021〕バルクコンテナのサテライト基地への設置は、トレーラーの荷台から下ろしたバルクコンテナ10をサテライト基地に設けた基礎台の上に載置して、バルクコンテナのみをLNGタンクとして使用もよいし(図示せず)、図1に示すようにトレーラーの台車部分42全体を切り離し、車輪36と支持台38を用いてサテライト基地24にこれを固定し、トレーラーの台車部分42とバルクコンテナ10を一体的にLNGタンクとして使用してもよい。
〔0022〕設置されたバルクコンテナ10はガス管26に接続され、バルク容器16内に貯蔵されたLNGはガス管26を通して加圧蒸発器およびLNG気化器8で気化された後に、バッファタンク9を介して需要家14の天然ガス利用設備28に供給される。
【0017】
ところが、特許文献2に開示されたサテライト基地24では、加圧蒸発器、LNG気化器8およびバッファタンク9等の設備を設置しなければならない。このようなサテライト基地24も特許文献1と同様に、基本的には貯蔵量3t以上の規模に準じた設計や構成が採用される。したがって、設置工事に手間がかかるという問題は依然として解決しない。
【0018】
〔目的〕
本発明は、上記の課題を解決するためつぎの目的をもってなされたものである。
設置工事の手間を大幅に簡略化した可搬式液化天然ガス供給設備を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
請求項1記載の可搬式液化天然ガス供給設備は、上記目的を達成するため、つぎの構成を採用した。
貯留タンクから供給を受けた液化天然ガスを気化して天然ガスを得る気化手段と、
上記気化手段で気化された上記天然ガスを一時的に貯留するバッファタンクと、
上記バッファタンクに一時的に貯留された上記天然ガスを天然ガス使用設備に対して供給するために減圧する減圧手段と、
上記バッファタンクに一時的に貯留された上記天然ガスの一部を加圧ポンプで加圧して上記貯留タンクに戻すことにより、上記貯留タンクに対して上記液化天然ガスを取り出すときの圧力を付与するための加圧手段と、
上記気化手段、上記バッファタンク、上記減圧手段および上記加圧手段を搬送可能なユニットにするユニット手段とを備え
さらに、上記貯留タンクから取り出された上記液化天然ガスの供給を受け入れる受入ルートと、上記加圧手段で加圧された上記天然ガスを上記貯留タンクに戻すために送り出す送出ルートの組が、それぞれ別の貯留タンクに対応するよう、複数設けられている。
【0021】
請求項記載の可搬式液化天然ガス供給設備は、請求項1記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記加圧手段は、上記加圧ポンプで加圧された上記天然ガスを必要な圧力で蓄える蓄圧器を含む。
【発明の効果】
【0023】
請求項1記載の発明は、上記気化手段、上記バッファタンク、上記減圧手段および上記加圧手段を搬送可能なユニットにするユニット手段を備えている。
このように、液化天然ガス供給設備をひとつのユニットにすることで、配管や機器の取り付けといった作業を環境のよい屋内で行なってユニットを作りあげ、それをユニットごと設置現場まで搬送して設置することができる。設置現場での作業は、べた基礎のうえにユニットを設置すればほとんど済んでしまう。つまり、設置現場において、配管や機器の取り付けといった作業は、屋外ですることがなくなり、天候などに左右されることがない。このように、本発明の可搬式液化天然ガス供給設備は、設置工事の手間を大幅に簡略化することができるのである。
【0024】
請求項1記載の発明はまた、上記ユニットに加圧手段を備えるため、LNGの補充や充填の効率がよい。つまり、加圧手段がなければ、貯留タンクからのLNGの取り出しは、貯留タンクの内圧だけに頼ることになる。そうすると、つぎの2つの問題が発生する。
第1は、貯留タンク内のLNGがなくなる前に取り出せなくなって、つぎのLNGを補充しなければならなくなることである。本発明は加圧手段を備えているので、貯留タンク内のLNGがなくなるまで取り出してから、つぎのLNGを補充すればよい。
第2は、貯留タンク内からLNGを取り出す内圧が、環境温度の影響を受けることである。たとえば、夏場は貯留タンク内からLNGを取り出しやすく、冬場は貯留タンク内からLNGを取り出しにくい。本発明は加圧手段を備えているので、貯留タンク内のLNGを環境温度の影響をうけずに安定して取り出すことができる。
【0025】
請求項1記載の発明はまた、設置した液化天然ガス供給設備に対し、たとえばタンクコンテナのような可搬式の貯留タンクを利用して運搬してきたLNGを供給することができる。
【0026】
請求項記載の発明は、上記貯留タンクから取り出された上記液化天然ガスの供給を受け入れる受入ルートと、上記加圧手段で加圧された上記天然ガスを上記貯留タンクに戻すために送り出す送出ルートの組が、それぞれ別の貯留タンクに対応するよう、複数設けられている。
このため、たとえばつぎのような運用が可能となる。LNGを供給するときは、まず1基目の可搬式の貯留タンクを第1の受入ルートと第1の送出ルートに接続する。1基目の貯留タンクが残り少なくなったとき、2基目の可搬式の貯留タンクを運搬してきて、第2の受入ルートと第2の送出ルートに接続し、LNGの供給を開始する。空になった1基目の貯留タンクは接続を解除し、一次基地に戻ってLNGを補充する。そして、2基目の貯留タンクが残り少なくなったとき、1基目の可搬式の貯留タンクを運搬してきて、第1の受入ルートと第1の送出ルートに接続し、再びLNGの供給を開始する。このように運用することにより、貯留タンクの交換のせいでLNGの供給が一時的に停止するという不都合を防止できる。
【0027】
請求項記載の発明は、上記加圧手段は、上記加圧ポンプで加圧された上記天然ガスを必要な圧力で蓄える蓄圧器を含む。
上記蓄圧器は、加圧ポンプから吐出される天然ガスの吐出圧力が脈動するのを吸収する。これにより、貯留タンクに対して常に安定した適正な圧力を付与することができ、貯留タンク内のLNGを環境温度等の影響をうけずに安定して取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の第1実施形態の可搬式液化天然ガス供給設備の主として外観構造を説明する図である。
図2】上記第1実施形態の主として配管構造を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
つぎに、本発明を実施するための形態を説明する。
図1および図2は、本発明が適用された可搬式液化天然ガス供給設備を示す第1実施形態である。図1は主として外観構造を示す平面図である。図2は主として配管構造を示す。
【0030】
〔全体構成〕
本実施形態の可搬式液化天然ガス供給設備100は、気化手段2と、バッファタンク6と、減圧手段4と、加圧手段3と、ユニット手段5とを備えて構成されている。この可搬式液化天然ガス供給設備100では、タンクコンテナ12に搭載された貯留タンク1a,1bから液化天然ガスの供給を受け、それを気化して天然ガス使用設備に供給する。
【0031】
〔貯留タンク〕
上記貯留タンク1a,1bは、コンテナ台13に搭載され、搬送可能なタンクコンテナ12を構成している。上記貯留タンク1a,1bは、液化天然ガスを貯留する。上記貯留タンク1a,1bは、低温液化ガスを貯留する真空断熱タイプのものを使うことができる。
【0032】
図示した例では、上記可搬式液化天然ガス供給設備100に、2基の貯留タンク1a,1bを接続した状態を示している。つまり、上記可搬式液化天然ガス供給設備100は、第1の貯留タンク1aから液化天然ガスの供給を受けているあいだ、第2の貯留タンク1bを一次基地まで搬送して液化天然ガスを充填してくることができる。第1の貯留タンク1aが空になると、第2の貯留タンク1bから液化天然ガスの供給を開始し、第1の貯留タンク1aを一次基地まで搬送して液化天然ガスを充填してくることができる。このように、第1の貯留タンク1aと第2の貯留タンク1bを交互に使い、一次基地の液化天然ガスを可搬式液化天然ガス供給設備100に連続して供給することができる。
【0033】
上記貯留タンク1a,1bには、貯留タンク1a,1bの内部に貯留された液化天然ガスを取り出す液体取出路33a,33bと液体取出口23a,23bが設けられている。また、上記貯留タンク1a,1bには、貯留タンク1a,1bの内部に、上記加圧手段3で加圧された天然ガスを戻して貯留タンク1a,1bの内圧を確保するための加圧路34a,34bと加圧口24a,24bが設けられている。上記加圧手段3による貯留タンク1a,1b内の加圧により、液体取出路33a,33bからの液化天然ガスの取出しが行われる。また、上記貯留タンク1a,1bには、放出口11が設けられている。
【0034】
この例では、上記タンクコンテナ12は、長さ9122mm、縦横がそれぞれ2490mmの横型である。貯留タンク1a,1bの容量は約10tである。内圧はおよそ0.3〜0.4MPaに設定される。
【0035】
〔気化手段〕
上記気化手段2は、貯留タンク1a,1bから供給を受けた液化天然ガスを気化して天然ガスを得る。
【0036】
本実施形態では、上記気化手段2は温水槽18と熱交換部19とから構成される。上記温水槽18には、温水導入路18aから温水が導入され満たされる。温水槽18内には、熱交換部19が配置されている。上記熱交換部19は、温水槽18の内部に満たされた温水と接触する。上記熱交換部19には、貯留タンク1a,1bから供給を受けて液体路19aを通った液化天然ガスが通される。これにより、温水槽18に満たされた温水と、熱交換部19を通る液化天然ガスとの間で熱交換が行われ、液化天然ガスが気化されて天然ガスとなる。上記熱交換部19から出てきた天然ガスはガス路19bを通ってバッファタンク6に導入される。上記熱交換による冷却で水となった温水槽18の温水は、排水路18bから排出される。
【0037】
上記気化手段2で発生させる天然ガスの発生圧力は、例えば0.3MPa程度である。
【0038】
〔バッファタンク〕
上記バッファタンク6は、上記気化手段2で気化された上記天然ガスを一時的に貯留する。
【0039】
上記バッファタンク6に貯留された天然ガスの大部分は、供給路30を通って減圧手段4に供給される。また、上記バッファタンク6に貯留された天然ガスの一部は、ガス取出路31から取り出され、加圧手段3に導入される。
【0040】
上記バッファタンク6に貯留する天然ガスの貯留圧力は、例えば0.3MPa程度である。
【0041】
〔減圧手段〕
上記減圧手段4は、上記バッファタンク6に一時的に貯留された上記天然ガスを天然ガス使用設備に対して供給するために減圧する。
【0042】
上記減圧手段4は、上記供給路30に設けられた減圧弁を含んで構成される。上記減圧手段4を介して天然ガス使用設備に対して供給する天然ガスの供給圧力は、例えば0.1MPa程度に設定される。
【0043】
〔加圧手段〕
上記加圧手段3は、上記バッファタンク6に一時的に貯留された上記天然ガスの一部を加圧ポンプ7a,7bで加圧して上記貯留タンク1a,1bに戻すことにより、上記貯留タンク1a,1bに対して上記液化天然ガスを取り出すときの圧力を付与するためのものである。
【0044】
上記加圧手段3は、この例では2台の加圧ポンプ7a,7bが並列に配置されている。上記加圧手段3は、上記2台の加圧ポンプ7a,7bで加圧された上記天然ガスを必要な圧力で蓄える蓄圧器8を含む。上記2台の加圧ポンプ7a,7bとしては、たとえばダイヤフラム式のポンプを用いることができる。可燃性の気体である天然ガスを安全に加圧できるからである。上記蓄圧器8は、ダイヤフラム式の加圧ポンプ7a,7bから吐出される天然ガスの吐出圧力が脈動するのを吸収する。これにより、貯留タンク1a,1bに対して安定した加圧力で天然ガスを戻し、貯留タンク1a,1b内の圧力が一定の範囲内にすることができる。これにより、貯留タンク1a,1b内の液化天然ガスを安定した状態で取り出すことができる。
【0045】
上記加圧手段3によって天然ガスを戻すことにより、加圧された貯留タンク1a,1bの内部圧力を例えば0.3〜0.4MPaに設定することができる。
【0046】
〔貯留タンクとの接続〕
【0047】
本実施形態は、上記貯留タンク1a,1bから取り出された上記液化天然ガスの供給を受け入れる受入ルート21a,21bと、上記加圧手段3で加圧された上記天然ガスを上記貯留タンク1a,1bに戻すために送り出す送出ルート22a,22bの組を、複数備えている。図示した例は、受入ルート21a,21bと送出ルート22a,22bを2組設けている。この数に合わせて2基の貯留タンク1a,1bを配置できるのである。
【0048】
上記受入ルート21a,21bは、液化天然ガスを受け入れる受入口14a,14bと、受け入れた液化天然ガスを上述した液体路19aに送るための受入路15a,15bとから構成される。上記液体路19aに送られた液化天然ガスは、気化手段2の熱交換部19に導入される。
【0049】
上記受入口14a,14bは、貯留タンク1a,1bの液体取出口23a,23bとフレキシブルホース25bで接続される。これにより、貯留タンク1a,1b内の液化天然ガスが、液体取出路33a,33b、液体取出口23a,23b、フレキシブルホース25b、受入口14a,14b、受入路15a,15b、液体路19aを通り、気化手段2の熱交換部19に導入される。
【0050】
上記送出ルート22a,22bは、加圧手段3の蓄圧器8に連通して天然ガスを送出するための送出路17a,17bおよび送出口16a,16bとから構成される。
【0051】
上記送出口16a,16bは、貯留タンク1a,1bの加圧口24a,24bとフレキシブルホース25aで接続される。これにより、加圧手段3の蓄圧器8に蓄えられた天然ガスは、送出路17a,17b、送出口16a,16b、フレキシブルホース25a、加圧口24a,24b、加圧路34a,34bを通って貯留タンク1a,1b内に導入される。
【0052】
〔パージガス〕
本実施形態は、上記フレキシブルホース25a,25b内をパージするためのパージガス用のパージガスボンベ27と、パージガスボンベ27から取り出したパージガスを一時的に貯留するバッファタンク26を備えている。上記バッファタンク26から送り出されるパージガスは、パージ路28から、送出路17a,17b、送出口16a,16b、フレキシブルホース25aを通って加圧口24a,24bをパージする。また、上記バッファタンク26から送り出されるパージガスは、パージ路28から、受入路15a,15b、受入口14a,14b、フレキシブルホース25bを通って液体取出口23a,23bをパージする。これにより、フレキシブルホース25a,25bを安全に取り外すことができる。上記パージガスとしてたとえば窒素ガスを用いることができる。上記パージガスの一部は、弁の開閉動作などの計装用としても用いられる。
【0053】
〔ユニット手段〕
上記ユニット手段5は、上記気化手段2、上記バッファタンク6、上記減圧手段4および上記加圧手段3を搬送可能なユニットにする。
【0054】
上記ユニット手段5は、この例では、上記気化手段2、バッファタンク6、上記加圧手段3、上記減圧手段4およびパージガスボンベ27等が取り付けられる長方形の基台である。上記ユニット手段5上に、上記気化手段2、バッファタンク6およびパージガスボンベ27等が搭載されて固定される。必要な配管と上記加圧手段3および上記減圧手段4等の機器が接続される。
【0055】
〔運用〕
本実施形態の可搬式液化天然ガス供給設備は、気化手段2、バッファタンク6、加圧手段3、減圧手段4を、ひとつのユニットとして構成している。このユニットを工場などの屋内で作製し、完成したユニットをそのままユーザーの敷地まで搬送して設置する。
【0056】
本実施形態の可搬式液化天然ガス供給設備は、たとえばつぎのようにして運用される。
一次基地でタンクコンテナ12にLNGを充填し、このタンクコンテナ12を搬送して、LNGを各地の可搬式液化天然ガス供給設備100まで陸上輸送、または陸上輸送と鉄道を併用して輸送する。輸送されたタンクコンテナ12をフレキシブルホース25a,25bで可搬式液化天然ガス供給設備100に接続し、液化天然ガスを可搬式液化天然ガス供給設備100に供給する。可搬式液化天然ガス供給設備100において、液化天然ガスを気化して利用設備に供給する。
【0057】
上記可搬式液化天然ガス供給設備100は、第1の貯留タンク1aから液化天然ガスの供給を受けているあいだ、第2の貯留タンク1bを一次基地まで搬送して液化天然ガスを充填してくる。第1の貯留タンク1aが空になると、第2の貯留タンク1bから液化天然ガスの供給を開始し、第1の貯留タンク1aを一次基地まで搬送して液化天然ガスを充填してくる。第1の貯留タンク1aと第2の貯留タンク1bを交互に使い、一次基地の液化天然ガスを可搬式液化天然ガス供給設備100に連続して供給する。
【0058】
本実施形態は、バッファタンク6とダイヤフラム式の加圧ポンプ7a,7bを用いる事で、安全な圧力調整が可能となる。また貯蔵側を複数の分離・可搬式のタンクコンテナ12とすることで、LNGユーザーが、貯槽残量を気にすることなく、継続的に使用できる。つまり、LNGの消費による貯槽内の残量が、LNGを用いたユーザーの事業活動に影響を及ぼす事がない。
【0059】
〔実施形態の効果〕
本実施形態は、つぎの効果を奏する。
【0060】
本実施形態は、上記気化手段2、上記バッファタンク6、上記減圧手段4および上記加圧手段3を搬送可能なユニットにするユニット手段5を備えている。
このように、液化天然ガス供給設備をひとつのユニットにすることで、配管や機器の取り付けといった作業を環境のよい屋内で行なってユニットを作りあげ、それをユニットごと設置現場まで搬送して設置することができる。設置現場での作業は、べた基礎のうえにユニットを設置すればほとんど済んでしまう。つまり、設置現場において、配管や機器の取り付けといった作業は、屋外ですることがなくなり、天候などに左右されることがない。このように、本発明の可搬式液化天然ガス供給設備100は、設置工事の手間を大幅に簡略化することができるのである。
【0061】
本実施形態はまた、上記ユニットに加圧手段3を備えるため、LNGの補充や充填の効率がよい。つまり、加圧手段3がなければ、貯留タンク1a,1bからのLNGの取り出しは、貯留タンク1a,1bの内圧だけに頼ることになる。そうすると、つぎの2つの問題が発生する。
第1は、貯留タンク1a,1b内のLNGがなくなる前に取り出せなくなって、つぎのLNGを補充しなければならなくなることである。本発明は加圧手段3を備えているので、貯留タンク1a,1b内のLNGがなくなるまで取り出してから、つぎのLNGを補充すればよい。
第2は、貯留タンク1a,1b内からLNGを取り出す内圧が、環境温度の影響を受けることである。たとえば、夏場は貯留タンク内からLNGを取り出しやすく、冬場は貯留タンク1a,1b内からLNGを取り出しにくい。本発明は加圧手段3を備えているので、貯留タンク1a,1b内のLNGを環境温度の影響をうけずに安定して取り出すことができる。
【0062】
本実施形態はまた、設置した液化天然ガス供給設備に対し、たとえばタンクコンテナ12のような可搬式の貯留タンク1a,1bを利用して運搬してきたLNGを供給することができる。
【0063】
本実施形態は、上記貯留タンク1a,1bから取り出された上記液化天然ガスの供給を受け入れる受入ルート21a,21bと、上記加圧手段3で加圧された上記天然ガスを上記貯留タンク1a,1bに戻すために送り出す送出ルート22a,22bの組が、それぞれ別の貯留タンク1a,1bに対応するよう、複数設けられている。
このため、たとえばつぎのような運用が可能となる。LNGを供給するときは、まず1基目の可搬式の貯留タンク1aを第1の受入ルート21aと第1の送出ルート22aに接続する。1基目の貯留タンク1aが残り少なくなったとき、2基目の可搬式の貯留タンク1bを運搬してきて、第2の受入ルート21bと第2の送出ルート22bに接続し、LNGの供給を開始する。空になった1基目の貯留タンク1aは接続を解除し、一次基地に戻ってLNGを補充する。そして、2基目の貯留タンク1bが残り少なくなったとき、1基目の可搬式の貯留タンク1aを運搬してきて、第1の受入ルート21aと第1の送出ルート22aに接続し、再びLNGの供給を開始する。このように運用することにより、貯留タンク1a,1bの交換のせいでLNGの供給が一時的に停止するという不都合を防止できる。
【0064】
本実施形態は、上記加圧手段3は、上記加圧ポンプ7a,7bで加圧された上記天然ガスを必要な圧力で蓄える蓄圧器8を含む。
上記蓄圧器8は、加圧ポンプ7a,7bから吐出される天然ガスの吐出圧力が脈動するのを吸収する。これにより、貯留タンク1a,1bに対して常に安定した適正な圧力を付与することができ、貯留タンク1a,1b内のLNGを環境温度等の影響をうけずに安定して取り出すことができる。
【0065】
〔変形例〕
以上は本発明の特に好ましい実施形態について説明したが、本発明は図示した実施形態に限定する趣旨ではなく、各種の態様に変形して実施することができ、本発明は各種の変形例を包含する趣旨である。
【符号の説明】
【0066】
1a:第1の貯留タンク
1b:第2の貯留タンク
2:気化手段
3:加圧手段
4:減圧手段
5:ユニット手段
6:バッファタンク
7a:加圧ポンプ
7b:加圧ポンプ
8:蓄圧器
11:放出口
12:タンクコンテナ
13:コンテナ台
14a:受入口
14b:受入口
15a:受入路
15b:受入路
16a:送出口
16b:送出口
17a:送出路
17b:送出路
18:温水槽
18a:温水導入路
18b:排水路
19:熱交換部
19a:液体路
19b:ガス路
21a:受入ルート
21b:受入ルート
22a:送出ルート
22b:送出ルート
23a:液体取出口
23b:液体取出口
24a:加圧口
24b:加圧口
25a:フレキシブルホース
25b:フレキシブルホース
26:バッファタンク
27:パージガスボンベ
28:パージ路
30:供給路
31:ガス取出路
33a:液体取出路
33b:液体取出路
34a:加圧路
34b:加圧路
100:可搬式液化天然ガス供給設備
図1
図2