特許第6338521号(P6338521)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6338521
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】アイソレータ
(51)【国際特許分類】
   B01L 1/00 20060101AFI20180528BHJP
   B25J 21/02 20060101ALI20180528BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20180528BHJP
【FI】
   B01L1/00 D
   B25J21/02
   C12M1/00 K
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-257063(P2014-257063)
(22)【出願日】2014年12月19日
(65)【公開番号】特開2016-117003(P2016-117003A)
(43)【公開日】2016年6月30日
【審査請求日】2017年2月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】591066465
【氏名又は名称】日本エアーテック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】399051858
【氏名又は名称】株式会社 ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100104547
【弁理士】
【氏名又は名称】栗林 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100097995
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 悦一
(72)【発明者】
【氏名】後藤 浩
(72)【発明者】
【氏名】木下 俊明
(72)【発明者】
【氏名】平沢 真也
(72)【発明者】
【氏名】畠 賢一郎
(72)【発明者】
【氏名】森 由紀夫
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 誠
【審査官】 中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−226048(JP,A)
【文献】 特開平10−267338(JP,A)
【文献】 特開平08−247510(JP,A)
【文献】 特開2015−116639(JP,A)
【文献】 特開2011−200798(JP,A)
【文献】 特開2010−051351(JP,A)
【文献】 米国特許第04549472(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0113017(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/20
B01L 1/00−04
B08B 15/00−02
B25H 1/20
B25J 21/00−02
C12M 1/00
F24F 7/00−10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
清浄空気が供給され、かつ外部に対して気密性を有する作業室と、この作業室内の空気を吸い込む第1吸込口とを備えたアイソレータにおいて、
前記作業室に設けられて、清浄空気が供給される作業エリアと、
この作業エリアに設けられて、当該作業エリア内の空気および前記作業室から前記作業エリアに流入する空気を吸い込む第2吸込口と、
前記第1吸込口および前記第2吸込口から吸い込まれた空気を前記作業室および前記作業エリアに循環させる循環流路と、
この循環流路を流れる空気を清浄する空気清浄手段とを備え、
前記空気清浄手段は、前記作業室の天井部に設けられた第1空気清浄部と、
前記作業エリアの上方に位置する天井部に設けられた第2空気清浄部とを備え、
前記第2空気清浄部が前記第1空気清浄部より低圧損となっていることを特徴とするアイソレータ。
【請求項2】
前記作業エリアの上方に位置する天井部に、当該天井部から前記作業エリアの直上まで延び、前記第2空気清浄部からの清浄空気を前記作業エリアに吹き出す吹出しダクトが設けられていることを特徴とする請求項1に記載のアイソレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療、再生医療、製薬などの産業分野において使用されるアイソレータに関する。
【背景技術】
【0002】
アイソレータは、その内部に無菌環境にある作業室を有し、作業室において無菌環境であることが要求される作業、たとえば細胞培養などの生体由来材料を対象とする作業を行うためのものである。ここで、無菌環境とは、作業室で行われる作業に必要な物質以外の混入を回避するために限りなく無塵無菌に近い環境をいう。
【0003】
このようなアイソレータの一例として特許文献1に記載のものが知られている。
このアイソレータでは、その天井部に気体供給室が設けられており、この気体供給室内に複数の給気ファンが設置されている。これらの給気ファンは、圧力センサの検出結果に基づいてアイソレータ本体を所定の陽圧に維持するようになっている。給気ファンが設置された気体供給室の下面側の、アイソレータの内部への気体流入部に、HEPAフィルタが取り付けられており、給気ファンによって外部からアイソレータ内に送られる空気は、このHEPAフィルタを通過して浄化されるようになっている。
また、アイソレータの下部側壁に、気体排出室が設けられ、アイソレータの内部から気体排出室へ気体が流出する部分にHEPAフィルタが取り付けられている。そして、アイソレータ内から気体排出室に排出される気体は、このHEPAフィルタによって浄化される。
また、気体供給室には、エア供給通路が接続されており、給気ファンの作動によって、このエア供給通路から前記HEPAフィルタを介してアイソレータ内に外部のエアを導入することができる。また、気体排出室には、エア排出通路が接続されており、前記給気ファンの作動によって、アイソレータ本体内に導入されたエアをこのエア排出通路から外部に排出することができる。
【0004】
また、従来のアイソレータの他の例を図2を参照して説明する。
図2に示すように、アイソレータは、その内部に作業室1を備えている。この作業室1は空気供給口2と空気排出口3とを備え、作業室1内には空気供給口2から空気が供給され、空気排出口(第1吸込口)3から作業室1内の空気が排出されるようになっている。なお、図2において矢印で空気の流れを示している。
また、作業室1内の無菌環境を確保するために、空気供給口2より下方の天井部にHEPAフィルタなどの微粒子捕集用のフィルタ4が設けられ、このフィルタ4を通して空気が作業室1に供給されるようになっている。
【0005】
外気は、アイソレータの筐体に設けられた吸気ファン5によってアイソレータ内に吸気されるが、この外気からはHEPAフィルタなどの微粒子捕集用のフィルタ6によって塵等の微粒子が除去されるようになっている。
また、アイソレータの筐体には排気ファン7が吸気ファン5と対向して設けられており、アイソレータ内の空気は、HEPAフィルタなどの微粒子捕集用のフィルタ8によって塵等の微粒子が除去されたうえで、外部に排気されるようになっている。
【0006】
また、アイソレータ内には、循環流路9が設けられており、空気排出口3から排出された空気は空気供給口2の上方に設けられた循環ファン10によって循環し、この循環した空気の一部が、フィルタ6によって微粒子が除去された外気とともにフィルタ4を通して作業室1に供給され、循環した空気の残りは排気ファン7によって外部に排気されるようになっている。
また、アイソレータは、グローブ11や多機能ロボット12を備えており、作業室1での作業は、作業者がグローブ11に外部から腕を挿入して行ったり、多機能ロボット12を使用して行ったりしている。
【0007】
このようなアイソレータを使用する場合には、目的に応じて内部の空気圧を調整する。
例えば、無菌アイソレータとして使用するときには、内部を外部の空気圧より高圧(陽圧)とすることで、空気は内部から外部へ流れるため、筐体の気密構造に破損が生じた場合であっても、外部から浮遊菌等が内部に侵入しないようにしている。
一方、封じ込めアイソレータとして使用するときには、内部を外部の空気圧より低圧(陰圧という)として使用することで、空気は外部から内部へ流れるため、筐体の気密構造に破損が生じた場合であっても、内部の化学物質等が外部環境を汚染することがないようにしている。
このような圧力の制御は、吸気ファン5および排気ファン7を制御することにより、行い、また、作業室1の無菌性は循環ファン10によって空気供給口2から吹き出された空気がフィルタ4を通って清浄化され、この清浄化された清浄空気が下方に流れて、空気排出口3から排出されることで維持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−51351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、再生医療に使用される皮膚、軟骨や角膜などの細胞加工品は人に移植されるが、この細胞加工は外因性の微生物汚染を防止するために重要区域、すなわちグレードAの清浄度空間でかつ無菌操作で行う必要がある。
一方、取り扱われる自己細胞由来の細胞加工品は必ずしも無菌ではないため加工操作により発生するエアロゾルにより重要区域、例えば前記アイソレータの作業室を汚染させる可能性がある。つまり、図2に示すように、アイソレータの作業室1内の所定の位置で細胞加工操作のために培養容器13を開放すると、ピペット操作や細胞加工操作により、この培養容器13から発生するエアロゾルが、作業室1を下方に向けて流れる空気によって拡散する可能性がある。
このため、同一設備(アイソレータ)で細胞加工操作を行うに毎に、予め定められたチェンジオーバー手順にしたがって除染、消毒を行い、相互汚染防止を図っている。
【0010】
ここで、チェンジオーバーとは、ある患者の細胞・組織を用いた加工工程が終了した後に、異なる患者の細胞・組織を用いる工程に切り替えることを意味する。
また、チェンジオーバー手順とは、ある患者の細胞加工作業時にエアロゾルや液滴が付着した可能性のある表面を除染・消毒する手順であり、室内や安全キャビネットの作業台等の環境、培養容器やピペット等の細胞に直接接触している器具、作業者の手袋等を一連の手順にしたがって除染・消毒することを意味する。
【0011】
ところが、従来のアイソレータを使用した場合、細胞加工操作(例えば培養液交換等)に要する時間は例えば5分程度であるのに対し、チェンジオーバー手順にしたがって、除染・消毒するには、現在のところ30分以上要している。
細胞加工の特徴として、多患者、小ロット(細胞)であることよりチェンジオーバー手順を頻繁に行う必要があり、実細胞加工操作時間に対し、チェンジオーバー手順に多大な時間がかかる問題があった。
【0012】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、作業室内でのエアロゾルの拡散を防止し、チェンジオーバー手順を大幅に短時間で行えるか、あるいは、殆ど行う必要がないアイソレータを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、本発明のアイソレータは、清浄空気が供給され、かつ外部に対して気密性を有する作業室と、この作業室内の空気を吸い込む第1吸込口とを備えたアイソレータにおいて、前記作業室に設けられて、清浄空気が供給される作業エリアと、この作業エリアに設けられて、当該作業エリア内の空気および前記作業室から前記作業エリアに流入する空気を吸い込む第2吸込口とを備えたことを特徴とする。
【0014】
本発明においては、作業室に搬入された培養容器を作業エリアにおいて開放した場合に、培養容器から発生するエアロゾルは作業エリアに供給される清浄空気と、作業室から作業エリアに流入する清浄空気の流れ(気流)に乗って、この清浄空気とともに第2吸入口に吸い込まれる。つまり、作業エリアは2種類の清浄空気の気流によって、封じ込めエリアとなるので、前記エアロゾルが作業エリアから作業室に流出して拡散することがない。また、作業エリアには、エアロゾルが付着するような壁やテーブルもないので、これらを除染する手間も必要ない、つまり、作業エリアを除染する必要がない。
したがって、作業室内でのエアロゾルの拡散を防止でき、チェンジオーバー手順も殆ど行う必要がない。
【0015】
本発明の前記構成において、前記第1吸込口および前記第2吸込口から吸い込まれた空気を前記作業室および前記作業エリアに循環させる循環流路と、この循環流路を流れる空気を清浄する空気清浄手段とを備えているのが好ましい。
【0016】
このような構成によれば、循環流路を流れる空気を清浄する空気清浄手段を備えているので、作業エリアで細胞加工中に発生する可能性があるエアロゾルを空気清浄手段によって除去して清浄化するとともに、作業室内の空気を同空気清浄手段によって清浄化したうえで、再び循環流路によって作業室および作業エリアに供給することができる。このため、作業室および作業エリアを常にグレードAの清浄度空間とすることができる。
【0017】
また、本発明の前記構成において、前記空気清浄手段は、前記作業室の天井部に設けられた第1空気清浄部と、前記作業エリアの上方に位置する天井部に設けられた第2空気清浄部とを備え、前記第2空気清浄部が前記第1空気清浄部より低圧損となっていることが好ましい。
【0018】
このような構成によれば、第2空気清浄部から供給される清浄空気の流速が第1空気清浄部から供給される清浄空気の流速より速くなるので、作業エリアの周囲の作業室を流れる清浄空気の一部が、作業エリアを流れる速い清浄空気の流れによって作業エリアに引き込まれつつ第2吸込口から吸い込まれる。このため、作業エリアで発生したエアロゾルが作業エリアから作業室に流出するのを確実に防止できる。
【0019】
また、本発明の前記構成において、前記作業エリアの上方に位置する天井部に、当該天井部から前記作業エリアの直上まで延び、前記第2空気清浄部からの清浄空気を前記作業エリアに吹き出す吹出しダクトが設けられていることが好ましい。
【0020】
このような構成によれば、第2空気清浄部からの清浄空気を作業室側に漏らすことなく、吹出しダクトによって作業エリアに吹出して、当該作業エリアに確実に供給することができるので、作業エリアで発生したエアロゾルが作業エリアから作業室に流出するのをより確実に防止できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、作業室に設けられて、清浄空気が供給される作業エリアと、この作業エリアに設けられて、当該作業エリア内の空気および前記作業室から前記作業エリアに流入する空気を吸い込む第2吸込口とを備えているので、作業エリアは2種類の清浄空気の気流によって、封じ込めエリアとなり、また、作業エリアには、エアロゾルが付着するような壁やテーブルもないので、作業エリアを除染する必要がない。
したがって、作業室内でのエアロゾルの拡散を防止でき、チェンジオーバーも殆ど行う必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施の形態のアイソレータの一例を示すもので、その断面図である。
図2】従来のアイソレータの一例を示すもので、その断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は実施の形態に係るアイソレータ20の概略構成を示す断面図である。この図に示すアイソレータ20が図2に示した従来のアイソレータと主に異なる点は、作業室1内に作業エリア21を設けた点、第2吸込口22を設けた点等であるので、以下ではこの点を中心に説明し、図2に示すアイソレータと共通構成部分には同一符号を付して、その説明を省略ないし簡略化する。
なお、図1において空気の流れ(気流)を矢印で示している。
【0024】
図1に示すように、アイソレータ20は、略直方体箱状の筐体20aを備えており、その正面や側面等は透明なガラスや樹脂によって形成され、外部から内部を視認できるようになっている。また、この筐体20aは外部に対して気密性を有しており、したがって、作業室1も気密性を有している。
筐体20aの上部には、吸気ファン5と排気ファン7とが対向して設けられており、吸気ファン5によって外気を筐体20a内に吸込み、排気ファン7によって筐体20a内の空気を外部に排気するようになっている。
【0025】
吸気ファン5および排気ファン7の出口にはそれぞれフィルタ(HEPAフィルタ)6,8が設けられている。また、吸気ファン5の入口手前には、風量調整ダンパ5aが設けられ、排気ファン7の出口側には風量調整ダンパ5bが設けられている。そして、吸気ファン5、排気ファン7、風量調整ダンパ5a,5bを適宜制御することによって、アイソレータ20内、つまり筐体20aの内部の圧力を制御するようになっている。例えば、吸気ファン5によって吸引する空気(外気)量を排気ファン7によって外部に排気する空気量より多くすることによって、筐体20a内は陽圧となり、吸気ファン5によって吸引する空気(外気)量を排気ファン7によって外部に排気する空気量より少なくすることによって、筐体20a内は陰圧となる。
【0026】
作業室1の上方にはチャンバ25が設けられている。チャンバ25の上面略中央部には、空気供給口2が設けられており、この空気供給口2に循環ファン10の出口が接続されている。また、チャンバ25の下面は、作業室1と作業エリア21の天井部を構成しており、このチャンバ25の下面には開口25a,25aが左右に離間して設けられ、当該開口25a,25aの間に開口25bが設けられている。
【0027】
開口25aは開口25bより左右の幅が大きくなっており、この開口25aに臨んでHEPAフィルタ等のフィルタ(第1空気清浄部)4がチャンバ25の下面に設けられ、開口25bに臨んでHEPAフィルタ等のフィルタ26がチャンバ(第2空気清浄部)25の下面に設けられている。
また、フィルタ(第2空気清浄部)26は、フィルタ(第1空気清浄部)4より低圧損となっている。このため、循環ファン10によってチャンバ25内に吹き出された空気のうちフィルタ(第2空気清浄部)26を通って下方に吹き出される空気の流速の方がフィルタ(第1空気清浄部)4を通って下方に吹き出される空気の流速より速くなる。
なお、フィルタ(第1空気清浄部)4およびフィルタ(第2空気清浄部)26によって、循環流路9を流れる空気を清浄する空気清浄手段24が構成されている。
【0028】
作業室1はフィルタ(第1空気清浄部)4,4の下方に設けられており、この作業室1に、フィルタ(第1空気清浄部)4,4を通って清浄化された清浄空気が上方から吹き出されるようになっている。なお、フィルタ(第1空気清浄部)4の直下には、吹出し用整流板27が設けられており、清浄化されて吹き出される清浄化空気を整流している。なお、吹出し用整流板27は多孔板等によって構成されている。
【0029】
また、筐体20aの内部には、隔壁28が設けられており、この隔壁28の下端部は筐体20aの底面に気密に接合され、上端部はチャンバ25の下端部に気密に接合されている。隔壁28の下端部には、作業室1内の空気を吸い込む第1吸込口3が設けられ、作業室1に上方から吹き出された清浄空気の一部はこの第1吸込口3から吸い込まれるようになっている。
また、隔壁28と筐体20aの図1における右側の壁との間には循環流路9が設けられており、第1吸込口3から吸い込まれた空気は循環ファン10によって循環し、再びチャンバ25に吹き出されるようになっている。
【0030】
作業室1の正面視における左右方向略中央部には作業エリア21が設けられている。この作業エリア21の上方には、前記フィルタ(第2空気清浄部)26が設けられた天井部から作業エリア21の直上まで延びる吹出しダクト30が設けられている。吹出しダクト30は角筒または円筒状に形成されているが、その断面形状は作業エリアの断面形状とほぼ等しくなっている。また、吹出しダクト30の上端部の内側に前記フィルタ(第2空気清浄部)26が配置されている。
【0031】
そして、チャンバ25からフィルタ(第2空気清浄部)26を通って下方に吹き出された清浄空気は吹出しダクト30内を下方に流れ、作業エリア21に吹き出されるようになっている。また、フィルタ(第2空気清浄部)26の直下には、吹出し用整流板31が設けられており、清浄化されて吹き出される清浄化空気を整流している。なお、吹出し用整流板31は多孔板等によって構成されている。
【0032】
また、作業エリア21の下方には、吸込チャンバ32が設けられている。吸込チャンバ32は角筒または円筒状に形成されているが、その断面形状は吹出しダクト30とほぼ等しくなっており、吹出しダクト30と同軸に配置されている。
吸込チャンバ32の上部開口部には、複数のスリットが形成されたスリット板が設けられており、このスリット板の複数のスリットが第2吸込口22を構成している。なお、スリット板は断面視逆台形状に形成されており、作業エリア21で取り扱われる培養容器13が不意に落下しても、スリット板で止まり、吸込チャンバ32内に吸い込まれないようになっている。
【0033】
また、吸込チャンバ32の下端は筐体20aの底面に気密に固定されており、この吸込チャンバ32の下端開口の内側に位置する底面に形成された孔2bに、吸込ダクト33の基端部が接続されている。この吸込ダクト33は筐体20aの底面に沿って配置されており、その先端部は風量調整ダンパ34aおよび送風機34を介して前記循環流路9に接続されている。したがって、この風量調整ダンパ34aおよび送風機34を制御することによって、第2吸込口22から吸い込まれた空気、つまり、作業エリア21内の空気および作業室1から作業エリア21に流入する空気を吸込チャンバ32、吸込ダクト33を通して、循環流路9に風量が調整されて流れるようになっている。
【0034】
このような構成のアイソレータ20では、作業室1に搬入された培養容器13をグローブ11や多機能ロボット12によって把持して、作業エリア21において開放した場合に、培養容器13から発生するエアロゾルは作業エリア21に供給されるフィルタ(第2空気清浄部)26によって清浄化された清浄空気と、フィルタ(第1空気清浄部)4によって清浄化されて作業室1から作業エリア21に流入する清浄空気の流れ(気流)に乗って、この清浄空気とともに第2吸入口22に吸い込まれる。つまり、作業エリアは2種類の清浄空気の気流によって、封じ込めエリアとなるので、エアロゾルが作業エリア21から作業室1に流出して拡散することがない。また、作業エリア21には、エアロゾルが付着するような壁やテーブルもないので、グローブ11や多機能ロボット12の作業エリア21内に挿入された部分以外には、これらを除染する手間も必要ない、つまり、作業エリア21およびアイソレータ20全体を除染する必要がない。
したがって、作業室1内でのエアロゾルの拡散を防止でき、チェンジオーバー手順も殆ど行う必要がない。
【0035】
また、第1吸込口3および第2吸込口22から吸い込まれた空気を作業室1および作業エリア21に循環させる循環流路9と、この循環流路9を流れる空気を清浄する空気清浄手段24とを備えているので、作業エリア21で細胞加工中に発生する可能性があるエアロゾルを空気清浄手段24によって除去して清浄化するとともに、作業室1内の空気を同空気清浄手段24によって清浄化したうえで、再び循環流路9によって作業室1および作業エリア21に供給することができる。このため、作業室1および作業室21エリアを常にグレードAの清浄度空間とすることができる。
【0036】
また、空気清浄手段24は、作業室1の天井部に設けられたフィルタ(第1空気清浄部)4と、作業エリア21の上方に位置する天井部に設けられたフィルタ(第2空気清浄部)26とを備え、フィルタ(第2空気清浄部)26がフィルタ(第1空気清浄部)4より低圧損となっているので、フィルタ(第2空気清浄部)26から供給される清浄空気の流速がフィルタ(第1空気清浄部)4から供給される清浄空気の流速より速くなる。したがって、作業エリア21の周囲の作業室1を流れる清浄空気の一部が、作業エリア21を流れる速い清浄空気の流れによって作業エリア21に引き込まれつつ第2吸込口22から吸い込まれる。このため、作業エリア21で発生したエアロゾルが作業エリア21から作業室1に流出するのを確実に防止できる。
【0037】
また、作業エリア21の上方に位置する天井部に、当該天井部から作業エリア21の直上まで延び、フィルタ(第2空気清浄部)26からの清浄空気を作業エリア21に吹き出す吹出しダクト30が設けられているので、フィルタ(第2空気清浄部)26からの清浄空気を作業室1側に漏らすことなく、吹出しダクト30によって作業エリア21に吹出して、当該作業エリア21に確実に供給することができるので、作業エリア21で発生したエアロゾルが作業エリア21から作業室1に流出するのをより確実に防止できる。
【符号の説明】
【0038】
1 作業室
3 第1吸込口
4 フィルタ(第1空気清浄部)
9 循環流路
13 培養容器
20 アイソレータ
21 作業エリア
22 第2吸込口
24 空気清浄手段
26 第2空気清浄部
30 吹出ダクト
図1
図2