特許第6338524号(P6338524)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6338524
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】熱伝導性粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/00 20180101AFI20180528BHJP
   C09J 133/14 20060101ALI20180528BHJP
   C09J 11/00 20060101ALI20180528BHJP
【FI】
   C09J7/00
   C09J133/14
   C09J11/00
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-523732(P2014-523732)
(86)(22)【出願日】2013年7月1日
(86)【国際出願番号】JP2013068027
(87)【国際公開番号】WO2014007208
(87)【国際公開日】20140109
【審査請求日】2016年6月13日
(31)【優先権主張番号】特願2012-150233(P2012-150233)
(32)【優先日】2012年7月4日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】313001332
【氏名又は名称】積水ポリマテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106220
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 正悟
(72)【発明者】
【氏名】渡部 泰佳
(72)【発明者】
【氏名】工藤 大希
(72)【発明者】
【氏名】菊地 梢
【審査官】 磯貝 香苗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−225689(JP,A)
【文献】 特開2012−097185(JP,A)
【文献】 特開2012−180495(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱伝導性充填材と、アクリル系粘着成分とを含む熱伝導性粘着シートにおいて、
アクリル系粘着成分が、(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル系オリゴマーと前記アクリル系粘着成分中の16%〜35%(重量%)を占めるヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマーを含み且つカルボキシル基を含まない組成物の硬化体であることを特徴とする熱伝導性粘着シート。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル系オリゴマーの分子量が100〜10000である請求項1記載の熱伝導性粘着シート。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル系オリゴマーが、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレートの何れかである請求項1または請求項2記載の熱伝導性粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器において、半導体素子などの発熱素子とヒートシンクなどの放熱部品の間に介在させる熱伝導性粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル酸を用いた粘着剤は一般的に知られており、こうした粘着剤に、熱伝導性充填材を添加した熱伝導性粘着シートが、例えば特開2001−279196号公報(特許文献1)に記載されている。
そうした一方で、ヒドロキシル基やカルボキシル基のような極性基を有するモノマーを粘着剤に配合することで粘着力を高めることが知られており、例えば粘着力の調整や経時変化を少なくするためにヒドロキシル基を有するモノマーとアクリル酸とを併用した粘着剤に関する技術が特開2011−173983号公報(特許文献2)に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−279196号公報
【特許文献2】特開2011−173983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特開2001−279196号公報(特許文献1)で例示されているアクリル酸と熱伝導性充填材とを含む熱伝導性粘着シートは、初期の粘着力が不十分であったり、湿度の影響などで初期の粘着力がバラツキやすいという問題があった。このことは、熱伝導性充填材を含まない一般的なアクリル酸を用いた粘着剤では見られなかった現象である。
また、本発明者らは特開2011−173983号公報(特許文献2)の技術を応用し、ヒドロキシル基を有するモノマーとアクリル酸とを併用することで、粘着力の向上、バラツキの低減を検討した。その結果初期の粘着力を高めバラツキを低減することに成功したが、発熱部品に貼付する熱伝導性粘着シートとしては耐熱性が不十分であった。
【0005】
そこで本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、初期の粘着力が高く、耐熱性に優れた熱伝導性粘着シートの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者らの検討において、アクリル酸と熱伝導性充填材とを含む熱伝導性粘着シートは、初期粘着力が低く、また複数回の実験で初期粘着力のバラツキが大きいという問題があった。そこで、上記特開2011−173983号公報(特許文献2)の記載を参照してヒドロキシル基とカルボキシル基を含有するアクリル系粘着成分を用いて粘着力や耐久力の低下を有効に防止できる熱伝導性粘着シートの開発を試みた。ところが、熱伝導性粘着シートの開発においては、所望の効果が生ぜず耐熱性が悪化した。この結果から熱伝導性充填材が介在すると、ヒドロキシル基やカルボキシル基の反応を阻害するか、分解反応を促進することが推定された。
そこで、発明者らは、熱伝導性充填材と、ヒドロキシル基およびカルボキシル基を含むアクリル系粘着成分の組合せが、十分な粘着性や耐熱性を発現できない原因は何かと考え、カルボキシル基の存在にあるのではないかと推定した。
【0007】
そして、熱伝導性充填材と、アクリル系粘着成分とを含む熱伝導性粘着シートについて、アクリル系粘着成分が、(メタ)アクリル系オリゴマーとヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマーを含み且つカルボキシル基を含まない組成物の硬化体であることを特徴とする熱伝導性粘着シートを着想した。
(メタ)アクリル系オリゴマーにヒドロキシル基を有しカルボキシル基を有しない(メタ)アクリレートモノマーを配合することで初期の粘着力に優れ、しかも耐熱性にも優れる熱伝導性粘着シートを得ることができる。
【0008】
ヒドロキシル基を有しカルボキシル基を有しない(メタ)アクリレートモノマーの含有量は、前記アクリル系粘着成分中の16%〜35%(重量%)とすることができる。16%〜35%(重量%)としたため、初期粘着力を十分に高め、硬化物のガラス転移点を上昇させずに所望の温度範囲に抑えることができる。
【0009】
熱伝導性充填材は水酸化アルミニウムとすることができる。熱伝導性充填材を水酸化アルミニウムとしたため、硬化阻害を起こさず、また粘着力が弱くなるおそれが無い。さらに、難燃性を高めることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の熱伝導性粘着シートによれば、初期の粘着力が高く、また耐熱性に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施形態に基づきさらに詳細に説明する。
熱伝導性粘着シートは、熱伝導性充填材とアクリル系粘着成分とを含み、このアクリル系粘着成分が、(メタ)アクリル系オリゴマーとヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマーを含み且つカルボキシル基を含まない組成物の硬化体である。
【0012】
(熱伝導性充填材)
熱伝導性充填材は、熱伝導性粘着シート中を熱が伝わり易くするための導電成分(熱伝導性成分)である。熱伝導性充填材としては、銅粉、アルミニウム粉、ニッケル粉、銀粉、鉄粉等の金属粉やこれらの合金粉、グラファイトや酸化亜鉛、炭素繊維、水酸化アルミニウム等の種々の導電性物質(熱伝導性物質)が挙げられる。しかしながら、グラファイトや酸化亜鉛、炭素繊維を用いた場合には、硬化性の悪化のため、照射する紫外線の積算光量を大きくする必要があったり、硬化阻害を起こすおそれがあり、また、酸化アルミニウムを用いた場合には、粘着力が低くなるおそれがあった。それに対して、硬化時に過度の紫外線を照射する必要がなく、また硬化阻害もなく、さらに粘着性を高め、しかも難燃性を向上させることができる水酸化アルミニウムが好ましい。
【0013】
(アクリル系粘着成分)
アクリル系粘着成分は、熱伝導性粘着シートに粘着性を付与し、電子機器内の発熱素子と放熱部品に熱伝導性粘着シートを粘着させるための成分である。
このアクリル系粘着成分は、(メタ)アクリル系オリゴマーとヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマーを含む組成物の硬化体であり、(メタ)アクリル系オリゴマーもヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマーもカルボキシル基を含まないものである。
【0014】
熱伝導性充填材の含有量は、アクリル系粘着成分100重量部に対して、10重量部〜300重量部である。10重量部より少ないと熱伝導性粘着シートとして、十分な熱伝導性を発現しないおそれがある。また、300重量部を超えるとシートが硬くなりタックや粘着力が低下して熱伝導性粘着シートに適した柔軟性や粘着力が得られないおそれがある。
【0015】
((メタ)アクリル系オリゴマー)
(メタ)アクリル系オリゴマーは、(メタ)アクリロイル基を有しカルボキシル基を有しない常温で液体で、分子量が100〜10000程度のアクリル共重合体(オリゴマー)である。こうした(メタ)アクリル系オリゴマーには、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート等が挙げられる。粘度は500mPa・s以上100000mPa・s以下が好ましく、1000mPa・s以上15000mPa・s以下がより好ましい。500mPa・s未満では、分子量が小さく光硬化後の熱伝導性粘着シートの凝集力が小さくなる恐れがある。一方、100000mPa・sを超えると、熱伝導性充填材の充填量を高め難くなる。また、粘度が1000mPa・s以上であれば、ある程度の分子量を有しているため、硬化後のアクリル系粘着成分の分子量を充分高めることができる。したがって、熱伝導性充填材のバインダーとしてのアクリル系粘着成分の強度を高めることができ、凝集破壊し難くい熱伝導性粘着シートとすることができる。加えて、粘度を15000mPa・s以下とすれば、製造に適した所望の粘度範囲内で熱伝導性充填材の配合量を高めることができ、熱伝導性に優れた熱伝導性粘着シートを得ることができる。
なお、(メタ)アクリルとは、アクリルまたはメタクリルを意味し、(メタ)アクレートとは、アクリレートまたはメタクリレートを意味する。
【0016】
(ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマー)
ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマーは、前記(メタ)アクリル系オリゴマーと重合してポリマーを形成する成分である。
ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマーとしては、具体的には2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート 、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートなどが挙げられる。
【0017】
こうしたヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマーのガラス転移点(Tg)は、−70℃〜20℃の範囲が好ましい。この温度範囲にある(メタ)アクリレートモノマーを用いると粘着力を高めやすいためである。より具体的には、ガラス転移点をこの温度範囲にすることで、重合後のアクリル系粘着成分のガラス転移点の上昇を抑えることができ、熱伝導性粘着シートの表面にタックを与えることができる。アクリル系粘着成分がタックを有することで、熱伝導性粘着シートは被着体に対して濡れ易くなり、被着体に対する粘着力を高めることができる。さらに被着体に対して濡れ易いことから、熱伝導性粘着シートを隙間無く密着させることができ、その界面の熱抵抗を低くすることができる。
具体的には、2−ヒドロキシエチルアクリレート(Tg=−15℃)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート(Tg=−7℃) 、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート(Tg=18℃)、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート(Tg=17℃)等を挙げることができる。
【0018】
この(メタ)アクリレートモノマーの含有量は、アクリル系粘着成分中の16%〜35%(重量%)であることが好ましい。(メタ)アクリレートモノマーの含有量が16%未満であると、初期粘着力を十分に高めることができない。一方、35%を超えると、モノマー成分が多くなり硬化物のガラス転移点が上昇するおそれがある。
【0019】
(メタ)アクリル系オリゴマーと反応させるモノマーには、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマー以外の極性基を有しない(メタ)アクリレートモノマーを含めることができる。こうしたモノマーとしては、ガラス転移点が−70℃〜0℃であることが好ましい。こうした温度範囲にガラス転移点のあるモノマーを添加することで粘着性を高めることができる。
【0020】
より具体的には、ガラス転移点をこの温度範囲にすることで、重合後のアクリル系粘着成分のガラス転移点の上昇を抑えることができ、熱伝導性粘着シートの表面にタックを与えることができる。アクリル系粘着成分がタックを有することで、熱伝導性粘着シートは被着体に対して濡れ易くなり、被着体に対する粘着力を高めることができる。さらに被着体に対して濡れ易いことから、熱伝導性粘着シートを隙間無く密着させることができ、その界面の熱抵抗を低くすることができる。
【0021】
ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマーのガラス転移点の上限が20℃であるのに対して、極性基を有しない(メタ)アクリレートモノマーのガラス転移点の上限を0℃としたのは、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマーと同程度の沸点を有する極性基を有しない(メタ)アクリレートモノマーはガラス転移点が低くなるからである。即ち、ガラス転移点の低い極性基を有しない(メタ)アクリレートモノマーを用いることで、組成物中のモノマーの蒸気圧を低くすることができる。こうして、熱伝導性粘着シートにおいて未反応の残存モノマーがあっても蒸気圧を低くすることができ、未反応モノマーの揮発による不具合を防ぐことができる。
【0022】
ガラス転移点が低く−70℃〜0℃の温度範囲にあるモノマーとしては、炭素数が4〜20のアルキル(メタ)アクリレートを例示することができ、具体的には、n−ブチルアクリレ―ト(Tg=−55℃)や、2−エチルヘキシルアクリレ―ト(Tg=−70℃)、イソオクチルアクリレ―ト(Tg=−56℃)、n−ラウリルアクリレート (Tg=−65℃)等が挙げられる。
【0023】
なお、粘着力が極度に低下しない所望の範囲であれば、ガラス転移点が0℃を超える(メタ)アクリレートモノマーを少量添加することもできる。また、粘着性に影響のない範囲で、カルボキシル基以外の極性基を有する(メタ)アクリレートモノマーを少量添加しても良い。
【0024】
前記組成物には、分散性の改善や、粘度調整のために溶剤や希釈剤を添加することができる。このような溶剤としては、トルエンやキシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール等の各種溶剤が挙げられ、また、希釈剤としては、官能基を有しないアクリルポリマー等が挙げられる。
さらに、前記組成物には、光硬化開始剤や酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、光安定剤、帯電防止剤等の種々の添加剤を粘着性や耐久性に影響を与えない範囲で添加することができる。
【実施例】
【0025】
試料の作製
(メタ)アクリル系オリゴマーとして、粘度が5000mPa・sのエステル共重合体アクリレート28重量部と、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマーとしてヒドロキシプロピルアクリレートを16重量部と、極性基を有しない(メタ)アクリレートモノマー48重量部(エチルヘキシルアクリレート9重量部、n−ブチルアクリレート7重量部、アクリル酸エステルモノマー32重量部)、希釈剤として官能基を有さないアクリルポリマー(分子量3000、粘度1000mPa・s、Tg:−77℃)を5重量部と、芳香族縮合リン酸エステル系難燃剤(1,3フェニレンビス(ジフェニルホスフェート))5重量部と、光硬化開始剤イルガキュア184(BASFジャパン株式会社製)と、平均粒径3μmで破砕状の水酸化アルミニウム粉末110重量部と、を均一に混合して混合組成物を得た。次にこの混合組成物を一対の剥離処理済みのポリエチレンテレフタレートフィルム(剥離フィルム)に挟み込み、その状態で厚みが200μmになるようにロールで延伸してから、積算光量500mJ/cmの紫外線を照射して熱伝導性粘着シートを得た。この熱伝導性粘着シートを試料1とした。
【0026】
この試料1で用いた原材料を表1または表2に示した組成(構成要素)に変更して試料2〜試料19を作製した。但し、表1および表2に示すカルボキシル基含有モノマーにはアクリル酸を用いている。
また、表1および表2には、所定のモノマーの樹脂成分(オリゴマーとモノマーの全量)に対する割合(含有率:wt%)と、以下に示す各種試験結果を併せて表示する。
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
【0029】
<初期粘着力>
各試料について、JIS Z0237規定の方法で粘着力を測定した。具体的には、各試料を幅24mmに切断して、一方の剥離フィルムをはがして厚み25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムに貼り付け、他方の剥離フィルムをはがしてステンレス板に貼り付けた。そして、引剥し速度を5mm/sとして180°引き剥がし試験を行い、その際の粘着力(N/10mm)の値を初期粘着力とした。
初期粘着力は、7.5N/10mm以上を“○”、4.0N/10mm以上7.5N/10mm未満を“△”、4.0N/10mm未満を“×”として表1または表2に示した。
【0030】
<熱履歴付与後の粘着力>
ポリエチレンテレフタレートフィルムとステンレス板にはさんだ状態(上記初期粘着力評価用の試験片と同じ)の各試料について、高温槽内で120℃、72時間放置(熱履歴付与)した後の粘着力(N/10mm)の値を、初期粘着力の測定と同様の方法で測定し、熱履歴付与後の粘着力とした。
熱履歴付与後の粘着力も、7.5N/10mm以上を“○”、4.0N/10mm以上7.5N/10mm未満を“△”、4.0N/10mm未満を“×”として表1または表2に示した。
【0031】
熱履歴付与後の粘着力の初期粘着力からの変化率について、粘着力の変化率として表1または表2に示した。初期粘着力よりも粘着力が低下していないものを“○”、粘着力の低下が30%以下であるものを“△”、粘着力の低下が30%を超えるものを“×”と評価した。
【0032】
<熱伝導率>
上記各試料において、200μmの厚みに代えて100μmとし、直径10mmの円板状とした後、両面の剥離フィルムを除去した熱伝導率測定用の試料を作製した。これらの試料の試料番号は厚みが200μmのそれぞれの試料と同一とした。そして、これらの試料について、レーザーフラッシュ法により熱伝導率(W/m・K)を測定した。
【0033】
評価結果
ヒドロキシル基を有するモノマーを含み、カルボキル基を有するモノマーを含まない試料1〜試料6の熱伝導性粘着シートは、初期粘着力および熱履歴付与後の粘着力のいずれも4.0N/10mm以上であり、熱履歴付与後においても粘着力は低下しなかった。特にヒドロキシル基を有するモノマーの配合量が、16.8%〜31.6%(重量%)の試料2〜試料5については、初期粘着力および熱履歴付与後の粘着力のいずれも7.5N/10mm以上と優れた粘着力を示した。
【0034】
一方、ヒドロキシル基を有するモノマーおよびカルボキル基を有するモノマーを含まない試料7は、熱履歴付与後の粘着力は低下しなかったものの、初期粘着力および熱履歴付与後の粘着力は2.4N/10mmと極めて低い値であった。
また、ヒドロキシル基を有するモノマーを含まず、カルボキル基を有するモノマーを含む試料8および試料9は、初期粘着力が低いか中程度であるとともに、熱履歴付与後の粘着力が低下して極めて低い値となった。
【0035】
また、ヒドロキシル基を有するモノマーおよびカルボキル基を有するモノマーを含む試料10〜試料15については、一部の試料で初期粘着力が改善されたものの、全ての試料において熱履歴付与後の粘着力が著しく低下した。
【0036】
比較のため、熱伝導性充填材を含まない試料16〜試料18について評価したところ、ヒドロキシル基を有するモノマーおよびカルボキル基を有するモノマーの有無によらず、熱履歴付与後の粘着力の著しい低下は確認できなかった。
【0037】
熱伝導率については、熱伝導性充填材を配合した試料1〜試料15について、その値が0.8W/m・Kとなり、熱伝導性充填材を配合しなかった試料16〜試料18の0.1W/m・Kに比べて熱伝導性が優れていることを確認した。
【0038】
上記説明は本発明の一例にすぎず、組成物の製造方法、硬化方法、使用方法、原材料等を適宜変更すること、例えば上記以外の公知の原料の使用等も本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更でき、こうした変更もまた本発明の技術的思想の範囲に含まれるものである。