特許第6338528号(P6338528)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6338528-メントールを含む喫煙物品 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6338528
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】メントールを含む喫煙物品
(51)【国際特許分類】
   A24D 1/02 20060101AFI20180528BHJP
   A24D 3/14 20060101ALI20180528BHJP
   A24D 1/04 20060101ALI20180528BHJP
【FI】
   A24D1/02
   A24D3/14
   A24D1/04
【請求項の数】13
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-540419(P2014-540419)
(86)(22)【出願日】2012年11月6日
(65)【公表番号】特表2014-532436(P2014-532436A)
(43)【公表日】2014年12月8日
(86)【国際出願番号】EP2012071910
(87)【国際公開番号】WO2013068337
(87)【国際公開日】20130516
【審査請求日】2015年11月2日
(31)【優先権主張番号】11250887.4
(32)【優先日】2011年11月7日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】トリッツ ドロシー
(72)【発明者】
【氏名】ケルステネル シャルル
(72)【発明者】
【氏名】ジョルディル イヴ
(72)【発明者】
【氏名】チェッケット アンドレア
【審査官】 土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−521962(JP,A)
【文献】 特開昭59−196082(JP,A)
【文献】 特表2011−509682(JP,A)
【文献】 特開昭52−132122(JP,A)
【文献】 特開平07−203934(JP,A)
【文献】 特表2010−536336(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/157240(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24D 1/02
A24D 1/04
A24D 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
香味放出セグメントを備えた喫煙物品であって、該香味放出セグメントが、
実質的に空気不透過性のラッパーによって囲まれた繊維性濾過材料のプラグと、
前記繊維性濾過材料のプラグ内に分布した複数の固体メントール粒子と、
を含み、前記繊維性材料が不規則配向の繊維を含み、実質的に可塑剤が含まれておらず、
ミリメートル長当たりの前記繊維性濾過材料のプラグ内に、平均で約0.1ミリグラム(mg)と約1mgの間の固体メントール粒子が分布している、喫煙物品。
【請求項2】
前記繊維性材料のプラグが、実質的に空気不透過性の透明なラッパーによって囲まれる、請求項1に記載の喫煙物品。
【請求項3】
前記繊維性材料のプラグが、23°C及び0%相対湿度(RH)でASTM F1297−07に従って測定したときに、1気圧の圧力差で24時間に約5cm3(STP)/m2未満の酸素ガス透過速度(O2GTR)を有する実質的に空気不透過性のフィルムラッパーによって囲まれる、請求項1又は2に記載の喫煙物品。
【請求項4】
前記繊維性材料のプラグが、ISO 2965:2009に従って測定したときに、20 Coresta単位未満の空気透過性を有する実質的に空気不透過性のペーパーラッパーによって囲まれる、請求項1に記載の喫煙物品。
【請求項5】
前記複数の固体メントール粒子の平均粒径が、約50マイクロメートルと約900マイクロメートルの間である、請求項1〜4の何れか1項に記載の喫煙物品。
【請求項6】
香味放出セグメントを含むマウスピースを備える、請求項1〜5の何れか1項に記載の喫煙物品。
【請求項7】
チップペーパー(6)によって前記マウスピースに取り付けられた喫煙可能材料の巻きロッドを更に備える、請求項6に記載の喫煙物品。
【請求項8】
前記香味放出セグメントが、前記喫煙可能材料の巻きロッドと当接する、請求項7に記載の喫煙物品。
【請求項9】
ISO 15592−3:2008に従って前記喫煙物品を喫煙したときの前記香味放出セグメントから放出されるメントールの量が、前記繊維性材料のプラグ内に分布した複数の固体メントール粒子の約1重量%と約15重量%の間である、請求項7又は8に記載の喫煙物品。
【請求項10】
ISO 15592−3:2008に従って喫煙したときに約0.1mgと約3mgの間の総メントール送出を提供する、請求項7〜9の何れか1項に記載の喫煙物品。
【請求項11】
前記マウスピースの上流側にエアロゾル発生基材を更に備える、請求項6に記載の喫煙物品。
【請求項12】
前記マウスピースが、前記香味放出セグメントの下流側に口唇端部セグメントを更に含む、請求項6〜11の何れか1項に記載の喫煙物品。
【請求項13】
香味放出セグメントを備えた喫煙物品のためのマウスピースであって、前記香味放出セグメントが、
実質的に空気不透過性のラッパーによって囲まれた繊維性濾過材料のプラグと、
前記繊維性濾過材料のプラグ内に分布した複数の固体メントール粒子と、
を含み、前記繊維性濾過材料が不規則配向の繊維を含み、実質的に可塑剤が含まれておらず、
ミリメートル長当たりの前記繊維性濾過材料のプラグ内に、平均で約0.1ミリグラム(mg)と約1mgの間の固体メントール粒子が分布している、マウスピース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、喫煙物品の主流煙又はエアロゾル内にメントールを送出できる香味放出セグメントを備えた喫煙物品に関する。本発明はまた、このような香味放出セグメントを備えた喫煙物品用のマウスピースに関する。
【背景技術】
【0002】
フィルタシガレットは通常、ペーパーラッパーによって囲まれたタバコカットフィラーのロッドと、巻きタバコロッドと末端間関係で整列された円筒フィルタとを備える。フィルタは一般に、チップペーパー束により巻きタバコロッドに取り付けられ、該チップペーパー束は、フィルタとラッパータバコロッドの隣接する部分とを囲む。チップペーパー束における円周方向穿孔の形態での通気部がフィルタに沿った位置に設けられ、巻きタバコロッドの燃焼中に生成される主流煙と周囲空気とを混合させる。
【0003】
従来のフィルタシガレットにおいて、フィルタは一般に、多孔性プラグラップによって囲まれる濾過材料(通常はセルロースアセテートトウ)の単一セグメントからなる。また、主流煙の粒子及びガス状成分を除去するための2又はそれ以上のセグメントを含む多要素フィルタを有するフィルタシガレットも公知である。
【0004】
タバコを燃焼せずに加熱する幾つかの喫煙物品もまた、当該技術分野で提案されている。加熱式喫煙物品においては、タバコなどの香味発生基材を加熱することによりエアロゾルが発生する。典型的には加熱式喫煙物品において、エアロゾルは、熱源(例えば、化学的、電気的、又は可燃性熱源)から、熱源の内部、周辺、又は下流側に配置することができる物理的に別個のエアロゾル発生基材に熱を伝達することにより発生する。喫煙中、熱源からの熱伝達によってエアロゾル発生基材から揮発性化合物が放出され、喫煙物品を通って吸い込まれた空気内に同伴される。放出された化合物が冷却すると、これらの化合物が凝縮してエアロゾルを形成し、消費者により吸入される。
【0005】
主流煙又はエアロゾルの香味を強化又は変更するために、メントールなどの香味料を含む単一又は複数セグメントのフィルタを有する喫煙物品を提供することは周知である。メントールは、好適な液体担体を用いて液体形態で喫煙物品のフィルタ、巻きタバコロッド又はエアロゾル発生基材に組み込むことができる。液体形態のメントールは揮発性であり、従って、貯蔵中に喫煙物品から移行又は揮発する傾向がある。従って、不利なことには、喫煙中に主流煙又はエアロゾルに香味を付けるのに利用できるメントールの量が減少する。
【0006】
更に、液体状態のメントールが喫煙物品のフィルタにおけるセルロースアセテートトウのセグメント内に組み込まれたときに、セルロースアセテートトウが吸着剤のような働きをする。このことはまた、不利なことに、喫煙中にフィルタを通って吸い込まれる主流煙又はエアロゾル内に放出されるメントールの量が減少する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際特許出願公開第2009/093051号
【特許文献2】国際特許出願公開第2009/022232号
【特許文献3】国際特許出願公開第2008/121610号
【特許文献4】国際特許出願公開第2010/107613号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Draft ISO/TC 126 N 1076、「シガレット−煙凝縮物中のメントールの測定−ガスクロマトログラフ法」(2011/03/21)
【発明の概要】
【0009】
消費者へのメントールの送出を改善する手段を提供することが望ましいことになる。詳細には、主流煙又はエアロゾルが喫煙物品のフィルタ又はマウスピースを通って吸い込まれたときに、喫煙物品の主流煙又はエアロゾルに高レベルのメントールを送出する手段を提供することが望ましいことになる。
【0010】
また、喫煙物品の主流煙又はエアロゾルにメントールを送出して、喫煙前、例えば、喫煙物品の貯蔵中の香味の喪失を低減する手段を提供することが望ましいことになる。
【0011】
本発明によれば、香味放出セグメントを備えた喫煙物品が提供され、該香味放出セグメントが、実質的に空気不透過性のラッパーによって囲まれた繊維性材料のプラグと、繊維性材料のプラグ内に分布した複数の固体メントール粒子と、を含み、繊維性材料が不規則配向の繊維を含む。
【0012】
本発明によれば、香味放出セグメントを含むマウスピースを備えた喫煙物品もまた提供され、該香味放出セグメントが、実質的に空気不透過性のラッパーによって囲まれた繊維性材料のプラグと、繊維性材料のプラグ内に分布した複数の固体メントール粒子と、を含み、繊維性材料が不規則配向の繊維を含む。
【0013】
本発明によれば、香味放出セグメントを含む喫煙物品のためのマウスピースが更に提供され、香味放出セグメントが、実質的に空気不透過性のラッパーによって囲まれた繊維性材料のプラグと、繊維性材料のプラグ内に分布した複数の固体メントール粒子と、を含み、前記繊維性材料が不規則配向の繊維を含む。
【0014】
本発明によれば、喫煙物品用の香味放出セグメントも提供され、該香味放出セグメントが、実質的に空気不透過性のラッパーによって囲まれた繊維性材料のプラグと、繊維性材料のプラグ内に分布した複数の固体メントール粒子と、を含み、前記繊維性材料が不規則配向の繊維を含む。
【0015】
以下の説明において、本発明による香味放出セグメントの特徴又は特性に関するあらゆる表現はまた、別途記載のない限り、本発明によるマウスピース及び喫煙物品の香味放出セグメントにも適用される。
【0016】
本明細書で使用される用語「プラグ」は、実質的に円形、長円形又は楕円形の断面を有する略円筒形の要素を意味する。以下の説明において、用語「プラグ」は、あらゆる長さの略円筒形要素を記述するのに使用される。
【0017】
本明細書で使用される用語「長さ」は、本発明による香味放出セグメント、マウスピース、及び喫煙物品の長手方向の寸法を意味する。
【0018】
本明細書で使用される用語「メントール」は、化合物2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキサノールのその異性体の何れかを意味する。
【0019】
本明細書で使用される用語「粒子」は、限定ではないが、粉体、結晶、顆粒、針、フレーク、ペレット、及びビーズを含む、あらゆる好適な形態を有する粒状及び粒子状固体材料を記述するのに使用される。
【0020】
用語「固体メントール粒子」は、メントールを少なくとも約80重量%含むあらゆる粒状又は粒子状固体材料を記述するのに使用される。
【0021】
本明細書で使用される用語「不規則配向の繊維」は、種々の方向に配向され且つ香味放出セグメントの長手方向に実質的に整列されていない織り及び不織繊維を意味する。本発明による香味放出セグメントの繊維性材料のプラグにおける不規則配向の繊維は、好ましくは事前に切断されており、繊維性材料のプラグの長さに沿って部分的にのみ延びる。
【0022】
本発明による喫煙物品は、タバコカットフィラー又は他の喫煙可能材料が燃焼して煙を形成するフィルタシガレット又は他の喫煙物品の形態とすることができる。本発明は更に、タバコ材料又は別のエアロゾル発生基材が燃焼ではなく加熱されてエアロゾルを形成する喫煙物品、並びに燃焼又は加熱されることなくタバコ材料、タバコ抽出物、或いは代替のニコチン源もしくは別のエアロゾル発生基材からエアロゾル、特にニコチン含有エアロゾルが発生する喫煙物品を含む。
【0023】
以下の説明において、用語「主流煙」は、フィルタシガレットなどの可燃性喫煙物品によって生成される主流煙と、上述のタイプの加熱式又は非加熱式喫煙物品などの非可燃性の喫煙物品によって生成される主流エアロゾルとの両方を記述するのに使用される。
【0024】
使用時には、本発明による香味放出セグメントの繊維性材料のプラグ内に分布された複数の固体メントール粒子に含まれるメントールは、香味放出セグメントを通って吸い込まれる主流煙内に放出される。
【0025】
本発明による香味放出セグメントにおいて液体状態のメントールではなく固体メントール粒子を使用することにより、繊維性材料によるメントールの収着が回避される。これは、有利には、香味放出セグメントを通って吸い込まれる主流煙内にメントールがより多く放出される結果をもたらす。
【0026】
また、本発明による香味放出セグメントにおいて液体状態のメントールではなく固体メントール粒子を使用することにより、使用前、例えば貯蔵中のメントールの喪失が減少する。このことはまた、有利には、香味放出セグメントを通って吸い込まれる主流煙内にメントールが有意に多く放出される結果をもたらす。
【0027】
本発明による香味放出セグメントの繊維性材料のプラグにおいて不規則配向の繊維を使用することで、プラグにおける固体メントール粒子の高充填を達成することが可能となる。これは、有利には、本発明による香味放出セグメントが多量のメントールを主流煙に送出することを可能にする。
【0028】
本発明による香味放出セグメントにおける固体メントール粒子の高充填と、固体メントール粒子からのより多くのメントールの放出とを組み合わせることにより、より短い香味放出セグメントを用いて所望のメントール送出を達成できるようになる。これは、有利には、本発明による香味放出セグメントを含む喫煙物品用のマウスピースの設計における融通性を向上させることができる。
【0029】
繊維性材料のプラグにおいて分布させた複数の固体メントール粒子からのメントールの喪失を低減するために、本発明による香味放出セグメントは、実質的に空気不透過性のラッパーにより囲まれる。このことは、本発明による香味放出セグメントの繊維性材料のプラグにおいて不規則配向の繊維を使用することにより達成できる固体メントール粒子の高充填の観点で特に有利である。
【0030】
実質的に空気不透過性のラッパーは、実質的に空気不透過性のペーパーラッパー又は実質的に空気不透過性のフィルムラッパーとすることができる。
【0031】
実質的に空気不透過性のラッパーが実質的に空気不透過性のペーパーラッパーである場合、実質的に空気不透過性のペーパーラッパーは、好ましくは、ISO 2965:2009に従って測定したときに、約20 Coresta単位未満、より好ましくは約10 Coresta単位未満、最も好ましくは約5 Coresta単位未満の空気透過性を有する。
【0032】
Coresta単位の空気透過性は、1キロパスカルの一定圧力差での1分間における1平方センチメートルのラッパーを通過する立方センチメートル単位の空気の量である。(すなわち、1Coresta単位は、1kPaの圧力差での1cm3/min.cm2の空気透過性に相当する)
【0033】
実質的に空気不透過性のラッパーが実質的に空気不透過性のフィルムラッパーである場合、実質的に空気不透過性のフィルムラッパーは、好ましくは、23°C及び0%相対湿度(RH)でASTM F1297−07に従って測定したときに、1気圧の圧力差で24時間に約5cm3(STP)/m2未満の酸素ガス透過速度(O2GTR)を有する。
【0034】
繊維性材料のプラグにおいて分布された複数の固体メントール粒子を消費者が見ることができるようにするために、本発明による香味放出セグメントは、透明な実質的に空気不透過性のラッパーで囲むことができる。例えば、本発明による香味放出セグメントは、非多孔性で空気不透過性の透明なセルロースフィルムラッパーにより囲むことができる。
【0035】
本発明による香味放出セグメントは、繊維性濾過材料のプラグを含み、繊維性材料は、不規則配向の繊維を含む。不規則配向の繊維は、タバコ、セルロース、セルロースアセテート及び他のセルロース派生物、バイオプラスチック、ポリビニル・アルコール(PVOH)、ポリラクチド(PLA)を含む、あらゆる好適な材料又は複数の材料から作ることができる。
【0036】
好ましくは、本発明による香味放出セグメントは、繊維性濾過材料のプラグを含み、該繊維性濾過材料は不規則配向の繊維を含む。より好ましくは、本発明による香味放出セグメントは、不規則配向のセルロースアセテート繊維のプラグを含む。
【0037】
喫煙物品用のフィルタ又は他のマウスピースで使用するセルロースアセテートトウ及び他の繊維性濾過材料のプラグは、一般に、例えば、トリアセチン、プロピレン・グリコール(PG)、及びポリエチレン・グリコール(PEG)などの可塑剤を含む。
【0038】
繊維性濾過材料のプラグに分布された複数の固体メントール粒子の溶解を避けるため、本発明による香味放出セグメントは、好ましくは、実質的に可塑剤が含まれていない繊維性濾過材料のプラグを含む。
【0039】
本発明による香味放出セグメントは、香味放出セグメントを通って吸い込まれる主流煙に対してメントール香味増強を提供するのに好ましい繊維性材料のプラグ内に分布されたあらゆる数の固体メントール粒子を含むことができる。
【0040】
好ましくは、本発明による香味放出セグメントは、ミリメートル長当たりの繊維性材料のプラグ内に分布された平均で少なくとも約0.1ミリグラム(mg)の固体メントール粒子を含む。
【0041】
本発明による香味放出セグメントは、例えば、ミリメートル長当たりの繊維性濾過材料のプラグ内に分布された平均で約0.1ミリグラム(mg)と約1mgの間の固体メントール粒子を含むことができる。
【0042】
好ましくは、複数の固体メントール粒子は、繊維性材料のプラグに実質的に均一に分布される。
【0043】
好ましくは、固体メントール粒子は、少なくとも約90重量%のメントール、より好ましくは少なくとも約95重量%のメントールを含む。
【0044】
好ましくは、メントールの(−)−メントール異性体は、固体メントール粒子の総メントール含有量の少なくとも約80重量%を構成する。より好ましくは、(−)−メントール異性体は、固体メントール粒子の総メントール含有量の少なくとも約90重量%を構成する。より好ましくは、(−)−メントール異性体は、固体メントール粒子の総メントール含有量の少なくとも約95重量%を構成する。
【0045】
固体メントール粒子は、天然メントール又は合成メントール、或いはその混合物を含有することができる。本発明で使用される天然メントールは、例えば、ペパーミント(Mentha piperita)、スペアミント(Mentha spicata)、又はハッカ(Mentha arvensis)などに由来する抽出により得ることができる。抽出は、公知の技術により実施することができ、典型的な例は、溶媒抽出又は結晶化及びその後の遠心分離である。本発明で使用される合成メントールは、例えば、周知の反応を用いて出発材料としてプレゴンから調製することができる。
【0046】
固体メントール粒子は、結晶質メントール又は非晶質メントール、或いはこれらの混合物を含むことができる。好ましくは、本発明による香味放出セグメントは、結晶質メントールを有する複数の固体メントール粒子を含む。好ましくは、本発明による香味放出セグメントは、複数のロウ様結晶質固体メントール粒子を含む。
【0047】
固体メントール粒子は、例えば、約50マイクロメートルと約900マイクロメートルの間の平均粒径を有することができる。
【0048】
本発明による香味放出セグメントで使用するのに好適な固体メントール粒子は、例えば、ドイツ国Symrise AG及び日本国Takasago International Corporationから商業的に入手可能である。
【0049】
目的とする用途に応じて、異なる寸法を有する本発明による香味放出セグメントを生成することができる。
【0050】
本発明による香味放出セグメントは、例えば、約5mmと約8.5mmの間の外径を有することができる。
【0051】
本発明による香味放出セグメントは、例えば、約3mmと約120mmとの間の長さを有することができる。
【0052】
喫煙物品のマウスピースで使用する本発明による香味放出セグメントは、例えば、約3mmと約30mmとの間の長さを有することができる。
【0053】
本発明による香味放出セグメントで使用する不規則配向の繊維は、点結合、スパンボンド、ニードルフェルト、ニードルパンチ、及び水懸濁を含む、乾式レイド又は湿式レイドプロセスなど、当該技術分野で公知の種々のプロセスを用いて作ることができる。本発明による香味放出セグメントで使用するのに好適な不規則配向の繊維を含む繊維性材料のプラグを作るプロセス及び機械装置は、当該技術分野で周知である。例えば、不規則配向の繊維を含むフィルタ要素及びこれらの製造方法は、国際特許出願公開第2009/093051号において記載されており、不規則配向の繊維を含むフィルタは、商標「Ramdomly Oriented Acetate(商標)」フィルタの名義で英国Filtronaから商業的に入手可能である。
【0054】
固体メントール粒子は、複数の炭素粒子を分布させたセルロースアセテートトウ又は他の繊維性濾過材料のプラグを含むカーボンオントウフィルタセグメントを製造する公知のプロセス及び機械装置を用いて、本発明による香味放出セグメントの繊維性材料のプラグにおいて分散させることができる。
【0055】
本発明によるマウスピースは、香味放出セグメントのみからなる単一セグメントのマウスピース又はフィルタとすることができる。
【0056】
或いは、本発明によるマウスピースは、香味放出セグメントに加えて1又はそれ以上のセグメントを含む多要素マウスピース又はフィルタとすることができる。
【0057】
本発明によるマウスピースは、香味放出セグメントの上流側に1又はそれ以上のセグメントを含むことができる。
【0058】
代替として、又はこれに加えて、本発明によるマウスピースは、香味放出セグメントの下流側に1又はそれ以上のセグメントを含むことができる。
【0059】
例えば、本発明によるマウスピースは、香味放出セグメントの下流側に口唇端部セグメントを含むことができる。これは、有利には、香味放出セグメントの繊維性材料のプラグに分布された固体メントール粒子が消費者の口腔と直接接触するのを防ぐ。
【0060】
本明細書で使用される用語「上流側」及び「下流側」は、使用中にマウスピース及び喫煙物品を通って吸い込まれる主流煙の方向を基準として、本発明によるマウスピース及び喫煙物品の一部又は構成要素の相対位置を記述するのに使用される。例えば、香味放出セグメントが口唇端部セグメントの上流側にあるマウスピースにおいて、主流煙は、最初に香味放出セグメントを通り、次いで口唇端部セグメントを通って吸い込まれる。
【0061】
本発明によるマウスピースは、セルロースアセテートトウのような繊維性濾過材料を含む1又はそれ以上の追加のセグメントを含むことができる。代替として、又はこれに加えて、本発明による多要素マウスピースは、中空の管体、キャビティ、又は凹部を含む1又はそれ以上の追加のセグメントを含むことができる。
【0062】
例えば、本発明によるマウスピースは、香味放出セグメントの下流側に口唇端部セグメントを含むことができ、口唇端部セグメントは、セルロースアセテートトウ又は他の繊維性濾過材料のプラグを含む。或いは、本発明によるマウスピースは、香味放出セグメントの下流側に口唇端部セグメントを含むことができ、口唇端部セグメントは、中空の管体、キャビティ、又は凹部を含む。
【0063】
本発明によるマウスピースは、吸着材(例えば、活性炭又はシリカゲル)、植物性材料(例えば、タバコ積層体)、香味料、及び他の喫煙改質剤並びにこれらの組み合わせを有する1又はそれ以上の追加セグメントを含むことができる。
【0064】
1又はそれ以上の追加セグメントは、マウスピースにおける所望の全体可塑剤含有量を達成するのに用いることができる。
【0065】
代替として、又はこれに加えて、1又はそれ以上の追加セグメントは、マウスピースの所望の全体吸引抵抗(RTD)を達成するのに用いることができる。
【0066】
本発明で使用するためのマウスピースは、例えば、ISO 6565:2002に従って測定したときに約100mm WG(水量ゲージ)と約180mm WGの間の吸引抵抗(RTD)を有することができる。
【0067】
本発明で使用するためのマウスピースは、例えば、約5mmと約8.5mmの間の外径を有することができる。
【0068】
本発明によるマウスピースは、例えば、約20mmと約50mmの間の長さを有することができる。
【0069】
本発明で使用するためのマウスピースが、香味放出セグメントの下流側に唇側端部セグメントを含む場合、唇側端部セグメントの長さは、例えば、約3mと約15mmの間、例えば、約6mmと約12mmの間とすることができる。
【0070】
唇側端部セグメントが中空の管体又は凹部を含む場合、唇側端部セグメントの長さは、例えば、約3mmと約8mmの間とすることができる。
【0071】
本発明によるマウスピースは、幅広い種類の異なるタイプの喫煙物品に組み込むことができる。例えば、本発明によるマウスピースは、喫煙中に燃焼されるタバコカットフィラー又は他の喫煙可能材料の巻きロッドを有する、フィルタシガレットのような可燃性喫煙物品に組み込むことができる。
【0072】
代替として、本発明によるマウスピースは、材料が燃焼ではなく加熱されてエアロゾルを形成する上述のタイプの非可燃性の加熱式喫煙物品に組み込むことができる。例えば、本発明によるマウスピースは、国際特許出願公開第2009/022232号において開示されたような、可燃性熱源と、該可燃性熱源の下流側にあるエアロゾル発生基材とを備えた加熱式喫煙物品に組み込むことができる。本発明によるマウスピースはまた、例えば、化学的熱源又は電気式熱源など、非可燃性熱源を備えた加熱式喫煙物品に組み込むことができる。
【0073】
代替として、本発明によるマウスピースは、国際特許出願公開第2008/121610号及び国際特許出願公開第2010/107613号において記載されるような、燃焼又は加熱することなくエアロゾルがエアロゾル発生基材から生成される上述のタイプの非可燃性喫煙物品に組み込むことができる。
【0074】
本発明による喫煙物品は、そのあらゆる部分において本発明による香味放出セグメントを含むことができる。
【0075】
例えば、本発明による可燃性喫煙物品は、喫煙可能材料の巻きロッドを含むことができ、喫煙可能材料の巻きロッドは、香味放出セグメントを含むか、又は香味放出セグメントからなる。このような実施形態において、香味放出セグメントは、繊維性喫煙可能材料のプラグと、繊維性喫煙可能材料のプラグ内に分布された複数の固体メントール粒子とを含むことができ、繊維性喫煙可能材料は、不規則配向の繊維を含む。
【0076】
代替として、本発明による可燃性及び非可燃性喫煙物品は、マウスピースを含むことができ、マウスピースは、香味放出セグメントを含むか、又は香味放出セグメントからなる。このような実施形態において、香味放出セグメントは、繊維性濾過材料のプラグと、繊維性濾過材料のプラグ内に分布された複数の固体メントール粒子とを含むことができ、繊維性濾過材料は、不規則配向の繊維を含む。
【0077】
本発明による喫煙物品は、好ましくは、マウスピースを備え、該マウスピースは、香味放出セグメントを含む。
【0078】
1つの実施形態において、本発明による喫煙物品は、チップペーパー束によりマウスピースに取り付けられたタバコカットフィラー又は他の喫煙可能材料の巻きロッドを含むことができる。
【0079】
好ましくは、マウスピース内の香味放出セグメントは、喫煙可能材料の巻きロッドと当接する。
【0080】
別の実施形態において、本発明による喫煙物品は、マウスピースの上流側にエアロゾル発生基材を含むことができる。
【0081】
ISO 15592−3:2008に従って喫煙したときの本発明による喫煙物品を通って吸い込まれる主流煙への香味放出セグメントから放出されるメントールの量は、例えば、繊維性材料のプラグ内に分布した複数の固体メントール粒子の約1重量%と約15重量%の間とすることができる。
【0082】
ISO 15592−3:2008に従って喫煙したときに、本発明による喫煙物品は、例えば、Draft ISO/TC 126 N 1076、「シガレット−煙凝縮物中のメントールの測定−ガスクロマトログラフ法」(2011/03/21)に従って測定したときに、約0.1mgと約3mgの間の総メントール送出を提供することができる。この試験方法において、主流煙からの総粒子状物質は、内部標準(n−ヘプタデカン)を含有する溶媒(プロパン−2−オール)に溶解する。溶液のアリコートのメントール含有量は、ガス・クロマトグラフィーによって求められ、主流煙の総粒子状物質のメントール含有量が算出される。
【0083】
本発明による喫煙物品は、喫煙中に消費者によってマウスピースを通って吸い込まれる主流煙と周囲空気とを混合するための通気部を有するマウスピースを備えることができる。例えば、1又はそれ以上の円周方向の穿孔列をマウスピースに沿った位置に設け、喫煙中に消費者によってマウスピースを通って吸い込まれる主流煙と周囲空気とを混合することができる。好ましくは、1又はそれ以上の円周方向の穿孔列又は他の通気部は、マウスピースの口唇端部から少なくとも12mmに配置される。
【0084】
本発明による喫煙物品は、例えば、ISO 9512:2002に従って測定したときに約20%と約80%の間の通気レベルを有することができる。
【0085】
本発明による喫煙物品は、例えば、約60mmと約128mmの間の全長を有することができる。
【0086】
本発明による喫煙物品は、例えば、約5mmと約8.5mmの間、スリムサイズの喫煙物品においては例えば約5mmと約7.1mmの間、又はレギュラーサイズの喫煙物品においては約7.1mmと約8.5mmの間の外径を有することができる。
【0087】
添付図面を例示として参照しながら本発明を更に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0088】
図1】単一セグメントのフィルタを備えた本発明の第1の実施形態による喫煙物品の側面図である。
図2】複数セグメントのフィルタを備えた本発明の第2の実施形態による喫煙物品の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0089】
図1及び2に示す喫煙物品は、共通する複数の構成要素を有し、これらの構成要素には、同じ参照符号を付与している。図1及び2において、喫煙物品の内部の詳細を例示するために喫煙物品の一部が切断されている。
【0090】
各喫煙物品は、一般に、軸方向に整列した細長い円筒形マウスピース4に一方端で取り付けられた細長円筒巻きタバコロッド2を備える。巻きタバコロッド2及びマウスピース4は、透明又は非透明とすることができるチップペーパー6の束によって従来の手法で接合される。チップペーパーは、マウスピースの全長と巻きタバコロッド2の隣接部分とを囲む。巻きタバコ2の燃焼中に生成される主流煙と周囲空気とを混合するために、複数の環状穿孔がマウスピース4に沿った位置でチップペーパー6を貫通して設けられる。
【0091】
図1に示すように、本発明の第1の実施形態による喫煙物品1のマウスピース4は、巻きタバコロッド2に隣接し且つ当接する香味放出セグメント12からなる単一セグメントのフィルタである。香味放出セグメント12は、複数の固体結晶質メントール粒子が実質的に均一に分配された事前切断の不規則配向のセルロースアセテート繊維のプラグを含む。不規則配向のセルロースアセテート繊維のプラグは、どのような可塑剤も含まず、非多孔性で空気不透過性の透明なセルロースフィルムラッパーによって囲まれる。
【0092】
図2に示すように、本発明の第2の実施形態による喫煙物品20のマウスピース4は、複数セグメントフィルタであり、末端間が当接する関係で2つのセグメント、すなわち、巻きタバコロッド2に隣接し当接する香味放出セグメント12と、該香味放出セグメントから下流側の口唇端部セグメント12とを含む。香味放出セグメント12は、図1に示す本発明の第1の実施形態による喫煙物品10において上記で説明したものと同じ構成のものである。口唇端部セグメントは、軸方向に配向されたセルロースアセテート繊維のプラグを含む。軸方向に配向されたセルロース繊維のプラグは、トリアセチンなどの可塑剤を含み、多孔性で空気透過性のプラグラップによって囲まれる。
【0093】
図1及び2に示す本発明の第1及び第2の実施形態による喫煙物品10、20の喫煙中、主流煙は、消費者によりマウスピース4を通って巻きタバコロッド2の着火端から下流側に吸い込まれる。主流煙がマウスピース4に入ると、巻きタバコロッド2に当接する香味放出セグメント12を通過する。主流煙が香味放出セグメントに入るときの主流煙の温度は、通常、約30°Cと約50°Cの間である。主流煙が香味放出セグメント12を通過すると、主流煙から不規則配向のセルロースアセテート繊維のプラグ内に分布された複数の固体結晶質メントール粒子への熱伝達により、固体結晶質メントール粒子におけるメントールが昇華して、主流煙内に同伴されるようになる。
【0094】
図1に示す本発明の第1の実施形態において、香味放出セグメント12の不規則配向のセルロースアセテート繊維のプラグ内に分布された複数の固体結晶質メントール粒子から放出されるメントールを含む主流煙は、香味放出セグメント12の口唇端部から消費者の口腔に直接的に入る。
【0095】
図2に示す第2の実施形態において、不規則配向のセルロースアセテート繊維のプラグ内に分布された複数の固体結晶質メントール粒子から放出されるメントールを含む主流煙は、口唇端部セグメント14を通って下流側に流れた後、消費者の口腔に入る。
【0096】
図1及び2に示す本発明の第1及び第2の実施形態による喫煙物品10、20を形成するために、マウスピース4が生成された後、巻きタバコロッド2に取り付けられ、該巻きタバコロッド2は、既知のフィルタシガレット製造機械装置を用いて従来の手法で生成される。
【0097】
図2に示す本発明の第2の実施形態による喫煙物品20のマウスピース4を生成するために、多要素フィルタの各セグメント12、14の複数ユニットを含む別個の連続ロッドが生成され、次いで、これらを組み合わせて、複数セグメントのフィルタ4の複数ユニットを含む連続したフィルタロッドを形成する。連続フィルタロッドは、その後、規則的間隔で切断されて、一連の離散的多要素フィルタ4を得る。
【実施例】
【0098】
以下の表1に示す寸法及び特性を有する、図1に示す本発明の第1の実施形態による単一セグメントのフィルタを有するフィルタシガレットを製造した。
【0099】
ISO 15592−3:2008に従って喫煙したときの喫煙物品の主流煙についての分析結果を以下の表2に示す。
【0100】
表1
【0101】
表2
【0102】
可燃性喫煙物品を参照して本発明を例示したが、本発明による香味放出セグメントはまた、非可燃性喫煙物品にも含めることができる点は理解されるであろう。
【符号の説明】
【0103】
2 タバコロッド
4 マウスピース
6 チップペーパー
12 香味放出セグメント
14 口唇端部セグメント
20 喫煙物品
図1
図2