(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6338539
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】スイッチ装置
(51)【国際特許分類】
H01H 25/00 20060101AFI20180528BHJP
H01H 25/04 20060101ALI20180528BHJP
【FI】
H01H25/00 R
H01H25/04 N
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-35198(P2015-35198)
(22)【出願日】2015年2月25日
(65)【公開番号】特開2016-157618(P2016-157618A)
(43)【公開日】2016年9月1日
【審査請求日】2016年4月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】特許業務法人平田国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100071526
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128211
【弁理士】
【氏名又は名称】野見山 孝
(72)【発明者】
【氏名】石榑 伸行
(72)【発明者】
【氏名】千葉 佳男
(72)【発明者】
【氏名】西山 章雄
(72)【発明者】
【氏名】灘谷 康明
(72)【発明者】
【氏名】小杉 利彦
(72)【発明者】
【氏名】重山 成生
(72)【発明者】
【氏名】大久保 直
【審査官】
澤崎 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−110281(JP,A)
【文献】
特開2005−149930(JP,A)
【文献】
特開2012−231018(JP,A)
【文献】
特開昭62−199057(JP,A)
【文献】
特開2005−311376(JP,A)
【文献】
実開平01−066718(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 13/00 − 13/88
H01H 25/00 − 25/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後上下方向に操作可能な筒状のレバー可動部と、
前記レバー可動部側に向けて湾曲するように屈曲した形状の屈曲部を有しており、前記屈曲部を介して前記レバー可動部を支持するユニットケースと、
前記レバー可動部内から前記ユニットケース内に引き回して配置されるフレキシブル配線基板とを備え、
前記フレキシブル配線基板の前記ユニットケース内に引き回される引き回し部には、前記フレキシブル配線基板に加わる応力を吸収する応力吸収部が形成され、
前記応力吸収部は、前記レバー可動部の前後上下方向の動きによって変形するように互いに反対方向に湾曲して形成された複数の湾曲部を有し、
前記複数の湾曲部は、前記屈曲部内に沿って前記フレキシブル配線基板が引き回され、前記ユニットケース内の底面に沿って形成される空間に引き回されて配置される先端部を有していることを特徴とするスイッチ装置。
【請求項2】
前記応力吸収部は、前記複数の湾曲部のうちの少なくとも一つの湾曲部が前記レバー可動部を前後方向に操作可能に支持する軸を跨ぐように配置されていることを特徴とする請求項1に記載のスイッチ装置。
【請求項3】
前記応力吸収部は、前記複数の湾曲部のうちの少なくとも一つの湾曲部が前記レバー可動部を上下方向に操作可能に支持する軸よりも下方となるように配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のスイッチ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチ装置に係り、特に、操作レバーを備えたスイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
操作レバーを備えたスイッチ装置の一例としては、自動車のヘッドランプやフォグランプ等の動作を選択するための複数の回転ノブが長尺筒状のケースに同軸配列された操作レバーを備えており、その操作レバーをステアリングコラムの側部に揺動可能に配置した車載用スイッチ装置がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
上記特許文献1に記載された従来の車載用スイッチ装置は、操作レバーの内部にフレキシブルプリント配線基板を備えている。回転ノブの内部に設けられた可動接点とフレキシブルプリント配線基板に形成された固定接点とによりスイッチが構成されており、回転ノブの回転操作によってスイッチがオンオフ動作するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−45287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この種の車載用スイッチ装置は、フレキシブルプリント配線基板を回転ノブの可動接点からステアリングコラム側の外部配線に接続されるコネクタへ引き回している。そのため、操作レバーを前後上下方向の多方向に揺動させると、フレキシブルプリント配線基板に対してねじり応力が作用する。
【0006】
このねじり応力がフレキシブルプリント配線基板に繰り返して作用すると、フレキシブルプリント配線基板には亀裂や断線等が発生し、その亀裂や断線等によってフレキシブルプリント配線基板の耐久性が低下してしまうことになる。そのため、フレキシブルプリント配線基板に長期間の使用に耐え得る耐久性を確保しなければならないという問題があった。
【0007】
従って、本発明の目的は、フレキシブル配線基板の耐久性を向上させたスイッチ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1]本発明は、
前後上下方向に操作可能な筒状のレバー可動部と、前記レバー可動部を支持するユニットケースと、前記レバー可動部内から前記ユニットケース内に引き回して配置されるフレキシブル配線基板とを備え、前記フレキシブル配線基板の前記ユニットケース内に引き回される引き回し部には、前記フレキシブル配線基板に加わる応力を吸収する応力吸収部が形成され、前記応力吸収部は、
前記レバー可動部の前後上下方向の動きによって変形するように互いに反対方向に湾曲して形成された複数の湾曲部
を有することを特徴とするスイッチ装置にある。
【0009】
[2]
上記[1]に記載の前記応力吸収部は、前記複数の湾曲部のうちの少なくとも一つの湾曲部が前記レバー可動部を前後方向に操作可能に支持する軸を跨ぐように配置されていることを特徴とする。
[3]上記[1]又は[2]に記載の前記応力吸収部は、前記複数の湾曲部のうちの少なくとも一つの湾曲部が前記レバー可動部を上下方向に操作可能に支持する軸よりも下方となるように配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、フレキシブル配線基板の耐久性を高めたスイッチ装置が効果的に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に好適な実施の形態に係るスイッチ装置の外観を模式的に示す斜視模式図である。
【
図2】実施の形態に係るスイッチ装置の内部を説明するための要部断面模式図である。
【
図3】実施の形態に係るスイッチ装置に適用されるフレキシブル配線基板を示す斜視模式図である。
【
図4】(a)は実施の形態に係るスイッチ装置に適用されるフレキシブル配線基板の取付形態の一例を説明するための要部模式図であり、(b)はフレキシブル配線基板の変形形態の一例を説明するための要部模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて具体的に説明する。
【0013】
(スイッチ装置の全体構成)
図1及び
図2において、全体を示す符号1は、本実施の形態に係る典型的なスイッチ装置を模式的に示している。
【0014】
このスイッチ装置1は、例えば自動車のステアリングコラムの側部に支持されるスイッチ本体であるユニットケース2を備えており、ユニットケース2に筒状のレバー可動部3を前後上下方向の多方向に揺動可能に支持している。レバー可動部3は、フォグスイッチノブ4、固定ノブ5及びライトスイッチノブ6を同軸上に配列したコンビネーションレバースイッチとして構成されている。
【0015】
レバー可動部3の内部には、フォグスイッチノブ4又はライトスイッチノブ6の回転操作により固定接点と可動接点との接離を切り替える図示しない第1の接点ユニットが内蔵されている。
【0016】
フォグスイッチノブ4は、固定ノブ5に対してフォグランプを点灯するオン位置及びフォグランプを消灯するオフ位置に回転可能に構成されている。ライトスイッチノブ6は、固定ノブ5に対してテールライト及びヘッドライトを消灯するオフ位置、テールライトを点灯するテール位置、並びにヘッドライトを点灯するヘッド位置に回転可能に構成されている。
【0017】
ユニットケース2は、レバー可動部3を支持する上ケース7及び下ケース8と、下ケース8の下方空間を覆うプロテクタカバー9とを備えている。下ケース8の中間部に形成された開口の下方空間には、図示しない固定接点を有するインシュレータ10と、インシュレータ10の固定接点に接続されたコネクタ端子を有するコネクタ11とを備えた第2の接点ユニットが配置されている。
【0018】
上カバー7及び下カバー8には、垂直支軸12a,12aを介して筒状のブラケット12が前後揺動可能に支持されている。ブラケット12の筒部内には、水平支軸13aを介して上下揺動可能に操作レバー13の筒部が支持されている。操作レバー13は、レバー可動部3に連結固定されている。
【0019】
操作レバー13の筒部内には、圧縮コイルバネ14を介してレバー作動部材15が進退可能に支持されている。レバー作動部材15は、ブラケット12の内面に形成された山谷形状の節度面を有する節度部12bにより位置決めされている。
【0020】
操作レバー13の筒部の外面には、下ケース8の開口を介してインシュレータ10に向けて延びる操作子13bが設けられており、操作子13bの先端部は、可動端子16aを取り付けた可動ホルダ16に組み込まれている。
【0021】
レバー可動部3を操作することで操作子13bが移動する。操作子13bの移動に追従して可動ホルダ16が同じ方向に移動する。可動ホルダ16の可動端子16aをインシュレータ10の固定接点に接離させることで、パッシングやディマー等の切り替えが行われる。
【0022】
このスイッチ装置1には、
図2及び
図3に示すように、フレキシブル配線基板20(以下、「FPC基板20」という。)のレバー可動部3側の一端に貼り付けられた硬質基板21がFPCカバー22により操作レバー13の内面に固定されている。FPC基板20は、レバー可動部3の内部からユニットケース2の内部にかけてS字状に引き回して配置されている。
【0023】
このFPC基板20は、屈曲性を有する長尺帯状の絶縁フィルムからなり、絶縁フィルムの片面に銅箔からなる配線パターンが形成されている。FPC基板20の配線パターンは、FPC基板20の一端部に形成されたレバー可動部3側の図示しない固定接点と、FPC基板20の他端部に形成されたユニットケース2側の固定接点23とに接続されている。
【0024】
FPC基板20のレバー可動部3側の固定接点には、レバー可動部3の可動接点が接続されており、第1の接点ユニットを構成している。FPC基板20のユニットケース2側の固定接点23には、インシュレータ10の固定接点に接続されたコネクタ11が接続されており、第2の接点ユニットを構成している。レバー可動部3の前後上下方向の揺動操作により第1の接点ユニット及び第2の接点ユニットの電気接続が導通状態及び切断状態に切り替えられる。
【0025】
(FPC基板の応力吸収部の構成)
ところで、上記のように構成されたスイッチ装置1は、FPC基板20をレバー可動部3の内部からユニットケース2の内部へ引き回して配置する構成になっていることから、レバー可動部3を前後上下方向の多方向に揺動操作すると、FPC基板20にはねじり応力が繰り返して作用することになる。
【0026】
このレバー可動部3における特有の前後上下方向の動きによりFPC基板20に加わるねじり応力を吸収しなければ、FPC基板20に長期間の使用に耐え得る高い耐久性や安定した電気接続状態を確保することは困難になる。
【0027】
従って、本実施の形態に係るスイッチ装置1の主要なところは、レバー可動部3における特有の前後上下方向の動きによりFPC基板20に加わるねじり応力を吸収する応力吸収部30の構造にある。
【0028】
この応力吸収部30は、ユニットケース2の内部空間内に引き回されるFPC基板20の引き回し部において、レバー可動部3側に突出する凸面形状の湾曲部31と、コネクタ11側に突出する凸面形状の湾曲部32とが長手方向に沿って交互に形成される構成になっている。
【0029】
この応力吸収部30としては、FPC基板20の引き回し部においてねじり応力がかかる部位を互いに反対方向に湾曲させる構成が好適であり、FPC基板20のレバー可動部3側からのねじり応力がFPC基板20の引き回し部で効果的に吸収されるようになっている。
【0030】
図示例による応力吸収部30は、
図2〜
図4(a)に示すように、FPC基板20の引き回し部を長手方向に略S字状に湾曲するS字構造に構成されている。
【0031】
この応力吸収部30をS字構造に構成することで、レバー可動部3の操作時、特にターン操作時やディマー操作時においては、
図4(b)に示すように、FPC基板20の長手方向と交差する方向の曲がりによってS字構造が変形する。このS字構造の変形により、レバー可動部3の操作時においてFPC基板20に加わるねじり応力が吸収される。
【0032】
なお、この応力吸収部30の折り返し回数は、図示例に限定されるものではなく、例えばレバー可動部3の揺動操作量などによって適宜設計される。
【0033】
(実施の形態の効果)
以上のように構成されたスイッチ装置1によれば、上記効果に加えて、次の効果が得られる。
【0034】
FPC基板20に応力吸収部30を形成することで、レバー可動部3を前後上下方向の多方向に揺動操作しても、FPC基板20に加わるねじり応力が吸収されるため、FPC基板20の長期間の使用を保証することが可能になる。
【0035】
FPC基板20に応力吸収部30を形成しているため、ユニットケース2の内部にFPC基板20の応力吸収のための格別な部材を配置する内部空間を確保する必要がなくなり、スイッチ装置1の薄型化や軽量化等を図ることができる。
【0036】
ユニットケース2の内部にFPC基板20の応力吸収用部材を配置する内部空間を確保する必要がなくなるため、ユニットケース2の内部に配置される構成部品のレイアウトが制限されない。
【0037】
FPC基板20に応力吸収部30を形成していることから、ユニットケース2の狭小空間を有効に利用することができる。
【0038】
上記FPC基板20の応力吸収部30を採用することで、FPC基板20の長さ、幅や引き回し状態にかかわらず、レバー可動部3における特有の前後上下方向の動きによりFPC基板20に加わるねじれ等の応力を吸収することができるようになる。
【0039】
なお、上記実施の形態及び図示例では、自動車のヘッドランプやフォグランプなどの点灯消灯状態の切り替えを行うライト系スイッチを備えたコンビネーションレバースイッチを例示したが、これに限定されるものではない。ワイパを操作するワイパ系スイッチなどの他の用途を備えたコンビネーションレバースイッチや各種の操作レバーを備えたスイッチ装置にも適用することができる。
【0040】
また、上記実施の形態及び図示例では、自動車に適用する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば建設機械や農業機械などの各種の車両に効果的に適用できることは勿論である。
【0041】
以上の説明からも明らかなように、本発明に係る代表的な実施の形態及び図示例を例示したが、上記実施の形態及び図示例は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。従って、上記実施の形態及び図示例の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0042】
1…スイッチ装置、2…ユニットケース、3…レバー可動部、4…フォグスイッチノブ、5…固定ノブ、6…ライトスイッチノブ、7…上ケース、8…下ケース、9…プロテクタカバー、10…インシュレータ、11…コネクタ、12…ブラケット、12a…垂直支軸、12b…節度部、13…操作レバー、13a…水平支軸、13b…操作子、14…圧縮コイルバネ、15…レバー作動部材、16…可動ホルダ、16a…可動端子、20…FPC基板、21…硬質基板、22…FPCカバー、23…固定接点、30…応力吸収部、31,32…湾曲部