(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(i)前記軸外し放物面鏡の端部のうちセンサーに近い一方、及び、前記センサーの端部のうち前記軸外し放物面鏡に近い一方を結ぶ直線と、前記平面ミラーとがなす角の角度が、(ii)前記軸外し放物面鏡から前記平面ミラーに入射する電磁波と前記平面ミラーとがなす角の角度と異なる
請求項9に記載のセンサーアセンブリ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本発明の基礎となった知見)
本発明者は、「背景技術」の欄において記載した、センサーアセンブリに関し、以下の問題が生じることを見出した。
【0012】
近年、赤外線を用いた様々なアプリケーションが開発されている。波長が0.7〜2.5マイクロメータの近赤外領域の赤外線は、暗視カメラ等の防犯用途、又は、テレビ等に用いられるリモコン用途等がある。また、2.5〜4.0マイクロメータの中赤外領域の赤外線は、測定対象の透過スペクトルの分光測定により、その測定対象固有の吸収スペクトルに基づいて物質を同定するのによく用いられる。
【0013】
さらに、4.0〜10マイクロメータの遠赤外領域においては、常温近傍の黒体輻射スペクトルのピークが存在するので、物質から輻射されている遠赤外領域の赤外線を検出することで、物質の表面温度を非接触で測定するのに用いられる。この使い方は、一般に、サーモグラフィーとして、物質の表面温度を二次元的に捉えることに活用されている。サーモグラフィー等に用いられるセンサーアセンブリは、可視領域のカメラ等と同様に、二次元アレイセンサーと、二次元アレイセンサー上に結像させる結像光学系とを備える。
【0014】
遠赤外線用の二次元アレイセンサーには、従来、ボロメータ等が用いられている。ボロメータは、入射する遠赤外線によりセンサーが暖められ、暖められたことによるセンサーの温度上昇を抵抗値として検出するものである。ボロメータは、高画質である反面、電流を流すための回路等、読み出すための仕組みが複雑かつ高価である。
【0015】
近年、エアコン等の家電機器へセンサーアセンブリを搭載するため、センサーアセンブリの低コスト化が必要となる。そこで、サーモパイル等の安価なセンサーを用いること、又は、ラインセンサーを走査することにより二次元画像を得ること(特許文献1)により、低コスト化が図られている。
【0016】
また、センサーアセンブリの構成要素である結像光学系に、シリコン又はゲルマニウムのレンズ等を用いることも行われている(特許文献2)。
【0017】
しかしながら、シリコン又はゲルマニウム等の材料は高価であり、また、基本的に研磨でしか加工できないので安価に製造することが困難であるという問題がある。また、屈折率が高い反面、透過率が低く、センサーの感度が低下する懸念があった。
【0018】
そこで、本発明は、検出感度を維持しながら安価に製造可能であるセンサーアセンブリを提供する。
【0019】
このような問題を解決するために、本発明の一態様に係るセンサーアセンブリは、電磁波を検出するための複数の画素であって、所定方向に一列に配列された複数の画素を有するラインセンサーと、電磁波による像を前記複数の画素上の検出面に結像させる結像光学系とを備え、前記検出面に平行な面内で前記所定方向に直交する第一の方向における前記結像光学系のFナンバーは、前記所定方向である第二の方向における前記結像光学系のFナンバーと異なる。
【0020】
これによれば、センサーアセンブリは、第一及び第二の方向における結像光学系のFナンバーのうち大きい方を第一及び第二の方向のFナンバーとして共通に有する結像光学系を用いる場合よりも、当該結像光学系を通過して画素に検出される電磁波の線量を増加させることができる。よって、センサーアセンブリは、上記の場合よりも検出感度を向上させることができる。
【0021】
また、結像光学系に用いる材料の電磁波の透過率が比較的低い場合でも、センサーアセンブリは、結像光学系全体として透過させる電磁波の線量を維持し又は増大させることができる。結像光学系に用いる材料の電磁波の透過率が比較的低い場合、当該結像光学系を透過する電磁波の量が低下する。一方、上記のように第一及び第二の方向でFナンバーを異ならせることにより当該結像光学系を透過する電磁波の量を増加させる。よって、その増加分が、その低下分より大きく又は等しくなるようにすることで、結像光学系全体として透過させる電磁波の線量を維持し又は増加させることができる。
【0022】
よって、結像光学系にシリコン又はゲルマニウムのような高価かつ加工のコストが高い材料を用いる必要がなく、安価かつ加工のコストが低い材料を用いることができる。よって、センサーアセンブリは、検出感度を維持しながら安価に製造可能である。
【0023】
例えば、前記第一の方向における前記結像光学系のFナンバーは、前記第二の方向における前記結像光学系のFナンバーより小さい。
【0024】
これにより、センサーアセンブリは、ラインセンサーの画素の間隔を従来と同じにしたまま、結像光学系を透過させる電磁波の線量を増大させることができる。よって、センサーアセンブリは、従来と同様の構成のラインセンサーを用いて、検出感度を維持しながら安価に製造可能である。
【0025】
例えば、前記結像光学系は、レンズを有し、前記第一の方向における前記レンズのFナンバーは、前記第二の方向における前記レンズのFナンバーより小さい。
【0026】
これにより、センサーアセンブリは、第一及び第二の方向のFファクターが異なるレンズを結像光学系として用いて具体的に実現される。
【0027】
例えば、前記第一の方向における前記レンズの幅は、前記第二の方向における前記レンズの幅より大きい。
【0028】
これにより、センサーアセンブリは、第一及び第二の方向で幅が異なるレンズを結像光学系として用いて具体的に実現される。
【0029】
例えば、前記レンズの前記第一の方向に垂直な面における断面形状は、前記レンズの前記第二の方向に垂直な面における断面形状と異なる。
【0030】
これにより、センサーアセンブリは、第一及び第二の方向で断面形状が異なるレンズを結像光学系として用いて具体的に実現される。
【0031】
例えば、前記レンズの前記第二の方向に垂直な面における断面形状は、フレネル形状を含む。
【0032】
これにより、センサーアセンブリは、フレネルレンズを用いて厚みを抑えることができる。その際、第一及び第二の方向のうち比較的精度が低くてもよい第二の方向に垂直な面における断面形状にフレネル形状を用いる。このようにすれば、ラインセンサーによる電磁波の検出精度に与える影響を抑えながら、結像光学系の厚みを抑えることができる。
【0033】
例えば、前記レンズの前記第一の方向に垂直な面における断面形状は、フレネル形状を含まない。
【0034】
これにより、センサーアセンブリは、電磁波の検出精度を維持することができる。一般に、フレネルレンズを用いることで、結像光学系の厚みを抑えることができる一方、電磁波の検出精度が低下する。第一及び第二の方向のうち比較的高い精度が必要である第一の方向に垂直な面における断面形状にフレネル形状を用いないことで、結像光学系による検出願度を維持することができる。
【0035】
例えば、前記結像光学系は、ミラーを有し、前記第一の方向における前記ミラーのFナンバーは、前記第二の方向における前記ミラーのFナンバーより大きい。
【0036】
これにより、センサーアセンブリは、第一及び第二の方向のFファクターが異なるミラーを結像光学系として用いて具体的に実現される。つまり、センサーアセンブリは、透過型の結像光学系ではなく、反射型の結像光学系を用いて実現することができる。
【0037】
例えば、前記ミラーは、軸外し放物面鏡である。
【0038】
これにより、センサーアセンブリは、より高い精度でラインセンサーの画素に電磁波を集光させることができる。
【0039】
例えば、前記センサーアセンブリは、さらに、平面ミラーを有する。
【0040】
これにより、センサーアセンブリは、センサーアセンブリ内部に入射する迷光をラインセンサーが受光しにくくすることができる。これにより、センサーアセンブリは、より高い精度でラインセンサーの画素に電磁波を集光させることができる。
【0041】
例えば、(i)前記軸外し放物面鏡の端部のうちセンサーに近い一方、及び、前記センサーの端部のうち前記軸外し放物面鏡に近い一方を結ぶ直線と、前記平面ミラーとがなす角の角度が、(ii)前記軸外し放物面鏡から前記平面ミラーに入射する電磁波と前記平面ミラーとがなす角の角度と異なる。
【0042】
これにより、センサーアセンブリは、具体的に、センサーアセンブリ内部に入射する迷光をラインセンサーが受光しにくい構成をとることができる。これにより、センサーアセンブリは、より高い精度でラインセンサーの画素に電磁波を集光させることができる。
【0043】
例えば、前記複数の画素のそれぞれの前記第一の方向における幅は、前記複数の画素のそれぞれの前記第二の方向における幅より大きい。
【0044】
これにより、第二の方向において画素の検出面上の一点に電磁波が集光せず、第二の方向に若干の広がりを有する場合であっても、結像光学系を透過した電磁波のうちの大部分を画素が検出することができる。これにより、センサーアセンブリは、より高い検出感度で電磁波を検出することができる。
【0045】
例えば、前記電磁波は、8〜10マイクロメータの波長を有する遠赤外線を含む。
【0046】
これにより、センサーアセンブリは、8〜10マイクロメータの波長を有する遠赤外線を、高い検出感度で適切に検出することができる。
【0047】
例えば、前記レンズの材質は、ポリエチレンである。
【0048】
これにより、センサーアセンブリは、ポリエチレンの材質のレンズを結像光学系として用いることで、安価に製造される。
【0049】
例えば、前記複数の画素のそれぞれは、サーモパイル又はボロメータを用いた赤外線検出器である。
【0050】
これにより、センサーアセンブリは、サーモパイル又はボロメータを用いた赤外線検出器により具体的に実現される。
【0051】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0052】
なお、同じ要素には同じ符号を付しており、説明を省略する場合もある。また図面は、理解しやすくするためにそれぞれの構成要素を主体に模式的に示している。
【0053】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、構成要素、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また全ての実施の形態において、各々の内容を組み合わせることも出来る。
【0054】
(実施の形態1)
本実施の形態において、安価に製造され、かつ、検出感度を向上させるセンサーアセンブリについて説明する。なお、本実施の形態におけるセンサーアセンブリは、ラインセンサーに用いられる結像光学系であり、検出感度を維持しながら安価に製造可能である。
【0055】
本実施の形態におけるセンサーアセンブリ100に関して、
図1A及び
図1Bを用いて説明する。
【0056】
図1Aの(a)はセンサーアセンブリ100の側面図であり、
図1Aの(b)はセンサーアセンブリ100を
図1Aの(a)における矢印Aの方向から見た上面図である。
図1Bは、センサーアセンブリ100の正面図である。
【0057】
図1Aの(a)においてX軸方向は、紙面を表から裏へ貫く方向であり、Y軸方向は、紙面内下から上へ向かう方向であり、Z軸方向は、紙面内左から右へ向かう方向である。同様に
図1Aの(b)において、X軸方向は、紙面内下から上へ向かう方向であり、Y軸方向は、紙面を裏から表へ貫く方向であり、Z軸方向は紙面内左から右へ向かう方向である。その他の図においても、X、Y及びZ方向は、座標軸に示す通りの方向である。
【0058】
センサーアセンブリ100は、センサー101とレンズ104とを備える。
【0059】
センサー101は、センサー基板103と画素列102とを有するラインセンサーである。画素列102は、センサー基板103の上に設けられており、画素102a、102b、102c、102d及び102eを有する。画素102a等のそれぞれは電磁波を検出する。
【0060】
以降、画素102a等のそれぞれは、特に遠赤外線を検出するものとして説明する。一般に、常温である黒体から輻射される赤外線のピーク波長は8〜10マイクロメータ近傍に存在する。この波長領域が遠赤外線に相当する。
【0061】
なお、画素102a等のそれぞれは、例えば、サーモパイル又はボロメータを用いた赤外線検出器により実現される。
【0062】
なお、センサー101におけるレンズ104と対向する側の面は電磁波を検出する面であるので、この面のことを検出面ともいう。検出面は、センサー101における、センサー基板103と反対側の面ということもできる。なお、センサー101が5個の画素を有する場合を例として説明するが、画素の数はこれに限られない。
【0063】
レンズ104は、電磁波をセンサー101上の検出面に結像させる。レンズ104は、結像光学系に相当する。レンズ104の材料は、例えば、ポリエチレンである。ポリエチレンは、8〜10マイクロメートルの赤外線を透過する。なお、レンズ104の材料は、ポリエチレンでなくても、上記波長の赤外線を透過し、かつ、成型可能な樹脂の材料であれば用いることができる。レンズ104は、例えば、球面レンズであり、その形状に関しては後述する。
【0064】
各画素102a、102b、102c、102d及び102eは、幅(X軸方向の長さ)、及び、高さ(Y軸方向の長さ)ともに長さLであり、XY平面において正方形形状である。センサー101の画素102cとレンズ104とは光軸105の上に設けられている。
【0065】
画素列102に含まれる各画素102a、102b、102c、102d及び102eは、Y軸方向に並んで配列されている。上記の各画素は、Y軸方向に複数配列されており、その配列の方向と直交する方向であるX軸方向においては一画素しか設けられていない。つまり、画素列102は、画素が一列にならべられた所謂ラインセンサーである。
【0066】
以下、X軸方向を第一の方向と、Y軸方向を第二の方向とそれぞれ表現する場合もある。すなわち、本ラインセンサーは、第一の方向に画素が一つ配置され、第二の方向に画素が複数配列されることで、一列に画素が配置されたラインセンサーである。
【0067】
本実施の形態のセンサーアセンブリ100の動作の仕組みを説明する。
図1Aの(a)を参照しながら、センサーアセンブリ100のタンジェンシャル面(光軸を含む面であって、各角度で入射する各電磁波の主光線を含む面)における動作を説明する。
【0068】
図1Aの(a)において、垂直入射光106は、物面上でかつ光軸105上の図示しない一点から発せられた電磁波である。垂直入射光106は、レンズ104に、垂直入射光106として垂直入射する。垂直入射光106は、光軸105上にある画素102cに集光する。
【0069】
また、物面上かつ光軸105外の図示しない一点から発せられてレンズ104に対して斜めに入射する電磁波を斜め入射光という。
図1Aの(a)において、斜め入射光107は、斜め入射光のうち、最も大きな入射角θ1で入射するものである。斜め入射光107は、光軸105から最も遠い画素102eに集光する。
【0070】
このように、物面上からY軸に沿って発せられ、角度θ1以内の角度でレンズ104に入射する電磁波は、タンジェンシャル面内において、いずれも画素列102のいずれかの位置に集光する。
【0071】
図1Aの(b)を参照しながら、センサーアセンブリ100のサジタル面(光軸を含み、かつ、タンジェンシャル面に垂直な面)における動作を説明する。画素102a、102b、102c、102d及び102eは、Y軸方向に配列しているため、
図1Aの(b)においては画素列102の1画素分の幅しか見えないようになる。
【0072】
図1Aの(a)のタンジェンシャル面と同様にサジタル面においても、垂直入射光106は、レンズ104に垂直入射する。垂直入射光106は、光軸105上にある画素列102の中心に集光する。
【0073】
また、
図1Aの(a)で示した斜め入射光107の光路は、
図1Aの(b)においては垂直入射光106とほぼ同じ光路に投影されることになり、光軸105上にある画素列102のX軸方向における中心に集光する。この時、垂直入射光106と斜め入射光107とで画素列102上での集光位置がY軸方向で異なるのは、
図1Aの(a)についての説明の通りである。
【0074】
以上の通り、垂直入射光106は、タンジェンシャル面及びサジタル面のそれぞれにおいて光軸105上の画素102c上に集光している。また、タンジェンシャル面及びサジタル面のそれぞれにおいてレンズ104の焦点距離は等しく、つまり、レンズ104は、光軸対象なレンズである。このような構成において、物面上の線状の領域から出射された電磁波の像を、レンズ104により画素列102上に結像することができる。
【0075】
以下、レンズ104の形状について説明する。
【0076】
図2Aは、本実施の形態におけるセンサーアセンブリの側面図で、結像光学系入射光の幅と集光径の関係の模式図である。
図2Aの(a)は、
図1Aの(a)等と同じスケールで上記関係を示す図であり、
図2Aの(b)は、上記関係のみを拡大して示す拡大図である。
【0077】
一般に、各画素102a、102b、102c、102d及び102eに入射する電磁波の光量が多ければ多いほど、検出感度がより高くなるので、レンズ104は、径(幅)がなるべく大きいのが望ましい。しかし、レンズの径を大きくすることは、球面収差を増大することに繋がる。
【0078】
例えば、
図2Aにおいて、幅(Y軸方向の長さ)がW1である垂直入射光106をレンズ104で集光した場合の集光位置(ここでは画素102c上)における集光径はR1である。また、幅がW1よりも広いW3である垂直入射光108をレンズ104で集光した場合の集光位置での集光径はR3である。このとき、R1よりR3の方が、球面収差の影響によりある条件下において大きい。このことは一般にレンズ104が球面レンズである場合に顕著である。また、タンジェンシャル面においては、斜め入射光に対してはコマ収差の影響も顕著であるので、レンズ104に入射する電磁波の幅が大きい場合には斜め入射光に対する画素上での集光径はさらに大きくなる。
【0079】
なお、光束の幅、又は、集光径が大きいことを、太いとも表現する。また、「理想的」という場合には、球面収差及びコマ収差の影響を考えない場合のことをいう。一方、「現実的」という場合には、球面収差及びコマ収差の影響を考慮する場合のことをいう。
【0080】
これらの要因によりセンサー101の画素上での集光径が太くなると、例えば
図2Aにおける垂直入射光106のように、理想的には画素102cに入射すべき光の一部が、現実的には画素102cに隣接する画素102b又は102dにも入射する。よって、理想的な場合に得られるべき解像度は、現実的には得られない。そのため現実的には、画素列102から得られる画像は、ぼやけた画像になってしまう。
【0081】
コマ収差又は球面収差の影響を低減するには、レンズ104に入射する光の太さを細くする必要がある。しかし、レンズに入射する光の太さを細くするとともに、レンズの大きさを一定以上大きくすることは、一般には困難である。すなわち、レンズの明るさ(光量)を向上(増大)させることと、収差の影響を低減することとの両立は、一般には困難である。
【0082】
上記課題を解決すべく、本実施の形態におけるセンサーアセンブリ100では、レンズ104の形状に特徴を持たせている。レンズ104は、
図1Aの(b)に示されるように、センサーの画素が1画素で構成されているX軸方向(第一の方向)のレンズ径D2が、画素列102が配列されている方向であるY軸方向(第二の方向)のレンズ径D1よりも大きい。ここで、上記のX軸方向等のレンズ径とは、X軸方向等のレンズの幅ということもできる。
【0083】
また、X軸方向(第一の方向)のFナンバーが、Y軸方向(第二の方向)のFナンバーよりも小さいということもできる。
【0084】
図1Bの(a)及び(b)のそれぞれに、レンズ104の形状の例を示す。
図1Bの(a)は、球面レンズを、長径(X軸方向の径)がD2であり短径(Y軸方向の径)がD1である楕円で切り抜いたものに相当する。
図1Bの(b)は、球面レンズを、長辺(X軸に平行な辺)がD2であり短辺(Y軸に平行な辺)がD1である長方形で切り抜いたものに相当する。これらは、ともに、X軸方向の幅がD2であり、Y軸方向の幅がD1である。なお、上記はあくまで例示であり、レンズ104の形状はこれらに限られない。
【0085】
球面レンズを切り抜いてレンズ104を生成する場合には、レンズ104の形状は、X軸方向の長さがY軸方向の長さより長い形状を球面レンズから切り抜いた形状であればよく、切り抜く図形の形状はどんなものであってもよい。つまり、上記図形は、楕円(
図1Bの(a))、長方形(
図1Bの(b))の他にも、三角形、五角形、その他直線又は曲線を組み合わせて得られる図形であってよい。
【0086】
なお、上記において、
図1Aの(a)及び(b)は、それぞれ、センサーアセンブリ100の側面図及び上面図として説明した。これらは、それぞれ、第一の方向に垂直な面におけるセンサーアセンブリ100の断面形状、及び、第二の方向に垂直な面におけるセンサーアセンブリ100の断面形状を示しているともいえる。このように見ると、レンズ104の第一の方向に垂直な面における断面形状は、レンズ104の第二の方向に垂直な面における断面形状と異なる、ということもできる。
【0087】
こうすることで、センサーアセンブリ100は、次のような効果を有する。
【0088】
まず、
図1Aの(b)に示されるサジタル面においては、各画素のX軸方向に隣接する画素が存在しないため、X軸方向に関して各画素上でのビーム径が太くなったとしても、タンジェンシャル面のように解像度が悪化することはない。また、X軸方向のレンズ径D2が大きくなったことでレンズ104を透過する光量が増大するので、例えば垂直入射光106に関して、物面と光軸105との交点から出射して画素102cに入射する光量は増大する。その結果、センサーアセンブリ100は、解像度を維持したまま、光の検出感度を増大できるという効果を奏する。このように、センサーアセンブリ100の画素列102の配列方向に対して直交する方向であるX軸方向のレンズ104の大きさを、画素列102の配列方向であるY軸方向のレンズ104の大きさより大きくすることで、解像度と高い検出感度を同時に満足できるセンサーアセンブリを実現することができる。
【0089】
なお、本実施の形態においては、レンズ1枚により構成される結像光学系で説明したが、複数枚のレンズで構成される結像光学系においても本発明は効果を奏する。結像光学系を複数枚のレンズで構成する場合は、レンズの大きさではなく結像光学系のFナンバーについて考えればよい。すなわち、センサーアセンブリ100の画素列102の配列方向に対して直交する方向であるX軸方向に関して、結像光学系のFナンバーを、画素列102の配列方向であるY軸方向のFナンバーより小さくすることで、解像度と高い検出感度を同時に満足できるセンサーアセンブリを実現することができる。
【0090】
また、上で述べたようにレンズが1枚の場合、レンズの大きさ(有効径)とFナンバーとは、(式1)を満たすので、レンズ枚数によらず結像光学系のFナンバーに着目して同様に考えることができる。
【0091】
Fナンバー=焦点距離/レンズ有効径(直径) (式1)
【0092】
また、上記で述べたレンズ104は、球面レンズでも構わないが、非球面レンズでも構わなく、ここではそれを制限するものではない。
【0093】
センサーアセンブリ100を用いて画像を形成する方法について、
図2Bを参照しながら説明する。
図2Bは、本実施の形態における画像形成方法の説明図である。
【0094】
センサーアセンブリ100を用いて画像を形成することは、例えば
図2Bの(b)に示すような矢印Bの向きに、センサー101とレンズ104とを一体的に搭載したベース101aを走査しながら画像を取得することで達成することができる。その際、例えば、ベース101aを、画素列102の幅の半分の距離だけ動かすごとに画像を撮影し、得られた複数の画像を処理することにより、画素列102の幅Lよりも解像度の高い画像を取得することができる。このようにして高い解像度の画像を得ることを超解像ともいう。
【0095】
X方向に対しては、上で述べたような矢印Bの向きに画素列Lの幅の半分ずつベース101aを回転させるように動かすことで超解像を達成することができる。ここで、ベース101aを回転させる際の回転中心はどこであってもよいが、例えば、画素列102の中心Eとすることができる。画素列102の中心Eを回転中心としてセンサーアセンブリ100を回転させることで正確に画像を取得することができる。
【0096】
また、Y方向に対しては、
図2Bの(a)の矢印C方向にレンズ104をずらすことにより、Y方向に画素列Lの幅の半分ずれた画像を取得することで、超解像を達成することができる。
【0097】
図3は、本実施の形態におけるセンサーアセンブリに用いるセンサーの模式図(a)、センサーアセンブリの側面図(b)及び上面図(c)である。センサーアセンブリ200は、
図1Aに示したセンサーアセンブリ100と類似であるが、センサー101の代わりにセンサー201を備える点で異なる。
【0098】
センサー201はセンサー101と同様に、センサー基板203と画素列202とを有する。画素列202は、センサー基板203上に設けられており、画素202a、202b、202c、202d及び202eを有する。また、上記各画素の大きさは、正方形ではなく、画素の配列方向(Y軸方向)と直交するX軸方向の長さL2が、配列方向の長さL1より長い。こうすることにより、Y軸方向のレンズ径D1よりX軸方向のレンズ径D2の方が大きい場合に、画素列202上でのX軸方向の集光径が太くなった場合であっても、画素列202上で取りこぼしなく電磁波を受光できるようになる。その結果、センサーアセンブリ200は、さらに検出感度が向上する。
【0099】
言い換えれば、画素のそれぞれの第一の方向における幅は、複数の画素のそれぞれの前記第二の方向における幅より大きいことにより、検出感度が向上する。
【0100】
図4は、本実施の形態におけるセンサーアセンブリの側面図(a)及び上面図(b)である。
図4のセンサーアセンブリ210は、
図1Aのセンサーアセンブリ100と同様であるが、
図1Aにおけるレンズ104の代わりにレンズ109を備える点で異なる。レンズ109の右側面109aは、Y軸方向にはレンズ104と同様の連続面(又は、連続曲面ともいえる)である。一方、レンズ109の右側面109aは、X軸方向にはフレネル面となっており、この点でレンズ104と異なる。
【0101】
言い換えれば、レンズ109の第二の方向に垂直な面における断面形状は、フレネル形状を含む。一方、レンズ109の第一の方向に垂直な面における断面形状は、フレネル形状を含まない。
【0102】
こうすることで、特に検出する光が遠赤外線域の場合は次のような効果を有する。
【0103】
上でも述べた通り、遠赤外領域において用いられるレンズは、従来、ゲルマニウム又はシリコンが一般的である。しかし、これらは高価であるばかりでなく、硬く、融点が高いので、成型することが困難である。そのため、加工には研磨が用いられるが加工できる形状に制約があるので、量産適正のある形状としては球面形状しかない。
【0104】
赤外領域の光を透過し、かつ、成型加工が可能な樹脂材料としては、唯一、ポリエチレン(高密度ポリエチレン含む)があるが、ポリエチレン内部での吸収が存在するので、レンズが厚くなる用途には用いられない。
【0105】
例えば、
図5のように、レンズのコバの厚みk=0.5mm、レンズの直径D=10mm、レンズの曲率半径R=20mmとした場合、このレンズの厚みTは1.1mmになる。一方、レンズの直径Dを10mmから12mmに長くした場合、このレンズの厚みTは1.4mmになる。このレンズをポリエチレンで製作した場合、ポリエチレン1mm厚での内部透過率を15.9%、レンズ表面での透過率を95.6%とすると、直径D=10mmのレンズでは透過率が11%であるが、直径D=12mmのレンズでは透過率が6.7%と半分近くに低下する。すなわち、球面形状のレンズにおいては、レンズの直径を長くするとその分レンズの厚みが増し、透過率が低下してしまう。
【0106】
そこで、
図4のレンズ109のように、レンズ109において、少なくともセンサーアセンブリの画素列102の配列方向に対して直交する方向であるX軸方向に関してフレネル面とする。フレネル面のレンズでは、レンズ直径を長くしても透過率が低下しにくい。これにより、レンズ109のY軸方向に関して必要な厚さ(長さ)でレンズ109を製作することができるため、安価でさらに透過率の高い、明るいレンズを構成することが可能になる。こうすることで、安価でかつさらに検出感度の高い、センサーアセンブリを構成することが可能になる。
【0107】
また、ここで右側面109aのX軸方向のフレネル形状は、Y軸方向における球面(または非球面)形状と同じ形状をフレネル面にすることで形成しても構わないが、
図6の(a)のようにY軸方向における球面(または非球面)形状と異なる形状をフレネル面にすることで形成しても構わない。Y軸方向には複数の画素が存在するので、レンズ104や109のY軸方向の形状は斜め入射光の存在を考慮する必要があるが、X軸方向に関しては、画素列102が
図6の(a)において光軸105上にのみ存在するため、光軸上に集光すれば良いことになり、コマ収差の影響を考慮する必要がない。そこで、右側面109aのフレネル面の各ファセットの傾きを、
図6の(a)において各ファセットを透過した遠赤外線が画素列102に向けて進むように、すなわち、球面収差の影響を除去するように設定することが可能になる。一般に、その形状はY軸方向とは異なる非球面形状となるが、ポリエチレンのように成型が可能な樹脂等であれば容易に加工することができる。
【0108】
このようにすることで、レンズ109のX軸方向の幅D2が広くなったとしても、画素列102に精密に遠赤外線を集光することができ、さらに厚みを増大させることなくレンズ109の幅D2を限界まで広げることが可能なため、各画素が受光する遠赤外線の量を増大することが可能になる。以上により、さらに検出感度の高いセンサーアセンブリを構成することが可能になる。
【0109】
また、
図6の(b)のように、センサーアセンブリ210を構成してもよい。レンズ109を透過して画素102c、102d及び102eのそれぞれに集光される遠赤外線をそれぞれ垂直入射光106、斜め入射光110及び107とする。光軸105上にある画素102cと、画素列102の端部の画素102eとの中間にある画素102dに集光する斜め入射光110が、画素102d上にちょうど集光する(ピントが合う)ように、レンズ109のX軸方向のフレネル面の形状を決定しても構わない。
【0110】
このような斜め入射光が存在する場合、レンズ109から各画素までの距離が異なるので、画素列102上でピントが合う位置は2箇所もしくは1箇所(光軸上)になる。そのため、画素上のすべての位置でピントをあわせることはできない。そこで、画素102eに入射する斜め入射光107は画素102eに入射する前にピントを形成し、また、画素102cに入射する垂直入射光106は、仮想的に画素102cの後方でピントを形成するようにする。この場合、画素102c、102d及び102eのそれぞれの上でのトータルのピントずれ量が最小化されることができるため、X軸方向のビーム径を最小化することができる。よって、画素毎で検出感度のばらつきが少ないセンサーアセンブリを構成することが可能になる。
【0111】
なお、ここではセンサーに入射する電磁波として遠赤外線を用いて説明した。検出する温度が常温であれば、黒体から輻射される赤外線のピーク波長は8〜10マイクロメータ近傍に存在する。上の例ではレンズとしては8〜10マイクロメートルの赤外線を透過するポリエチレンを例として上げたが、ポリエチレン以外でも遠赤外線を透過する、成型可能な樹脂があれば、もちろんその樹脂を用いても構わない。
【0112】
また、センサー101を構成する画素は、遠赤外線領域に感度を有するボロメータ又はサーモパイルが通常用いられるが、もちろんそれ以外でも遠赤外線を検出可能な素材があれば、それを用いても構わない。
【0113】
図7は、本実施の形態におけるセンサーアセンブリの側面図(a)及び上面図(b)である。
図7のセンサーアセンブリ220は、
図4のセンサーアセンブリ210と同様であるが、
図4におけるレンズ109の代わりにレンズ111を備える点で異なる。レンズ111がレンズ109と異なる点は、レンズ109の左側面109bは平面であるのに対して、レンズ111の左側面111bは曲面である点である。そして、レンズ111はY軸方向にメニスカスレンズを形成している。こうすることで、YZ断面においてもレンズ111の厚みを薄くすることができる。
【0114】
しかも、
図7の(b)に示すサジタル面はフレネル面で構成されているため、さらにレンズ111を薄く構成することができる。こうすることで、各画素に入射する遠赤外線の量を増大することができるため、さらに検出感度の高いセンサーアセンブリを構成することが可能になる。
【0115】
なお、これまでの実施例において、各レンズ104、109及び111のY軸方向の形状は、いずれもフレネル面等の離散的な面ではなく連続面で構成している。もちろんフレネル面でも構わないが、Y軸方向の形状を連続面とすることで、例えばフレネル面を構成する各ファセットによる光の散乱による集光性能の劣化をなくすことができるため、解像度の低下を防止する効果がある。
【0116】
また、これまではセンサーの中に画素列が一列のみ存在するラインセンサーを用いていたが、
図8に示すように、複数の画素列を配列しても構わない。
【0117】
図8は、本実施の形態におけるセンサーアセンブリに用いるセンサーの模式図(a)、センサーアセンブリの側面図(b)及び上面図(c)である。
図8を参照しながら、3列の画素列を有するセンサー231を有するセンサーアセンブリ230に関して説明する。
【0118】
図8の(a)に示されるように、センサー231は、3つの画素列234、235及び236を有する。
【0119】
画素列234は、画素232a、232b、232c、232d及び232eを有する。
【0120】
画素列235は、画素232f、232g、232h、232i及び232jを有する。
【0121】
画素列236は、画素232k、232l、232m、232n及び232oを有する。
【0122】
各画素列内で、各画素は、Y軸方向に配列されており、高さ、幅ともにL1の正方形形状である。各画素列は、間隔L3を隔てて平行に配置されている。
【0123】
図8の(b)及び
図8の(c)にセンサー231を用いたセンサーアセンブリ230を示している。
図8の(b)はセンサーアセンブリ230の側面図を、
図8の(c)は
図8の(a)の矢印A方向から見た上面図である。センサーアセンブリ230は
図1Aに示したセンサーアセンブリ100と類似であるが、センサーアセンブリ100における1列の画素列102の代わりに、センサーアセンブリ230では、3列の画素列234、235及び236が、距離L3を隔てて設けられている点で異なる。
【0124】
この時、レンズ104のX軸方向の幅D2がY軸方向の幅D1より大きいことにより各画素上でのX軸方向の集光径が大きい場合であっても、画素列234に入射すべき電磁波の一部もしくは全部が画素列235や236に入射しないようにL3を決定する。同様に、画素列235又は236に入射すべき電磁波の一部もしくは全部が画素列234に入射しないように画素列間の距離L3を決定する。このようにすることで、解像度を維持したまま、各画素に入射する遠赤外線の量を増大することができるので、解像度と高い検出感度を維持したまま、一度に検出できる領域が3倍に増えるという効果を有する。
【0125】
なお、
図8においては、各画素は一辺L1の正方形形状としたが、センサー201で示したように、X軸方向に長い長方形としても構わない。そうすることで、各画素上でのX軸方向の集光径が大きくなった場合であっても、受光する電磁波の光量が増えるので、さらに検出感度の高いセンサーアセンブリを構成することができる。
【0126】
以上のように、本実施の形態におけるセンサーアセンブリは、第一及び第二の方向における結像光学系のFナンバーのうち大きい方を第一及び第二の方向のFナンバーとして共通に有する結像光学系を用いる場合よりも、当該結像光学系を通過して画素に検出される電磁波の線量を増加させることができる。よって、センサーアセンブリは、上記の場合よりも検出感度を向上させることができる。
【0127】
また、結像光学系に用いる材料の電磁波の透過率が比較的低い場合でも、センサーアセンブリは、結像光学系全体として透過させる電磁波の線量を維持し又は増大させることができる。結像光学系に用いる材料の電磁波の透過率が比較的低い場合、当該結像光学系を透過する電磁波の量が低下する。一方、上記のように第一及び第二の方向でFナンバーを異ならせることにより当該結像光学系を透過する電磁波の量を増加させる。よって、その増加分が、その低下分より大きく又は等しくなるようにすることで、結像光学系全体として透過させる電磁波の線量を維持し又は増加させることができる。
【0128】
よって、結像光学系にシリコン又はゲルマニウムのような高価かつ加工のコストが高い材料を用いる必要がなく、安価かつ加工のコストが低い材料を用いることができる。よって、センサーアセンブリは、検出感度を維持しながら安価に製造可能である。
【0129】
(実施の形態2)
図9を参照しながら、本実施の形態におけるセンサーアセンブリ300について説明する。
【0130】
図9は、本実施の形態におけるセンサーアセンブリ300の側面図(a)及び上面図(b)である。センサーアセンブリ300は実施の形態1のセンサーアセンブリ200と類似であるが、レンズ104を用いた透過型の結像光学系ではなく、軸外し放物面鏡304を用いた反射型の結像光学系である点で異なる。それに伴い、センサー301の配置が適切な位置に変更されている。
【0131】
図9の(a)は、センサーアセンブリ300の側面図であり、
図9の(b)はセンサーアセンブリ300を
図9の(a)の矢印Aの方向から見た上面図である。ここで、
図9の(b)における軸外し放物面鏡304は、理解のために半透過で示したが、実際には透過していない。また、それぞれの図に座標軸にて示すように、
図9の(a)においてX軸方向は、紙面を表から裏へ貫く方向とし、Y軸方向を紙面内下から上へ向かう方向とし、Z軸方向を紙面内左から右へ向かう方向としている。同様に、
図9の(b)においてX軸は紙面内下から上へ向かう方向とし、Y軸方向は紙面を裏から表へ貫く方向とし、Z軸方向は紙面内左から右へ向かう方向としている。
【0132】
センサーアセンブリ300は、センサー301と、軸外し放物面鏡304とを備える。
【0133】
センサー301は、センサー基板303と画素列302とを有する。画素列302は、センサー基板303の上に設けられており、画素302a、302b、302c、302d及び302eを有する。
【0134】
軸外し放物面鏡304は、電磁波をセンサー301上の検出面に結像させる。軸外し放物面鏡304は、結像光学系に相当する。
【0135】
図9は、本実施の形態におけるセンサーアセンブリ300の側面図(a)及び上面図(b)である。まず、
図9の(a)において、センサーアセンブリ300のタンジェンシャル面における動作を説明する。
図9の(a)において、垂直入射光305は、物面上でかつ光軸308上の図示しない一点から発せられた電磁波である。垂直入射光305は、センサーアセンブリ300の軸外し放物面鏡304に対し、光軸308に沿って垂直入射する。垂直入射光305は、軸外し放物面鏡304にて反射し、センサー301上の画素302cに入射する。
【0136】
この構成において、画素列302上に、軸外し放物面鏡304を構成する放物面の焦点が位置しており、垂直入射光305はこの焦点位置に集光するように配置されている。
【0137】
また、物面上かつ光軸308外の図示していない一点から発せられて軸外し放物面鏡304に斜めに入射する電磁波を斜め入射光という。
図9の(a)において、斜め入射光306及び307は、例えば最も大きな入射角θ1で入射する斜め入射光である。斜め入射光306及び307のそれぞれは、センサー上の中心画素である画素302cから最も離れた画素302a及び302eに集光する。以上のように、物面上からY軸に平行に発せられて、軸外し放物面鏡304に角度θ1以内の角度で入射する電磁波は、いずれも画素列302のいずれかの位置に集光する。
【0138】
図9の(b)を参照しながら、センサーアセンブリ300のサジタル面における動作を説明する。画素302a、302b、302c、302d及び302eは、本実施の形態においてはY軸方向を中心にして、反時計回り少し回転した位置となっている。
【0139】
図9の(a)のタンジェンシャル面と同様に、
図9の(b)のサジタル面においても、垂直入射光305は、センサーアセンブリ300の光軸308に沿って軸外し放物面鏡304に垂直入射する。垂直入射光305は、軸外し放物面鏡304にて反射し、画素302cのX軸方向の中心に集光する。
【0140】
また、
図9の(a)で示した斜め入射光306及び307のそれぞれは、
図9の(b)においては軸外し放物面鏡304で反射されたあと、画素302a及び302eの近傍に集光する。このようにすることで、物面上からY軸に沿って発せられた電磁波を、軸外し放物面鏡304により画素列302上に結像することができる。
【0141】
以降、センサーアセンブリ300の効果を説明する。軸外し放物面鏡304に光が入射する時、垂直入射光305のサジタル光は、軸外し放物面鏡304において光軸を含む平面内で反射する。一方、斜め入射光306及び307のサジタル光は平面ではなく湾曲面で反射する。ここで、斜め入射光306及び307が軸外し放物面鏡304で受けるサジタル面内の曲率は互いに異なる。ここで、サジタル光とは、サジタル面を伝搬する光のことをいう。
【0142】
タンジェンシャル光に関しては、垂直入射光305と、斜め入射光306及び307とのいずれも、光軸308及びY軸を含む平面内にて反射されることになる。よって、同じFナンバーであれば、画素列302上における斜め入射光306及び307のX軸方向の集光径と、画素列方向の集光径とは互いに異なる。ここで、タンジェンシャル光とは、タンジェンシャル面を伝搬する光のことをいう。
【0143】
そこで、X軸方向の集光径とY軸方向の集光径とを異ならせてもよい。また、X軸方向のFナンバーとY軸方向のFナンバーとを異ならせてもよい。特に、X方向のFナンバーを大きくすることで、画素列302上のX方向の集光径とY軸方向の集光径とを略同等にすることができる。
【0144】
一方で、本実施の形態のように、画素列がX軸方向と直交する方向に配列される場合、本来入射すべき画素に隣接する画素に電磁波が入射することによる解像度の悪化を防止するため、画素列方向(画素の並び方向)の集光径を細く(小さく)しておく必要がある。そこで、各画素上における画素列方向の集光径が小さくなるように、センサー301及び軸外し放物面鏡304を配置する。
【0145】
さらに、本実施の形態において、各画素302a、302b、302c、302d及び302eのX軸方向とそれに直交する方向の長さをそれぞれL5及びL4とした時、L5の長さをL4の長さよりも長くする。こうすることにより、画素列方向の集光径が小さくなるようにセンサー301又は軸外し放物面鏡304の配置を決定することで、各画素上におけるX軸方向の集光径が大きくなったとしても、各画素で入射すべき光量を取りこぼしなく受光することができるようになる。そして、画素列方向の解像度を維持したまま、各画素に入射する電磁波の量を増大させ、高い解像度と高い検出感度とを同時に達成し、さらに画素毎に入射する光量のばらつきを低減することも可能になる。
【0146】
さらにこの時、軸外し放物面鏡304で構成する結像光学系のFナンバーに関して、画素列方向の解像度が悪化しない範囲で、タンジェンシャル方向のFナンバーを小さくしても構わない。そうすることで、画素列方向の解像度を維持したまま、各画素に入射する電磁波の量を増大することができるため、高い解像度と高い検出感度とを同時に達成することができる。
【0147】
図10は、本実施の形態におけるセンサーアセンブリにおいて、迷光を受光しにくくなる配置に関する説明図である。
図10に示されるように、軸外し放物面鏡304の焦点310が画素列302上のいずれかの位置にあるように、センサー301を、X軸を中心に
図10内において半時計回り方向に所定の角度(角度φ1)だけ回転させても構わない。この状態であれば、例えば遮蔽体309等を設けることで、容易に迷光による画質の悪化を防止することができる。
【0148】
センサーアセンブリ300において、軸外し放物面鏡304で反射せずにセンサー301に入射する電磁波が迷光であり、
図10に示される迷光311a又は311bがそれに相当する。それに対して、本実施の形態のようにセンサー301がX軸を中心に半時計回り方向に傾けられていると、主に紙面右上から入射してくる迷光に対して見込み角が小さくなるだけではなく、遮蔽体309の存在により迷光から遮蔽することが可能になる。よって、センサーアセンブリ300は、ノイズの影響を低減することができる。なお、この効果は、センサー301が画素列302で構成されたラインセンサーに限定した効果ではなく、二次元エリアセンサーであっても同様な効果を得ることができる。
【0149】
図11は、実施の形態2におけるセンサーアセンブリにおいて、迷光を受光しにくくなる配置に関する説明図(a)、及び、さらに迷光を受光しにくくなる配置に関する説明図(b)である。
【0150】
センサーアセンブリ320は、センサーアセンブリ300と類似であるが、軸外し放物面鏡304で反射した電磁波がセンサー301の画素列302にて受光される前に平面ミラー321にて反射することが異なる。ここで、
図9又は
図10では斜め入射光306、307を図示していたが、
図11においてはわかりやすくするために斜め入射光306、307の図示は省略している。
【0151】
このような構成とすることで、必然的にセンサー301の画素列302側が平面ミラー側を向くことになるため、主に紙面右上から入射してくる迷光311c及び311dが直接に画素列302に入射しないような構成となる。また、一般にミラーの輻射率は0.1以下と低く、画素列302に近接する位置に平面ミラー321又は軸外し放物面鏡304を配置しても、ノイズ源になりにくい。これらにより、センサーアセンブリ320は、さらに迷光によるノイズの影響が低減することができる。なお、他の方向からの迷光は、筐体322等によりセンサーアセンブリ320が囲われることで容易に入射を防止することができるので、ここではこれ以上は述べない。
【0152】
さらに、
図11の(b)に示されるセンサーアセンブリ320は、上で説明した
図11の(a)のセンサーアセンブリ320と同様の構成要素であるが、配置に関して以下で述べる要件を加える。軸外し放物面鏡304から平面ミラー321に向けて出射する垂直入射光305は、その主光線が平面ミラー321の法線に対して−θbの角度で入射するとする。ここで、θbは正の値とし、平面ミラー321の法線に対して反時計回り方向の角度をマイナスとしている。
図11の(b)では、垂直入射光305は平面ミラー321に対してマイナスの角度で入射していることになる。
【0153】
次に、軸外し放物面鏡304のうちセンサー301に最も近い位置を点304aとし、センサー301のうち軸外し放物面鏡304に最も近い位置を301aとし、点304a及び点301aを通過する直線を直線Bとする。この直線Bが平面ミラー321と交わる点において、平面ミラー321の法線となす角が
図11の(b)のように+θaとする。この時、θaは正の値とすると、仮に点304a及び点301aを通って直線Bに沿って平面ミラー321に迷光が入射した場合、平面ミラー321における垂直入射光305と、直線Bに沿った迷光は、平面ミラー321の法線に対して逆方向に反射することになる。すなわち、センサー301とは逆方向に反射することになるため、直線Bに沿って入射した迷光がセンサー301上の画素列302に入射することはなくなる。このように、センサーアセンブリ320は、さらに迷光によるノイズの影響が低減することができる。
【0154】
なお、
図11の(b)においても、他の方向からの迷光は、筐体322等によりセンサーアセンブリ320が囲われることで容易に入射を防止することができるため、ここではこれ以上は述べない。
【0155】
なお、
図11を用いて説明した迷光を防止する効果は、センサー301が画素列302で構成されたラインセンサーに限定した効果ではなく、二次元エリアセンサーであっても同様に得られる効果である。
【0156】
以上のように、本実施の形態におけるセンサーアセンブリは、第一及び第二の方向のFファクターが異なるミラーを結像光学系として用いて具体的に実現される。つまり、センサーアセンブリは、透過型の結像光学系ではなく、反射型の結像光学系を用いて実現することができる。
【0157】
(実施の形態3)
実施の形態1又は2において説明したセンサーアセンブリを、自動車内部に用いる例について、本実施の形態において説明する。
【0158】
図12は、実施の形態3において、センサーアセンブリを自動車に搭載した場合の、自動車の断面図(a)、及び、上面図(b)である。
図12の(a)は自動車500内部にセンサーアセンブリ502を取り付けた例の側面図であり、
図12の(b)はその上面図である。
【0159】
センサーアセンブリ502は実施の形態1又は2のいずれかで説明したセンサーアセンブリのひとつであり、ここでは遠赤外線領域に感度を持ち温度分布を測定できる温度センサーのセンサーアセンブリである。
【0160】
自動車500には運転者501が乗車して運転しており、センサーアセンブリ502の視野506内に運転者501が捉えられている。一般に人の温冷感(暑い、寒いと思う感覚)は人の体表面温度からある程度推定可能とされている。例えば、血流量が多く体幹部に近い額等は周囲温度に対して変動量が少なく、通常33℃近傍に保たれている。一方、手足、又は、顔面であっても頬、鼻、耳部の温度は周囲温度の影響を受けやすく、温冷感とある程度相関があるとされている。よって、手足又は顔面周辺の温度を精度良く測定できると、その測定結果から人の温冷感を推定することが可能になる。例えば、推定された温冷感をもとに空調機器を制御することで、自動車500内の快適な空調を維持することができる。
【0161】
本実施の形態において、運転者501の顔面の温度分布を、センサーアセンブリ502で検出することを考える。そのために、センサーアセンブリ502は、
図12の(b)に示すように、回転中心505を中心として回転可能に配置される。センサーアセンブリ502は、回転中心505を中心として回転することにより、運転者501の顔面を含む走査範囲507を走査しながら温度分布を検出することができる。また、上下方向においても
図12の(a)に示すように、センサーアセンブリ502の視野506の範囲内に運転者501の顔面が入るように配置する。こうすることにより、運転者501の運転中の顔の温度をリアルタイムに測定することができる。
【0162】
センサーアセンブリ502により測定された運転者501の顔面の温度は、図示しない配線により制御部508に送信される。制御部508は、測定された顔面の温度を解析し、主に頬、鼻、耳等の温度から運転者501の温冷感を推定し、その推定結果を元に空調装置509を制御して空調装置509から吹き出される空気の温度、向き、風力等を調整する。こうすることにより、運転者501を常に快適な状態に保つことができるため、ストレスの軽減された運転環境を提供することができる。
【0163】
自動車500の周囲のウインドウから入射する外来光に関して考える。後部ウインドウ504はセンサーアセンブリ502の対向する場所に位置するので、センサーアセンブリ502は、特に後部ウインドウ504から入射する外来光の影響を受けやすい。
【0164】
外来光にはいくつか種類があるが、その一つとして太陽光がある。太陽光はそのスペクトルの中に遠赤外線を有し、かつ、遠赤外線の光量は比較的大きい。そのため、太陽光が直接にセンサーアセンブリ502に入射すると、ノイズとなり正確に運転者501の顔面の温度分布を測定するのが難しくなる。
【0165】
そこで、
図12の(a)においては、センサーアセンブリ502の視野506の範囲が、センサーアセンブリ502からみてすべて水平方向以下になるように配置する。太陽は、水平線又は地平線と等しい高さか、それらより上に位置することが多く、水平線又は地平線より下の位置にあることは通常は考えにくい。そこで、センサーアセンブリ502の視野506の範囲を、センサーアセンブリ502からみて水平方向より下側にしておけば、太陽光が直接にセンサーアセンブリ502に入射することはほぼなくなる。こうすることで、太陽光に含まれる遠赤外線がセンサーアセンブリ502に入射することによるノイズの発生を抑え、確実に運転者501の温冷感を推定することが可能になる。
【0166】
さらに、
図13に示すように、視野506の範囲内に後部ウインドウ504が入らないように、センサーアセンブリ502の配置を構成しても構わない。こうすることで、太陽光503だけでなく、それ以外の外来光510がセンサーアセンブリ502に入射することを防止することができる。
【0167】
なお、ここでいうそれ以外の外来光とは、例えば後方にいる自動車の、エンジンの熱により暖められたボンネットから発せられる遠赤外線、又は、自動車500の後方を歩く人等から発せられる遠赤外線があり得る。こうすることで、太陽光を含む外来光に含まれる遠赤外線がセンサーアセンブリ502に入射することによるノイズの発生を抑え、より確実に運転者501の温冷感を推定することが可能になる。
【0168】
さらには、後部ウインドウ504に遠赤外線をカット可能なフィルターを挿入しても構わない。後部ウインドウ504に意図的に遠赤外線をカットするフィルターを挿入することでも、太陽光を含む外来光が、センサーアセンブリ502に直接入射することを防止できるため、太陽光を含む外来光に含まれる遠赤外線がセンサーアセンブリ502に入射することによるノイズの発生を抑え、確実に運転者501の温冷感を推定することが可能になる。
【0169】
なお、ここでは自動車500に乗車している人が運転者501のみであるとして説明したが、もちろん運転者501以外の同乗者が乗車している場合でも有効である。運転者501以外の同乗者が乗車している場合、同乗者の顔面等の温度分布から温冷感を推定し、その同乗者にむけた最適な空調を同乗者の周囲で実現できるように、制御部508を制御しても構わない。吹き出す空気の温度、向き、又は、風量を局所的に調整することで、自動車500に乗っている人それぞれに応じた最適な局所空調を提供することが可能になる。
【0170】
さらに、上では運転者501の主に頬や鼻、耳等の顔面の温度分布から運転者501の温冷感を推定したが、もちろん運転者501の手まで含めて測定しても構わない。顔面だけではなく抹消の体表面温度まで測定することで、さらに正確に運転者501の温冷感を推定することが可能になり、さらに快適な運転環境を提供することが可能になる。
【0171】
また、上では後部ウインドウ504に遠赤外線をカットするフィルターを挿入することを述べたが、もちろん後部ウインドウ504だけではなく自動車500の側面のウインドウに遠赤外線をカットするフィルターを挿入しても構わない。こうすることでより確実に太陽光を含む外来光がセンサーアセンブリ502に直接に入射することを防止できる。そのため、太陽光を含む外来光に含まれる遠赤外線がセンサーアセンブリ502に入射することによるノイズの発生を抑え、確実に運転者501の温冷感を推定することが可能になる。
【0172】
次に、センサーアセンブリ300のように、軸外し放物面鏡のようなミラーを結像光学系として用いる場合に、センサー301に外来光が入射する場合を考える。ここでは
図14のように、実施の形態2で説明したセンサーアセンブリ300を、自動車500の天井近傍に取り付けることを考える。センサーアセンブリ300は、遠赤外線を入射させる場所以外は、筐体511で囲われることにより、外来光が自動車500の前方からセンサー301に直接に入射することを防止できる。さらに、センサー301を自動車500の天井周辺に取り付けることにより、センサーアセンブリ300の上部から入射する、軸外し放物面鏡を経由した赤外線以外の赤外線は、すべて自動車500の天井からの赤外線となる。よって、自動車500の天井付近に温度センサー512を取り付けておき、その温度と自動車500の天井の輻射率から迷光の量を計算し、センサー301に入射して得られた温度分布を補正することで、運転者501の温度分布を誤差の影響を低減して求めることができる。なお、輻射率の低い素材を自動車500の天井に貼っておいても構わない。そうすることで、外来光自体を低減することができ、運転者501の顔面の温度分布を求める際に、誤差の影響を低減することができる。
【0173】
なお、上ではセンサーアセンブリ300を例にとって説明したが、これはセンサーアセンブリ内にミラーを有する場合には一般に当てはまるものであり、センサーアセンブリ300の形態に限定するものではない。
【0174】
なお、本実施の形態においては、センサーアセンブリとしてラインセンサーを用いたセンサーアセンブリ502を用いて説明していたが、ここで述べた実施例は、センサーアセンブリ502が内蔵するセンサーをラインセンサーに限定した効果ではなく、二次元エリアセンサーであっても同様な効果を得ることができる。
【0175】
図15は、本実施の形態において、センサーアセンブリを走査することで自動車内の温度分布を取得することの説明図(a)、及び、走査する際のサンプリング周期に関する説明図(b)である。
図15を参照しながら、センサーアセンブリ502を走査することで自動車500内に乗車している人の温度分布を測定する方法に関して説明する。
【0176】
上でも述べた通り、センサーアセンブリ502は走査範囲507を走査しながら自動車500に乗車している人の温度分布を検出するが、例えば人の温度分布を鼻や頬を区別しながら走査するには、角度1°程度のサンプリングピッチで走査する必要がある。ここで、仮に、センサーアセンブリ502が一回のサンプリングを行うのに要する時間が1秒で、160°の走査範囲を走査するとした場合、センサーアセンブリ502が端から端まで走査するのに160秒必要となる。これでは、特に乗車直後で早期に室温調整する必要がある場合には、有用でない。そこで、本実施の形態では以下のようにセンサーアセンブリ502による走査を行う。
【0177】
図15の(a)のように、運転者501と同乗者513とが自動車500に乗車しており、かつ、走査範囲のうち運転者501がいる方の端から走査が始まった場合、同乗者513の温度分布はなかなか反映されない。そこで、乗車開始時には必要なサンプリング角度よりもおおきな角度で粗くサンプリングして、どの位置に人が存在するかを検出することを考える。
【0178】
例えば
図15の(b)においては、乗車時等運転開始時には10°おきにサンプリングすることにした。こうして10°おきに粗くサンプリングすることでまず走査範囲の端から端まで走査することにより、16秒(=160/10)でどの位置に人が存在するかを検出することができる。その次に、例えば運転者501が検出された位置を、必要な精度である1°おきに検出し、次に同乗者513の位置を必要な精度である1°おきに検出するようにしている。こうすることで、無駄な走査を省き、乗車している人の温冷感をなるべく頻繁に推定することができるため、運転者501と同乗者513とを常に快適な状態に保つことができ、ストレスの軽減された乗車環境を提供することができる。
【0179】
なお、上で述べたサンプリング周期や走査範囲の値はあくまでも例であり、その値に限定するものではない。
【0180】
また、上で述べた粗くサンプリングするタイミングは、上で述べた乗車時(エンジンをONしたタイミング)以外であってもよい。例えば、人の乗り降りの可能性を含めるために自動車500のドアが開閉されたタイミングとしても構わないし、さらにはそれまで人が存在するとしていた場所に人が検出されなくなった場合(例えば人が自動車内を移動した等)でも構わないし、その他のタイミングであってもよい。
【0181】
さらに、例えばエンジンをONしたタイミングにおいて、まず初めに運転者501の存在範囲を走査して運転者の温度分布を検出しても構わない。通常自動車をONするタイミングにおいては、運転席に運転者が乗車している可能性が高い。一方、当該タイミングにおいて運転席以外の席に同乗者が乗車している可能性は不明である。そこで、エンジンをONしたタイミングにおいて運転者501の存在範囲を走査して運転者501の温度分布から運転者501の温冷感を推定し、運転者501の周囲を始め、他の席も含めて運転者501の温冷感を元に同じ条件(温度、風量等)で空調装置509の制御を開始する。
【0182】
次に、例えば10°おきで走査範囲507を走査し、同乗者の有無と、同乗者が存在する場合はその場所を特定し、空調装置509の風向を、同乗者がいる位置が快適になるように考慮して制御する。同乗者がいない場合には、運転者501の周囲のみを考慮して空調装置509を運転する。さらに、特定された同乗者の場所を1°おきにサンプリングすることで同乗者の温度分布から同乗者の温冷感を推定して空調装置509を制御する。こうすることで、サンプリング速度が遅い場合であっても、乗車してすぐでも快適な自動車内の空調装置を実現することができる。
【0183】
(実施の形態4)
図16を参照しながら、本実施の形態におけるセンサーアセンブリ700について説明する。
【0184】
図16は、本実施の形態におけるセンサーアセンブリ700の側面図(a)と上面図(b)である。
図17は、本実施の形態におけるセンサーアセンブリの正面図である。
【0185】
センサーアセンブリ700は実施の形態1のセンサーアセンブリ100と類似であるが、レンズ104に代えてレンズ704を備える点と、センサー101に代えてセンサー701を備える点とが異なる。
【0186】
図16の(a)は、センサーアセンブリ700の側面図であり、
図16の(b)はセンサーアセンブリ700を
図16の(a)の矢印Aの方向から見た上面図である。
【0187】
レンズ704は、レンズ104と同様、電磁波をセンサー701上の検出面に結像させる。レンズ704は、結像光学系に相当する。
【0188】
レンズ704は、
図16の(b)に示されるように、センサーの画素が1画素で構成されているX軸方向(第一の方向)のレンズ径D1が、画素列702が配列されている方向であるY軸方向(第二の方向)のレンズ径D2よりも小さい。また、X軸方向(第一の方向)のFナンバーが、Y軸方向(第二の方向)のFナンバーよりも大きいということもできる。
【0189】
センサー701は、センサー基板703と画素列702とを有する。画素列702は、センサー基板703の上に設けられており、画素702a、702b、702c、702d及び702eを有する。なお、センサー701におけるレンズ104と対向する側の面を検出面ともいう。なお、センサー701が5個の画素を有する場合を例として説明するが、画素の数はこれに限られない。
【0190】
図17の(a)及び(b)のそれぞれは、レンズ704の形状の例である。
図17の(a)は、球面レンズを、長径(Y軸方向の径)がD2であり短径(X軸方向の径)がD1である楕円で切り抜いたものに相当する。
図17の(b)は、球面レンズを、長辺(Y軸に平行な辺)がD2であり短辺(X軸に平行な辺)がD1である長方形で切り抜いたものに相当する。これらは、ともに、X軸方向の幅がD1であり、Y軸方向の幅がD2である。なお、上記はあくまで例示であり、レンズ704の形状はこれらに限られない。
【0191】
球面レンズを切り抜いてレンズ704を生成する場合には、X軸方向の長さがY軸方向の長さより短い形状を球面レンズから切り抜けばよく、切り抜く図形の形状はどんなものであってもよい。つまり、上記図形は、楕円(
図17の(a))、長方形(
図17の(b))の他にも、三角形、五角形、その他直線又は曲線を組み合わせて得られる図形であってよい。
【0192】
以降で、実施の形態1におけるレンズ104と、レンズ704との差について説明する。
【0193】
図18は、本実施の形態におけるセンサーアセンブリの測定範囲を示す模式図である。
図18において、説明のために、センサー701が備える画素のうち画素702a、702c及び702eが描かれている。また、併せて、センサー101が備える画素のうち画素102a、102c及び102eが描かれている。その際、センサー701における中央の画素である画素702cの位置と、センサー101における中央の画素である画素102cの位置とが一致するように描かれている。
【0194】
さらに、
図18には、レンズ704を用いて、センサー701又はセンサー101に集光される電磁波の範囲が示されている。具体的には、センサー701(画素702a〜702e)には、範囲712に含まれる領域内から発せられる電磁波が集光される。一方、センサー101(画素102a〜102e)には、範囲711に含まれる領域内から発せられる電磁波が集光される。センサー701の方がセンサー101より長いので、範囲712の方が範囲711より広い角度範囲を含む。つまり、センサー701とセンサー101とは同じ画素数を有するが、センサー701の方が広い角度範囲からの電磁波を受光することができる。
【0195】
以上のように本実施の形態におけるセンサーアセンブリは、より広い角度範囲からの光を受光することができるので、より広い領域から到来する電磁波を受光することができる。
【0196】
以上、一つまたは複数の態様に係るセンサーアセンブリなどについて、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、一つまたは複数の態様の範囲内に含まれてもよい。