特許第6338596号(P6338596)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6338596
(24)【登録日】2018年5月18日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】歯科用ドリルビット
(51)【国際特許分類】
   A61C 3/02 20060101AFI20180528BHJP
【FI】
   A61C3/02 Z
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-552028(P2015-552028)
(86)(22)【出願日】2014年1月9日
(65)【公表番号】特表2016-503695(P2016-503695A)
(43)【公表日】2016年2月8日
(86)【国際出願番号】EP2014000025
(87)【国際公開番号】WO2014108332
(87)【国際公開日】20140717
【審査請求日】2017年1月5日
(31)【優先権主張番号】1300486.6
(32)【優先日】2013年1月11日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】506260386
【氏名又は名称】ノベル バイオケア サーヴィシィズ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【弁理士】
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】クンツ, パスカル
(72)【発明者】
【氏名】ヨハンソン, ウルフ
【審査官】 今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−110723(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0112517(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0053674(US,A1)
【文献】 特表2007−520295(JP,A)
【文献】 米国特許第7559765(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイド穴(34)を与えられた手術用テンプレート(32)と組み合わせた歯科用ドリルビット(10)であって、ガイド穴(34)が、歯科用ドリルビットを直接、又はガイド穴中に与えられたガイドスリーブを介して案内するように適合されており、歯科用ドリルビットが、第一端(12)、第二端(14)、第一端に配置された球形ドリルヘッド(16)、及び球形ドリルヘッドから第二端の方に延びる少なくとも一つの螺旋形溝(26)を含み、少なくとも一つの螺旋形溝を有する歯科用ドリルビットの部分(24)が、歯科用ドリルビット(10)をガイド穴(34)によって直接、又はガイド穴(34)に与えられたガイドスリーブを介して案内するために実質的に円筒形であり、球形ドリルヘッドの最大直径(D1)が、少なくとも一つの螺旋形溝を有する歯科用ドリルビットの部分(24)の直径(D2)と等しいか又は実質的に等しく、歯科用ドリルビット(10)が、第一端及び第二端を通って延びる長手方向軸(20)をさらに含み、長手方向軸が、球形ドリルヘッドが180°より大きい扇形角度(θ)を有する扇形を規定する平面にあることを特徴とする歯科用ドリルビット。
【請求項2】
球形ドリルヘッドが、複数の切削刃(18)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の歯科用ドリルビット。
【請求項3】
球形ドリルヘッドが、半径方向から中央に集中されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の歯科用ドリルビット。
【請求項4】
第二端の歯科用ドリルビットの部分(22)が、穿孔機への取り付けのために適合されていることを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載の歯科用ドリルビット。
【請求項5】
少なくとも一つの螺旋形溝が、3〜20°の範囲のピッチを有することを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載の歯科用ドリルビット。
【請求項6】
少なくとも一つの螺旋形溝が、二つのからみ合った螺旋形溝(26a,26b)からなることを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載の歯科用ドリルビット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科用ドリルビットに関する。本発明はまた、かかる歯科用ドリルビットの使用に関する。本発明はまた、患者の顎骨の傾斜した骨表面に穴を穿孔する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
患者の顎骨に穴を穿孔するための公知のドリルビットは、螺旋形溝を有する円筒形軸の先端に切削点を含む。切削点は、点角度を規定する二つの真直ぐな切削刃を有する。かかるドリルは、案内された歯科手術において使用されることができる(「案内されたねじれドリル(Guided Twist Drill)」)。しかし、かかるドリルビットは、ドリルビットの長手方向軸に対して強く傾斜している物体又は表面に穴を穿孔するためには好適でない。
【0003】
公知の歯科用ドリルビットの別の例は、Nobel Biocareによって提供される「案内ドリル(Guide Drill)」である。「案内ドリル(Guide Drill)」は、球形ドリルヘッドを含む。「案内ドリル(Guide Drill)」は、フリーハンド手術のために使用されることができる。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、添付の独立請求項に規定される。実施態様は、添付の従属請求項に規定される。
【0005】
本発明の一つの側面によれば、ガイド穴を与えられた手術用テンプレートと組み合わせた歯科用ドリルビットであって、ガイド穴が、歯科用ドリルビットを直接、又はガイド穴中に与えられたガイドスリーブを介して案内するように適合されており、歯科用ドリルビットが、第一端、第二端、第一端に配置された球形ドリルヘッド、及び球形ドリルヘッドから第二端の方に延びる少なくとも一つの螺旋形溝(flute)を含む歯科用ドリルビットが提供される。少なくとも一つの螺旋形溝を有する歯科用ドリルビットの部分は、実質的に円筒形であることができ、手術用テンプレートのガイド穴/ガイドスリーブに適合する。
【0006】
球形ドリルヘッドは、複数の切削刃(18)を含むことができる。
【0007】
球形ドリルヘッドは、半径方向から中央に集中される(centralized)ことができる。
【0008】
歯科用ドリルビットは、第一端及び第二端を通って延びる長手方向軸をさらに含むことができ、長手方向軸は、球形ドリルヘッドが180°に等しいか又は180°より大きい扇形角度を有する扇形を規定する平面にある。
【0009】
第二端の歯科用ドリルビットの部分は、穿孔機への取り付けのために適合されていることができる。
【0010】
少なくとも一つの螺旋形溝は、3〜20°の範囲のピッチを有することができる。
【0011】
少なくとも一つの螺旋形溝は、二つのからみ合った螺旋形溝からなることができる。
【0012】
球形ドリルヘッドの最大直径は、少なくとも一つの螺旋形溝を有する歯科用ドリルビットの部分の直径と等しいか又は実質的に等しいことができる。
【0013】
本発明の別の側面は、案内された手術のための、特に歯科用ドリルビットの長手方向軸に対して傾斜した物体又は表面に穴を穿孔するための、上に規定される歯科用ドリルビットの使用に関する。
【0014】
本発明のさらに別の側面によれば、患者の顎骨の傾斜した骨表面に穴を穿孔する方法であって、ガイド穴を有する手術用テンプレートを、顎骨の傾斜した骨表面の上に、前記表面が、ガイド穴の長手方向軸に対して傾斜するように配置すること、上に規定される歯科用ドリルビットを、ガイド穴を通して挿入すること、及び歯科用ドリルビットを使用して、傾斜した表面に穴を穿孔すること、ただし、歯科用ビットは、ガイド穴によって、又はガイド穴中に与えられたガイドスリーブによって案内される、を含むことを特徴とする方法が提供される。この側面は、前に規定された側面と同一又は類似の技術的効果及び特徴を示すことができ、逆もまたそうである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明のこれらの及び他の側面は、本発明の現在の好ましい実施態様を示す添付図面を参照して、さらに詳述されるだろう。
【0016】
図1-3】図1は、本発明の実施態様による歯科用ドリルビットの側面図である。図2は、図1の歯科用ドリルビットの正面図である。図3は、図1の歯科用ドリルビットのドリルヘッドの模式的側面図である。
【0017】
図4図4は、図1のドリルビットの透視図である。
【0018】
図5a-5b】図5a−5bは、案内された手術を使用して、傾斜した表面に穴を穿孔するための、図1〜4のドリルビットを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1〜4は、本発明の実施態様による歯科用ドリルビット10を示す。歯科用ドリルビット10は、実質的に真直ぐである。歯科用ドリルビット10は、第一端12、及び対向する第二端14を含む。歯科用ドリルビット10は、第一端12に一つの球形ドリルヘッド16をさらに含む。球形ドリルヘッド16の形状(半径)は、完全に均一であってもよいが、代替的に、球形ドリルヘッド16の半径rは、±10%異なっていてもよい。球形ドリルヘッド16は、複数の切削刃18を含む。好ましくは、切削刃18の数は、5〜8個の範囲である。また、好ましくは、切削刃18は、湾曲している。切削刃18を有する球形ドリルヘッド16は、「側方切削(side cutting)」であり、これは、このドリルビット10が、傾斜した表面に穴を穿孔するために使用されることができるということを意味する。また、球形ドリルヘッド16は、半径方向から中央に集中されており、これは、歯科用ドリルビット10の第一端12及び第二端14を通って延びる(中央)長手方向軸20と球形ドリルヘッド16が同軸であることを意味する。また、前記長手方向軸20が存在する平面(例えば、図3の平面)において見て、球形ドリルヘッド16は、好ましくは180°に等しいか又は180°より大きい扇形角度θを有する扇形を規定する。扇形角度θは、例えば約180°〜220°の範囲にあることができる。球形ドリルヘッド16は、Nobel Biocareによって提供される「案内ドリル(Guide Drill)」の球形ドリルヘッドと実質的に同じタイプのものであることができる。
【0020】
球形ドリルヘッド16に対向する歯科用ドリルビット10の第二端14には、穿孔機(図示せず)への取り付けのために適合されている端部分22がある。端部分22は、例えば完全に円筒形であってもよいし、又は他の何らかの種類の穿孔機界面を含んでいてもよい。
【0021】
球形ドリルヘッド16と端部分22の間に、歯科用ドリルビット10は、中間部分24を含む。換言すれば、中間部分24は、球形ドリルヘッド16から端部分22まで延びる。中間部分24は、その長さの全体に沿って一般的に円筒形であることができ、示された実施態様におけるように、一定の(最大)直径D2を有することができる。中間部分24は、少なくとも一つの螺旋形溝26を与えられている。少なくとも一つの螺旋形溝26は、球形ドリルヘッド16から、歯科用ドリルビット10の第二端14に向かって、端部分22まで延びる。少なくとも一つの螺旋形溝26は、チップの通過、及び(例えば冷却のための)切削流体の進入を可能にすることができる。また、少なくとも一つの螺旋形溝26は、長手方向軸20に対して、3°〜20°の範囲の比較的低いピッチ(螺旋角度)αを有することができる。好ましくは、螺旋形溝の数は、第一溝26a及び第二溝26bを示す図示された実施態様におけるように、二つである。溝26a及び26bは、「からみ合っている(entwined)」。即ち、それらは、長手方向軸20の対向する側に配置されており、それらは、長手方向軸20に沿って実質的に同じ広がりを有する。
【0022】
好ましくは、球形ドリルヘッド16の最大直径D1は、中間部分24の直径D2と等しいか又は実質的に等しい。これは、穿孔された穴と中間部分24の間にタイトな間隔を作り出して、骨チップが溝26を通ってドリル穴から外へ「ポンピングされる(pumped)」ことを確実にするためである。直径D1及びD2は、例えば1.5〜6.0mmの範囲であることができる。また、中間部分24は、わずかにテーパを付けられていてもよい(図示せず)。この場合、球形ドリルヘッド16のすぐ隣りの中間部分24の直径は、D1に等しく、その後、中間部分24の直径は、端部分22に向かって増大する。
【0023】
本発明の歯科用ドリルビット10は、案内された手術などの様々な歯科用途において使用されることができる。しかし、ドリルビット10は、非歯科用途においても使用されることができる。
【0024】
患者の顎骨の傾斜した骨表面30に穴28を穿孔する例示的な方法(図5a−5b参照)では、ガイド穴34を有する手術用テンプレート32を、骨表面30の上に、前記表面が、ガイド穴34の長手方向軸36に対して傾斜するように配置する。次に、歯科用ドリルビット10がガイド穴34を通して挿入され、穴34は、ガイド穴34によって、又はガイド穴34中に与えられたガイドスリーブ(図示せず)によって案内される歯科用ドリルビット10を使用して穿孔される。球形ドリルヘッド16の側方切削能力のため、ドリルビット10は、傾斜した骨表面30に適切に係合し、傾斜した骨表面30上で横方向に「スライド(slide)」しないだろう。かかる横方向のスライドは、手術用テンプレート32の転位を生じさせることがあり得、その結果、穴が適切に穿孔されない(例えば、計画された角度から偏位する角度を有する)ことを生じ得る。穿孔の結果生じる骨残余は、螺旋形溝26によって外へと輸送されることができる。
【0025】
当業者は、本発明は上述の好ましい実施態様に限定されないことを理解するだろう。対照的に、多くの改変及び変更が、添付の特許請求の範囲内で可能である。
図1-3】
図4
図5a-5b】