(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記成分(C)が、ウレタン微粒子、アクリル微粒子、スチレン微粒子、スチレンオレフィン微粒子、及びシリコーン微粒子からなる群より選択される1又は2以上の有機フィラーである請求項1乃至3のいずれか一項に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤。
【背景技術】
【0002】
光硬化性樹脂組成物は、ディスプレイ用封止剤、太陽電池用封止剤、半導体封止剤等の電子部品用封止剤用途で広く用いられている。ディスプレイ用封止剤とは、例えば液晶用シール剤、有機ELディスプレイ用封止剤やタッチパネル用接着剤等を挙げることができる。これらの材料として共通していることは、優れた硬化性を有しながら、アウトガスの発生が少なく、表示素子にダメージを与えないという特性が要求される点である。
しかし、光硬化性樹脂組成物の欠点は、光の届かない部分で硬化反応が進行しないことであり、使用できる部分に制限があることである。
【0003】
特に液晶滴下工法用液晶シール剤(以下、「シール剤」と表記する。)においては、液晶表示素子のアレイ基板の配線部分やカラーフィルター基板のブラックマトリックス部分により液晶シール剤に光が当たらない遮光部が生じ、シール部近傍の表示不良の問題が以前よりも深刻なものとなっている。すなわち、遮光部の存在によって上記光による一次硬化が不十分となり、液晶シール剤中に未硬化成分が多量に残存する。この状態で熱による二次硬化工程に進んだ場合、当該未硬化成分の液晶への溶解は、熱によって促進されてしまうという結果をもたらし、シール部近傍の表示不良を引き起こすという問題がある。
【0004】
この課題を解決する為、熱反応性を改良する様々な検討がなされている。上記遮光部において、光によって十分に硬化していない液晶シール剤を、低温から速やかに反応させ、液晶汚染を抑えようという試みである。例えば、特許文献1、2では、熱ラジカル重合開始剤を用いる方法が開示されている。また、特許文献3〜5では、硬化促進剤として多価カルボン酸を用いる方法が開示されている。
【0005】
しかし、熱ラジカル重合開始剤に効率良くラジカルを発生させる為には、ある程度分子量の小さいものである必要があるが、低分子化合物は液晶に溶解し易く、反応性には優れるものの、熱ラジカル重合開始剤自身による液晶汚染性が問題となる。
また、多価カルボン酸を用いた場合、耐湿信頼性を損なう可能性もあり、用途によっては使用できない場合もある。
【0006】
以上述べたように、液晶シール剤の開発は非常に精力的に行われているにも拘わらず、優れた遮光部硬化性を有しながら、低液晶汚染性である液晶シール剤は未だ実現していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、紫外線や可視光線といった光照射によって硬化する樹脂組成物に関するものであり、光に対する感度が高く、低エネルギー光によっても十分硬化する樹脂組成物を提案するものである。当該光硬化性樹脂組成物は、光が十分に当たらない部分における硬化性も高く、また他の部材へのダメージを考慮した低エネルギーの光照射でも十分な硬化性を有する為、電子部品用接着剤、特にディスプレイ用封止剤として有用である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討の結果、分子内にフラン構造を有するオキシム化合物を含有する光硬化性樹脂組成物が、光ラジカル重合開始剤として、非常に優れ、すなわち低エネルギーの光照射でも十分な硬化性を有することを見出し、本発明に至ったものである。
なお、本明細書中、「(メタ)アクリル」とは「アクリル及び/又はメタクリル」を意味し、「(メタ)アクリロイル基」とは「アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基」を意味する。また、「液晶滴下工法用液晶シール剤」を単に「液晶シール剤」又は「シール剤」と記載する場合もある。
【0010】
即ち本発明は、次の[1]〜[19]に関するものである。
[1]成分(A)分子内にフラン構造を有するオキシム化合物、成分(B)硬化性化合物を含有する光硬化性樹脂組成物。
[2]前記成分(A)が、ベンゾフラン骨格を有するオキシム化合物である前項[1]に記載の光硬化性樹脂組成物。
[3]前記成分(A)が、硫化ジフェニル構造を有するオキシム化合物である前項[1]又は[2]に記載の光硬化性樹脂組成物。
[4]前記成分(A)が、下記式(A−1)で表される化合物である前項[1]乃至[3]のいずれか一項に記載の光硬化性樹脂組成物。
【0011】
【化1】
【0012】
[5]前記成分(B)が、成分(B−1)(メタ)アクリル化合物である前項[1]乃至[4]のいずれか一項に記載の光硬化性樹脂組成物。
[6]前記成分(B)が、成分(B−1)(メタ)アクリル化合物と成分(B−2)エポキシ化合物の混合物である前項[1]乃至[5]のいずれか一項に記載の光硬化性樹脂組成物。
[7]更に、成分(C)有機フィラーを含有する前項[1]及至[6]のいずれか一項に記載の光硬化性樹脂組成物。
[8]前記成分(C)が、ウレタン微粒子、アクリル微粒子、スチレン微粒子、スチレンオレフィン微粒子、及びシリコーン微粒子からなる群より選択される1又は2以上の有機フィラーである前項[7]に記載の光硬化性樹脂組成物。
[9]更に、成分(D)無機フィラーを含有する前項[1]及至[8]のいずれか一項に記載の光硬化性樹脂組成物。
[10]更に、成分(E)シランカップリング剤を含有する前項[1]及至[9]のいずれか一項に記載の光硬化性樹脂組成物。
[11]更に、成分(F)熱硬化剤を含有する前項[1]及至[10]のいずれか一項に記載の光硬化性樹脂組成物。
[12]前記成分(F)が有機酸ヒドラジド化合物である前項[11]に記載の光硬化性樹脂組成物。
[13]更に、成分(G)水素引抜型光ラジカル重合開始剤を含有する前項[1]及至[12]のいずれか一項に記載の光硬化性樹脂組成物。
[14]更に、成分(H)熱ラジカル重合開始剤を含有する前項[1]及至[13]のいずれか一項に記載の光硬化性樹脂組成物。
[15]前項[1]乃至[14]のいずれか一項に記載の光硬化性樹脂組成物を用いた電子部品用封止剤。
[16]前項[15]に記載の電子部品用接着剤を硬化して得られる硬化物を用いた電子部品。
[17]前項[1]乃至[14]のいずれか一項に記載の光硬化性樹脂組成物を用いた液晶表示セル用封止剤。
[18]前項[1]乃至[14]のいずれか一項に記載の光硬化性樹脂組成物を用いた液晶シール剤。
[19]前項[17]又は[18]に記載の液晶表示セル用封止剤又は液晶シール剤を用いて接着された液晶表示セル。
【発明の効果】
【0013】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、低エネルギー光によっても十分な硬化性を示す為、遮光部分を有する電子部品や、可視光によって硬化させる必要のある電子部品用の封止剤として非常に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[(A)分子内にフラン構造を有するオキシム化合物]
本発明の光硬化性樹脂組成物は、(A)分子内にフラン構造を有するオキシム化合物(以下、単に「成分(A)」ともいう。)を含有する。この化合物は、低エネルギー光に対する感度が非常に高い、光ラジカル重合開始剤として機能する。
フラン構造はフラン環そのものであっても、他の環が縮環したものであっても良く、例えばベンゾフラン、イソベンゾフランのような骨格も含まれる。ベンゾフラン骨格を含むものが好ましい。
またフラン構造中に他の置換基を有しても良い。置換基としては、C1−C10のアルキル基、C1−C10のアルコキシ基、C1−C10のアリール基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ニトロ基、シアノ基等を挙げることができる。
C1−C10のアルキル基としては、C1−C6のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基等の直鎖、分岐鎖または環状構造を有するアルキル基がより好ましく、メチル基、エチル基、ブチル基、ter-ブチル基が特に好ましい。C1−C10のアルコキシ基としてはC1−C6のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の直鎖、分岐鎖または環状構造を有するアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基が特に好ましい。C1−C10のアリール基としてはフェニル基が好ましい。
前記フラン構造は、カルボニル基を介してフェニルスルフィド(硫化ジフェニル)構造、ジフェニルエーテル構造又はフルオレン構造と結合することが好ましい。
オキシム基に結合している有機基としては、C1−C10のアルキル基、C1−C10のアルコキシ基、C1−C10のアリール基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ニトロ基、シアノ基等を挙げることができ、好ましくは前述と同様である。
なお当該化合物は、特表2016−531926号公報に従って合成することができる。また、当該化合物は例えばIRGACURE OXE 04として、市場からの入手も可能である。
成分(A)は単独で用いても良いし、2種類以上を混合しても良い。本発明の光硬化性樹脂組成物において、成分(A)の配合量は、光硬化性樹脂組成物総量中、通常0.1〜7質量%、好ましくは0.2〜5質量%であり、より好ましくは0.3〜3質量%である。
【0015】
[(B)硬化性化合物]
本発明の光硬化性樹脂組成物は、成分(B)として、硬化性化合物を含有する(以下、単に「成分(B)」ともいう。)。
成分(B)としては、光や熱等によって硬化する化合物であれば特に限定されないが、(B−1)(メタ)アクリル化合物である場合が好ましい。
(ここで「(メタ)アクリル」とは「アクリル」及び/又は「メタクリル」を意味する。以下同様。)成分(B−1)としては、例えば、(メタ)アクリルエステル化合物、エポキシ(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0016】
(メタ)アクリルエステル化合物の具体例としては、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、アクリロイルモルホリン、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキサン−1,4−ジメタノールモノ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフロフリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェニルポリエトキシ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、o−フェニルフェノールモノエトキシ(メタ)アクリレート、o−フェニルフェノールポリエトキシ(メタ)アクリレート、p−クミルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリプロポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールとヒドロキシピバリン酸のエステルジアクリレートやネオペンチルグリコールとヒドロキシピバリン酸のエステルのε−カプロラクトン付加物のジアクリレート等のモノマー類を挙げることができる。好ましくは、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレートを挙げることができる。
エポキシ(メタ)アクリレート化合物は、エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応により公知の方法で得られる。原料となるエポキシ化合物としては、特に限定されるものではないが、2官能以上のエポキシ化合物が好ましく、例えば、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、ビスフェノールAノボラック型エポキシ化合物、ビスフェノールFノボラック型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、脂肪族鎖状エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、グリシジルアミン型エポキシ化合物、ヒダントイン型エポキシ化合物、イソシアヌレート型エポキシ化合物、トリフェノールメタン骨格を有するフェノールノボラック型エポキシ化合物、その他、カテコール、レゾルシノール等の二官能フェノール類のジグリシジルエーテル化物、二官能アルコール類のジグリシジルエーテル化物、およびそれらのハロゲン化物、水素添加物などが挙げられる。これらのうち液晶汚染性の観点から、ビスフェノールA型エポキシ化合物やレゾルシンジグリシジルエーテルが好ましい。また、エポキシ基と(メタ)アクリロイル基との比率は限定されるものではなく、工程適合性の観点から適切に選択される。なおエポキシ基の一部をアクリルエステル化する部分エポキシ(メタ)アクリレートが好適に使用される。この場合のアクリル化の割合は、30〜70%程度が好ましい。
成分(B−1)は単独で用いても良いし、2種類以上を混合しても良い。本発明の光硬化性樹脂組成物において、成分(B−1)を使用する場合には、光硬化性樹脂組成物総量中、通常5〜50質量%、好ましくは5〜30質量%である。
【0017】
[(B−2)エポキシ化合物]
本発明の態様として、上記成分(B)中に、さらに(B−2)エポキシ化合物が含有される場合がさらに好ましい。
エポキシ化合物としては特に限定されるものではないが、2官能以上のエポキシ化合物が好ましく、例えば、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン骨格を有するフェノールノボラック型エポキシ樹脂、その他、カテコール、レゾルシノール等の二官能フェノール類のジグリシジルエーテル化物、二官能アルコール類のジグリシジルエーテル化物、およびそれらのハロゲン化物、水素添加物などが挙げられる。これらのうち液晶汚染性の観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂やレゾルシンジグリシジルエーテルが好ましい。
成分(B−2)は単独で用いても良いし、2種類以上を混合しても良い。本発明の光硬化性樹脂組成物において、成分(B−2)を使用する場合には、光硬化性樹脂組成物総量中、通常5〜50質量%、好ましくは5〜30質量%である。
なお、本発明の光硬化性樹脂組成物において、成分(B)の配合量は、光硬化性樹脂組成物の総量中、通常10〜80質量%、好ましくは20〜70質量%である。成分(B−1)と成分(B−2)を混合して使用する場合の配合量も同様とする。
【0018】
[(C)有機フィラー]
本発明の光硬化性樹脂組成物は、成分(C)として有機フィラーを含有しても良い(以下、単に「成分(C)」ともいう。)。上記有機フィラーとしては、例えばウレタン微粒子、アクリル微粒子、スチレン微粒子、スチレンオレフィン微粒子及びシリコーン微粒子が挙げられる。なおシリコーン微粒子としてはKMP−594、KMP−597、KMP−598(信越化学工業製)、トレフィルRTME−5500、9701、EP−2001(東レダウコーニング社製)が好ましく、ウレタン微粒子としてはJB−800T、HB−800BK(根上工業株式会社)、スチレン微粒子としてはラバロンRTMT320C、T331C、SJ4400、SJ5400、SJ6400、SJ4300C、SJ5300C、SJ6300C(三菱化学製)が好ましく、スチレンオレフィン微粒子としてはセプトンRTMSEPS2004、SEPS2063が好ましい。
これら有機フィラーは単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。また2種以上を用いてコアシェル構造としても良い。これらのうち、好ましくは、アクリル微粒子、シリコーン微粒子である。
上記アクリル微粒子を使用する場合、2種類のアクリルゴムからなるコアシェル構造のアクリルゴムである場合が好ましく、特に好ましくはコア層がn−ブチルアクリレートであり、シェル層がメチルメタクリレートであるものが好ましい。これはゼフィアックRTMF−351としてアイカ工業株式会社から販売されている。
また、上記シリコーン微粒子としては、オルガノポリシロキサン架橋物粉体、直鎖のジメチルポリシロキサン架橋物粉体等があげられる。また、複合シリコーンゴムとしては、上記シリコーンゴムの表面にシリコーン樹脂(例えば、ポリオルガノシルセスキオキサン樹脂)を被覆したものがあげられる。これらの微粒子のうち、特に好ましいのは、直鎖のジメチルポリシロキサン架橋粉末のシリコーンゴム又はシリコーン樹脂被覆直鎖ジメチルポリシロキサン架橋粉末の複合シリコーンゴム微粒子である。これらのものは、単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。また、好ましくは、ゴム粉末の形状は、添加後の粘度の増粘が少ない球状が良い。本発明の光硬化性樹脂組成物において、成分(C)を使用する場合には、光硬化性樹脂組成物の総量中、通常5〜50質量%、好ましくは5〜40質量%である。
【0019】
[(D)無機フィラー]
本発明の光硬化性樹脂組成物は、成分(D)として、無機フィラーを含有しても良い(以下、単に成分(D)ともいう。)。本発明で含有する無機フィラーとしては、シリカ、シリコンカーバイド、窒化珪素、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、マイカ、タルク、クレー、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸リチウムアルミニウム、珪酸ジルコニウム、チタン酸バリウム、硝子繊維、炭素繊維、二硫化モリブデン、アスベスト等が挙げられ、好ましくは溶融シリカ、結晶シリカ、窒化珪素、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、マイカ、タルク、クレー、アルミナ、水酸化アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウムが挙げられるが、好ましくはシリカ、アルミナ、タルクである。これら無機フィラーは2種以上を混合して用いても良い。
無機フィラーの平均粒子径は、大きすぎると狭ギャップの液晶表示セル製造時に上下ガラス基板の貼り合わせ時のギャップ形成がうまくできない等の不良要因となるため、2000nm以下が適当であり、好ましくは1000nm以下、さらに好ましくは300nm以下である。また好ましい下限は10nm程度であり、さらに好ましくは100nm程度である。粒子径はレーザー回折・散乱式粒度分布測定器(乾式)(株式会社セイシン企業製;LMS−30)により測定することができる。
本発明の光硬化性樹脂組成物において、無機フィラーを使用する場合には、光硬化性樹脂組成物の総量中、通常5〜50質量%、好ましくは5〜40質量%である。無機フィラーの含有量が5質量%より低い場合、ガラス基板に対する接着強度が低下し、また耐湿信頼性も劣るために、吸湿後の接着強度の低下も大きくなる場合がある。又、無機フィラーの含有量が50質量%より多い場合、フィラー含有量が多すぎるため、つぶれにくく液晶セルのギャップ形成ができなくなってしまう場合がある。
【0020】
[(E)シランカップリング剤]
本発明の光硬化性樹脂組成物は、成分(E)としてシランカップリング剤を添加して、接着強度や耐湿性の向上を図ることができる(以下、単に「成分(E)」ともいう。)。
成分(E)としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N−(2−(ビニルベンジルアミノ)エチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらのシランカップリング剤はKBMシリーズ、KBEシリーズ等として信越化学工業株式会社等によって販売されている為、市場から容易に入手可能である。本発明の光硬化性樹脂組成物において、成分(E)を使用する場合には、光硬化性樹脂組成物総量中、0.05〜3質量%が好適である。
【0021】
[(F)熱硬化剤]
本発明の光硬化性樹脂組成物は、成分(F)として熱硬化剤を含有しても良い(以下、単に「成分(F)」ともいう。)。成分(F)は非共有電子対や分子内のアニオンによって、求核的に反応するものであって、例えば多価アミン類、多価フェノール類、有機酸ヒドラジド化合物等を挙げる事ができる。ただしこれらに限定されるものではない。これらのうち有機酸ヒドラジド化合物が特に好適に用いられる。例えば、芳香族ヒドラジドであるテレフタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、2,6−ナフトエ酸ジヒドラジド、2,6−ピリジンジヒドラジド、1,2,4−ベンゼントリヒドラジド、1,4,5,8−ナフトエ酸テトラヒドラジド、ピロメリット酸テトラヒドラジド等をあげることが出来る。また、脂肪族ヒドラジド化合物であれば、例えば、ホルムヒドラジド、アセトヒドラジド、プロピオン酸ヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、1,4−シクロヘキサンジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、イミノジ酢酸ジヒドラジド、N,N’−ヘキサメチレンビスセミカルバジド、クエン酸トリヒドラジド、ニトリロ酢酸トリヒドラジド、シクロヘキサントリカルボン酸トリヒドラジド、1,3−ビス(ヒドラジノカルボノエチル)−5−イソプロピルヒダントイン等のヒダントイン骨格、好ましくはバリンヒダントイン骨格(ヒダントイン環の炭素原子がイソプロピル基で置換された骨格)を有するジヒドラジド化合物、トリス(1−ヒドラジノカルボニルメチル)イソシアヌレート、トリス(2−ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート、トリス(1−ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート、トリス(3−ヒドラジノカルボニルプロピル)イソシアヌレート、ビス(2−ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート等をあげることができる。硬化反応性と潜在性のバランスから好ましくは、イソフタル酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、トリス(1−ヒドラジノカルボニルメチル)イソシアヌレート、トリス(1−ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート、トリス(2−ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート、トリス(3−ヒドラジノカルボニルプロピル)イソシアヌレートであり、特に好ましくはトリス(2−ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレートである。
成分(F)は単独で用いても良いし、2種類以上を混合しても良い。本発明の光硬化性樹脂組成物において、成分(F)を使用する場合には、光硬化性樹脂組成物総量中、通常0.1〜10質量%、好ましくは1〜10質量%である。
【0022】
[(G)水素引抜型光ラジカル重合開始剤]
本発明の光硬化性樹脂組成物は、成分(G)として水素引抜型光ラジカル重合開始剤を含有しても良い(以下、単に「成分(G)」ともいう。)。水素引抜型光ラジカル重合開始剤とは、紫外線や可視光の照射によって、他の分子の水素を引抜、ラジカルを発生させる重合開始剤であり、成分(A)のような開裂型光ラジカル重合開始剤とはラジカル発生のメカニズムが異なる。本発明において、成分(G)を含有することにより、異なるメカニズムのラジカル発生を共存させ、より光反応性を高めることができる。
水素引抜型光ラジカル重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、ベンゾフェノン、アクリドン、2−エチルアントラキノン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルアントラキノン、2,4−ジエチルチオキサントン等を挙げることができる。
また、例えば国際公開2012/011220記載のように分子内に反応性基を有するチオキサントン化合物も好適に用いることができる。
本発明の光硬化性樹脂組成物において、成分(G)を使用する場合には、光硬化性樹脂組成物総量中、通常0.001〜5質量%、好ましくは0.002〜5質量%である。
【0023】
[(H)熱ラジカル重合開始剤]
本発明の光硬化性樹脂組成物は、(H)熱ラジカル重合開始剤(以下、単に「成分(H)」ともいう。)を含有して、硬化速度、硬化性を向上することができる。
熱ラジカル重合開始剤は、加熱によりラジカルを生じ、連鎖重合反応を開始させる化合物であれば特に限定されないが、有機過酸化物、アゾ化合物、ベンゾイン化合物、ベンゾインエーテル化合物、アセトフェノン化合物、ベンゾピナコール等が挙げられ、ベンゾピナコールが好適に用いられる。例えば、有機過酸化物としては、カヤメックRTMA、M、R、L、LH、SP-30C、パーカドックスCH−50L、BC−FF、カドックスB−40ES、パーカドックス14、トリゴノックスRTM22−70E、23−C70、121、121−50E、121−LS50E、21−LS50E、42、42LS、カヤエステルRTMP−70、TMPO−70、CND−C70、OO−50E、AN、カヤブチルRTMB、パーカドックス16、カヤカルボンRTMBIC−75、AIC−75(化薬アクゾ株式会社製)、パーメックRTMN、H、S、F、D、G、パーヘキサRTMH、HC、TMH、C、V、22、MC、パーキュアーRTMAH、AL、HB、パーブチルRTMH、C、ND、L、パークミルRTMH、D、パーロイルRTMIB、IPP、パーオクタRTMND(日油株式会社製)などが市販品として入手可能である。
【0024】
また、アゾ化合物としては、VA−044、086、V−070、VPE−0201、VSP−1001(和光純薬工業株式会社製)等が市販品として入手可能である。
【0025】
成分(H)の含有量としては、光硬化性樹脂組成物の総量中、0.0001〜10質量%であることが好ましく、さらに好ましくは0.0005〜5質量%であり、0.001〜3質量%が特に好ましい。
【0026】
本発明の光硬化性樹脂組成物には、さらに必要に応じて、有機酸やイミダゾール等の硬化促進剤、ラジカル重合防止剤、顔料、レベリング剤、消泡剤、溶剤などの添加剤を配合することができる。
【0027】
[硬化促進剤]
上記硬化促進剤としては、有機酸やイミダゾール等を挙げることができる。
有機酸としては、有機カルボン酸や有機リン酸等が挙げられるが、有機カルボン酸である場合が好ましい。具体的には、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、フランジカルボン酸等の芳香族カルボン酸、コハク酸、アジピン酸、ドデカン二酸、セバシン酸、チオジプロピオン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、トリス(2−カルボキシメチル)イソシアヌレート、トリス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−カルボキシプロピル)イソシアヌレート、ビス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート等を挙げることができる。
また、イミダゾール化合物としては、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6(2’−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2’−ウンデシルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2’−エチル−4−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2’−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールイソシアヌル酸の2:3付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−3,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−ヒドロキシメチル−5−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニル−3,5−ジシアノエトキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
本発明の光硬化性樹脂組成物において、硬化促進剤を使用する場合には、光硬化性樹脂組成物の総量中、通常0.1〜10質量%、好ましくは1〜5質量%である。
【0028】
[ラジカル重合防止剤]
上記ラジカル重合防止剤としては、光ラジカル重合開始剤や熱ラジカル重合開始剤等から発生するラジカルと反応して重合を防止する化合物であれば特に限定されるものではなく、キノン系、ピペリジン系、ヒンダードフェノール系、ニトロソ系等を用いることができる。具体的には、ナフトキノン、2−ヒドロキシナフトキノン、2−メチルナフトキノン、2−メトキシナフトキノン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−1−オキシル、2,2,6,6,−テトラメチル−4−メトキシピペリジン−1−オキシル、2,2,6,6−テトラメチル−4−フェノキシピペリジン−1−オキシル、ハイドロキノン、2−メチルハイドロキノン、2−メトキシハイドロキノン、パラベンゾキノン、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルクレゾール、ステアリルβ−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2‘−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−[β―(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]、2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニルプロピオネート)メタン、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−sec−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン、パラメトキシフェノール、4−メトキシ−1−ナフトール、チオジフェニルアミン、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミンのアルミニウム塩、商品名アデカスタブLA−81、商品名アデカスタブLA−82(株式会社アデカ製)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのうちナフトキノン系、ハイドロキノン系、ニトロソ系ピペラジン系のラジカル重合防止剤が好ましく、ナフトキノン、2−ヒドロキシナフトキノン、ハイドロキノン、2,6−ジ−tert−ブチル−P−クレゾール、ポリストップ7300P(伯東株式会社製)が更に好ましく、ポリストップ7300P(伯東株式会社製)が最も好ましい。
ラジカル重合防止剤の含有量としては本発明の光硬化性樹脂組成物総量中、0.0001〜1質量%が好ましく、0.001〜0.5質量%が更に好ましく、0.01〜0.2質量%が特に好ましい。
【0029】
本発明の光硬化性樹脂組成物を得る方法の一例としては、次に示す方法がある。まず、成分(B)(成分(B−1)と(B−2)を用いる場合には、その混合物)に、成分(A)及び必要に応じて成分(G)を加熱溶解する。次いで室温まで冷却後、必要に応じて成分(C)、(D)、(E)、(F)、(H)、消泡剤、及びレベリング剤、溶剤等を添加し、公知の混合装置、例えば3本ロール、サンドミル、ボールミル等により均一に混合し、金属メッシュにて濾過することにより本発明の液晶シール剤を製造することができる。
【0030】
本発明の光硬化性樹脂組成物は電子部品用封止剤として非常に有用である。電子部品用封止剤には、電子部品用接着剤としてフレキシブルプリント配線板用接着剤、TAB用接着剤、半導体用接着剤、各種ディスプレイ用接着剤等が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
また、本発明の光硬化性樹脂組成物は、液晶表示セル用封止剤として、特に液晶シール剤として非常に有用である。本発明の樹脂組成物を液晶シール剤として用いた場合の、液晶表示セルについて、以下に例を示す。
【0032】
本発明の液晶表示セル用封止剤を用いて製造される液晶表示セルは、基板に所定の電極を形成した一対の基板を所定の間隔に対向配置し、周囲を当該液晶シール剤でシールし、その間隙に液晶が封入されたものである。封入される液晶の種類は特に限定されない。ここで、基板とはガラス、石英、プラスチック、シリコン等からなる少なくとも一方に光透過性がある組み合わせの基板から構成される。その製法としては、当該液晶シール剤に、グラスファイバー等のスペーサ(間隙制御材)を添加後、該一対の基板の一方にディスペンサー、またはスクリーン印刷装置等を用いて該液晶シール剤を塗布した後、必要に応じて、80〜120℃で仮硬化を行う。その後、該液晶シール剤の堰の内側に液晶を滴下し、真空中にてもう一方のガラス基板を重ね合わせ、ギャップ出しを行う。ギャップ形成後、90〜130℃で1時間〜2時間硬化することにより本発明の液晶表示セルを得ることができる。また光熱併用型として使用する場合は、紫外線照射機により液晶シール剤部に紫外線を照射させて光硬化させる。紫外線照射量は、好ましくは500〜6000mJ/cm
2、より好ましくは1000〜4000mJ/cm
2の照射量が好ましい。その後必要に応じて、90〜130℃で1〜2時間硬化することにより本発明の液晶表示セルを得ることができる。このようにして得られた本発明の液晶表示セルは、液晶汚染による表示不良が無く、接着性、耐湿信頼性に優れたものである。スペーサとしては、例えばグラスファイバー、シリカビーズ、ポリマービーズ等があげられる。その直径は、目的に応じ異なるが、通常2〜8μm、好ましくは4〜7μmである。その使用量は、本発明の液晶シール剤100質量部に対し通常0.1〜4質量部、好ましくは0.5〜2質量部、更に、好ましくは0.9〜1.5質量部程度である。
【0033】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、遮光部を有する設計の電子部品や可視光のような低エネルギー光で硬化する必要のある封止剤用途の使用に非常に適するものである。例えば配線遮光部下で用いられる液晶シール剤、有機EL用封止剤、タッチパネル用接着剤である。
【実施例】
【0034】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。尚、特別の記載のない限り、本文中「部」及び「%」とあるのは質量基準である。
【0035】
[合成例1]
特表2016−531926号公報に従い、成分(A)として下記式(A−1)で表される化合物を以下の通り合成した。
【0036】
【化2】
【0037】
ジクロロメタン中の塩化アルミニウムに、硫化ジフェニルを0℃で添加した。次いで、クロロアセチルクロリドを0℃で添加し、そして室温で2時間にわたり撹拌して混合物を得た。塩化アルミニウムおよび4−メチルペンタノイルクロリドを該混合物に0℃で添加し、一晩撹拌し、反応混合物を得た。該反応混合物を氷水へと注いだ後に、有機層をジクロロメタンで抽出した。該有機層を硫酸マグネシウムにて乾燥させ、濃縮し、その残留物をカラムクロマトグラフィーによって精製し、下記式(2)の化合物を白色の粉末として得た。
【0038】
【化3】
【0039】
前記式(2)の化合物アセトンに添加し、さらに炭酸カリウムおよびのサリチルアルデヒドを添加し、還流下で3時間にわたり撹拌した。該反応混合物を室温にまで温め、水を添加し、HCl溶液を添加して、酸性化させた。その沈殿物を濾過により回収し、乾燥させることで、下記式(3)の化合物を得た。
【0040】
【化4】
【0041】
得られた前記式(3)の化合物をの酢酸エチルに添加し、さらに塩化ヒドロキシルアンモニウムおよびピリジンを添加した。該混合物を還流下で3時間にわたり撹拌した。該反応混合物を室温にまで温め、次いで水中に注いだ。有機層を酢酸エチルで抽出し、そして硫酸マグネシウムにて乾燥させた。濃縮した後に、粗生成物をカラムクロマトグラフィーによって精製し、下記式(4)の化合物を淡黄色の固体として得た。
【0042】
【化5】
【0043】
前記式(4)の化合物を酢酸エチルに添加し、さらに塩化アセチルおよび111mgのトリエチルアミンを添加し、室温で3時間撹拌した。該反応混合物を水中に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。濃縮した後に、粗生成物を酢酸エチル/ヘキサンによって再結晶化させ、前記式(A−1)の化合物を淡黄色の固体として得た。
【0044】
[実施例1、比較例1]
下記表1に示す割合で成分(B)2種を混合し、そこに合成例1の成分(A)を90℃で加熱溶解させた後、室温まで冷却し、成分(C)、(D)、(E)、(F)、(H)を添加し、攪拌した後、3本ロールミルにて分散させ、金属メッシュ(635メッシュ)で濾過し、光硬化性樹脂組成物の実施例1、2を調製した。また、成分(A)に変えて、成分(O)を用い、比較例1を調整した。
【0045】
[Tg(UV+熱硬化)]
実施例1、比較例1で製造された光硬化性樹脂組成物をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに挟み厚み100μmの薄膜としたものにメタルハライドランプ(ウシオ電機株式会社製)にて3000mJ/cm
2(100mW/cm
2で30秒)の紫外線を照射したのち120℃のオーブンに60分間投入して硬化させた。硬化後PETフィルムをはがしシール剤硬化膜を得られたのち、これを50mm×5mmの短冊状にカットしサンプル片とした。このサンプル片を動的粘弾性測定装置(DMS−6100:エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)の引っ張りモードにて周波数10Hz、昇温温度3℃/分の条件で測定を行った。損失弾性率と貯蔵弾性率との比(JIS K 7244−1)から損失係数Tanδが得られ、得られた損失係数Tanδが最大値となる温度をガラス転移温度とした。結果を表1に示す。
【0046】
[Tg(Vis+熱硬化)]
実施例1、比較例1で製造された光硬化性樹脂組成物をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに挟み厚み100μmの薄膜としたものにメタルハライドランプ(ウシオ電機株式会社製)にて3000mJ/cm
2(100mW/cm
2で30秒)の可視光を照射したのち120℃のオーブンに60分間投入して硬化させた。硬化後PETフィルムをはがし硬化膜を得られたのち、これを50mm×5mmの短冊状にカットしサンプル片とした。このサンプル片を動的粘弾性測定装置(DMS−6100:エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)の引っ張りモードにて周波数10Hz、昇温温度3℃/分の条件で測定を行った。損失弾性率と貯蔵弾性率との比(JIS K 7244−1)から損失係数Tanδが得られ、得られた損失係数Tanδが最大値となる温度をガラス転移温度とした。結果を表1に示す。
【0047】
[Tg(UV+熱硬化)−Tg(Vis+熱硬化)]
上記測定結果から、Tg(UV+熱硬化)−Tg(Vis+熱硬化)の値を算出し、表1に示す。これによってUVでの硬化性と可視光での硬化性の差を確認できる。この差が小さい程、可視光でもUVと同程度の硬化性を実現することができることになり、可視光硬化での使用を実現できる。
【0048】
[遮光部硬化幅]
クロムをエッチングすることによって100μmのラインとスペースを設けたガラス基板に、4μmのグラスファイバー(日本電気硝子(株)社製)を1質量%添加した実施例、比較例の各液晶シール剤を塗布し、対向基板としてブラックマトリクス基板を貼り合せ、ライン/スペースを設けた基板側から3000mJ/cm
2(100mW/cm
2で30秒)の紫外光を照射し、顕微鏡にて硬化幅を測定した。結果を表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
表1に示されるように、実施例1の光硬化性樹脂組成物は、比較例1の光硬化性樹脂組成物に比べて、可視光でも紫外線と同等の硬化性を有し、また遮光部における深部(低エネルギー照射部分)での硬化性も良好である。すなわち低エネルギーでの優れた硬化性を有することが確認された。
本発明は、紫外線や可視光線といった光照射によって硬化する樹脂組成物に関するものであり、光に対する感度が高く、低エネルギー光によっても十分硬化する樹脂組成物を提案するものである。