【課題を解決するための手段】
【0006】
インバータ装置の周辺における電子機器の動作不良は、インバータ装置からの放射ノイズの影響が原因の一つと考えられる。一般に、インバータ装置には、物理的に離れて設けられた回路が存在する。例えば、特許文献1のPWM信号生成部とモータ駆動部とは、物理的に離れて設けられる。このように物理的に離れている回路間は、ケーブルなどの伝送線路を用いて電気的に接続される。発明者らの調査研究によれば、この伝送線路がアンテナとして機能することによって、ノイズが放射されていることが確認された。また、このような伝送線路からの放射ノイズは、インバータ装置以外の装置においても発生し得る。さらに、低い周波数の信号や直流電力を伝搬させる伝送線路であっても、その周囲にスイッチングデバイス等の高い動作周波数で動作する回路が配置されると、その回路と電磁結合し、アンテナとして機能する可能性がある。そこで、アンテナとして機能する可能性のある伝送線路に、放射ノイズを抑制する処置を施すことが望まれる。しかしながら、そのような処置は、伝送線路を伝搬する信号を劣化させる虞がある。特に、伝送線路を伝搬する信号が矩形波の場合、波形が鈍ってしまうと、伝達しようとした情報を伝達することができなくなってしまう。そこで、本発明は、伝送線路を伝搬する矩形波の波形への影響を抑えつつ、伝送線路から放射されるノイズを抑制することができる装置を提供し、それによって、装置周辺における電子機器の動作不良の発生を抑制する。
【0007】
本発明は、第1の装置として、
矩形波の出力信号を出力する第1回路と、
入力信号が入力される第2回路と、
前記第1回路と前記第2回路とを接続し、前記出力信号を前記入力信号として伝達する導線を有する伝送線路と、
前記伝送線路の周りの少なくとも一部に設けられたノイズ抑制部材と
を備える装置であって、
前記ノイズ抑制部材は、磁性粉末がバインダ内に分散された構造を有しており、
前記ノイズ抑制部材は、500MHzから3GHzまでの複素透磁率の虚数成分μ”が5以上30以下であり、
前記ノイズ抑制部材の厚みtは、20μm以上であり、
前記ノイズ抑制部材は、前記伝送線路の前記導線から0.05mm以上5mm以下の距離だけ離れて配置されている
装置を提供する。
【0008】
また、本発明は、第2の装置として、第1の装置であって、
前記ノイズ抑制部材の厚みtは、10000μm以下である
装置を提供する。
【0009】
また、本発明は、第3の装置として、第2の装置であって、
前記ノイズ抑制部材の厚みtは、1000μm以下である
装置を提供する。
【0010】
また、本発明は、第4の装置として、第1から第3の装置のいずれかであって、
前記第1回路は、第1基板に形成されており、
前記第2回路は、第2基板に形成されており、
前記第1基板と前記第2基板とは物理的に分かれている
装置を提供する。
【0011】
また、本発明は、第5の装置として、第1から第4の装置のいずれかであって、
前記ノイズ抑制部材は、複合磁性シートである
装置を提供する。
【0012】
また、本発明は、第6の装置として、第1から第5の装置のいずれかであって、
前記ノイズ抑制部材は、前記伝送線路の前記導線から0.15mm以上0.2mm以下の距離だけ離れて配置されている
装置を提供する。
【0013】
また、本発明は、第7の装置として、第1から第6の装置のいずれかであって、
前記ノイズ抑制部材の複素誘電率の実数成分ε’が1000以下であり、且つ前記複素誘電率の前記実数成分ε’に対する虚数成分ε”の比ε”/ε’が0.5以下である
装置を提供する。
【0014】
また、本発明は、第8の装置として、第7の装置であって、
前記ノイズ抑制部材の前記複素誘電率の前記実数成分ε’が300以下であり、且つ前記複素誘電率の前記実数成分ε’に対する前記虚数成分ε”の比ε”/ε’が0.1以下である
装置を提供する。
【0015】
また、本発明は、第9の装置として、第1から第8の装置のいずれかであって、
前記伝送線路の延びる方向において、前記第1回路から前記ノイズ抑制部材の端部までの距離は、抑制の対象である電磁ノイズの波長に等しい距離よりも短い
装置を提供する。
【0016】
また、本発明は、第10の装置として、第1から第9の装置のいずれかであって、
前記伝送線路の延びる方向において、前記ノイズ抑制部材の長さは20mm以上である
装置を提供する。
【0017】
また、本発明は、第11の装置として、第1から第10の装置のいずれかであって、
前記装置は、スイッチング素子を更に備えるスイッチング電源装置であり、
前記第1回路は、前記出力信号を生成して出力するパルス信号生成回路であり、
前記第2回路は、前記入力信号に基づいて前記スイッチング素子を駆動するドライバ回路である
装置を提供する。
【0018】
また、本発明は、第12の装置として、第11の装置であって、
前記スイッチング電源装置は、インバータ装置であり、
前記パルス信号生成回路は、PWM信号生成回路である
装置を提供する。
【0019】
また、本発明は、第13の装置として、第1から第10の装置のいずれかであって、
前記装置は、更に第3回路、第4回路及び第5回路と、付加的伝送線路と、付加的ノイズ抑制部材とを備えており、
前記第3回路は、スイッチングデバイスであり、
前記第4回路と前記第5回路は、前記付加的伝送線路によって互いに接続されており、
前記付加的ノイズ抑制部材は、前記付加的伝送線路の周りの少なくとも一部に設けられており、
前記付加的ノイズ抑制部材は、磁性粉末がバインダ内に分散された構造を有しており、
前記付加的ノイズ抑制部材は、500MHzから3GHzまでの複素透磁率の虚数成分μ”が5以上30以下であり、
前記付加的ノイズ抑制部材の厚みtは、20μm以上であり、
前記付加的ノイズ抑制部材は、前記付加的伝送線路の前記導線から0.05mm以上5mm以下の距離だけ離れて配置されている
装置を提供する。
【0020】
また、本発明は、第14の装置として、第13の装置であって、
前記付加的ノイズ抑制部材の少なくとも一部は、前記第3回路からの距離が前記第3回路の動作に由来するノイズ波長の1/(2π)以下の距離に位置している
装置を提供する。
【0021】
また、本発明は、第15の装置として、第13又は第14の装置であって、
前記付加的ノイズ抑制部材の厚みtは、10000μm以下である
装置を提供する。
【0022】
また、本発明は、第16の装置として、第13から第15の装置のいずれかであって、
前記付加的ノイズ抑制部材は、複合磁性シートである
装置を提供する。
【0023】
また、本発明は、第17の装置として、第13から第16の装置のいずれかであって、
前記付加的ノイズ抑制部材は、前記付加的伝送線路の前記導線から0.15mm以上0.2mm以下の距離だけ離れて配置されている
装置を提供する。
【0024】
また、本発明は、第18の装置として、第13から第17の装置のいずれかであって、
前記付加的ノイズ抑制部材の複素誘電率の実数成分ε’が1000以下であり、且つ前記複素誘電率の前記実数成分ε’に対する虚数成分ε”の比ε”/ε’が0.5以下である
装置を提供する。
【0025】
また、本発明は、第19の装置として、第18の装置であって、
前記付加的ノイズ抑制部材の前記複素誘電率の前記実数成分ε’が300以下であり、且つ前記複素誘電率の前記実数成分ε’に対する前記虚数成分ε”の比ε”/ε’が0.1以下である
装置を提供する。
【0026】
また、本発明は、第20の装置として、第13から第19の装置のいずれかであって、
前記付加的伝送線路の延びる方向において、前記ノイズ抑制部材の長さは20mm以上である
装置を提供する。
【0027】
また、本発明は、第21の装置として、第13から第20の装置のいずれかであって、
前記スイッチングデバイスは、電源回路である
装置を提供する。
【0028】
また、本発明は、第22の装置として、第13から第20の装置のいずれかであって、
前記スイッチングデバイスは、インバータ主回路である
装置を提供する。