(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0012】
〈排尿予測装置の構成〉
図1は、排尿予測装置100の概略図である。
【0013】
排尿予測装置100は、対象者の排尿タイミングを推定するものである。例えば、対象者は、老人若しくは身体障害者等の要介護者、又は要介護者ではないものの体が不自由でトイレに行くまでに時間を要する人等である。ただし、対象者は、これに限られるものではない。
【0014】
排尿予測装置100は、トランスデューサ1と、トランスデューサ1の受信信号を処理する処理装置2と、処理装置2により処理された信号を解析するサーバ群3とを備えている。トランスデューサ1と処理装置2とは、有線で接続されている。処理装置2は、サーバ群3と無線通信を行う。
【0015】
〈トランスデューサ〉
図2は、トランスデューサ1の概略的な斜視図である。
図3は、トランスデューサ1の概略的な側面図である。
【0016】
トランスデューサ1は、
図2に示すように、4つの超音波センサ11A〜11Dと、超音波センサ11A〜11Dを収容するケーシング12とを有している。
【0017】
超音波センサ11A〜11Dのそれぞれの基本的な構成は同じである。以下、超音波センサ11A〜11Dのそれぞれを区別しない場合には、単に「超音波センサ11」と称する。超音波センサ11A〜11Dを区別する場合には、第1超音波センサ11A、第2超音波センサ11B、第3超音波センサ11C、第4超音波センサ11Dと称する。超音波センサ11は、センサの一例である。
【0018】
超音波センサ11は、超音波の送受信を行う。具体的には、超音波センサ11は、圧電素子を有している。圧電素子は、駆動電圧に応じた振動を行って超音波を発生させる一方、超音波を受信すると、その振動に応じた電気信号を発生させる。超音波センサ11は、センサの一例である。
【0019】
ケーシング12は、
図2に示すように、概略、偏平な直方体に形成されている。ケーシング12は、比較的大きな面積を有し、相対向する一対の略長方形の面を有しており、その一方の面が、対象者の腹部に接触する面(以下、「接触面」という)13となる。
【0020】
超音波センサ11A〜11Dは、膀胱が膨張する方向における異なる位置に向かって超音波を送信するように配置されている。
【0021】
詳しくは、超音波センサ11A〜11Dは、
図2,3に示すように、ケーシング12の上下方向における異なる位置に配置されている。第1超音波センサ11A、第2超音波センサ11B、第3超音波センサ11C、第4超音波センサ11Dの順で下から配置されている。ここで、ケーシング12の上下方向とは、トランスデューサ1が対象者に装着されたときの上下方向である。トランスデューサ1は、例えば、略長方形状の接触面13の長手方向が上下方向に一致する状態でトランスデューサ1が対象者に装着される。すなわち、ケーシング12の上下方向は、接触面13の長手方向である。
【0022】
第1超音波センサ11A及び第3超音波センサ11Cの左右方向の位置は同じである一方、第2超音波センサ及び第4超音波センサ11Dは、第1超音波センサ11A及び第3超音波センサ11Cに対して左右方向にオフセットしている。第2超音波センサ11C及び第4超音波センサ11Dの左右方向の位置は同じである。つまり、超音波センサ11A〜11Dは、千鳥状に配置されている。
【0023】
それに加えて、超音波センサ11A〜11Dのそれぞれの超音波の送信方向は、平行ではない。超音波センサ11A〜11Dは、
図3に示すように、上下方向に放射状に超音波を送信する。すなわち、超音波センサ11A〜11Dは、上下方向における超音波の出射角度が異なっている。具体的には、第4超音波センサ11Dは、接触面13の法線方向に超音波を送信する。第3超音波センサ11Cは、第4超音波センサ11Aよりも斜め下方に向かって超音波を送信する。第2超音波センサ11Bは、第3超音波センサ11Cよりも斜め下方に向かって超音波を送信する。第1超音波センサ11Aは、第2超音波センサ11Bよりも斜め下方に向かって超音波を送信する。つまり、第1超音波センサ11Aが、最も下向きに超音波を送信し、第2超音波センサ11B、第3超音波センサ11C、第4超音波センサ11Dの順にしだいに上向きに超音波を送信する。
【0024】
図4は、トランスデューサ1の装着状態を示す図である。トランスデューサ1は、
図4に示すように、対象者に装着される。トランスデューサ1は、対象者の腹部の皮膚上であって、膀胱に対応する部分(例えば、下腹部)に配置される。
【0025】
例えば、トランスデューサ1は、接触面13を対象者の腹部に接触させた状態で、ベルト又はテープによって腹部に取り付けられる。尚、接触面13と腹部との間には、超音波の腹部への透過性を向上させるためのジェル等が塗布される。
【0026】
図5は、トランスデューサ1を装着した人体の下腹部の模式的な断面図である。尚、
図5の例は、蓄尿量がほとんど無い状態を示している。腹部の表面から背中に向かって、皮下脂肪61、筋肉62、脂肪63、膀胱64、精嚢65若しくは前立腺66(男性の場合)又は膣(女性の場合)、直腸67、背骨(仙骨)68等が順に並んでいる。膀胱64の上には、小腸69が位置しており、膀胱64の前側の斜め下には、恥骨610が位置している。
【0027】
トランスデューサ1は、超音波センサ11A〜11Dから出射される超音波が上下方向に広がるように対象者の腹部に装着される。超音波センサ11A〜11Dは、体内における上下方向の異なる位置に向かって超音波を送信する。膀胱は、蓄尿量の増加に伴って三次元に膨らむ。そのため、上下方向における異なる位置は、膀胱が膨張する方向の1つである。尚、膀胱は、特に上下方向に大きく膨張する。すなわち、超音波センサ11A〜11Dは、膀胱が比較的大きく膨張する方向における異なる位置に向かって超音波を送信するように配置されている。
【0028】
〈処理装置〉
図6は、処理装置2のブロック図である。処理装置2は、超音波センサ11へ駆動電圧を出力する送信部21と、超音波センサ11から電気信号を受信する受信部22と、送信部21及び受信部22に接続される超音波センサ11を切り替えるスイッチ23と、外部に種々の情報を報知するための報知部24と、外部との通信を行う通信部25と、処理装置2の全体的な制御を行う制御部26とを有している。処理装置2は、対象者の衣服等に装着される。
【0029】
送信部21は、超音波センサ11に駆動電圧を供給する。送信部21は、パルス発生器21aと増幅部21bとを有している。パルス発生器21aは、所定のパルス幅及び電圧値のパルス信号を発生させる。パルス発生器21aは、パルス幅、パルス数、及び、周波数を変更可能に構成されていてもよい。増幅部21bは、パルス発生器21aからのパルス信号を増幅し、駆動電圧として超音波センサ11へ出力する。
【0030】
受信部22は、超音波センサ11からの電気信号を受信する。受信部22は、増幅部22aと、A/D変換部22bとを有している。増幅部22aは、超音波センサ11からの受信信号を増幅して、A/D変換部22bへ出力する。A/D変換部22bは、増幅部22aからの受信信号をA/D変換する。
【0031】
スイッチ23は、超音波センサ11A〜11Dの中から送信部21及び受信部22に接続される超音波センサ11を択一的に切り替える。
【0032】
報知部24は、例えば、LEDランプである。LEDランプの点灯態様によって対象者に様々な情報(例えば、排尿タイミングの到来)を報知する。
【0033】
通信部25は、外部の通信装置と通信を行う。例えば、通信部25は、ブルートゥース(登録商標)規格の通信を行う。通信部25は、
図1に示すように、ゲートウェイ40を介してサーバ群3と通信を行う。
【0034】
制御部26は、1又は複数のプロセッサを有している。制御部26は、送信部21、受信部22、スイッチ23、報知部24及び通信部25を制御する。
【0035】
具体的には、制御部26は、スイッチ23を制御して、送信部21及び受信部22に接続される超音波センサ11を切り替える。制御部26は、送信部21を制御して、駆動電圧を超音波センサ11へ出力させる。制御部26は、受信部22を制御して、超音波センサ11の受信信号をデジタル信号に変換させる。制御部26は、通信部25を制御して、受信部22からの信号を外部に送信する。制御部26は、通信部25を介して外部からの信号を受信し、その信号に応じた処理を行う(例えば、報知部24を作動させる)。
【0036】
〈サーバ群〉
サーバ群3は、所謂、クラウドコンピューティングを行う。サーバ群3は、
図1に示すように、複数のサーバを含んでいる。具体的には、サーバ群3は、データ解析を行う第1サーバ31、ユーザ端末71にアプリケーションを提供する第2サーバ32と、対象者の排尿タイミングに影響を与える情報を受け付ける第3サーバ33と、データベースとして機能する第4サーバ34とを含んでいる。サーバ群3は、推定部の一例である。
【0037】
第1サーバ31は、処理装置2と通信を行い、処理装置2からの信号、即ち、受信部22により受信処理された超音波センサ11の受信信号の解析を行う。以下、処理装置2から送信される受信信号を単に「超音波センサ11の受信信号」とも称する。第1サーバ31は、超音波センサ11の受信信号から求められる膀胱の膨張速度に基づいて排尿タイミングを推定する。そのとき、第1サーバ31は、超音波センサ11の受信信号から膀胱の蓄尿量も推定する。
【0038】
第2サーバ32は、ユーザ端末71と通信を行う。サーバ群3(詳しくは、第4サーバ34)には、通信を行う外部の通信端末を登録可能であり、該通信端末の情報がサーバ群3に処理装置2と紐づけて記憶されている。つまり、ユーザは、ユーザ端末71を予めサーバ群3に登録しておく。そうすることで、サーバ群3とユーザ端末71との間の通信が可能となる。例えば、介護者の所持するユーザ端末71(例えば、スマートフォンやタブレット端末)をサーバ群3に登録しておく。また、対象者が自力でトイレへ行くことができる場合には、対象者のユーザ端末71を登録しておく。ユーザ端末71は、1台に限らず、複数台(例えば、介護者のユーザ端末71と要介護者のユーザ端末71)を登録可能としてもよい。ユーザ端末71は、排尿予測装置100専用のアプリをダウンロードしておくことによって、第2サーバ32と情報の送受信を行って、専用のアプリを作動させることができる。
【0039】
第2サーバ32は、対象者の状態に関する情報をユーザ端末71から受け付ける。第2サーバ32は、受信した情報を第4サーバ34に記憶させる。対象者の状態に関する情報には、少なくとも、膀胱の許容蓄尿量(即ち、尿意を催す蓄尿量)に影響を与える情報と、膀胱の膨張速度に影響を与える情報とが含まれる。例えば、対象者の状態に関する情報には、食料の摂取に関する情報、飲料の摂取に関する情報、投薬に関する情報、及び、対象者が睡眠中か否かの情報が含まれる。また、第2サーバ32は、対象者の排尿タイミング等の各種情報をユーザ端末71に送信する。
【0040】
第3サーバ33は、ユーザ端末71以外の外部装置から、対象者の状態に関する情報を受信する。この外部装置の例としては、姿勢センサがある。姿勢センサは、対象者の状態に関する情報として対象者の姿勢に関する情報を送信する。例えば、第3サーバ33は、姿勢センサを内蔵し、対象者に装着されるウェアラブル端末72と通信を行う。第3サーバ33は、ウェアラブル端末72から対象者の姿勢に関する情報(例えば、立位、座位、臥位等の状態)を受信する。第3サーバ33は、受信した情報を第4サーバ34に記憶させる。
【0041】
第4サーバ34は、対象者に関する情報、第1サーバ31が受信した超音波センサ11の受信信号、第1サーバ31の解析結果、第2サーバ32が受信した情報、及び、第3サーバ33が受信した情報を記憶している。対象者に関する情報は、例えば、対象者を特定するユーザID、処理装置2を特定する機器ID、ユーザ端末を特定する端末ID、及び、対象者の蓄尿及び排尿に関する情報等である。第4サーバ34は、これらの情報を紐づけて記憶している。ユーザID、機器ID及び端末IDは、ユーザによって予め登録されている。対象者の蓄尿及び排尿に関する情報は、例えば、許容蓄尿量(後述する許容尿レベル)であり、デフォルトで共通の初期値が予め設定されている。対象者の蓄尿及び排尿に関する情報は、第1サーバ31による解析結果によって補正され得る。
【0042】
〈排尿予測装置の動作〉
以下、排尿予測装置100の処理について詳しく説明する。
【0043】
トランスデューサ1及び処理装置2は、超音波の送受信を周期的に行う。詳しくは、処理装置2の制御部26は、スイッチ23を切り替えながら、第1〜第4超音波センサ11A〜11Dに順番に超音波を送受信させる。制御部26は、第1超音波センサ11Aと送信部21及び受信部22とが接続されるようにスイッチ23を制御する。そして、制御部26は、送信部21へパルス信号の生成指令を出力し、送信部21に駆動電圧を第1超音波センサ11Aへ供給させる。第1超音波センサ11Aは、駆動電圧に基づく超音波を送信すると共に、体内からの反射波を受信する。第1超音波センサ11Aの受信信号は、受信部22により増幅及びA/D変換される。制御部26は、スイッチ23を順次切り替えて、第2〜第4超音波センサ11B〜11Dに対しても同様の制御を実行する。この工程が、対象者の体内に超音波を送信し、前記超音波の反射波を検出する複数のセンサによって膀胱を検出する工程に相当する。
【0044】
制御部26は、第1〜第4超音波センサ11A〜11Dの受信信号(詳しくは、受信部22により処理された信号)を通信部25を介してサーバ群3に送信する。制御部26は、第1〜第4超音波センサ11A〜11Dによる超音波の送受信及び受信信号のサーバ群3への送信を1セットとして、この処理を周期的に実行する。
【0045】
図7は、サーバ群3による処理を示すフローチャートである。
【0046】
第1サーバ31は、ステップS1において、処理装置2から周期的に送信されてくる、4つの超音波センサ11の受信信号を受信する。
【0047】
第1サーバ31は、ステップS2において、超音波センサ11の受信信号に基づいて、超音波センサ11が膀胱を検出しているか否かを判定する。第1サーバ31は、4つの超音波センサ11の全てについて、膀胱の検出の有無を調べる。第1サーバ31は、受信信号に膀胱の反射波が含まれていることをもって、超音波センサ1が膀胱を検出していると判定する。
【0048】
詳しくは、第1サーバ31は、超音波センサ11の受信信号に対して平均処理を行う。第1サーバ31は、処理装置2から受け取った受信信号に、第4サーバ34に記憶されている直近の複数の受信信号を加えて、所定個数(例えば、10個)の受信信号を平均する(すなわち、移動平均を求める)。これにより、受信信号のノイズが低減され、反射波が識別しやすくなる。
【0049】
次に、第1サーバ31は、平均処理後の受信信号に膀胱の反射波が含まれているか否かを判定する。受信信号においては超音波の送信直後にノイズが観測されるので、腹部の表面から比較的遠い、膀胱の後壁からの反射波が識別し易い。そこで、第1サーバ31は、受信信号に膀胱の後壁の反射波が含まれるか否かを調べる。膀胱の後壁の反射波が返ってくると想定される受信時間帯は概ねわかっているので、第1サーバ31は、該受信時間帯において反射波が存在するか否かを判定する。以下、特に断りがない限り、「膀胱の反射波」は、膀胱の後壁の反射波を意味する。
【0050】
続いて、第1サーバ31は、ステップS3において、尿レベルを判定する。尿レベルとは、膀胱の蓄尿量を示す指標であり、尿レベルが大きいほど蓄尿量が多いことを示す。
【0051】
具体的には、第1サーバ31は、どの超音波センサ11が膀胱を検出しているかに基づいて尿レベルを求める。膀胱は、蓄尿量の増加に伴って上方へ膨張する一方、第1〜第4超音波センサ11A〜11Dは、前述の如く、上下方向の異なる位置に向かって超音波を送信している。そのため、蓄尿量が多いほど、膀胱を検出する超音波センサ11の個数が多くなる。第1サーバ31は、下から順にどの超音波センサ11までが膀胱を検出しているかによって尿レベルを判定する。何れの超音波センサ11も膀胱を検出していないときの尿レベルを「0」とする。第1超音波センサ11Aのみが膀胱を検出しているときの尿レベルを「1」とする。第1超音波センサ11A及び第2超音波センサ11Bのみが膀胱を検出しているときの尿レベルを「2」とする。第1超音波センサ11A、第2超音波センサ11B及び第3超音波センサ11Cのみが膀胱を検出しているときの尿レベルを「3」とする。全ての超音波センサ11が膀胱を検出しているときの尿レベルを「4」とする。
【0052】
人体の下腹部の例を
図8に示す。
図8は、蓄尿量が中程度の場合の人体の下腹部の模式的な断面図である。また、
図8の膀胱の状態における4つの超音波センサ11の受信信号の例を
図9〜12に示す。
図9は、第1超音波センサ11Aの受信信号である。
図10は、第2超音波センサ11Bの受信信号である。
図11は、第3超音波センサ11Cの受信信号である。
図12は、第4超音波センサ11Dの受信信号である。
図9〜12の波形は、平均処理を施された後の波形である。
【0053】
この例では、第1超音波センサ11A及び第2超音波センサ11Bが膀胱の反射波W1を検出しており、第3超音波センサ11C及び第4超音波センサ11Dは膀胱の反射波を検出していない。つまり、尿レベルは「2」である。
【0054】
尚、
図8に示すように、膀胱64の上には小腸69が位置している。第3超音波センサ11C及び第4超音波センサ11Dから出射された超音波の大部分は、小腸69に入射する。小腸69の内部には、ガスが混在しているため、超音波は小腸69で減衰し、体内の奥の方まで届き難くなる。そのため、第3超音波センサ11C及び第4超音波センサ11Dの受信信号(
図11,12参照)においては、小腸の反射波W2が観測されるものの、小腸の反射波W2の後には膀胱の反射波はもちろん、それ以外の部分からの目立った反射波も観測され難い。尚、小腸69は、常に蠕動運動をしているため、小腸の反射波W2は、明確なピークとしては現れず、ノイズに似た波形となる場合もある(
図12参照)。また、膀胱64の膨張の度合いによっては、超音波の伝播経路上に小腸69と膀胱64とが存在する場合もある。この場合には、超音波の伝播経路上の小腸69が少ないので、超音波の一部は膀胱64まで到達し、膀胱の反射波が観測され得る。このときには、小腸の反射波と膀胱の反射波とが観測され得る。
【0055】
一方、
図5の例では、蓄尿量が少なく、膀胱が小さいので、何れの超音波センサ11も膀胱の反射波を検出しない。この場合の尿レベルは「0」である。
【0056】
第1サーバ31は、ステップS4において、判定結果を第4サーバ34に記憶させる。判定結果には、判定時刻と、各超音波センサ11の膀胱の検出の有無と、尿レベルが含まれる。判定結果は、
図13に示すような表の形式で第4サーバ34に蓄積される。
図13における判定時刻9:00の判定結果が、
図9〜
図12の受信信号の結果である。各超音波センサ11の欄における符号「0」は、膀胱を検出していないことを表し、符号「1」は、膀胱を検出していることを表している。尚、第1サーバ31は、処理装置2から受信した、超音波センサ11の受信信号も第4サーバ34に記憶させる。
【0057】
続いて、第1サーバ31は、ステップS5において、今回の判定結果と前回の判定結果とを比べて、尿レベルに変化があったか否か(即ち、新たな超音波センサ11が膀胱を検出するようになったか否か)を判定する。
図13の例では、第1サーバ31は、今回の判定結果である9:00の判定結果と前回の判定結果である8:50の判定結果を比較する。比較の結果、尿レベルが「1」から「2」に変化している。
【0058】
尿レベルに変化があった場合には、第1サーバ31は、ステップS6において、膀胱の膨張速度に基づいて排尿タイミングを推定する。このステップが、膀胱の検出結果から求められる膀胱の膨張速度に基づいて排尿タイミングを推定する工程に相当する。
【0059】
詳しくは、第1サーバ31は、まず、尿レベルが前回変化してから今回変化するまでの時間(以下、「ステップアップ時間」と称する)Tを求める。詳しくは、前回の判定結果と比べて新たな超音波センサ11が膀胱を検出するようになった場合には、新たな超音波センサ11よりも1段階下向きの超音波センサ11が初めて膀胱を検出するようになってから、新たな超音波センサ11が膀胱を検出するようになるまでの時間をステップアップ時間Tとして求める。
【0060】
図13の例では、新たな超音波センサ11は、第2超音波センサ11Bであり、1段階下向きの超音波センサ11は、第1超音波センサ11Aである。第1超音波センサ11Aが初めて膀胱を検出するようになった時刻8:30と、第2超音波センサ11Bが膀胱を検出するようになった時刻、即ち、今回の判定時刻9:00との時間差(=30分)がステップアップ時間Tである。
【0061】
ステップアップ時間Tは、尿レベルが1段階上がるのに要する時間なので、1段階の尿レベルに相当する膀胱の容積差をステップアップ時間Tで除した値が膀胱の膨張速度である。
【0062】
第1サーバ31は、膀胱の膨張速度に基づいて、今回の尿レベルから許容尿レベルに達するまでの時間(以下、「残り時間」)Xを推定する。許容尿レベルは、対象者が尿意を催す尿レベルであり、初期状態ではレベル「4」に設定されている。
図13の例では、第1サーバ31は、尿レベル「2」から「4」までの残り時間Xを推定する。
【0063】
ここで、1段階の尿レベルに相当する膀胱の容積差は、4つの超音波センサ11の超音波の出射方向に依存する。つまり、超音波センサ11間の出射角度の差が大きくなるほど、1段階の尿レベルに相当する膀胱の容積差が大きくなる。本実施形態では、尿レベルと膀胱の容積とが略比例するように(即ち、1段階の尿レベルに相当する膀胱の容積差が尿レベル「0」から「4」の間でそれぞれ略等しくなるように)、各超音波センサ11の超音波の出射方向が設定されている。つまり、尿レベルが「1」から「2」に上がる場合の膀胱の容積差をΔQとすると、尿レベルが「2」から「4」に上がる場合の膀胱の容積差は2ΔQとなる。また、尿レベルが「1」から「2」に上がる場合の膀胱の膨張速度Vは、ΔQ/Tである。そうすると、残り時間Xは、式(1)のようになる。
【0064】
X=2ΔQ/V=2T ・・・(1)
つまり、残り時間Xは、許容尿レベルと今回の尿レベルとのレベル差と、ステップアップ時間Tとから求められる。
図13の例では、残り時間Xは、60分となる。
【0065】
ただし、1段階の尿レベルに相当する膀胱の容積差が尿レベル「0」から「4」の間でそれぞれ異なる場合には、第1サーバ31は、対応する膀胱の容積差を用いて、膀胱の膨張速度及び残り時間Xを求める。例えば、尿レベルが「1」から「2」に上がる場合の膀胱の容積差をΔQ
1→2、尿レベルが「2」から「3」に上がる場合の膀胱の容積差をΔQ
2→3、尿レベルが「3」から「4」に上がる場合の膀胱の容積差をΔQ
3→4とする。尿レベルが「1」から「2」に上がる場合の膀胱の膨張速度Vは、ΔQ
1→2/Tとなる。そして、残り時間Xは、式(2)のようになる。
【0066】
X=(ΔQ
2→3+ΔQ
3→4)/(ΔQ
1→2/T) ・・・(2)
さらには、膀胱の前後方向、即ち、超音波の出射方向への大きさも考慮して膀胱の容積を評価してもよい。膀胱は、上下方向への膨張が最も顕著ではあるが、前後方向へも膨張する。どの超音波センサ11が膀胱を検出しているかは、膀胱の上下方向への膨張の程度を表わしている。一方、膀胱の反射波が返ってくるまでの時間(膀胱の反射波が検出される時間)は、超音波の出射方向への膀胱の膨張の程度を表わしている。そこで、尿レベルが「n」から「n+1」へ1段階上がる場合の膀胱の容積差ΔQ
n→n+1を以下の式(3)で求めてもよい。
【0067】
ΔQ
n→n+1=Δq
n→n+1×Tr ・・・(3)
ここで、Δq
n→n+1は、ΔQ
n→n+1を算出する際の基準値であり、各超音波センサ11の超音波の出射方向に依存する値である。Δq
n→n+1は、予め設定されている。Trは、膀胱の反射波W1の検出時間である。つまり、膀胱の容積差ΔQ
n→n+1は、膀胱の反射波W1の検出時間Tr、即ち、膀胱の反射波W1が返ってくるまでの時間に応じて変動する。
【0068】
これにより、膀胱の容積差をより精度良く求めることができ、ひいては、膀胱の膨張速度V及び残り時間Xをより精度良く求めることができる。
【0069】
それに加えて、第1サーバ31は、排尿タイミングを推定する際に第4サーバ34に記憶されている、対象者の状態に関する情報を考慮する。例えば、第1サーバ31は、対象者の食料又は飲料の摂取量及び摂取時刻が第4サーバ34に記憶されている場合には、その摂取量及び摂取時刻に応じて膀胱の膨張速度Vを速く補正する。これは、食料中の水分及び飲料によって、蓄尿速度が上がるためである。第1サーバ31は、薬品の種類及び服薬・投薬時刻が第4サーバ34に記憶されている場合には、それらに応じて膀胱の膨張速度Vを補正する。これは、薬品によっては、利尿作用があるものや、尿意を抑制する作用があるものがあるためである。第1サーバ31は、対象者が睡眠中であるとの情報が第4サーバ34に記憶されている場合には、膀胱の膨張速度Vを遅く補正する。これは、睡眠中は、抗利尿ホルモンが機能し、蓄尿速度が下がるためである。第1サーバ31は、対象者の姿勢に関する情報が第4サーバ34に記憶されている場合には、それに応じて膀胱の膨張速度V及び許容尿レベルを補正する。これは、対象者の姿勢によって膀胱の形状が変化するので、許容尿レベルに対応する膀胱の高さが変化する。例えば、立位の場合には、臥位に比べて、膀胱の高さが低くなる一方、膀胱の奥行き方向及び左右方向のサイズが大きくなる。そこで、第1サーバ31は、許容尿レベルを低下させる(「4」から「3」にする)と共に、膀胱の膨張速度Vを遅くする。
【0070】
このように、対象者の排尿タイミングに影響を与える情報が第4サーバ34に記憶されている場合には、第1サーバ31は、それに応じて、排尿タイミングを補正する。尚、第1サーバ31は、膀胱の膨張速度V及び許容尿レベルを補正する代わりに、排尿タイミングを直接補正してもよい。
【0071】
その後、第1サーバ31は、ステップS7において、排尿タイミングとして、残り時間Xを処理装置2及びユーザ端末71に報知する。尚、第1サーバ31は、排尿タイミングとして、判定時刻から残り時間Xが経過した後の時刻である排尿の予想時刻を報知してもよい。第1サーバ31は、残り時間X及び排尿の予想時刻を第4サーバ34に記憶させる。
【0072】
処理装置2は、第1サーバ31から排尿タイミング(残り時間X)を受信すると、報知部24を排尿タイミングに応じて作動させる。例えば、処理装置2は、報知部24であるLEDランプを排尿タイミングに応じて点灯させる。LEDランプが複数設けられている場合には、処理装置2は、残り時間Xに応じたLEDランプを点灯させる。LEDランプが1つの場合には、処理装置2は、残り時間Xに応じて点滅速度を早くする等、点灯態様を排尿タイミングに応じて変更する。これにより、対象者は、排尿タイミングを事前に知ることができ、排尿の準備を行うことができる。それに加えて、対象者の周りの人々にも排尿タイミングを事前に知らせることができ、対象者をトイレへ誘導する準備を促すことができる。あるいは、実際の排尿が早まったり、排尿タイミングの報知から実際の排尿までの時間が短すぎたりした場合には、排尿の準備や対象者のトイレへの誘導が間に合わない場合もある。そのような場合であっても、排尿タイミングを報知することによって、失禁後の処理を早期に行うことができる。つまり、オムツ交換の時期を早期に報知することができる。
【0073】
ユーザ端末71は、第1サーバ31から排尿タイミング(残り時間X)を受信すると、専用のアプリにおいて排尿タイミングを表示する等して、ユーザ端末71の所持者に排尿タイミングを報知する。これにより、ユーザ端末71の所持者に排尿タイミングを事前に知らせ、対象者をトイレへ誘導する準備を促すことができる。
【0074】
尚、ステップS5において尿レベルに変化がない場合には、第1サーバ31は、排尿タイミングの推定を行うことなく、ステップS7へ進む。第1サーバ31は、ステップS7において、それ以前で直近に推定した排尿タイミング(即ち、それ以前で直近に尿レベルが変化したときの排尿タイミング)を処理装置2及びユーザ端末71に報知する。例えば、
図9〜12の受信信号が得られた次の判定時には、尿レベルは「2」のまま変化していない可能性が高い。そのような場合には、尿レベルが変化していないので、第1サーバ31は、排尿タイミングを新たに推定することなくステップS7へ進む。そして、第1サーバ31は、前回の判定時に推定した残り時間Xに基づいて排尿タイミングを報知する。ただし、前回の判定時から時間が経過しているので、第1サーバ31は、残り時間Xから経過時間を減じた時間を排尿タイミングとして報知する。尚、それ以前に排尿タイミングを推定していない場合(例えば、尿レベルが継続して「0」の場合)には、第1サーバ31は、推定タイミングを報知することなく、ステップS1へ戻る。
【0075】
第1サーバ31は、以上の処理を繰り返すことによって、排尿タイミングを推定し、対象者又はその周りの人々に排尿タイミングを事前に知らせる。
【0076】
第1サーバ31が以上の処理を繰り返すと、尿レベルが順次上昇していくのに従って、ステップアップ時間Tが順次取得される(例えば、尿レベルが「1」から「2」に上がるのに要するステップアップ時間T
1→2と、尿レベルが「2」から「3」に上がるのに要するステップアップ時間T
2→3)。その場合には、第1サーバ31は、最新のステップアップ時間T(即ち、ステップアップ時間T
2→3)を用いて排尿タイミングを推定する。こうすることで、第1サーバ31は、最新の蓄尿状態に基づいて排尿タイミングを推定することができる。
【0077】
尚、第1サーバ31は、複数のステップアップ時間Tを用いて排尿タイミングを推定してもよい。例えば、第1サーバ31は、複数のステップアップ時間Tを用いて膀胱の平均膨張速度を求め、平均膨張速度に基づいて排尿タイミングを求めてもよい。
【0078】
〈排尿のフィードバック〉
さらに、第1サーバ31は、実際の排尿に基づいて許容尿レベルを補正する。詳しくは、実際に排尿が終了すると、対象者又は介護者等の第三者にユーザ端末71を操作して、実際の排尿の時刻を入力してもらう。ユーザ端末71は、実際の排尿時刻を第2サーバ32へ送信する。尚、ユーザ端末71に入力されるのは、実際の排尿時刻ではなく、実際の排尿があった旨であってもよい。その場合には、実際の排尿があった旨の入力時刻を実際の排尿時刻とみなしてもよい。
【0079】
第2サーバ32は、ユーザ端末71からの実際の排尿時刻を受け取ると、第4サーバ34に記憶されている排尿の予想時刻と実際の排尿時刻とを比較する。第2サーバ32は、排尿の予想時刻と実際の排尿時刻との差に基づいて許容尿レベルを補正する。例えば、実際の排尿時刻が予想時刻よりも早い場合には、第2サーバ32は、許容尿レベルを1段階(例えば、「4」から「3」へ)下げる。実際の排尿時刻が予想時刻よりも遅い場合には、第2サーバ32は、許容尿レベルを1段階上げる。許容尿レベルが最大、即ち、「4」の場合には、第2サーバ32は、予想時間Xに追加する追加時間を設定する。予想時間Xは、尿レベルが「4」に達するまでの時間であり、この予想時刻に追加時間を追加することによって、許容尿レベルが「4」以上の仮想的なレベルに設定される。第2サーバ32は、補正した許容尿レベル及び/又は追加時間を第4サーバ34に記憶させる。
【0080】
その後に第1サーバ31が前述の排尿タイミングの推定を行う際には、第1サーバ31は、第4サーバ34に記憶された許容尿レベル及び/又は追加時間を用いる。尚、第2サーバ32は、ユーザ端末71からの実際の排尿時刻を受け取ると実際の排尿時刻を第4サーバ34に記憶させるだけで、第1サーバ31が、排尿タイミングの推定の際に許容尿レベルの補正も行ってもよい。
【0081】
このように、実際の排尿に基づいて許容尿レベルを補正することによって、個人差がある膀胱の蓄尿量に合わせて、排尿タイミングを予測することができる。
【0082】
さらには、実際の排尿のフィードバックとして、実際の排尿量を入力してもらってもよい。要介護者等の排尿時には、排尿量が管理される場合がある。そのような場合には、実際の排尿量をフィードバックしてもらってもよい。この実際の排尿量に基づいて、許容尿レベルを補正してもよい。
【0083】
〈膀胱の検出精度の向上〉
尚、第1サーバ31は、ステップS2において超音波センサ11が膀胱を検出しているか否かを判定する際に以下のような判定を行ってもよい。
【0084】
具体的には、第1サーバ31は、超音波センサ11の受信信号において膀胱の反射波が含まれ且つ小腸の反射波の振幅が所定の閾値以下(小腸の反射波が含まれていない場合も含む)場合に、ステップS2において膀胱を検出していると判定してもよい。つまり、体内の臓器は比較的柔軟に変形し且つ移動するため、超音波センサ11が膀胱の反射波を検出するようになり始めたときには、超音波センサ11が膀胱の反射波を検出したり、検出しなかったりして、反射波の検出が不安定になる。ひいては、前述の尿レベルの判定において尿レベルが頻繁に変化することになり、排尿タイミングの判定が不安定になる。超音波センサ11が膀胱の反射波を検出するようになり始めたときには、超音波センサ11の超音波の伝播経路上に小腸69と膀胱64とが存在している。そこから膀胱64が膨張すると、小腸69が上方に押し上げられ、伝播経路上に位置する小腸69が少なくなっていく。つまり、小腸の反射波が小さくなる、あるいは、消滅することをもって、超音波センサ11が膀胱を安定的に検出するようになったと判定することができる。そこで、超音波センサ11の受信信号に膀胱の反射波が含まれていても、小腸の反射波も含まれ且つ小腸の反射波の振幅が大きい(具体的には、所定の閾値よりも大きい)ときには、第1サーバ31は、ステップS2において膀胱が検出されているとは判定しない。超音波センサ11の受信信号に膀胱の反射波が含まれ且つ、小腸の反射波の振幅が所定の閾値未満の場合に、第1サーバ31は、ステップS2において膀胱が検出されていると判定する。この場合には、対象者が動いたりして、膀胱の形状や位置が多少変化しても、超音波センサ11は膀胱の反射波を検出し続ける可能性が高い。その結果、尿レベルの頻繁な変化が防止され、排尿タイミングの判定が安定する。尚、一旦、小腸の反射波の振幅が所定の閾値未満となった後は、第1サーバ31は、小腸の反射波の有無にかかわらず、膀胱の反射波が検出されていることをもって膀胱を検出していると判定してもよい。
【0085】
また、別の方法として、第1サーバ31は、超音波センサ11の受信信号に膀胱の反射波が含まれているという状態が所定回数、継続したときに、膀胱を検出していると判定してもよい。つまり、前述の如く、超音波センサ11が膀胱の反射波を検出するようになり始めたときには、超音波センサ11の受信信号に膀胱の反射波が含まれていたとしても、次の受信信号においては膀胱の反射波が含まれていない場合もあり得る。超音波センサ11の受信信号に膀胱の反射波が含まれているという状態が所定回数、継続した場合には、超音波センサ11が膀胱の反射波を検出するようになり始めたときから蓄尿量が或る程度増加しており、膀胱がさらに膨張している可能性が高い。その結果、膀胱の形状や位置が多少変化しても、超音波センサ11が膀胱の反射波を検出し続けるので、排尿タイミングの判定が安定する。
【0086】
尚、前述の2つの判定方法を組み合わせてもよい。つまり、第1サーバ31は、超音波センサ11の受信信号に膀胱の反射波が含まれ且つ小腸の反射波の振幅が所定の閾値以下となっている状態が所定回数、継続したときに、膀胱を検出していると判定してもよい。
【0087】
以上のように、排尿予測装置100は、対象者の体内に超音波を送信し、膀胱を検出する複数の超音波センサ11(センサ)と、複数の超音波センサ11の検出結果から求められる膀胱の膨張速度に基づいて排尿タイミングを推定するサーバ群3(推定部)とを備える。
【0088】
また、排尿予測装置100の排尿予測方法は、対象者の体内に超音波を送信し、超音波の反射波を検出する複数の超音波センサ11によって膀胱を検出する工程と、膀胱の検出結果から求められる膀胱の膨張速度に基づいて排尿タイミングを推定する工程とを含む。
【0089】
この構成によれば、膀胱を検出する複数の超音波センサ11を設けることによって、複数の超音波センサ11の検出結果に基づいて膀胱の膨張速度を求めることができる。膀胱の膨張速度がわかると、排尿タイミングに相当する容積まで膀胱が膨張するまでの時間を推定することができる。こうして、排尿予測装置100は、排尿タイミングを予測することができる。
【0090】
また、複数の超音波センサ11は、膀胱を検出する超音波センサ11の個数が膀胱の膨張に従って増加するように配置されており、サーバ群3は、複数の超音波センサ11のうちの一の超音波センサ11が膀胱を検出するようになってから複数の超音波センサ11のうちの別の超音波センサ11が膀胱を検出するようになるまでの時間、即ち、ステップアップ時間Tに基づいて排尿タイミングを推定する。
【0091】
この構成によれば、各超音波センサ11が膀胱を検出するようになったことは、該超音波センサ11に対応する容積まで膀胱が膨張したことを意味する。そのため、一の超音波センサ11が膀胱を検出するようになってから別の超音波センサ11が膀胱を検出するようになるまでのステップアップ時間Tは、一の超音波センサ11に対応する容積から別の超音波センサ11に対応する容積まで膀胱が膨張するのに要する時間である。ステップアップ時間Tとそれに対応する容積差との関係は、膀胱の膨張速度に相当する。サーバ群3は、ステップアップ時間Tを用いることによって、膀胱の膨張速度に基づいて排尿タイミングを推定することができる。
【0092】
具体的には、複数の超音波センサ11は、膀胱が膨張する方向における異なる位置に向かって超音波を送信するように配置されている。
【0093】
この構成によれば、膀胱が膨張するに従って、膀胱を検出する超音波センサ11の個数が増加していく。
【0094】
さらに、サーバ群3は、対象者の状態に関する情報に基づいて排尿タイミングを補正する。
【0095】
この構成によれば、サーバ群3は、膀胱の膨張速度に加えて、対象者の状態に関する情報に基づいて排尿タイミングを推定する。これにより、サーバ群3は、排尿タイミングをより精度よく推定することができる。
【0096】
具体的には、対象者の状態に関する情報は、食料の摂取、飲料の摂取、薬の摂取、睡眠中か否か、及び、対象者の姿勢の少なくとも1つを含む。
【0097】
この構成によれば、排尿タイミングに影響を与え得る対象者の状態を考慮して、排尿タイミングをより精度よく推定することができる。
【0098】
《その他の実施形態》
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、前記実施形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、上記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0099】
前記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0100】
例えば、センサは、超音波センサ11に限られるものではない。センサは、超音波センサ以外であっても、膀胱を検出できる限り、任意のセンサを採用することができる。
【0101】
複数の超音波センサ11の個数は、4個に限られるものではない。超音波センサ11の個数は、3個以下であってもよいし、5個以上であってもよい。
【0102】
複数の超音波センサ11の配置は、前記の配置に限られるものではない。複数の超音波センサ11は、膀胱の膨張方向の異なる位置に超音波を送信する限りは、任意の位置に配置することができる。例えば、超音波センサ11は、左右方向にオフセットしていなくてもよい。超音波センサ11は、上下方向の同じ位置に左右方向に並んで配置され、出射角度がそれぞれ異なるように配置されていてもよい。あるいは、超音波センサ11は、上下方向の異なる位置に配置され、出射方向が互いに平行になるように配置されていてもよい。さらには、超音波センサ11は、上下方向のように一次元的な方向だけでなく、二次元的な方向において異なる位置に超音波を送信するように配置されていてもよい。例えば、上下方向の異なる位置に超音波を送信する複数の超音波センサ11と、左右方向の異なる位置に超音波を送信する複数の超音波センサ11とが設けられていてもよい。
【0103】
また、ケーシング12は、前記の構成に限られるものではない。例えば、ケーシング12の接触面13には突出部が設けられていてもよい。超音波センサ11は、突出部内に内蔵される。突出部により、ケーシング12のうち超音波センサ11が内蔵された部分の皮膚(体表)との密着性が向上し、超音波の人体への入射が促進される。これにより、膀胱の検出能力が高められる。
【0104】
トランスデューサ1の装着方法は、前記の方法に限られるものではない。例えば、接触面13を粘着性を有する貼付面で形成し、接触面13を対象者の腹部に貼り付けるようにしてもよい。
【0105】
トランスデューサ1と処理装置2とが別体に構成されているが、これに限られるものではない。例えば、トランスデューサ1と処理装置2とを一体的に構成してもよい。また、トランスデューサ1と処理装置2とは、有線で接続されておらず、無線通信してもよい。さらに、処理装置2の機能の一部(例えば、送信部21又は受信部22)を、トランスデューサ1が有していてもよい。
【0106】
処理装置2の構成は、前述の構成に限られない。例えば、送信部21は、パルス信号を駆動信号としてトランスデューサ1に入力しているが、駆動信号は、パルス信号に限定されるものではない。駆動信号は、パルス波ではなく、バースト波等であってもよい。また、報知部24は、LEDランプに限られず、ディスプレイ、アラーム又はバイブレータであってもよい。
【0107】
また、受信信号から排尿タイミングの推定を行うのは、サーバ群3でなくてもよい。例えば、処理装置2が排尿タイミングの推定を行ってもよい。その場合、排尿予測装置100は、サーバ群3を含まなくてもよい。あるいは、PCやユーザ端末が排尿タイミングの推定を行ってもよい。つまり、推定部は、サーバ群3以外の装置であってもよい。
【0108】
さらに、サーバ群3の機能の一部(例えば、平均処理又は膀胱の検出の有無の判定)を処理装置2が有していてもよい。
【0109】
また、サーバ群3は複数のサーバを有しているが、1つのサーバが第1〜第4サーバ31〜34の機能を有していてもよい。
【0110】
さらに、対象者の状態に関する情報は、前述の情報に限られるものではなく、前述の情報以外の情報を含んでいてもよく、前述の情報の一部を省略してもよい。また、対象者の状態に関する情報の入力は、ユーザ端末71及びウェアラブル端末72からに限られるものではない。ユーザ端末71及びウェアラブル端末72以外の装置から対象者の状態に関する情報が入力されてもよい。
【0111】
前述の排尿予測装置の動作は一例に過ぎない。超音波センサ11の検出結果から求められる膀胱の膨張速度に基づいて排尿タイミングを推定する限りは、前述の動作を適宜、変更、省略、追加してもよい。例えば、推定された排尿タイミングを受け取る側の装置(処理装置2及びユーザ端末71)に計時機能がある場合には、排尿の予想時刻に変更がないときには排尿タイミングを報知しなくてもよい。
【0112】
また、超音波センサ11による反射波の検出及び尿レベルの変化の有無の判定は、周期的に行われているが、これに限られるものではない。例えば、排尿予測装置100は、対象者が所定の姿勢のときに、超音波センサ11による反射波の検出及び尿レベルの変化の有無の判定を行ってもよい。体内における膀胱の形状及び位置は、対象者の姿勢に応じて変わり得る。そのため、超音波の送信及び検出を行うときの対象者の姿勢を統一することによって、膀胱を精度良く検出し、尿レベルを精度良く判定することができる。あるいは、排尿予測装置100は、超音波センサ11により周期的に検出された反射波のうち、所定の姿勢のときに検出された反射波を用いて尿レベルの変化の有無の判定を行ってもよい。あるいは、排尿予測装置100は、超音波センサ11による反射波の検出を行う際に、対象者に予め決めた姿勢を取るように促すように構成されていてもよい。
【0113】
また、排尿予測装置100は、どの超音波センサ11までが膀胱を検出しているかによって尿レベルを判定しているが、これに限られるものではない。排尿予測装置100は、単純に、膀胱を検出している超音波センサ11の個数に基づいて尿レベルを判定してもよい。例えば、排尿予測装置100は、膀胱を検出している超音波センサ11の個数が多くなるほど尿レベルが大きくなるように判定してもよい。対象者の姿勢やトランスデューサ1の装着位置によっては、第1超音波センサ11Aから第4超音波センサ11Dへ向かう順に超音波センサ11が反応しない可能性もある。そのような場合には、膀胱を検出している超音波センサ11の個数による判定が有効である。
【0114】
また、排尿予測装置100は、膀胱の膨張の程度が高い超音波センサ11が膀胱を検出している場合は、それよりも膀胱の膨張の程度が低い超音波センサ11が膀胱を検出していなくても、検出していると判定してもよい。例えば、第3超音波センサ11Cが膀胱を検出し且つ、第2超音波センサ11Bが膀胱を検出していない場合には、第2超音波センサ11Bも膀胱を検出しているとみなしてもよい。本来は膀胱の反射波が検出される程度に膀胱が膨張していても、体内の様々な原因により膀胱の反射波が検出されない場合もあり得るので、そのような場合には、膀胱を検出していると判定してもよい。
排尿予測装置100は、対象者の体内に超音波を送信し、膀胱を検出する複数の超音波センサ11と、複数の超音波センサ11の検出結果から求められる膀胱の膨張速度に基づいて排尿タイミングを推定するサーバ群3とを備える。